一晩旅館で無意味にだらける春2016
●
「あー、ごがつびょうだわー。ぜーんぜんはたらきたくないわー」
ユアワ・ナビ子(nCL2000122)は畳で大の字になっていた。
「……だろ?」
「あー、ごがつびょうだわー。ぜーんぜんはたらきたくないわー」
ユアワ・ナビ子(nCL2000122)は畳で大の字になっていた。
「……だろ?」

■シナリオ詳細
■成功条件
1.だらける
2.だらける
3.だら……察して
2.だらける
3.だら……察して
すべてのやる気を捨て、正論を脇に置き、怠惰のかぎりをつくしましょう。
ハイル怠惰! レッツ心の日曜日!
世間がどれだけ荒れていようとここでのあなたはお休みなのです。なのですったらなのです。
●プレイングとロケーション
どっかの旅館を貸し切って一晩だらけます。
夜ご飯は和食。温泉つき。寝室は男女分かれて大部屋式(希望者には個室あり)。朝食はバイキング形式です。
その間ひたすら自由ですが、恋人とのデートしようともくろむ人には容赦なく乱入することにします。窓割りクロスアームで乱入することにします。
あと男の娘や男装女子はプレイングに希望を書かないと容赦なく『見た目』で判断することがあります。3号ちゃんみたく女風呂に投入されるがよい。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
相談日数
10日
10日
参加費
50LP
50LP
参加人数
22/∞
22/∞
公開日
2016年06月04日
2016年06月04日
■メイン参加者 22人■

●座敷定点カメラ1
梛が畳みに寝転がっていた。
小唄も寝転がっていた。
逝も寝転がっていた。
全員微動だにせず、15秒が経過した。
●女湯のシーンで霧を濃くするやつ絶対殺すマン
旅館に泊まる話になったら絶対入れなきゃ怒られるシーン。それが女湯である。露天風呂だと尚いい。
「わあ、広いお風呂ですね……」
祇澄はたわわな胸をタオルで隠しつつ、つま先からゆっくりと湯につかった。
胸元の辺りまで湯につかり、石に背をも垂れかける。
「何も考えずにリラックスできるって、幸せですよね」
「うむ、あとは美味しい食事が楽しめればいいのぅ」
隣でくつろいでいた樹香が、頭に乗せたタオルをなおした。
「こういう場所じゃ。普段話さないようなことを話すのもいいじゃろ」
「というと……女子トークですねっ」
前髪の間から目をキリッと光らせる祇澄。
「私、男性なら真面目で強い人が好みです」
「いきなりグイグイ来たの」
「あと神主になれる人です」
「いきなりぐいっと狭まったのぅ!」
とかやっていると、後から結鹿と御菓子が入ってきた。
映像は胸元まで浸かってのんびりする祇澄と樹香のまま、サウンドオンリーでお楽しみ頂きたい。
「な、なんですか……?」
「どうしてそんな風に恥ずかしがるのかな?」
「だ、だって……」
「その恥じらい方……ねぇ? わざと? わざとやってるの?」
「お、お姉ちゃん……顔が怖いです」
「やあねぇ、そんな事ないよ。怖くなんかないですよ、ふふ♪」
「いやー!」
「つーかまーえたっ♪」
「な、なんで泡なんて……まさか!」
「ふふ、もちろん結鹿ちゃんのみずみずしい肢体をあますところなく隅から隅まで洗わせていただきます!」
「きょ、拒否します! 断固拒否です!!」
「うん、却下♪」
「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」
なんでサウンドオンリーにしたのかってあーた。
「キッチリこう書いてあったからだよ。9割がた手をつけずに描写するほかなかったからだよ」
「ナビ子さん、なんの話を?」
「ちなみにアニメにしたらずっと空だけ映ってそうなシーンだったよ」
「だからなんの話を?」
男湯と女湯ののれんがかかったその中央で、コーヒー牛乳片手に並ぶナビ子と燐花であった。
イッポーソノコロ。
絢音はカレシと一緒に貸し切り風呂にやってきた。
『浴衣、似合ってるね。綺麗だよ』とかカレシが言う。
裾をつまむカレシの手を払いつつ、顔を赤らめる絢音。
恥じらいながらも浴衣を脱ぎ捨てる絢音。
お互いの素肌を晒し合っていながらも目を合わせられない絢音。
お風呂からあがってマジックハンドカワイイキャッチをしたりカラオケしたり卓球したりでカレシが肩を抱いて『部屋に行こうよ』と言うもんだから絢音は『せっかく綺麗にしたのに汚れちゃう』とか言うけど断わりはしなくて薄暗い部屋でこう、こう……!
