≪友ヶ島2016≫マヨナカキャンプ
●戦いで得たものは
妖災害に悩まされていた友ヶ島(正確には沖ノ島要所)にはびこる妖を見事に退治したファイヴ覚者たち。
だが彼らの功績はそれだけではなかった。
海外をはじめとするマナーの悪い観光客によって汚された島を自主的に掃除して回った彼らによって、島は一時とはいえ綺麗な島へと変わったのだ。
そんな友ヶ島で……。
●綺麗になった島でキャンプをしよう
虫のなく夜の島。
友ヶ島キャンプ場。
広大な芝生に覆われたここで、今夜はキャンプをすることにした。
海で遊んできた人たちや、探索をしてきた人たち。森の中でピクニックしてきた人たちも皆集まってテントをはったりご飯を作ったり。
今夜はゆっくり過ごすことにしよう。
妖災害に悩まされていた友ヶ島(正確には沖ノ島要所)にはびこる妖を見事に退治したファイヴ覚者たち。
だが彼らの功績はそれだけではなかった。
海外をはじめとするマナーの悪い観光客によって汚された島を自主的に掃除して回った彼らによって、島は一時とはいえ綺麗な島へと変わったのだ。
そんな友ヶ島で……。
●綺麗になった島でキャンプをしよう
虫のなく夜の島。
友ヶ島キャンプ場。
広大な芝生に覆われたここで、今夜はキャンプをすることにした。
海で遊んできた人たちや、探索をしてきた人たち。森の中でピクニックしてきた人たちも皆集まってテントをはったりご飯を作ったり。
今夜はゆっくり過ごすことにしよう。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.キャンプをして過ごす
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
以下の内からひとつのシーンを選んでプレイングをかけてください。
複数選択されていた場合は統合されることがあります。
・テントを立てる。
みんなで協力して寝泊まり用のテントを立てます。
島には民宿もあるので絶対必要ってわけじゃありませんが、折角なので星を眺めて眠るのです。
そのためのテントや周辺設備を組み立てたり設置したりしていきましょう。
色々あると便利ですが、プレイングが持ち物リストにならないように気をつけましょう。(書かなくても大体のものは察して判定します)
・ご飯作り
キャンプと言えばご飯です。
定番のカレーをはじめとして色々作って皆を喜ばせましょう。ご飯を炊くのも重要ですね。
こっちも持ち物リストやお料理レシピにならないように気をつけましょう。(やっぱり書かなくても大体察して判定します)
・星を眺める
色々済んでご飯もたべたら、星を眺めて過ごします。
一人で。友達と。恋人と。家族と。ゆっくりとした時間をお過ごしください。
キャンプ用の広場は広くて複数に分かれているので、すぐそばに別のグループがなんてことは無いはずです。暗いですし、ゆっくり過ごしてください。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
相談日数
10日
10日
参加費
50LP
50LP
参加人数
25/50
25/50
公開日
2016年09月12日
2016年09月12日
■メイン参加者 25人■

●おいしいご飯を作るなら
「火じゃー! 火をくべぇぃ!」
焔陰 凛(CL2000119)が包丁を振り上げると、組み上げた薪から炎が上がった。
香草や米を詰め込んだ鶏肉をクシに突き刺し、次々に火へとかざしていく。
「ほらほら、お鶏様においしく焼けて貰うんや! 踊るんや! 太鼓を叩くんやぁ!」
キャンプファイヤーを囲んだ祭りが始まった。
……そんな光景を傍目に、赤鈴 炫矢(CL2000267)は慎ましやかに魚をさばいていた。
「へぇ。すごい。アタシ、魚って捌けないや」
「ハイカラなものは作れないけど、賑やかしくらいなら」
串に刺して塩をまぶし、塩焼きの準備を整えていく。
その様子を横から眺める雛見 玻璃(CL2000865)。
和え物や鍋を作りつつ、ちらりと振り向く炫矢。
「……内緒で、つまみ食いするかい?」
「いいの?」
