青女房の館
青女房の館



「……ここか」
 鉤山掃太は手にしたメモ用紙と目の前の建物を見比べて言った。掃太の前にあるのは二階建てのありふれた民家――だが、その家は見るからに荒れ果てていた。壁や天井は経年劣化で色褪せ、窓にはうっすらと埃が降り積り、中には割れているものもあった。空き家。それも早々に取り壊されるべき廃墟だ。しかし、いつまで経っても取り壊されない。そこで掃太に『仕事』が回ってきた。依頼人はこの土地の持ち主である不動産屋。そいつの話によれば――この館に『おかしなもの』が棲み着いているせいで、取り壊そうとしても悉く失敗するらしい。そこで――
「どんな化物だか知らねえが……斬り散らしてやるぜ」
 呟き、掃太は背中に差していたブロードソードを引き抜いた。同時にその四肢に異変が起こる。肌の質感がより滑らかになり、光沢とグラデーションが生まれる。――蜥蜴の肌に似ていた。獣の因子。辰の能力を持つ、獣憑の隔者。
 最後に、その腰から2メートル弱の尻尾が生え、地面を這った。
「行くぜ」
 呟き、掃太は剣を構えてその館に踏み込んだ――

「ようこそ。いらっしゃいませ」
「――!?」
 が、玄関を蹴破ったところで掃太は息を呑み、急制動をかけて止まった。――目の前、土間を越えた廊下の端に、一人の女が三つ指をついて頭を垂れている。女が顔を上げ、微笑む。――美人だった。病的なほどに白い肌と淡い色使いの和服に、黒々とした長髪と眉がよく映える。
「……」
 女に注意を払いつつ、屋内を見回す。――普通の家、だった。もっと言えば、小奇麗だ。壁といわず廊下といわずぴかぴかに磨き上げられ、まるで大掃除明けの新年一発目か、大事な大事な来客があるからと奥さんが――この女が?――大慌てで掃除したかのような、隙一つ無い美しさだった。
「……家を間違えたかな」
 微笑む女を置いて、掃太は一度玄関から表に出る。振り返る。――外見はやっぱり荒れ放題の廃墟だった。家の中だけが別世界だ。玄関の向こうで女が引き続き微笑んでいる。掃太は首を捻り、もう一度玄関を潜る。
「ようこそ。いらっしゃいませ」
「……この家を掃除したのは、お前か」
「はい」
 女は嬉しそうに笑う。毒気が抜かれる。掃太の戦闘意欲が削がれるのに比例して、四肢が人間の肌色を取り戻し、尻尾がしおしおと小さくなる。
「……なんで、家の外は掃除しないんだ」
「本当はしたいのですが……私は、家の外には出られないのです」
「何……?」
「さあさあ、汚いところですがどうぞ。お茶の準備が出来ております」
 女はそう言って掃太を誘う。掃太は剣を背に戻そうとして、やっぱり持ったまま靴を脱いだ。女と共に居間に入る。――そこには確かに、こたつの上にお茶の用意が出来ていた。上品な色合いの急須から、女が湯呑みに茶を注ぐ。玉露の香りが掃太の鼻をくすぐる。――掃太は日本茶が好きだった。
 無表情に鼻をひくつかせた掃太に、女の表情が急に曇った。
「ごめんなさい、あの――お食事のほうが良かったですか? すぐにお作りしますから――」
 すまなそうな女の言葉に、掃太は思わず「茶でいい」と言ってしまった。


