お花見いいいいいいいいいいいいい!
●なんか渋い声のナレーションをご想像ください
世はお花見世紀末!
ゆとり世代の反抗によって飲みニュケーションは廃止され、自意識過剰な女子たちによって華は喪われていく。唯一の希望であった経費接待は経済社会の波にさらわれていった。
人々は桜の樹下でご飯を食べることも飲み交わすこともしなくなり、社会からはお花見の意味が喪失していく。
バブル世代のオッサンたちは悲しみにくれた!
それは永遠の宴会部長を名乗っていた桜の精とて例外ではない。
今こそ、21世紀お花見革命の時である!
立てよお花見民!
「おはなみいいいいいいいいいいいいいいいい!」
このまえ美味しい雑草を見つけたとはしゃいでいた文鳥 つらら(nCL2000051)は、目を輝かせて立ち上がった。
冬場はガチでつららを食べて生きていたような子だが、なんでかしらんが幸せそうなつららちゃんである。
「私しってます、綺麗なお花さんと一緒にご飯を食べて幸せな気持ちになる日ですね!」
「まあそんなところですね」
古妖『桜の精』が宿主の桜が枯れる前に一度でいいから賑やかな宴会をして欲しいと頼まれたことで、この依頼は発生した。
F.i.V.Eがお小遣いをくれるそうなので、色々用意してお花見を開こう!
世はお花見世紀末!
ゆとり世代の反抗によって飲みニュケーションは廃止され、自意識過剰な女子たちによって華は喪われていく。唯一の希望であった経費接待は経済社会の波にさらわれていった。
人々は桜の樹下でご飯を食べることも飲み交わすこともしなくなり、社会からはお花見の意味が喪失していく。
バブル世代のオッサンたちは悲しみにくれた!
それは永遠の宴会部長を名乗っていた桜の精とて例外ではない。
今こそ、21世紀お花見革命の時である!
立てよお花見民!
「おはなみいいいいいいいいいいいいいいいい!」
このまえ美味しい雑草を見つけたとはしゃいでいた文鳥 つらら(nCL2000051)は、目を輝かせて立ち上がった。
冬場はガチでつららを食べて生きていたような子だが、なんでかしらんが幸せそうなつららちゃんである。
「私しってます、綺麗なお花さんと一緒にご飯を食べて幸せな気持ちになる日ですね!」
「まあそんなところですね」
古妖『桜の精』が宿主の桜が枯れる前に一度でいいから賑やかな宴会をして欲しいと頼まれたことで、この依頼は発生した。
F.i.V.Eがお小遣いをくれるそうなので、色々用意してお花見を開こう!

■シナリオ詳細
■成功条件
1.おはなみいいいいいいいいいいいいいいいい!
2.おはなみいいいいいいいいいいいいいいいい!
3.おはにゃみゅいいいいいいいいいいいいいいいいい!
2.おはなみいいいいいいいいいいいいいいいい!
3.おはにゃみゅいいいいいいいいいいいいいいいいい!
依頼目的:桜の精(たぶんオッサンぽい見た目)をなぐさめる
●ほそく
・ご飯は食べられる分だけ用意しましょう。
『祭りの食料はその日の分だけ』が古来からのお約束だそうです。
・花見の場所とりは必要ありません。というか相当な穴場のようで誰もいません。
・桜は開花時期を無視してめっちゃ咲いています。精霊の粋な働きです。
●NPC
文鳥 つらら(nCL2000051)が同行します。
ご飯をおいしく食べる係です。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
相談日数
7日
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
9/9
9/9
公開日
2016年04月22日
2016年04月22日
■メイン参加者 9人■

●「はじまるざんすよ!(舞子)」「いくでがんす?(玲)」「フンガー!(リーネ)」「まともに始めようよ!?(蒼空)」
『猪突猛進』葛城 舞子(CL2001275)、覚醒状態の獅子神・玲(CL2001261)、『『恋路の守護者』』リーネ・ブルツェンスカ(CL2000862)は三人並んで一斉に踊り始めた。
「「ハイッ、あーいまーい……」」
「ストップストップ! まって、この状況まって!」
ヘッドスライディングで背景ごとかき消しにかかる『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)。
スライド跡のついた顔をあげ、カメラに振り返った。
「やめよ? 権利とか不安になるからこういうことやめよ?」
「ふぁいほうふへふほ」
「なんて?」
鮭フレーク入りのおいなりさん(超美味しそう)を一口で頬張った玲がなんか言った。
もぐもぐごっくん。
「だいじょうぶですよ」
「ここまでなら偶然の一致と言い張れるッスよ。ほらベートーベンも似たようなことしたでしょ?」
ワインの瓶をぶら下げたリーネが中身をラッパ飲みしながら世にも幸せそうな顔をした。
「ぷはあ。聞いたこと無いデスねそれ」
「出任せで言ったスからね」
こどもびーるをラッパ飲みして世にも幸せそうな顔をする舞子。
なんでこんな状況になっているのか?
