≪悪・獣・跋・扈≫あの雷を撃て
≪悪・獣・跋・扈≫あの雷を撃て


●妖強襲
 昨今、奈良県で起きた動物系妖退治の最中、鳴海 蕾花(CL2001006)の調査がきっかけとなって、奈良盆地山中に妖の一大コミュニティ『群狼』 が発見された。
 『群狼』と名乗る妖の群れは、牙王(きばおう)と呼ばれるランク4動物系妖によってまとめられた集団だ。
 夢見の予知によれば、妖達は近々人里への大規模な襲撃を準備しているという。第三次妖討伐抗争後落ち着きつつある状況が、また混乱に戻ってしまうのは明白だ。
 そこでF.i.V.E.とAAAは先手を打ち、大規模な妖掃討作戦を発動する事となったのだ。
 『群狼』に属する妖達はグループを作り、山の中に散在している。そこでこちらも、それを各個撃破していくという作戦を取ることとなった。
 山本はじめはその作戦において、補給部隊の内一隊の隊長を任されていた。
 実績も実戦経験もない新任のAAA隊員である彼女にとって、前線に出る事はない補給部隊長は、はじめての任務として最適な仕事である。
 人間相手の戦闘であれば、補給部隊への襲撃も考えられる。しかし相手はケダモノ、補給の重要性など認識しまい。前線より遠く離れたこの部隊は、限りなく安全である――はずだった。
 その音が聞こえた時、AAAの補給部隊員たちは、雷が落ちたものだと誤認した。
 それほどの轟音と衝撃――だが空には雲一つなく、雷とは考えにくい。
 ふと、はじめが地面を見やると、雷が落ちたと思わしき場所に蠢く何かがあった。
 それは、子犬のような、タヌキのような、全長30cmほどの奇妙な生物である。
 困惑するはじめをよそに、その生物は威嚇の声を上げると、近くにいたAAA隊員の首に噛みついた。喉笛を食いちぎられた隊員は、ひゅうひゅうと空気を吐き出すと、そのまま絶命した。
 そして再びの雷のような音――今度はいくつもの奇妙な生物が、ミサイルの様に補給部隊めがけて飛来する。
 わずか数十秒。それだけで、そこは地獄を思わせる様相を呈していた。
 飛来した生物に体を貫かれ、胸に大穴をあけ倒れた隊員がいる。
 生物が直撃した車両の爆発に巻き込まれ、黒焦げになった隊員がいる。
 生物に噛まれ、何か毒物に感染したのか、顔を真っ青にしたまま震えて倒れる隊員がいる。
 余りにも異常な事態――山本はじめは狂気の一歩手前まで追い込まれていた。
 そんな彼女へと、今まさに、奇妙な生物が――妖が、襲い掛かろうとしていた。

●雷迎撃
「え、えと、皆、集まってくれた? なら、説明、はじめるんよ」
 速水 結那(nCL2000114)は緊張を隠せないまま、作戦の説明に入った。
 話によれば。
 今回の作戦で協働する事になるAAAの補給部隊が、妖の強襲を受け、壊滅するという予知がされた。
「妖たちの作戦は、こう。離れた所に大雷獣擬(だいらいじゅうもどき)言う妖が居って……あ、これはF.i.V.E.でつけたコードネームなんやけど、その大雷獣擬が、次々雷獣擬(らいじゅうもどき)ってちっちゃい妖を生みだして、補給部隊に向けて発射してるみたいなんよ」
 つまり、中距離からの砲撃、そして兵隊の送り込みを同時に行っていると言う事だ。
「そこで、皆には、この大雷獣擬をやっつけて欲しいんよ。AAAの補給部隊は、他の覚者の皆が護衛しとるから、基本的には心配しないでええんよ。でも、戦いが長引けば犠牲は増えてしまうかもしれへんから、そこだけは気をつけてな」
 予知の結果から、大雷獣擬の居場所は分かっているという。
「あ、それと、事前に覚醒してスキルを使ったりするのはダメなんよ。敵にこっちが攻撃しようとすることがバレてまうかもしれへんから……あくまで、敵と戦いに入ってから、お願いな」
 結那は細かい情報を記した資料を手渡しながら、言った。
「AAAの人達も守らなあかんけど……皆も怪我しないように気をつけてな」
 そういって、結那は覚者達を送り出すのだった。


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:洗井 落雲
■成功条件
1.全ての妖を倒す
2.AAA補給部隊の被害を可能な限り抑える
3.なし
 お世話になっております。洗井 落雲です。
 AAAの補給部隊を救うため、何より作戦を成功に導くため、
 妖を撃退しましょう。