「……というわけで、今回は誰かが死ぬとか危ないとか、そういうテンションじゃないんだな、これが」
 予知夢の内容を説明した久方相馬(nCL2000004)は、最後にそう言って締めくくった。
「――で、その女は何者なんだ」
「よくぞ訊いてくれました。それが今回の問題の一つさ」
 言って、相馬は説明を始める。「古妖・青女房。女房ってのは昔の女官のことで、青女房は若くて官位の低い女官が妖怪化したものなんだと。荒れた廃墟なんかに棲みついて、化粧とか掃除をしながら誰かが来るのを待っている――という、はっきり言うと、特に害の無い妖怪だ。たぶん以前取り壊しに来た連中は、この青女房にほだされて工事する気が失せたんだろう。今回の隔者《リジェクター》、鉤山掃太も同じ状況になりつつある」
「それで、私達は何をすれば?」
「掃太は《F.i.V.E.》とは無関係に、法外な報酬で妖関係の仕事を請け負ってる隔者だ。しかもその解決方法は、基本的に力任せにぶった斬るのみ。青女房も同じ結果になる可能性は充分にある。それを防いで欲しいのが一つ。掃太にヤバい仕事自体から手を引かせられれば最善かな。――ただ、それとは別にもう一つ問題がある」
 問題? と覚者の一人に訊き返され、相馬は頷く。
「その家は取り壊し対象なんだ。だから一番都合がいい解決は、『青女房を説得して立ち退かせる』ことなんだ。『人間にとって』都合がいい、ってことだけどな」
 相馬の言葉に、覚者達は考え込む。「まあ、お前らの好きにしていいよ」
「とりあえず死人が出なけりゃオッケーだ。人間にしろ古妖にしろ、な。その上でどうするかはお前らで決めてくれ。立ち退かせろとは言わないよ。そもそも不動産屋の迷惑なんて、俺達には関係無い話さ」
 そういうわけで、つつがなく頼むぜ、と相馬は話を締めくくった。


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:鳥海きりう
■成功条件
1.青女房の生存
2.なし
3.なし
 皆様こんにちは。鳥海きりうです。よろしくお願いします。
 古妖・青女房の館を訪ねる訪問シナリオです。青女房の生存が成功条件であり、それ以外の要素は成否判定に影響しません。


 敵? 及びサブキャラクターのご紹介です。

・鉤山掃太(かぎやま・そうた)
 辰(トカゲ)の能力を持つ、獣憑の隔者。得物は大型のブロードソード。

・青女房
 古妖。殺る気が削がれるヒーリングスマイルが最大の武器。


 基本的には戦わなくてもクリア可能です。交渉及び説得が攻略のメインとなるでしょう。
 戦う場合、掃太はトカゲの素早い身のこなしと強大なブロードソードが特長となります。身のこなしは素早いですが、攻撃速度は決して速くありません。これを踏まえた作戦を立てるべきでしょう。


 簡単ですが、説明は以上です。
 皆様のご参加を心よりお待ちしております。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(1モルげっと♪)
相談日数
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/6
公開日
2016年02月16日