「……夢か」
絢音は個室の布団で目を覚ました。
隣の部屋から結鹿らしき娘のすすり泣く声が聞こえた。
あとカレシなんていなかった。
「でも企画モノのAVみたいだったよね」
その代わりナビ子がいた。
「頭の中を覗きました?」
「いやまったく」
「なぜ個室に?」
「清掃員の、バ・イ・ト☆」
指を二本立ててペロっとするナビ子を、絢音は力業で追い出した。
●座敷定点カメラ2
梛が畳みに寝転がっていた。
小唄も寝転がっていた。
逝がむっくりと起きて左右を見た後、また寝た。
●温泉卓球って長く続けたら両方勝ちっていうルールらしいですよ
「ふー、いい風呂でしたねー四月一日さん」
「露天風呂で呑む酒は格別だよねー和泉くん」
鷲哉と四月二日が首から手ぬぐい提げて卓球台までやってきた。
入浴シーン? 見たいかい?
「卓球台あるじゃん、やっちゃう?」
「珍しいですねえ、やっちゃいますか」
ラケットを手に取る二人。その横を燐花を抱えた両慈とイエスノー枕を抱えたリーネが駆け抜けていったが、無視した。
「なにか賭ける? 一ポイントにつき恋バナ一個」
「じゃあ僕は一ポイントごとに行きつけの店に連れて行ってもらおうかな」
「おごる流れとセットじゃんそれ」
女風呂の方から幼女の悲鳴が聞こえ、よいではないかする女教師の声も聞こえた。が、二人は無視した。
「いいじゃないですか。青春の甘酸っぱさに比べれば」
「しょーがないなー。じゃあいくよ。せーのっ」
ピンポン球を天高く放る四月二日。
どこからともなく飛んできた枕が四月二日の横顔にヒットした。
これは無視できねえ二人であった。
●座敷定点カメラ3
梛が畳みに寝転がっていた。
小唄も寝転がっていたが、傍らの看板に『もふり自由』とか書いてあった。
逝も寝転がっていた。
●忍法ラッキースケベの術
「くっ、なぜこんなことに……」
両慈ははだけた浴衣もそのままに、薄暗い部屋で呼吸を整えていた。
思い返すは数分前。
リーネが『提督のハートを掴むのは私デース』みたいな……間違えた。『個室をとったので一緒に寝まショー!』とかいって両面イエスの枕を振りかざして追いかけてきたのだ。
仕方なく逃げ込んだのは燐花の個室。
燐花はうとうとしながら言った。
「いえ、お気になさらず。私の部屋でよければ……うーん……」
座ったまま船を漕ぐように頭をゆする燐花。
「なんだ、眠いのか。ここはお前の部屋だ。ゆっくり休むといい」
「お気遣い……なく……」
などと言いながら燐花はぽてんと寝転んだ。両慈は膝を枕にして頭を撫でてやる。数秒してから燐花を抱え上げた。
「このままでは風邪を引く。布団に寝かせよう」
その瞬間、部屋の襖がガラリと……!
「リョージーッ!」
リーネが扉を開くと、御羽が三つ指突いて布団に座っていた。
「おかえりなさい、あなた! ……あれ?」
「……ンー?」
そろって首を傾げ、リーネは『お邪魔しマシタ』と言って襖を閉めた。
「両慈、いったいどこに……ハッ!」
その時リーネの脳裏に啓示が下りた。
四つん這いになった女が首を無限回転させながら『女にサワンジャネー! リョージィー!』とか奇声をあげていた。バケモンだ。
が、そのおかげで両慈の部屋が分かった。
「そこですね、両慈ィー!」
空気を読まずに清掃に来ていたナビ子ごとドアを蹴り飛ばし、リーネは燐花の部屋に突入。
するとそこにはくたっとした燐花を抱える半裸の両慈が!
