≪体育祭≫五麟マラソン
●
五麟学園の体育祭、それは覚者と一般人が共に汗を流す一大イベントである。
小中高大全ての生徒と校舎を使ったお祭りは、毎年かなりの客がやってくるイベントとなる。
参加するのは生徒だけではない。登録さえ済ませば、学校外部の人間も参加できるのだ。
そんな祭りが、もうすぐやってくる。
●
マラソン。
あの42、195キロ走って順位を争うあれである。
それが今回の、五麟学園の体育祭競技種目の一つであった。
コースは五麟学園からスタートし、五麟市を中心に巡って、再び五麟学園へと戻ってくるというものになる。
途中通る主なところは、市街地、駅前、大池外周、公園など。
登りもあれば、下りもあり、もちろん平坦もあり。
起伏の飛んだ道程となる。
給水ポイントも随時設けてあり、当日は要所要所でコース誘導の係員も多数駆り出される予定だ。
「ペース配分が鍵だな」
「どうせなら、一位を目指しましょう」
この競技にエントリーした男女が、コースの地図を見て作戦を練る。
マラソン種目は多くの外部からの一般人が参加することになっており、彼らもその一員だった。
参加する目的は、人それぞれ。
真面目に走って、トップを狙うも良し。
これを機会に一般人と交流してみるも良し。
誰かと一緒に参加して、共に走って励まし合ったり、楽しく雑談したりして走るも良し。
ウケを狙って、走り方や、格好で目立つも良し。
あるいは、途中で買い食いや、持ち寄ったお弁当を広げて休憩するのも良しだ。
ランナーそれぞれに、楽しみ方がある。
これは、そんな種目だ。
どうせなら。
祭りに華を添える走りを――
五麟学園の体育祭、それは覚者と一般人が共に汗を流す一大イベントである。
小中高大全ての生徒と校舎を使ったお祭りは、毎年かなりの客がやってくるイベントとなる。
参加するのは生徒だけではない。登録さえ済ませば、学校外部の人間も参加できるのだ。
そんな祭りが、もうすぐやってくる。
●
マラソン。
あの42、195キロ走って順位を争うあれである。
それが今回の、五麟学園の体育祭競技種目の一つであった。
コースは五麟学園からスタートし、五麟市を中心に巡って、再び五麟学園へと戻ってくるというものになる。
途中通る主なところは、市街地、駅前、大池外周、公園など。
登りもあれば、下りもあり、もちろん平坦もあり。
起伏の飛んだ道程となる。
給水ポイントも随時設けてあり、当日は要所要所でコース誘導の係員も多数駆り出される予定だ。
「ペース配分が鍵だな」
「どうせなら、一位を目指しましょう」
この競技にエントリーした男女が、コースの地図を見て作戦を練る。
マラソン種目は多くの外部からの一般人が参加することになっており、彼らもその一員だった。
参加する目的は、人それぞれ。
真面目に走って、トップを狙うも良し。
これを機会に一般人と交流してみるも良し。
誰かと一緒に参加して、共に走って励まし合ったり、楽しく雑談したりして走るも良し。
ウケを狙って、走り方や、格好で目立つも良し。
あるいは、途中で買い食いや、持ち寄ったお弁当を広げて休憩するのも良しだ。
ランナーそれぞれに、楽しみ方がある。
これは、そんな種目だ。
どうせなら。
祭りに華を添える走りを――

■シナリオ詳細
■成功条件
1.祭りを楽しもう!
2.一般人と覚者が交流できればベター
3.なし
2.一般人と覚者が交流できればベター
3.なし
●プレイングについて
五麟学園からスタートし、五麟市を中心に巡って、再び五麟学園へと戻ってくるコースをマラソンします。
どのように走るか等を、プレイングに書いて下さい。
例えば、真面目に走る場合は、ペース配分やスパートのかけかたや給水などについて記載してください。スキル等を使うのは禁止となります。
その他、親睦を深めるために一緒に走る。お弁当を作ってきて食べる。あるいはマラソン自体は走らないが、応援やサポートに回るというのありです。
祭りを楽しんで下さい。
●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の33%です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『御崎 衣緒(nCL2000001)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。
よろしくお願いします。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
相談日数
6日
6日
参加費
50LP
50LP
参加人数
24/∞
24/∞
公開日
2016年07月05日
2016年07月05日
■メイン参加者 24人■

●
「一応これでも陸上部だからな。社会人も混じってるだろうけど、上位入賞を目指すぜ」
体育祭当日。
絶好の運動日和。
意気込む奥州 一悟(CL2000076)を、青と赤のジャージを着た光邑 研吾(CL2000032)と光邑 リサ(CL2000053)が見守る。
「リサとデザインお揃いやで。ペアルックちゅーやつやな」
「ふふちょっと恥ずかしいカナ」
スタート地点では、各選手達がひしめきあっていた。
優勝すれば宣伝になるかなと参加しているのは、華神 悠乃(CL2000231)だ。
「仮にもプロアスリートですし? 完全ガチでいきますよー」
シューズ・ウェア・テーピング・ドリンク等真っ当な範囲は手間と資金を惜しまず投入してある。
「大人気ない? アスリートの競技って、遊びじゃないですよ?」
ウェアには自経営スポーツクラブのロゴがしっかりと。
周囲の視線を惹いていた。
「マラソンなー。嫌いだって奴多いけど、オレは走るの好きだぜ!」
成瀬 翔(CL2000063)は、サッカーボールを手にしてスタンバイ。
「とは言っても、ただ走ってるのもつまんねーし、サッカーボールでドリブルしながら走ってみるかな! どこまでボールを逃がさず走り続けられっか、やってみるぜ! 目指せ新記録!」
