≪友ヶ島騒乱≫巨大リス現る!
≪友ヶ島騒乱≫巨大リス現る!


●もふもふ尻尾の脅威!
 会議室へとやってきた『F.i.V.E.』の覚者達。
「よく来たの」
 中で待っていた『薄幸の男の娘』菜花・けい(nCL2000118)がぺこりと頭を下げる。彼は覚者達にスポーツドリンクを振舞った後、ブリーフィングを始めた。
「依頼内容としては、妖の討伐じゃな」
 それだけを聞くとなんとも単純な話ではあるが、その背景を聞いてほしいとけいは語る。
 依頼者は、なんと和歌山県、自治体からの依頼だ。
 現場は、和歌山県西部にある友ヶ島。隣接する兵庫県の淡路島に程近い場所にある。
「無人島ではあるのじゃが、海の家や宿泊施設のある島じゃな」
 ゴールデンウィークや夏季は観光客が多い場所だ。それだけに、悲しいかな観光客のマナーの悪さもあり、海岸や島内にゴミも多く、貴重な遺産にも落書きが残されているという。なんとも嘆かわしいことだ。
「こうした現状があって、磁場が悪くなっておるようでの。島では、妖化現象が頻繁に起こり始めたようなのじゃ」
 元々、松の木が多いこの島には、小動物、鳥や鹿、マムシなどが生息している。海にはフナムシ、クラゲを見ることができる。報告によれば、これらが妖となっている状況とのことだ。
 このままでは、観光客を呼び込むこともできない。それもあり、和歌山県はこの事態の解決の為、力をつけつつある『F.i.V.E.』へと依頼を出してきたのだ。
「友ヶ島には、友ヶ島汽船で行くことができるのじゃ」
 他の夢見や『F.i.V.E.』スタッフからも依頼は出ているが、けいが依頼を行うのは、島の南東にある南垂水キャンプ場周囲の森に住み着く妖だ。
「島の高台にある場所じゃの。海岸から少し山を登って向かった先なのじゃ」
 島に残された遺跡や遺産がない場所なので、戦いにおける立ち回りに制約が生じない場所だが、左右を森に挟まれている立地が問題だ。
 この地を根城としているのは、巨大なリスだ。近づくものを獲物と見定めて食らい付いてくる。
 リスといえば木の実を食べている印象が強いが、実際のリスは昆虫や小動物をも食べるという。巨大になったことで、人間も獲物と見定めて食らい付いてくることだろう。
「見た目が可愛らしいからこそ、厄介な相手じゃの。妖には変わりないから油断はせぬようにな」
 何せ、愛嬌のある見た目のリス。その姿とは裏腹に、妖となったことで好戦的となっている。大きなもふもふ尻尾で薙ぎ払い、がっちりと両腕で獲物をホールドし、鋭い前歯で食らい付いてくるのだ。
 巨大リスは全部で6体。一際大きな夫婦がそれぞれランク2。それ以外の仲間4体がランク1、配下のような立ち回りをしてくる。
「無事に解決した場合、県はその礼として大きな見返りを約束してくれるそうじゃ」
 なんでも、毎年8月末頃に、『F.i.V.E.』へとこの友ヶ島を貸切にしてくれるのだそうだ。
 島の周囲ではダイビング、シュノーケリング、釣り、海水浴など楽しむことができる。島内においては、バーベキューなどを楽しめる他、島内に残る砲台などの戦時中の施設、未知の洞窟などもあるというから、仲間と存分に楽しむことができそうだ。
「報酬があるからというわけでもないのじゃが……。依頼はしっかりとこなしておきたいの」
 信用を勝ち取り、毎年遊べる場所もゲット。1度で2度美味しい依頼だ。この機を逃すわけにはいかぬと、覚者達は参加表明を行うのだった。


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:なちゅい
■成功条件
1.妖となった巨大リス達の撃破。
2.なし
3.なし
初めましての方も、
どこかでお会いしたことのある方もこんにちは。なちゅいです。
福利厚生の依頼です。
友ヶ島で存分に遊ぶためにも、
妖の討伐をお願いします!

