ハッピーハッピーデスメタルシンセサイザー
●おっさんミーツおっさん
例えば。
嗚呼、例えば。例えばときたものだ。
客観的に物事を見ようと思考を巡らせる時、例えば、で始まるのが自分の癖だ。
別にこれが誰かにとって迷惑のかかるどれそれというわけではないのだが、この思考を誰かに見せなければならないわけではないのだが、それでも何か自分がワンパターンのそれであるのだと自覚させられているようで悔しいではないか。
だからええと、何を考えていたんだっけ。
何を考えようとしていたんだっけ。
思考が止まる。空白。「 」。思い出せない。否、きっと取り留めのない、意味の意義の感じられない、そんな思考の遊びに過ぎなかったのだろう。
そう思おう、そう思ってしまおう。奇妙なしこりを心に残す必要などない。ただでさえ、日常にはストレスを感じているのだ。
口を開けばため息ばかり。幸せが逃げるのではない。幸せが入っていないから、ため息をついているのだ。そう反論する気力も失せる。
この感傷を、長続きした5月病のせいだと自分を律する。そうしなければ、自己管理すらままならない。
なんてことを―――
「なんてことを考えてたお兄さん。聞いてます? ねえお兄さん。聞いてますゥ?」
「あ……え? え?」
呆けた声が出た。我ながら阿呆のようなぽっかり顔で。目の前の自分を見つめている。
目の前の自分を見つめている。
そうだ、自分だ。自分が居た。
声をかけられて、肩を軽く叩かれた。「ねぇ、お兄さん」なんて気軽に。振り向いた。そうしたら、
自分が居た。
「え? じゃないですよぅ。ねえお兄さん、聞いてますゥ? こんなこと考えてたんでしょう? ねえ、ねえ、ねえ。当たってるか自信ないんですよぅ。答え合わせしたいんですよぅ。教えて下さいよぅ」
自分がまったく使いそうもない口調で、目の前の自分が言う。
こちらの思考をトレースして聞かせ、その成否を尋ねてくる。
なんだこれ。これは、あれか? 都市伝説でいうところの―――
「都市伝説でいうところの、ドッペルゲンガーっていうやつか? 見たら死ぬなんていう? 死ぬ? 死ぬ? え、なんだそれ。なんだこいつ。なんだこいつ―――ねえ、合ってました? 合ってました?」
にまにま顔で思考をトレースする自分。
「教えて下さいよぅ。ねえねえ、教えて下さいよぅ。知りたいんですよぅ。人間に興味があるんですよぅ。アナタに興味があるんですよぅ。もっともっと知りたァい。人間とお近づきになりたァい。ご趣味は? 好きな人いるゥ? たけのこ派きのこ派? 休日どんな過ごし方してるのォ? 食べたらどんな味がするのォ? 味見していい? 先っぽだけだから、先っぽだけだからァ! がァぶりんちょ!」
●この後無茶苦茶病院探した
「うっげー、げろげろげろげろ」
吐き気。嘔吐。胃の中ぐーるぐる。
「えーっとぉハイ。ヒトの味覚でヒト食べたらこうなるんですねハイ。勉強になりました。あれあれ? お兄さんだけ? それとも人類全部? 人喰いって言葉は人間以外にはつっかわないんだよねぇ? んー、これはまだ引き続き調査の必要がありそうですわよ博士。はいそうですね!」
あがるあがる。テンションが上がる。思わずその場で回転ぐーるぐる。
「お兄さん怪我してる!? 肩ロースちょっとお不味く頂かれてる!? 一体誰がこんなひどいことを……ミーですね、サーセン。バンドエイドで治ります? バンドエイドって商標名だったりします? マヨネーズと卵ソースの大人な違いみたいな? お兄さん聞いてますゥ? お兄さん? お兄さん? 気絶してます? ミーのスキンシップ、やりすぎ!? お兄さん! お兄さああああん! 誰かー! お客様の中にお医者様ァー!!」
●という夢を見たんだ
「という夢を見たんだ」
タイトル回収。しかし、なんだ夢か、とは言えないのがこの業界である。
予知夢の内容を説明する『悪夢見』双尾・紫(nCL2000115)の顔色はどことなしか、普段よりも快活だ。
比較的、まともな見目をした古妖であったというのが大きいだろう。
どうであれ、ヒト型で、誰も殺さず、残虐性もあらわではないのであれば。
「人間に興味があるっていうのは、嘘じゃないと思う。喜んで人間に害を与えてるようにも……うん、見えないし。だから―――」
だから今回は、委ねるのだという。
遠いところにいる隣人。言葉を交わし、害にならぬ内に関係を築くことも可能だろう。刃を交え、悪と定まらぬ内に関係を挫くことも可能だろう。
どちらでもよい。ただ、それが皆でまとまった意見であれば。
そういう風に、委ねられたのだ。
例えば。
嗚呼、例えば。例えばときたものだ。
客観的に物事を見ようと思考を巡らせる時、例えば、で始まるのが自分の癖だ。
別にこれが誰かにとって迷惑のかかるどれそれというわけではないのだが、この思考を誰かに見せなければならないわけではないのだが、それでも何か自分がワンパターンのそれであるのだと自覚させられているようで悔しいではないか。
だからええと、何を考えていたんだっけ。
何を考えようとしていたんだっけ。