……そんな記録があるかのかは知らないけど。
「専門は短距離です……とは言え面目を保つ為にも本気で行きます」
氷門・有為(CL2000042)は盤外戦術も厭わない覚悟。
優勝候補達のデータは、揃えてある。
(あこがれだったインターハイの夢、周りとそりが合わなくて諦めちゃったけどここでその夢を捨てる事ができるかな)
ブランクはあるが優勝してみせる。鳴海 蕾花(CL2001006)の手には力がこもった。
各人緊張感が高まる中、係員が号砲の準備にとりかかる。
『セット』
澄んだ音が響く。
工藤・奏空(CL2000955)が猛烈なスタートダッシュを仕掛けた。
「よーし、走るぞ!」
どこまで自分が上位に食い込めるか本気で走る。最初からこうして上位に食い込んで行くのはマラソンの鉄則だ。
(良い位置取りを行わなければ後方集団に取り残されかねない……ガチ勢とエンジョイ勢混在なので余分にスタートダッシュは重要です)
序盤が重要と、有為もトップ争いに最初から加わる。
「さあ、マラソンするぞ。自分で言うのもなんじゃが、長距離走というのは結構好きじゃったりするのじゃよ」
体育祭だから競争なのだろうが。
檜山 樹香(CL2000141) は、自分のペースでのんびりと走り出す。
「フルマラソン走るのは初めてやけど走り込みは毎日やっとるからな。勝ち負けはともかく完走を目指すで!」
最初はペースを落として、焔陰 凛(CL2000119)は無理しないようにする。
「運動とか、苦手だから……ただ、見てるだけのつもり、だったけど……真央さんに、誘われて……走ることにしたよ……」
「せっかくの体育祭ですから一緒に走りましょう!」
運動が不得意な明石ミュエル(CL2000172)は、張り切って走る猫屋敷 真央(CL2000247)の背中を必死に追う。
「水上騎馬戦にも興味はあったのですが……水着……ですよね……きっと……」
賀茂 たまき(CL2000994) は、じっと自身の胸辺りを見る。
「マ、マラソンの方が、私らしいですよね……!」
「水着は、私もまだ準備中ですから……うん、マラソン頑張りましょう!」
守衛野 鈴鳴(CL2000222)が、頷いて。
一緒にゴール出来る様に、無理をし過ぎないペースで走る。流れる街の風景、すれ違った友人達に手を振る。
「最初は人多いし、あんまりボールを前に出さないように気をつけて……ああ、邪魔だよな、これじゃ」
翔はその場でボールを高く蹴り上げ。
「よし、じゃあ、もっと人がバラけるまでリフティングだ! あれ、でも走れねーな? これ!?」
ま、いいや。
ドリブルを再開するのは、まだ先だ。
●
「走るよ! やるからには優勝目指して!」
先頭集団をキープしながら、御白 小唄(CL2001173) は飛ばし過ぎに注意した。
一番気をつけないといけないのはペース配分だ。
(全力疾走になるだろうし、体力が持たなかったら逆効果だもんね)
後、先頭を一人で走るって結構つらいものがあるし。
(このペースなら、このまま集団の中で体力温存だ。給水ポイントには寄らないぜ)
一悟も先頭付近でペースを図る。
「走りなれた地元の道。競技者の存在感、ここぞ示しどころってね」
対して悠乃は、序盤から歩幅の広さを活かせる直線区画で小刻みにペースを上げる。スタート直後から熾烈なトップ争いが、全体の走りをも引っ張っる。
(クラスメートとかお友だち、一緒に仕事したことのある人もたくさんいるので声かけながらゴールを目指していきたいと思いますが――)
ただ負けたくないという気持ちもある。
菊坂 結鹿(CL2000432)は、手を抜かずに真面目に走る。トップグループに食いついていった。観客達からも歓声があがる。
「ゆっくりテキトーに」
そんな空気でも、リリス・スクブス(CL2001265) は勝ち負けより完走を目指す。あと、なぜかタンクトップとブルマ姿だ。
「まぁ、予想はしてたんだが、この面で、このが体で後ろから走られるのは怖いんだろうよ」
田場 義高(CL2001151)の姿は別の意味で注目されている。
「……おじさん、ちょっと凹む……わかってんだがな……それでもそりゃショックなわけよ」
人が避けてくのは勿論。
中にゃ泣き出す子どもがいたりした。
「まぁ、いいや。この参加は優秀な成績でゴールを目指すというより、店の宣伝が目的なんだよ」
なので、シャツにスラックスとエプロンと店の服装だ。
沿道には応援してくれてる家族の姿――「頑張って!」と妻と娘が一生懸命併走してくれる。
それだけで、最高だ。
背中の店の名前をでかでか書いた幟がたなびく。
「吹奏楽部が、「体育会系文化部」「文化系運動部」といわれることを知ってるかな? 音楽をするって、意外と体力が必要なのよ。座奏はもちろんだけど、マーチングにいたっては20~30分のショウの間、動き続け、演奏続け、笑顔と姿勢も保ちつつなんだから」
順位は考えないで、いつもの自分のペースより早くゴールできる。
向日葵 御菓子(CL2000429)は、そんな走り。
「瞬発力には欠けるかもしれないけど、持久力なら負けない自信あるわよ」
なかなかの速さ。
まだまだ余裕もありそうだ。
「今の時期、フルマラソンは大変そうですね。気温とか湿度とか……。私は走るのは得意ではありませんから……、給水所のお手伝いをしましょうか」
ゴミ箱も用意して、いくつか並べ。
上月・里桜(CL2001274) は、掃除も考えて皆をサポートする。
「ええと、給水所って何をすればいいのかしら。道の端に机を並べて、紙コップにお水を……、スポーツドリンクとかもあるといいのかしら」
2種類、してみましょうか、と。
場所を少し離して……それとあめ玉やチョコレートなども用意してみる。
口に入れて走れば、ちょっぴり元気が出るかも。皆、無事にゴールできればと心尽くしだ。
「マラソンですか。長距離はどちらかというと苦手です」
そんな給水所で、柳 燐花(CL2000695)は水を貰って。
(ん?)