それは……。
「この、おっさん自身にすら何書いてあるかわかんない『あみだくじ』のせいよ」
緒形 逝(CL2000156)が妙に頑丈なあみだくじボードを広げた。
ここまでのけーいをせつめいしよー。
桜の精をなぐさめるべく集結したふぁいぶの精鋭たちは、持ち寄ったご飯を食べて食べて飲んで食べてを繰り返していたが、これじゃあ絵がもたない。飯食ってるだけで絵になるのなんてどこの孤独なグルメだよって話なので、逝が取り出した『無茶ぶりあみだくじ』を始めたのだった。
ランダムで発生する無茶ぶりカードをあみだくじで指定した人に実行させるという悪魔のゲームである。もしくは闇のデュエルである。
以上、いいわけ完了。何が起こってもしらないゾ☆
というわけで現場はどうなっているかというと。
「うーっ!」
『二兎の救い手』明石 ミュエル(CL2000172)と『研究所職員』紅崎・誡女(CL2000750)が両肘を曲げて頭上に掲げるポーズをとった。
「にゃー!」
その両腕を勢いよく打ち出すように遠い空へダブルチョップする文鳥 つらら(nCL2000051)。
「……また似たような展開になってる!」
身を乗り出す奏空。
タブレットPCの動画を見ながらなんでか上手に(しかし真顔で)踊る誡女。
片手スワイプで携帯電話から合成音声を発した。
『私は歌えないので、歌は代わりにお願いしますね』
ワンテンポ遅く踊るミュエル。
「アタシも……えと、苦手……だから……」
一人だけ阿波踊りになっているつらら。
「わたし、音楽の成績1です!」
「全滅じゃん!」
「折角カラーリングがそろったのに残念ッスねえ……」
「訴えられなくてよかったと見るべきじゃ?」
一旦動画と音楽を止めると、誡女は『仕方ありませんね』とばかりに持参した御神酒(いわゆる日本酒)をおっさんにお酌し始めた。
「おーっとっと、すいませんねどうも」
精霊というより係長って呼んだ方がしっくりくるおっさんである。
一方でミュエルは舞子が持参したというチキンステーキにお箸をつけた。
これがどのくらいウマそうかについて語るとリプレイ三つ分くらい必要なので割愛したい。させて。
「桜の精さん。バブルって、どんな時代……だったの?」
「ああそれはね――(話が長いのでカットします)――だったんだよ」
「へえ……楽しそう。あと、チキンおいしい」
スッと背後に舞子がスライドインしてきた。
「ちなみにタレはお好み三種類。ノーマルタレ、ワサビマヨ、ガーリックマヨ!」
「おいしそ――いです!」
食べたいと思ったときには既にムシャっている玲。
その横ではつららがリスみたいにちまちま小刻みに囓っていた。
「なかなかの食べっぷり。いい友達になれそうな気がしまもむむむむむ」
「こちらこむむむむむ」
「お喋りは飲み込んでからデスヨ!」
メッとか言いながら二本指をビッと立ててウィンクするリーネ。
よく見ると、足下にひしゃげたカードが落ちていた。
よく見ると、『明日から称号を 要するにエッチな意味で初鰹 にする』と書いてあった。
文字数が足らんという理由で破壊された無茶降りカードである。
「そういえば、残り二枚はどうなってるんデショ?」
「それなら……」
天野 澄香(CL2000194)がカードを掲げた。
「こうなっておる」
『樹の娘』檜山 樹香(CL2000141)もカードを掲げた。
二人ともビキニアーマーを着ていた。
14~15才の着るビキニアーマーの背徳感たるや凄まじく、言い出しっぺの逝もそっぽむいてありもしない眼鏡を(ヘルメット越しに)ちゃきちゃきやるモーションでリアクションを誤魔化す始末だった。
