エピゴーネンの盲信
エピゴーネンの盲信


●情熱だけで生き残れたら
「座れ、大人しくしていろ」
 決まり文句というのは芸がないなんて言い方もできるが、ようはシンプルに伝わりやすいという点で非常に洗練されたものであるのだ。
 例えば、そうだ。銀行強盗に銃器を向けられている瞬間だとか。
「座って、両手は頭の後ろだ。いいな! 誰とも会話するな! 座って、大人しくしていろ!」
 複数の男性。覆面をしている。大小様々だが、全員が銃器を所持している。映画でしか見たことはないが、多分アレはショットガンというやつだ。違ったところで、撃たれれば死ぬのは間違いない。
「ドリルまだか!?」
「今やってる! 時間がかか―――」
 爆音。靴の音。何故、と思ったが、それは男たちにとっても想定外の出来事だったようだ。
「な、なんだ!?」
 そうして、状況は混沌に極まる。

「悪党どもめ! 罰を下してくれるわ!」
 爆破された銀行施設の壁から入ってきたのは、中世鎧姿の集団だった。現代に似つかわしくない風貌。それぞれが剣や鈍器を構えている。
「強盗などと、力を持った者に相応しい行動ではない! 神妙にせよ! 生命だけで許してやる!」
 助け、だろうか。胡散臭いのはこの上ないが、こいつらを解決してくれるのならば願ったりだ。そう希望が見えたように思えたのが、悪かったのかもしれない。
 震えて立ち上がれない自分を、強盗のひとりが腕を取り無理やり引き寄せた。
 銃を側頭部にあてられる。一瞬で絶望にたたきつけられた。一度持ち上げられて落とされるのは、より深いところにある気分だ。勢いをつけて、滑るような気分だ。
「動くな! 人質だよ、見えてんだろオタクくせえ正義気取りがよぉ! おい、来んじゃねえよ! 何してやがる動くなって―――」
 暗転。

「悪党に向ける妥協はない」
 鎧騎士然とした男は、手にした長剣で人質に取られた女性ごと躊躇いなく強盗の一人を斬り伏せた。
 仕方のない犠牲だと、男は言う。正義を実行するためにやむをえないものなのだと。
「なんという卑劣な奴らだ」
 自分で斬っておいて、それがまるで結果の原因となったほうが悪いのだとでも言うかのように。
 剣を振り、血糊を払う。
 そうして振り向いたところを、撃たれていた。
 銃声。
 人質に向けて効果がないのだから、敵に向けるしか無い。武器とはそういうもので、そういう結果が招いたのだ。
 双方、マイナス1。
 響いた銃声に、ついに限界が訪れたのか。
 銀行員か、一般客か。誰か。誰でもいいが、その誰かが、悲鳴を上げた。
 それが合図だ。
 戦争が、始まったのだ。

●空も青いフリ
 その日、緊急であるとして覚者が招集される。
 一般人を巻き込む形で隔者の組織同士が戦闘を始めるとのことだった。
 その収束のため、この戦争への介入を求められることになる。


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:yakigote
■成功条件
1.全隔者の撃退
2.なし
3.なし
皆様如何お過ごしでしょう、yakigoteです。

隔者の少組織が銀行を襲撃し、その組織をさらに別組織が襲撃するというややこしい状況になっています。
銀行の従業員や客らは巻き込まれる形で人質、ないしは盾として非人道的な扱いをされています。
この事態を収束してください。

敵の数は不明ですが、どちらの組織も10名を超えることはありません。


●エネミーデータ
ギャングチーム『レッドアンソニー』
・覆面をした強盗集団です。それぞれが銃火器系の武器を所持していますが、その種類は一律ではありません。拳銃・ショットガン・マシンガン等様々です。
・総じて身軽で攻撃力が高く、血の気の多い連中です。
・人質を盾として利用します。

自警団『ピエールの鐘』
・西洋鎧に身を包んだ自警団です。ハンマーやバスターソードといった中世じみた重武装をしています。
・総じて守備性能と攻撃力に優れています。
・(彼らにとっての)悪を倒す、ことを目的としており、その遂行の障害となるのであれば人質やその他への配慮は行いません。