「「ソノ女ダレデスカァ!?」」
後ろのバケモンと声がダブった。
さあ追いかけっこの始まりだ!
●枕投げで調子乗って蹴ってくる奴を絶対に許さない
「なんや外が五月蠅い……」
時雨は目をこすりながら身体を起こした。
『リョージー! 私と寝てくだサーイ!』とかいう奇声と共にけたたましい足音が響いている。外では幼女が丹下桜みたいな声で悲鳴をあげてるし。
「ねーねーあそぼ! かまってかまって!」
個室を予約した筈なのにナチュラルにことこがいるし。
「や、もううち眠いから」
「夜は長いよ!?」
「やから寝るんよ?」
「あそぼうよー! とらんぷ? うの? かけばから!? もーもー寝ないでよー! そうだ顔に『ぐれさん』って書いちゃお!」
「やめーや!」
時雨は飛び起きて枕を投擲。
それを顔でうけたことこは。
「枕投げだね! よっしゃー!」
布団をくるくるまとめて野球バットみたく構えると大きく振りかぶった。
「それ枕やない! 布団や!」
「りゅうせいほーむらーん!」
振り込む布団。
『ちょりーっす』とか言いながら入ってくるナビ子。
「「あっ」」
次の瞬間、ナビ子は最後のガラスを突き破って六月の空を舞った。
●座敷定点カメラ4
梛がごろんと寝返りをうった。
小唄はすやすや寝ていた。
逝も寝転がっていた。
●旅館でカップルがいちゃつくのは理にかなっている。カップルじゃなくても。
「おかえりなさい、あなた!」
入って早々、御羽が布団の横で三つ指ついて座っていた。
ぴしゃりと扉を閉める刀嗣。
ギリギリの所に手を挟んで止める御羽。
「なんですか! 御羽がセットでついてくるお部屋は不評ですか!」
「どん引きだよ。なにやってんだテメェ」
「お疲れのようですからお世話します。お……おとなしくしますから」
目をじっと見られた刀嗣は頬をかいて、御羽を押しのける形で部屋にはいった。
「じゃあメシ」
「今から何か食べたらご飯入らなくなりますよ」
「育ち盛りなんだよ」
「じゃあ、おんせんまんじゅうなどを」
備え付けられてた饅頭をそっと出してくる御羽。
窓の外をナビ子が落ちていった気がしたが、刀嗣は無視した。
『半分やる』のジェスチャーをしてやると、御羽は一口でいった。
「もがもごごごご」
「飲み込め。飲み込んでから喋れ」
「トージはまえに、雪女さんにとられそうになったのです」
「……は?」
「寂しかったのです」
「……はあ」
それ以上何か言うのかと思ったが、御羽は黙っていた。
代わりに目で『迷惑ですか?』と言ってきたので、刀嗣も目で『迷惑だ』と言ってやった。
沈黙が流れる。
部屋の外をリーネたちが駆け抜け、慌て顔の時雨たちが駆け抜け、ラケット持った四月二日たちが駆け抜けていく。
が、無視した。
ほおづえをついてそっぽを剥く刀嗣。
「まあ、今回だけはいてもいい」
●座敷定点カメラ5
梛が寝転んでいた。
小唄も寝転んでいた。
逝も寝転がっていた。
窓ガラスを突き破ってプリンスが突入してきた。
三人とも無視していた。
とぼとぼとプリンスが帰っていった。
●連帯保証人になってくれと携帯メールで言われたことある? 親から。
ゆかりは体育座りをしていた。
「最近いとこのお兄ちゃんが変なんです。昔はゆかりが『イエス』って言えば一緒に『フォーリンラブ』してくれたのに、五麟市で再会してからは人が変わったように笑わなくなって……」
その横で頭からだくだく血を流したナビ子がピ○クル飲んでいた。
「私お兄ちゃんの笑顔を取り戻したいんです! ナビ子さんお願いです! 連帯保証人になってください!」
「いいよ」
「なーんて新ギャグなんですけど私スベッちゃええええええええええええええ!?」
ゆかりは綺麗に三度見した。
●富山県ってそこらじゅうから温泉が沸くので天然温泉がごろごろある
「足湯っていいですね。ちゃぷちゃぷできて、身体じゅうがぽかぽかするような……」
