思い切って炎の中へ!
●探索領域を広げたい!
奈良県のとある遺跡。
それは、某市の町外れにおいて、ボーリング調査を行っていた際に発見された。
きっかけはボーリングマシンから突然炎が湧き出て、工事現場で働いていた男性達が焼死した事件。この原因は、地中から現れた炎の塊のような妖であったという。
妖が出現するとあって、この場所の土地計画……商業施設が建設予定だったらしいが、白紙に戻された。
これにより、考古学者達は炎が噴き出すその場所に興味を抱き、調査を考えるのだが、妖を倒さねば始まらない。考古学者はほとんどが非覚者。この為、F.i.V.E.に妖討伐依頼が舞い込んだのだ。
会議室へとやってきたF.i.V.E.の覚者達。
そこで、『薄幸の男の娘』菜花・けい(nCL2000118)が『頑張り屋の和風少女』河澄・静音(nCL2000059)と一緒に難しい顔をしていた。
「炎の遺跡の探索がなかなか進まなくてのう」
「そろそろ、成果が欲しいところですわね」
静音は先2回の探索には参加していないが、1度目は突入口を作るだけで手一杯だったというし、前回は七星剣、霧山・譲の出現もあって遺跡探索に集中できなかったようである。
霧山の狙いは地上にあったと思われるから、最初に事故に遭った工事業者に関することだったのでは。けいはそんな推論を立てていた。
「まあ、それは置いておいて、今回は遺跡探索じゃの」
けいは話を、炎の遺跡へと戻す。
とある工事現場跡の地下に広がる遺跡。通路は自然のものではない炎で包まれており、妖を倒すごとに炎が消える領域が増えていることが確認されている。
現れる妖は火の玉の姿をしている。ランクが高めの個体は大きめで、人の顔のようなものが浮かぶという。こちらの詳細は資料を確認願いたい。
「それらを倒しつつ、炎の通路を進みたいのじゃが、かなり面倒じゃな」
考古学者達の飛ばすドローンの情報によれば、通路は突入口から南北にそれぞれ100メートルほど伸びていると想定されている。確認ができなかったのは、突発して壁から吹き出た炎の為と見られているが、詳細は不明だ。
「ともあれ、探索領域を増やしたいの」
探索領域を広げることで、この遺跡の全容解明が進む可能性もある。以前の遺跡はほぼ封印や装飾が風化していて解析が困難だった。この遺跡では新たな発見があるとよいのだが……。
F.i.V.E.としても、大きな進捗が欲しい。虎穴に入らずんば、虎子を得ずといったところか。炎の中に飛び込むのは致し方ないだろう。
「危険も大きいでしょうから、十分準備しないといけませんわね」
静音も今回は助力したいと覚者達に告げる。消耗が大きくなると予想されるので、自身の回復が力になると彼女は意気込んでいるようだ。
「うむ、くれぐれも気をつけての。大きな傷を負うのは、うちも辛いからの……」
無理の無い程度に頑張ってほしい。けいはそんな難しい希望を覚者達へと願うのだった。
奈良県のとある遺跡。
それは、某市の町外れにおいて、ボーリング調査を行っていた際に発見された。
きっかけはボーリングマシンから突然炎が湧き出て、工事現場で働いていた男性達が焼死した事件。この原因は、地中から現れた炎の塊のような妖であったという。
妖が出現するとあって、この場所の土地計画……商業施設が建設予定だったらしいが、白紙に戻された。
これにより、考古学者達は炎が噴き出すその場所に興味を抱き、調査を考えるのだが、妖を倒さねば始まらない。考古学者はほとんどが非覚者。この為、F.i.V.E.に妖討伐依頼が舞い込んだのだ。
会議室へとやってきたF.i.V.E.の覚者達。
そこで、『薄幸の男の娘』菜花・けい(nCL2000118)が『頑張り屋の和風少女』河澄・静音(nCL2000059)と一緒に難しい顔をしていた。
「炎の遺跡の探索がなかなか進まなくてのう」
「そろそろ、成果が欲しいところですわね」
静音は先2回の探索には参加していないが、1度目は突入口を作るだけで手一杯だったというし、前回は七星剣、霧山・譲の出現もあって遺跡探索に集中できなかったようである。
霧山の狙いは地上にあったと思われるから、最初に事故に遭った工事業者に関することだったのでは。けいはそんな推論を立てていた。
「まあ、それは置いておいて、今回は遺跡探索じゃの」
けいは話を、炎の遺跡へと戻す。
とある工事現場跡の地下に広がる遺跡。通路は自然のものではない炎で包まれており、妖を倒すごとに炎が消える領域が増えていることが確認されている。
現れる妖は火の玉の姿をしている。ランクが高めの個体は大きめで、人の顔のようなものが浮かぶという。こちらの詳細は資料を確認願いたい。
「それらを倒しつつ、炎の通路を進みたいのじゃが、かなり面倒じゃな」
考古学者達の飛ばすドローンの情報によれば、通路は突入口から南北にそれぞれ100メートルほど伸びていると想定されている。確認ができなかったのは、突発して壁から吹き出た炎の為と見られているが、詳細は不明だ。
「ともあれ、探索領域を増やしたいの」
探索領域を広げることで、この遺跡の全容解明が進む可能性もある。以前の遺跡はほぼ封印や装飾が風化していて解析が困難だった。この遺跡では新たな発見があるとよいのだが……。
F.i.V.E.としても、大きな進捗が欲しい。虎穴に入らずんば、虎子を得ずといったところか。炎の中に飛び込むのは致し方ないだろう。
「危険も大きいでしょうから、十分準備しないといけませんわね」
静音も今回は助力したいと覚者達に告げる。消耗が大きくなると予想されるので、自身の回復が力になると彼女は意気込んでいるようだ。
「うむ、くれぐれも気をつけての。大きな傷を負うのは、うちも辛いからの……」
無理の無い程度に頑張ってほしい。けいはそんな難しい希望を覚者達へと願うのだった。
■シナリオ詳細
■成功条件
1.探索領域をできるだけ広げる!