●シチュエーションデータ
・銀行のロビー。
・入り口はバリケートで塞がれていますが、『ピエールの鐘』らが開けた穴があるので内部への侵入に問題はありません。
・物陰にでも隠れない限り、同室内からは全域が見渡せます。
・そこまで広くもないため、内部で隠れて何かを行うのはこんなんでしょう。
・シーンスタートはオープニング直後よりスタートしますが、突入のタイミングはそれ以後であれば任意となります。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(2モルげっと♪)
相談日数
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
公開日
2016年08月01日

■メイン参加者 8人■


●離陸に歓喜の声
 そうだ、俺たちのことを教えてやるよ。別に、根っからのワルってわけじゃないんだ。ただ……そうだ、生まれてこの方、親も兄弟も金も幸せも知らないだけなんだ。八方ふさがりなんだよ。働かせてもくれない。かといって、ちまちま悪事を続けてたんじゃみじめなままどっかで捕まるか、殺されるかでおしまいだ。どうせそうなるんなら、どかんと大きくいった方がいいじゃないか。なあ、そうだろ? 人生ってのは一度きりだから賭けるもんなんだろ? そのチャンスが、想像もできないほど恵まれていないやつらには与えられるべきじゃないって、アンタ俺たちにそういうのかよ。

 車内。現場へと向かう途中。
 静かなエンジン音。最近は、静かすぎて逆に問題になったと聞いているが、これはどうなのだろう。
 外と違い、ここではあの焼けつくような暑さを感じることはない。へばりつく汗の感覚を好む人はそうそういないだろうけど、よってここは快適だ。
 現場。現場へと赴く。まだことは起きていない。だが、起きることはわかっている。間に合わないことも知っている。それを最小限に抑えるために。
「こういう連中が存在するから、因子絡みの不要な偏見や差別が消えんのだ」
 葦原 赤貴(CL2001019) は憤る。物騒なものいいではあるが、いつの世も人間が最も悪意高い生き物であるのは間違いない。悪意を持って共食いを行う生物など他に類を見ないのだ。
「半端に知能と社会知識がある分、妖より唾棄すべき存在だ」
 堅実と阿呆を取り違える輩は捨てるほど、いや、捨てたいほどありふれているのだから。
「んー……ネゴシエートするなら頭を悩ますところさね、人質が在るだけで難易度が跳ね上がるし」
 そも、理念も知識も共有していないもの同士が交渉する場に立つことなどないのだ。余計なものがあるものだと、緒形 逝(CL2000156) 。
「しっかし、まあ……邪魔だね。人質では無くてナントカの鐘って連中さね、目的の為にゴリ押しすれば解決出来ると思ってるのかね。巻き込まれた側にとってはどちらも、同じように写ってるだろうよ」
「どうしてこんな酷い事を……」
 納屋 タヱ子(CL2000019) には許せない。他社のものを不当に奪おうとする強盗という人種もそうだが、それと同じく自己理念を押し付ける連中も許すことができない。
「何で人の物を盗ろうとするんですか。何で人に自分の正義を押し付けるのですか」
 正義とはなんであるのか。側面とするものもいるだろう。絶対的なものなどないと。だが、正しさだけが理想を掲げる権利を持つのだ。
「弱者を切り捨てる騎士道なんて有り得ない!」
『星護の騎士』天堂・フィオナ(CL2001421) にとってもまた、今回の彼らは許してよいものではない。騎士を謳い、罰を掲げ、誅するというような。何を守っているのかをはき違えているような連中はとかく腹立たしい。拳を痛いほど握りしめる。だが、だがと自分を戒めるのだ。ここで思うまま暴力に訴えれば連中と同じであるのだから。だから、救うことを先とするのだ。
「なんつーかさぁ……アタシ、政治とか治安とかそーゆー難しい話はわかんないんだケドさー」
『燃焼系ギャル』国生 かりん(CL2001391) が思ったことを口にする。
「こんな街のド真ん中でヤクザみたいな組織三つが堂々と喧嘩してるって冷静に考えてみたらすげー無茶苦茶だよね。いくら神秘界隈が幅利かせてるからってケーサツとか何してんの?」
 誰だって、力を持っているわけではなく。それ故に理念もない。格差が蔓延るというのは、そういうことだ。
「……きっと、それぞれに帰りを待つ人がいるのでしょうから。人質の人たちを無事に、帰してあげられるといいのですれど」
 憤りよりも心配を。上月・里桜(CL2001274) の優しい心根がよく出ていると言えるだろう。
「それにしても……『ピエールの鐘』みたいな集団のいる近くで強盗するなんて『レッドアンソニー』もツキが無い、の、ですよね?」
 そう、そう。本当になんて運のない連中であるのだろう。
「奪い、信じ、願う・……此処では誰も彼もが自身の欲望を曝しあう」
 誰が何をどうしたのか。誰が何でどうであったのか。真実を翻してみれば、最早どこに信念があったのかも定かではないのかもしれない。そういう場所だ。そういう場所だ。そんなあやふさやさの坩堝を、八重霞 頼蔵(CL2000693) は笑う。
「まるで鬼が食い合う地獄の様だ。はは、面白い」
 本当に、どこで狂ったのか。
「僕の想い人は、隔者に大切な人を殺されました。私欲のために力を悪用する輩に、全てを奪われました。そんな奴等、許しておくわけには……」
『覚悟の事務員』田中 倖(CL2001407) は悔しげに言う。悔しげに、悔しげにそれらしく言う。
「っと、仕事に私情を差し挟むのは、あまり褒められた態度ではありませんね。つとめて冷静に、任務をこなしましょう」
 そういう風に見える。そういう風に、そういう風に見える。