「足を温めると全身が温まるのよ」
「温泉卵はどうですか? セルフサービスでしたよね」
たまきと紡、そして千陽は足湯につかって夕暮れの空を眺めていた。
「なんだか、足下から疲れが抜けていくようです」
「それに静かですし……」
「こうしてると、賑やかになる前のお店を思い出すわね」
「ですね……」
たまきは足をちゃぷちゃぷしながら道中のことを思った。
旅館から足湯場までの道には温泉旅館ならではの売り物屋台がちらほらあって、そこだけ時間が止まったようなノスタルジーを醸していた。
「ところで、道中にあった『ひやしあめ』ってなんでしょう」
「言われてみると分かりませんね。飴の一種だとは思うのですが」
難しい顔をする千陽。紡はその様子にくすくすと笑った。
「温泉饅頭、あるわよ。つかりながら食べましょ」
「はい!」
小さな饅頭が箱に入ったものを広げる紡。
たまきと千陽はそれを一個ずつとって頬張った。
暖かさと甘さ。そしてなんでもない時間。
幸せとはこういうこ――。
「リュウセイジェミニー!」
プリンスがガラスをクロスアームでぶち破って突入してきた。
突入って言うか普通に野外なので、わざわざガラスを設置してから破るという二度手間である。この後片付けるので三度手間だ。
「オッス、余王子! 恋人たちのガラスハートを打ち破る王家だよ」
「傷付けてどうするのよ」
「ねえ鳩は? あれが飛び立つ中を横っ飛びしながら二丁拳銃する予定なんだけど」
「温泉旅館に必要ないものは持ってこないで」
むげにされたプリンスはほっぺ膨らませて体育座りした。
足湯の中で。
「ねえこれお尻しか温まらないよ。ニポンのオフロ狭くない?」
「……」
紡は両手で顔を覆った。
夜。
フルーツ牛乳ちびちびやるゆかりやゼヒーゼヒーいってる両慈。枕でお手玉することこやポンポン玉をラケットの上にのせてバランスとるやつやってる四月二日たち。そして頭からまだ血ぃだらだら流したナビ子が夜空を見上げていた。
連帯保証人の証書を封筒に詰めながらふりかえるゆかり。
「あれ、そういえばバイトどうしたんですか?」
「やめた」
梛が畳みに寝転がっていた。
小唄も寝転がっていた。
逝も寝転がっていた。
全員微動だにせず、15秒が経過した。
●女湯のシーンで霧を濃くするやつ絶対殺すマン
旅館に泊まる話になったら絶対入れなきゃ怒られるシーン。それが女湯である。露天風呂だと尚いい。
「わあ、広いお風呂ですね……」
祇澄はたわわな胸をタオルで隠しつつ、つま先からゆっくりと湯につかった。
胸元の辺りまで湯につかり、石に背をも垂れかける。
「何も考えずにリラックスできるって、幸せですよね」
「うむ、あとは美味しい食事が楽しめればいいのぅ」
隣でくつろいでいた樹香が、頭に乗せたタオルをなおした。
「こういう場所じゃ。普段話さないようなことを話すのもいいじゃろ」
「というと……女子トークですねっ」
前髪の間から目をキリッと光らせる祇澄。
「私、男性なら真面目で強い人が好みです」
「いきなりグイグイ来たの」
「あと神主になれる人です」
「いきなりぐいっと狭まったのぅ!」
とかやっていると、後から結鹿と御菓子が入ってきた。
映像は胸元まで浸かってのんびりする祇澄と樹香のまま、サウンドオンリーでお楽しみ頂きたい。
「な、なんですか……?」
「どうしてそんな風に恥ずかしがるのかな?」
「だ、だって……」
「その恥じらい方……ねぇ? わざと? わざとやってるの?」
「お、お姉ちゃん……顔が怖いです」
「やあねぇ、そんな事ないよ。怖くなんかないですよ、ふふ♪」
「いやー!」
「つーかまーえたっ♪」
「な、なんで泡なんて……まさか!」
「ふふ、もちろん結鹿ちゃんのみずみずしい肢体をあますところなく隅から隅まで洗わせていただきます!」
「きょ、拒否します! 断固拒否です!!」