できたての塩焼きを差し出されて、玻璃は嬉しそうに受け取った。
と、そこで。
「なんかそこの鍋煮立ってるようだけど」
「……!」
以外と道具の少ないキャンプ料理である。
「雛見君……! た、助けて!」
慌てた炫矢をなだめるようにして、玻璃は火を崩して弱めていった。
顔を見合わせる。
炫矢はやや顔を赤らめて目を背けた。
首を傾げる玻璃をよそに、上着を脱いで玻璃の肩へとかけてやる。
「やっぱり、その……。し、刺激的。だよ」
「刺激的、ねぇ。でも今だけだから」
にっこりと笑う玻璃。
炫矢はまだ顔を赤らめていた。
一方その頃。
「どこも熱いねえ。夏だからかな……」
四月一日 四月二日(CL2000588)はキャンプ用の燻製キットを使って肉やら魚やらの燻製を作っていた。
「っしゃ、いいにおいしてきた!」
「へえ、燻製って思ったより簡単に出来るんだ」
「キャンプならではだけど……所で和泉くんは何作ってんの?」
振り返る四月二日に、和泉・鷲哉(CL2001115)は肩をすくめて見せた。
「スペアリブに、アリスタでも」
「おー」
四月二日は頭の中で料理を思い浮かべてから、ちろりと舌なめずりをした。
「酒のつまみになるなあ」
「エイジさんならそう言うと思ってました」
照れたように笑う鷲哉。
「この前作って貰ったおつまみも美味しかったもんな。今日も期待してるぜ」
「褒めてもメシしか出ないですよ」
「最高じゃねえか!」
四月二日は笑って、クーラーボックスを開いた。
中にはスパークリングワインがひと瓶。
「俺たちといえばコレでしょ」
「ですね!」
キャンプスタンダードにも色々あって、たき火で丸焼きを食べてからマシュマロ焼きつつビールをあおるよという人も居れば、カレーライスに限るという人もいる。
そんな中で、こちらはカレーライスのスタイルに寄ってみた人々の様子である。
「手を切らないように、慣れない間は親指を固定するのがいいわ……そう、上手よ」
三島 椿(CL2000061)は守衛野 鈴鳴(CL2000222)にジャガイモのむき方を教えていた。
小さい男爵いもはかなり難しいので、今回は大きめのメイクインである。
「いつもピーラーだから、皮むきは不慣れで……」
「慣れると大根の桂剥きなんかもできるようになるわよ」
そう言いながら、椿は芸術的な手際で芋の皮を剥き取っていった。
「ところで、火は大丈夫かしら」
「あ、はいっ……けふっ!」
たき火を棒でつつく鈴鳴だが、舞い上がった灰に小さくむせた。
苦笑する椿。
「大丈夫? 手を拭いて、サラダの準備をしましょ」
「はい!」
鈴鳴は頬に突いた炭をぬぐって、照れ笑いをした。
料理が女性の仕事というのは確かに古い考えではあるが、元々は火の扱いや水の管理が男性よりも上手だとされていた所から来ている……らしい。
その話が確かなら、料理の担当に女性ばかりが集まるのも無理からぬことだろう。
「つまり……女子会だな!」
天堂・フィオナ(CL2001421)は包丁を握ってにこやかに言った。
両手で握って大上段に構えて言った。
「えっと、あの……それだと、多分斬れないと思う……」
「剣と同じ刃物なのにか!?」
そんなまさかという顔で振り返るフィオナに、明石 ミュエル(CL2000172)は鶏肉の切り方を実践した。
「こうして、撫でるみたいにすると、いいよ」
「さむらい……」
欧米で言う肉の切り方はナイフの腹でドーンてやってバーンて切るやつなので、手首を使うことで小娘でもデカい肉をスライスできるという道具になじみがなかったりする。
「あと、押さえるときはネコの手で、ね」
「にくきゅう……あっ、皮を剥いていたらお芋が消えた!」
「ピーラーつかお?」
「よし!」
ピーラーを持って大上段に構えるフィオナ。あわあわするミュエル。
そんな様子を月歌 浅葱(CL2000915)は平和そうに眺めていた。
「たき火はいい具合なのですよっ」
薪をくんで作った火に飯ごうをつるしてふーふーする。
「キャンプと言えばカレー。カレーといえばライス。縁の下の力持ちなのですよっ」
身体を左右に揺らしながらご飯が炊けるのを待つ浅葱。