と、コースから少し外れたところに、倒れた人影を発見する。
それは、切裂 ジャック(CL2001403)だった。
「う……うう、日差しがキツい、地面も熱い、水分が足りねえ、木乃伊になる」
走るの嫌いで。
流れで参加して。
そしてうつ伏せで倒れていたのだ。ぷるぷる震える腕を伸ばし、へるぷみー。
「大丈夫ですか? 体、起こせますか?」
「ぅぉ、可愛い女の子が見えるここが天国か……つまらない人生だった……ぜ」
ガクッ。
焼けた地面で寝ていては干からびてしまう。
燐花は腕をとって、水を与える。ジャックは奪い取るようにそれを貰う。
「ごくごくごくオフッ、ゲフッゴフッげほげほげほ!!」
「お手伝い致します」
咽る背中をとんとん。
「ここは天国じゃないですし、人生はまだまだ続きます」
「うお! まだ人生だった? よかったー!」
「ご無理はなさらず。ゴールを目指されるなら、お嫌でなければご一緒致しますが」
事切れちゃ駄目です。
倒れないように、並走ならできると思いますから、と言う燐花の背にジャックは純白の翼を見たような気がした。
「え? 一緒に行ってくれんの。控えめに言って天使じゃん!! 名前なんてーの、俺、切裂!
なんぱじゃないよ!!?」
「名前? 柳と申します」
「見ず知らずの人助けるなんざ偉いよなあ。借りができたから、今度返すぜ!!」
ゆるゆると二人は並走を始める。
そのやりとりは、どこかぎこちない。
(天使とか。そんないいものではありませんよ)
●
「一曲歌うから聞いたってや~」
「ヒューヒュー!」
バンドの宣伝を兼ねた凛のアカペラ。
人の多い所で、ロック系の歌を歌って踊ってパフォーマンスをして盛り上がっていた。
「そのうちライブするから宜しゅうな~」
一礼してレースに復帰。
「て歌うのは気持ちええけど余計疲れたんちゃうか?」
ま、ええけど。
日差しが皆を照り付けた。
「おっと、いつもの調子でペースを上げすぎてしまいました」
「ごめん……先、行っても……いいよ……」
ミュエルは、走り慣れていないこともあって既に限界にきていた。
「今日はミュエルさんと一緒に走りたくて声をおかけしたんです、ここからはゆっくり走りましょう!」
相棒の肩をポンと真央は叩いた。
一緒に、公園や景色のいい場所で休憩を取り。給水所でもしっかり補給する。
「真央さん……合わせてくれて、ありがと……」
「体育祭、つまりお祭りですからね! ならば全力で楽しみましょう!!」
時間は気にせず励ましながら最後まで一緒に走りきりたい。
一人で走るよりその方がきっと楽しい。
「縁台の設置はお任せ下さい。そのぶん、紡は接客を、ですね」
時任・千陽(CL2000014)は、少し意地悪に笑いつつ給水所を設営していた。コース横に竹縁台と野点傘を置き。用意するのはスポーツドリンクと麦茶に冷やし飴、水羊羹&水饅頭。
塩飴の袋もいくらか用意しておく。
「見た目にも涼しいかなと思いまして」
飲み物が冷やせるように盥に氷水をいれるが、そこに麻弓 紡(CL2000623) が唇を尖らせて手を浸す。
「……ボク、夏、ダメ……まだ梅雨なのに……」
「お仕事はこれからですよ」
ぐったりする紡だが、立ち寄ってくれた人には営業スマイルを忘れない。
千陽と飲み物を配る。
「ラストスパート頑張ってください」
「よっしゃ! 残りも踏ん張っていく!」
前方ランナーをロックオン。
ペースを一定に抑え体力温存していた奏空は、スポーツドリングを貰って加速していった。
「たまちゃん、がんばれー」
紡が手を振ると、たまきは元気に手を振り返して駆けていく。
「水分補給、しっかりね?」
「応援さんきゅなー!」
翔は給水所で華麗にリフティングをしてみせる。
皆へのサービスだ。
「よーし、11人抜きだー! ピッチで鍛えたオレの足を見せてやるぜ!」
ボールを器用に操り、勢いよくドリブルで走り始める。
それから大分遅れて、フラフラなミュエル達が通りかかると。
「ミュエちゃん、水菓子、食べる?」
紡は笑って、休憩をすすめた。
「塩分と水分補給はしっかりと、無理をしすぎないように、それと――」
様々な人が、千陽達の前を通り過ぎ。途中で相手は見えなくなってしまう。
その背中をみて来年は走る方でもいいなと思いつつ。
「ね、千陽ちゃん」
振り向いたその口に冷たいものが。
紡が凍らしたブルベリーを放りこんで、驚く様にふふっと笑う。
「!? こんなものまで用意してたんですね。本当に君のポケットのなかにはなんでも詰まっているみたいだな」
「……ナイショ、ね?」
暑いけど、日差し辛いけど、隣にキミがいるなら……なんて。
●
(そろそろ先頭集団もばらけてきたな、トップから風よけになるランナーを選んで後ろについて走る)
