遺跡に囲まれた遺跡……?
●四方の遺跡に囲まれた新たな遺跡
奈良県のとある遺跡。
現状、「大亀遺跡」と呼称される遺跡が地すべりによって発見されたことが全ての発端だ。
こちらは地層のズレなどによって遺跡の形が大きく寸断されていたこと、また、岩や土を使った岩人形のような妖の出現もあり、最奥到着にやや時間を要した。
この最奥にいた大亀の妖を覚者達は倒し、探索は修了を迎えたに思えた。
しかし、今度は南で行われていたボーリング調査によって、その地下深くにおいて炎に包まれた遺跡が発見された。
後に、「朱鳥遺跡」と呼称されるこの地では、遺跡通路を覆う炎、そして、壁に仕掛けられた炎の壁のトラップもあって、こちらも探索は困難を極めた。
MIAなる遺跡盗掘を専門に活動していた女性隔者2人の助けを借り、最奥に到達した覚者達は炎の鳥の妖と遭遇、これを撃破した。
その後、覚者達は黒霧など他の要件対応に当たり、しばらくこの件から遠ざかっていたのだが、年の瀬を前にしたある日、MIAの2人から連絡があったとのこと。
「命が擦り切れるかと思ったよ」
「大変だったんだよー」
F.i.V.E.の会議室に現われたのは、MIAを名乗る、翼人の水玉・彩矢と、酉の獣憑の荒石・成生の2人だ。コンビ名は彼女達の苗字から一文字ずつ取られている。
余談だが、それぞれの名前は「あや」と「なるき」であり、「あやや」と「なりなり」と呼ぶと2人は怒るので注意である。
覚者達が主張していた他の遺跡の存在示唆とその位置の推測。
彼女達はそれらを元にして学者達と共に地質調査などを行い、新たな遺跡の発見に努めていたのだ。
「あったよ、確かに東西に2ヶ所」
「えっとねー、東に水の流れる遺跡とー、西に風が吹き荒れる遺跡があったんだよー」
それぞれの遺跡は発見後、覚者達への報告、探索の為に手づかずとなっている。
MIAがその調査を楽しみにするメンバーを気遣ってくれたのはありがたいことだが、今回の話はその2ヶ所の探索ではないらしい。
「あんたら、言ってたよね。中央にも何かがあるかもしれないって」
「……あったんだよー、もう一つ別の遺跡がねー」
四つの遺跡の丁度真ん中に当たる位置。その地下にも、遺跡が発見されたと言う。
「一見、トラップなんかはなさそうだけれど……」
「夢見さんの話だとー、ちょっと危険な状態の古妖さんがいるってー……」
それは、麒麟と呼ばれる古妖。何らかの要因で長く戒められていた影響なのか、我を忘れてしまっているのだと言う。
「四方の妖のいる遺跡と、今回の遺跡……その因果関係もまだ分かっちゃいないね」
大亀、朱鳥両遺跡において、ボロボロになった装飾や、見つかった勾玉、鏡などが発見されている。それらの状態を合わせ、なんとか学者達が分析し、予想を立てているが、遺跡の存在意義は未だに解明されていない。
「まずはー、麒麟さんとお話できたらいいのだけれどー……」
それができれば、さらにこれらの遺跡の概要解明が大きく進展するはず。
まずは、その力を一旦弱め、麒麟に自我を取り戻してもらいたいところだ。
「とはいえ、それができる奴って、多くないと思うよ」
F.i.V.E.の覚者であれば、会話ができる状況に。MIAの2人もそう考えている。彼女達もかなりの力を持ちはするが、2人だけで強力な古妖に立ち向かうとは行かないとのことだ。
「悪いけどー、よろしくお願いするねー……」
そこで、成生がぐったりと倒れてしまう。どうやら、眠ってしまったらしい。
「最近、あちらこちらの遺跡の妖討伐に引っ張りだこになってしまってさ」
彼女達にとっては嬉しい悲鳴なのだろうが、流石に身体がもたないとのこと。
折角、自分達に食い扶持を与えてくれたF.i.V.E.に対して、彩矢は申し訳なさも覚えていたようだ。
「後は頼むわ。健闘を祈ってるよ」
彼女はそうして、成生を連れてこの場から去っていったのだった。
奈良県のとある遺跡。
現状、「大亀遺跡」と呼称される遺跡が地すべりによって発見されたことが全ての発端だ。
こちらは地層のズレなどによって遺跡の形が大きく寸断されていたこと、また、岩や土を使った岩人形のような妖の出現もあり、最奥到着にやや時間を要した。
この最奥にいた大亀の妖を覚者達は倒し、探索は修了を迎えたに思えた。
しかし、今度は南で行われていたボーリング調査によって、その地下深くにおいて炎に包まれた遺跡が発見された。
後に、「朱鳥遺跡」と呼称されるこの地では、遺跡通路を覆う炎、そして、壁に仕掛けられた炎の壁のトラップもあって、こちらも探索は困難を極めた。
MIAなる遺跡盗掘を専門に活動していた女性隔者2人の助けを借り、最奥に到達した覚者達は炎の鳥の妖と遭遇、これを撃破した。
その後、覚者達は黒霧など他の要件対応に当たり、しばらくこの件から遠ざかっていたのだが、年の瀬を前にしたある日、MIAの2人から連絡があったとのこと。
「命が擦り切れるかと思ったよ」
「大変だったんだよー」