と言っても軽く一時間くらいあるのでずっとメトロノームごっこをしているわけにもいかないのだ。
「準備、すすんでる?」
麻弓 紡(CL2000623)がペットボトル飲料の入ったビニール袋を小さく掲げた。
今日はいつもと違って赤フレームの眼鏡に白いワンピースという姿だ。女子会っぽさに拍車がかかった瞬間である。
ぴょんと立ち上がる浅葱。
「食材も焼き始めて、煮込む頃合いですっ」
「じゃあ、カレー粉の準備、しよーか」
紡は茶色い紙袋を取り出してきた。
その後ろから顔を出す水端 時雨(CL2000345)。青いフレームの眼鏡をちゃきっとやった。
「カレー粉は重要っすよ! 配分をちゃんと考えないとっすからね」
スパイスの種類に関してはあえてはぶくことにする。
なんか色々入れたんだなあと、絵的な部分も含めて想像して欲しい。
煮込んだ肉や野菜にカレー粉を加え、更に細かい野菜も入れていく。
「隠し味にリンゴとはちみつを使うっす。チョコレートもひとかけらくわえてぐーるぐーると……」
しばらく混ぜてからは暇な時間がやってくる。
ご飯の炊きあがりも含めて、結構時間がかかるものだ。
「どーしましょ。女子会っぽく女子トークとかするんすか?」
「うんー?」
首をかっくりと傾げる紡。
「コイバナとかすればいいんじゃないかなあ」
「こいばな」
「こいばな」
「こいばな」
「鯉……」
その場の全員が微妙な顔をした。
腰に手を当てて胸を反らす浅葱。
「恋心は、秘めるものですよっ!」
「……秘め、てるの?」
「仮に無くても秘めるのですっ」
「ないんだ……」
一方で、時雨が腕組みして唸った。
「世の中同性愛も少なくないみたいっすけど、そういうの込みにしても……んー」
本当にいたら触れづらいなと思って自主スルー。
時雨は誰かに話を振ることにした。
「ミュエ――」
「……」
ミュエルが見たことも無い目をしていた。触れづらさがマックスだったので更にスルーした。
「フィオナさんはあるっすか、そういう」
話を振られて、フィオナは両手を挙げた。
「え? うーん……みんな大好きだぞ!」
もう結論これでいいやーという顔をして、全員でフィオナを撫でくることにした。
同じくカレー作りに花を咲かせる酒々井 数多(CL2000149)と環 大和(CL2000477)。
「ねえねえ、どんなカレーにしたらいい? 友ヶ島の名産品とかないのかしら」
ピンク髪を後ろに縛る数多。
「産業自体なさそうよね。淡路島にはありそうだけれど……」
黒髪を耳にかける大和。
「…………シカ?」
「禁猟区よ、ここ」
「仕方ないなあ、シカだけに☆」
星形に切ったにんじんを二本指ではさんで横ピースする数多。
淡々とジャガイモを切り続ける大和。
うん、なんてね、なんて……とか小声で言いながらボウルににんじんを入れていく。
そこでふと、ニンジンを空に翳した。
「そうだ、ねえね大和さん! いいこと思いついた」
かくしてできあがる鶏肉やら魚やらのちょっぴり豪華なキャンプメニュー。
そのメインを飾るのはなんといってもカレーである。
数多たちはそこに一工夫を加えた。
星形のニンジンとコーンを散らし、コーヒーフレッシュでラインをひく。
「友ヶ島の星空カレーよ」
できあがった沢山の料理を囲み、皆で手を合わせる。
いただきますは、やっぱり一緒に言うのが楽しい。
●星空シャワー
テントの中に寝袋をならべる。
淡いランプの光が、テントの中を照らしている。
柳 燐花(CL2000695)はそんな、小さな空間を見回してみた。
「なんだか、秘密基地みたいですね」
「そうだねえ、この狭い感じがより一層それっぽいよね」
笑顔で返す蘇我島 恭司(CL2001015)。
近頃はキャンプ道具も随分発達したもので、それほど苦労しなくとも快適なテントを作れるようになった。
寝袋の上に横になる。
「入り口のほうから、星が見えますよ」
「どれどれ。ああ、本当だね。こういう所はまわりに灯りが無いから、都会じゃ考えられないくらい見えるよねえ」
同じように横になる恭司。
彼に染みついた、煙とアルコールのような独特な香りがする。
燐花は深く呼吸をして、星に手を伸ばした。