下り坂では慎重に。
逆に上り坂で、一悟はペースを上げる。
「無理するな~。まだまだ先は長んや。体力温存、後ろについて走れ!」
「イチゴ、ガンバって~」
給水所で、先回りした光邑家の声が聞こえてくる。
特製のレモネードを手渡された一悟は軽く頷く。娘の理子に送ったらなあかんから、ええ感じに撮るで――と研吾はビデオを回し。リサはゴールで待つため、後片付けを始めた。
(遠距離だと純粋なエネルギー切れは必至なのだけど、今回食べていいらしいし。OKな以上は遠慮なくやるよ)
悠乃は給水ポイント3箇所程に、専用品を準備している。
2・3箇所目ではチョコを一口分ずつ齧った。
(……ペースを上げる)
給水を走りながらとって。
序盤は体力を温存していた蕾花も、周囲のへばり具合からスピードをあげた。
「今日は暑いですね」
気候に合わせて有為は、水分を補給する。
中盤にかけては最初に体力を使った分温存し、トップ集団に引っ付く形。事前に今回の先頭候補の平均ペースは調査しておいた。無理しすぎということはないはずだ。
(ムリしないように、自分のペースも考えないとですけど)
結鹿が懸命に、トップグループを追う。
スピードを落とさず小唄は、水とカロリーを手にしていた。
「給水やエネルギー補給は忘れずにもらうね」
鎬を削るトップ集団。
一方、ペースが落ちて、息も絶え絶えになる者もいる。
「あのっ……私のことは、置いていっても、大丈夫なのでっ……後から追いかけますから」
鈴鳴は心配させないように疲れた笑顔を浮かべる。
たまきは、そんな彼女を――軽やかに背負って走り始めた。
「わぁっ、そんな、たまきちゃんだって疲れてるのに……!」
「こう見えても、私は力持ちですから、安心して下さい!」
にこりと笑う、たまき。
覚者も そうでない方も誰も倒れない様にゴール出来ます様に……そう語っているかのようで。
背負ってもらって申し訳ないけど、背中の暖かさが心地よくて鈴鳴は身を預ける。
「お前様方、無理をせぬようにのぅ」
樹香はそんな二人や、他の人を励ましていく。
長い髪を束ねてまとめて、首の紋様が見えることも気にせずに、いい汗をかいているのを実感する。
「せ、先生……もう限界です……」
「大丈夫、もう少し頑張って!」
御菓子も参加した教え子を激励していた。
しかし。
(あ、ただ、教え子には負けませんし、負けたくありません。かっこ悪いところは見せられません。大人は常に立ち塞がる存在でなくちゃいけませんもんね❤)
大人の心中は、少々複雑だ。
こもごもの想いが飛び交い、走り続け。
「ラストスパートや」
レースも終盤に突入する。
最後の給水ポイントを通過。しっかり水分をとり、凛はダッシュする。
ゴールまで、残り一キロまで迫っていた。
●
「最後の力を振り絞ってゴールまでがんばります。帰宅の帰り道も、明日の筋肉痛も一切考えません。本当ですよ」
ここまできたら後先は考えない。
結鹿が、全速力でスパートをかける。
「スイッチ切り替えてゴー! 最後は気力と負けん気と根性! 負けるもんかー!」
追い込みのところで、小唄が一気に前のランナー達を抜き去る。
終盤でスパートかけるタイプの者を要注意していた有為も、ここは反応する。
「まだ、体力は残っています」
現在、トップを走っているのは安定したスピードを持続させていた悠乃。後続は必死に、その差を詰めんとデッドヒートが繰り広げた。
蕾花は最後の百メートルのところで一気に勝負にでる。
その心中は、妙に穏やかだ。
忘れていた……走ることが楽しいことだって。
「思ってたより体力の貯金は少なくなってるけど……俺の足! 動けぇ!」
奏空も残りの体力ふり絞る。
もう歓声も聞こえない。何も見えない。見えるのはゴールテープだけ!
「ラスト! 走れ、走れ、走れ~!」
ゴールでビデオを撮る研吾が叫ぶ。彼とリサの視線の先では、一悟が校門前の直線でスパートをかけていた。
(そのままの勢いでトラックを回ってフィニッシュだ)
最後の最後。
皆が力を振り絞り、横に並ぶ。一歩、一歩が重く。刹那、割れんばかりの歓声が上がってゴールテープが切られる。
『一位は、五麒大学付属高校1年生――奥州一悟選手!』
大音量の放送で告げられる勝者の名。
バスタオルをもって待っていたリサは、さっと五麟マラソンの優勝者の身体を包んで抱きとめる。
「おめでとう、イチゴ。三人でお弁当を食べましょうネ」
全精力を出し尽くした一悟は、応えることもできず。
もちろん、そのシーンもばっちり研吾は録画していた。
「すっげー楽しかったぁー!」
ゴール直後に、奏空は地面に転がる。
本気でマラソンしてみました!!