●妖……巨大リス(生物系)×6体。
○夫婦×1組(2体)……ランク2。
 全長3~4メートルもある妖で、
 覚者を捕らえて食らおうとしてきます。
・尻尾なぎ払い……特近列貫2(100・50)
・抱え込み…物遠単・負荷
・前歯……物近単・出血

○仲間×4体……ランク1。
 全長2~3メートル、夫婦より一回り小さいリス達です。
・尻尾なぎ払い…特近列
・前歯……物近単・出血

●状況
 南垂水キャンプ場の周囲に巨大リス達は住み着いています。
 森に挟まれた高原といった場所で、戦うにはほぼ障害がない場所です。
 森に隠れるのが難しい夫婦のみ、最初からキャンプ場に姿を現しています。
 戦いの最中、仲間リスが増援として現れますので、
 ご注意を願います。

 それでは、よろしくお願いいたします。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(0モルげっと♪)
相談日数
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
公開日
2016年08月26日

■メイン参加者 8人■


●友ヶ島上陸!
 和歌山県西部に浮かぶ友ヶ島。
「自治体ってやつから頼って貰えるようになったってことは、『F.i.V.E.』の知名度も上がってきてるってことだよな」
 最初に上陸したのは、『巖心流継承者』獅子王 飛馬(CL2001466)。まだまだ戦闘経験の浅い彼だが、『F.i.V.E.』の一員としての自覚を強く持っている。
「友ヶ島っつーと……」
 飛び入り参加をしてきた『燃焼系ギャル』国生 かりん(CL2001391)は、ビキニ水着の上に薄手のサマーワンピースにサンダルという姿で参戦している。
 某アニメの城みたいな雰囲気だと評判の跡地のある場所。そう聞いていたかりんは島を見回す。
「ここで毎年タダで遊べるってんなら、まー悪い条件じゃないよね」
「妖退治で毎年遊べる場所確保。燃える人間が沢山居そうだね」
 何年『F.i.V.E.』に居続けるかは分からないが、それでもと、かりんは依頼に意欲を見せた。できる限り頑張らないとと、『五行の橋渡し』四条・理央(CL2000070)も意気込んでいたようだ。
「夏は毎年お爺様の別荘へいくのですが、遊べる場所は幾らあっても良いですわね♪」
 『二兎の救い手』秋津洲 いのり(CL2000268)は、この島を気に入ったようだ。
「その為にも、しっかり依頼をこなしませんと。気合を入れて参りましょう!」
 意気揚々と上陸するメンバー達だが、すぐにゴミの山が目に入ってしまう。
「島の生き物たちが妖化してしまったのには、環境を悪くさせた人間達の原因もあるんだね……ごめんよ……」
 『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)は妖発生の一因が、人間によるものなのだと感じてしんみりしてしまう。
 この状況は人間にとって自業自得。『スポーティ探偵』華神 悠乃(CL2000231)も、一旦そんな考えを口にしていたが。
「それは、それ! これは、これ!」
 ばっさりと割り切った彼女は、自身と同伴している『雷麒麟』天明 両慈(CL2000603)とのビーチでの一時の為にと依頼に臨む。
「吹き飛んでいただく。いや、むしろカッ飛ばす」
 ぶんぶんと拳を振り回す悠乃を少し見た両慈が微笑んだ。
「友ヶ島で息を抜く報酬は別に……いや、必要、だな」
 今回は少し気合を入れて行かせてもらうと、彼もまた気合を入れた。
「おっきなリスさんかぁ。可愛らしいけど、放置していたら怪我をしちゃう人が出る危険もあるんだよね」
 そんな一行の今回の相手は、『火纏演武』鐡之蔵 禊(CL2000029)が言うように、妖となって巨大化したリスだ。夫婦のリスもいるようだから、あまり怪我はさせたくないと彼女は考える。
「リスたちを助けるために頑張っても、良いよね!」
 ただ、動物系の妖は、倒すことで元の動物に戻る事例が報告されている。できるなら、リスも助けたい。禊はそう考えていた。
「さぁ! 今日もみんなのために、頑張るぞー!」
 こう見えて今回のチーム最年長、禊は元気を漲らせて叫ぶのだった。