まばゆい星だ。
無限とも思えるほどの数の、星々だ。
「これだけ綺麗に星が見えると、いつまでも眺めていられるよねえ」
燐花はちらりと恭司の横顔を見てから、星に目を向けた。
まるで星に包まれるような、不思議な感覚だった。
やがて、まどろみがやってくる。
色鮮やかな星々の中に、燐花はゆっくりと沈んでいった。
キャンプ場は広大だ。ぽつりぽつりと存在するテントの灯りが見えるばかりで、それぞれのテントの輪郭すらまともに見えては来ない。
夜のとばりとはよく言ったものだ。
宇賀神・慈雨(CL2000259)と天原・晃(CL2000389)はそんな二人だけの空間で、肩を寄せ合っていた。
「皆でテントを張ったり、ご飯を作ったり……キャンプって楽しいんだね、久し振り過ぎて忘れていたの。私の家族はみーんな不器用だったから、テントを上手く張れなくてね。……晃は、キャンプ初めて?」
「経験はなくもないが、てきぱきとは出来んよ」
慈雨の横顔を見ると、笑顔が戻ったように思えた。
最近は気を張りすぎていたようだが、どうやら今日はいい休息になったようだ。
星空を指さす慈雨。
「あれが夏の大三角でしょ、近くのがこと座で……方向が変わると秋の星座だね」
「綺麗なものだな」
肩が触れあう。
「季節は確かに移り変わっていて、でも変わらないものもあるよね」
「そうだな。時は移ろうものだ。だが、確かに変わらない物という物はあるだろう。数年、何十年経ってもきっと俺は君の傍に居よう、慈雨」
肩に腕を回す。
「勿論、君が嫌でなければだが」
「うん、私も……」
慈雨は晃の手を握り、頬を赤く染めた。
キャンプ場から少し離れた場所を、ランプを手に歩く二人がいた。
工藤・奏空(CL2000955)と賀茂 たまき(CL2000994)である。
海が見える台から、夜の水平線を眺めるのだ。
「大丈夫? 足下気をつけてね」
「はい……」
奏空の差し出した手を、たまきはそっと取った。
積み上がった岩の上に上り、腰を下ろす。
無限の星空と大海原に、たまきの目が大きく開いた。
「このキラキラ光る星も、ずっと遠くから旅をしてきた光の先に、あるのですよね」
「前にもこうして星空を見た事があったけど、島で見る星空はまたちょっと違うね。ずっと眺めていると吸い込れそうで……」
奏空がふと視線を向けると、たまきはまだ星空を見ていた。
「たまきちゃん」
視線に気づいて、たまきは奏空の目を見つめた。
夜空にかかるシルエットが、少しずつ近づいていく。
「たまきちゃん、大好きだよ」
「大好きです。奏空さん。……ずっと、傍に、居て下さいね?」
二人は頬をつけて、ひっそりと影を重ねた。
「五麟市に来てからあまり空を見上げてませんでしたが、改めてこうして見上げると……綺麗ですね」
十夜 八重(CL2000122)は、キャンプ場の片隅で星空を見ていた。
隣には切裂 ジャック(CL2001403)。
「そう? 俺は、こうやってまじまじと見るのは初めてかも……綺麗だなあ」
海風が頬を撫でていく。
夏場だというのに、島は不思議と涼しかった。
「寒くないですか?」
顔を覗き込む八重に、ジャックは両手をぱたぱたと振って背を反らした。
「お、俺は大丈夫! 体温高いし!」
「そうですか?」
顔を覗き込まれたままではつらい。
ジャックは話題を変えるように、星空に手を伸ばした。
「そうだ、あの星ひとつとってきてあげようか」
「あら、手が届くんですか?」
「そりゃあ……」
八重は小さく笑うと、ジャックを抱えて空へ飛び立った。
「うわっ……!」
地上に点在するテントの明かりがどんどん遠ざかっていく。
「こうすれば、お空も近いですよ。なんなら、お姫様抱っこしましょうか?」
「い、いいって! 大丈夫!」
ジャックは八重の手を強く握って、星空に目をそらした。
星空は万物に平等だ。
何億光年先から降る光が、地球上のあらゆるものへと注がれていく。
椅子に腰掛け、だらんとする松原・華怜(CL2000441)にもだ。
「癒やされますねえ、切実に」
多すぎる星空は距離感どころか平衡感覚まで失わせる。
まるで柔らかいきらめきの中にいるような時間が、現実感までも曖昧にし始めた。