笑顔でそう言い切れる。
その横では、トップ勢に続いて次々とランナー達がゴールしていく。
「しっかし胸がぽよぽよ邪魔やなぁ」
走りきった凛は思わず扇ごうと胸元広げそうになって、ヤバイことになったり。
二人一緒、手を繋いで――たまきに背負われていた鈴鳴も、最後にはきちんと自分の足でゴールする。
「本当にありがとうございました……楽しくここまでこれたのも、たまきちゃんのお陰です!」
「大変でしたけれど、鈴鳴さんと一緒だったので、全く辛く無かったです。素敵な思い出を、ありがとうございますね!」
笑い合って、お互いの手を握りしめた。
他のランナー達も健闘をたたえ合い、最後尾の者達が姿を見せたときには大きな歓声が迎えた。
「あっ、ゴールが見えてきましたよ!」
真央の指す先を、ミュエルはほとんど歩くように。
けれど、確実に進んでいく。
「ミュエルさん、もう少しでゴールです! 頑張りましょう!」
「頑張ってゴールを目指すよ……」
あと、ほんの少し。
立ち止まって、歩いて、立ち止まって、歩いて……最後、走ってミュエルはゴールインした。
鳴り止まない拍手が、会場を埋め尽くし皆が皆を祝福する。競って、支えて、支えられて。これからの戦いの日々も、覚者達は走り抜けていく――
「一応これでも陸上部だからな。社会人も混じってるだろうけど、上位入賞を目指すぜ」
体育祭当日。
絶好の運動日和。
意気込む奥州 一悟(CL2000076)を、青と赤のジャージを着た光邑 研吾(CL2000032)と光邑 リサ(CL2000053)が見守る。
「リサとデザインお揃いやで。ペアルックちゅーやつやな」
「ふふちょっと恥ずかしいカナ」
スタート地点では、各選手達がひしめきあっていた。
優勝すれば宣伝になるかなと参加しているのは、華神 悠乃(CL2000231)だ。
「仮にもプロアスリートですし? 完全ガチでいきますよー」
シューズ・ウェア・テーピング・ドリンク等真っ当な範囲は手間と資金を惜しまず投入してある。
「大人気ない? アスリートの競技って、遊びじゃないですよ?」
ウェアには自経営スポーツクラブのロゴがしっかりと。
周囲の視線を惹いていた。
「マラソンなー。嫌いだって奴多いけど、オレは走るの好きだぜ!」
成瀬 翔(CL2000063)は、サッカーボールを手にしてスタンバイ。
「とは言っても、ただ走ってるのもつまんねーし、サッカーボールでドリブルしながら走ってみるかな! どこまでボールを逃がさず走り続けられっか、やってみるぜ! 目指せ新記録!」
……そんな記録があるかのかは知らないけど。
「専門は短距離です……とは言え面目を保つ為にも本気で行きます」
氷門・有為(CL2000042)は盤外戦術も厭わない覚悟。
優勝候補達のデータは、揃えてある。
(あこがれだったインターハイの夢、周りとそりが合わなくて諦めちゃったけどここでその夢を捨てる事ができるかな)
ブランクはあるが優勝してみせる。鳴海 蕾花(CL2001006)の手には力がこもった。
各人緊張感が高まる中、係員が号砲の準備にとりかかる。
『セット』
澄んだ音が響く。
工藤・奏空(CL2000955)が猛烈なスタートダッシュを仕掛けた。
「よーし、走るぞ!」
どこまで自分が上位に食い込めるか本気で走る。最初からこうして上位に食い込んで行くのはマラソンの鉄則だ。
(良い位置取りを行わなければ後方集団に取り残されかねない……ガチ勢とエンジョイ勢混在なので余分にスタートダッシュは重要です)
序盤が重要と、有為もトップ争いに最初から加わる。
「さあ、マラソンするぞ。自分で言うのもなんじゃが、長距離走というのは結構好きじゃったりするのじゃよ」
体育祭だから競争なのだろうが。
檜山 樹香(CL2000141) は、自分のペースでのんびりと走り出す。
「フルマラソン走るのは初めてやけど走り込みは毎日やっとるからな。勝ち負けはともかく完走を目指すで!」
最初はペースを落として、焔陰 凛(CL2000119)は無理しないようにする。
「運動とか、苦手だから……ただ、見てるだけのつもり、だったけど……真央さんに、誘われて……走ることにしたよ……」
「せっかくの体育祭ですから一緒に走りましょう!」
運動が不得意な明石ミュエル(CL2000172)は、張り切って走る猫屋敷 真央(CL2000247)の背中を必死に追う。
「水上騎馬戦にも興味はあったのですが……水着……ですよね……きっと……」
賀茂 たまき(CL2000994) は、じっと自身の胸辺りを見る。
「マ、マラソンの方が、私らしいですよね……!」
「水着は、私もまだ準備中ですから……うん、マラソン頑張りましょう!」
守衛野 鈴鳴(CL2000222)が、頷いて。
一緒にゴール出来る様に、無理をし過ぎないペースで走る。流れる街の風景、すれ違った友人達に手を振る。