F.i.V.E.の会議室に現われたのは、MIAを名乗る、翼人の水玉・彩矢と、酉の獣憑の荒石・成生の2人だ。コンビ名は彼女達の苗字から一文字ずつ取られている。
余談だが、それぞれの名前は「あや」と「なるき」であり、「あやや」と「なりなり」と呼ぶと2人は怒るので注意である。
覚者達が主張していた他の遺跡の存在示唆とその位置の推測。
彼女達はそれらを元にして学者達と共に地質調査などを行い、新たな遺跡の発見に努めていたのだ。
「あったよ、確かに東西に2ヶ所」
「えっとねー、東に水の流れる遺跡とー、西に風が吹き荒れる遺跡があったんだよー」
それぞれの遺跡は発見後、覚者達への報告、探索の為に手づかずとなっている。
MIAがその調査を楽しみにするメンバーを気遣ってくれたのはありがたいことだが、今回の話はその2ヶ所の探索ではないらしい。
「あんたら、言ってたよね。中央にも何かがあるかもしれないって」
「……あったんだよー、もう一つ別の遺跡がねー」
四つの遺跡の丁度真ん中に当たる位置。その地下にも、遺跡が発見されたと言う。
「一見、トラップなんかはなさそうだけれど……」
「夢見さんの話だとー、ちょっと危険な状態の古妖さんがいるってー……」
それは、麒麟と呼ばれる古妖。何らかの要因で長く戒められていた影響なのか、我を忘れてしまっているのだと言う。
「四方の妖のいる遺跡と、今回の遺跡……その因果関係もまだ分かっちゃいないね」
大亀、朱鳥両遺跡において、ボロボロになった装飾や、見つかった勾玉、鏡などが発見されている。それらの状態を合わせ、なんとか学者達が分析し、予想を立てているが、遺跡の存在意義は未だに解明されていない。
「まずはー、麒麟さんとお話できたらいいのだけれどー……」
それができれば、さらにこれらの遺跡の概要解明が大きく進展するはず。
まずは、その力を一旦弱め、麒麟に自我を取り戻してもらいたいところだ。
「とはいえ、それができる奴って、多くないと思うよ」
F.i.V.E.の覚者であれば、会話ができる状況に。MIAの2人もそう考えている。彼女達もかなりの力を持ちはするが、2人だけで強力な古妖に立ち向かうとは行かないとのことだ。
「悪いけどー、よろしくお願いするねー……」
そこで、成生がぐったりと倒れてしまう。どうやら、眠ってしまったらしい。
「最近、あちらこちらの遺跡の妖討伐に引っ張りだこになってしまってさ」
彼女達にとっては嬉しい悲鳴なのだろうが、流石に身体がもたないとのこと。
折角、自分達に食い扶持を与えてくれたF.i.V.E.に対して、彩矢は申し訳なさも覚えていたようだ。
「後は頼むわ。健闘を祈ってるよ」
彼女はそうして、成生を連れてこの場から去っていったのだった。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.麒麟を正気に戻すこと
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
新たに発見された東西の遺跡。
それと前回までに探索した南北と合わせ、
4つの遺跡の中央にある遺跡の探索を願います。
●概要
中央にある謎の遺跡の調査に向かいます。
夢見の情報では、遺跡内に妖の姿はありません。
しばらく内部を探索すれば、古妖、麒麟と出会うことになりますが、
正気を失っている為襲い掛かってきますので、
こちらを沈めていただきますよう願います。
●敵
○古妖……麒麟
体長は5mほど。
一見、竜にも見える馬のような姿をした古妖です。
・雷光……特遠列[麻痺]
・豪炎……特敵全[炎傷]
・風駿……物貫3[100・60・40%]
・咆吼……物敵全[混乱]
撃破するのであれば「難易度:難」相当の相手ですが、
体力を一定の割合削ればよいので、
全力で戦えば正気を取り戻すことができるでしょう。
無事に麒麟の自我を取り戻せたなら、
対話を試みるとよいでしょう。
四方の遺跡、そこにいる妖。
そして、今回探索する遺跡や麒麟自身について、
答えられる範囲で、麒麟は答えてくれるはずです。
●NPC
○河澄・静音(nCL2000059)
OPに顔出ししてはいませんが、参加します。
基本、皆様の支援に動きますが、
何かありましたらご要望にお応えさせていただきます。
なお、東の水の遺跡(仮称)と西の風の遺跡(仮称)について、
次にどちらへと向かうか、案があれば幸いです。
プレイングの文字数調整などに合わせてお願いします。
それでは、よろしくお願いいたします。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
6日
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
4/7
4/7
公開日
2017年12月30日
2017年12月30日
■メイン参加者 4人■

●これまでと構造の違う遺跡?