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
どこかでお会いしたことのある方もこんにちは。なちゅいです。
こちらは、遺跡関連シナリオですが、
どなた様でも参加できますよう
シリーズシナリオとはなっておりません。
予めご了承願います。
なお、今回は『炎の遺跡(仮称)』3回目の探索です。
●敵
○妖(自然系)
火の玉の形をした妖です。
いずれも、浮遊、火傷無効状態にあります。
※ランク2
直径20センチ余りある大きさの火の玉で、人の顔が浮かんでおります。
・火柱……特近列・火傷
・炎上……特遠単・怒り
・かぶりつき……物遠単・HP吸収
※ランク1
直径15センチ前後の火の玉で、こちらには顔はありません。
・火炎弾……特遠単・火傷
・体当たり……物遠単
なお、火傷と下記特別ルールのHP減少のダメージは重複します。
●状況
はしごで降りた場所は、
前回突入した付近のみ、炎が消えています。
ボーリングで穴があいた箇所とその周囲数メートルは火が消えています。
南北に伸びた通路の探索が今回の目的です。
どうやら、その長さはそれぞれ100メートルほどありそうです。
25メートルごとに、
ランク2が1体、ランク1が2体と交戦することとなります。
また、事前のドローン調査で、
50メートルを超えた場所のどこか(1箇所とは限りません)で
2、3ターンに一度壁から通路を塞ぐ炎が
発する箇所があることを確認しております。
通り抜けは可能ですが、
対策なしにこれを食らうとかなりのダメージ(HP50減少)を追います。
何かかしらの対策が必要でしょう。
交戦回数や炎の状況を考えると、
どちらかの方向に決めて進むほうが良いでしょう。
入り口付近以外の炎上エリアでは、
下記ルールが適応されます。
●当シナリオ特別ルール
炎上エリア突入時は
1ターン(10秒)経過ごとにHPが10減少し、
戦闘以外でも回復することがありません。
今回は、縦穴の底の一定範囲外に出たところからカウントです。
また、今後の展開次第で
このルール適用除外エリアが広がる可能性があります。
●NPC
○河澄・静音
お邪魔します。
基本的には、入り口付近で回復支援の予定ですが、
皆様のプレイングでのご指示を優先させていただきます。
それではよろしくお願いいたします。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
6日
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
8/8
公開日
2017年02月03日
2017年02月03日
■メイン参加者 8人■
●炎突入の前に……
遺跡の入り口となる工事現場跡へとやってきたF.i.V.E.の覚者達。
彼らはすぐにボーリングで開かれた穴に取り付けられたはしごを伝って、遺跡内へと降り立つ。
「これが噂に聞く、炎の遺跡ですね……」
じりじりと感じる熱さ。火行の『赤き炎のラガッツァ』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)ですら、その熱さは堪えるらしい。
入り口そばは炎がなくなっている為にまだ耐えられるが、通路奥は解明のできていない炎で包まれていた。この先は覚者であろうとも、進むには万全の準備と対策を求められる。
『マジシャンガール』茨田・凜(CL2000438)はスキルを使って通路を見回す。そのお腹が大きくなっている彼女は妊娠しており、臨月も間近といった状況だ。
「また、遺跡探検楽しみなんよ」
一般人でも安全に入ることのできる遊戯施設で、こういうワクワクさせるようなアトラクションがあればと凜は考えるが、さすがに世の中そううまいようにはできていない。
「今回は外部からの邪魔も入らないようだし、目一杯中を調べましょうか」
『ファイヴ村管理人農林担当』エメレンツィア・フォン・フラウベルク(CL2000496)も調査に関しては楽しそうにしていたが、熱さに関しては苦手なのか、熱気に眉を顰めている。
「確かに、この前は思いがけない邪魔が入ったしな。今回こそ出来るだけ奥まで調べてーとこだな」
『守人刀』獅子王 飛馬(CL2001466) が同意する。集中して調査ができるのは望ましいことだが、だからこそ成果も上げたいところだ。
「まあ何時までも入り口付近でうろうろしてたら、いかんよな。尻を叩かれても仕方あるまい」
緒形 逝(CL2000156)は入り口確保のタイミングから少し間を置いての参加だ。彼は今までの報告書を読み、封印や何かがあるという場合はもう一枚裏がありそうだと示唆する。
「えーっと、四神だっけか。其れに見立ててあるなら、街の方に影響が有るのかもな」
街の護りというのは、街中や街の外側……近隣の遺跡などに多い。根拠はないが、おっさんの勘だと逝は語った。
だが、同じような意見を出すメンバーは多い。『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)もその1人だ。
「俺が前に名前を付けた遺跡は、土属性の妖が出現した」
