\ぼたん肉/
●巨大な猪肉がやってきた
大漁旗をフロントバンパーにぶっさしたデコトラ! 五麟大学考古学研究所近辺の検問前に現れる!
「ダメでしょうか?」
「うーん。お待ちください」
妖しきデコトラの運転手は、佳人に属する西洋人風の女性。
佳人で八の字眉。ぼんやりしている。
フードつきノースリーブの丈が長い上着は男性向けサイズか。上着が膝上までを覆っている。
かく、この女の対面には、二人の特殊警備員がいる。
警備員は地ベタに並ぶ身分証に首をひねる。
運輸系会社の社員証! 製菓衛生師の資格証! 食品衛生責任者の赤い手帳! 七星剣傘下味丸会代紋! Anti-Ayakashi-Association、初級――
「AAA初級!?」
「待て! 七星剣!?」
身構える特殊警備員。
「これは失礼。木っ端組織に潜入して血味噌にしたときのものですわ。AAAのほうは所属だけ置いていたようなもので――休職申請して好き勝手にしていた不良隊員です。もう『元』と申し上げたほうが良いのでしょうけれど。どうぞ照会してくださいまし」
警備員の一人、急ぎ照会のために部屋へ――照会結果は『正』。続いて黒電話。上へ判断を仰ぎ。
「えー、初級。中身を改めさせていただいてよろしいですか?」
ならば突然出てきた理由と、デコトラの中身は?
「カシオリです。お詫びにきた次第なのですけれど」
女、うつろな視線のまま首をかしげる。
通すか否か。あとは上の判断。
●巨大な猪肉《カシオリ》があらわれた
識別名! 『笹猪』! 象ほどもある体躯の猪! 生物系の『妖』である!
巨大な蹄! 水田のぬかるみに飛沫をあげる!
巨大な牙! 水田のぬかるみごと人間をなぎ払う!
巨大な咆吼! 水田のぬかるみに水紋を生む!
体躯は見上げる山のごとく眉へと迫り、背中に笹が生い茂る!
しかし、この笹猪! F.i.V.E.の覚者の活躍にて斃る! 調べによれば、『妖』化した状態でしばらくはこのままであり、この状態で食すと大変美味という。
遺された巨体を処理し、食した覚者たちであったが、6人ではとうてい食べきれる量ではない!
村民に分けた後、更に余った分を、怪しき外部の者がデコトラに詰め込んで出発――何故かその者、五麟大学考古学研究所に直行してきた!
F.i.V.E.敷地内に無遠慮で鎮座する、ウィングボディ型のデコトラ。
コンテナに描かれた画は北斗七星。
しかし、その横に八つめの星が、青い電飾で強調されている。其は「見えなくなったら死ぬ」と伝承される添え星。達筆でしっかり『事故防止祈願☆寿命星』と書かれている。
End of the Century Saviorの趣だ!
「開けますわね」
シューっと白い冷気のモヤ。少量の水垂れる。
白い煙の向こうから、まるで魔王のごとく、巨大な猪肉が堂々と威圧を放っていた。
大漁旗をフロントバンパーにぶっさしたデコトラ! 五麟大学考古学研究所近辺の検問前に現れる!
「ダメでしょうか?」
「うーん。お待ちください」
妖しきデコトラの運転手は、佳人に属する西洋人風の女性。
佳人で八の字眉。ぼんやりしている。
フードつきノースリーブの丈が長い上着は男性向けサイズか。上着が膝上までを覆っている。
かく、この女の対面には、二人の特殊警備員がいる。
警備員は地ベタに並ぶ身分証に首をひねる。
運輸系会社の社員証! 製菓衛生師の資格証! 食品衛生責任者の赤い手帳! 七星剣傘下味丸会代紋! Anti-Ayakashi-Association、初級――
「AAA初級!?」
「待て! 七星剣!?」
身構える特殊警備員。
「これは失礼。木っ端組織に潜入して血味噌にしたときのものですわ。AAAのほうは所属だけ置いていたようなもので――休職申請して好き勝手にしていた不良隊員です。もう『元』と申し上げたほうが良いのでしょうけれど。どうぞ照会してくださいまし」
警備員の一人、急ぎ照会のために部屋へ――照会結果は『正』。続いて黒電話。上へ判断を仰ぎ。
「えー、初級。中身を改めさせていただいてよろしいですか?」
ならば突然出てきた理由と、デコトラの中身は?
「カシオリです。お詫びにきた次第なのですけれど」
女、うつろな視線のまま首をかしげる。
通すか否か。あとは上の判断。
●巨大な猪肉《カシオリ》があらわれた
識別名! 『笹猪』! 象ほどもある体躯の猪! 生物系の『妖』である!
巨大な蹄! 水田のぬかるみに飛沫をあげる!
巨大な牙! 水田のぬかるみごと人間をなぎ払う!
巨大な咆吼! 水田のぬかるみに水紋を生む!
体躯は見上げる山のごとく眉へと迫り、背中に笹が生い茂る!
しかし、この笹猪! F.i.V.E.の覚者の活躍にて斃る! 調べによれば、『妖』化した状態でしばらくはこのままであり、この状態で食すと大変美味という。
遺された巨体を処理し、食した覚者たちであったが、6人ではとうてい食べきれる量ではない!
村民に分けた後、更に余った分を、怪しき外部の者がデコトラに詰め込んで出発――何故かその者、五麟大学考古学研究所に直行してきた!
F.i.V.E.敷地内に無遠慮で鎮座する、ウィングボディ型のデコトラ。
コンテナに描かれた画は北斗七星。
しかし、その横に八つめの星が、青い電飾で強調されている。其は「見えなくなったら死ぬ」と伝承される添え星。達筆でしっかり『事故防止祈願☆寿命星』と書かれている。
End of the Century Saviorの趣だ!
「開けますわね」
シューっと白い冷気のモヤ。少量の水垂れる。
白い煙の向こうから、まるで魔王のごとく、巨大な猪肉が堂々と威圧を放っていた。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.笹猪の肉(数百キロ)を消費する
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
趣旨としては、巨大猪肉を喫食するクエストです。
鍋でも焼き肉でも。火は必ず通してください。覚者だからと高をくくって生寿司、レアなどで食すると、病院直行です。病院直行です。
飴色とデコトラの運転手がいます。以下詳細。
●エネミーデータ
猪肉。
血抜きなど丁寧に行われた大変美味な猪肉。数百キロ。トリミング済み。
ピンク色に輝く生肉です。脂肪の層は分厚く、繊維質がしっかりしています。
通常に比べると、渋味や嫌味が少なく、熱を通したときに硬くなる肉質は、容易くかみ切れるほど。
ロースに至っては、脂身がサクサク、心地よいくらいの歯切れになっています。
野趣を帯びた香味が、容易くは抜けないので長い時間ぐつぐつ煮てもだしがらになることはありません。
死後硬直がとけて、ドライ冷却による熟成でグルタミン酸が極限まで高まっています。
これ以降は、うま味が低下していくのみという危険な状態。
●フレンドデータ
樒・飴色
デコトラ運転手が変なことしないか監視も兼ねて居ます。
あまり凝ったものは作れませんが、シガーバーを経営していたので、日本酒、洋酒、煙草の厳選。またおつまみ系や軽食を作れます。ハードボイルドにいきたいならどうぞ。
「ジビエにあうお酒は、繊細なものより原酒や生酒、ワインも似た感じね。個人的に、ギムレットなんかフレッシュだから。後味とお別れしたいなら良いわ」
『美獣』アリスベル・アスタロッサ
デコトラの運転手。金髪青瞳。西洋人ハーフの女性。
怪の因子。守護使役は犬。
佳人で八の字眉。ぼんやりしてます。フードつきノースリーブの丈が長い上着(男性サイズ)を着ています。
美味そうな『妖』を食欲の向くまま積極的に倒している、それ以上でもそれ以下でもないような奴です。
菓子職人《パティシエール》。
ミートパイを淡々と作りますが、獣肉が苦手なら、アップルパイ作ります担当。
勝手に引き上げますが、身の危険を感じると野生化します。
●注意
料理、実食に関する描写が増える可能性があります。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
相談日数
7日
7日
参加費
50LP
50LP
参加人数
30/30
30/30
公開日
2017年07月04日
2017年07月04日
■メイン参加者 30人■

●調理! 笹猪の肉!
