憤怒の5×5
憤怒の5×5



 赦さねえ。
 俺の大事なモノを守れないのに何へらへら笑ってんだよ。
 なんで死ぬかなって普通爆発に巻き込まれれば全うな人間は死ぬんだよ。
 社会的害悪と普通の人の区別もつかない頭の中まで化け物だけ死ぬようにしてやるよ。
 ヒントだって書いてやってるんだ。
 だって俺は優しい良識的な。


「ビンゴはご存知ですか~?」
 久方 真由美(nCL2000003)は、念のため。と、手にしたビンゴカードをぴらぴらさせた。
 5×5マスに並べられた数。
 その数を縦横斜め、五つ並べて列を完成させる。
 宴会の余興でよくする奴。
「そんな理解で結構です~。怒りに任せて作られた爆弾を解除してきて下さい~」
 夢見は柔らかな笑顔を浮かべて、覚者たちを見ていた。
「皆さん方の良識とパズル能力が試されてます~」

 それは、とある公園に置き去られたものだという。
「ここ、最近まで野外現代アート展というのがあって、その中の一つに紛れ込まされたようなんですよね。爆弾に加工されておりまして――明日の午前中、爆発します。動かしても爆発します。結論から言うと~、ギミックをとかないと止まりません~」
 設置作業をしていても、展示物が変わったのだなと、誰も気にしなかったらしい。と、夢見は言う。
「憤怒者です。覚者の戦闘に巻き込まれて、近親者が亡くなっていますね。市街地で、遠距離全体攻撃を打ち込まれた結果です」
「まて。全体攻撃は、術者本人が認識していない人物には作用しないはずだ」
「はい~。そうですね~」
 真由美は、覚者の問いに頷いた。
「一般人に変装した敵味方本当の一般人入り乱れての大混戦で、術者は味方以外は全て敵とみなして吹き飛ばしました。そうしないと、仲間が死んでいたので――覚者の都合ですね~。普通の人には関係ないことです~」
 憤怒者の怒りはもっともだ。
 だが、それをまったく関係のない人に飛び火させる行為に是ということは出来ない。
「ギミックをとけば解除できるんだな?」
「出来るんですけど、その方法が通常の、一般の方のやり方では無理なんです。覚者を引きずり出すために、しくじれば爆散させられるように作られています。これは――」
 真由美は、一同の顔を見た。
「挑戦です。受けますか」
 否と思うなら、ここにはいない。


「5×5のマスに、それぞれオブジェがあります。オブジェの強度は一定ですね。これを『壊れたものを二度攻撃することなく、10回で全て破壊する』のが成功条件です」
 覚者たちは真顔だ。
「『遠距離全体である程度減った後、もう一発遠距離全体』した時点で失敗です。壊れたオブジェは避けて下さい。攻撃が外れたり、当たっても壊れなかったりということもありますから、使えるスキルの順番とか、打ち合わせが重要になりますねー」
 たくさん相談して、団結を深めてくださいね。と、夢見は言う。
「オブジェは動きませんので、当然回避はしませんし、攻撃して来ません。皆さんが被害をこうむるのは、皆さんが失敗した時です。参加していただける方によって変わってくるので、どこををどうするかは皆さんにお任せです~」
 それと、と、真由美は付け加えた。
「犯人ですが、すでに置き去られているので、今回は捕まえることは出来ません。ですが、爆弾を解除できれば、残ったものから解析して追跡が出来るかもしれません。爆発したら難しくなるでしょうが――」
 そこらへんもよろしくお願いしますね~。と、夢見は言った。


 子供たちの遊具で遊ぶ声が聞こえる大きな公園の芝生の上。
 
 白黒市松模様の盤の上、無力なポーンが身を寄せ合っているように見える。
『5×5・絨毯爆撃禁止』
 作品名が書かれたプレートがきらりと陽光を反射した。


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:田奈アガサ
■成功条件
1.爆弾「5×5」の爆発阻止
2.なし
3.なし
 田奈です。
 覚者の攻撃、じっくり見てみたい!
 壊れたところを更に攻撃すると、爆弾が爆発しますよ。
 相談、がんばって下さいね。