「うん、却下♪」
「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」
なんでサウンドオンリーにしたのかってあーた。
「キッチリこう書いてあったからだよ。9割がた手をつけずに描写するほかなかったからだよ」
「ナビ子さん、なんの話を?」
「ちなみにアニメにしたらずっと空だけ映ってそうなシーンだったよ」
「だからなんの話を?」
男湯と女湯ののれんがかかったその中央で、コーヒー牛乳片手に並ぶナビ子と燐花であった。
イッポーソノコロ。
絢音はカレシと一緒に貸し切り風呂にやってきた。
『浴衣、似合ってるね。綺麗だよ』とかカレシが言う。
裾をつまむカレシの手を払いつつ、顔を赤らめる絢音。
恥じらいながらも浴衣を脱ぎ捨てる絢音。
お互いの素肌を晒し合っていながらも目を合わせられない絢音。
お風呂からあがってマジックハンドカワイイキャッチをしたりカラオケしたり卓球したりでカレシが肩を抱いて『部屋に行こうよ』と言うもんだから絢音は『せっかく綺麗にしたのに汚れちゃう』とか言うけど断わりはしなくて薄暗い部屋でこう、こう……!
「……夢か」
絢音は個室の布団で目を覚ました。
隣の部屋から結鹿らしき娘のすすり泣く声が聞こえた。
あとカレシなんていなかった。
「でも企画モノのAVみたいだったよね」
その代わりナビ子がいた。
「頭の中を覗きました?」
「いやまったく」
「なぜ個室に?」
「清掃員の、バ・イ・ト☆」
指を二本立ててペロっとするナビ子を、絢音は力業で追い出した。
●座敷定点カメラ2
梛が畳みに寝転がっていた。
小唄も寝転がっていた。
逝がむっくりと起きて左右を見た後、また寝た。
●温泉卓球って長く続けたら両方勝ちっていうルールらしいですよ
「ふー、いい風呂でしたねー四月一日さん」
「露天風呂で呑む酒は格別だよねー和泉くん」
鷲哉と四月二日が首から手ぬぐい提げて卓球台までやってきた。
入浴シーン? 見たいかい?
「卓球台あるじゃん、やっちゃう?」
「珍しいですねえ、やっちゃいますか」
ラケットを手に取る二人。その横を燐花を抱えた両慈とイエスノー枕を抱えたリーネが駆け抜けていったが、無視した。
「なにか賭ける? 一ポイントにつき恋バナ一個」
「じゃあ僕は一ポイントごとに行きつけの店に連れて行ってもらおうかな」
「おごる流れとセットじゃんそれ」
女風呂の方から幼女の悲鳴が聞こえ、よいではないかする女教師の声も聞こえた。が、二人は無視した。
「いいじゃないですか。青春の甘酸っぱさに比べれば」
「しょーがないなー。じゃあいくよ。せーのっ」
ピンポン球を天高く放る四月二日。
どこからともなく飛んできた枕が四月二日の横顔にヒットした。
これは無視できねえ二人であった。
●座敷定点カメラ3
梛が畳みに寝転がっていた。
小唄も寝転がっていたが、傍らの看板に『もふり自由』とか書いてあった。
逝も寝転がっていた。
●忍法ラッキースケベの術
「くっ、なぜこんなことに……」
両慈ははだけた浴衣もそのままに、薄暗い部屋で呼吸を整えていた。
思い返すは数分前。
リーネが『提督のハートを掴むのは私デース』みたいな……間違えた。『個室をとったので一緒に寝まショー!』とかいって両面イエスの枕を振りかざして追いかけてきたのだ。
仕方なく逃げ込んだのは燐花の個室。
燐花はうとうとしながら言った。
「いえ、お気になさらず。私の部屋でよければ……うーん……」
座ったまま船を漕ぐように頭をゆする燐花。
「なんだ、眠いのか。ここはお前の部屋だ。ゆっくり休むといい」
「お気遣い……なく……」
などと言いながら燐花はぽてんと寝転んだ。両慈は膝を枕にして頭を撫でてやる。数秒してから燐花を抱え上げた。
「このままでは風邪を引く。布団に寝かせよう」
その瞬間、部屋の襖がガラリと……!