依頼説明を受け終えた覚者達。
「MIAの2人は頑張ったね! ありがとう!」
後は自分達がやるからゆっくり休んでいて欲しいと、『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)は去り行く2人に労いの言葉をかける。
集まった覚者は4人。途中、河澄・静音(nCL2000059)が合流し、メンバー達は現地……最近発見された新たな遺跡へと向かう。
「遺跡も久しぶりかな」
久々の遺跡探索。『静かに見つめる眼』東雲 梛(CL2001410) は、道具袋から赤い縁取りの鏡を取り出す。
「この鏡もこの遺跡に関係あるのかな」
奏空もまた、蒼い鏡を持っている。果たして、その因果関係は。メンバー達はそれを突き止めるべく遺跡へと突入していく。
やや薄暗い遺跡内。足元に何があるか分からないと考える梛は、守護使役のまもりに頼んで、ともしびを使って光源とする。
『守人刀』獅子王 飛馬(CL2001466) もまた、守護使役の龍丸にともしびを使用させて周囲を照らしていた。
念の為にと彼は足場対策の為に平衡感覚をスキルで高め、さらに不意打ちを警戒して第六感を働かせる。
薄暗い足元ということで静音も翼を羽ばたかせ、少し浮遊して進む。万が一落とし穴などがあれば、救出に向かう考えのようだ。
「それにしても、やっぱりあったか他にも遺跡が。しかも東と西、それと中央!」
やはりこれはもう四神の遺跡とみていいのではないかと、鋭聴力を働かせて耳を研ぎ澄ます奏空が興奮する。現状聞こえてくるのは、彼らの足音と会話のみだ。
「北の玄武、南の朱雀、東の青龍、西の白虎。それぞれの遺跡は五行にも似た特徴がある」
奏空が言うように、これまで北の遺跡は土、南の遺跡は炎と分かっている。
さらに、MIAの2人の探査により、東の遺跡は水、西の遺跡は風ということも判明している状況だ。
もっとも、五行で考えれば木行は当てはまらないが、この風を木行に当てはめるなら、中央の遺跡は天行となる。
「ほんとにそうなのか、麒麟を正気に戻して話を聞かないとね!」
意気揚々と語る奏空だが、『冷徹の論理』緒形 逝(CL2000156)はフルフェイスの中から「んー」と腑に落ちない素振りを見せる。
「しっかし、ここだけえらく古く感じるのよね」
彼が南北の遺跡と比較して感じたのは……、この遺跡が木造であることだ。
南北の遺跡は自然の洞穴を流用したり、石壁だったりした構造だったことを考えれば、この遺跡の存在は他とは違った趣きを感じさせた。
危険予知でトラップや仕掛けがないかと確認する逝。何か関連を探そうとしていたのだが、逆に関連性のなさを感じていた。
メンバー達が遺跡内を進んでいくと、梛が反応を示す。
「いるな。古妖が」
その気配を感じ、彼は仲間達へと告げる。
さらに進むと、飛馬もまた何かを感じ始めていた。
梛が心の準備を整えたところで一行がそのまま先へと進むと、大部屋へと出る。そこには、全長5mほどの馬の形をした龍の姿があった。
「これが麒麟……でっけーな。でもって、何かかっけー!」
その古妖の姿に、飛馬はやや興奮してしまう。そこで、逝はその麒麟にうっすらと縛りつけられた鎖のようなものに気づく。
「んー……、戒められる理由が分からんなあ、何かやったかね?」
説明のとき、「長く戒められていた影響」という話に逝は着目していた。
世間様では、瑞獣の1つとされる古妖だ。それを、ここまでして繋ぎ止めるこの状況が逝には腑に落ちない。
「ただ、妖と古妖は似て非なるものでしょ。もしや自分から収まったのかね?」
故事において、『獲麟』なんて話もある。麒麟を捕らえられたことを知った孔子が筆を折り、世を去ったなんて話だったはずだ。
気になる点は多いが……。逝が相手を見上げながら考えていると。
「オォ、オオオオオオォォ…………!!」
麒麟は侵入者に気づき、目を輝かして暴れ始める。例え、鎖のようなもので縛られていても、覚者達を襲うくらいであれば問題はないらしい。
「色々聞きたいことはあるんだけどさ……。まずは正気に戻ってもらおうか」
「そうですわね」
こんな状態では、まともに話も聞いてもらえないと飛馬が話すと、静音も頷いてワンドを握って構えを取る。