 作戦の流れ
 皆さんには、あらかじめ敵が陣取っている場所へと向かっていただき、敵が砲撃を開始すると同時に攻撃を開始していただきます。
 AAAの補給部隊には、F.i.V.E.の名もなき覚者が護衛についているため、基本的には心配無用です。
 ですが、戦闘が長引けば、彼らでは対応しきれなくなる可能性はあります。

 戦場データ
 奈良県某所、山林地帯。
 基本的に足場や光源など、ペナルティの心配はありません。

 敵データ
 雷獣擬(ライジュウモドキ)×4
 ランク1生物系
 隊列:前衛
 使用アビリティ:
  不潔な歯 物 近 単 毒付与
  体当たり 物 遠 単

 大雷獣擬(ダイライジュウモドキ)×1
 ランク2生物系
 隊列:中衛
 使用アビリティ:
  不潔な歯 物 近 単 毒付与
  体当たり 物 遠 列 痺れ付与
  特殊:雷獣擬射出
      1ターン目と、以降2ターンごとのターン開始時に、麓の補給部隊に向かって最大8体の雷獣擬を射出します。
      これは行動判定フェイズの前に、通常の行動とは別に発生します。
      この行動時、大雷獣擬に付与されているバッドステータスは効果を発揮します。

 ●重要な備考
 ≪悪・獣・跋・扈≫のシナリオ成否状況により、奈良盆地の状況が決定します。
 これ等の判定は基本的に『難易度が高いシナリオの成否程』重視されますが、『成否に関わらず戦況も加味して』判定されます。
 総合的な判定となります。予め御了承下さい。

 それでは、皆様のご参加を心よりお待ちしています。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(1モルげっと♪)
相談日数
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
公開日
2016年07月17日

■メイン参加者 8人■

『星唄う魔女』
秋津洲 いのり(CL2000268)
『ホワイトガーベラ』
明石 ミュエル(CL2000172)
『スピード狂』
風祭・雷鳥(CL2000909)
『桜火舞』
鐡之蔵 禊(CL2000029)
『ブラッドオレンジ』
渡慶次・駆(CL2000350)
『天を舞う雷電の鳳』
麻弓 紡(CL2000623)