思考が止まる。空白。「 」。思い出せない。否、きっと取り留めのない、意味の意義の感じられない、そんな思考の遊びに過ぎなかったのだろう。
そう思おう、そう思ってしまおう。奇妙なしこりを心に残す必要などない。ただでさえ、日常にはストレスを感じているのだ。
口を開けばため息ばかり。幸せが逃げるのではない。幸せが入っていないから、ため息をついているのだ。そう反論する気力も失せる。
この感傷を、長続きした5月病のせいだと自分を律する。そうしなければ、自己管理すらままならない。
なんてことを―――
「なんてことを考えてたお兄さん。聞いてます? ねえお兄さん。聞いてますゥ?」
「あ……え? え?」
呆けた声が出た。我ながら阿呆のようなぽっかり顔で。目の前の自分を見つめている。
目の前の自分を見つめている。
そうだ、自分だ。自分が居た。
声をかけられて、肩を軽く叩かれた。「ねぇ、お兄さん」なんて気軽に。振り向いた。そうしたら、
自分が居た。
「え? じゃないですよぅ。ねえお兄さん、聞いてますゥ? こんなこと考えてたんでしょう? ねえ、ねえ、ねえ。当たってるか自信ないんですよぅ。答え合わせしたいんですよぅ。教えて下さいよぅ」
自分がまったく使いそうもない口調で、目の前の自分が言う。
こちらの思考をトレースして聞かせ、その成否を尋ねてくる。
なんだこれ。これは、あれか? 都市伝説でいうところの―――
「都市伝説でいうところの、ドッペルゲンガーっていうやつか? 見たら死ぬなんていう? 死ぬ? 死ぬ? え、なんだそれ。なんだこいつ。なんだこいつ―――ねえ、合ってました? 合ってました?」
にまにま顔で思考をトレースする自分。
「教えて下さいよぅ。ねえねえ、教えて下さいよぅ。知りたいんですよぅ。人間に興味があるんですよぅ。アナタに興味があるんですよぅ。もっともっと知りたァい。人間とお近づきになりたァい。ご趣味は? 好きな人いるゥ? たけのこ派きのこ派? 休日どんな過ごし方してるのォ? 食べたらどんな味がするのォ? 味見していい? 先っぽだけだから、先っぽだけだからァ! がァぶりんちょ!」
●この後無茶苦茶病院探した
「うっげー、げろげろげろげろ」
吐き気。嘔吐。胃の中ぐーるぐる。
「えーっとぉハイ。ヒトの味覚でヒト食べたらこうなるんですねハイ。勉強になりました。あれあれ? お兄さんだけ? それとも人類全部? 人喰いって言葉は人間以外にはつっかわないんだよねぇ? んー、これはまだ引き続き調査の必要がありそうですわよ博士。はいそうですね!」
あがるあがる。テンションが上がる。思わずその場で回転ぐーるぐる。
「お兄さん怪我してる!? 肩ロースちょっとお不味く頂かれてる!? 一体誰がこんなひどいことを……ミーですね、サーセン。バンドエイドで治ります? バンドエイドって商標名だったりします? マヨネーズと卵ソースの大人な違いみたいな? お兄さん聞いてますゥ? お兄さん? お兄さん? 気絶してます? ミーのスキンシップ、やりすぎ!? お兄さん! お兄さああああん! 誰かー! お客様の中にお医者様ァー!!」
●という夢を見たんだ
「という夢を見たんだ」
タイトル回収。しかし、なんだ夢か、とは言えないのがこの業界である。
予知夢の内容を説明する『悪夢見』双尾・紫(nCL2000115)の顔色はどことなしか、普段よりも快活だ。
比較的、まともな見目をした古妖であったというのが大きいだろう。
どうであれ、ヒト型で、誰も殺さず、残虐性もあらわではないのであれば。
「人間に興味があるっていうのは、嘘じゃないと思う。喜んで人間に害を与えてるようにも……うん、見えないし。だから―――」
だから今回は、委ねるのだという。
遠いところにいる隣人。言葉を交わし、害にならぬ内に関係を築くことも可能だろう。刃を交え、悪と定まらぬ内に関係を挫くことも可能だろう。
どちらでもよい。ただ、それが皆でまとまった意見であれば。
そういう風に、委ねられたのだ。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.古妖により将来的に発生しうる危険性を取り除く。
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
皆様如何お過ごしでしょう、yakigoteです。
古妖が出現しました。
ひとに害を与える可能性はありますが、どうやら積極的に敵対する様子はなく、友好性を示しているようです。その方向性は変なベクトルを向いているようですが。
そこで、今回は依頼を受けた覚者達の意見に委ねられます。
敵対し、戦闘によって処理しても構いません。
対話し、歩み寄り関係を築いても構いません。
話せばこちらの言葉を聞いてコミュニケーションをとってくれるでしょう、攻撃すれば全力を持って抗ってくれるでしょう。
ただ、参加される皆様で方向性だけは一致させてください。
どっちつかずでは、どちらも叶いませんので。
【古妖】
ドッペルゲンガー(?)