ともあれ、荒ぶる麒麟を鎮めようと、覚醒して第三の目を開眼させた梛もまた襲い来る相手に応戦するのだった。
●荒ぶる古妖を静めるべく
何らかの力で拘束されていても、麒麟の動きは速い。
その身の前方に非発現者数人であれば軽く焼き払えそうな火力、かつ大きさの炎を出現させる。
「梛さん」
髪を金色へと変色させた奏空が梛へと呼びかけながらも全身から瑠璃光を発し、仲間の自然治癒を高めていく。
梛もまた、濃縮した香りを振り撒き、仲間の治癒力を高める。これなら、回復に当たる逝や静音も存分に仲間達、そして自分を癒せることだろう。
しかしながら、放たれる豪炎の威力たるや。前線の飛馬や逝はその身を燃やし尽くされそうな感覚を味わってしまう。
初手、出遅れてしまったが、覚醒しても見た目がほぼ変わらぬ飛馬は祝詞を唱えて戦巫女の恩恵を受け、その身を固めていく。
麒麟の炎によって、身体を焦がされた逝。
両足にカナードを付け、両腕を戦闘機の主翼のように変化した彼も、周囲の木々の裏に転がる岩などを集めて自らの鎧と成し、できる限り自身や仲間の回復に当たる。
静音も梛の依頼を受け、身体を焼かれた仲間達の回復にと癒しの霧を展開していたようだ。
その梛は麒麟の次なる攻撃の前に、相手に向かって種を投げ飛ばす。急成長した植物は舞い踊るように麒麟の体を縛りつけていく。
「こっちばっかりくらうのも、割に合わないからね」
だが、麒麟は梛の言葉を聞いてか、蹄を鳴らして突進を繰り出してくる。飛馬はそれを受け止めてしまい、後ろの奏空や静音が衝撃を受けてしまう。
何せ、少人数で当たらねばならぬ戦闘。後方メンバーの負担も大きくなってしまうのは仕方ないことだ。
「長期戦になれば、こっちがジリ貧だ。一気に畳み掛けるぜ」
飛馬もそれは承知。だからこそ、普段は守りに徹する彼は今回ばかりは攻撃に出る。
彼は麒麟に対して抜き胴を浴びせ、さらに両手の刃太刀『厳馬』と脇差『悠馬』を連続して叩き込む。俊速の三段打ちには、さすがの麒麟も対処ができずにいたようだ。
「かなりヤバそうな攻撃ばかりだけど、これまで共に探索して来た仲間達だから信頼して戦える!」
皆、幾度も苦楽を共にして、依頼に立ち向かってきた仲間達だ。
だからこそ、奏空は今回も。そう信じた彼は英霊の力を引き出し、速度を力に変換して「双刀・天地」を握りしめて切りかかって行くのである。
古妖、麒麟を倒すのが覚者達の目的ではない。
あくまで、メンバー達は麒麟に話を聞きたいが為に、我を忘れて暴れる相手を静めようと攻撃を行う。
「オオォォ、オオオオオォォ!!」
とはいえ、強大な力を持つ古妖は咆哮を上げ、覚者達を惑わせようとしてくる。
真正面で、それを飛馬がモロに喰らってしまった。
仲間達のフォローはあってはいたが、攻撃一辺倒という戦略だけでは乗り切れる闘いではなかった。命を砕き、彼は倒れるのを拒絶してから、再度、三段斬りを見舞ってゆく。
逝はなんとか堪え、仲間達の気の流れを一時的に大きく活性化させる。
後は気力が持つかといったところだが、そこは奏空が合間に癒力活性を使ってアシストしてくれていたようだ。
さすがに、攻撃ばかりを行っていると、皆倒れてしまうと感じた梛も回復メインになり、凝縮した大樹の生命力を仲間達へと振り撒いていく。
そして、静音もメンバーが万全の状態で戦えるようにと、仲間に水の力を振り撒いていく。普段、守られる事の多い彼女だが、今回は人数が少ないこともあって、奮戦する。
麒麟より発せられる雷光。それに貫かれた奏空は身体に痺れを走らせながらも、相手に向かって叫ぶ。
「俺はどうしても、麒麟と話がしたいんだ!」
だからこそ、倒れるわけには行かない。奏空は麒麟の猛攻を受けて息つくも、彼は双刀を振るう。
「だから、なんとしても食い下がるよ! 目を覚ませ! 麒麟!」
戦場を駆ける麒麟に、速度で追いついた奏空が刃を浴びせる。
飛び散る血。そこで、麒麟の目の光が収まって。
「……ぬ」
部屋を走っていた麒麟は壁際まで走って勢いを落とし、反転して動きを止める。
「よし、対話してみよう」
メンバー全員が攻撃の手を止めたことを確認し、梛は仲間に麒麟と話をするよう促すのだった。
●封印された麒麟と妖?