次に見つかった神秘探索の遺跡外で、水系の妖が出現。そして、今回の炎系……。
そして、逝も言っていた四神。朱雀、白虎、青龍、玄武はそれぞれ四元素と方角を司どるとされている。大亀遺跡を玄武とするなら今回は恐らく朱雀だと、奏空も推察していた。
「ひょっとして、これらの遺跡は地図上で見たら、それぞれ司どると言われてる方角に当てはまっているのかな」
それは後で確認するとして。まずは妖を倒し、探索範囲を広げることが優先だ。
大亀の今回がそれに当てはまれば、可能性も高まる。未だ発見されていない遺跡の発見にも通じるかもしれない。
そんな話に、そして、遺跡に奥に突入するこの状況に、『五行の橋渡し』四条・理央(CL2000070) は胸を躍らせる。
「こういうのを求めて、F.i.V.E.に入ったんだ。さぁ、遺跡探索、張り切って行ってみよう!」
「さーて、遺跡探索! どんどん進んでいこうぜ!」
『黒い太陽』切裂 ジャック(CL2001403)も調子を合わせる。この先に何が待ち受けているのか。それはおそらく、良くないものかもしれないと予感めいてジャックは語ったものの。
「それはきっと、パンドラの箱かもしんねーし!! どんどんいこう!」
何か新しい展開を求めて。皆、気合を入れて探索に臨むのである。
●~25M
覚醒した後、炎の中へと突入しようとする覚者達を、1人の少女が気遣う。
「皆さん、ご無理はなさらず……」
支援役の『頑張り屋の和風少女』河澄・静音(nCL2000059) がせめてもの補助にと数人に水衣をかける。
メンバー達はこの場に静音を残し、先に進むこととなる……のだが。通路は南北に長く伸びている。そこで、理央が手を挙げた。
「南側から行こう。五行思想だと火行は南を司るからね」
ここで封じる妖は天行に属する獣系だろうかと、理央は予想を立てる。元々考古学を専攻する彼女の意見に、メンバーからは異論は出なかった。
「回復不能ダメージが蓄積する中での度重なる戦闘ですか」
最初、ラーラはこの遺跡調査の話を聞き、できれば南北両方の捜索をと思っていたが、実際どこまで進むことができるのかと頭を抱えていたようだ。
「場合によっては、途中でも戻る事も覚悟しとかないとね」
静音のサポートの手が回らぬ者へと、演舞・清爽をかけていた奏空が仲間に注意を促す。
そうして、メンバー達は南側の通路へ……炎の中へと踏み出した。
先頭を行くのは、飛馬と逝。体力の減少を懸念し、全力で前へと移動していく。
その後を、奏空、ラーラが続く。彼らもまた全力で前に進むが、凜は周囲を見回しながらの探索で、やや遅れて続いていたようだ。
一行の後方からは、理央、エメレンツィア、ジャックが追いかける。
「それにしてもホント、暑いわね」
汗をかきつつ、前列メンバーから離れすぎないよう追うエメレンツィア。気化熱が出ているというのに、全く冷えている感じがしない。この場で凍傷や氷結になったなら、どうなるのだろうか。
ジャックはマッピングも考えていたが、ペンもそうだが、それ以上に紙が耐え切れず、内部での地図作成を断念する。
それならと彼は次に同属把握を試みるが、何も感知しなかった。
前回遺跡の奥にいたのが古妖でなく、妖だったということで、どうやら今回も奥にいるのは古妖ではないらしい。
ともあれ、はぐれないようにと、ジャックもまた仲間と歩幅を合わせて同行する。
ただ、そう簡単には進ませてはくれない。一行の目の前に3つの火の玉が現れる。そのうちの1つには不気味な顔が浮かんでいた。
「この火の玉型の妖は、一体何者なんでしょうね」
ラーラはそれを見据えて考える。これまで、物や自然現象が妖化する事件は結構な数が発生しているが、遺跡を燃やす炎が妖となったのか、はたまた、炎の妖の影響で遺跡が炎に包まれたのか……。
「妖が消えた範囲の炎が消えるってことは、後者って気もしますが」
そうこうしている間にも、敵は襲い掛かってくる。覚者達はその迎撃の為に備えた。
「良い子に甘い焼き菓子を、悪い子には石炭を……イオ・ブルチャーレ!」
前後のメンバーが戦闘態勢を整える中、ラーラもまた煌炎の書を広げて叫び、英霊の力を引き出していくのである。
●~50M
25メートル地点で現れた、3体の火の玉型の妖達。
その駆除の為に、奏空も素早く英霊の力を引き出し、さらに敵の群れへと激しい雷を叩き落とす。敵が横一列に並んでいたこともあり、全員に痺れを与えていった。
後方のジャックは、自らの内にある古妖の力を断片的に解放する。その上で、彼は失ったはずの右目を光らせて怪光線を撃ち出す。
ほぼ同時に、逝も動いていた。
(長丁場だから、気力の管理して切らさんようにせんとな)
周囲の岩を鎧のように纏って防御を固め、呪いに包まれた直刀・悪食の刃を手当たり次第に叩き込んでいく。
エメレンツィアや理央も自身や仲間の支援に当たる中、前に立つ飛馬は自らの体を硬化させる。
「地上だろうと炎の中だろうと、俺がやることは同じだ。かかって来やがれ、火の玉野郎!」
望むところと特攻してくる妖。2本の刀を操り、飛馬は敵の体当たりやかぶりつきを受け止めていた。多少の火傷は、凜が回復を請け負い、深層水の神秘の力で不浄を取り払う。
態勢が整ってくれば、覚者達も少しずつ攻勢を強める。
