【魁英雄譚】最終回、ファイヴカクセイジャー大勝利!
●
村の住民たちを無事助け出したF.i.V.E覚者とカクセイジャーたち。
彼らは山に籠もる怨念を少しでも減らそうと慰霊碑を建て、祈りを捧げていた。
だがそこへ!
「おれのカクセイジャー、おのれファイヴ! このままでは終わらせんぞ!」
慰霊碑を破壊し、残酷大将軍が現われたのだ。
その姿は幻影としで見せていたものに違いないが、身の丈が二十メートルはあろうかという巨大な古妖だ。
だがその姿でさえ満足できないのか、残酷大将軍は怒りに足を踏みならした。
「村中に我への憎しみが集まり、いずれ山すら動かす巨体へ変わるつもりが……おのれ、おのれ、ことごとく邪魔しおって! こうなれば、今持てる全ての力を使って貴様らを葬り去ってくれるわ!」
村人たちが急いで避難を始めるなか、F.i.V.E覚者とカクセイジャーは既に戦う準備を終えていた。
そう、分かっていたのだ。
これが最終決戦となることを。
村の住民たちを無事助け出したF.i.V.E覚者とカクセイジャーたち。
彼らは山に籠もる怨念を少しでも減らそうと慰霊碑を建て、祈りを捧げていた。
だがそこへ!
「おれのカクセイジャー、おのれファイヴ! このままでは終わらせんぞ!」
慰霊碑を破壊し、残酷大将軍が現われたのだ。
その姿は幻影としで見せていたものに違いないが、身の丈が二十メートルはあろうかという巨大な古妖だ。
だがその姿でさえ満足できないのか、残酷大将軍は怒りに足を踏みならした。
「村中に我への憎しみが集まり、いずれ山すら動かす巨体へ変わるつもりが……おのれ、おのれ、ことごとく邪魔しおって! こうなれば、今持てる全ての力を使って貴様らを葬り去ってくれるわ!」
村人たちが急いで避難を始めるなか、F.i.V.E覚者とカクセイジャーは既に戦う準備を終えていた。
そう、分かっていたのだ。
これが最終決戦となることを。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.残酷大将軍を倒す
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
彼は残酷四天王の力を全て集めたような存在で、本来なら倒せないほどの強敵でしたが、四天王を全て倒し慰霊碑をたて、尚且つ病院での悲劇を回避した結果大きく弱体化しています。
倒すなら今しか無いでしょう。
・残酷大将軍
岩と毛皮で完全に覆われた武者鎧を着込んだ巨大なガイコツめいた古妖です。巨大な刀や怨念の人魂を駆使して戦います。
特殊攻撃と物理攻撃それぞれに耐性をもっているため、とにかくダメージを重ね続けなくてはなりません。
彼の斬撃は『遠距離列貫通』の範囲を持ち、【呪い】のバッドステータスを付与します。
他にも格闘などの攻撃によって『遠距離列』『単体』などの通常物理攻撃をこなします。
怨念の人魂は2ターンに一度の割合で出現し、これ単体がターン終了後に自爆特攻(遠距離単体・固定小ダメージ)を行ないます。出現したターンにどれだけ倒しきれるかでダメージを回避できるでしょう。
・その他のプレイングについて
避難誘導などは既に行なわれています。
カクセイジャーはみな信頼フラグが成立しているので、その場で有効な行動を自律的にとってくれます。よってプレイングで指定する必要はありません。
特に『レッド』『グリーン』『ブルー』の三人は特別な絆フラグがたっているのでより効果的に動いてくれます。
カクセイジャーと力を合わせ、残酷大将軍を倒しましょう。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
7日
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
8/8
公開日
2016年03月02日
2016年03月02日
■メイン参加者 8人■

●