■メイン参加者 6人■



「お邪魔します」
 掃太がこたつで茶を飲んでいると、ノックの音と共に玄関先で少女の声が響いた。
「あら。今日は千客万来ですね」
 青女房が笑顔でそう言い、こたつを立って玄関に向かう。「――おい、待て。迂闊に出るな」掃太も茶を置き、剣を取って後を追う。
「ようこそ。いらっしゃいませ」
「お邪魔しまあす。どうも、美人さん。お茶もイイけど、酒はないの?」
 四月一日四月二日(CL2000588)がそう挨拶する。訪問者は六人の覚者《トゥルーサー》だった。掃太は反射的に剣を構える。
「何者だ、お前ら――?」
「《F.i.V.E.》から来た覚者です。私は納屋タヱ子と言います」
 納屋タヱ子(CL2000019)が自己紹介し、掃太は眉根を寄せる。「――どうなってんだ。あの不動産屋、俺以外にも声をかけたのか――?」
「いいえ。貴方の仕事を横取りする気はありません」
 七海灯(CL2000579)がそう言い、タヱ子が続けて口を開く。「私達は《F.i.V.E.》本部で、古妖が廃屋にいて取り壊しができずに困っている人がいると聞いてやって来ました。不動産屋さんとかから金銭の絡む依頼を受けたわけではありません」
「……俺の仕事の邪魔をするなら同じことだ。何が目的だ?」
「邪魔をしに来たつもりはありません。目的はほとんど同じです。ですが、私達はことを穏便に済ませたいので、話し合いで解決を試みたいんです。
 古妖を立ち退かせるという意味で、私達の利害は一致しています。私達の仕事が成功すれば、貴方はそれを依頼主に報告して、労せずして報酬を受け取ることも出来ます」
「……」
 掃太は目を丸くし、少し考え、――やがて、剣を納めた。「成程」
「言いたいことは分かった。それが本当なら、確かに悪い話じゃない。――だが、もし嘘だったら、相応の覚悟はしてもらうぜ」
「必要無いと思います。嘘じゃないので」
「ふん」
「あ、あの!」
 鼻を鳴らした掃太の前に、阿久津ほのか(CL2001276)が進み出る。「な、何だよ」
「青女房さんも、人に迷惑をかけたくてここにいるわけじゃないはずなんです! 殺してはいけない人なんです! だから、せめて理由が分かるまで待ってください! お願いします!」
 言って、ほのかは頭を下げる。掃太は言葉に詰まり、「――好きにしろよ」踵を返して歩き去った。――茶を飲みに戻ったらしい。「あ、あの」玄関に跪いていた青女房が、不安げな顔でタヱ子を見上げる。
「た、立ち退きと、仰いましたか――?」
「あ……」
「ちょっと待ったあああ!」
「「きゃ!?」」
 タヱ子と青女房の間に、十禅師・天空(CL2001311)が割って入った。青女房の細い両手をがしっと握る。「お美しい嬢ちゃん、どうかおじさんの為に毎日ご飯とお茶を作ってくれないか? ……ぶっちゃけ、養ってください、お願いします」
「は? え――え?」
「おじさん癒し系でいかにも尽くしてくれる女性って好きよ? 古妖とか関係ない。ぜひおじさんを養ってもらが」
「気にしないでください」
 言い募る天空の口を上月・里桜(CL2001274)が塞ぎ、後ろへ押しやる。「納屋さんも言ってましたけど、私達はお話に来たんです。ご説明しますから、お邪魔させてもらえませんか?」
「あ、ええ――」
「あと、いきなり大勢でお邪魔するのでと思って、これ、つまらないものですが――」
 言いながら、里桜は持ってきた菓子折りを差し出す。
「季節に合うものがいいかと思って、2月限定のみたらし餅を選んでみました。お口に合うか分かりませんが、ご笑納ください」
「……まあああ! それはわざわざご丁寧に! お茶に合いそう! ささ、どうぞお上がりください! すぐに支度いたしますから!」
 言って、青女房は飛ぶように居間に戻っていった。「……上がっていいんでしょうか」「いいんじゃねえの? それより酒無えのかな、酒」「では。失礼します」「掃太さん、分かってくれたかな……」「ふう。持ってきてよかったみたいですね」「……限定品って、季節ものに入るのかな」