 憤怒者「善良な一般人」
 爆弾「5×5・絨毯爆撃禁止」
 *5メートル×5メートルの正方形が、1メートル×1メートルのマスで区切られ、25等分されています。
 *そこに高さ1.5メートルのオブジェが立っています。
  もっとも外周のオブジェが味方ガードし、他のオブジェは全力防御している状況です。
 *オブジェが壊れるまでは何度攻撃しても構いませんが、壊れたオブジェのマスが攻撃範囲に含まれてはいけません。
 爆弾が爆発して、失敗になります。
 *誰かが攻撃してから30秒以内という時間制限があります。
  戦闘開始前の集中は不可です。
 *オブジェはそれなりに固い素材です。
 *手番は、『10回』です。
  それをどう分散させるかは、相談で決めてください。
 *条件が満たされないと、30秒後(3戦闘ターン終了時点)に爆発します。遠距離全体攻撃に相当します。
  もうどうしてもだめなときは、逃げるのも一つの手段です。
  爆発した場合、手がかりは一切残りません。
 *手数をどのくらい残すかで、展開が変わってきます。

*場所:とある公園・芝生
 *時間帯は、人目をはばかる深夜になります。
  明かりは街灯くらいしかないので、遠距離から攻撃する予定の人は何らかの対策が必要です。
 *周囲は芝生なので、足元に不安はありません。動きを阻害するものはありません。
 *物音は気にする必要はありません。一般人の誰かが駆けつけてくるくらいの時間がかかったということは、失敗しているということです。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(2モルげっと♪)
相談日数
5日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/8
公開日
2015年09月03日

■メイン参加者 6人■

『ヒカリの導き手』
神祈 天光(CL2001118)
『天を翔ぶ雷霆の龍』
成瀬 翔(CL2000063)


 夜の公園は、湿った土と草の匂いがする。
 風は冷たい。
 少し離れた林から、ちょっとだけどきどきする。
 永遠の子供ではいられないけれども。
 
「一般市民も纏めて吹っ飛ばしちまった奴、そいつが一番悪ぃ!」
『わんぱく小僧』成瀬 翔(CL2000063)の理屈は単純明快だ。
「だから今回の犯人の気持ちはわかんねーでもねーけど、でも!」
 それは認めるわけにはいかない。
「んでも何だよ、これ!」
 雁首並べたオブジェが25。
 攻撃しなくては爆発し、攻撃したら30秒後にギミックをとかなくては爆発する。
 間違えても、爆発する。
「これ、へたしたら全然関係ねーやつまで巻きこまれるじゃんか!!」
 その通り。
 皮肉に満ち溢れたものだ。
 攻撃するべきもの、層ではないものを「区別して攻撃」できさえすれば、駆け出しでもどうにかできる爆弾。
「やってる事、自分がやられた事と同じだって気付けよ、ばっきゃろー!」
 常人なら、子供でもわかる理屈。
 それさえも苦い毒とわかっていて嚥下してしまうのが、憤怒者なのだ。
「動機についての考察はさておき、ただの憤怒者に、これほどに凝った仕掛けを作る事ができるのか。その辺りの背後関係が気になりますな」
 『教授』新田・成(CL2000538)、五年前に教え子会から赤いちゃんちゃんこと赤米酒を贈られた還暦おーばー。
 成は、個人にこれだけのものを作って運び込むのは難しいと考える。
 実際、ここには重機つきのトラックで持ち込まれたらしいし、組み立てには複数の人間が関わっていたと調べはついた。
 逆に言えば、それ以上は調べられなかった。
 今のは設営をたまたま見ていた公園の利用者からの立ち聞きだ。公園事務所には、公式記録はない。
 憤怒者は、組織だって動いている。
「くっそー、絶対に爆弾解除してやるっっ!!」
 それが、この連鎖を斬るための鉄槌の一つだ。