スッと正座する澄香。
「おやつを買ってきたんですよ。お団子に、マカロンに、カップケーキ……」
バスケットを開いてお菓子を取り出す澄香に、奏空と舞子は冷静な顔をした。
「その格好で冷静に対応されると困るよね(視線のやりどころに)」
「確かに困るッスね(写真撮影が許されるのかどうかに)」
「ワシは柏餅と桜餅を」
同じように正座して重箱から和菓子を取り出す樹香。
またも同じく冷静な顔をする奏空と舞子。
この時点でしっちゃかめっちゃかなお花見会場ではあるが。
「そうだ。工藤ちゃんのカードをまだ見せてなかったぞう」
逝は酒瓶片手にカードを差し出した。
瓶にすぴりたすって書いてあったけど奏空はスルーしてカードを受け取った。
「へえ、なんだろう」
カードをめくる。
『桜おっさんのなぐさみものになる』
「仮プレに書いた奴だコレェ!」
奏空はカードを地面に叩き付けた。
と同時に澄香がどこからか持ってきたラジカセのスイッチをオン。
樹香がカメラのスイッチをオン。
「奏空がなにか催してくれるそうじゃ。はいミュージック、スタートじゃ」
●『丸投げされたときのリプレイのうた』
詞:いつもの人
歌:ふぁいう゛のみなさん
「アさあカメラが下からぐいっとパンしてOP画像がどーん!」
冒頭で心情を語ってみる。(車を運転している誡女と助手席で真剣に資料的なものを見るつららの絵)
同じ話題で会話をさせとく。(後部座席で窓の外とか見てるミュエルと奏空)
「んだココカラー!?」
登場人物の紹介パート。
依頼に対する意気込みとか、喋らせたげてね。(BUみたいなポーズをとる舞子と玲)
「「ほらバトルだよー」」
「「敵倒してるよー」」
とりあえずこうしておけばよくある依頼っぽいでしょ。(翼と両腕を広げて飛び立つ澄香。銃を構えてカメラ目線のリーネ)
「「ピンチってみたー」」
「「回復で盛り返してみたー」」
そうこうしてるうちに尺がなくなっちゃう。(膝立ちで片目を瞑ってにやりと笑う樹香。肩をすくめて余裕ぶってみせる逝)
「『かくして』後日談二行で語るから全員集合!」
なげっぱ!(全員一列になって全身イラストみたいなポーズをとる)
「もうやめてええええええ!」
奏空がヘッドスライディングで背景パネルを破壊した。
スライド跡のついた顔を上げる。
「色々不安になるからこういうネタやめよ!? どこから撃たれるかわかったもんじゃないよ!」
「でもダイスロールが外から見えない以上機械判定の戦闘ログ流されても納得できないよね」
「真面目に語れって言ってるわけじゃな――今言ったの誰!?」
「あとハタからは文字数を埋めるのに苦労してると思われてるけど、本当は削るのに苦労してるんだぞう、千単位でー」
「今度は誰が言っ……」
振り向くと、逝があぐらかいてすぴりたすがぶ飲みしていた。
スーツにフルフェイルヘルメットのまんまだし、アルコール度数は95って書いてあるし、もう何をどうしてるんだかわからなかった。
逝さんの肉体は毒や炎症に耐性があると思われるとよその判定に支障をきたすから、瓶の中身は水だってことにしてほしい。してくれ。
逝は手元の包みを開いて奏空に差し出した。
「スコーン食べる?」
「たべゆー」
ちなみに。
『なぐさみものになる』と言ってはいたが、桜の精(おっさん)が奏空でもってどうなぐさむのか分かんないので放置されていた。
ちなみに。
玲も痴女かってくらい油断した格好で『じぶんもなぐさみものになってあげましょう』とか言い出したので羽交い締めにした。
「何をする気じゃ!」
「抱っこしてよしよししようかと」