 青女房がお茶とみたらし餅を手際良く全員に配り、勧められるまま覚者達は居間のこたつに座った。ずずず、とお茶を啜り、タヱ子が口を開く。「……貴女は、人間ではありませんよね?」
「……ええ。その通りです」
「この家は人が住んでいないから、取り壊されなければならないんです。――ごめんなさい。勝手な都合でこんなことを言いに来て」
「……」
「……キミが、この家から出られないのは知ってる。よかったら、その理由を教えてくれないか? 具体的には、キミはこの家の何を依代としてるんだ?」
 出してもらったウイスキーを片手にエイジが問う。スモーキーフレーバーが意外と甘味に合う。エイジの問いに、青女房は目を伏せて頭を振った。「依代とか、そういう難しいことは分かりません……ただ、この家は居心地がいいから、出たくないだけで……」
「キミが昔女官だったことも分かってる。たとえば――前の家主とか、かつての主との約束を守ってるとかなら、俺たちが新たな雇い主になって、転勤をお願いする……っていうのはどうかな。
こんなボロ家――失礼。古い家をたった一人でめげずに守り続けてたんだ。部下としては、最高に信頼できる相手だろ? 俺たちの信頼を、キミに預かって欲しいんだけど……どうかな」
 エイジの言葉に、青女房はふっと窓外に目を向ける。「……遠い遠い、昔のことです。乙返していた方の館が焼き討ちに遭い、それからは長い間、諸所を転々としてきました。……ですから、こういうお話も、正直初めてではありません」
「(……焼き討ちから逃げ延びた?)」
「(あるいは……そこで死んで、古妖となったか)」
「――え? ちょっと待ってください」
 灯が声を上げ、全員が振り返る。「初めてではないということは、その――前にもこういうことがあって、追い出されたということですよね。ということは――移動は、出来るのですか?」
 あ、と覚者達が声を上げ、青女房を振り返る。青女房は頷く。「ものすごく面倒くさいですが、出ることは出来ます。ただ、外に出るとどうも体調がそぐわなくて……その分、家の中にいるとよく動けるのですが」
「面倒くさい……ま、まあいいです。それと気になっていたんですが、青女房さんは外に出れない筈なのに、どうしてお茶や食事が用意できるんでしょう?」
 灯の問いに、青女房は両手でガッツポーズを作る。
「妖力で。」
「」
「昔はお化粧品を出す程度だったのですが、今はお家で使うものなら、見たことがあればある程度なんでも出せるようになりました。趣味はTVショッピングで見たものを出す練習です。最高記録はそこの、50インチのプラズマですね」
 言われて、覚者達は居間の端にある、やけにでかいテレビを振り返った。「素ん晴らしい!」天空が叫んだ。
「ということは、嬢ちゃんと一緒なら生活には困らないということじゃないか! ますますもって気に入った! ぜひとも俺の嫁さんに! いやむしろダーリンに!」
「え? え、ええと――」
「――まあ、それはそれとして。嬢ちゃんはどうしたい?」
 急にトーンを落とし、天空が訊いた。「可能なら引っ越してもいいのだろうか、それともあくまでこの場で意地でも留まるのか……あんたの欲望はどっちだ? 俺は嬢ちゃんの意思――その欲望を尊重しよう」
 天空の言葉に、青女房は俯く。「それは、出来ることならここにいたいですが……またこういうことが起こるのなら、同じことです。安住できる場所があれば、そこが一番だと思います」
「それについては俺に一案がある。本気で望むなら、手ぇ貸すぜ」
「――もしくは、こことは別に、安住を保証できる場所があります」
 灯の言葉に、青女房は振り返る。「私達は古妖と人間の共存を目指して廃村を復興する活動しています。今はまだ少しの人しか暮らしていませんが、復興が進めばきっとかつての村人が帰ってきますし、新しい住人も増えていきます。村に人がやって来た時、帰って来た時、青女房さんのような方に「おかえりなさい」って、迎えていただけたら最高なのですが……」
「……」
「来ていただけるのでしたら出来る限りの便宜は尽くします。どうか私たちの村へ来ていただけないでしょうか?」
「……」
 青女房は俯き、思案しているようだった。覚者達は急かさなかった。すぐに決められることではない。悩むのも当然だ。ゆっくりと、彼女が結論を出すのを待とう。――お茶も美味いし。


 青女房の対応を覚者達に任せ、掃太は縁側で茶を飲んでいた。晩冬の陽射しがほどよく当たって暖かい。
「あの~……」
 隣にほのかが座った。掃太は胡乱げに横目で見る。「……何だよ」
「初めて会ったばかりでこんな事を訊くのもなんですが……危険なお仕事をしている理由を訊いてもいいですか? 何というか、あなたは根っからの悪い人じゃないみたいだし、もったいないなぁと思いまして……」
 掃太は視線を正面に戻し、みたらし餅を口に投げ込む。――無言。「な、何か物入りでそういうお仕事をしてるのかもしれませんが、もしよければFiVEでお仕事をするのはどうでしょう? ――よ、余計なお世話だったらごめんなさい」
「……こういう仕事をしてるのは、成り行きだ。他にどうしようもなかった。それを責められても困る」
「せ、責めてるわけでは――だ、だったら」
「FiVEか。考えておく。――だが、イマイチ胡散臭い」
「う、胡散臭い?」
「そいつらの存在を知ってれば俺の生き方も変わったかもしれない。でも実際は違う。あいつらがお天道様の下に出てきたのはつい最近だ。それまでは隠れてお前らみたいな異能者を囲い込んできた。あいつらが言ってる覚者と隔者の区別もピンと来ない。お前らはともかく、お前らの組織は信用しきれないな」
「は、はあ……」
「ところで、突然ですが、鉤山さんって一人暮らしですか?」
 里桜がやって来て、座りながら訊く。「本当に突然だな。一人暮らしだったら何だよ」
「私、青女房さんに鉤山さんの家に移動してもらったらどうかって、少し思ったのですよね」
「なんで俺の家だよ」
「そうすれば、「力任せにぶった斬る」以外の解決方法もあると認識してもらえるかもしれないって……それに鉤山さん、青女房さんのいれるお茶が気に入ったみたいですし」
 掃太はふん、と鼻を鳴らす。「茶が旨いからって同棲できるわけじゃない。一事が万事だ。安直だよ」
「安直、ですか」
「古妖と人間の共存、ね。はたしてどこまでやれるかな。――また騙されないように注意しろよ」
「……」
「まあ、あの女は確かに無害っぽい。裏表も別に無いんだろう。――もし何か起きたとしたら、真っ先に死ぬのは、あの女だろうな」
 言って、掃太は居間の青女房をちらりと振り返った。