・相手の姿そっくりに化け、思考をトレースできる。味覚等の刺激を受け取る感覚も真似することができるようだ。
・戦闘性能は未知数であるものの、その特性からスキルのコピーやステータスの読み取りも考えられる。また、化けた相手の行動は筒抜けになるだろう。
・夜間、あまり多くない人数を選んでいる可能性あり。好奇心と警戒心が見て取れる。
・レッツ異文化コミュニケーション。
ほんとはね、さいしょはね、ホラーを書いてたんだけどね。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
相談日数
6日
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/6
6/6
公開日
2016年06月27日
2016年06月27日
■メイン参加者 6人■

●心のドアを物理的に叩く
この世に生まれて。この世に生まれた。誰の胎からも生まれず。誰の卵からも産まれず。それでも、この世に生まれた。ひとりだ。そういうことを、ひとりだというんだと知った。
夜は涼しいのだけれど。そんな決まり文句も言えなくなってきた初夏のころ。
特に活動しているわけではなくとも、長時間屋外にいればそれだけで汗腺が仕事をしてくれる。身体中がべたついて、下着などはとうに張り付いてしまっている。不快指数というのは、こういう時に高まるものなのだろう。
さて、季節柄のそれに長々と耽っていてもせんはなく、ひとまずは職務の方へと心を傾けよう。滅却のそれである。
納屋 タヱ子(CL2000019)の目的はくだんのそれの保護である。敵意がないのであれば、一時的であれ組織側で匿う必要があるだろう。子供のようなものだ。悪い大人に会う前に何とかしなければならない。手ぶらのまま、指定された道を行く。武器を構えて私の話を聞いてくださいもないだろう。戦う日々が続くことと、だれかれ構わず刃物を向けるのは全く別のことだ。言葉で解決できるというのなら、まったくもってそれに越したことはないのだから。
「対話による平和的解決に賛成ッス! 武器はせせりさんに任せるッス!」
『猪突猛進』葛城 舞子(CL2001275) も含め、全員の意見が温厚な手段に落ち着いていた。良いことだ。どちらにせよ、部隊がひとところを向いている状況は望ましい。
「『ドッペルゲンガーを見たら死ぬ』って噂もあるッスが……ま、まぁなんとかなるッスよね!?」
そういった手法を選んだとはいえ、見知らぬ相手だ。一抹の不安は残っているようで。
「女は度胸ッス! 来る者拒まずッス!」
「友好的な古妖? おまけに人間に興味津々? やだ素敵!」
『調停者』九段 笹雪(CL2000517)はやや浮かれ気味だ。古妖。種々様々で時にはひととはるかかけ離れてもいる彼らであるが、彼女にとっては比較的好意的なものとして写っているようだ。それがまた、ひとを知りたいと公言しているのだから、喜びもひとしおであるのだろう。
「これで格好良かったりしたら最高だったんだけど、文句なんか言わない、言えないよ!」
いずれ、美丈夫のそれでも現れれば吉であるが。
「好奇心旺盛な古妖ねえ、しかも単独……珍しいさね」
緒形 逝(CL2000156)の言うように、ひとに対して純粋な興味を持って接してくるタイプはレアケースだと言える。古妖の大半はただそこにいるだけの存在か、はたまた明確な悪意を持って接してくる連中に集約される。
「ここ最近のは害意強いものばっかりだ。こういう方向性が少し違っても、友好的なのが居てくれるのは良いなあ」
レッツ異文化コミュニケーション。ひとですらかように異なるのだ。
対話とは素晴らしいと、『侵掠如火』坂上 懐良(CL2000523)。対話で物事が片付くのであれば、労力はともかく物資的な意味での損耗はない。その上で協力姿勢を組めるのなら争うよりも大きな効果を得られるだろう。
「倍々ゲームでウハウハ、ウィンウィンってやつだろ。百戦百勝は善の善なる者に非ずってな」
倍々ゲームはちょっと違う気もするけれど。
「ってわけで、まず人間を知る上で最重要な事柄を伝えよう。人間には、男と女があるってことを」
雌雄区別は人間だけの話ではない。
「世の中には悪い古妖もいれば良い古妖もいる。この古妖は人間社会における善悪がよく分かってないタイプだよね」