「……ならばよし」
拘束していた樹香が玲を解放すると、玲は桜の精を抱っこしてよしよしし始めた。
それを真顔で受け入れる桜の精。
今更だが、プレイングを音声合成ソフトに読み上げさせていたら桜の精を『さくらのタダシ』と読む暴挙に出たので、おっさんのことはサクラ・タダシ(52)という名前にした。
「タダシさん、元気を出すんです」
『綺麗な桜も咲いていることですしね』
誡女は正座して、シートの上に並んだ料理をせっせと取り分けていた。
言うタイミングが無かったので今言っておくが、魂使用のあれこれで人魚姫よろしく声を失った誡女は現在音声合成ソフトのお世話になっている。
食事中はお行儀悪いので手放しておく次第、らしい。この間の台詞は心の声やジェスチャーだと思って頂きたい。
「いましめさん、私あれ食べたいです! あのさくさくしたやつ!」
『スコーンですか? クッキーですか?』
「りょうほう!」
『はいはい』
取り分ける相手は主につらら。つららはどういう流れか誡女のお膝に座ってスコーンをさくさくしていた。
「うめえっ、うめえっ」
『それは何よりです』
「卵焼きも……どうかな。ちょっと、自信作」
ミュエルはお弁当箱を開いて、くるくるに巻いた卵焼きを差し出した。
目を伏せて、頬をぽっこり赤らめる。
「せいっ」
つまようじで卵焼きを取り出しす舞子。
一口で食べる。
至福。
この至福感を説明するには原稿用紙何枚必要かわかんないので、あえてこう表現させていただこう。
「うまいッス」
「……えへ」
首をちょっぴり傾げるミュエルである。
舞子的には自慢の鶏肉を披露し尽くしたところなので、あとは食べるほうに集中できるのだが。
「折角のお花見ッスからね、写真も沢山とりたいッス!」
「それなら、カメラを……」
デジカメを取り出すミュエルだが、どうにもタイマーの設定がわからんらしくてダイヤルをねじねじし続けていた。
「私が代わりに撮りましょう。いいアングルがあるんです」
ミュエルのカメラを借りて、澄香はぴょんとジャンプした。
ジャンプと同時に黒い翼を広げて羽ばたかせる。
一度ホバリングした彼女の身体は上昇気流でも受けたかのように舞い上がり、高く樹木の上へと至った。
「撮りますよー」
上空からの集合写真などそうとれるものではない。じどりぼーでも難しい。
澄香は一通り撮影してから、ゆっくりと羽ばたきながら着地した。
回り込んで確認画面を覗き込む樹香。
「いかがでしょう?」
「うむうむ、よくとれておる……けどお前様が写っておらぬの」
そう言われて、澄香はぱたぱたと手を振った。
「いえ、私は」
「そう言う者ほど後から思い出に浸りたくなるものじゃよ」
樹香がパチンと指を鳴らすと、舞子やリーネがしゅばっと回り込んで澄香を撮影しまくった。前後ろ斜め下。いわゆるなめ撮りである。
「イイヨイイヨー」
「デスヨデスヨー」
「な、なんだか照れますね……」
頬に手を当て、澄香ははにかんだ笑みを浮かべた。
「うむうむ」
そんな様子を満足げに眺める樹香。
ふと桜の木を見上げてみた。
「そういえば、今年はそこかしこで大変なことが起こったのう。花見どころではないといって、娯楽を放棄する者も少なくなかった筈じゃ」
「それがタダシさんの悲しみにつながっている……と?」
「かもしれぬ」
樹香はシートに座り直し、お茶を一口すすった。
「遊ぶ暇を無くして働けば、確かに苦しむ人々を早く救えるじゃろう。しかし、働き過ぎて身体や精神を病んでは共倒れじゃ。よく遊び、よく働く。せめてこうして作った時間だけでも、楽しんでいこう」