「我々が失敗しても、オブジェが安全に爆破処分されるだけです。気楽に行きましょう」
 成は、リラックス。と、進級試験並みに緊張した若者達に微笑みかけた。
「さてさて、奇怪な場でござるが……決まりごとが多くてよく解らぬで御座るなあ」
『直球勝負の田舎侍』神祈 天光(CL2001118)、見上げるばかりの長身、銀髪ポニテというか、ファンタジーなお侍さんだ。 劇団員といえば大分納得してもらえそうだが、実は裏方さんなのである。
「とにかく同じ的に攻撃をしなければ良いので御座るな」
 成は大きく頷いた。よくできました。
 こんな顔で頷かれたら、学生は次回から絶対予習していく。
「……どちらにせよ拙者、単体攻撃しか出来ぬゆえに皆が打ちもらした奴を一つ一つ削ることにするで御座るよ」
 成は、それでいいというように頷いた。
 こんな頷き方されたら、学生は今日の講義の復習もする。
「来たは良いけどやっぱりさっぱりわからんであるます」
 須臾城 花子(CL2001037)は、いっそ清々しかった。
 分かっていないことを明確に出来る子は、ギミックを要する現場において貴重である。
 一番困るのは、分かっていないのにわかった振りをする奴だ。
「幸い作戦行動出来る人数は集まったであるますし、皆なんか難しい事言ってるから多分大丈夫であるます」
 そんなことを言われて、奮起しない作戦立案部がいるだろうか。
「下手な事して爆発させてしまったら困るっすから、開き直って考えるのを止めるであるます! おらに出来る事をやるっす」
 良い兵卒は、大事なことだけ把握して、後の情報は頭に入れないものだ。
「問題がさっぱりわからなかろうが誰かがやらねば被害が出るだけっす!」

 赤祢 維摩(CL2000884)の装備一式の調整が作戦に間に合わないと本部から連絡が来たのはつい先ほどのことで、ささやかな困惑が辺りを浸した。
 竜型の使役守護が、唯摩のそばを離れない。
「要はうまくやればいい。向こうから攻撃してくることもない。爆発しなければ防具も要らない」
 唯摩は、研究の徒だ。
 彼が当初に立てた作戦では三手の余裕があった。
 それで調節すればいい。
「懐中電灯は大丈夫であるます! おらがちゃんと持ってきてるであるます!」
 花子は片手に二本づつの懐中電灯を持っていた。
 全て有効利用するには鉢巻で頭に巻くしかない。
「こちらにもございます。照らしますよ」
 成は、唯摩が見やすいように光の方向をオブジェに合わせる。
「知恵を貸してやるから精々役に立て、無様など許さん」
 花子は脳震盪を起こす勢いで頷いた。くらくらしたがヘッドバンキングではない。
「まず、一列目と五列目を俺と成瀬の召雷による列攻撃で破壊する。列攻撃での討ち漏らしは神祈と九鬼の単体攻撃で破壊する。次のターンでは2列目3列目。同じ手順の繰り返しだ」
 記号で書かれた5×5。
「端っこが隣接した味方をガードしている。列攻撃すると、一番目と五番目が隣の二番目と四番目をかばう。2番目と四番目は無傷で残る。同じ現象が、2、3、4列目で起きるから、列攻撃を5回すると、3個並びが二つ残る」
「味方ガードするから」
「そうだ」
 唯摩の説明が続く。
「3ターン目は、俺が4列目を片付け、残った3個に、成瀬と新田でそれぞれ貫通攻撃。仕切れなかった分を単体攻撃だ」
 口で説明されても分からないものは、壊れた部分でお日様の『日』の字になるようにすると言われて、ようやく合点がいった。
 とりあえず、意志の疎通は取れた。