『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955) もまた、対話をすべきだと考える。古妖単体で見ればひとという文化を理解する必要はまるでない。しかし、こと人間それそのものに興味を示すというのであれば、相手方の事情も汲み取らねばならないだろう。郷に入ればなんとやら、ということだ。お互いに。
「それをちゃんと教えてあげれば悪い古妖にはならないと思う」
善悪とは主観によってのみ語られるものだ。今日の歴史書と数年前のそれとでは、大悪人が偉人であるとされる場合も少なくはない。
よって。よって言葉を交わしてみようではないか。切りかかるのはそれからでいい。肩を組むのはそれからでいい。
恐ろしく野蛮なことに、話が通じそうな奴はこの世界では貴重なのだから。
●ハローワールドドットコム
何よりもひとりでないものを知りたいと思った。君だ。君だよ。君のことだ。たくさんいる。どれも違うといいながら、皆同じだ。皆同じでありながら、どれも違うんだ。興味を持った。羨ましいとは思わなかったけれど。ごめん、今ちょっと嘘をついた。
夜の公園。
昼とは違う顔、というだけでそれなりの恐怖を感じるのは人間特有の感性だろうか。
ひとがいないという不安、暗くてよく見えないのだという恐れ、それらが心を掻き毟るのだろうか。
とんとんと、肩をたたかれた。仲間の誰かだろうかと、振り返る。
そこに自分の顔があった。
「まずは自己紹介ッス! 16歳ッス! 花も恥じらう女子高生ッス!!」
面食らう、とはこのことか。
自分の声を録音して聞いているかのような違和感。それでも、これが自分とまるで同じなのだと理解できる。
そいつは自分の声で、自分の顔で、まくし立てた。
「ね? こういうこと言おうとおもってたでショ? あってます? ねえねえ、あってますゥ?」
●僕は君たちが大好き
知りたいんだ。そのために言語を覚えたんだ。そのために君の真似をしているんだ。知りたい。知りたい。知識欲。それは愛情の副産物だ。僕はもう、君の虜になっている。
「趣味は古妖探し! 彼氏は絶賛募集中! ちなみにキノコ派ッス!」
「私の事探してたッスか? 単一種族ッス! 私もキノコ派ッス! 気が合うッスね!」
臆することなく。
臆することなく切り返した舞子に、古妖も待ってましたとばかりに切り返す。
仲間から見ても、立ち位置から推測出来るだけで混ざってしまえばどちらが彼女であるか検討もつかないだろう。
「とりあえず人間と仲良くなりたいなら、食べちゃダメッス! ちょっとだけも駄目ッス! 我慢ッス!! 食べられると痛いッスから! 最悪死んじゃうッス! あと純粋に自分を食べちゃう人と仲良くなろうとは思わないッス」
「マジッスか!? 人間、君を食べちゃいたいとか言うじゃないッスか。月9でアブノーマル流すとか進んでるッスね!」
「ドッペルさんのことも知りたいッス! 名前はあるッスか? どこから来たッスか? 普段は何してるッスか? コピーしてない時はどんな姿なんスか!?」
「名前はまだ秘密ッス! 定住してないんでなんとも言えないッス! 普段は人間観察してるッス! コピーしてない時は―――んふ、もう思い出せないですネー」
丁寧にお辞儀をして、自身の名と所属を伝え、タヱ子は自身の写し身へと握手を求めた。
知りたいと言っている以上、コピーは出来ても文化圏的な社会通念的な思考はコピー出来ないのではないかとの危惧もあったが、予想とは無縁に握り返してきた。
自身の左手を右手で握ったような奇妙な感覚。客観的に観る自分というのは、鏡とはまた違うものだった。
「私をコピーした時点でわかっている筈です。それは『私にはわからない』んです」
「ノンノンノーン。何時からとかどうでもいいザマショ? 今までのユーが知りたいんですよぅ。アタクシ興味シンッシンッ! 何が好き? 何が嫌い? 視力は? 血液型は? お風呂でどこから洗うタイプ?」
「私はそんな質問をしようとは思わない。それは、あなたがしたいと思った質問です。同じ体、同じ能力、同じ知識を持っていても……違います」
「オフコース。当然ですよぅ。コピーしてたって君を見たってこれまでが流れ込んできたって……わかんない。君が知りたい。ひとを知りたい。ラブ? これってラァブ?」
「…………喪った記憶も、コピーできるんですか? 思い出せない、過去も」
「俺はF.i.V.eの工藤奏空だよ……って思考読んでて知ってた?」
「知ってる……知ってるとはちょっと違うんですよねー。なんていうか伝えづらい。感覚的に伝わらない。心臓をジャイロ運動しながら右に動かすとか言っても人間伝わらないんですものー」
生物学的に異なるため、概念的な単位で伝わりにくいということだろう。少なくとも、奏空はそう受け止めた。