樹香の言葉に伴うように、誡女や玲たちも桜を見上げた。
「……けぷー」
そんな空気を破壊するリーネ。
ふと見ると、顔を真っ赤にしてうっとりしていた。
手にはワイン……ではなく『すぴりたす』が握られていた。
「逝さんそれ」
「おやいかん、目を離した隙に飲まれたさね」
水じゃないにしても結構なアルコール度数のようで、リーネは解き放たれし獣と化した。
具体的に言うと普段抑圧している本音をぶちまけた。
「うえーんリョージー! スキスキ大好きデスデスヨー!」
桜の木に抱きついてわっしわっしほおずりし始めるリーネ。
そんなもんにほおずりしたらほっぺたそげ落ちますよと思ったが、そこは覚者パワーなのか女子力なのか、木の皮のほうがそげていく。
どう手をつけたもんかと困る一行をよそに、リーネはぴたりと動きを止めた。
「ハッ、その女だれデスか……?」
「このコは幻覚でもみておるのかの」
リーネの持参したパンとチーズをもぐもぐする樹香。
「幸せな幻覚じゃなさそうですね」
同じくパンにチーズ挟んだものをもぐもぐする玲。
酔いが冷めるまで、リーネは暫く桜の木から離れなかった。
おだやかな時間というものは、不思議と時間感覚を忘れさせるものだ。
気づけば西にオレンジ色の夕日が滲んでいる。
「そろそろ、お開きでしょうか」
と、誡女は言った。
言ってから、はたと喉を押さえる。
再び何か言おうとしたが、うまく声は出なかった。声が戻ったのはほんの僅かのようだ。
もしやと桜の木を見上げると、サクラ・タダシ(52独身)はふわーっと空に浮かび上がっている。
『花見は疲れを癒やす年度の境。たとえ見知らぬ者であっても、桜の花を話題にして酒を飲み交わすことを許す日。重荷を一度捨て、新たな年度を迎える日である』
「おっさん……満足してくれたかな」
タダシさんはゆっくりと頷いた。
『また来年、来るといい。嵐に耐えて、花をつけようぞ』
「なんか最後だけ精霊みたいな口調できたッスね」
「ごちそうさまでした」
「なかなか楽しませて貰ったさね」
「来年も、楽しみ……」
「今度は新しいスイーツに挑戦しますね」
「うむ。和菓子とセットでの」
「ハッ、リョージがいない!?」
割と勝手に喋る逝たちをよそに、タダシさんはオレンジ色の空に消えていった。
ひときわ強い風が吹く。
桜の花びらが散って、空へと伸びた。
また来年も花は咲くだろう。
『猪突猛進』葛城 舞子(CL2001275)、覚醒状態の獅子神・玲(CL2001261)、『『恋路の守護者』』リーネ・ブルツェンスカ(CL2000862)は三人並んで一斉に踊り始めた。
「「ハイッ、あーいまーい……」」
「ストップストップ! まって、この状況まって!」
ヘッドスライディングで背景ごとかき消しにかかる『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)。
スライド跡のついた顔をあげ、カメラに振り返った。
「やめよ? 権利とか不安になるからこういうことやめよ?」
「ふぁいほうふへふほ」
「なんて?」
鮭フレーク入りのおいなりさん(超美味しそう)を一口で頬張った玲がなんか言った。
もぐもぐごっくん。
「だいじょうぶですよ」
「ここまでなら偶然の一致と言い張れるッスよ。ほらベートーベンも似たようなことしたでしょ?」
ワインの瓶をぶら下げたリーネが中身をラッパ飲みしながら世にも幸せそうな顔をした。
「ぷはあ。聞いたこと無いデスねそれ」
「出任せで言ったスからね」
こどもびーるをラッパ飲みして世にも幸せそうな顔をする舞子。
なんでこんな状況になっているのか?