「リョージーッ!」
リーネが扉を開くと、御羽が三つ指突いて布団に座っていた。
「おかえりなさい、あなた! ……あれ?」
「……ンー?」
そろって首を傾げ、リーネは『お邪魔しマシタ』と言って襖を閉めた。
「両慈、いったいどこに……ハッ!」
その時リーネの脳裏に啓示が下りた。
四つん這いになった女が首を無限回転させながら『女にサワンジャネー! リョージィー!』とか奇声をあげていた。バケモンだ。
が、そのおかげで両慈の部屋が分かった。
「そこですね、両慈ィー!」
空気を読まずに清掃に来ていたナビ子ごとドアを蹴り飛ばし、リーネは燐花の部屋に突入。
するとそこにはくたっとした燐花を抱える半裸の両慈が!
「「ソノ女ダレデスカァ!?」」
後ろのバケモンと声がダブった。
さあ追いかけっこの始まりだ!
●枕投げで調子乗って蹴ってくる奴を絶対に許さない
「なんや外が五月蠅い……」
時雨は目をこすりながら身体を起こした。
『リョージー! 私と寝てくだサーイ!』とかいう奇声と共にけたたましい足音が響いている。外では幼女が丹下桜みたいな声で悲鳴をあげてるし。
「ねーねーあそぼ! かまってかまって!」
個室を予約した筈なのにナチュラルにことこがいるし。
「や、もううち眠いから」
「夜は長いよ!?」
「やから寝るんよ?」
「あそぼうよー! とらんぷ? うの? かけばから!? もーもー寝ないでよー! そうだ顔に『ぐれさん』って書いちゃお!」
「やめーや!」
時雨は飛び起きて枕を投擲。
それを顔でうけたことこは。
「枕投げだね! よっしゃー!」
布団をくるくるまとめて野球バットみたく構えると大きく振りかぶった。
「それ枕やない! 布団や!」
「りゅうせいほーむらーん!」
振り込む布団。
『ちょりーっす』とか言いながら入ってくるナビ子。
「「あっ」」
次の瞬間、ナビ子は最後のガラスを突き破って六月の空を舞った。
●座敷定点カメラ4
梛がごろんと寝返りをうった。
小唄はすやすや寝ていた。
逝も寝転がっていた。
●旅館でカップルがいちゃつくのは理にかなっている。カップルじゃなくても。
「おかえりなさい、あなた!」
入って早々、御羽が布団の横で三つ指ついて座っていた。
ぴしゃりと扉を閉める刀嗣。
ギリギリの所に手を挟んで止める御羽。
「なんですか! 御羽がセットでついてくるお部屋は不評ですか!」
「どん引きだよ。なにやってんだテメェ」
「お疲れのようですからお世話します。お……おとなしくしますから」
目をじっと見られた刀嗣は頬をかいて、御羽を押しのける形で部屋にはいった。
「じゃあメシ」
「今から何か食べたらご飯入らなくなりますよ」
「育ち盛りなんだよ」
「じゃあ、おんせんまんじゅうなどを」
備え付けられてた饅頭をそっと出してくる御羽。
窓の外をナビ子が落ちていった気がしたが、刀嗣は無視した。
『半分やる』のジェスチャーをしてやると、御羽は一口でいった。
「もがもごごごご」
「飲み込め。飲み込んでから喋れ」
「トージはまえに、雪女さんにとられそうになったのです」
「……は?」
「寂しかったのです」
「……はあ」
それ以上何か言うのかと思ったが、御羽は黙っていた。
代わりに目で『迷惑ですか?』と言ってきたので、刀嗣も目で『迷惑だ』と言ってやった。
沈黙が流れる。
部屋の外をリーネたちが駆け抜け、慌て顔の時雨たちが駆け抜け、ラケット持った四月二日たちが駆け抜けていく。