 メンバー達は目的地である島の南東、南垂水キャンプ場を目指す。島に群生する木々を掻き分けて坂道を登っていく。一応通れる道ではあるが、整備されているわけでもないので、むき出しの山肌を登る形だ。
「申し訳なくはあるけど、一度は撃破しないとね」
 相手は妖。奏空はその相手をすべく、気を引き締めるのだが。
「うっわー、でかいリスだ!」
「何だか、いのり達が小人になった気分ですわね」
 一般的には手に乗るくらいの大きさのリス。だが、それに見下ろされるとさすがに奏空も驚いてしまう。いのりもそれに感嘆はしていたが、彼女は事も無げに覚醒して大人の姿となって布陣していく。
「カワイイみたいなイメージあるんだケドも、実際、結構凶暴だぜアイツら?」
 見た目が小さく可愛らしいリス。しかし、普通のリスをペットとして飼っていても、下手をしたら飼い主を病院送りにする凶暴性があるとかりんは語る。
「見た目のカワイさに騙されたら痛い目見るのは、何を隠そうこのかりんちゃんも一緒だからな!」
 ………………しーん。
 仲間達はもちろん、リスすらも何事もなかったかのようにその場に佇む。
「……いや、ゴメン。今のやっぱ無しで」
 そんなかりんをさらりと流し、飛馬がキャンプ場を確認する。そこにいるのは自分達の倍以上はある巨大なリスの夫婦のみ。おそらく、周辺の森に自分達と同じくらいの大きさのリスが身を潜めているはずだ。
「どこから来るか分かんねーし、気を配っとかないと」
「そうだな……」
 両慈は第六感を使って周囲の警戒をしながらも、今この場にいる夫婦リスを仕留めるべきと覚醒していく。
「他のリスたちが来るまでに、ある程度体力を削っておきたいところだね」
 禊もここに鎮座する夫婦リスを先に対処しようと前に出る。
(見た目は可愛いけど凶悪な相手とか、女子格やってると割りと見るわけですよ)
 女子格闘技……総合格闘技の競技選手でもある悠乃は、可愛らしい相手に牙を向かれた経験も多い。げっ歯類な程度で拳を緩める気など、さらさらない。
「よっし、作戦通りに!」
 奏空も覚醒し、髪を金色に染め上げてから巨大リスへと立ち向かうのである。