一部、事情を飲みこんでいる人物もいる。
いるのだが、多数は良く分からないながらも「肉! 食わざるを得ない!」という胸裏にて、集まった覚者達である。
メインターゲットは肉である。肉である! 肉だ!
逝(CL2000156)が上着から取りだしたものは、有名な銃器メーカーのホームランドセキュリティと称される、サバイバルナイフだ。
「おっさんは切り分けるかね」
血抜き、下処理は完全に終わっているため、サクサクと切り分けていく。
「おや? 九鬼ちゃんも手伝ってくれるのかね?」
「肉を解体すれば宜しいのですね? 微力ですが僕も手伝いましょう」
菊(CL2000999)も、切り分けを手伝う。
大型の鎌、雅の一閃。いやさ、二閃、三閃と刻む。
綺麗に切り分けられた猪肉の列!
「さあ皆さん! 持って行ってください」
それは号令のごとく。
結鹿(CL2000432)が無数の調理道具を引っさげて、肉へと近づく。
「こんなチャンスは二度とないかもしれません。いろいろと楽しみです、腕が鳴りますよ!」
猪肉。
それは、必須アミノ酸などが多く含まれてて、しかも低カロリーでヘルシー。
ビタミンB群を多く含み、疲労回復に効果が高く、女性に嬉しいコラーゲンも豊富なもの。
それが、凄まじい量で鎮座する。いろいろと楽しめるというものだ。
結鹿は、うきうきと切り分けた肉を受け取る。
ここで、鏡香(CL2000478)、謎機械を用意!
「いのしし肉って食えるのか? 食えるか! 食えない肉などないのだ!」
野外の延長コンセントに、プラグを結合!
「でもナマは危ないゾ! 知ってるゾ! エブリデイ危険日だゾ!」
ギュイイイイイイと高らかな音を上げる謎の機械。
「調理はどうするんだ! まずは切るのか! 任せろ! パンパカパーン! 家から持ってきたミキサーだぞ!」
パンパカパーンに、ぎゅうぎゅうに詰めていく鏡香!
菊がおおう、という表情を浮かべる。
「あ、そちらの方、ミキサーにかけるにしても、全部やるのはいけませんよ。あっ! あっ! やりすぎです、適量でいきましょう、破壊はいけませ――」
「なんか学生服のちっちゃいのがうるさいけどボクはやるゾ!」
気合い一閃! あーっあー! あっ、鎮まりたまえ! あー! とボーイソプラノが響きわたった。
ここに覚者各人、肉を受け取り、調理を開始した。
ありす(CL2001269)は受け取った肉を持って行き、どうしようかと相方に問う。
「猪肉といえば独特な臭みよね。ヤマトは臭み大丈夫? 大丈夫ならこのまま串焼きにするけど」
「臭み? あぁ、あるよな。オレは、臭みは平気だけど」
ヤマト(CL2001083)はこの間試食した一人である。その際、あまり臭みは感じなかった覚えがある。
この間倒した猪。でっかいから、食べきれなかったんだよな! と付け加えると、ありすは。
「念のためやっておくわ」
「消せるのか……!」
ありすは頷いて、肉をスライスする。ヨーグルトに付け込んで冷温放置とする。
「小一時間ほど。その間は鍋を作るわ」
「ありすの手際が良くて、すごいな! 手料理食べれるのも嬉しいけど、料理するありすも、いいな。うん」
ありすはヤマトから視線を外し、右下にやって、ちょっともじもじした。
少し隔てて、ことこ(CL2000498)と時雨(CL2000418)は肉を受け取った肉を調理テーブルにデンと置く。
「美味しいもの食べれるって聞いたので、嫁と参加!」
ことこが言うと、時雨はデンと置いた肉とことこを交互にみる。
「確か、猪って豚と同じようなアレやんな……? まぁ、美味しいお肉が食べられるなら……って誰が嫁や誰が!」
「時雨ぴょん、より嫁の方が短くて呼びやすいんだもんいーじゃん」
ことこは「ぶー(・3・)」という顔をつくる。
「呼びやすいとかそう言う問題や無いと思うんや!」
夫婦漫才を繰り広げしの儀。
時雨は「と、とりあえず!」と、肉を厚くスライスしていく。
「ボタン肉。食べたことないんだよねー。最初はシンプルに焼肉かな?」
ことこの発言から、最初は猪肉そのものの味や! と浪速《あぁ、うん、関西ね》の腕がうなる。とやはり「う\"~~~と、もじもじしながら取りかかった。
数多(CL2000149)がデンッと肉を調理台に置く。
「うり坊が食えるときいて」
数多の肉の塊を見据える視線は、とても険しきもの。
「猪。猪を家畜化したものが豚。つまりジビエモードの豚が猪です。ウソです」
まずは厚切りに――と切り分けたところで、その一枚が横からヒョイとかっさらわれた。
「タダで食える猪肉があるって聞いて来たが、まさかピンクゴリラも来てるとはな」
刀嗣(CL2000002)であった。
面倒くさく。テキトーに火にくべて大雑把に料理しようとする。
「肉なんざ焼きゃいいだけだろ。つーかお前料理なんか出来るのかよゴリラのくせに」
「おいこら諏訪! いい食材を適当に焼くな下味つけろその焼くって工程も、料理人はしっかり手間暇かけてんだっつーの」
数多、肉を奪い返して調理を始める。
「(意外と手際いいな。そういや喫茶店でバイトかなんかしてたなコイツ)」
刀嗣は顎に手を当てて成り行きを観察した。
凛(CL2000119)は、デデドンと鎮座する肉を眺める。
「こらまたごっついなぁ」
部位はランプ、シンプルにステーキ焼くか、と逝にいうと、さくっと切り出して厚切り肉をつきだした。ほいさと受け取る。
玉葱をみじん切りにして、即、それに肉を漬け込む。
肉はピンク色に煌めいて、脂質の層が厚い。きめ細かい赤身――キッチンタイマーをセット。
「30分程でええかな?」
凛は、それまでに次の段階を手際よく用意する。
義弘(CL2001487)は、大きな土鍋を用意した。
「さて、いったい何をやるのか全く分からないままの参加だが、取り敢えず飯を作ればいいと言うのは分かった」
鍋だ。汁物だ。
野生の旨味の塊! ぼたん肉を、たっぷりの香味野菜でじっくりと煮込むの儀。
ベースは味噌だ。それも荒々しい田舎味噌が合う。
これが極《きわめ》である。
禊(CL2000029)も鍋を用意。
「おー! これは腕がなるねぇ! 幸い、いっぱい食べれる人も多いし、みんなが飽きないように工夫しないと!」
ネギ、キャベツ、シラタキ、豆腐、しいたけ、油揚げ――義弘が田舎味噌ならば赤味噌を用いる。京白味噌の合わせ味噌も良い。
出汁をしっかりとって、辛めの赤味噌、甘い白味噌で奥深い味を演出する。
続く、肉豆腐、豚の角煮!
これが頂《いただき》である。
直斗(CL2001570)は、各人の様子を見ながらボソっと呟いた。
「仲良く鍋をするけど、俺は正直こんな馬鹿騒ぎに似合わねェよ」
次に視線を隣人へと向ける。
玲(CL2001261)が凹んでいる。
「……うう、今の僕にはお料理が出来ない……だから居心地が」
玲は、直斗の姉を精神的支柱としてきた。ヒノマル戦争最終戦で命を散らせてしまった故人――支柱が折れてしまっていたのだ。
「(俺がこうして誘わねェと施設で引き籠り同然の生活してるらしいからな……一応、俺の姉さんの親友だった人だ。その人が引き籠りなんて姉さんに顔向け出来ねェよ)」
直斗は世話を焼いて連れ出した経緯である。手際良く鍋をこしらえる。
「手伝ってもいいけど……僕、今だったらすんごいヤらかすよ? 鍋が暗黒物体Xになるけど本当に大丈夫?」
魚類なんて無い筈なのに、緑色の液体が満たされた鍋の中から、魚眼がチラりと浮いては沈み、こちらを見て来――
「……。俺が作っているボタン鍋分けてやるから」
見なかったことにして片付けた。
ノーラ(CL2000497)は故郷の味、北欧の郷土料理スモーブローをこしらえる。
「な、なんかほーこくしょで見たような人もいるべ……ここは、ばっちり料理しねぇど!」
パパとママに頼んで黒パン《ライ麦パン》を送ってもらった。
スモーブローは黒パンの上に、色々な具材を乗せるというものだ。その具材の相性などを吟味してハーモニーを彩る、かなり奥深い料理である。
「今回は生肉だから、薄切りにして、バターで炒めてからハニーマスタード絡めっぺ!」
これなら、どんな食べ方しても美味しい自信作であった。
かくて出そろう。料理担当が腕によりをかけて作った品々!