「日頃うまくいかないのは現実が割るいんです。ええ、そうですよ……」
星空に愚痴を語りかけてみたり、手元に置いたコーヒーをすすってみたり。
最近は色々なことに気を遣ってばかりだったのだ。
たまにはこんな時間があってもいい。
そんな彼女のそばで、菊坂 結鹿(CL2000432)が小さく膝を抱えていた。
「……」
降るほどの星。どころか、自分が落ちていきそうなほどの星だ。
結鹿は胸の底から沸くような怖さを感じて、ただただそれを眺めていた。
かつて人々は星に神話を見たり、英霊の存在を感じたり、世界の理を探したりしたという。
今より明かりの少ない頃だ。きっと今ほど見えていたのだろう。
神話を身近に感じるくらい、超然としたものに見えていたのかもしれない。
「……」
結鹿はただ言葉も無く、星空に身をゆだねる。
そんな星々に、一筋の炎が走った。
ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)だ。
ペスカと共に空を眺めながら、指先から小さな炎を出しては空を描いていく。
「やっぱり、パンフレットよりずっと綺麗な星空ですよね、ペスカ。前の騒動の時には来られませんでしたけど……また島が危ないときには、きっと駆けつけましょうね」
炎を渦巻き、天へと昇らせていく。
島を訪れた恋人たちが、友人たちが、他にも色々な人たちが、空へ昇る炎を見つけた。
夜は更けていく。
さざなみの音は遠ざかる。
友ヶ島の夜に別れを告げるように、人々は静かな眠りに落ちていった。
「火じゃー! 火をくべぇぃ!」
焔陰 凛(CL2000119)が包丁を振り上げると、組み上げた薪から炎が上がった。
香草や米を詰め込んだ鶏肉をクシに突き刺し、次々に火へとかざしていく。
「ほらほら、お鶏様においしく焼けて貰うんや! 踊るんや! 太鼓を叩くんやぁ!」
キャンプファイヤーを囲んだ祭りが始まった。
……そんな光景を傍目に、赤鈴 炫矢(CL2000267)は慎ましやかに魚をさばいていた。
「へぇ。すごい。アタシ、魚って捌けないや」
「ハイカラなものは作れないけど、賑やかしくらいなら」
串に刺して塩をまぶし、塩焼きの準備を整えていく。
その様子を横から眺める雛見 玻璃(CL2000865)。
和え物や鍋を作りつつ、ちらりと振り向く炫矢。
「……内緒で、つまみ食いするかい?」
「いいの?」
できたての塩焼きを差し出されて、玻璃は嬉しそうに受け取った。
と、そこで。
「なんかそこの鍋煮立ってるようだけど」
「……!」
以外と道具の少ないキャンプ料理である。
「雛見君……! た、助けて!」
慌てた炫矢をなだめるようにして、玻璃は火を崩して弱めていった。
顔を見合わせる。
炫矢はやや顔を赤らめて目を背けた。
首を傾げる玻璃をよそに、上着を脱いで玻璃の肩へとかけてやる。
「やっぱり、その……。し、刺激的。だよ」
「刺激的、ねぇ。でも今だけだから」
にっこりと笑う玻璃。
炫矢はまだ顔を赤らめていた。
一方その頃。
「どこも熱いねえ。夏だからかな……」
四月一日 四月二日(CL2000588)はキャンプ用の燻製キットを使って肉やら魚やらの燻製を作っていた。
「っしゃ、いいにおいしてきた!」
「へえ、燻製って思ったより簡単に出来るんだ」
「キャンプならではだけど……所で和泉くんは何作ってんの?」
振り返る四月二日に、和泉・鷲哉(CL2001115)は肩をすくめて見せた。
「スペアリブに、アリスタでも」
「おー」
四月二日は頭の中で料理を思い浮かべてから、ちろりと舌なめずりをした。
「酒のつまみになるなあ」
「エイジさんならそう言うと思ってました」
照れたように笑う鷲哉。
「この前作って貰ったおつまみも美味しかったもんな。今日も期待してるぜ」
「褒めてもメシしか出ないですよ」
「最高じゃねえか!」
四月二日は笑って、クーラーボックスを開いた。
中にはスパークリングワインがひと瓶。
「俺たちといえばコレでしょ」
「ですね!」
キャンプスタンダードにも色々あって、たき火で丸焼きを食べてからマシュマロ焼きつつビールをあおるよという人も居れば、カレーライスに限るという人もいる。