●あの雷を撃て
 AAA補給部隊の新米指揮官――山本はじめは額の汗をぬぐった。今回の作戦は何の危険性もないはずだった。『死の予言』を受けるまでは。
 もちろん、予言は覆せる。極端な事を言えば、今日この場に補給部隊を置かなければそれでOK、万事解決なわけだが、そんな事は出来ない。もしこの場に自分達が展開しなかったとしたら、本来自分達を狙う敵がどこで何をするか、全く分からなくなってしまう。諦めて帰ってくれればいいが、他の部隊に奇襲をかけられたり、人里に降りられてしまった日には目も当てられない。
 予言とはもろ刃の刃。絶大なアドバンテージである以上、可能な限りその内容に沿って行動しなければならない。それがどんな内容であってもだ。そして、それが最も正解に近い行動である事を、はじめ以下補給部隊の隊員は理解していた。理解は。
 とは言え。
 恐ろしい物は恐ろしい。
 勿論、ただで予言を成就させるわけではない。阻止すべくF.i.V.E.からの援軍も駆けつけてはいるが、どうにも、どこか浮足立っているように感じた。彼女と同じく、経験が足りないのだろうか? 大元を断つべく行動している本隊が存在するらしいが、それでも数体の敵はこちらで受けなければならない。自分達でさばき切れるのか? そもそも本隊は大丈夫なのか? いやいや、いやいや。
 ぐるぐると。
 思考が空回りする。
 と――。
「民のみんなー! 余が来ちゃった!」
 あまりにも場違いな声。驚きのあまり、はじめはひっくり返りそうになった。
 声の方を見れば、2人の男女。恐らく、先ほどの声は男の方だろう。見覚えがある。確か、本隊で大元の妖を討伐するグループに所属していたはずの覚者、プリンス・オブ・グレイブル(CL2000942)と『彼誰行灯』麻弓 紡(CL2000623)だ。
「あ、あなた達は、確か、妖の撃退に向かっていたはずでは……?」
 呆然としつつ尋ねるはじめに、
「うん、余とツム姫が援護に来ることになってね!」
 彼が言うには、彼ら二名が麓の補給部隊の援護を行うため、本隊より離れ、此方に合流したとの事だった。
 大元への打撃力は多少落ちるが、補給部隊が被害を受けては元も子もない、との判断だ。念のため、本隊との連絡手段、状況の確認手段は確保している。
「だから、まぁ、安心してほしいね。2人だけど、余もツム姫も、かなりやる方だから!」
 なるほど、とはじめは思う。
 素人の自分でもわかる。この2人は、強い。単純な力だけでなく、戦術面においても、自分達や、本来の護衛の覚者達より、はるかに格上の存在だ。
「さておき、殿。トゥーリが本隊と、モドキを見つけた。そろそろ動きそう」
 紡の言葉に、はじめがびくり、と肩を震わせた。まもなく攻撃が始まる――部隊にも緊張が走った。
「おっ、話には聞いてたけど、はじめ姫ったら、こういうの初めて? なるほどなるほど、じゃあ余がちょっとレクチャーしてあげよう。こういう時はね、こうやるのさ」
 ドン、ドン、と轟音が響いた。妖の攻撃。
 同時に、プリンスと紡は覚醒。プリンスは獲物をズシンと地面につきたて、
「余、プリンス・オブ・グレイブルの名において命ずる。各員、総力を以て『あの雷を撃て』」
 戦場に響き渡る澄み切った声で、そう言った。
 その一言だけで、その場にいたすべての兵士が、居住まいを正した。まるで恐怖を忘れたかのように武器を構える。高貴なる者より与えられるオーダー。或いは、絶大な信頼を寄せられる指揮官による指揮命令の声。
「ネ? 簡単でしょ? じゃ、またあとでね」
 軽く手を振りながら、プリンスが武器を構えた。
「そうそう、王家はエブリディ妃募集中だから! 戦う背中にきゅんとしていいんだよ?」
「ハイハイ。すぐに妖も到着するから。働け働け」
 紡がぼやきつつ、構える。
 元々の護衛のF.i.V.E.覚者たちも、彼ら二人の登場と指揮により、明らかに落ち着きを取り戻したようだ。
 はじめ達補給部隊がきゅんと来たかはさておいて、大いなる希望を彼らの背中に見出したのは事実だった。