攻撃の手を止めた麒麟は、冷静になって状況を確認する。
「これは……」
己の体の鎖は未だ解けてはいないが、自分を見つめる人間達にその古妖は気づいて。
「どうやら、礼を言わねばならぬ状況のようだな」
「こんにちは、もう大丈夫かな?」
集まる覚者達の元へと歩み寄ってくる麒麟に、梛が呼びかける。
彼はF.i.V.E.の覚者だと名乗りを上げた後、怪の因子を持ち、古妖に近しい存在であることを語る。
「あんたは暴走していたようだけど、一体どうしたの?」
「……どうやら、毒気に惑わされたようだ」
首を振る麒麟はまだ、ぼんやりしている様子。
だが、覚者達には聞きたいことがたくさんあるようで、ほぼほぼ、麒麟に対して問いかけを行う状況となる。
「あんた自体はここにいつからいるんだ? まずは、それが聞いてみてーんだ」
続き、飛馬が問いかけると、麒麟はしばし考えてから口を開く。
「かれこれ、1500年ほどはいるだろうか……」
それに驚く覚者達。彼は妖出現などというレベルでなく、日本にようやく統一政権ができた時代からこの場へといたことになる。
「それよ。ここだけ明らかに時代が古いのも、おっさん気になっていてね」
逝もこの遺跡について、先ほど語っていたことを口に出した。
「他の遺跡には、あんたみたいな古妖はいなかったのか?」
「少なくとも、この近辺に我のような存在はいなかったはずだ」
その答えに、古妖が別にいたのではないかと推察していた飛馬はそうかと声を出す。
もう一つ、飛馬には問いたいことがあった。
「あんたはここで何をしてたんだ? 何の為にここに据えられてたのかって分かったりするか?」
それは、先ほどの梛にも繋がる為、彼もまた麒麟の答えを待つ。
「我は、この下にいる、我の悪しき影を押さえつけている」
「つまり、麒麟の姿をした大妖がこの下にいるってことかね?」
逝もこの遺跡の存在意義や、麒麟がこの場にいる理由を尋ねたかったらしい。
麒麟の話によれば、遥か昔、人間によって祀り上げられた記憶が微かにあると言う。この地から動かぬ麒麟に、人々は畏敬の念を抱いたということだろうか。
「妖が2、30年前に現れ出したんだけどさ」
この南にある遺跡は火の鳥の妖が現れるのを予見していて、それを抑えつける為に作られたといった風に見えたと語ってから、飛馬がさらに尋ねる。
「まさか、ああいう奴らがずっと前から存在してたってことか?」
「そのようなことはないはずだ。むしろ、我の力を増幅させる為に作られた遺跡だと聞いていたが……」
「ですが、それらの遺跡にいたのは、妖でしかありませんでしたわ」
静音がやや戸惑いながら疑問をぶつけたが、麒麟は唸りこんでしまう。
「分からぬ……、どうしてこうなったのか」
四つの遺跡で一体何が起こったのか。麒麟にも想像がつかないと語る。
「あれが四神じゃないなら、五行の力とも関係ないのかな」
「それらの妖とやらがよく分からんが、そう捉えたのは偶然だろう」
五行の力の根源に至る事ができるかもしれないという奏空のそんな期待は、残念ながら脆くも崩れ去ってしまう。
「それなら、ここに鏡なんてないのかな」
「奉納した鏡はあれど、金色ではないな」
自身の考えが外れてしまったことに、奏空は少し肩を落とす。やはり、神秘の解析というのは、そう簡単にはいかないということだろう。
「四方の遺跡が四神と関係ない……。でも、勾玉や鏡が発見されていたんだよ」
たくさん確認してごめんねと謝る梛が、自らの持つ朱の鏡を差し出す。奏空もまた、蒼い鏡を麒麟へと見せた。
「人の手によるものだな。力を強める為の……いわば、触媒のようなものだろう」
麒麟は実際に、四方の遺跡を目にしてはいない。
だが、この鏡を見て、四方の遺跡は人の手によって作られたものであるのはほぼ間違いなく、彼の認識しているものと同一であると推察していたようだ。
「それぞれの遺跡で何かが起こったから、麒麟は自我を失ったということかな」
奏空がそこで、探偵見習いらしく状況を顧みて推察する。
だとすれば、大亀遺跡のゴーレムの厳重な入り口の封印や朱鳥遺跡のトラップも頷けた。
あれは、遺跡を作った人々による侵入者避けのトラップであり、誰かが奥に行くのを妨げようとしたのだろう。
また、いずれの遺跡も、妖が奥から封印を破壊しようとした形跡がある。
「ひょっとして、大亀遺跡の地層のズレや、朱鳥遺跡の炎、それぞれの遺跡に湧いた小型の妖は、遺跡奥の妖が遺跡から出ようと抵抗していたのかね」
逝はそんな推察を巡らせる。
なるほど、遺跡のトラップとそれぞれの遺跡の状況は別の要因によるものだったのだ。覚者達は二重の勢力の手によって、遺跡探索時において苦しめられていたわけだ。