 菊が、声を上げた。
「あ、ちょっとまって。うめにかぎわけるを使ってもらって、オブジェに憤怒者の手がかりがないか探してもらってもいいかな?」
 うめと呼ばれた守護使役は、犬型の幼体だ。
 この種の守護使役は、一定時間は本物の犬並みの――人間の数百万倍の――嗅覚を駆使することが出来る。
「もし、触ったら危なそうとかなら控えておこうと思うのですが――」
 それに関しては問題なさそうだった。
 スイッチは、あくまで攻撃だ。
「憤怒者の情報は手に入れておきたいからね。うめ、上手くやっておくれ。頼んだよ」
 白い守護使役は、縦横無尽にオブジェをかぎまわったが、要領を得ない様子で帰ってきた。
 痕跡を残さないようにしてはいる――その程度の知恵は回るらしい。

 かつて巫女の横に控えていた「自分」からささやかな助力。
天光が自分の出の準備をする間にオブジェには続けざまに二発の雷光が走る。
「よしっ!」
 将来有望な小学生の将来・23歳の姿は裏切らなかった。未来は明るい。 
 翔担当の五列目は全て消滅。
 唯摩の一列目は命中はしているが火力不足からか、左から二番目、中央、右端の三本が残っている。
 素手での術行使は効率が悪いのは否めない。
「右の角は壊します」
 菊は、鬼角と名づけられ、符で戒められた巨大な鎌を取り回すとオブジェの胴を薙ぐようにして破壊した。
「撤退だ。手番が足りない」
 唯摩が提示していた撤退条件に当てはまった。
「2つ並んでる余りっすね!」
 誰も止める手番はなかった。
「これで四つ目っす! 花子奥義閂通しでふたついっぺんに壊すっす」
 双のランスがどどんとオブジェを突き崩した。
 手番四つで、1列目と5列目全滅だ。
 ここで花子が動くのは予定外だが、手番的には予定通りだ。
「まずかったすか」
「いいえ。まだ諦めるには早い」
 時間は相談の暇も満足に与えてくれない。
 唯摩の二列目、翔の三列目。
 参列目の五個に雷降り注ぐ雷線のうち外側のオブジェに二本が落ちて沈黙する。
 中央のオブジェは沈黙している。
 三列目は完全に無傷の二本が残った。
 二列目の雷も、中央と外側に雷線が落ちる。
 真ん中のオブジェも不完全ながら残り、攻撃対象は三つ残った。
 その代わり、外周に関しては、残りは4列目の両端2個を残すのみだ。ガードするのはその二本だけだ。
「それでは、ここですな。間違っておりませんな」
 大道具さんがバミリ位置を間違うと、芝居が総崩れになるのだ。
「ここまではいい調子ですよ」
 集中している成が間違いないと背中を押す。
「しからば!」
 天光の刀が、二列目中央のオブジェに振り下ろされ、全員が頭に入れている形にまた一歩近づいた。
「残り手番は三つッス!」
 花子はちゃんと数えている。
 そろそろ出番と、成は仕込み杖の柄に手をかける。
「四列目!」
 両端と真ん中が破壊された。
 理想どおりのカタチが形成された。
「では、行きますよ! 全部倒れるといいんですけどね」
 すでに、手番に余裕はない。
「わかったであるます!」
「こっちも行くぜ!」
 まったく同じ技がまったく異なる得物から出る。
 空間を揺るがす弾が、オブジェを貫く。
 粉砕されたオブジェ。
 残ったものはなかった。