●雷獣擬討伐作戦
「動いたか!」
 『フローズン大斬り』渡慶次・駆(CL2000350)が砲撃音を察知し、叫んだ。
 同時に、本隊の覚者達が一斉に覚醒、戦場へとなだれ込む。
 そこにいたのは、予知通り四匹の雷獣擬と一匹の大雷獣擬。
 大雷獣擬は名前の通り、雷獣擬を大型化した見た目で、巨大な犬、タヌキと言った風情であったが、そこは妖。狂暴に赤く光る眼と、肥大化した筋肉や爪、牙等、常識的な生き物とは違う、明らかな異常さが見て取れる。
「なるほど。観察してたが、背中から直接子分を生みだして撃ちだすとはな。流石に妖と言った所か」
 『金狼』ゲイル・レオンハート(CL2000415)が鼻を鳴らしながら言った。
「しかし毛並みの手入れがなってねぇな。今から存分に手入れしてやる。覚悟するんだな」
「一番手は、わたしがもらうよ!」
 『史上最速』風祭・雷鳥(CL2000909)が躍り出た。
 それは誰よりも速く、雷よりも迅い、まさに史上最速のランスの突撃。しかも、突撃槍たるランスを以て、さながら驟雨のごとき攻撃で4匹の雷獣擬を打ちのめす、神速の突き。
「さすがだね! でも、あたしだって速さは負けないよ!」
 『火纏演武』鐡之蔵 禊(CL2000029)は構え、すうっ、と、息を吐いた。
 彼女が得意とするのは目にも止まらぬ必殺の足技だ。その速度から、まるで刃物のような鋭さを誇る蹴り技が、雷獣擬達を次々と切裂いていく。
「中々じゃん。やっぱ戦いは足の速さで決めるもんよね!」
 油断なく敵へ注意を向けつつ、雷鳥が禊に声をかける。
「うん! それに今回は止まる暇もないからね!」
 元気よく、禊が答えた。
 此方の手が遅くなれば、それだけ麓の仲間たちを危険にさらすことになる。
 攻撃の手を緩めず、速やかに目標を撃破する――それがまず第一だ。
「雷獣擬……そっちもすばしっこそうだけど、最速のわたし相手じゃ没個性っての、教えてやるわ」
 雷鳥はにやり、と笑いながら獲物を構える。
「十天がひとつ。火纏の鐡之蔵禊! 火傷には気をつけなよ!」
 禊も構え、啖呵を切った。
「妖たちの思い通りにはさせませんわ!」
 言いつつ、杖をつきつけたのは『二兎の救い手』秋津洲 いのり(CL2000268)だ。
 彼女はその杖から霧を発生。粘つく様なそれが、妖たちを包み、行動を阻害させる。
「アタシも……!」
 『二兎の救い手』明石 ミュエル(CL2000172)が、種を投げつけた。それは大雷獣擬にあたるや急激に成長を遂げ、その体に干渉、自由を制限した。
「……効いてる、みたい……!」
 ミュエルが手ごたえを感じ、声を上げた。
「ええ、欲を言えば小擬の射出に影響を与えられればいいのですが……」
 いのりがその言葉に答えた。
 大雷獣擬の特技にして最大の攻撃として、麓のAAA部隊への雷獣擬射出がある。彼女達は、所謂バッドステータスの付与により、それを阻害しようと行動している。
 速やかな敵の殲滅が勿論第一であるが、可能な限り麓への攻撃も防がなければならない。一瞬で倒す、等と言う事が不可能であり、また、例え瀕死になろうとも相手が麓への攻撃を止めないのであれば、それを可能な限り妨害する事が必要だ。
 迅速な攻撃と、確実な妨害。この二つが、本作戦にいて重要なファクターであるといえる。
「それにしても……補給部隊を、狙わせるなんて……」
 ミュエルが呟く。
 別の戦場でも補給部隊や拠点が襲われていると言う。
 牙王の命令か、或いは偶然であるのかどうかは不明だが、敵がある程度組織だった動きをしているのは明白であった。
「牙王……妖の組織の頭目。とても恐ろしい相手ですわ」
 いのりが言った。それは、今のF.i.V.E.が初めて遭遇する敵だった。多少の恐れを抱くのも、仕方はあるまい。
「だけど……ううん。だからこそ、アタシたちが……頑張らないと……!」
 ミュエルが決意を込めて言う。恐れているばかりではいけない。この妖の群れを止めなければ、甚大な被害が予想されるのだ。
「ええ! まずは、雷獣擬たちをやっつけて、AAAの皆さんを助けてあげましょう!」
 いのりの言葉に、ミュエルが頷いた。
 とは言え、妖たちも一方的にやられているわけではない。
 雷獣擬達がぎちぎちと歯や爪を鳴らし、威嚇の声を上げ、飛び掛かってくる。
 妖たちの反撃が始まろうとしていた。

「ツム姫ー、余もう飽きたー。早く助けよう? そして余の事敬愛しよう?」
「ハイハイ、敬愛してるしてるから頑張れ」
 プリンスに軽く激励の言葉を飛ばしつつ、紡は補給部隊と本隊、2つの戦場の状況把握にいそしんでいた。
 プリンスが軽口を叩ける程度には、麓の戦況は安定している。
 F.i.V.E.の護衛部隊もそれなりに仕事をしているし、士気の上がった補給部隊も、彼らなりに援護などをしてくれている。
 紡による味方部隊の治療や、プリンスによる雷獣擬への行動阻害も功を奏していた。
 何より、本隊の活躍により、大雷獣擬からの砲撃がされなかった、或いは大幅に射出数が減っていたと言った事も有り、麓側はむしろ優位に戦況を進めているといえる。
 ――こっちは順調っと。本隊の方はどうかな?
 彼女の瞳が、本隊側の戦場を捉える。何名かは傷を受けていたりするものの、大きな被害を受けている者はいない。敵の前衛も壊滅しており、あちらも優位に立っていると見える。
「殿、ミュエちゃんに連絡。こちらは順調。そっちも大丈夫そう?」
「はいはい、お任せー…………うむ、ミュエル姫も『OK』と愛ある返事をくれたよ」
 ――送受信がギリギリ届く範囲で助かったよ。あっちも順調、っと。
 プリンスの報告を受けながら、内心で一人ごちた。
 お互い順調。とは言え、最後まで油断は出来ない。
 紡は再び、視線と思考を戦場へと巡らせた――。