メンバーの推理が全て正しいとは限らないが、目の前の麒麟の話とそれぞれを遺跡の状況を鑑みるに、大きく外れてはないように思えた。
「うーん……」
やはり推理は難しい。奏空はそう実感する。
「麒麟さんの苦しみを解き放ってあげたいですわね……」
静音の言葉にメンバー達が頷き合うと、麒麟も表情を和らげて覚者達へと願う。
「ならば、残る東西の妖とやらも対処願いたい」
麒麟はこの場を動けぬ以上、覚者達に頼むしかないのだろう。メンバー達はそれを二つ返事で頷いて見せた。
遺跡から出た覚者達。
麒麟の頼みもあり、メンバー達が共通して次に目指すと決めたのは、西にある風の遺跡。
態勢が整えば、MIAに話を持ちかけ、その攻略をとメンバー達は意気込みを見せていたのだった。
依頼説明を受け終えた覚者達。
「MIAの2人は頑張ったね! ありがとう!」
後は自分達がやるからゆっくり休んでいて欲しいと、『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)は去り行く2人に労いの言葉をかける。
集まった覚者は4人。途中、河澄・静音(nCL2000059)が合流し、メンバー達は現地……最近発見された新たな遺跡へと向かう。
「遺跡も久しぶりかな」
久々の遺跡探索。『静かに見つめる眼』東雲 梛(CL2001410) は、道具袋から赤い縁取りの鏡を取り出す。
「この鏡もこの遺跡に関係あるのかな」
奏空もまた、蒼い鏡を持っている。果たして、その因果関係は。メンバー達はそれを突き止めるべく遺跡へと突入していく。
やや薄暗い遺跡内。足元に何があるか分からないと考える梛は、守護使役のまもりに頼んで、ともしびを使って光源とする。
『守人刀』獅子王 飛馬(CL2001466) もまた、守護使役の龍丸にともしびを使用させて周囲を照らしていた。
念の為にと彼は足場対策の為に平衡感覚をスキルで高め、さらに不意打ちを警戒して第六感を働かせる。
薄暗い足元ということで静音も翼を羽ばたかせ、少し浮遊して進む。万が一落とし穴などがあれば、救出に向かう考えのようだ。
「それにしても、やっぱりあったか他にも遺跡が。しかも東と西、それと中央!」
やはりこれはもう四神の遺跡とみていいのではないかと、鋭聴力を働かせて耳を研ぎ澄ます奏空が興奮する。現状聞こえてくるのは、彼らの足音と会話のみだ。
「北の玄武、南の朱雀、東の青龍、西の白虎。それぞれの遺跡は五行にも似た特徴がある」
奏空が言うように、これまで北の遺跡は土、南の遺跡は炎と分かっている。
さらに、MIAの2人の探査により、東の遺跡は水、西の遺跡は風ということも判明している状況だ。
もっとも、五行で考えれば木行は当てはまらないが、この風を木行に当てはめるなら、中央の遺跡は天行となる。
「ほんとにそうなのか、麒麟を正気に戻して話を聞かないとね!」
意気揚々と語る奏空だが、『冷徹の論理』緒形 逝(CL2000156)はフルフェイスの中から「んー」と腑に落ちない素振りを見せる。
「しっかし、ここだけえらく古く感じるのよね」
彼が南北の遺跡と比較して感じたのは……、この遺跡が木造であることだ。
南北の遺跡は自然の洞穴を流用したり、石壁だったりした構造だったことを考えれば、この遺跡の存在は他とは違った趣きを感じさせた。
危険予知でトラップや仕掛けがないかと確認する逝。何か関連を探そうとしていたのだが、逆に関連性のなさを感じていた。
メンバー達が遺跡内を進んでいくと、梛が反応を示す。
「いるな。古妖が」
その気配を感じ、彼は仲間達へと告げる。
さらに進むと、飛馬もまた何かを感じ始めていた。
梛が心の準備を整えたところで一行がそのまま先へと進むと、大部屋へと出る。そこには、全長5mほどの馬の形をした龍の姿があった。
「これが麒麟……でっけーな。でもって、何かかっけー!」
その古妖の姿に、飛馬はやや興奮してしまう。そこで、逝はその麒麟にうっすらと縛りつけられた鎖のようなものに気づく。
「んー……、戒められる理由が分からんなあ、何かやったかね?」
説明のとき、「長く戒められていた影響」という話に逝は着目していた。
世間様では、瑞獣の1つとされる古妖だ。それを、ここまでして繋ぎ止めるこの状況が逝には腑に落ちない。
「ただ、妖と古妖は似て非なるものでしょ。もしや自分から収まったのかね?」
故事において、『獲麟』なんて話もある。麒麟を捕らえられたことを知った孔子が筆を折り、世を去ったなんて話だったはずだ。
気になる点は多いが……。逝が相手を見上げながら考えていると。