それは……。
「この、おっさん自身にすら何書いてあるかわかんない『あみだくじ』のせいよ」
緒形 逝(CL2000156)が妙に頑丈なあみだくじボードを広げた。
ここまでのけーいをせつめいしよー。
桜の精をなぐさめるべく集結したふぁいぶの精鋭たちは、持ち寄ったご飯を食べて食べて飲んで食べてを繰り返していたが、これじゃあ絵がもたない。飯食ってるだけで絵になるのなんてどこの孤独なグルメだよって話なので、逝が取り出した『無茶ぶりあみだくじ』を始めたのだった。
ランダムで発生する無茶ぶりカードをあみだくじで指定した人に実行させるという悪魔のゲームである。もしくは闇のデュエルである。
以上、いいわけ完了。何が起こってもしらないゾ☆
というわけで現場はどうなっているかというと。
「うーっ!」
『二兎の救い手』明石 ミュエル(CL2000172)と『研究所職員』紅崎・誡女(CL2000750)が両肘を曲げて頭上に掲げるポーズをとった。
「にゃー!」
その両腕を勢いよく打ち出すように遠い空へダブルチョップする文鳥 つらら(nCL2000051)。
「……また似たような展開になってる!」
身を乗り出す奏空。
タブレットPCの動画を見ながらなんでか上手に(しかし真顔で)踊る誡女。
片手スワイプで携帯電話から合成音声を発した。
『私は歌えないので、歌は代わりにお願いしますね』
ワンテンポ遅く踊るミュエル。
「アタシも……えと、苦手……だから……」
一人だけ阿波踊りになっているつらら。
「わたし、音楽の成績1です!」
「全滅じゃん!」
「折角カラーリングがそろったのに残念ッスねえ……」
「訴えられなくてよかったと見るべきじゃ?」
一旦動画と音楽を止めると、誡女は『仕方ありませんね』とばかりに持参した御神酒(いわゆる日本酒)をおっさんにお酌し始めた。
「おーっとっと、すいませんねどうも」
精霊というより係長って呼んだ方がしっくりくるおっさんである。
一方でミュエルは舞子が持参したというチキンステーキにお箸をつけた。
これがどのくらいウマそうかについて語るとリプレイ三つ分くらい必要なので割愛したい。させて。
「桜の精さん。バブルって、どんな時代……だったの?」
「ああそれはね――(話が長いのでカットします)――だったんだよ」
「へえ……楽しそう。あと、チキンおいしい」
スッと背後に舞子がスライドインしてきた。
「ちなみにタレはお好み三種類。ノーマルタレ、ワサビマヨ、ガーリックマヨ!」
「おいしそ――いです!」
食べたいと思ったときには既にムシャっている玲。
その横ではつららがリスみたいにちまちま小刻みに囓っていた。
「なかなかの食べっぷり。いい友達になれそうな気がしまもむむむむむ」
「こちらこむむむむむ」
「お喋りは飲み込んでからデスヨ!」
メッとか言いながら二本指をビッと立ててウィンクするリーネ。
よく見ると、足下にひしゃげたカードが落ちていた。
よく見ると、『明日から称号を 要するにエッチな意味で初鰹 にする』と書いてあった。
文字数が足らんという理由で破壊された無茶降りカードである。
「そういえば、残り二枚はどうなってるんデショ?」
「それなら……」
天野 澄香(CL2000194)がカードを掲げた。
「こうなっておる」
『樹の娘』檜山 樹香(CL2000141)もカードを掲げた。
二人ともビキニアーマーを着ていた。
14~15才の着るビキニアーマーの背徳感たるや凄まじく、言い出しっぺの逝もそっぽむいてありもしない眼鏡を(ヘルメット越しに)ちゃきちゃきやるモーションでリアクションを誤魔化す始末だった。
スッと正座する澄香。
「おやつを買ってきたんですよ。お団子に、マカロンに、カップケーキ……」
バスケットを開いてお菓子を取り出す澄香に、奏空と舞子は冷静な顔をした。
「その格好で冷静に対応されると困るよね(視線のやりどころに)」
「確かに困るッスね(写真撮影が許されるのかどうかに)」
「ワシは柏餅と桜餅を」
同じように正座して重箱から和菓子を取り出す樹香。
またも同じく冷静な顔をする奏空と舞子。
この時点でしっちゃかめっちゃかなお花見会場ではあるが。
「そうだ。工藤ちゃんのカードをまだ見せてなかったぞう」
逝は酒瓶片手にカードを差し出した。
瓶にすぴりたすって書いてあったけど奏空はスルーしてカードを受け取った。
「へえ、なんだろう」
カードをめくる。
『桜おっさんのなぐさみものになる』
「仮プレに書いた奴だコレェ!」