●理想像
 産まれながらの差ってやつを突き付けておきながら、正義だ善行だというやつらはひでえもんさ。そうするしかなかったらどうするんだ。働けない。助けてくれない。金もない。自分が言ったことをよく考えなおしてみろ。善行を積むだけの生まれがなければ死んだ方がいいのかい。死んだ方がいいために俺たちは生まれてきたのかい。貧しくても清くなんていうやつは本当に貧しいのかい。

 銃声。それに続く轟音。始まった。事件が始まったのだ。足を急がせる。間に合わないはわかっていた。自分たちがどれだけ急いでも、先にことが始まるのは知っていた。それでも急く。気が、急く。
 間に合わぬという事実が、ただただ幼犬のように腕を引く。
 急げ、急げと腕を引く。

●形
 良心がないわけじゃない。ただ、自分が生きるために奪うしかないのなら、そうするしかないだけだ。抵抗はあったさ。だからいかれちまった。正義も、悪も、善行も、悪行も罪も罰も良心も自由も関係ねえんだ。生きるためだけにいかれちまうしかなかったのさ。なあアンタ……そうするしかなかったやつは、本当に悪なのか? アンタのいうそれは、本当に正義なのか。

 目的地への到着。突入に至る前に内部の確認へと行動を割いたことを、頼蔵は少しだけ後悔することになる。
 本当に、数瞬。内部構造と全体の配置確認。その程度のことだ。だが、それは―――発砲音。悲鳴。悲鳴―――幾人かの人質の生命が失われるに十分な時間だった。
 救えた命だっただろうか。石橋を飛び越えるべきではなかっただろうか。答えは出ない。事実が心にしこりを残すだけだ。
 何も言わず、目線だけで合図してフィオナを抱きかかえる。侵入。駆け抜けた。
 たった今『盾』を失った男に肉薄する。覆面越しの瞳だけでもわかる驚愕と混乱の色。突きつけられる散弾銃。走り抜けたばかりの自分に回避する手段はなく、散開発射された細かな粒が自分に突き刺さる。
 痛み。だが覚悟のうえだ。守るとは己の身を差し出すことだ。一方的に振りかざす正義とは示す意地が異なるのだ。
 男が次の人質に手を伸ばす前に斬りつける。
 暇を与えはしない。最早意志を示すのみ。さあ、そうと知れ。