「君さ、思考が読めるんだったら、その人が傷ついた時に痛いっていう感情があるの分かるよね。その痛いっていう感情は、君もつらくない? だから、つらくなるような感情になる行為はしちゃ駄目なんだよ。そういう事をしなければきっと皆とも仲良くなれるよ」
「はへー、そんなもんスかあ。人間、難しいっスねえ」
「まだ一般的に妖と古妖の知識が足りないが為に悲しい出来事が起こっている。俺はそんな出来事に何度か立ち会って……そして思ったんだ。もっと妖と古妖の事を知らなくてはならないって。だから……君とも仲良くなっていろいろ君の事を聞きたいな」
「いやいや旦那、あいつら主食ニンゲンとかいますぜ。まあ、ミーは個人的には? 種族的には? 仲良くしたいですけどねえ」
そ、おっさんと話しをしよう。理解できなければさてどう話したものかオニーサン器用ですネー。一方的に、喚き立ててるのと変わらないからな。えっ、ミーと誰もお話してくれなかったのってそれが原因? 思考を読むんだか、同調してものまねだかそれで、何が知りたいかね? 答え合わせかな? ワタシーサイキンニンゲンカンケイデナヤンデテー(モザイクボイス)。だろう? んー、。似て非なるかんじー? オイシソウ。やばいのとまざってるぞ、こいつう( ´∀`)σ)д゚)。敵対する気は無いんだがアタクシもないざんすよぅ? ただ、お宅が人間に興味を持ってくれるのは、右と左で違う事考えてたらどうなるんだこうなりますネー。嬉しいけれどね……ちょっと接し方が怖いと思わオナカスイタヨヾ(゚д゚;) どうどう。昨今は色々と物騒だからねえ。突然噛みつく奴とか出ますからねえ。ブーメランだねえ。アハハ! れるやり方なんだ。マジすか!? 勉強になるわー。メモメモメモメ、メモメモメモメ。ここまで読んだか? もうばっちり!
書き起こす方は非常に疲れました。
書いてから思ったけどこれシーンとしてはどうなってんだろうね。
「まあ何だ、こっちも仲良くしたいから一緒にやろうという事だよ」
「女性をドッペルったら大ハッスルしよう! オレの事は、お兄さんではなく、お兄様、で呼ぶようによろしく頼む。付け加えるならば、上目づかいで、はにかむようにしながら、頬を軽く染めてるとベネ。してくれたらオレはお礼に精一杯のスキンシップをしよう。そっと抱きしめながら、ほっぺたすりすり、ちゅっちゅ。耳たぶ甘噛みはむはむ、体なでなでさわさわ。匂いもトーレスしてるのかクンカクンカ、後は味も見ておこうペロリとか考えてますぅ……? えっと、あの、出来たら合ってて欲しくないでゴザルよ僕は。ね、マジで? 思考トレースこれでいいの? ねえ! ねえ! ヒューマンどうなってんの!?」
懐良(非ドッペルゲンガー)と味方との距離が数歩分、遠ざかる。うわぁ。
「…………痛いのとか汚いのとか臭いのとか非常識なのはハッキリとノーと伝えよう。異文化コミュニケーションは、何がダメで何がイイのかを伝えることから始まるのさ」
「ミーは今、おにーさんが何がダメで何がイイのかわかってるのかがすっごく気になるよ? すっごく気になるよ?」
ハイテンションな古妖すら真顔にさせる男の勇姿はこちらでございます。
「誰か男の人呼んでくださァい!?」
「ヘーイ、そこの誰かもしくはあたし! ちょっと異種間交流してかない?」
「いいですねえ、素敵ですねえ、本日のお客様方はほんっと、積極的でいらっしゃいますわー」
笹雪の態度にも、古妖は嬉しげな反応を見せる。自分と同じ姿であろうと臆さないなんてのは、初めての経験なのだろう。
聞いていた以上に、矢継ぎ早と飛んでくる質問。質問。質問。ハイテンションは種族的な質か、それとも感情表現だけが彼だと言えるものだからだろうか。
答えていく。他愛もない話から、少し答えづらいものまで。興味は尽きない。同じ顔の二人は、同じように顔を輝かせて。
そういえば、と笹雪は切り出した。
こちらにもひとつ、質問があるのだと。
口にする。どうして、と。どうしてひとを好きなのだと。見た目も、しぐさも、思考でさえトレースできてしまうというのに。わかっているはずなのに。それとも、わかっていないのだろうか。興味は尽きない。だから質問する。同じように。
「なんで、なんで、なんで……? むっずかしいですねえ。なんで。なんででしたっけ? なんででしたっけ? ねえ、ミーってばどうして人間大好きなのぉ?」
質問に質問が帰ってきた。
思わず、満面の笑みを返す。
●ラヴロコモーティヴ
驚いた? ねえねえ、驚いた?