●巨大リスに対して
 牙をきらりと光らせた2体の巨大リス。
 そいつらは覚者へと飛び掛ってきて、その牙を突き出してくる。
 前に立つのは3人。飛馬、奏空、禊がそのリス達の攻撃を抑える。飛馬、奏空が牙を体へと突き入れられ、体から血を流す。
「目標は、リスを治して仲間も元気に解決! よーし、やるよ!」
 叫ぶ禊は全身の細胞を活性化させ、そのまま右のリスへと攻め込み、ジャブ、フックと叩きつけた直後にストレートで渾身の一撃を叩き込んだ。
「こいつらは、磁場が悪くなったせいで妖に……好きでこうなってる訳じゃないんだよな」
 飛馬は敵を抑えながらも、土を纏うべくスキルを行使していく。
「磁場が悪くなると妖が出現するのか……。何かその辺も調べてみたいね」
 奏空はそう考えながらも、頭上へと呼び起こした雷雲から雷を叩き落とす。
 とにかく、相手の攻撃による出血や負荷は気にせず、ガンガン妖の体力を削っていこうと彼は考える。
「天明さん、お願いします!」
 両慈は補助をかけずに戦う奏空の要望を受け、仲間達を爽やかな空気で包み込み、その身体能力を高めていく。
 その隣で、敵を見つめていた悠乃は陣形を整えつつも、体内の炎を活性化させ、前方のリスへと飛び込む。
 その背を、両慈は見つめる。前衛能力は高い彼女だが、それでも戦おうとするのは心配になってしまう。
「お前の強さはよく知っているが、それとこれは別だ。……決して無理をするんじゃないぞ」
 ただ、悠乃はその声を背で受けて逆に張り切ってしまい、連続してリスへと拳を突き入れ、その傷口から血を流していくのである。
 悠乃は前のメンバーのフォローを行いつつ、後の2人を護る為に立ち回っていた。
 後にいたいのりは、リスの周りに絡みつくような霧を発生させてその身体能力を低下させる。
 さらに、理央は傷つく仲間へと恵みの雨を降らし、仲間達の傷を塞いでゆく。
「しっかり回復するけど、無茶はしないでね」
 後ろから盾となる仲間を支えるべく、理央はそう仲間へと呼びかけながら、多少の回復超過を気にすることなく術式を使い続ける。
 今のところ、前列メンバーがなんとか抑えてくれている。
 すぐ後ろに控えるかりんは体内の炎を灼熱化させ、この後の状況に備えていた。というのは、事前情報によれば、妖となったリスはこの2体だけではない。キャンプ場を挟む森の中に巨大リスの仲間が隠れているという。
 飛馬は防御を高め、反射シールドを合わせて前面へと張っていく。
「なあ、聞こえてるか?」
 飛馬はリスに抱え込まれながらも、声をかける。
「こうなったのは、人間のせいでもあるんだよな……」
 リスだって、人間による被害者。だからこそ、自分達の本心をぶつけたいと飛馬は考えていたのだ。
 だが、リス達は聞く耳を持つことなく、獲物を確実に刈り取ろうと、尻尾を叩きつけてくるのだった。