結鹿。しぐれ煮、赤ワイン煮込み、角煮、猪筋煮込み、猪肉のコンフィ――、一人でここまで仕上げてしまったプロフェッショナルの業前。
ありす。臭みをとことん消し去った串焼き、鍋、ステーキ! いづれもヤマト専用である!
時雨。焼肉! パチパチ脂跳ねて危ないとつっこまれた結果、こんな顔(・3・)をして待ってることこ専用だ。
数多。うりぼうのステーキ、うりぼうの角煮もこさえている。別に刀嗣専用ってわけじゃないんだからね!
凛。ジューシーな分厚いシャリアピンステーキ。シンプルながらも手の込んだ極《きわめ》の焼き加減にてドドンと鎮座する!
義弘。デカい土鍋で作ったデカいボタン鍋。田舎味噌での味付け、豪快にして野趣ある品だ。
禊。差別化して赤味噌ベースのボタン鍋だ。みんなが飽きないようにという工夫の品。肉豆腐やボタン肉の角煮もある!
直斗。ボタン鍋。ストレートに作ったものだが、他者を想う気遣いに溢れた逸品。
玲。――何かすごくやばいものは、直斗に片付けられてしまった。
ノーラ。北欧の郷土料理、スモーブロー! 食すると更に何か食べたくなる魔性の品。
逝。しれっと筋などを集めて、シチューをこさえていた。水とウオトカを入れて煮た、ソ連の味。いやさロシアの味。
アリスベルのミートパイに、飴色の簡単なおつまみも添えられる。
豪華絢爛の一言である。
「ふぉっふぉっふぉーそろそろたべどきなのかにゃー」
そこへミラノ(CL2001142)の影!
ちゃっかり紛れ込む作戦! 妖しく胎動す!
●決戦!? 平たく言って『ヨルナキの腹かっさばいてえのころ飯食いたい友の会』
「アリスベルちゃんだっけ? 随分と美味しそうだねえ、ちょっと腕の1つ分けておくれ」
逝、不穏なる声かけ。アリスベル、少し困ったように首を傾げる。
「腕ですか?」
「周りに止められるから長い事、ヒトを喰べられなくてな。ダメ?」
「ダメっす」
だめっすか。断られた。
「でもこのシチュー。タッパーで持って帰っていいですか?」
「ああ、おっさんのでよければ。好きにしなさいな」
いそいそとタッパーにシチューを詰め込むアリスベル。
そこへ、ジャック(CL2001403)。アリスベルに詰め寄った。
「アリスベル! それ俺の服だよね!? 脱ご? 前、裸みれなかったし、脱ぐより脱がされたい感じ?」
わきわきと手が動く。
凜音(CL2000495)が止めに入る。
「切裂ちょっと待て。とりあえず肉を食え。女性の服を脱がそうとするな!」
「だって! あれ俺の服!」
「は? あれお前の服かよ」
そこへ当人から、肯定の言葉。
「はい。クリーニングをして返そうと思いましたが、そもそも服を台無しにしたのは変態オス肉さまなので、返せと仰るなら代わりの――」
「誰が変態オス肉だ!? 返そ? 今すぐ!」
更に、踏込み、ずずいと詰め寄る変態オス肉。
凜音、ふと我にかえる。
「って一瞬納得しかけたけれど、お前のやってる事はセクハラだよな?」
対面の女。元より八の字眉の困っているような顔だが、ますます困ったような顔を浮かべている。
「女性の肌が見れるっつーのは目の保養なわけだが、無理強いはやめようか」
凜音の説得と本音入り交じった説得が続く。
そこへ、横から咳払いが一つ。
「切裂」
千陽(CL2000014)である。
「女性に対して、というよりはゲストに対しての不埒な行いはやめてください」
千陽、ジャックの襟首をつかむ。
「俺、服返してもらいたいだけやもん!」
キャンキャンと犬のような図。
「失礼しました。少しふざけていただけですので、お気になさらず」
大和(CL2000477)も声をかける。
「ジャックさん、人前で女性をはだけさせる行為はさすがにいけないわ」
調理されてしまうかもしれない、胸中の不穏。色々あるのだ。
「環ちゃんに言われたら駄目だな……」
へにょるジャック。
「って、大丈夫ですか、おにいさん……?」
美久(CL2001026)はミートパイを食べながら、ジャックをつんつんする。
「……成程! お姉さんも獲物だったの!」
いままで鈴鹿(CL2001285)、ボーっとこのやりとりを見ていたが、我が意を得たように覚醒する。
「ならそのパンツを剥ぎ取るのはパンツハンターの私の出番なの!」
鈴鹿が一瞬の隙をついて、激鱗――『紅蓮轟龍』のごとき技で(ジャックの)服を引き裂いた!
「……アリスベルさんの服は大破し全裸になる!」
鈴鹿のキメ顔。
アリスベルは「いやん☆ やめてくださいまし!」といって隠すところは隠し――こめかみに青筋。
「――などと」
ほぼ裸身を晒した女が次に言った言葉は、静かなつぶやきであった。
次に怒気を孕んだ声。豹変。
「などと言うと思ったかあああああ! 変態メス肉があああああ!」
軍服とチャイナドレスの折衷のごとき装いが現出する。
刺繍に北斗七星。かつミザールの横にひっそりと輝く星が強調されている。得物は手甲。手甲と一体化するかのごとき第三の目。
刹那、場に冷気が走り抜ける。寒気ではない。現実の事象として、凍土のごとき冷気。
かの隔者、口角から白い息を吐き、怒気を漲らせ。
「良くぞ私のパンツを盗ったなああああ! 褒美に死をくれてやるううううううう!」
鈴鹿のおつむに、頭突きが振ってきた。
ぐるぐると目を回してぽてんと斃る鈴鹿――の手には、しかし縞パン。げっとだぜ。
――………。
応じそうな者は、鈴鹿以外皆無であった。
鈴鹿も――縞パンゲットで満足す。
ヤヒロがこの様子を全く気にしないで、てくてくと近づいた。首をかしげて問う。
「おとこの人はオス肉で、おんなの人はメス肉なら、性別不明者は何肉になるんだ?」
「ナゾ肉。でしょうか」
「ナゾ肉!」
有名なカップラーメンに入っている、ペレット状のよくわからない肉のアレだ!
「よし! 答えてくれたから、このもちもちのほっぺをぷにぷにつつく権利をやろう!」
隔者の女、手甲だけ片付ける。
つつかれる。次に女からでた言葉は。
「もちぷよナゾ肉」
「もちぷよ!?」
千陽。そのなんというか、現在は政府との案件が締結したばかりだというのに、このような状況が発生していいのだろうか、と胃を痛める。
痛めつつも、なるほど。先ほどの未解明の冷気。あれで肉を保存してきたのかと分析する。
少々、色々つっこみたいところ満載だが、ともかくも。
「失礼しました」
「こちらこそ、すみません。つい盛り上がってしまって」
不穏は回避されたようだ。
遥(CL2000227)は、後ろ頭をポリポリ掻きながら。
「あ、こないだは悪かったな! メシテロになってしまうとはなあ。確かに腹減ってるときにあんなこと言われたら、余計腹減っちまよなー」
「これはこれは。飯テロ少年さま。気にしておりませんよ」
「ま、まあ過去のことはお互い水に流して! 一緒に旨い肉食おうぜ!」
朗らかな声が場に響いた。
●実食! すげえうまい肉!
肉! 肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉ッ!
猪肉。
味蕾を刺激する肉汁。この汁がとても美味い。
ほんのりと脂甘み。このあとになんと言っても香味である。
獣臭さとも言われるが、丁寧に血抜きされたそれは臭みどころか、野趣溢れる香りとなって鼻腔を通っていく。
野生に生きた猪の赤身はきめ細かく、したざわりも滑らか。脂身は表面はカリカリ。繊維質がぷりぷりと歯切れが良い。
焼いたものは適度に脂が滴って、脂っぽくない。
鍋に至っては、出汁となりつつも出汁ガラにならない程、旨味に満ちている。溶け出した汁も絶品だ。
圧力鍋を用いた角煮。通常の豚で作った場合、濃い味つけのタレでもって豚の味をうち消してしまう部分もあるが、通常の豚でつくったものでは考えられないほど、素材の味が際立っている。そして柔らかい。かつきめ細かい肉質――
料理が並んだ!
飛馬(CL2001466)、早速と喫食す。
「妖の肉食うのも初めてだけど、うまいもんなら試さない手はねーよな」
と焼肉を一切れ、口に入れる。じゅわっと広がる肉汁。鼻腔を駆けぬける香味。
「旨っ……! 何だこれ!何だこれ! スーパーの豚肉と全然ちげー」
味が濃いので銀シャリ、白ご飯が欲しくなる味わい。
「これが野生の味ってやつか……アリスなんちゃらって金髪のねーちゃんが食いたがるわけだぜ」
向こう側を見る。
かの隔者。もりもりと食べている。負けねからな! と気合い一閃!
「じいちゃんやかーちゃん、ついでにとーちゃんにも食わしてやりてーけど、時間が経つと悪くなるってんなら仕方ねー」
ちょっと残念に感じながらも、箸が止まらない。
凛は自前のステーキにかぶりつく。
「~~~~」
たまらん。味が少し重い。重いが不快に至るほどではなく、むしろドリンク類やトッピングで色々味を変えながら楽しめる良い塩梅。理想通りだ! 実際、出来の良さは好評だ。
かくて、御菓子(CL2000429)も舌鼓をうつ!
「結鹿ちゃんはお料理してる時が一番生き生きしてるわね! わたしが音楽を一生の友としたように、結鹿ちゃんはお料理がそれなのね」
しかして、味わいながらも、じわっとしたまなざし。
結鹿はじゃんじゃん作って運んでくる姿。嗚呼、なんて愛しい。
「ああ、これなんて。栗とかの山の幸を多く取り入れたり、肉を柔らかくする効果があるからと、青パパイヤを用意したりとこだわりも本格的!」
御菓子は結鹿を溺愛しているのだ!
「ちなみにコラーゲンは女子のものよ!」
そして結鹿ちゃんはわたしのもの……譲れないわ! の気合い一閃。
結鹿ちゃん自慢、極点にて炸裂す。お料理が上手、自宅で独り占め、かわいいなどべた褒め!
一方、結鹿、ちょっと恥じらっている。
コラーゲンという言葉を耳にして、渚(CL2001360)は、たっぷりと椀に盛る。
「コラーゲン! 猪のお肉は滋養強壮に良いっていうよね。依頼なんかで頑張るためにもたくさん食べておかないと」
本当なら、こういうとこでみんなの分取り分けられる子の方が女の子らしいって思われるんだろうけど、と胸裏ちょっと後ろめたさを覚えながらも――私はそんなの置いといてたくさん食べるよ! と折り合いがつける。
田舎味噌の豪快な味。赤味噌+白味噌の計算された味も捨てがたい。
「美味しい~~」
これ以外の言葉なんてもう要らないレベルだ。
ミラノ、ここで気がついた。
「しし肉って何? え……いのししーーーー????」
正座待機して待っていたそれは、豚に非ず。いのししであることを。
おいしいのかな!? と好奇心が起こる。
手始めに――沢山たべる! 口いっぱい膨らませてリスのような――否、獣憑だが猫である。
沢山ある料理、色々味見という名の全力ほおぶくろ! たべたあとはよい子なのでごちそうさまをしっかりして眠る。寝る子はつよくなる。ぐーすかぴー。
ことこが時雨に「あーん」するように催促す。
「はい、あーん」
「ちょい恥ずかしいけど……あーん?」
ぱくっと食べる時雨。
絶品――語彙を失う。
「お返しに……あーん?」
今度は時雨からことこへ。
「あーん! 美味しい!」
ことこも満足して時雨の手を引っ張る。「さ、次なにを食べよう?」レッツゴー嫁!
ありすとヤマト、ありすが作ったものを食す。
「……ん、ホントにおいしいお肉ね。どう? そっちは美味しい?」
とありすが問うと。
「ほっぺ落ちそうだ! ほら、こっちも食べてみるか?」
ヤマト、一切れをあーんと差し出す。
「っ!?」
ありす、照れながらも頷く。
「……おいしい」
ありすに対してにっこり笑うヤマト。ありすの故郷の話について会話を弾ませた。
刀嗣、がっつくように肉を喰らう。
「……うめぇなこれ。焼いたのがゴリラじゃなかったらなお最高だったんだけどな」
「はぁ?? 美少女に肉焼いてもらってなに文句つけてんのよ、殺すわよ! 当たり前でしょ、家事全般得意だわ! 花嫁修業完璧だわ!」
数多、ビシバシとつっこみを入れる。
それにしても作りすぎてしまったので、遥たちへお裾分けする。
遥はひたすら喰らっている。
戦術を立てている。
「胃が落ち着いたら、再度焼き役を変わってもらい、前衛に戻る!」
大根おろし+ポン酢を入れたタッパー、肉を巻くサンチュ、烏龍茶500ペットボトル多量!
当然食う! 胸につっかえた。ペットボトルの出番――
直斗と玲、一通り食して箸を休めている。
「こんなポンコツ姿見ちまったら見て見ぬ振りなんて出来ねェよ。少なくとも普通の調子に戻るまで玲さんの面倒見てやるよ」
直斗の言葉に対する、玲。クスっと笑う。
「……直斗君……君ってお節介とか言われない?」
ここで玲に切り返された。
「べ、別に他意はねェよ……っ、なお君?」
「あれ? 駄目かな、なお君って呼び方……?」
「……また唐突な呼び名だな……別にいいけど」
二人のひとときはゆるやかに暖かく過ぎていく。
飴色が、ふとノーラのスモーブローに目をつけた。
「良いわね。これ。オシャレな感じで」
「そな、オシャレだなんて――これでも料理はしっかり教わってたべ! ……教わってた、です!」
飴色はこういった料理にとても目ざといらしい。一つ食べる。
「美味しいわ。丁度良いかもしれない」
「ちょうど良いだす? ……とは?」
飴色。早速、スモーブローに合う、ちょっと重めのカクテルを作る。
そして相手は――義弘である。義弘は自身の鍋を味わったあと、一杯やりに飴色のところにいた。
ビールだけじゃなく、そちらの趣味も増やしたいという胸裏。
「なるほどだす。折角だし、あたすの知ってる味、覚えてもらいてーべな!」
ノーラの満面笑顔。
義弘がカクテルとスモーブローを喫食する。
「ん、これは美味い」
上品な味だ。ハニーマスタードの甘み、黒パンの素朴な旨味。カクテルのほろ苦い味。
のんびり、まったりとした時間が過ごされた。
ラーラ(CL2001080)、シャーロット(CL2001590)。
他、ジャック、凜音、鈴鹿、千陽、大和、美久、ヤヒロ、大所帯でアリスベルの卓にいる。
ミートパイ、アップルパイを食している。
ラーラがミートパイを評する。
「セルヴァッジーナ……ええと、日本ではジビエと呼ばれることが多いんでしたか。一般的に臭みが強いという話を聞いてましたが、不思議とそこまで気になりませんね」
「しっかり血抜きをしますと、臭いが消えるのです。――あの後、空腹にも負けず、血抜きした甲斐がありました」
なるほど、とミートパイを食べ進める。
「空腹に負けていたような?」
と、シャーロットが突っ込む。
「そうだな」
凜音が肯定する。
「そうだ! アリスベル! は血抜きをやっていない」
ジャック、力一杯うなずく。
「い、痛いところを」
実際、血抜きをしたのは何を隠そう、シャーロット、凜音だ。ジャックは上着をかけていた。上着。
大和もミートパイを評する。
「ミートパイで頂くのは初めてだけれども、あえて粗く引いた猪ひき肉が程よいクセと弾力を出していてトマトの酸味、玉ねぎの甘味と上手く調和しているのね」
「そこまで見抜くなんて、すばらしい味覚です。粗挽きは、知人のレシピの影響ですわ」
ラーラの前に差し出されたミートパイ、アップルパイ。
「お肉もこういった形ならたくさん食べられそうです。お返しにスフォリアテッレはいかがですか」
「ナポリ地方の名物の焼き菓子ですね! 好物です!」
ここで禊からの差し入れだ。肉豆腐、豚の角煮。
対してジャックがほおばる。
「禊ちゃん相変わらず俺に尽くすねえ」
禊、いろいろ酷い目をあわせたり合ったりしたジャックを、よしよしと慰めつつ配膳する。
服はもう忘れた。あれ?