「オッケーざます! アタクシ、F.i.V.Eさんにおじゃましましょ」
あっさりというか、こうなると思ってたというか。一通りそれぞれと口を交わすと、満足したように古妖はそういった。
「さあさー、善は急げ悪は遅れ。あ、おみやげ持ってくんですよねこういう時。勉強してます。勉強してますよこれでもー。まだ冥時デパートあいてますかねー。つまらないものですがは逆に失礼なんですよネー」
鼻歌に、スキップ。昨今、アニメでも見ない浮かれようで、姿をコロコロ変えながら彼は行く。
自分本来の姿は忘れたと、言っていた。だからこうして、見ている誰かの姿で在り続けるのだろう。
誰も見ていなかったら、どんな姿をしているのだろう。気にはなったが、確かめようのないことだ。こういうのを、なんと言ったっけ。なんとかの猫。猫。思い出せない。なんという、名前だったか。
ああ、そうだ。そういえば、結局。
「名前? ああ、ミーのですね? ええはい――――――チェシャですよ?」
了。
この世に生まれて。この世に生まれた。誰の胎からも生まれず。誰の卵からも産まれず。それでも、この世に生まれた。ひとりだ。そういうことを、ひとりだというんだと知った。
夜は涼しいのだけれど。そんな決まり文句も言えなくなってきた初夏のころ。
特に活動しているわけではなくとも、長時間屋外にいればそれだけで汗腺が仕事をしてくれる。身体中がべたついて、下着などはとうに張り付いてしまっている。不快指数というのは、こういう時に高まるものなのだろう。
さて、季節柄のそれに長々と耽っていてもせんはなく、ひとまずは職務の方へと心を傾けよう。滅却のそれである。
納屋 タヱ子(CL2000019)の目的はくだんのそれの保護である。敵意がないのであれば、一時的であれ組織側で匿う必要があるだろう。子供のようなものだ。悪い大人に会う前に何とかしなければならない。手ぶらのまま、指定された道を行く。武器を構えて私の話を聞いてくださいもないだろう。戦う日々が続くことと、だれかれ構わず刃物を向けるのは全く別のことだ。言葉で解決できるというのなら、まったくもってそれに越したことはないのだから。
「対話による平和的解決に賛成ッス! 武器はせせりさんに任せるッス!」
『猪突猛進』葛城 舞子(CL2001275) も含め、全員の意見が温厚な手段に落ち着いていた。良いことだ。どちらにせよ、部隊がひとところを向いている状況は望ましい。
「『ドッペルゲンガーを見たら死ぬ』って噂もあるッスが……ま、まぁなんとかなるッスよね!?」
そういった手法を選んだとはいえ、見知らぬ相手だ。一抹の不安は残っているようで。
「女は度胸ッス! 来る者拒まずッス!」
「友好的な古妖? おまけに人間に興味津々? やだ素敵!」
『調停者』九段 笹雪(CL2000517)はやや浮かれ気味だ。古妖。種々様々で時にはひととはるかかけ離れてもいる彼らであるが、彼女にとっては比較的好意的なものとして写っているようだ。それがまた、ひとを知りたいと公言しているのだから、喜びもひとしおであるのだろう。
「これで格好良かったりしたら最高だったんだけど、文句なんか言わない、言えないよ!」
いずれ、美丈夫のそれでも現れれば吉であるが。
「好奇心旺盛な古妖ねえ、しかも単独……珍しいさね」
緒形 逝(CL2000156)の言うように、ひとに対して純粋な興味を持って接してくるタイプはレアケースだと言える。古妖の大半はただそこにいるだけの存在か、はたまた明確な悪意を持って接してくる連中に集約される。
「ここ最近のは害意強いものばっかりだ。こういう方向性が少し違っても、友好的なのが居てくれるのは良いなあ」
レッツ異文化コミュニケーション。ひとですらかように異なるのだ。
対話とは素晴らしいと、『侵掠如火』坂上 懐良(CL2000523)。対話で物事が片付くのであれば、労力はともかく物資的な意味での損耗はない。その上で協力姿勢を組めるのなら争うよりも大きな効果を得られるだろう。
「倍々ゲームでウハウハ、ウィンウィンってやつだろ。百戦百勝は善の善なる者に非ずってな」
倍々ゲームはちょっと違う気もするけれど。
「ってわけで、まず人間を知る上で最重要な事柄を伝えよう。人間には、男と女があるってことを」
雌雄区別は人間だけの話ではない。
「世の中には悪い古妖もいれば良い古妖もいる。この古妖は人間社会における善悪がよく分かってないタイプだよね」
『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955) もまた、対話をすべきだと考える。古妖単体で見ればひとという文化を理解する必要はまるでない。しかし、こと人間それそのものに興味を示すというのであれば、相手方の事情も汲み取らねばならないだろう。郷に入ればなんとやら、ということだ。お互いに。
「それをちゃんと教えてあげれば悪い古妖にはならないと思う」
善悪とは主観によってのみ語られるものだ。今日の歴史書と数年前のそれとでは、大悪人が偉人であるとされる場合も少なくはない。
よって。よって言葉を交わしてみようではないか。切りかかるのはそれからでいい。肩を組むのはそれからでいい。
恐ろしく野蛮なことに、話が通じそうな奴はこの世界では貴重なのだから。
●ハローワールドドットコム
何よりもひとりでないものを知りたいと思った。君だ。君だよ。君のことだ。たくさんいる。どれも違うといいながら、皆同じだ。皆同じでありながら、どれも違うんだ。興味を持った。羨ましいとは思わなかったけれど。ごめん、今ちょっと嘘をついた。