 作戦開始から30秒。
 ファンファーレ機能をつけるほどふざけた相手ではないらしい。それでも、爆音が轟くことはなかった。
 ギリギリだった。
 攻撃に慣れた翔が壊れやすいところに当てていなければ、あるいは茂の集中が途切れていたならば、作戦は失敗していたかもしれない。
 成は、杉玉と名づけられた竜系守護使役に灯りをともさせた。
「みなさん! 辺りをよく見てください!」
「え!?」
「よろしい。では、特別講義を始めましょう。――『攻撃を受けたら爆発』は兎も角、『破壊された後に攻撃を受けたら爆発』という仕組みは、機械的・電子的な仕掛けで実現できるとは考えづらい。壊れてしまいますからね」
 学生に講義するように老教授は周囲を見回しながら、推測を説明する。
「考えられる一つは、神秘による攻撃を検知する、神秘に関連したセンサーの類。これは、残骸を回収して解析すれば、製造元などを追うことができる物証になるかもしれません」
 少し時間はかかるかもしれないが、それは技術が解決してくれる。
「もう一つは、この現場を視認できる場所から手動で爆発をコントロールしているケース――つまり、犯人がこの辺りに潜伏している可能性があるということです」
「あちらで何か動き申した! 何かはわからねども!」
 天光の視界の隅、脅威の動体視力が動くものを捕らえた。
「急いで!」
「先に言ってほしいっすよぉ!」
 花子の韋駄天足はこういう時のためにある。
「申し訳ない。しかし、失礼ながら、隠し事は苦手のように見受けられましたので。不自然をかぎつけられて、逃げられても困りますし」
「ぐうの音も出ないっすー!! でもこの辺に猫とかいないっすよ、巻き添えになったらかわいそうなので追っ払ったであるます」
 律儀に返事しながら小さくなる花子の背を、老教授は一生懸命追いかけた。

 逃げる気満々で準備していたものを追いかけるには、それなりの準備が必要だ。
「オフロードバイク。複数いたね、ばらばらの方向に走っていった」
「公園にバイクの乗り入れは禁止でござるよ」
 爆弾を持ち込んでいる時点で、公園のルールを守るとは思えない。
 少なくとも、物証は押さえている。
 そして、敵は、個人ではなく複数人だ。


 戦闘から遠ざかれば、翔は少年に戻る。
 今が変化の特異点である成も、徐々に若返るようになるだろう。
 現の因子発動者特有の現象だ。
「問題になった一般市民が巻き込まれた事件について、聞けたら聞きてーな」
「大学の資料庫に手がかりがあるかもしれませんね」
 成の模範的な回答に、翔は頷いた。
「許しませんよ。命を手にかけようとした時点で、彼らの大切な人を殺した者と同類。何があったにせよ、悪は悪」
 菊は断罪する。
 だな。と、翔は頷く。悪いものは悪いと思う。
「だってさ、だけどさ。もしかしたら他人事じゃねーかもしれねーだろ」
 敵が――妖なら化けられるんじゃないか――同じようなことをしてきたら。
「そんな時はどうしたらいいのか、どうすれば敵味方一般市民の区別がつくのか、考えたいんだ」
 戦うことばかりがヒーローではない。と、翔は思う。
 何のために戦うかを考えなくてはならない。
「オレ、そんな頭よくねーけど、考えるのやめちゃいけねーと思うんだ」
 人の道を踏み外した憤怒者を糾弾するのは大事だ。
 理由があるから赦されることではない。
 それのどう向き合うかは、それぞれが考えるべきことだ。
「だってオレはヒーローになりてーんだから」
「僕もですよ」
 菊の言葉に、翔はぱちくりと大きく瞬きをした。
「僕は、僕の正義に順じます」


『犯……は、何故件の事件で同……が出……たとなげ……でし……』
 ひどいノイズだ。まともに聞こえない。
 実験してみたが、やはり無線はだめだ。
 
 ああ、その通り。
 逃走者はほくそ笑む。
 嘆きはした。もはや涙は枯れ果てた。
 胃の腑を焼く怒りは、今も続いている。
 
 ヒーローがどこにもいないなら、俺がヒーローになれないなら、作ればいいじゃないか。
 有象無象の覚者とか言う奴らの中からヒーローを。
 一般人のために泥水も貪り飲み、針の山も駆け登り、火口に身を投じるような。
 そんな物語の主人公みたいなのを作って、死ぬまで使い倒してやるのだ。
 この国の大多数の善良な一般人のために。
 そうとも、覚者にだっていい奴もいれば悪い奴もいるのだ。
 いい豆は鍋へ、悪い豆は。
 爆弾に吹き飛ばされて、死んでしまえ。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし




 
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