「……正直、決めかねております」
 天空の助力を受けてこの家に留まるか、灯達の提案を飲んでFiVE村に移住するか。しばらく考えていた青女房は、やがてそう言った。「どちらも甲乙つけ難く魅力的なお誘いです。同じ場所から同じ目的で来られたという意味で、信頼性も同じであると考えます。――逆に言うなら、決定打と言うべき判断材料がありません」
「ならば、そこは俺の愛で!」
 身を乗り出そうとした天空にタヱ子の裏拳がめり込む。「ずいぶん考えましたが、どちらがという判定を下すのは難しそうです。なので」
「この際、これで決めようかと思います」
「「「「――え?」」」」
 青女房が、着物の袂から『それ』を取り出した。――サイコロ。「う、運否天賦――?」「い、いいのかい、キミ?」「どちらでも同じなら、さくっと決めたほうがいいかと思いまして」「その肝の据わり方! まさに俺のダーリンに相応し」「それはもういいですってば」
「……では、いきます。奇数が出たらここに残ります。偶数ならば移住いたします。――それ」
 サイコロが投げられ、こたつの上に落ち、てんてんと転がる。
 やがて止まったサイコロの出目に、覚者達は目を凝らした――。


「……じゃあな」
 仕事が終わり、掃太は館の前で覚者達に別れを告げた。「あの、ちょっとだけでも本部に来ませんか?」ほのかがおずおずと言い募る。
「そのうちに、な。まるっきり信用してないわけじゃない。――本当に行く道が同じなら、また会うだろうさ」
「……お元気で。あと、何でもすぐぶった斬らないでくださいね」
「はいはい。――じゃあな」
 里桜の言葉にそう応え、掃太はひらひらと手を振って歩き出した。「……私達も、帰りましょうか」「ええ」
「あ、あの」
「――?」
 声が聞こえ、灯は振り返った。青女房が、玄関から手招きしている。「――何か?」玄関先まで引き返し、訊いてみる。
「あの――あの方に、お伝えください」
「あの方――?」
 青女房が指差し、灯は振り返る。「あああ、俺の愛がー! 悠々自適の生活がー!」「ていうか、嫁探しなら人間でしろよ」叫ぶ天空が、エイジに引き摺られるようにして去っていく。
「――正直、女に養われようという殿方には興味ありません。ですが、そうでないなら」
「……そうでないなら?」
 青女房の白い頬が、微かに紅く染まる。「頼りがいのある殿方は、吝かではありません。お仕事もちゃんとなさっているようですし、もう少し、求婚の言葉を考えて頂ければ」
「……イメチェンすれば可能性ありますよ、と伝えておきます。……無理な気がしますけど」
 二人して笑い、青女房が一礼してドアを閉める。灯は小さくため息を吐き、踵を返して歩き出した。

 ――青女房はFiVE村へ移住することとなった。現在手続き中であり、近いうちに移住完了する予定である――。

「永遠の愛はどこだー! 安住の地はいったい何処にあるんだー!?」
「そりゃあんた――真面目に生きてるやつのとこじゃねーの?」

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし




 
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