●襲い来る増援
 メンバー達は巨大リスへ、攻撃を与え続ける。
 相手はランク2。決して弱い敵ではない。もふもふした尻尾だが、大きく振るわれればそれは凶器となり、前中衛のメンバーの体を強かに打ちつける。
 その相手をしながらも、覚者達は森への注意を怠らない。
 飛馬はできる限り鋭聴力を働かせていたし、いのりは守護使役ガルムへと森に潜む新手の居場所をかぎわけさせようとする。奏空も同じく守護使役、ライライさんに周囲をていさつさせていた。
 ガサ、ガサ……。
 キャンプ場で戦う覚者達目掛け、それらは一斉に飛び出す。
 飛び出てきた4体のリス。元々いる夫婦よりは小さいが、それでも、大きな体躯のリス達がメンバーの左右から2体ずつ現れる。
 突然、新手が現れても、理央は慌てる素振りを見せない。
(やる事は変わらないし、味方もちゃんと対応してくれると信じてる)
 下手にその対処をして安全を確保するよりも、そのまま皆を支える方が確実!
 理央は心の中で力強く声を上げ、仲間を癒し続ける。
 実際、両慈、悠乃ペアが同時に、現れたリス達の対処を始めていた。
 いのり、奏空の守護使役が敵の動きを察知してくれていたのを、悠乃が送受心・改によって情報共有しており、タイミングを合わせて2人は襲い掛かっていたのだ。
 両慈はタイミングを見計らって敵を狙いすまし、敵全体へと的確に輝く光の粒をリス達の体へと降り注がせて体力を奪っていく。
 そのうちの1体へと悠乃が迫る。彼女は手の中に空気を集め、それを熱圧縮させた衝撃で左手側からやってきたリスを吹っ飛ばす。
 いのりも増援を含めて再び霧を発し、敵全員を虚弱状態に陥らせる。その上で、彼女もまた光の粒を敵全体へと降らせていった。
(今のところ、貫通攻撃は来ないみたいですが……)
 正面にいる巨大リスの尻尾に、いのり十分気を払う。前衛が突破されたり、巨大リスに回り込まれたりすれば、その餌食となりかねないのだ。
 理央は仲間の負担を軽減しようと、水の滴による回復を繰り返すが、隙を見て、その水の滴を攻撃の為に撃ち出す。神秘の力で生成された水は竜となり、リス達へと食らい付いていく。
 飛馬はシールドを張り、敵の尻尾なぎ払いに対して反射によるダメージをしっかりと与える。
 また、敵の攻撃は可能な限り自らの刀を使って防御する。その際、刀の棟で受けることを心がけ、必要以上にリスに傷がつかないようにと配慮していたようだ。
 しかしながら、自身へのダメージがなくなるわけでもない。仲間のサポートを受けはしていたが、彼のダメージはそれなりに大きいようだ。
 戦いは進む。覚者達は徐々に体力気力をすり減らすが、それ以上に、リス達は疲弊していた。
 前で戦い続ける禊もその1人だ。
「相手の『抱え込み』は後ろにも届くんだよね!」
 数が増えたことで、敵が後のメンバーを狙う可能性は高まる。だからこそ、巨大リスを移動させるわけには行かない。
 隣の奏空が抱え込まれていたのに対し、禊は躍りこんで行く。
「熱い一撃だよ! 火傷しないように気をつけてね」
 拳へと集中させた火力を爆発力へと変え、彼女は渾身の一撃を巨大リスに叩き込む。すると、そいつはついに大きくのけぞり、地響きを立てて崩れていった。
 増援を相手にするメンバーも、徐々に敵を追い込んでいた。
 牙を突きたててこようとするリス。周囲の敵を巻き込み、かりんはリス数体を大きな炎の柱で巻き上げる。
 地面に転がるリス。妖でなくなったそれは元の大きさに戻り、土の上へと転がっていったのだった。

●救うことができるなら……
 爛々と目を輝かせ、リス達は人間を外敵とみなして襲ってくる。
「自分達の住処である島を汚されて、怒ったんだよね……」
 このリス達も人間に対して怒りを覚えている。それが、奏空にはやるせない。
 生物系妖は、撃破しても殺さなければ元に戻る。彼はそんな話を聞いていたからこそ、思う。
 元のリスに戻って欲しい……!
 そう願いながらも、彼は雷を叩き落とす。
 全身を黒く焦がした巨大リスが煙を噴き出した。ついに、そいつはよろけ、キャンプ場の上に倒れこみ、動かなくなってしまう。
 残るは増援の一回り小さいリス達だが、覚者達の疲労は大きい。
「了解、自然治癒力を強化するね」
 メンバー達の訴えを汲み取り、理央は治癒力を高める香りを仲間達へと振りまいた。
 また、戦いが長引いてくると、仲間の気力も限界へと近づいていく。そのフォローも考え、理央は自らの気力を仲間へと分け与える。
(消費気力が多いけど、これがあるから気力を心配する要素が少なくなるんだよね)
 それもあり、前線メンバーは心置きなくスキルを行使することができる。
 速度で敵を翻弄する禊は、巨大リスが倒れたことで、増援のリスを相手にしていた。やや、爆裂掌の方が効果があると判断していた彼女は、リスの牙を避けながらも拳を炸裂させる。
 そこへ、かりんも躍りかかった。すでに、灼熱化が解けてしまっているが、再付与はメンドーだと攻め込む。
「その前に、片付けて終わらせるしな!」
 だが、瞳を光らせたリスはかりん目掛けて食らいつく。痛みと流れ出る血に、かりんは顔を引きつらせつつも耐え切る。その上で、術力を込めた火箸型の手裏剣を投げ飛ばし、リスへと止めを刺していた。
 逆方向では、両慈、悠乃がコンビネーションを見せ付ける。
 リス目掛けて雷を叩き落していた両慈。そのタイミングを熟知していた悠乃は嬉しそうに、攻撃を重ねようとする。
 両慈とべったりの悠乃に、爆ぜろという声がどこからか聞こえそうな気もするが。
「爆発しろ? おっけー、やったりますよドカンと!」
 右の拳に豪炎を纏わせた悠乃は、リスへと思いっきりその拳を叩き込む。
 目から光を失ったリスは、蹲るようにして崩れ落ちていった。
 敵の数が減ってきたことでようやく負担が減り、呼吸を整えていた飛馬。倒れこそしなかったが、命を削っていた彼は、最後までリスへと訴え続ける。
「……また、元通りのリスに戻っちゃくれねーかな?」
 それでも、リスに躊躇する様子はない。大きく口を開け、食らい付いてくるその牙によって、飛馬の体へと新たに刻まれた傷から血が流れ出た。
(元に戻る可能性があるのなら……)
 もし、このリスに子供がいたのなら、自分のように両親を失うつらさを味合わせたくはない。いのりは、ロケットペンダントを握り締めてそう思う。
 リスは再び尻尾を振るってこようとする。いのりはそれを止めるべく、光の粒をそのリスへと降り注がせた。それを浴びたリスはついに意識を失って倒れてしまう。
 倒れるリスを受け止めた飛馬。ぐったりと倒れるリスはかすかに息をしていた。
 そのリスだけは息絶えることなく、元の可愛らしい姿へと戻っていく。いのりは助かったリスを抱きしめ、癒しの霧でその傷を治療するのだった。