美久がふと思いついたように。
「カレー鍋が気になります」
ここでリクエストだ。
「カレーは――少々おまちくださいましね」
と、アリスベルいそいそ、カレーを作り始める。ぱっとレシピを取り出した。
美久の質問が続く。
「お肉をたくさん食べたら、身長も大きくなりますか?」
「なると思います! それも一杯食べるべきですわ!」
力説だ!
良かった! と美久、ミートパイをほおばる。
その実、かなりの量を味見しながら回っていた美久であるのだが、とどのつまり。
「(お肉がとっても食べやすくて幾らでも食べられちゃうのがいけないんだと思います!)」
そういうことだった。
渚も卓に加わる。
「美味そうな妖を積極的にやっつけてる……ってすごい経歴だよね。私なんか妖のお肉食べたの今回が初めてだしさ」
「AAAの時代、極貧で犬の妖を、えの――ではなく。一期一会の味覚というものですわ」
不穏な言葉。やがてカレー鍋なるブツができあがる。
「末端価格で、一杯うん十万円する怪物カレー屋のレシピをぶんどった逸品……な、はずですわ」
末端価格、怪物カレー屋、ぶんどった等、更に不穏な単語が飛びだした。
「末端……価格? 咖喱……?」
「なんでしょう!?」
大和が、突っ込むかつっこまざるか悩んだが、ここは飲みこむ事にした。
やがて宴もたけなわ。
「お、回った! あとは待つだけだな!」
生肉を全身に張りつかせながらも、ぶっ通しでミキサーをいじっていた鏡香は、とても強かった。
肉は消費されて、鎮座していた魔王のごとき猪肉は消費された。
多少あまった料理については、F.i.V.E.のスタッフが美味しくいただいたとさ。
●to be continued
シャーロットと遥は、立ち去ろうとする女を引きとめた。
「先日、ワタシは『皆で食べる流れであって欲しい』と申しました――意図はわかりませんが、ワタシの求めた流れにより近いと感じます」
かの隔者。フッと顔だけふり返りながら。
「意図なんてありませんよ。本音のお詫びです」
「オレも少し用があるんだ。アリスベル、旨そうな妖が出たら情報を渡すから、共闘しない?」
「――Hamlet気取りさまも、飯テロ少年さまも物好きですね。立場上、あまり長居できないのと、大ぴらに出ることが出来ないのですわ」
「そうかー。良く分からないけど、立場かー」
遥はちょっと残念そうに、両腕を後ろ頭にまわす。
「フェアでもなく、まだるっこいのも嫌いなので、申し上げますが、私達は、平たく言わなければ――」
シャーロットが切る。
「誰かが付けた名札に踊らされる気はありません。今後、衝突したり共闘したりとあるのでしょう。どちらかが死ぬまでは楽しみたいものです。これがワタシの気持ちです」
「なるほど。F.i.V.E.……というより、あなた様方の人となりが理解できました。目的は一致する部分もありますので、共闘は――考えておきますね」
「お! そうか! またな!」
と、遥の声を背に、元AAA初級は軍帽を深く被り、ラーラの焼き菓子を食べながら立ち去った。
ただ――デコトラを完全に失念しているらしい。
一部、事情を飲みこんでいる人物もいる。
いるのだが、多数は良く分からないながらも「肉! 食わざるを得ない!」という胸裏にて、集まった覚者達である。
メインターゲットは肉である。肉である! 肉だ!
逝(CL2000156)が上着から取りだしたものは、有名な銃器メーカーのホームランドセキュリティと称される、サバイバルナイフだ。
「おっさんは切り分けるかね」
血抜き、下処理は完全に終わっているため、サクサクと切り分けていく。
「おや? 九鬼ちゃんも手伝ってくれるのかね?」
「肉を解体すれば宜しいのですね? 微力ですが僕も手伝いましょう」
菊(CL2000999)も、切り分けを手伝う。
大型の鎌、雅の一閃。いやさ、二閃、三閃と刻む。
綺麗に切り分けられた猪肉の列!
「さあ皆さん! 持って行ってください」
それは号令のごとく。
結鹿(CL2000432)が無数の調理道具を引っさげて、肉へと近づく。
「こんなチャンスは二度とないかもしれません。いろいろと楽しみです、腕が鳴りますよ!」
猪肉。
それは、必須アミノ酸などが多く含まれてて、しかも低カロリーでヘルシー。
ビタミンB群を多く含み、疲労回復に効果が高く、女性に嬉しいコラーゲンも豊富なもの。
それが、凄まじい量で鎮座する。いろいろと楽しめるというものだ。
結鹿は、うきうきと切り分けた肉を受け取る。
ここで、鏡香(CL2000478)、謎機械を用意!
「いのしし肉って食えるのか? 食えるか! 食えない肉などないのだ!」
野外の延長コンセントに、プラグを結合!
「でもナマは危ないゾ! 知ってるゾ! エブリデイ危険日だゾ!」
ギュイイイイイイと高らかな音を上げる謎の機械。
「調理はどうするんだ! まずは切るのか! 任せろ! パンパカパーン! 家から持ってきたミキサーだぞ!」
パンパカパーンに、ぎゅうぎゅうに詰めていく鏡香!