そんな中で、こちらはカレーライスのスタイルに寄ってみた人々の様子である。
「手を切らないように、慣れない間は親指を固定するのがいいわ……そう、上手よ」
三島 椿(CL2000061)は守衛野 鈴鳴(CL2000222)にジャガイモのむき方を教えていた。
小さい男爵いもはかなり難しいので、今回は大きめのメイクインである。
「いつもピーラーだから、皮むきは不慣れで……」
「慣れると大根の桂剥きなんかもできるようになるわよ」
そう言いながら、椿は芸術的な手際で芋の皮を剥き取っていった。
「ところで、火は大丈夫かしら」
「あ、はいっ……けふっ!」
たき火を棒でつつく鈴鳴だが、舞い上がった灰に小さくむせた。
苦笑する椿。
「大丈夫? 手を拭いて、サラダの準備をしましょ」
「はい!」
鈴鳴は頬に突いた炭をぬぐって、照れ笑いをした。
料理が女性の仕事というのは確かに古い考えではあるが、元々は火の扱いや水の管理が男性よりも上手だとされていた所から来ている……らしい。
その話が確かなら、料理の担当に女性ばかりが集まるのも無理からぬことだろう。
「つまり……女子会だな!」
天堂・フィオナ(CL2001421)は包丁を握ってにこやかに言った。
両手で握って大上段に構えて言った。
「えっと、あの……それだと、多分斬れないと思う……」
「剣と同じ刃物なのにか!?」
そんなまさかという顔で振り返るフィオナに、明石 ミュエル(CL2000172)は鶏肉の切り方を実践した。
「こうして、撫でるみたいにすると、いいよ」
「さむらい……」
欧米で言う肉の切り方はナイフの腹でドーンてやってバーンて切るやつなので、手首を使うことで小娘でもデカい肉をスライスできるという道具になじみがなかったりする。
「あと、押さえるときはネコの手で、ね」
「にくきゅう……あっ、皮を剥いていたらお芋が消えた!」
「ピーラーつかお?」
「よし!」
ピーラーを持って大上段に構えるフィオナ。あわあわするミュエル。
そんな様子を月歌 浅葱(CL2000915)は平和そうに眺めていた。
「たき火はいい具合なのですよっ」
薪をくんで作った火に飯ごうをつるしてふーふーする。
「キャンプと言えばカレー。カレーといえばライス。縁の下の力持ちなのですよっ」
身体を左右に揺らしながらご飯が炊けるのを待つ浅葱。
と言っても軽く一時間くらいあるのでずっとメトロノームごっこをしているわけにもいかないのだ。
「準備、すすんでる?」
麻弓 紡(CL2000623)がペットボトル飲料の入ったビニール袋を小さく掲げた。
今日はいつもと違って赤フレームの眼鏡に白いワンピースという姿だ。女子会っぽさに拍車がかかった瞬間である。
ぴょんと立ち上がる浅葱。
「食材も焼き始めて、煮込む頃合いですっ」
「じゃあ、カレー粉の準備、しよーか」
紡は茶色い紙袋を取り出してきた。
その後ろから顔を出す水端 時雨(CL2000345)。青いフレームの眼鏡をちゃきっとやった。
「カレー粉は重要っすよ! 配分をちゃんと考えないとっすからね」
スパイスの種類に関してはあえてはぶくことにする。
なんか色々入れたんだなあと、絵的な部分も含めて想像して欲しい。
煮込んだ肉や野菜にカレー粉を加え、更に細かい野菜も入れていく。
「隠し味にリンゴとはちみつを使うっす。チョコレートもひとかけらくわえてぐーるぐーると……」
しばらく混ぜてからは暇な時間がやってくる。
ご飯の炊きあがりも含めて、結構時間がかかるものだ。
「どーしましょ。女子会っぽく女子トークとかするんすか?」
「うんー?」
首をかっくりと傾げる紡。
「コイバナとかすればいいんじゃないかなあ」
「こいばな」
「こいばな」
「こいばな」
「鯉……」
その場の全員が微妙な顔をした。
腰に手を当てて胸を反らす浅葱。
「恋心は、秘めるものですよっ!」
「……秘め、てるの?」
「仮に無くても秘めるのですっ」
「ないんだ……」
一方で、時雨が腕組みして唸った。
「世の中同性愛も少なくないみたいっすけど、そういうの込みにしても……んー」