奏空はカードを地面に叩き付けた。
と同時に澄香がどこからか持ってきたラジカセのスイッチをオン。
樹香がカメラのスイッチをオン。
「奏空がなにか催してくれるそうじゃ。はいミュージック、スタートじゃ」
●『丸投げされたときのリプレイのうた』
詞:いつもの人
歌:ふぁいう゛のみなさん
「アさあカメラが下からぐいっとパンしてOP画像がどーん!」
冒頭で心情を語ってみる。(車を運転している誡女と助手席で真剣に資料的なものを見るつららの絵)
同じ話題で会話をさせとく。(後部座席で窓の外とか見てるミュエルと奏空)
「んだココカラー!?」
登場人物の紹介パート。
依頼に対する意気込みとか、喋らせたげてね。(BUみたいなポーズをとる舞子と玲)
「「ほらバトルだよー」」
「「敵倒してるよー」」
とりあえずこうしておけばよくある依頼っぽいでしょ。(翼と両腕を広げて飛び立つ澄香。銃を構えてカメラ目線のリーネ)
「「ピンチってみたー」」
「「回復で盛り返してみたー」」
そうこうしてるうちに尺がなくなっちゃう。(膝立ちで片目を瞑ってにやりと笑う樹香。肩をすくめて余裕ぶってみせる逝)
「『かくして』後日談二行で語るから全員集合!」
なげっぱ!(全員一列になって全身イラストみたいなポーズをとる)
「もうやめてええええええ!」
奏空がヘッドスライディングで背景パネルを破壊した。
スライド跡のついた顔を上げる。
「色々不安になるからこういうネタやめよ!? どこから撃たれるかわかったもんじゃないよ!」
「でもダイスロールが外から見えない以上機械判定の戦闘ログ流されても納得できないよね」
「真面目に語れって言ってるわけじゃな――今言ったの誰!?」
「あとハタからは文字数を埋めるのに苦労してると思われてるけど、本当は削るのに苦労してるんだぞう、千単位でー」
「今度は誰が言っ……」
振り向くと、逝があぐらかいてすぴりたすがぶ飲みしていた。
スーツにフルフェイルヘルメットのまんまだし、アルコール度数は95って書いてあるし、もう何をどうしてるんだかわからなかった。
逝さんの肉体は毒や炎症に耐性があると思われるとよその判定に支障をきたすから、瓶の中身は水だってことにしてほしい。してくれ。
逝は手元の包みを開いて奏空に差し出した。
「スコーン食べる?」
「たべゆー」
ちなみに。
『なぐさみものになる』と言ってはいたが、桜の精(おっさん)が奏空でもってどうなぐさむのか分かんないので放置されていた。
ちなみに。
玲も痴女かってくらい油断した格好で『じぶんもなぐさみものになってあげましょう』とか言い出したので羽交い締めにした。
「何をする気じゃ!」
「抱っこしてよしよししようかと」
「……ならばよし」
拘束していた樹香が玲を解放すると、玲は桜の精を抱っこしてよしよしし始めた。
それを真顔で受け入れる桜の精。
今更だが、プレイングを音声合成ソフトに読み上げさせていたら桜の精を『さくらのタダシ』と読む暴挙に出たので、おっさんのことはサクラ・タダシ(52)という名前にした。
「タダシさん、元気を出すんです」
『綺麗な桜も咲いていることですしね』
誡女は正座して、シートの上に並んだ料理をせっせと取り分けていた。
言うタイミングが無かったので今言っておくが、魂使用のあれこれで人魚姫よろしく声を失った誡女は現在音声合成ソフトのお世話になっている。
食事中はお行儀悪いので手放しておく次第、らしい。この間の台詞は心の声やジェスチャーだと思って頂きたい。
「いましめさん、私あれ食べたいです! あのさくさくしたやつ!」
『スコーンですか? クッキーですか?』
「りょうほう!」
『はいはい』
取り分ける相手は主につらら。つららはどういう流れか誡女のお膝に座ってスコーンをさくさくしていた。
「うめえっ、うめえっ」
『それは何よりです』
「卵焼きも……どうかな。ちょっと、自信作」
ミュエルはお弁当箱を開いて、くるくるに巻いた卵焼きを差し出した。
目を伏せて、頬をぽっこり赤らめる。
「せいっ」
つまようじで卵焼きを取り出しす舞子。
一口で食べる。
至福。
この至福感を説明するには原稿用紙何枚必要かわかんないので、あえてこう表現させていただこう。
「うまいッス」
「……えへ」
首をちょっぴり傾げるミュエルである。
舞子的には自慢の鶏肉を披露し尽くしたところなので、あとは食べるほうに集中できるのだが。
「折角のお花見ッスからね、写真も沢山とりたいッス!」
「それなら、カメラを……」