ラーラは火行の力で拳程の大きさの火球を2連続で飛ばす。異質なる炎を火の玉も完全には無効化することができず、ダメージによってふらついていたようだ。
仲間が妖の攻撃を受ければ、エメレンツィアは癒しの滴を落として傷を癒す。
(ついでに熱ダメージの緩和になれば……。いえ、焼け石に水かしらね、文字通り)
遺跡の熱によって削られた体力は、この場では回復しきることができない。彼女は改めてそれを実感していた。
理央は戦況を俯瞰してみながら、攻撃、回復、補助と臨機応援に切り替えていく。探索序盤ということもあり、彼女は水竜を呼び寄せて敵陣へと喰らいつかせていた。
(今回、回復役に回れる水行使いが多いもんね)
この場には、理央を含めて4人の水行使い。そして、入り口には静音もいる。多少であれば、リカバリはうまくいくはずだ。
まだ先は長い。できるだけ体力を減らさないようにと、奏空が雷を叩き落して顔なしの火の玉を消し去ってしまう。
続けざまにジャックが起こす荒波を敵陣に浴びせかけ、顔なしを1体鎮火させた。顔ありはしばらく抵抗を繰り返すも、覚者の数に圧倒されたそいつは、体勢を崩された逝の刀によって寸断されたのである。
メンバー達は戦いが終わると、互いの傷の状況を迅速に確認していく。そうして、すぐに覚者達は前進し、25メートル先でも妖と遭遇することとなる。
2戦目となれば、手馴れたもの。手堅く1戦目と同様の戦略で、撃破に至る。
これで、入り口から南に50メートル。この先のどこかに、壁から炎が噴き出すポイントがあるはずだ。
●~75M
50メートルを越え、覚者達は全力移動を止め、前方に注意しながら進むことにする。
燃え上がる炎の中、メンバーは慎重に進む。そんな中だ。
突然、左右の壁から通路を覆うように炎が噴き出す。遺跡に仕掛けられたと思われるトラップだ。
「危ねっ!」
戦闘を行く飛馬が飛びのき、難を逃れていた。
突入口からはだいたい60メートルくらいか。まずはこのトラップについて、メンバーは状況確認を行う。
「……お」
メンバーが壁や炎に注視する中、ジャックは足元に何かが落ちていたのに気づく。それは、黒焦げになったドローン。考古学者が飛ばしたものに違いないだろう。
さて、問題の炎だが、他の場所に比べて温度が高いようだ。しかし、ランダムに炎が止まることがあり、飛馬がそれを待って通過することにする。
「だんだん中の危険度も上がって来てるよな。この炎が出る穴とかも、妖倒せばちゃんと安全になるんかな?」
そんな疑問を抱く飛馬に続くメンバー達。だが、逝は敢えてダメージ覚悟で、この場を物質透過で抜けられないかと試す。
「…………ん?」
どうやら、この炎は遺跡内部を覆う他の炎とは違うらしく、逝はこの炎によるダメージを受けてはいない。
「見た目は、噴き出す方の温度が高そうなのだけれどね」
壁に仕掛けられた穴から、噴射する形で炎が通路を塞ぐ。理央はしばしこの場に留まり、カメラが壊れないよう気がけながら、後で分析を進めるべく撮影していたようだ。
確定した情報がない以上、今回は避けるのみとメンバーは判断したようで、ラーラや奏空、凜が炎の噴き出す瞬間を視力や聴力で感知しつつ、全員この場を通り抜けていたようだ。
「……火が出てる近くで、穴を開けたりしたら火が止まるかもってこと?」
凜はふと、思い浮かんだ疑問を実行すべく、炎の噴射口付近で通路に穴を開けようと試みる。入り口周囲の火が消えていたからという理由で凜は思い立ったのだが、それは前回のメンバーが妖を駆除した影響が大きいと思われる。残念ながら、通路を塞ぐ炎に特別な変化は無い。その火に攻撃をしてみたら、何か違ったろうか。
「この装置って、普通に何かの仕掛けで動くようにも見えるけど……」
「おっと、前、前!」
装置に気を取られる仲間へと、ジャックが注意を促す。少し前方に、新手の火の玉が登場していたのだ。
メンバー達はそいつらの駆除を優先すべく、前方へと移動していく。
程なく、3度目の戦いも乗り切ったメンバー達。
ただ、ここまでくると、淡々と戦うのも辛くなってきていた。
直接妖から受けた傷はエメレンツィアがメインで回復、減った仲間達の気力の補填にと理央、その補佐に奏空が回る。逝は自らで気力を補填していたようだ。
ある程度態勢を整えた一行だったが、メンバー達は後退の2文字を頭に過ぎらせていた。
●~100Mからの……
80メートル地点で再び、炎の噴射を確認した覚者達。同様に対処をこなしてこの場所を乗り切るも、徐々に減り行く体力を懸念する。
ランダムに噴き出す炎を通り抜ける間、布陣を崩さぬよう待つ必要があり、この仕掛けで時間をとられるのも痛いところだ。
それも無事に通り抜けたメンバー達の行く手に、またも妖が立ち塞がる。今度は、顔ありの妖が後ろにいる布陣だ。
これまでと同様、覚者達は迎撃に当たる。奏空がまず、自らの強化を行ってから前列の顔なしに雷を叩き落とす。
逝も呪いをかけることで、敵の動きを止めにかかる。この呪いの効果は、これまでの戦いで幾度も敵の足を止めていた。
「まだまだいけるぜ」
壁となる飛馬の負担も大分軽減されている。彼は仲間の支援を実感しながらも、後方の顔ありが巻き起こす炎を刀で振り払って無効化を図っていた。