本当にいたら触れづらいなと思って自主スルー。
時雨は誰かに話を振ることにした。
「ミュエ――」
「……」
ミュエルが見たことも無い目をしていた。触れづらさがマックスだったので更にスルーした。
「フィオナさんはあるっすか、そういう」
話を振られて、フィオナは両手を挙げた。
「え? うーん……みんな大好きだぞ!」
もう結論これでいいやーという顔をして、全員でフィオナを撫でくることにした。
同じくカレー作りに花を咲かせる酒々井 数多(CL2000149)と環 大和(CL2000477)。
「ねえねえ、どんなカレーにしたらいい? 友ヶ島の名産品とかないのかしら」
ピンク髪を後ろに縛る数多。
「産業自体なさそうよね。淡路島にはありそうだけれど……」
黒髪を耳にかける大和。
「…………シカ?」
「禁猟区よ、ここ」
「仕方ないなあ、シカだけに☆」
星形に切ったにんじんを二本指ではさんで横ピースする数多。
淡々とジャガイモを切り続ける大和。
うん、なんてね、なんて……とか小声で言いながらボウルににんじんを入れていく。
そこでふと、ニンジンを空に翳した。
「そうだ、ねえね大和さん! いいこと思いついた」
かくしてできあがる鶏肉やら魚やらのちょっぴり豪華なキャンプメニュー。
そのメインを飾るのはなんといってもカレーである。
数多たちはそこに一工夫を加えた。
星形のニンジンとコーンを散らし、コーヒーフレッシュでラインをひく。
「友ヶ島の星空カレーよ」
できあがった沢山の料理を囲み、皆で手を合わせる。
いただきますは、やっぱり一緒に言うのが楽しい。
●星空シャワー
テントの中に寝袋をならべる。
淡いランプの光が、テントの中を照らしている。
柳 燐花(CL2000695)はそんな、小さな空間を見回してみた。
「なんだか、秘密基地みたいですね」
「そうだねえ、この狭い感じがより一層それっぽいよね」
笑顔で返す蘇我島 恭司(CL2001015)。
近頃はキャンプ道具も随分発達したもので、それほど苦労しなくとも快適なテントを作れるようになった。
寝袋の上に横になる。
「入り口のほうから、星が見えますよ」
「どれどれ。ああ、本当だね。こういう所はまわりに灯りが無いから、都会じゃ考えられないくらい見えるよねえ」
同じように横になる恭司。
彼に染みついた、煙とアルコールのような独特な香りがする。
燐花は深く呼吸をして、星に手を伸ばした。
まばゆい星だ。
無限とも思えるほどの数の、星々だ。
「これだけ綺麗に星が見えると、いつまでも眺めていられるよねえ」
燐花はちらりと恭司の横顔を見てから、星に目を向けた。
まるで星に包まれるような、不思議な感覚だった。
やがて、まどろみがやってくる。
色鮮やかな星々の中に、燐花はゆっくりと沈んでいった。
キャンプ場は広大だ。ぽつりぽつりと存在するテントの灯りが見えるばかりで、それぞれのテントの輪郭すらまともに見えては来ない。
夜のとばりとはよく言ったものだ。
宇賀神・慈雨(CL2000259)と天原・晃(CL2000389)はそんな二人だけの空間で、肩を寄せ合っていた。
「皆でテントを張ったり、ご飯を作ったり……キャンプって楽しいんだね、久し振り過ぎて忘れていたの。私の家族はみーんな不器用だったから、テントを上手く張れなくてね。……晃は、キャンプ初めて?」
「経験はなくもないが、てきぱきとは出来んよ」
慈雨の横顔を見ると、笑顔が戻ったように思えた。
最近は気を張りすぎていたようだが、どうやら今日はいい休息になったようだ。
星空を指さす慈雨。
「あれが夏の大三角でしょ、近くのがこと座で……方向が変わると秋の星座だね」
「綺麗なものだな」
肩が触れあう。
「季節は確かに移り変わっていて、でも変わらないものもあるよね」
「そうだな。時は移ろうものだ。だが、確かに変わらない物という物はあるだろう。数年、何十年経ってもきっと俺は君の傍に居よう、慈雨」
肩に腕を回す。
「勿論、君が嫌でなければだが」
「うん、私も……」
慈雨は晃の手を握り、頬を赤く染めた。
キャンプ場から少し離れた場所を、ランプを手に歩く二人がいた。