が、無視した。
ほおづえをついてそっぽを剥く刀嗣。
「まあ、今回だけはいてもいい」
●座敷定点カメラ5
梛が寝転んでいた。
小唄も寝転んでいた。
逝も寝転がっていた。
窓ガラスを突き破ってプリンスが突入してきた。
三人とも無視していた。
とぼとぼとプリンスが帰っていった。
●連帯保証人になってくれと携帯メールで言われたことある? 親から。
ゆかりは体育座りをしていた。
「最近いとこのお兄ちゃんが変なんです。昔はゆかりが『イエス』って言えば一緒に『フォーリンラブ』してくれたのに、五麟市で再会してからは人が変わったように笑わなくなって……」
その横で頭からだくだく血を流したナビ子がピ○クル飲んでいた。
「私お兄ちゃんの笑顔を取り戻したいんです! ナビ子さんお願いです! 連帯保証人になってください!」
「いいよ」
「なーんて新ギャグなんですけど私スベッちゃええええええええええええええ!?」
ゆかりは綺麗に三度見した。
●富山県ってそこらじゅうから温泉が沸くので天然温泉がごろごろある
「足湯っていいですね。ちゃぷちゃぷできて、身体じゅうがぽかぽかするような……」
「足を温めると全身が温まるのよ」
「温泉卵はどうですか? セルフサービスでしたよね」
たまきと紡、そして千陽は足湯につかって夕暮れの空を眺めていた。
「なんだか、足下から疲れが抜けていくようです」
「それに静かですし……」
「こうしてると、賑やかになる前のお店を思い出すわね」
「ですね……」
たまきは足をちゃぷちゃぷしながら道中のことを思った。
旅館から足湯場までの道には温泉旅館ならではの売り物屋台がちらほらあって、そこだけ時間が止まったようなノスタルジーを醸していた。
「ところで、道中にあった『ひやしあめ』ってなんでしょう」
「言われてみると分かりませんね。飴の一種だとは思うのですが」
難しい顔をする千陽。紡はその様子にくすくすと笑った。
「温泉饅頭、あるわよ。つかりながら食べましょ」
「はい!」
小さな饅頭が箱に入ったものを広げる紡。
たまきと千陽はそれを一個ずつとって頬張った。
暖かさと甘さ。そしてなんでもない時間。
幸せとはこういうこ――。
「リュウセイジェミニー!」
プリンスがガラスをクロスアームでぶち破って突入してきた。
突入って言うか普通に野外なので、わざわざガラスを設置してから破るという二度手間である。この後片付けるので三度手間だ。
「オッス、余王子! 恋人たちのガラスハートを打ち破る王家だよ」
「傷付けてどうするのよ」
「ねえ鳩は? あれが飛び立つ中を横っ飛びしながら二丁拳銃する予定なんだけど」
「温泉旅館に必要ないものは持ってこないで」
むげにされたプリンスはほっぺ膨らませて体育座りした。
足湯の中で。
「ねえこれお尻しか温まらないよ。ニポンのオフロ狭くない?」
「……」
紡は両手で顔を覆った。
夜。
フルーツ牛乳ちびちびやるゆかりやゼヒーゼヒーいってる両慈。枕でお手玉することこやポンポン玉をラケットの上にのせてバランスとるやつやってる四月二日たち。そして頭からまだ血ぃだらだら流したナビ子が夜空を見上げていた。
連帯保証人の証書を封筒に詰めながらふりかえるゆかり。
「あれ、そういえばバイトどうしたんですか?」
「やめた」
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