「最初は人多いし、あんまりボールを前に出さないように気をつけて……ああ、邪魔だよな、これじゃ」
翔はその場でボールを高く蹴り上げ。
「よし、じゃあ、もっと人がバラけるまでリフティングだ! あれ、でも走れねーな? これ!?」
ま、いいや。
ドリブルを再開するのは、まだ先だ。
●
「走るよ! やるからには優勝目指して!」
先頭集団をキープしながら、御白 小唄(CL2001173) は飛ばし過ぎに注意した。
一番気をつけないといけないのはペース配分だ。
(全力疾走になるだろうし、体力が持たなかったら逆効果だもんね)
後、先頭を一人で走るって結構つらいものがあるし。
(このペースなら、このまま集団の中で体力温存だ。給水ポイントには寄らないぜ)
一悟も先頭付近でペースを図る。
「走りなれた地元の道。競技者の存在感、ここぞ示しどころってね」
対して悠乃は、序盤から歩幅の広さを活かせる直線区画で小刻みにペースを上げる。スタート直後から熾烈なトップ争いが、全体の走りをも引っ張っる。
(クラスメートとかお友だち、一緒に仕事したことのある人もたくさんいるので声かけながらゴールを目指していきたいと思いますが――)
ただ負けたくないという気持ちもある。
菊坂 結鹿(CL2000432)は、手を抜かずに真面目に走る。トップグループに食いついていった。観客達からも歓声があがる。
「ゆっくりテキトーに」
そんな空気でも、リリス・スクブス(CL2001265) は勝ち負けより完走を目指す。あと、なぜかタンクトップとブルマ姿だ。
「まぁ、予想はしてたんだが、この面で、このが体で後ろから走られるのは怖いんだろうよ」
田場 義高(CL2001151)の姿は別の意味で注目されている。
「……おじさん、ちょっと凹む……わかってんだがな……それでもそりゃショックなわけよ」
人が避けてくのは勿論。
中にゃ泣き出す子どもがいたりした。
「まぁ、いいや。この参加は優秀な成績でゴールを目指すというより、店の宣伝が目的なんだよ」
なので、シャツにスラックスとエプロンと店の服装だ。
沿道には応援してくれてる家族の姿――「頑張って!」と妻と娘が一生懸命併走してくれる。
それだけで、最高だ。
背中の店の名前をでかでか書いた幟がたなびく。
「吹奏楽部が、「体育会系文化部」「文化系運動部」といわれることを知ってるかな? 音楽をするって、意外と体力が必要なのよ。座奏はもちろんだけど、マーチングにいたっては20~30分のショウの間、動き続け、演奏続け、笑顔と姿勢も保ちつつなんだから」
順位は考えないで、いつもの自分のペースより早くゴールできる。
向日葵 御菓子(CL2000429)は、そんな走り。
「瞬発力には欠けるかもしれないけど、持久力なら負けない自信あるわよ」
なかなかの速さ。
まだまだ余裕もありそうだ。
「今の時期、フルマラソンは大変そうですね。気温とか湿度とか……。私は走るのは得意ではありませんから……、給水所のお手伝いをしましょうか」
ゴミ箱も用意して、いくつか並べ。
上月・里桜(CL2001274) は、掃除も考えて皆をサポートする。
「ええと、給水所って何をすればいいのかしら。道の端に机を並べて、紙コップにお水を……、スポーツドリンクとかもあるといいのかしら」
2種類、してみましょうか、と。
場所を少し離して……それとあめ玉やチョコレートなども用意してみる。
口に入れて走れば、ちょっぴり元気が出るかも。皆、無事にゴールできればと心尽くしだ。
「マラソンですか。長距離はどちらかというと苦手です」
そんな給水所で、柳 燐花(CL2000695)は水を貰って。
(ん?)
と、コースから少し外れたところに、倒れた人影を発見する。
それは、切裂 ジャック(CL2001403)だった。
「う……うう、日差しがキツい、地面も熱い、水分が足りねえ、木乃伊になる」
走るの嫌いで。
流れで参加して。
そしてうつ伏せで倒れていたのだ。ぷるぷる震える腕を伸ばし、へるぷみー。
「大丈夫ですか? 体、起こせますか?」
「ぅぉ、可愛い女の子が見えるここが天国か……つまらない人生だった……ぜ」
ガクッ。
焼けた地面で寝ていては干からびてしまう。
燐花は腕をとって、水を与える。ジャックは奪い取るようにそれを貰う。
「ごくごくごくオフッ、ゲフッゴフッげほげほげほ!!」
「お手伝い致します」
咽る背中をとんとん。
「ここは天国じゃないですし、人生はまだまだ続きます」
「うお! まだ人生だった? よかったー!」
「ご無理はなさらず。ゴールを目指されるなら、お嫌でなければご一緒致しますが」
事切れちゃ駄目です。
倒れないように、並走ならできると思いますから、と言う燐花の背にジャックは純白の翼を見たような気がした。
「え? 一緒に行ってくれんの。控えめに言って天使じゃん!! 名前なんてーの、俺、切裂!