デジカメを取り出すミュエルだが、どうにもタイマーの設定がわからんらしくてダイヤルをねじねじし続けていた。
「私が代わりに撮りましょう。いいアングルがあるんです」
ミュエルのカメラを借りて、澄香はぴょんとジャンプした。
ジャンプと同時に黒い翼を広げて羽ばたかせる。
一度ホバリングした彼女の身体は上昇気流でも受けたかのように舞い上がり、高く樹木の上へと至った。
「撮りますよー」
上空からの集合写真などそうとれるものではない。じどりぼーでも難しい。
澄香は一通り撮影してから、ゆっくりと羽ばたきながら着地した。
回り込んで確認画面を覗き込む樹香。
「いかがでしょう?」
「うむうむ、よくとれておる……けどお前様が写っておらぬの」
そう言われて、澄香はぱたぱたと手を振った。
「いえ、私は」
「そう言う者ほど後から思い出に浸りたくなるものじゃよ」
樹香がパチンと指を鳴らすと、舞子やリーネがしゅばっと回り込んで澄香を撮影しまくった。前後ろ斜め下。いわゆるなめ撮りである。
「イイヨイイヨー」
「デスヨデスヨー」
「な、なんだか照れますね……」
頬に手を当て、澄香ははにかんだ笑みを浮かべた。
「うむうむ」
そんな様子を満足げに眺める樹香。
ふと桜の木を見上げてみた。
「そういえば、今年はそこかしこで大変なことが起こったのう。花見どころではないといって、娯楽を放棄する者も少なくなかった筈じゃ」
「それがタダシさんの悲しみにつながっている……と?」
「かもしれぬ」
樹香はシートに座り直し、お茶を一口すすった。
「遊ぶ暇を無くして働けば、確かに苦しむ人々を早く救えるじゃろう。しかし、働き過ぎて身体や精神を病んでは共倒れじゃ。よく遊び、よく働く。せめてこうして作った時間だけでも、楽しんでいこう」
樹香の言葉に伴うように、誡女や玲たちも桜を見上げた。
「……けぷー」
そんな空気を破壊するリーネ。
ふと見ると、顔を真っ赤にしてうっとりしていた。
手にはワイン……ではなく『すぴりたす』が握られていた。
「逝さんそれ」
「おやいかん、目を離した隙に飲まれたさね」
水じゃないにしても結構なアルコール度数のようで、リーネは解き放たれし獣と化した。
具体的に言うと普段抑圧している本音をぶちまけた。
「うえーんリョージー! スキスキ大好きデスデスヨー!」
桜の木に抱きついてわっしわっしほおずりし始めるリーネ。
そんなもんにほおずりしたらほっぺたそげ落ちますよと思ったが、そこは覚者パワーなのか女子力なのか、木の皮のほうがそげていく。
どう手をつけたもんかと困る一行をよそに、リーネはぴたりと動きを止めた。
「ハッ、その女だれデスか……?」
「このコは幻覚でもみておるのかの」
リーネの持参したパンとチーズをもぐもぐする樹香。
「幸せな幻覚じゃなさそうですね」
同じくパンにチーズ挟んだものをもぐもぐする玲。
酔いが冷めるまで、リーネは暫く桜の木から離れなかった。
おだやかな時間というものは、不思議と時間感覚を忘れさせるものだ。
気づけば西にオレンジ色の夕日が滲んでいる。
「そろそろ、お開きでしょうか」
と、誡女は言った。
言ってから、はたと喉を押さえる。
再び何か言おうとしたが、うまく声は出なかった。声が戻ったのはほんの僅かのようだ。
もしやと桜の木を見上げると、サクラ・タダシ(52独身)はふわーっと空に浮かび上がっている。
『花見は疲れを癒やす年度の境。たとえ見知らぬ者であっても、桜の花を話題にして酒を飲み交わすことを許す日。重荷を一度捨て、新たな年度を迎える日である』
「おっさん……満足してくれたかな」
タダシさんはゆっくりと頷いた。
『また来年、来るといい。嵐に耐えて、花をつけようぞ』
「なんか最後だけ精霊みたいな口調できたッスね」
「ごちそうさまでした」
「なかなか楽しませて貰ったさね」
「来年も、楽しみ……」
「今度は新しいスイーツに挑戦しますね」
「うむ。和菓子とセットでの」
「ハッ、リョージがいない!?」
割と勝手に喋る逝たちをよそに、タダシさんはオレンジ色の空に消えていった。
ひときわ強い風が吹く。
桜の花びらが散って、空へと伸びた。
また来年も花は咲くだろう。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
『お花見写真』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:全員
カテゴリ:アクセサリ
取得者:全員