敵の布陣を見て、ジャックは氷柱を作り出して火の玉の体を貫き、凍傷を与えていた。
(……さすがに治らないようね)
この熱い中にあっても、凍傷などの効果が消えるわけがないと、仲間の回復に当たるエメレンツィアは目視で確認していたようである。
さすがに、仲間は皆、疲弊してきている。理央も回復、補助をメインに動くことが多くなり、仲間へと恵みの雨を降らせ、さらに治癒力を高める香りを振りまき、回復する仲間のサポートを行う。
(もうすぐ、ママになる大事な時期だから、大ケガしないよう頑張るんよ)
飛んで来る炎。前線メンバーがほぼほぼ盾になってくれるが、凜は流れ弾だけには細心の注意を払う。
対して、攻めに関しては覚者達ももう慣れたもの。逝が地を這う連撃で顔なしを霧散させ、ラーラが2連続で飛ばした炎の塊がもう1体の顔なしを倒す。
ここでも、顔ありが最後まで抵抗を続ける。前に立つメンバーが燃え上がり火柱に耐えてくれているところで、ジャックが仲間の合間から怪光線で妖を射抜いて撃ち落とす。
熱い空気を吸い込み、息つくメンバー達は改めて前方を見る。そこは左へとほぼ直角に折れる道と、右斜め前に進む道があった。
●遺跡所在地の位置関係は……
突入口から、およそ100メートル南。
分岐点に立つ覚者達は、すでに4度の妖との交戦を終えていた。
「えーっと……」
奏空は時間と、それによる体力の低下を計算する。
個別とはいえ、レベル2の相手が4度も続けば、肉体面、精神面の消耗は激しい。理央がメインで気力の回復を行い、エメレンツィアや凜が皆の体力を回復させてはいたが……。
「さすがに、妖との交戦と合わせるときついわね……」
じりじりと燃える炎が、メンバーの体力を削り取っていく。うまくいけば1時間はいられるかと考えていたエメレンツィアだったが、さすがに妖との戦いはそれほど甘くはないといったところか。
覚者でも手練のメンバーばかりが参戦しているが、下手に進んで強力な妖が出現しては対処ができない。
「本当にいるなら、手負いでやれるほど、甘い敵ではないでしょうしね」
エメレンツィアの言葉に、皆が頷く。
(最悪、殿とも思っていたけど……)
ジャックは思う。思った以上に皆が慎重な態度を取っていた為、その必要もなさそうだ。
メンバーの総意もあり、一行は再び2箇所の炎の仕掛けを通り抜け、入り口へと引き返す。
「良かったですわ。皆さん、ご無事で……」
入り口で待っていた静音が癒しの滴を振りまき、メンバーの手当てを行う。
皆、疲弊はしてはいたが、自分達の状態を確認しつつ対処していたこともあり、大事に至る者はいないようだ。それに、静音が安堵の息を漏らす。
ジャックは先ほど回収したドローンを含め、用意していた紙に簡単な内部の地図を作成する。
出来る限り記憶が新しいうちにと、彼は仲間と確認しつつ、問題ない場所や炎のトラップがあった場所などを事細かに記載し、次なる遺跡調査へと臨むメンバーが一目でわかる地図を作成していく。
同時に、奏空はこの工事現場跡付近の地図を用意し、大亀遺跡と神秘探索の遺跡、それに炎の遺跡の位置関係を確認する。
「大亀と炎の遺跡は……」
この地は、丁度、大亀遺跡の真南に当たる。神秘探索の遺跡は全く別の場所のようだが、奏空の読み通りと言えなくもない。
「五行説の朱雀、面白いわね。とすると、同心円上にあと2つかしら」
エメレンツィアがそれに興味を抱く。では、その東西、そして、その中心には……。メンバー達は、何が待ち受けているのかと想像を膨らませながら、帰路に着くのだった。
遺跡の入り口となる工事現場跡へとやってきたF.i.V.E.の覚者達。
彼らはすぐにボーリングで開かれた穴に取り付けられたはしごを伝って、遺跡内へと降り立つ。
「これが噂に聞く、炎の遺跡ですね……」
じりじりと感じる熱さ。火行の『赤き炎のラガッツァ』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)ですら、その熱さは堪えるらしい。
入り口そばは炎がなくなっている為にまだ耐えられるが、通路奥は解明のできていない炎で包まれていた。この先は覚者であろうとも、進むには万全の準備と対策を求められる。
『マジシャンガール』茨田・凜(CL2000438)はスキルを使って通路を見回す。そのお腹が大きくなっている彼女は妊娠しており、臨月も間近といった状況だ。
「また、遺跡探検楽しみなんよ」
一般人でも安全に入ることのできる遊戯施設で、こういうワクワクさせるようなアトラクションがあればと凜は考えるが、さすがに世の中そううまいようにはできていない。
「今回は外部からの邪魔も入らないようだし、目一杯中を調べましょうか」
『ファイヴ村管理人農林担当』エメレンツィア・フォン・フラウベルク(CL2000496)も調査に関しては楽しそうにしていたが、熱さに関しては苦手なのか、熱気に眉を顰めている。
「確かに、この前は思いがけない邪魔が入ったしな。今回こそ出来るだけ奥まで調べてーとこだな」
『守人刀』獅子王 飛馬(CL2001466) が同意する。集中して調査ができるのは望ましいことだが、だからこそ成果も上げたいところだ。
「まあ何時までも入り口付近でうろうろしてたら、いかんよな。尻を叩かれても仕方あるまい」