菊がおおう、という表情を浮かべる。
「あ、そちらの方、ミキサーにかけるにしても、全部やるのはいけませんよ。あっ! あっ! やりすぎです、適量でいきましょう、破壊はいけませ――」
「なんか学生服のちっちゃいのがうるさいけどボクはやるゾ!」
気合い一閃! あーっあー! あっ、鎮まりたまえ! あー! とボーイソプラノが響きわたった。
ここに覚者各人、肉を受け取り、調理を開始した。
ありす(CL2001269)は受け取った肉を持って行き、どうしようかと相方に問う。
「猪肉といえば独特な臭みよね。ヤマトは臭み大丈夫? 大丈夫ならこのまま串焼きにするけど」
「臭み? あぁ、あるよな。オレは、臭みは平気だけど」
ヤマト(CL2001083)はこの間試食した一人である。その際、あまり臭みは感じなかった覚えがある。
この間倒した猪。でっかいから、食べきれなかったんだよな! と付け加えると、ありすは。
「念のためやっておくわ」
「消せるのか……!」
ありすは頷いて、肉をスライスする。ヨーグルトに付け込んで冷温放置とする。
「小一時間ほど。その間は鍋を作るわ」
「ありすの手際が良くて、すごいな! 手料理食べれるのも嬉しいけど、料理するありすも、いいな。うん」
ありすはヤマトから視線を外し、右下にやって、ちょっともじもじした。
少し隔てて、ことこ(CL2000498)と時雨(CL2000418)は肉を受け取った肉を調理テーブルにデンと置く。
「美味しいもの食べれるって聞いたので、嫁と参加!」
ことこが言うと、時雨はデンと置いた肉とことこを交互にみる。
「確か、猪って豚と同じようなアレやんな……? まぁ、美味しいお肉が食べられるなら……って誰が嫁や誰が!」
「時雨ぴょん、より嫁の方が短くて呼びやすいんだもんいーじゃん」
ことこは「ぶー(・3・)」という顔をつくる。
「呼びやすいとかそう言う問題や無いと思うんや!」
夫婦漫才を繰り広げしの儀。
時雨は「と、とりあえず!」と、肉を厚くスライスしていく。
「ボタン肉。食べたことないんだよねー。最初はシンプルに焼肉かな?」
ことこの発言から、最初は猪肉そのものの味や! と浪速《あぁ、うん、関西ね》の腕がうなる。とやはり「う\"~~~と、もじもじしながら取りかかった。
数多(CL2000149)がデンッと肉を調理台に置く。
「うり坊が食えるときいて」
数多の肉の塊を見据える視線は、とても険しきもの。
「猪。猪を家畜化したものが豚。つまりジビエモードの豚が猪です。ウソです」
まずは厚切りに――と切り分けたところで、その一枚が横からヒョイとかっさらわれた。
「タダで食える猪肉があるって聞いて来たが、まさかピンクゴリラも来てるとはな」
刀嗣(CL2000002)であった。
面倒くさく。テキトーに火にくべて大雑把に料理しようとする。
「肉なんざ焼きゃいいだけだろ。つーかお前料理なんか出来るのかよゴリラのくせに」
「おいこら諏訪! いい食材を適当に焼くな下味つけろその焼くって工程も、料理人はしっかり手間暇かけてんだっつーの」
数多、肉を奪い返して調理を始める。
「(意外と手際いいな。そういや喫茶店でバイトかなんかしてたなコイツ)」
刀嗣は顎に手を当てて成り行きを観察した。
凛(CL2000119)は、デデドンと鎮座する肉を眺める。
「こらまたごっついなぁ」
部位はランプ、シンプルにステーキ焼くか、と逝にいうと、さくっと切り出して厚切り肉をつきだした。ほいさと受け取る。
玉葱をみじん切りにして、即、それに肉を漬け込む。
肉はピンク色に煌めいて、脂質の層が厚い。きめ細かい赤身――キッチンタイマーをセット。
「30分程でええかな?」
凛は、それまでに次の段階を手際よく用意する。
義弘(CL2001487)は、大きな土鍋を用意した。
「さて、いったい何をやるのか全く分からないままの参加だが、取り敢えず飯を作ればいいと言うのは分かった」
鍋だ。汁物だ。
野生の旨味の塊! ぼたん肉を、たっぷりの香味野菜でじっくりと煮込むの儀。
ベースは味噌だ。それも荒々しい田舎味噌が合う。
これが極《きわめ》である。
禊(CL2000029)も鍋を用意。
「おー! これは腕がなるねぇ! 幸い、いっぱい食べれる人も多いし、みんなが飽きないように工夫しないと!」
ネギ、キャベツ、シラタキ、豆腐、しいたけ、油揚げ――義弘が田舎味噌ならば赤味噌を用いる。京白味噌の合わせ味噌も良い。
出汁をしっかりとって、辛めの赤味噌、甘い白味噌で奥深い味を演出する。
続く、肉豆腐、豚の角煮!
これが頂《いただき》である。
直斗(CL2001570)は、各人の様子を見ながらボソっと呟いた。
「仲良く鍋をするけど、俺は正直こんな馬鹿騒ぎに似合わねェよ」
次に視線を隣人へと向ける。
玲(CL2001261)が凹んでいる。
「……うう、今の僕にはお料理が出来ない……だから居心地が」
玲は、直斗の姉を精神的支柱としてきた。ヒノマル戦争最終戦で命を散らせてしまった故人――支柱が折れてしまっていたのだ。
「(俺がこうして誘わねェと施設で引き籠り同然の生活してるらしいからな……一応、俺の姉さんの親友だった人だ。その人が引き籠りなんて姉さんに顔向け出来ねェよ)」
直斗は世話を焼いて連れ出した経緯である。手際良く鍋をこしらえる。
「手伝ってもいいけど……僕、今だったらすんごいヤらかすよ? 鍋が暗黒物体Xになるけど本当に大丈夫?」
魚類なんて無い筈なのに、緑色の液体が満たされた鍋の中から、魚眼がチラりと浮いては沈み、こちらを見て来――
「……。俺が作っているボタン鍋分けてやるから」
見なかったことにして片付けた。
ノーラ(CL2000497)は故郷の味、北欧の郷土料理スモーブローをこしらえる。
「な、なんかほーこくしょで見たような人もいるべ……ここは、ばっちり料理しねぇど!」
パパとママに頼んで黒パン《ライ麦パン》を送ってもらった。
スモーブローは黒パンの上に、色々な具材を乗せるというものだ。その具材の相性などを吟味してハーモニーを彩る、かなり奥深い料理である。
「今回は生肉だから、薄切りにして、バターで炒めてからハニーマスタード絡めっぺ!」
これなら、どんな食べ方しても美味しい自信作であった。
かくて出そろう。料理担当が腕によりをかけて作った品々!
結鹿。しぐれ煮、赤ワイン煮込み、角煮、猪筋煮込み、猪肉のコンフィ――、一人でここまで仕上げてしまったプロフェッショナルの業前。
ありす。臭みをとことん消し去った串焼き、鍋、ステーキ! いづれもヤマト専用である!
時雨。焼肉! パチパチ脂跳ねて危ないとつっこまれた結果、こんな顔(・3・)をして待ってることこ専用だ。
数多。うりぼうのステーキ、うりぼうの角煮もこさえている。別に刀嗣専用ってわけじゃないんだからね!
凛。ジューシーな分厚いシャリアピンステーキ。シンプルながらも手の込んだ極《きわめ》の焼き加減にてドドンと鎮座する!
義弘。デカい土鍋で作ったデカいボタン鍋。田舎味噌での味付け、豪快にして野趣ある品だ。
禊。差別化して赤味噌ベースのボタン鍋だ。みんなが飽きないようにという工夫の品。肉豆腐やボタン肉の角煮もある!
直斗。ボタン鍋。ストレートに作ったものだが、他者を想う気遣いに溢れた逸品。
玲。――何かすごくやばいものは、直斗に片付けられてしまった。
ノーラ。北欧の郷土料理、スモーブロー! 食すると更に何か食べたくなる魔性の品。
逝。しれっと筋などを集めて、シチューをこさえていた。水とウオトカを入れて煮た、ソ連の味。いやさロシアの味。
アリスベルのミートパイに、飴色の簡単なおつまみも添えられる。
豪華絢爛の一言である。
「ふぉっふぉっふぉーそろそろたべどきなのかにゃー」
そこへミラノ(CL2001142)の影!
ちゃっかり紛れ込む作戦! 妖しく胎動す!
●決戦!? 平たく言って『ヨルナキの腹かっさばいてえのころ飯食いたい友の会』
「アリスベルちゃんだっけ? 随分と美味しそうだねえ、ちょっと腕の1つ分けておくれ」
逝、不穏なる声かけ。アリスベル、少し困ったように首を傾げる。
「腕ですか?」
「周りに止められるから長い事、ヒトを喰べられなくてな。ダメ?」
「ダメっす」
だめっすか。断られた。
「でもこのシチュー。タッパーで持って帰っていいですか?」
「ああ、おっさんのでよければ。好きにしなさいな」
いそいそとタッパーにシチューを詰め込むアリスベル。
そこへ、ジャック(CL2001403)。アリスベルに詰め寄った。
「アリスベル! それ俺の服だよね!? 脱ご? 前、裸みれなかったし、脱ぐより脱がされたい感じ?」
わきわきと手が動く。
凜音(CL2000495)が止めに入る。
「切裂ちょっと待て。とりあえず肉を食え。女性の服を脱がそうとするな!」
「だって! あれ俺の服!」
「は? あれお前の服かよ」
そこへ当人から、肯定の言葉。
「はい。クリーニングをして返そうと思いましたが、そもそも服を台無しにしたのは変態オス肉さまなので、返せと仰るなら代わりの――」
「誰が変態オス肉だ!? 返そ? 今すぐ!」
更に、踏込み、ずずいと詰め寄る変態オス肉。
凜音、ふと我にかえる。
「って一瞬納得しかけたけれど、お前のやってる事はセクハラだよな?」
対面の女。元より八の字眉の困っているような顔だが、ますます困ったような顔を浮かべている。
「女性の肌が見れるっつーのは目の保養なわけだが、無理強いはやめようか」
凜音の説得と本音入り交じった説得が続く。
そこへ、横から咳払いが一つ。
「切裂」
千陽(CL2000014)である。
「女性に対して、というよりはゲストに対しての不埒な行いはやめてください」
千陽、ジャックの襟首をつかむ。
「俺、服返してもらいたいだけやもん!」
キャンキャンと犬のような図。
「失礼しました。少しふざけていただけですので、お気になさらず」
大和(CL2000477)も声をかける。
「ジャックさん、人前で女性をはだけさせる行為はさすがにいけないわ」
調理されてしまうかもしれない、胸中の不穏。色々あるのだ。
「環ちゃんに言われたら駄目だな……」
へにょるジャック。
「って、大丈夫ですか、おにいさん……?」
美久(CL2001026)はミートパイを食べながら、ジャックをつんつんする。
「……成程! お姉さんも獲物だったの!」
いままで鈴鹿(CL2001285)、ボーっとこのやりとりを見ていたが、我が意を得たように覚醒する。
「ならそのパンツを剥ぎ取るのはパンツハンターの私の出番なの!」
鈴鹿が一瞬の隙をついて、激鱗――『紅蓮轟龍』のごとき技で(ジャックの)服を引き裂いた!