「オォ、オオオオオオォォ…………!!」
麒麟は侵入者に気づき、目を輝かして暴れ始める。例え、鎖のようなもので縛られていても、覚者達を襲うくらいであれば問題はないらしい。
「色々聞きたいことはあるんだけどさ……。まずは正気に戻ってもらおうか」
「そうですわね」
こんな状態では、まともに話も聞いてもらえないと飛馬が話すと、静音も頷いてワンドを握って構えを取る。
ともあれ、荒ぶる麒麟を鎮めようと、覚醒して第三の目を開眼させた梛もまた襲い来る相手に応戦するのだった。
●荒ぶる古妖を静めるべく
何らかの力で拘束されていても、麒麟の動きは速い。
その身の前方に非発現者数人であれば軽く焼き払えそうな火力、かつ大きさの炎を出現させる。
「梛さん」
髪を金色へと変色させた奏空が梛へと呼びかけながらも全身から瑠璃光を発し、仲間の自然治癒を高めていく。
梛もまた、濃縮した香りを振り撒き、仲間の治癒力を高める。これなら、回復に当たる逝や静音も存分に仲間達、そして自分を癒せることだろう。
しかしながら、放たれる豪炎の威力たるや。前線の飛馬や逝はその身を燃やし尽くされそうな感覚を味わってしまう。
初手、出遅れてしまったが、覚醒しても見た目がほぼ変わらぬ飛馬は祝詞を唱えて戦巫女の恩恵を受け、その身を固めていく。
麒麟の炎によって、身体を焦がされた逝。
両足にカナードを付け、両腕を戦闘機の主翼のように変化した彼も、周囲の木々の裏に転がる岩などを集めて自らの鎧と成し、できる限り自身や仲間の回復に当たる。
静音も梛の依頼を受け、身体を焼かれた仲間達の回復にと癒しの霧を展開していたようだ。
その梛は麒麟の次なる攻撃の前に、相手に向かって種を投げ飛ばす。急成長した植物は舞い踊るように麒麟の体を縛りつけていく。
「こっちばっかりくらうのも、割に合わないからね」
だが、麒麟は梛の言葉を聞いてか、蹄を鳴らして突進を繰り出してくる。飛馬はそれを受け止めてしまい、後ろの奏空や静音が衝撃を受けてしまう。
何せ、少人数で当たらねばならぬ戦闘。後方メンバーの負担も大きくなってしまうのは仕方ないことだ。
「長期戦になれば、こっちがジリ貧だ。一気に畳み掛けるぜ」
飛馬もそれは承知。だからこそ、普段は守りに徹する彼は今回ばかりは攻撃に出る。
彼は麒麟に対して抜き胴を浴びせ、さらに両手の刃太刀『厳馬』と脇差『悠馬』を連続して叩き込む。俊速の三段打ちには、さすがの麒麟も対処ができずにいたようだ。
「かなりヤバそうな攻撃ばかりだけど、これまで共に探索して来た仲間達だから信頼して戦える!」
皆、幾度も苦楽を共にして、依頼に立ち向かってきた仲間達だ。
だからこそ、奏空は今回も。そう信じた彼は英霊の力を引き出し、速度を力に変換して「双刀・天地」を握りしめて切りかかって行くのである。
古妖、麒麟を倒すのが覚者達の目的ではない。
あくまで、メンバー達は麒麟に話を聞きたいが為に、我を忘れて暴れる相手を静めようと攻撃を行う。
「オオォォ、オオオオオォォ!!」
とはいえ、強大な力を持つ古妖は咆哮を上げ、覚者達を惑わせようとしてくる。
真正面で、それを飛馬がモロに喰らってしまった。
仲間達のフォローはあってはいたが、攻撃一辺倒という戦略だけでは乗り切れる闘いではなかった。命を砕き、彼は倒れるのを拒絶してから、再度、三段斬りを見舞ってゆく。
逝はなんとか堪え、仲間達の気の流れを一時的に大きく活性化させる。
後は気力が持つかといったところだが、そこは奏空が合間に癒力活性を使ってアシストしてくれていたようだ。
さすがに、攻撃ばかりを行っていると、皆倒れてしまうと感じた梛も回復メインになり、凝縮した大樹の生命力を仲間達へと振り撒いていく。
そして、静音もメンバーが万全の状態で戦えるようにと、仲間に水の力を振り撒いていく。普段、守られる事の多い彼女だが、今回は人数が少ないこともあって、奮戦する。
麒麟より発せられる雷光。それに貫かれた奏空は身体に痺れを走らせながらも、相手に向かって叫ぶ。
「俺はどうしても、麒麟と話がしたいんだ!」
だからこそ、倒れるわけには行かない。奏空は麒麟の猛攻を受けて息つくも、彼は双刀を振るう。
「だから、なんとしても食い下がるよ! 目を覚ませ! 麒麟!」
戦場を駆ける麒麟に、速度で追いついた奏空が刃を浴びせる。
飛び散る血。そこで、麒麟の目の光が収まって。
「……ぬ」
部屋を走っていた麒麟は壁際まで走って勢いを落とし、反転して動きを止める。
「よし、対話してみよう」
メンバー全員が攻撃の手を止めたことを確認し、梛は仲間に麒麟と話をするよう促すのだった。
●封印された麒麟と妖?