夜の公園。
昼とは違う顔、というだけでそれなりの恐怖を感じるのは人間特有の感性だろうか。
ひとがいないという不安、暗くてよく見えないのだという恐れ、それらが心を掻き毟るのだろうか。
とんとんと、肩をたたかれた。仲間の誰かだろうかと、振り返る。
そこに自分の顔があった。
「まずは自己紹介ッス! 16歳ッス! 花も恥じらう女子高生ッス!!」
面食らう、とはこのことか。
自分の声を録音して聞いているかのような違和感。それでも、これが自分とまるで同じなのだと理解できる。
そいつは自分の声で、自分の顔で、まくし立てた。
「ね? こういうこと言おうとおもってたでショ? あってます? ねえねえ、あってますゥ?」
●僕は君たちが大好き
知りたいんだ。そのために言語を覚えたんだ。そのために君の真似をしているんだ。知りたい。知りたい。知識欲。それは愛情の副産物だ。僕はもう、君の虜になっている。
「趣味は古妖探し! 彼氏は絶賛募集中! ちなみにキノコ派ッス!」
「私の事探してたッスか? 単一種族ッス! 私もキノコ派ッス! 気が合うッスね!」
臆することなく。
臆することなく切り返した舞子に、古妖も待ってましたとばかりに切り返す。
仲間から見ても、立ち位置から推測出来るだけで混ざってしまえばどちらが彼女であるか検討もつかないだろう。
「とりあえず人間と仲良くなりたいなら、食べちゃダメッス! ちょっとだけも駄目ッス! 我慢ッス!! 食べられると痛いッスから! 最悪死んじゃうッス! あと純粋に自分を食べちゃう人と仲良くなろうとは思わないッス」
「マジッスか!? 人間、君を食べちゃいたいとか言うじゃないッスか。月9でアブノーマル流すとか進んでるッスね!」
「ドッペルさんのことも知りたいッス! 名前はあるッスか? どこから来たッスか? 普段は何してるッスか? コピーしてない時はどんな姿なんスか!?」
「名前はまだ秘密ッス! 定住してないんでなんとも言えないッス! 普段は人間観察してるッス! コピーしてない時は―――んふ、もう思い出せないですネー」
丁寧にお辞儀をして、自身の名と所属を伝え、タヱ子は自身の写し身へと握手を求めた。
知りたいと言っている以上、コピーは出来ても文化圏的な社会通念的な思考はコピー出来ないのではないかとの危惧もあったが、予想とは無縁に握り返してきた。
自身の左手を右手で握ったような奇妙な感覚。客観的に観る自分というのは、鏡とはまた違うものだった。
「私をコピーした時点でわかっている筈です。それは『私にはわからない』んです」
「ノンノンノーン。何時からとかどうでもいいザマショ? 今までのユーが知りたいんですよぅ。アタクシ興味シンッシンッ! 何が好き? 何が嫌い? 視力は? 血液型は? お風呂でどこから洗うタイプ?」
「私はそんな質問をしようとは思わない。それは、あなたがしたいと思った質問です。同じ体、同じ能力、同じ知識を持っていても……違います」
「オフコース。当然ですよぅ。コピーしてたって君を見たってこれまでが流れ込んできたって……わかんない。君が知りたい。ひとを知りたい。ラブ? これってラァブ?」
「…………喪った記憶も、コピーできるんですか? 思い出せない、過去も」
「俺はF.i.V.eの工藤奏空だよ……って思考読んでて知ってた?」
「知ってる……知ってるとはちょっと違うんですよねー。なんていうか伝えづらい。感覚的に伝わらない。心臓をジャイロ運動しながら右に動かすとか言っても人間伝わらないんですものー」
生物学的に異なるため、概念的な単位で伝わりにくいということだろう。少なくとも、奏空はそう受け止めた。
「君さ、思考が読めるんだったら、その人が傷ついた時に痛いっていう感情があるの分かるよね。その痛いっていう感情は、君もつらくない? だから、つらくなるような感情になる行為はしちゃ駄目なんだよ。そういう事をしなければきっと皆とも仲良くなれるよ」
「はへー、そんなもんスかあ。人間、難しいっスねえ」
「まだ一般的に妖と古妖の知識が足りないが為に悲しい出来事が起こっている。俺はそんな出来事に何度か立ち会って……そして思ったんだ。もっと妖と古妖の事を知らなくてはならないって。だから……君とも仲良くなっていろいろ君の事を聞きたいな」
「いやいや旦那、あいつら主食ニンゲンとかいますぜ。まあ、ミーは個人的には? 種族的には? 仲良くしたいですけどねえ」
そ、おっさんと話しをしよう。理解できなければさてどう話したものかオニーサン器用ですネー。一方的に、喚き立ててるのと変わらないからな。えっ、ミーと誰もお話してくれなかったのってそれが原因? 思考を読むんだか、同調してものまねだかそれで、何が知りたいかね? 答え合わせかな? ワタシーサイキンニンゲンカンケイデナヤンデテー(モザイクボイス)。だろう? んー、。似て非なるかんじー? オイシソウ。やばいのとまざってるぞ、こいつう( ´∀`)σ)д゚)。敵対する気は無いんだがアタクシもないざんすよぅ? ただ、お宅が人間に興味を持ってくれるのは、右と左で違う事考えてたらどうなるんだこうなりますネー。嬉しいけれどね……ちょっと接し方が怖いと思わオナカスイタヨヾ(゚д゚;) どうどう。昨今は色々と物騒だからねえ。突然噛みつく奴とか出ますからねえ。ブーメランだねえ。アハハ! れるやり方なんだ。マジすか!? 勉強になるわー。メモメモメモメ、メモメモメモメ。ここまで読んだか? もうばっちり!