緒形 逝(CL2000156)は入り口確保のタイミングから少し間を置いての参加だ。彼は今までの報告書を読み、封印や何かがあるという場合はもう一枚裏がありそうだと示唆する。
「えーっと、四神だっけか。其れに見立ててあるなら、街の方に影響が有るのかもな」
街の護りというのは、街中や街の外側……近隣の遺跡などに多い。根拠はないが、おっさんの勘だと逝は語った。
だが、同じような意見を出すメンバーは多い。『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)もその1人だ。
「俺が前に名前を付けた遺跡は、土属性の妖が出現した」
次に見つかった神秘探索の遺跡外で、水系の妖が出現。そして、今回の炎系……。
そして、逝も言っていた四神。朱雀、白虎、青龍、玄武はそれぞれ四元素と方角を司どるとされている。大亀遺跡を玄武とするなら今回は恐らく朱雀だと、奏空も推察していた。
「ひょっとして、これらの遺跡は地図上で見たら、それぞれ司どると言われてる方角に当てはまっているのかな」
それは後で確認するとして。まずは妖を倒し、探索範囲を広げることが優先だ。
大亀の今回がそれに当てはまれば、可能性も高まる。未だ発見されていない遺跡の発見にも通じるかもしれない。
そんな話に、そして、遺跡に奥に突入するこの状況に、『五行の橋渡し』四条・理央(CL2000070) は胸を躍らせる。
「こういうのを求めて、F.i.V.E.に入ったんだ。さぁ、遺跡探索、張り切って行ってみよう!」
「さーて、遺跡探索! どんどん進んでいこうぜ!」
『黒い太陽』切裂 ジャック(CL2001403)も調子を合わせる。この先に何が待ち受けているのか。それはおそらく、良くないものかもしれないと予感めいてジャックは語ったものの。
「それはきっと、パンドラの箱かもしんねーし!! どんどんいこう!」
何か新しい展開を求めて。皆、気合を入れて探索に臨むのである。
●~25M
覚醒した後、炎の中へと突入しようとする覚者達を、1人の少女が気遣う。
「皆さん、ご無理はなさらず……」
支援役の『頑張り屋の和風少女』河澄・静音(nCL2000059) がせめてもの補助にと数人に水衣をかける。
メンバー達はこの場に静音を残し、先に進むこととなる……のだが。通路は南北に長く伸びている。そこで、理央が手を挙げた。
「南側から行こう。五行思想だと火行は南を司るからね」
ここで封じる妖は天行に属する獣系だろうかと、理央は予想を立てる。元々考古学を専攻する彼女の意見に、メンバーからは異論は出なかった。
「回復不能ダメージが蓄積する中での度重なる戦闘ですか」
最初、ラーラはこの遺跡調査の話を聞き、できれば南北両方の捜索をと思っていたが、実際どこまで進むことができるのかと頭を抱えていたようだ。
「場合によっては、途中でも戻る事も覚悟しとかないとね」
静音のサポートの手が回らぬ者へと、演舞・清爽をかけていた奏空が仲間に注意を促す。
そうして、メンバー達は南側の通路へ……炎の中へと踏み出した。
先頭を行くのは、飛馬と逝。体力の減少を懸念し、全力で前へと移動していく。
その後を、奏空、ラーラが続く。彼らもまた全力で前に進むが、凜は周囲を見回しながらの探索で、やや遅れて続いていたようだ。
一行の後方からは、理央、エメレンツィア、ジャックが追いかける。
「それにしてもホント、暑いわね」
汗をかきつつ、前列メンバーから離れすぎないよう追うエメレンツィア。気化熱が出ているというのに、全く冷えている感じがしない。この場で凍傷や氷結になったなら、どうなるのだろうか。
ジャックはマッピングも考えていたが、ペンもそうだが、それ以上に紙が耐え切れず、内部での地図作成を断念する。
それならと彼は次に同属把握を試みるが、何も感知しなかった。
前回遺跡の奥にいたのが古妖でなく、妖だったということで、どうやら今回も奥にいるのは古妖ではないらしい。
ともあれ、はぐれないようにと、ジャックもまた仲間と歩幅を合わせて同行する。
ただ、そう簡単には進ませてはくれない。一行の目の前に3つの火の玉が現れる。そのうちの1つには不気味な顔が浮かんでいた。
「この火の玉型の妖は、一体何者なんでしょうね」
ラーラはそれを見据えて考える。これまで、物や自然現象が妖化する事件は結構な数が発生しているが、遺跡を燃やす炎が妖となったのか、はたまた、炎の妖の影響で遺跡が炎に包まれたのか……。
「妖が消えた範囲の炎が消えるってことは、後者って気もしますが」
そうこうしている間にも、敵は襲い掛かってくる。覚者達はその迎撃の為に備えた。
「良い子に甘い焼き菓子を、悪い子には石炭を……イオ・ブルチャーレ!」
前後のメンバーが戦闘態勢を整える中、ラーラもまた煌炎の書を広げて叫び、英霊の力を引き出していくのである。
●~50M
25メートル地点で現れた、3体の火の玉型の妖達。
その駆除の為に、奏空も素早く英霊の力を引き出し、さらに敵の群れへと激しい雷を叩き落とす。敵が横一列に並んでいたこともあり、全員に痺れを与えていった。
後方のジャックは、自らの内にある古妖の力を断片的に解放する。その上で、彼は失ったはずの右目を光らせて怪光線を撃ち出す。