なんぱじゃないよ!!?」
「名前? 柳と申します」
「見ず知らずの人助けるなんざ偉いよなあ。借りができたから、今度返すぜ!!」
ゆるゆると二人は並走を始める。
そのやりとりは、どこかぎこちない。
(天使とか。そんないいものではありませんよ)
●
「一曲歌うから聞いたってや~」
「ヒューヒュー!」
バンドの宣伝を兼ねた凛のアカペラ。
人の多い所で、ロック系の歌を歌って踊ってパフォーマンスをして盛り上がっていた。
「そのうちライブするから宜しゅうな~」
一礼してレースに復帰。
「て歌うのは気持ちええけど余計疲れたんちゃうか?」
ま、ええけど。
日差しが皆を照り付けた。
「おっと、いつもの調子でペースを上げすぎてしまいました」
「ごめん……先、行っても……いいよ……」
ミュエルは、走り慣れていないこともあって既に限界にきていた。
「今日はミュエルさんと一緒に走りたくて声をおかけしたんです、ここからはゆっくり走りましょう!」
相棒の肩をポンと真央は叩いた。
一緒に、公園や景色のいい場所で休憩を取り。給水所でもしっかり補給する。
「真央さん……合わせてくれて、ありがと……」
「体育祭、つまりお祭りですからね! ならば全力で楽しみましょう!!」
時間は気にせず励ましながら最後まで一緒に走りきりたい。
一人で走るよりその方がきっと楽しい。
「縁台の設置はお任せ下さい。そのぶん、紡は接客を、ですね」
時任・千陽(CL2000014)は、少し意地悪に笑いつつ給水所を設営していた。コース横に竹縁台と野点傘を置き。用意するのはスポーツドリンクと麦茶に冷やし飴、水羊羹&水饅頭。
塩飴の袋もいくらか用意しておく。
「見た目にも涼しいかなと思いまして」
飲み物が冷やせるように盥に氷水をいれるが、そこに麻弓 紡(CL2000623) が唇を尖らせて手を浸す。
「……ボク、夏、ダメ……まだ梅雨なのに……」
「お仕事はこれからですよ」
ぐったりする紡だが、立ち寄ってくれた人には営業スマイルを忘れない。
千陽と飲み物を配る。
「ラストスパート頑張ってください」
「よっしゃ! 残りも踏ん張っていく!」
前方ランナーをロックオン。
ペースを一定に抑え体力温存していた奏空は、スポーツドリングを貰って加速していった。
「たまちゃん、がんばれー」
紡が手を振ると、たまきは元気に手を振り返して駆けていく。
「水分補給、しっかりね?」
「応援さんきゅなー!」
翔は給水所で華麗にリフティングをしてみせる。
皆へのサービスだ。
「よーし、11人抜きだー! ピッチで鍛えたオレの足を見せてやるぜ!」
ボールを器用に操り、勢いよくドリブルで走り始める。
それから大分遅れて、フラフラなミュエル達が通りかかると。
「ミュエちゃん、水菓子、食べる?」
紡は笑って、休憩をすすめた。
「塩分と水分補給はしっかりと、無理をしすぎないように、それと――」
様々な人が、千陽達の前を通り過ぎ。途中で相手は見えなくなってしまう。
その背中をみて来年は走る方でもいいなと思いつつ。
「ね、千陽ちゃん」
振り向いたその口に冷たいものが。
紡が凍らしたブルベリーを放りこんで、驚く様にふふっと笑う。
「!? こんなものまで用意してたんですね。本当に君のポケットのなかにはなんでも詰まっているみたいだな」
「……ナイショ、ね?」
暑いけど、日差し辛いけど、隣にキミがいるなら……なんて。
●
(そろそろ先頭集団もばらけてきたな、トップから風よけになるランナーを選んで後ろについて走る)
下り坂では慎重に。
逆に上り坂で、一悟はペースを上げる。
「無理するな~。まだまだ先は長んや。体力温存、後ろについて走れ!」
「イチゴ、ガンバって~」
給水所で、先回りした光邑家の声が聞こえてくる。
特製のレモネードを手渡された一悟は軽く頷く。娘の理子に送ったらなあかんから、ええ感じに撮るで――と研吾はビデオを回し。リサはゴールで待つため、後片付けを始めた。
(遠距離だと純粋なエネルギー切れは必至なのだけど、今回食べていいらしいし。OKな以上は遠慮なくやるよ)
悠乃は給水ポイント3箇所程に、専用品を準備している。
2・3箇所目ではチョコを一口分ずつ齧った。
(……ペースを上げる)
給水を走りながらとって。
序盤は体力を温存していた蕾花も、周囲のへばり具合からスピードをあげた。
「今日は暑いですね」
気候に合わせて有為は、水分を補給する。
中盤にかけては最初に体力を使った分温存し、トップ集団に引っ付く形。事前に今回の先頭候補の平均ペースは調査しておいた。無理しすぎということはないはずだ。
(ムリしないように、自分のペースも考えないとですけど)
結鹿が懸命に、トップグループを追う。
スピードを落とさず小唄は、水とカロリーを手にしていた。
「給水やエネルギー補給は忘れずにもらうね」
鎬を削るトップ集団。
一方、ペースが落ちて、息も絶え絶えになる者もいる。
「あのっ……私のことは、置いていっても、大丈夫なのでっ……後から追いかけますから」
鈴鳴は心配させないように疲れた笑顔を浮かべる。
たまきは、そんな彼女を――軽やかに背負って走り始めた。
「わぁっ、そんな、たまきちゃんだって疲れてるのに……!」
「こう見えても、私は力持ちですから、安心して下さい!」
にこりと笑う、たまき。
覚者も そうでない方も誰も倒れない様にゴール出来ます様に……そう語っているかのようで。
背負ってもらって申し訳ないけど、背中の暖かさが心地よくて鈴鳴は身を預ける。