書き起こす方は非常に疲れました。
書いてから思ったけどこれシーンとしてはどうなってんだろうね。
「まあ何だ、こっちも仲良くしたいから一緒にやろうという事だよ」
「女性をドッペルったら大ハッスルしよう! オレの事は、お兄さんではなく、お兄様、で呼ぶようによろしく頼む。付け加えるならば、上目づかいで、はにかむようにしながら、頬を軽く染めてるとベネ。してくれたらオレはお礼に精一杯のスキンシップをしよう。そっと抱きしめながら、ほっぺたすりすり、ちゅっちゅ。耳たぶ甘噛みはむはむ、体なでなでさわさわ。匂いもトーレスしてるのかクンカクンカ、後は味も見ておこうペロリとか考えてますぅ……? えっと、あの、出来たら合ってて欲しくないでゴザルよ僕は。ね、マジで? 思考トレースこれでいいの? ねえ! ねえ! ヒューマンどうなってんの!?」
懐良(非ドッペルゲンガー)と味方との距離が数歩分、遠ざかる。うわぁ。
「…………痛いのとか汚いのとか臭いのとか非常識なのはハッキリとノーと伝えよう。異文化コミュニケーションは、何がダメで何がイイのかを伝えることから始まるのさ」
「ミーは今、おにーさんが何がダメで何がイイのかわかってるのかがすっごく気になるよ? すっごく気になるよ?」
ハイテンションな古妖すら真顔にさせる男の勇姿はこちらでございます。
「誰か男の人呼んでくださァい!?」
「ヘーイ、そこの誰かもしくはあたし! ちょっと異種間交流してかない?」
「いいですねえ、素敵ですねえ、本日のお客様方はほんっと、積極的でいらっしゃいますわー」
笹雪の態度にも、古妖は嬉しげな反応を見せる。自分と同じ姿であろうと臆さないなんてのは、初めての経験なのだろう。
聞いていた以上に、矢継ぎ早と飛んでくる質問。質問。質問。ハイテンションは種族的な質か、それとも感情表現だけが彼だと言えるものだからだろうか。
答えていく。他愛もない話から、少し答えづらいものまで。興味は尽きない。同じ顔の二人は、同じように顔を輝かせて。
そういえば、と笹雪は切り出した。
こちらにもひとつ、質問があるのだと。
口にする。どうして、と。どうしてひとを好きなのだと。見た目も、しぐさも、思考でさえトレースできてしまうというのに。わかっているはずなのに。それとも、わかっていないのだろうか。興味は尽きない。だから質問する。同じように。
「なんで、なんで、なんで……? むっずかしいですねえ。なんで。なんででしたっけ? なんででしたっけ? ねえ、ミーってばどうして人間大好きなのぉ?」
質問に質問が帰ってきた。
思わず、満面の笑みを返す。
●ラヴロコモーティヴ
驚いた? ねえねえ、驚いた?
「オッケーざます! アタクシ、F.i.V.Eさんにおじゃましましょ」
あっさりというか、こうなると思ってたというか。一通りそれぞれと口を交わすと、満足したように古妖はそういった。
「さあさー、善は急げ悪は遅れ。あ、おみやげ持ってくんですよねこういう時。勉強してます。勉強してますよこれでもー。まだ冥時デパートあいてますかねー。つまらないものですがは逆に失礼なんですよネー」
鼻歌に、スキップ。昨今、アニメでも見ない浮かれようで、姿をコロコロ変えながら彼は行く。
自分本来の姿は忘れたと、言っていた。だからこうして、見ている誰かの姿で在り続けるのだろう。
誰も見ていなかったら、どんな姿をしているのだろう。気にはなったが、確かめようのないことだ。こういうのを、なんと言ったっけ。なんとかの猫。猫。思い出せない。なんという、名前だったか。
ああ、そうだ。そういえば、結局。
「名前? ああ、ミーのですね? ええはい――――――チェシャですよ?」
了。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし

■あとがき■
変な脳内再生。