●これから世話になる島で
 戦いを終えた覚者達。
 だが、妖は決して楽な相手ではなかった。特に前線で戦っていたメンバーは傷を負っている。
 両慈はすぐさま悠乃のところへと駆けつけていた。自身も怪我はしていたはずだが、彼は自身よりも身長の大きい悠乃を楽々とお姫様抱っこをしてみせる。
「あっ……」
「無理をした罰だ。帰り着くまで、このまま連れて帰らせて貰うぞ」
 これ見よがしにラブラブっぷりを見せ付ける2人に、奏空も気づいていたようで。
「わー、お二人お付き合いしてるんですねー! おめでとうですー!」
 湧き上がる拍手。メンバーに恵まれていたのか、温かい視線と拍手に包まれ、2人はその後も、周囲を恥ずかしくさせるほどの熱愛ぶりを見せ付けたのだった。
 それはそれとして。いのりは自身に懐いたリスを撫でつつ呟く。
「そもそも、このリス達が妖となったのも、人間がこの島を汚し、ゴミを散らかしたからという事ですし……」
 今後、この友ヶ島が自分達のお世話になる場所となるのであれば。
「いのり達で、出来る所までお掃除いたしましょう」
「島を綺麗にしよう! ゴミを捨てないでね。島の動植物達が泣いてるよ」
 奏空 も同意し、島を綺麗にしようと考える。その為の看板やポスターも作ろうと考えていた。
「このまんま、ここでキャンプしていく?」
 かりんはにっこりと笑い、用意してきたレトルトカレーを見せ付ける。一仕事後の食事も問題なさそうだ。
 ともあれ、島の大掃除を。メンバー達は時間の許す限り、船着場からキャンプ場までの間の大掃除を行うことにしたのだった。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし



■あとがき■

リプレイ、公開です。
妖討伐、お疲れ様でした。

MVPは、仲間達が全力で戦えるようにと
サポートに尽くしていただいた貴方へ。

キャンプ場からは妖の気配がなくなりました。
ゴミ処理までしていただき、
県の担当者も感謝しております。

参加していただいた皆様、
本当にありがとうございました!




 
ここはミラーサイトです