「……アリスベルさんの服は大破し全裸になる!」
鈴鹿のキメ顔。
アリスベルは「いやん☆ やめてくださいまし!」といって隠すところは隠し――こめかみに青筋。
「――などと」
ほぼ裸身を晒した女が次に言った言葉は、静かなつぶやきであった。
次に怒気を孕んだ声。豹変。
「などと言うと思ったかあああああ! 変態メス肉があああああ!」
軍服とチャイナドレスの折衷のごとき装いが現出する。
刺繍に北斗七星。かつミザールの横にひっそりと輝く星が強調されている。得物は手甲。手甲と一体化するかのごとき第三の目。
刹那、場に冷気が走り抜ける。寒気ではない。現実の事象として、凍土のごとき冷気。
かの隔者、口角から白い息を吐き、怒気を漲らせ。
「良くぞ私のパンツを盗ったなああああ! 褒美に死をくれてやるううううううう!」
鈴鹿のおつむに、頭突きが振ってきた。
ぐるぐると目を回してぽてんと斃る鈴鹿――の手には、しかし縞パン。げっとだぜ。
――………。
応じそうな者は、鈴鹿以外皆無であった。
鈴鹿も――縞パンゲットで満足す。
ヤヒロがこの様子を全く気にしないで、てくてくと近づいた。首をかしげて問う。
「おとこの人はオス肉で、おんなの人はメス肉なら、性別不明者は何肉になるんだ?」
「ナゾ肉。でしょうか」
「ナゾ肉!」
有名なカップラーメンに入っている、ペレット状のよくわからない肉のアレだ!
「よし! 答えてくれたから、このもちもちのほっぺをぷにぷにつつく権利をやろう!」
隔者の女、手甲だけ片付ける。
つつかれる。次に女からでた言葉は。
「もちぷよナゾ肉」
「もちぷよ!?」
千陽。そのなんというか、現在は政府との案件が締結したばかりだというのに、このような状況が発生していいのだろうか、と胃を痛める。
痛めつつも、なるほど。先ほどの未解明の冷気。あれで肉を保存してきたのかと分析する。
少々、色々つっこみたいところ満載だが、ともかくも。
「失礼しました」
「こちらこそ、すみません。つい盛り上がってしまって」
不穏は回避されたようだ。
遥(CL2000227)は、後ろ頭をポリポリ掻きながら。
「あ、こないだは悪かったな! メシテロになってしまうとはなあ。確かに腹減ってるときにあんなこと言われたら、余計腹減っちまよなー」
「これはこれは。飯テロ少年さま。気にしておりませんよ」
「ま、まあ過去のことはお互い水に流して! 一緒に旨い肉食おうぜ!」
朗らかな声が場に響いた。
●実食! すげえうまい肉!
肉! 肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉ッ!
猪肉。
味蕾を刺激する肉汁。この汁がとても美味い。
ほんのりと脂甘み。このあとになんと言っても香味である。
獣臭さとも言われるが、丁寧に血抜きされたそれは臭みどころか、野趣溢れる香りとなって鼻腔を通っていく。
野生に生きた猪の赤身はきめ細かく、したざわりも滑らか。脂身は表面はカリカリ。繊維質がぷりぷりと歯切れが良い。
焼いたものは適度に脂が滴って、脂っぽくない。
鍋に至っては、出汁となりつつも出汁ガラにならない程、旨味に満ちている。溶け出した汁も絶品だ。
圧力鍋を用いた角煮。通常の豚で作った場合、濃い味つけのタレでもって豚の味をうち消してしまう部分もあるが、通常の豚でつくったものでは考えられないほど、素材の味が際立っている。そして柔らかい。かつきめ細かい肉質――
料理が並んだ!
飛馬(CL2001466)、早速と喫食す。
「妖の肉食うのも初めてだけど、うまいもんなら試さない手はねーよな」
と焼肉を一切れ、口に入れる。じゅわっと広がる肉汁。鼻腔を駆けぬける香味。
「旨っ……! 何だこれ!何だこれ! スーパーの豚肉と全然ちげー」
味が濃いので銀シャリ、白ご飯が欲しくなる味わい。
「これが野生の味ってやつか……アリスなんちゃらって金髪のねーちゃんが食いたがるわけだぜ」
向こう側を見る。
かの隔者。もりもりと食べている。負けねからな! と気合い一閃!
「じいちゃんやかーちゃん、ついでにとーちゃんにも食わしてやりてーけど、時間が経つと悪くなるってんなら仕方ねー」
ちょっと残念に感じながらも、箸が止まらない。
凛は自前のステーキにかぶりつく。
「~~~~」
たまらん。味が少し重い。重いが不快に至るほどではなく、むしろドリンク類やトッピングで色々味を変えながら楽しめる良い塩梅。理想通りだ! 実際、出来の良さは好評だ。
かくて、御菓子(CL2000429)も舌鼓をうつ!
「結鹿ちゃんはお料理してる時が一番生き生きしてるわね! わたしが音楽を一生の友としたように、結鹿ちゃんはお料理がそれなのね」
しかして、味わいながらも、じわっとしたまなざし。
結鹿はじゃんじゃん作って運んでくる姿。嗚呼、なんて愛しい。
「ああ、これなんて。栗とかの山の幸を多く取り入れたり、肉を柔らかくする効果があるからと、青パパイヤを用意したりとこだわりも本格的!」
御菓子は結鹿を溺愛しているのだ!
「ちなみにコラーゲンは女子のものよ!」
そして結鹿ちゃんはわたしのもの……譲れないわ! の気合い一閃。
結鹿ちゃん自慢、極点にて炸裂す。お料理が上手、自宅で独り占め、かわいいなどべた褒め!
一方、結鹿、ちょっと恥じらっている。
コラーゲンという言葉を耳にして、渚(CL2001360)は、たっぷりと椀に盛る。
「コラーゲン! 猪のお肉は滋養強壮に良いっていうよね。依頼なんかで頑張るためにもたくさん食べておかないと」
本当なら、こういうとこでみんなの分取り分けられる子の方が女の子らしいって思われるんだろうけど、と胸裏ちょっと後ろめたさを覚えながらも――私はそんなの置いといてたくさん食べるよ! と折り合いがつける。
田舎味噌の豪快な味。赤味噌+白味噌の計算された味も捨てがたい。
「美味しい~~」
これ以外の言葉なんてもう要らないレベルだ。
ミラノ、ここで気がついた。
「しし肉って何? え……いのししーーーー????」
正座待機して待っていたそれは、豚に非ず。いのししであることを。
おいしいのかな!? と好奇心が起こる。
手始めに――沢山たべる! 口いっぱい膨らませてリスのような――否、獣憑だが猫である。
沢山ある料理、色々味見という名の全力ほおぶくろ! たべたあとはよい子なのでごちそうさまをしっかりして眠る。寝る子はつよくなる。ぐーすかぴー。
ことこが時雨に「あーん」するように催促す。
「はい、あーん」
「ちょい恥ずかしいけど……あーん?」
ぱくっと食べる時雨。
絶品――語彙を失う。
「お返しに……あーん?」
今度は時雨からことこへ。
「あーん! 美味しい!」
ことこも満足して時雨の手を引っ張る。「さ、次なにを食べよう?」レッツゴー嫁!