 ボロボロの大雷獣擬が、麓へ向けて数匹の雷獣擬を射出した。
「律儀さじゃあお前さんには敵わねえよ。こんなになってもまだ麓にばらまきやがる」
 半ばあきれたように、駆が言った。
「本能か……或いは、リーダーに強制された故の行動か。どちらにしても、対した忠犬っぷりだよ」
 ゲイルもまた、同じようにぼやいた。
 事実、ダメージと行動阻害効果でボロボロの大雷獣擬は、そこまで追い込まれてなお、退く事も、砲撃を止める事もしなかった。
 牙王への忠誠か、或いはただ命令を遂行しているだけなのか……いずれにしても、その命つきる時まで、この妖は攻撃を止めないだろう。
「その忠誠心は立派だが、俺達にも退けない理由があるんでな」
 そう言って、ゲイルは軽快な音を立てながら扇を広げた。
「お前を救うとは言わねえ。好きにしろ。悔いの無いようやるがいい。ここで終わりにしてやるからな!」
 駆もまた、武器を構える。
 そして、覚者達の最後の攻撃が始まった。
 雷鳥の突撃槍が、大雷獣擬の腹部を突き刺した。装甲のような体毛はもはや何の役目も果たさない。
 禊の2連撃が、大雷獣擬の牙をへし折った。間髪入れず、いのりとミュエル、そしてゲイルの術式が突き刺さる。
「ナウマクサンマンダ・バサラダン・カン!」
 駆は気合の声と共に、激しい一撃を繰り出した。大雷獣擬の身体から、おびただしい量の血が噴き出す。
 ぎぃ、と断末魔の声を上げ、大雷獣擬は地に倒れ伏した。

●そして、次の戦いへ
 大雷獣擬の討伐を確認した一行は、麓への合流を急いだ。
 しかし道中、送受信により麓に展開していた妖が一掃された事が連絡され、幾分、一行の行進速度は落ちた。
 本隊が到着した時には、既に補給部隊と護衛の覚者達は一息ついている所だった。
「お疲れ様。連絡した通り、こっちは無傷だよ」
「うん……そっちも、おつかれ、さま……」
 紡とミュエルはお互いを見つけると、ハイタッチをしてお互いの労をねぎらった。
「うん、皆無事みたいだね……よかったぁ」
 あたりを見渡しながら、禊が言った。
 奇跡的に……ではない。これは覚者達が勝ち取った結果と言えるだろう。
 流石に砲撃が着弾した際の物資の損害は仕方ないとはいえ、それも大雷獣擬への行動阻害が功を奏し限りなく小さいし、人的損害は0。大勝利と言っても過言ではない。
「無事に終わったみたいでよかったねぇ……とは言え、これから本番が待ってるんだけどね」
 雷鳥の言うとおりだ。これから牙王本隊を討伐する作戦が始まる。
 その言葉に、覚者達、補給部隊員たちは作戦成功で緩んでいた気分を引き締め直した。
 いのりは補給部隊指揮官のはじめを見つけると、
「戦闘で大切なのは補給と聞きますわ。大変ですが宜しくお願いしますね」
 そうして、頭を下げた。
 AAAの補給部隊たちも、また今後の戦況に影響する重要な戦力だ。
 そうして、残る者たちの無事を確認し、この場を立ち去ろうとする覚者達へ、
「各員、勇敢なる英雄たちに! 敬礼!」
 はじめの号令一下、AAAの隊員達が一斉に敬礼を行った。
「ありがとうございました! この御恩、決して忘れません!」
「幸運を!」「頑張れよ!」「一生忘れないぜ!」
 AAA隊員達が、口々にお礼の、激励の言葉を投げかける。
「ま、わるく無いな。こういうのも」
 頬をかきつつ、ゲイルが言った。
 かくして、救った者たちからの感謝の言葉と礼を背中に受けつつ、覚者達は次なる戦場へと
「ところで補給って何運んでるの? スシ? 余は軍艦巻き派」
「スシはない。ちなみにボクは玉子が好き」
 ……ちょっとした寿司トークをはさみつつ、次なる戦場へと向かうのだった。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
『雷よりも迅く』
取得者:秋津洲 いのり(CL2000268)
『雷よりも迅く』
取得者:明石 ミュエル(CL2000172)
『雷よりも迅く』
取得者:風祭・雷鳥(CL2000909)
『雷よりも迅く』
取得者:鐡之蔵 禊(CL2000029)
『雷よりも迅く』
取得者:渡慶次・駆(CL2000350)
『雷よりも迅く』
取得者:プリンス・オブ・グレイブル(CL2000942)
『雷よりも迅く』
取得者:麻弓 紡(CL2000623)
『雷よりも迅く』
取得者:ゲイル・レオンハート(CL2000415)
特殊成果
なし




 
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