ほぼ同時に、逝も動いていた。
(長丁場だから、気力の管理して切らさんようにせんとな)
周囲の岩を鎧のように纏って防御を固め、呪いに包まれた直刀・悪食の刃を手当たり次第に叩き込んでいく。
エメレンツィアや理央も自身や仲間の支援に当たる中、前に立つ飛馬は自らの体を硬化させる。
「地上だろうと炎の中だろうと、俺がやることは同じだ。かかって来やがれ、火の玉野郎!」
望むところと特攻してくる妖。2本の刀を操り、飛馬は敵の体当たりやかぶりつきを受け止めていた。多少の火傷は、凜が回復を請け負い、深層水の神秘の力で不浄を取り払う。
態勢が整ってくれば、覚者達も少しずつ攻勢を強める。
ラーラは火行の力で拳程の大きさの火球を2連続で飛ばす。異質なる炎を火の玉も完全には無効化することができず、ダメージによってふらついていたようだ。
仲間が妖の攻撃を受ければ、エメレンツィアは癒しの滴を落として傷を癒す。
(ついでに熱ダメージの緩和になれば……。いえ、焼け石に水かしらね、文字通り)
遺跡の熱によって削られた体力は、この場では回復しきることができない。彼女は改めてそれを実感していた。
理央は戦況を俯瞰してみながら、攻撃、回復、補助と臨機応援に切り替えていく。探索序盤ということもあり、彼女は水竜を呼び寄せて敵陣へと喰らいつかせていた。
(今回、回復役に回れる水行使いが多いもんね)
この場には、理央を含めて4人の水行使い。そして、入り口には静音もいる。多少であれば、リカバリはうまくいくはずだ。
まだ先は長い。できるだけ体力を減らさないようにと、奏空が雷を叩き落して顔なしの火の玉を消し去ってしまう。
続けざまにジャックが起こす荒波を敵陣に浴びせかけ、顔なしを1体鎮火させた。顔ありはしばらく抵抗を繰り返すも、覚者の数に圧倒されたそいつは、体勢を崩された逝の刀によって寸断されたのである。
メンバー達は戦いが終わると、互いの傷の状況を迅速に確認していく。そうして、すぐに覚者達は前進し、25メートル先でも妖と遭遇することとなる。
2戦目となれば、手馴れたもの。手堅く1戦目と同様の戦略で、撃破に至る。
これで、入り口から南に50メートル。この先のどこかに、壁から炎が噴き出すポイントがあるはずだ。
●~75M
50メートルを越え、覚者達は全力移動を止め、前方に注意しながら進むことにする。
燃え上がる炎の中、メンバーは慎重に進む。そんな中だ。
突然、左右の壁から通路を覆うように炎が噴き出す。遺跡に仕掛けられたと思われるトラップだ。
「危ねっ!」
戦闘を行く飛馬が飛びのき、難を逃れていた。
突入口からはだいたい60メートルくらいか。まずはこのトラップについて、メンバーは状況確認を行う。
「……お」
メンバーが壁や炎に注視する中、ジャックは足元に何かが落ちていたのに気づく。それは、黒焦げになったドローン。考古学者が飛ばしたものに違いないだろう。
さて、問題の炎だが、他の場所に比べて温度が高いようだ。しかし、ランダムに炎が止まることがあり、飛馬がそれを待って通過することにする。
「だんだん中の危険度も上がって来てるよな。この炎が出る穴とかも、妖倒せばちゃんと安全になるんかな?」
そんな疑問を抱く飛馬に続くメンバー達。だが、逝は敢えてダメージ覚悟で、この場を物質透過で抜けられないかと試す。
「…………ん?」
どうやら、この炎は遺跡内部を覆う他の炎とは違うらしく、逝はこの炎によるダメージを受けてはいない。
「見た目は、噴き出す方の温度が高そうなのだけれどね」
壁に仕掛けられた穴から、噴射する形で炎が通路を塞ぐ。理央はしばしこの場に留まり、カメラが壊れないよう気がけながら、後で分析を進めるべく撮影していたようだ。
確定した情報がない以上、今回は避けるのみとメンバーは判断したようで、ラーラや奏空、凜が炎の噴き出す瞬間を視力や聴力で感知しつつ、全員この場を通り抜けていたようだ。
「……火が出てる近くで、穴を開けたりしたら火が止まるかもってこと?」
凜はふと、思い浮かんだ疑問を実行すべく、炎の噴射口付近で通路に穴を開けようと試みる。入り口周囲の火が消えていたからという理由で凜は思い立ったのだが、それは前回のメンバーが妖を駆除した影響が大きいと思われる。残念ながら、通路を塞ぐ炎に特別な変化は無い。その火に攻撃をしてみたら、何か違ったろうか。
「この装置って、普通に何かの仕掛けで動くようにも見えるけど……」
「おっと、前、前!」
装置に気を取られる仲間へと、ジャックが注意を促す。少し前方に、新手の火の玉が登場していたのだ。
メンバー達はそいつらの駆除を優先すべく、前方へと移動していく。
程なく、3度目の戦いも乗り切ったメンバー達。
ただ、ここまでくると、淡々と戦うのも辛くなってきていた。
直接妖から受けた傷はエメレンツィアがメインで回復、減った仲間達の気力の補填にと理央、その補佐に奏空が回る。逝は自らで気力を補填していたようだ。
ある程度態勢を整えた一行だったが、メンバー達は後退の2文字を頭に過ぎらせていた。
●~100Mからの……
80メートル地点で再び、炎の噴射を確認した覚者達。同様に対処をこなしてこの場所を乗り切るも、徐々に減り行く体力を懸念する。