ありすとヤマト、ありすが作ったものを食す。
「……ん、ホントにおいしいお肉ね。どう? そっちは美味しい?」
とありすが問うと。
「ほっぺ落ちそうだ! ほら、こっちも食べてみるか?」
ヤマト、一切れをあーんと差し出す。
「っ!?」
ありす、照れながらも頷く。
「……おいしい」
ありすに対してにっこり笑うヤマト。ありすの故郷の話について会話を弾ませた。
刀嗣、がっつくように肉を喰らう。
「……うめぇなこれ。焼いたのがゴリラじゃなかったらなお最高だったんだけどな」
「はぁ?? 美少女に肉焼いてもらってなに文句つけてんのよ、殺すわよ! 当たり前でしょ、家事全般得意だわ! 花嫁修業完璧だわ!」
数多、ビシバシとつっこみを入れる。
それにしても作りすぎてしまったので、遥たちへお裾分けする。
遥はひたすら喰らっている。
戦術を立てている。
「胃が落ち着いたら、再度焼き役を変わってもらい、前衛に戻る!」
大根おろし+ポン酢を入れたタッパー、肉を巻くサンチュ、烏龍茶500ペットボトル多量!
当然食う! 胸につっかえた。ペットボトルの出番――
直斗と玲、一通り食して箸を休めている。
「こんなポンコツ姿見ちまったら見て見ぬ振りなんて出来ねェよ。少なくとも普通の調子に戻るまで玲さんの面倒見てやるよ」
直斗の言葉に対する、玲。クスっと笑う。
「……直斗君……君ってお節介とか言われない?」
ここで玲に切り返された。
「べ、別に他意はねェよ……っ、なお君?」
「あれ? 駄目かな、なお君って呼び方……?」
「……また唐突な呼び名だな……別にいいけど」
二人のひとときはゆるやかに暖かく過ぎていく。
飴色が、ふとノーラのスモーブローに目をつけた。
「良いわね。これ。オシャレな感じで」
「そな、オシャレだなんて――これでも料理はしっかり教わってたべ! ……教わってた、です!」
飴色はこういった料理にとても目ざといらしい。一つ食べる。
「美味しいわ。丁度良いかもしれない」
「ちょうど良いだす? ……とは?」
飴色。早速、スモーブローに合う、ちょっと重めのカクテルを作る。
そして相手は――義弘である。義弘は自身の鍋を味わったあと、一杯やりに飴色のところにいた。
ビールだけじゃなく、そちらの趣味も増やしたいという胸裏。
「なるほどだす。折角だし、あたすの知ってる味、覚えてもらいてーべな!」
ノーラの満面笑顔。
義弘がカクテルとスモーブローを喫食する。
「ん、これは美味い」
上品な味だ。ハニーマスタードの甘み、黒パンの素朴な旨味。カクテルのほろ苦い味。
のんびり、まったりとした時間が過ごされた。
ラーラ(CL2001080)、シャーロット(CL2001590)。
他、ジャック、凜音、鈴鹿、千陽、大和、美久、ヤヒロ、大所帯でアリスベルの卓にいる。
ミートパイ、アップルパイを食している。
ラーラがミートパイを評する。
「セルヴァッジーナ……ええと、日本ではジビエと呼ばれることが多いんでしたか。一般的に臭みが強いという話を聞いてましたが、不思議とそこまで気になりませんね」
「しっかり血抜きをしますと、臭いが消えるのです。――あの後、空腹にも負けず、血抜きした甲斐がありました」
なるほど、とミートパイを食べ進める。
「空腹に負けていたような?」
と、シャーロットが突っ込む。
「そうだな」
凜音が肯定する。
「そうだ! アリスベル! は血抜きをやっていない」
ジャック、力一杯うなずく。
「い、痛いところを」
実際、血抜きをしたのは何を隠そう、シャーロット、凜音だ。ジャックは上着をかけていた。上着。
大和もミートパイを評する。
「ミートパイで頂くのは初めてだけれども、あえて粗く引いた猪ひき肉が程よいクセと弾力を出していてトマトの酸味、玉ねぎの甘味と上手く調和しているのね」
「そこまで見抜くなんて、すばらしい味覚です。粗挽きは、知人のレシピの影響ですわ」
ラーラの前に差し出されたミートパイ、アップルパイ。
「お肉もこういった形ならたくさん食べられそうです。お返しにスフォリアテッレはいかがですか」
「ナポリ地方の名物の焼き菓子ですね! 好物です!」
ここで禊からの差し入れだ。肉豆腐、豚の角煮。
対してジャックがほおばる。
「禊ちゃん相変わらず俺に尽くすねえ」
禊、いろいろ酷い目をあわせたり合ったりしたジャックを、よしよしと慰めつつ配膳する。
服はもう忘れた。あれ?
美久がふと思いついたように。
「カレー鍋が気になります」
ここでリクエストだ。
「カレーは――少々おまちくださいましね」
と、アリスベルいそいそ、カレーを作り始める。ぱっとレシピを取り出した。
美久の質問が続く。
「お肉をたくさん食べたら、身長も大きくなりますか?」
「なると思います! それも一杯食べるべきですわ!」
力説だ!
良かった! と美久、ミートパイをほおばる。
その実、かなりの量を味見しながら回っていた美久であるのだが、とどのつまり。
「(お肉がとっても食べやすくて幾らでも食べられちゃうのがいけないんだと思います!)」
そういうことだった。
渚も卓に加わる。
「美味そうな妖を積極的にやっつけてる……ってすごい経歴だよね。私なんか妖のお肉食べたの今回が初めてだしさ」
「AAAの時代、極貧で犬の妖を、えの――ではなく。一期一会の味覚というものですわ」
不穏な言葉。やがてカレー鍋なるブツができあがる。
「末端価格で、一杯うん十万円する怪物カレー屋のレシピをぶんどった逸品……な、はずですわ」
末端価格、怪物カレー屋、ぶんどった等、更に不穏な単語が飛びだした。
「末端……価格? 咖喱……?」
「なんでしょう!?」
大和が、突っ込むかつっこまざるか悩んだが、ここは飲みこむ事にした。
やがて宴もたけなわ。
「お、回った! あとは待つだけだな!」
生肉を全身に張りつかせながらも、ぶっ通しでミキサーをいじっていた鏡香は、とても強かった。
肉は消費されて、鎮座していた魔王のごとき猪肉は消費された。
多少あまった料理については、F.i.V.E.のスタッフが美味しくいただいたとさ。
●to be continued
シャーロットと遥は、立ち去ろうとする女を引きとめた。
「先日、ワタシは『皆で食べる流れであって欲しい』と申しました――意図はわかりませんが、ワタシの求めた流れにより近いと感じます」
かの隔者。フッと顔だけふり返りながら。
「意図なんてありませんよ。本音のお詫びです」
「オレも少し用があるんだ。アリスベル、旨そうな妖が出たら情報を渡すから、共闘しない?」
「――Hamlet気取りさまも、飯テロ少年さまも物好きですね。立場上、あまり長居できないのと、大ぴらに出ることが出来ないのですわ」
「そうかー。良く分からないけど、立場かー」
遥はちょっと残念そうに、両腕を後ろ頭にまわす。
「フェアでもなく、まだるっこいのも嫌いなので、申し上げますが、私達は、平たく言わなければ――」
シャーロットが切る。
「誰かが付けた名札に踊らされる気はありません。今後、衝突したり共闘したりとあるのでしょう。どちらかが死ぬまでは楽しみたいものです。これがワタシの気持ちです」
「なるほど。F.i.V.E.……というより、あなた様方の人となりが理解できました。目的は一致する部分もありますので、共闘は――考えておきますね」
「お! そうか! またな!」
と、遥の声を背に、元AAA初級は軍帽を深く被り、ラーラの焼き菓子を食べながら立ち去った。
ただ――デコトラを完全に失念しているらしい。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
『アリスベルの縞パン』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:瀬織津・鈴鹿(CL2001285)
カテゴリ:アクセサリ
取得者:瀬織津・鈴鹿(CL2001285)