 頼蔵に運んでもらったフィオナは、そのまま手近な覆面の男の前に飛び出した。自分の重量が運んでもらう負担になるのではないかと懸念していたが、室内程度の距離であれば致命的なハンディとなるほどではなかったようだ。
「私達が来たからにはもう大丈夫だ! 一般の方は私達の指示に従ってくれ!」
 言うはしたものの、まばらに散った人質。それに合わせるかのように配置された敵と敵。隠れる場所は少ない。移動させるよりも、隅で伏せている方がまだ安全であると言えた。
 視線と身振りだけで隠れているように指示を出す。信用されるかは不安であったが、誠実さを見せるほか手段はない。
 体内のエンジンを燃やす。焼けつくような高揚感が自分を高みへと引き上げる。金属音。倒れるような音。手の届かないところで、誰かが切られた。時間が失われていく間隔がもどかしい。
「覚悟しろ、騎士もどきめ! こいつらを倒したら、次は貴様達の番だ!」
 それでも立ち止まるわけには行かないのだ。

「その正義に……正しさも、義もありません」
 強烈な震撃。タヱ子の振り上げた足が地を踏みつけることで起きた振動。足元からくる衝撃は、たとえ人間大の何かを盾に構えたとしても何ができるわけではない。その攻撃にたたらを踏んだ覆面の男。その隙に拘束の緩んだ人質を奪い取ってみせた。
 ひとつ、悪い状況を上げるとすれば、戦闘が散開しているのだ。銀行強盗というのはスピード勝負だと聞いたことがある。迅速に制圧し、即急に金品を奪い、某かの介入が入る前に立ち去るのだ。
 であれば、強盗侵入時には一般業務をこなしていたであろう彼らがひとところに固まっているはずもない。
 難解な案件だと、臍を噛む。自分たちよりも多い人数を相手に、まばらに散った人質を守りながら。分かってはいたのだが、その事実に思考が途切れそうになる。
 だが、心根が勝利する。鎧の男を睨みつけ、啖呵を切った。
「頬を叩いても足りない気持ちですけれど……人を裁くのは人ではなく法です。貴方達を警察に引き渡します」

 抱えてきた仲間が人質を救い、敵と退治たことを確認し、逝は別の敵へと向き直る。敵の数はチームそれぞれが自分たちと同じか、少し上程度。であれば、人質を守るという前提上ツーマンセルで安全性を保っても居られないのだ。
「目的の為に関係無いものまで巻き込むような連中は、同類だと教えないとな。犠牲もクソも無いぞう」
 手近な敵へと視線を向ける。正面から切ることは躊躇われた。どれだけ自分の手足延長と言えるといえど、相手がひとを抱きかかえて盾にしているとなれば話は別だ。互いに動き合う戦闘のさなかに、それだけを避けて針穴に刃を通すような真似を試すつもりにはなれなかった。
 だが、浮き足立っているものは話が別だ。二度の乱入者。その事実が場を混乱させている。予言というアドバンテージによって稼いだ十数秒。バックアタックには成功している。
 よって、強盗の中でもただうろたえるような奴は容易に切り飛ばすことが出来た。

「殺してみろ。そいつは、あらゆる組織的社会的制限を無視し、殺す」
 と、宣言してはいるが、相手にそういう意図がないことを赤貴は理解していた。
 人質を盾にしているもの・人質を意に介さずそれの上から切り捨てるもの。そのどちらもが『人質を殺したい』わけではない。手段と行動を履き違えるのは狂人のすることだ。そして、こいつらは狂っていないからこそこの言葉には意味があった。
 威圧。気を違えた・螺子の外れた相手ではもとより通じぬそれ。耳に届くとわかっているからこその発言であった。
 効果はあった。少しでもひるめばいい。ようが、言うはろはだ。そうして僅かにでもたじろいだなら、肉薄する。盾の意味など無い距離までその身を螺子込ませる。撃たれた。切られた。痛みは覚悟している。
 覚悟していれば、それで気をやることもない。気をやることもなく、ひとりを斬り伏せることが出来た。
 返す刀を鎧の男に突きつける。
 次はお前だと、さあ、気を違えているかのように見せつけてやれ。