ランダムに噴き出す炎を通り抜ける間、布陣を崩さぬよう待つ必要があり、この仕掛けで時間をとられるのも痛いところだ。
それも無事に通り抜けたメンバー達の行く手に、またも妖が立ち塞がる。今度は、顔ありの妖が後ろにいる布陣だ。
これまでと同様、覚者達は迎撃に当たる。奏空がまず、自らの強化を行ってから前列の顔なしに雷を叩き落とす。
逝も呪いをかけることで、敵の動きを止めにかかる。この呪いの効果は、これまでの戦いで幾度も敵の足を止めていた。
「まだまだいけるぜ」
壁となる飛馬の負担も大分軽減されている。彼は仲間の支援を実感しながらも、後方の顔ありが巻き起こす炎を刀で振り払って無効化を図っていた。
敵の布陣を見て、ジャックは氷柱を作り出して火の玉の体を貫き、凍傷を与えていた。
(……さすがに治らないようね)
この熱い中にあっても、凍傷などの効果が消えるわけがないと、仲間の回復に当たるエメレンツィアは目視で確認していたようである。
さすがに、仲間は皆、疲弊してきている。理央も回復、補助をメインに動くことが多くなり、仲間へと恵みの雨を降らせ、さらに治癒力を高める香りを振りまき、回復する仲間のサポートを行う。
(もうすぐ、ママになる大事な時期だから、大ケガしないよう頑張るんよ)
飛んで来る炎。前線メンバーがほぼほぼ盾になってくれるが、凜は流れ弾だけには細心の注意を払う。
対して、攻めに関しては覚者達ももう慣れたもの。逝が地を這う連撃で顔なしを霧散させ、ラーラが2連続で飛ばした炎の塊がもう1体の顔なしを倒す。
ここでも、顔ありが最後まで抵抗を続ける。前に立つメンバーが燃え上がり火柱に耐えてくれているところで、ジャックが仲間の合間から怪光線で妖を射抜いて撃ち落とす。
熱い空気を吸い込み、息つくメンバー達は改めて前方を見る。そこは左へとほぼ直角に折れる道と、右斜め前に進む道があった。
●遺跡所在地の位置関係は……
突入口から、およそ100メートル南。
分岐点に立つ覚者達は、すでに4度の妖との交戦を終えていた。
「えーっと……」
奏空は時間と、それによる体力の低下を計算する。
個別とはいえ、レベル2の相手が4度も続けば、肉体面、精神面の消耗は激しい。理央がメインで気力の回復を行い、エメレンツィアや凜が皆の体力を回復させてはいたが……。
「さすがに、妖との交戦と合わせるときついわね……」
じりじりと燃える炎が、メンバーの体力を削り取っていく。うまくいけば1時間はいられるかと考えていたエメレンツィアだったが、さすがに妖との戦いはそれほど甘くはないといったところか。
覚者でも手練のメンバーばかりが参戦しているが、下手に進んで強力な妖が出現しては対処ができない。
「本当にいるなら、手負いでやれるほど、甘い敵ではないでしょうしね」
エメレンツィアの言葉に、皆が頷く。
(最悪、殿とも思っていたけど……)
ジャックは思う。思った以上に皆が慎重な態度を取っていた為、その必要もなさそうだ。
メンバーの総意もあり、一行は再び2箇所の炎の仕掛けを通り抜け、入り口へと引き返す。
「良かったですわ。皆さん、ご無事で……」
入り口で待っていた静音が癒しの滴を振りまき、メンバーの手当てを行う。
皆、疲弊はしてはいたが、自分達の状態を確認しつつ対処していたこともあり、大事に至る者はいないようだ。それに、静音が安堵の息を漏らす。
ジャックは先ほど回収したドローンを含め、用意していた紙に簡単な内部の地図を作成する。
出来る限り記憶が新しいうちにと、彼は仲間と確認しつつ、問題ない場所や炎のトラップがあった場所などを事細かに記載し、次なる遺跡調査へと臨むメンバーが一目でわかる地図を作成していく。
同時に、奏空はこの工事現場跡付近の地図を用意し、大亀遺跡と神秘探索の遺跡、それに炎の遺跡の位置関係を確認する。
「大亀と炎の遺跡は……」
この地は、丁度、大亀遺跡の真南に当たる。神秘探索の遺跡は全く別の場所のようだが、奏空の読み通りと言えなくもない。
「五行説の朱雀、面白いわね。とすると、同心円上にあと2つかしら」
エメレンツィアがそれに興味を抱く。では、その東西、そして、その中心には……。メンバー達は、何が待ち受けているのかと想像を膨らませながら、帰路に着くのだった。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
『壊れたドローン』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:切裂 ジャック(CL2001403)
カテゴリ:アクセサリ
取得者:切裂 ジャック(CL2001403)

■あとがき■
遺跡の調査、お疲れ様でした。
通路途中の炎の仕掛けは、
撮影された画像と回収されたドローンによって
分析されることとなるでしょう。
次なる調査まで、
しばしお待ちいただきますよう願います。
ともあれ、今回はお疲れ様でした。
通路途中の炎の仕掛けは、
撮影された画像と回収されたドローンによって
分析されることとなるでしょう。
次なる調査まで、
しばしお待ちいただきますよう願います。
ともあれ、今回はお疲れ様でした。