「お前様方、無理をせぬようにのぅ」
樹香はそんな二人や、他の人を励ましていく。
長い髪を束ねてまとめて、首の紋様が見えることも気にせずに、いい汗をかいているのを実感する。
「せ、先生……もう限界です……」
「大丈夫、もう少し頑張って!」
御菓子も参加した教え子を激励していた。
しかし。
(あ、ただ、教え子には負けませんし、負けたくありません。かっこ悪いところは見せられません。大人は常に立ち塞がる存在でなくちゃいけませんもんね❤)
大人の心中は、少々複雑だ。
こもごもの想いが飛び交い、走り続け。
「ラストスパートや」
レースも終盤に突入する。
最後の給水ポイントを通過。しっかり水分をとり、凛はダッシュする。
ゴールまで、残り一キロまで迫っていた。
●
「最後の力を振り絞ってゴールまでがんばります。帰宅の帰り道も、明日の筋肉痛も一切考えません。本当ですよ」
ここまできたら後先は考えない。
結鹿が、全速力でスパートをかける。
「スイッチ切り替えてゴー! 最後は気力と負けん気と根性! 負けるもんかー!」
追い込みのところで、小唄が一気に前のランナー達を抜き去る。
終盤でスパートかけるタイプの者を要注意していた有為も、ここは反応する。
「まだ、体力は残っています」
現在、トップを走っているのは安定したスピードを持続させていた悠乃。後続は必死に、その差を詰めんとデッドヒートが繰り広げた。
蕾花は最後の百メートルのところで一気に勝負にでる。
その心中は、妙に穏やかだ。
忘れていた……走ることが楽しいことだって。
「思ってたより体力の貯金は少なくなってるけど……俺の足! 動けぇ!」
奏空も残りの体力ふり絞る。
もう歓声も聞こえない。何も見えない。見えるのはゴールテープだけ!
「ラスト! 走れ、走れ、走れ~!」
ゴールでビデオを撮る研吾が叫ぶ。彼とリサの視線の先では、一悟が校門前の直線でスパートをかけていた。
(そのままの勢いでトラックを回ってフィニッシュだ)
最後の最後。
皆が力を振り絞り、横に並ぶ。一歩、一歩が重く。刹那、割れんばかりの歓声が上がってゴールテープが切られる。
『一位は、五麒大学付属高校1年生――奥州一悟選手!』
大音量の放送で告げられる勝者の名。
バスタオルをもって待っていたリサは、さっと五麟マラソンの優勝者の身体を包んで抱きとめる。
「おめでとう、イチゴ。三人でお弁当を食べましょうネ」
全精力を出し尽くした一悟は、応えることもできず。
もちろん、そのシーンもばっちり研吾は録画していた。
「すっげー楽しかったぁー!」
ゴール直後に、奏空は地面に転がる。
本気でマラソンしてみました!!
笑顔でそう言い切れる。
その横では、トップ勢に続いて次々とランナー達がゴールしていく。
「しっかし胸がぽよぽよ邪魔やなぁ」
走りきった凛は思わず扇ごうと胸元広げそうになって、ヤバイことになったり。
二人一緒、手を繋いで――たまきに背負われていた鈴鳴も、最後にはきちんと自分の足でゴールする。
「本当にありがとうございました……楽しくここまでこれたのも、たまきちゃんのお陰です!」
「大変でしたけれど、鈴鳴さんと一緒だったので、全く辛く無かったです。素敵な思い出を、ありがとうございますね!」
笑い合って、お互いの手を握りしめた。
他のランナー達も健闘をたたえ合い、最後尾の者達が姿を見せたときには大きな歓声が迎えた。
「あっ、ゴールが見えてきましたよ!」
真央の指す先を、ミュエルはほとんど歩くように。
けれど、確実に進んでいく。
「ミュエルさん、もう少しでゴールです! 頑張りましょう!」
「頑張ってゴールを目指すよ……」
あと、ほんの少し。
立ち止まって、歩いて、立ち止まって、歩いて……最後、走ってミュエルはゴールインした。
鳴り止まない拍手が、会場を埋め尽くし皆が皆を祝福する。競って、支えて、支えられて。これからの戦いの日々も、覚者達は走り抜けていく――
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
特殊成果
なし

■あとがき■
ご参加ありがとうございます。
今回のマラソンの七位までの結果は以下の通りで、最後は横一線といったところでした。
一位:奥州 一悟(CL2000076)
二位:華神 悠乃(CL2000231)
三位:氷門・有為(CL2000042)
四位:工藤・奏空(CL2000955)
五位:鳴海 蕾花(CL2001006)
六位:菊坂 結鹿(CL2000432)
七位:御白 小唄(CL2001173)
他にも頑張って走ってくれたランナーの方や、サポートで支えてくれた方など、皆さんのおかげで体育祭に華を添える競技にできたと思います。
皆さんも祭を楽しんでいただけれたら、幸いです。
今回のマラソンの七位までの結果は以下の通りで、最後は横一線といったところでした。
一位:奥州 一悟(CL2000076)
二位:華神 悠乃(CL2000231)
三位:氷門・有為(CL2000042)
四位:工藤・奏空(CL2000955)
五位:鳴海 蕾花(CL2001006)
六位:菊坂 結鹿(CL2000432)
七位:御白 小唄(CL2001173)
他にも頑張って走ってくれたランナーの方や、サポートで支えてくれた方など、皆さんのおかげで体育祭に華を添える競技にできたと思います。
皆さんも祭を楽しんでいただけれたら、幸いです。