 あんな時代錯誤な鎧など着て、本当に暑そうだ。などと。炎を繰りながらかりんは考える。
 覆面の男たち、レッドアンソニーを倒してしまえば、戦況は途端に好転し始めた。元々、どちらにも率先して人質を害そうなどというつもりはない。それ故に、抱えている方を潰してしまえば、あとは彼らが巻き込まれないよう配慮して戦うことに戦況はシフトしていく。
 巻き込まれた銀行員とその客ら。負傷しているものも居る。死亡したものも、居る。どちらにせよ、戦闘を早く終了させ、しかるべき治療や措置を施さねばならない。
「別に他人救いたいなんて大層な思想なんてねーけど、目の前で無関係な人間が死なれちゃ寝覚め悪いしさ」
「悪党が、罰を受けろッ」
 どこまで思想が凝り固まっているのか。熱されながらもなお鈍器を振り回すそれを避けながら思う。
 引くつもりはないらしい。だから、その結末をどうするのか。その権利をどの側が持つのかが徐々に定められようとしていた。

 あまりにも重傷なものには応急の措置を施しつつ、里桜は動けそうな一般人から外に逃がしていく。それだけの余裕が、生まれつつあった。
 人間が減ったものだ、と。そう感じる。既に片方の組織が壊滅しているのだから、その通りではあるのだが。無論、レッドアンソニーを討伐したのは自分たちだけではない。ピエールの鐘もまた彼らを攻撃している。三つ巴というのはそういうものだ。だが同様に、レッドアンソニーや自分たちの攻撃を受け、鐘の彼らもまたその数を減らしていた。
 嫌な思想が、頭を過る。突入を遅らせていたら。もっと、そう、いっそ。片方が壊滅するまで待ってから突入していれば、どうなっていただろうか。
 自分たちの被害は少ないだろう。だが、その加虐にさらされて誰が最も窮するかは―――思考を閉じる。
 それによるメリット・デメリットを数えてはいけない。それこそ、この鎧の連中に通ずるものとなってしまう。
 逃げようとしている銀行員と目があった。無理にでも笑顔を作る。彼らを助けるために、そう決めたのなら。

 天秤にかけた時、どちらを優先するか。それが自分たちと彼ら『ピエールの鐘』との決定的な差であると倖は思う。
 巻き込まれた一般人。彼らを優先するからこそ、自分たちは火中に見を投げ出すことを敢えて選択した。彼らは、ただ悪を罰するという行為のみに酔いしれてその行動の意味を見出せては居なかった。それが決定的な差であるのだと、この状況につながっているのだと思えた。
 既に、『ピエールの鐘』はパーティ行動の要諦を為していない。最早どちらの勝利であるかは明確であるのだが、それでも彼らは諦めていないようだった。
 ただ自分たちを悪と呼び続けている。それだけで剣を振るっている。彼らが最初に決めた矛の先にはもう何者も立っていないというのに。
 何かが引っかかる。こうまで、人間というのはこうまで曖昧な目的だけで動けるものだろうか。それを複数で共有するなど可能なのだろうか。
 誰かが、彼らに教えたのだ。彼らにその思想を伝播させたのだ。
「お静かに、と言ったはずです」
 押さえつけながら、答えは出ない。

●いつか奇跡に出会うのか
 まあ、全部嘘なんだけどよ。

 斬り伏せたものは斬り伏せたもの。昏倒させられたものは法治国家の形式に則って。つまりは、そういうことになった。
 救急車。隊員。移送活動。怪我をした、生命を落としたひとを見ると、自分たちの行動は正しかったのだろうかと疑問が首をもたげてくる。
 その繰り返し。正義とは本来、それが側面という意味ではなく字面そのままの言葉として使用されるのなら。その繰り返しだ。いつだって、正しいかどうかを自分に問うていくのだ。
 それにしても、と。
 あまりにも、条件が整いすぎたシチュエーションで合ったと思う。
 まるで―――まるで、なんだ?
 了。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし



■あとがき■

信念のいきついた先




 
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