工藤・奏空(CL2000955)と賀茂 たまき(CL2000994)である。
海が見える台から、夜の水平線を眺めるのだ。
「大丈夫? 足下気をつけてね」
「はい……」
奏空の差し出した手を、たまきはそっと取った。
積み上がった岩の上に上り、腰を下ろす。
無限の星空と大海原に、たまきの目が大きく開いた。
「このキラキラ光る星も、ずっと遠くから旅をしてきた光の先に、あるのですよね」
「前にもこうして星空を見た事があったけど、島で見る星空はまたちょっと違うね。ずっと眺めていると吸い込れそうで……」
奏空がふと視線を向けると、たまきはまだ星空を見ていた。
「たまきちゃん」
視線に気づいて、たまきは奏空の目を見つめた。
夜空にかかるシルエットが、少しずつ近づいていく。
「たまきちゃん、大好きだよ」
「大好きです。奏空さん。……ずっと、傍に、居て下さいね?」
二人は頬をつけて、ひっそりと影を重ねた。
「五麟市に来てからあまり空を見上げてませんでしたが、改めてこうして見上げると……綺麗ですね」
十夜 八重(CL2000122)は、キャンプ場の片隅で星空を見ていた。
隣には切裂 ジャック(CL2001403)。
「そう? 俺は、こうやってまじまじと見るのは初めてかも……綺麗だなあ」
海風が頬を撫でていく。
夏場だというのに、島は不思議と涼しかった。
「寒くないですか?」
顔を覗き込む八重に、ジャックは両手をぱたぱたと振って背を反らした。
「お、俺は大丈夫! 体温高いし!」
「そうですか?」
顔を覗き込まれたままではつらい。
ジャックは話題を変えるように、星空に手を伸ばした。
「そうだ、あの星ひとつとってきてあげようか」
「あら、手が届くんですか?」
「そりゃあ……」
八重は小さく笑うと、ジャックを抱えて空へ飛び立った。
「うわっ……!」
地上に点在するテントの明かりがどんどん遠ざかっていく。
「こうすれば、お空も近いですよ。なんなら、お姫様抱っこしましょうか?」
「い、いいって! 大丈夫!」
ジャックは八重の手を強く握って、星空に目をそらした。
星空は万物に平等だ。
何億光年先から降る光が、地球上のあらゆるものへと注がれていく。
椅子に腰掛け、だらんとする松原・華怜(CL2000441)にもだ。
「癒やされますねえ、切実に」
多すぎる星空は距離感どころか平衡感覚まで失わせる。
まるで柔らかいきらめきの中にいるような時間が、現実感までも曖昧にし始めた。
「日頃うまくいかないのは現実が割るいんです。ええ、そうですよ……」
星空に愚痴を語りかけてみたり、手元に置いたコーヒーをすすってみたり。
最近は色々なことに気を遣ってばかりだったのだ。
たまにはこんな時間があってもいい。
そんな彼女のそばで、菊坂 結鹿(CL2000432)が小さく膝を抱えていた。
「……」
降るほどの星。どころか、自分が落ちていきそうなほどの星だ。
結鹿は胸の底から沸くような怖さを感じて、ただただそれを眺めていた。
かつて人々は星に神話を見たり、英霊の存在を感じたり、世界の理を探したりしたという。
今より明かりの少ない頃だ。きっと今ほど見えていたのだろう。
神話を身近に感じるくらい、超然としたものに見えていたのかもしれない。
「……」
結鹿はただ言葉も無く、星空に身をゆだねる。
そんな星々に、一筋の炎が走った。
ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)だ。
ペスカと共に空を眺めながら、指先から小さな炎を出しては空を描いていく。
「やっぱり、パンフレットよりずっと綺麗な星空ですよね、ペスカ。前の騒動の時には来られませんでしたけど……また島が危ないときには、きっと駆けつけましょうね」
炎を渦巻き、天へと昇らせていく。
島を訪れた恋人たちが、友人たちが、他にも色々な人たちが、空へ昇る炎を見つけた。
夜は更けていく。
さざなみの音は遠ざかる。
友ヶ島の夜に別れを告げるように、人々は静かな眠りに落ちていった。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
