クリスマスSS 2015
寒い夜だった。
その証拠に、雪が降っている。
凍てつく夜道を、ゆっくりと進む影が二つ。
「寒い? 大丈夫?」
「ああ。……むしろ温かいくらいだな」
「そう―――」
その影と影はぴたりとくっついている。
男と女―――晃と慈雨は、寄り添いながらこの道を歩いていた。
口数は、あまり多くない。
それなりに喋るこの二人としては、少し珍しい。
だが、その原因を探るのは、さして難しくも無い。
(流石にベタ過ぎたかしら……)
慈雨が首元の繊維を撫ぜた。
それは両者を繋ぐ、メビウスの輪。
一本の手編みマフラーを二人で一緒に巻き付けていた二人は、
何処かくすぐったいのであろう。頬を朱に染めていた。
……こんなに近い二人なのに、互いを繋ぐ糸は
表向きには未だ”愛情”では無いというのだから、不思議だ。
―――いや、気づいてはいる。
ただ、伝えるのが怖いだけだ。
(もしかしたら、全てが崩れてしまうかもしれないから)
人はそれを、弱さだと謗るだろうか?
けれど、この温かさは……。
この温かさだけは、真実だ。
「メリークリスマス、晃」
「メリークリスマス、慈雨」
二人同時呟いて、同時に含羞む。
唯一の真実は、”此処”にある。
ならば、恐れるものなど何もない。
何も、無いのだ―――。
その証拠に、雪が降っている。
凍てつく夜道を、ゆっくりと進む影が二つ。
「寒い? 大丈夫?」
「ああ。……むしろ温かいくらいだな」
「そう―――」
その影と影はぴたりとくっついている。
男と女―――晃と慈雨は、寄り添いながらこの道を歩いていた。
口数は、あまり多くない。
それなりに喋るこの二人としては、少し珍しい。
だが、その原因を探るのは、さして難しくも無い。
(流石にベタ過ぎたかしら……)
慈雨が首元の繊維を撫ぜた。
それは両者を繋ぐ、メビウスの輪。
一本の手編みマフラーを二人で一緒に巻き付けていた二人は、
何処かくすぐったいのであろう。頬を朱に染めていた。
……こんなに近い二人なのに、互いを繋ぐ糸は
表向きには未だ”愛情”では無いというのだから、不思議だ。
―――いや、気づいてはいる。
ただ、伝えるのが怖いだけだ。
(もしかしたら、全てが崩れてしまうかもしれないから)
人はそれを、弱さだと謗るだろうか?
けれど、この温かさは……。
この温かさだけは、真実だ。
「メリークリスマス、晃」
「メリークリスマス、慈雨」
二人同時呟いて、同時に含羞む。
唯一の真実は、”此処”にある。
ならば、恐れるものなど何もない。
何も、無いのだ―――。