攻撃の手を止めた麒麟は、冷静になって状況を確認する。
「これは……」
己の体の鎖は未だ解けてはいないが、自分を見つめる人間達にその古妖は気づいて。
「どうやら、礼を言わねばならぬ状況のようだな」
「こんにちは、もう大丈夫かな?」
集まる覚者達の元へと歩み寄ってくる麒麟に、梛が呼びかける。
彼はF.i.V.E.の覚者だと名乗りを上げた後、怪の因子を持ち、古妖に近しい存在であることを語る。
「あんたは暴走していたようだけど、一体どうしたの?」
「……どうやら、毒気に惑わされたようだ」
首を振る麒麟はまだ、ぼんやりしている様子。
だが、覚者達には聞きたいことがたくさんあるようで、ほぼほぼ、麒麟に対して問いかけを行う状況となる。
「あんた自体はここにいつからいるんだ? まずは、それが聞いてみてーんだ」
続き、飛馬が問いかけると、麒麟はしばし考えてから口を開く。
「かれこれ、1500年ほどはいるだろうか……」
それに驚く覚者達。彼は妖出現などというレベルでなく、日本にようやく統一政権ができた時代からこの場へといたことになる。
「それよ。ここだけ明らかに時代が古いのも、おっさん気になっていてね」
逝もこの遺跡について、先ほど語っていたことを口に出した。
「他の遺跡には、あんたみたいな古妖はいなかったのか?」
「少なくとも、この近辺に我のような存在はいなかったはずだ」
その答えに、古妖が別にいたのではないかと推察していた飛馬はそうかと声を出す。
もう一つ、飛馬には問いたいことがあった。
「あんたはここで何をしてたんだ? 何の為にここに据えられてたのかって分かったりするか?」
それは、先ほどの梛にも繋がる為、彼もまた麒麟の答えを待つ。
「我は、この下にいる、我の悪しき影を押さえつけている」
「つまり、麒麟の姿をした大妖がこの下にいるってことかね?」
逝もこの遺跡の存在意義や、麒麟がこの場にいる理由を尋ねたかったらしい。
麒麟の話によれば、遥か昔、人間によって祀り上げられた記憶が微かにあると言う。この地から動かぬ麒麟に、人々は畏敬の念を抱いたということだろうか。
「妖が2、30年前に現れ出したんだけどさ」
この南にある遺跡は火の鳥の妖が現れるのを予見していて、それを抑えつける為に作られたといった風に見えたと語ってから、飛馬がさらに尋ねる。
「まさか、ああいう奴らがずっと前から存在してたってことか?」
「そのようなことはないはずだ。むしろ、我の力を増幅させる為に作られた遺跡だと聞いていたが……」
「ですが、それらの遺跡にいたのは、妖でしかありませんでしたわ」
静音がやや戸惑いながら疑問をぶつけたが、麒麟は唸りこんでしまう。
「分からぬ……、どうしてこうなったのか」
四つの遺跡で一体何が起こったのか。麒麟にも想像がつかないと語る。
「あれが四神じゃないなら、五行の力とも関係ないのかな」
「それらの妖とやらがよく分からんが、そう捉えたのは偶然だろう」
五行の力の根源に至る事ができるかもしれないという奏空のそんな期待は、残念ながら脆くも崩れ去ってしまう。
「それなら、ここに鏡なんてないのかな」
「奉納した鏡はあれど、金色ではないな」
自身の考えが外れてしまったことに、奏空は少し肩を落とす。やはり、神秘の解析というのは、そう簡単にはいかないということだろう。
「四方の遺跡が四神と関係ない……。でも、勾玉や鏡が発見されていたんだよ」
たくさん確認してごめんねと謝る梛が、自らの持つ朱の鏡を差し出す。奏空もまた、蒼い鏡を麒麟へと見せた。
「人の手によるものだな。力を強める為の……いわば、触媒のようなものだろう」
麒麟は実際に、四方の遺跡を目にしてはいない。
だが、この鏡を見て、四方の遺跡は人の手によって作られたものであるのはほぼ間違いなく、彼の認識しているものと同一であると推察していたようだ。
「それぞれの遺跡で何かが起こったから、麒麟は自我を失ったということかな」
奏空がそこで、探偵見習いらしく状況を顧みて推察する。
だとすれば、大亀遺跡のゴーレムの厳重な入り口の封印や朱鳥遺跡のトラップも頷けた。
あれは、遺跡を作った人々による侵入者避けのトラップであり、誰かが奥に行くのを妨げようとしたのだろう。
また、いずれの遺跡も、妖が奥から封印を破壊しようとした形跡がある。
「ひょっとして、大亀遺跡の地層のズレや、朱鳥遺跡の炎、それぞれの遺跡に湧いた小型の妖は、遺跡奥の妖が遺跡から出ようと抵抗していたのかね」
逝はそんな推察を巡らせる。
なるほど、遺跡のトラップとそれぞれの遺跡の状況は別の要因によるものだったのだ。覚者達は二重の勢力の手によって、遺跡探索時において苦しめられていたわけだ。
メンバーの推理が全て正しいとは限らないが、目の前の麒麟の話とそれぞれを遺跡の状況を鑑みるに、大きく外れてはないように思えた。
「うーん……」
やはり推理は難しい。奏空はそう実感する。
「麒麟さんの苦しみを解き放ってあげたいですわね……」
静音の言葉にメンバー達が頷き合うと、麒麟も表情を和らげて覚者達へと願う。
「ならば、残る東西の妖とやらも対処願いたい」
麒麟はこの場を動けぬ以上、覚者達に頼むしかないのだろう。メンバー達はそれを二つ返事で頷いて見せた。
遺跡から出た覚者達。
麒麟の頼みもあり、メンバー達が共通して次に目指すと決めたのは、西にある風の遺跡。
態勢が整えば、MIAに話を持ちかけ、その攻略をとメンバー達は意気込みを見せていたのだった。

■あとがき■
遺跡の概要について、大きく解明が前進しました!
ともあれ、古妖、麒麟を助ける為、
残りの遺跡の探索もお願いいたします。
次の遺跡シナリオも楽しみにしていただけたなら、幸いです。
参加していただいた皆様、
本当にありがとうございました!!
ともあれ、古妖、麒麟を助ける為、
残りの遺跡の探索もお願いいたします。
次の遺跡シナリオも楽しみにしていただけたなら、幸いです。
参加していただいた皆様、
本当にありがとうございました!!