「村中に我への憎しみが集まり、いずれ山すら動かす巨体へ変わるつもりが……おのれ、おのれ、ことごとく邪魔しおって! こうなれば、今持てる全ての力を使って貴様らを葬り去ってくれるわ!」
ついに姿を現わした残酷大将軍を、F.i.V.E覚者とカクセイジャーたちは一様に見上げていた。
不敵に笑う『百合の追憶』三島 柾(CL2001148)。
「いよいよか。ここまで色々あったが、全部守ってきた。そうだよな?」
「その通りなんだな。もう昔のオイラたちじゃない」
「弱い人たちのために立ち向かう勇気と優しさを教えて貰ったからね」
頷くイエローとブラウン。
『デジタル陰陽師』成瀬 翔(CL2000063)が照れくさそうに笑った。
「へへ。しっかしデケえなあいつ。どうやって勝手やろうかね」
「皆さんと力をあわせて頑張ります! それだけです!」
ロールした護符軸をを両手に握って構える賀茂 たまき(CL2000994)。
『エピファニアの魔女』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)も魔方陣を縫い込んだ手袋をしっかりと着用した。
「終わったら、ちゃんと供養してあげますよ」
「弱ってもここまで巨大化できるほどの恨みだもんね。こうなったら、とことんまで相手してあげるの」
『かわいいは無敵』小石・ころん(CL2000993)も最初から覚醒状態になり、ブルーへと振り返った。
「俺もだ。指示はあるか?」
「おまかせするの。だってあなたたちは……ヒーローだもの」
「っ、恥ずかしいことを言うな」
面と向かって言われたブルーは、言葉に詰まって顔を背けた。肩を叩くグリーン。
「今更だよブルー。君も今まで随分恥ずかしいことを言ってたよ」
「せやな。積極的に動いてくれて助かるわ」
からから笑う『柔剛自在』榊原 時雨(CL2000418)。
その後ろで緒形 逝(CL2000156)が適当な柔軟体操を終えて刀を発現させた。
「さて、そろそろいこうかね」
「「おう!!」」
剣を抜く『想い受け継ぎ‘最強’を目指す者』天楼院・聖華(CL2000348)とレッド。
「正義のヒーローチーム、華麗に参上だぜ!」
「小癪な! ちっぽけなお前たちに何ができるか!」
残酷大将軍が激しい炎をはき出すと、炎は無数の青白い人魂となって展開した。
「あれじゃあ残酷大将軍に近づけない!」
「オレに任せとけ!」
翔はスマホのアプリにスワイプで暗号文字を描くと、それを天空に翳した。
「新必殺!」
光がプラネタリウムよろしく天空へと投射され、それらひとつひとつが人魂や残酷大将軍へと降り注ぐ。
突然の全体攻撃にひるむ残酷大将軍。
「なんだと!?」
「僕も手伝うよ!」
グリーンが機関銃を右から左に掃射。
次々に爆散していく人魂。
そこへ、逝が単独で飛び込んだ。
「フフ、底無しの大喰らいにどれ程喰わせてやれるかしら」
逝が刀を無造作に振り回すと、人魂が次々に切り裂かれて消えていく。
自らの初手を即座に破壊された残酷大将軍は怒りを露わに刀を振り上げる。
「人魂を喰った程度で調子に乗る出ないわ! 砕け散れぃ!」
逝めがけて振り下ろされる巨大な刀。
逝は攻撃を察して素早くその場から離脱した。
刀は地面に直撃。大地をめくり上げるかのごとき衝撃が周囲へと走った。
「ぐわっ!?」
グリーンやレッドが吹き飛ばされる。
ガード姿勢をとった柾も地面から足が離れてしまったが、その腕背中をイエローがどっしりと掴んで止めた。
「盾はまかせるんだな!」
「よし――」
柾は体勢を立て直し、振り下ろされた刀の上に飛び乗った。
身体からバシュンと蒸気が吹き上がり、まるで体内で蒸気機関を燃やしたかのように熱を放ち始めた。
「負ける気がしないな」
「何ぃ!?」
骸骨の奥にあるであろう眼光を大きくする残酷大将軍。
柾は刀を駆け上がり、腕さえも駆け上がると残酷大将軍の右頬めがけて蹴りを繰り出した。
「よそ見してる暇はないぜっ!」
いつの間にか同じように駆け上がっていた聖華が続けざまに斬撃を繰り出す。
身体を軽くのけぞらせる残酷大将軍。
柾と聖華は一瞬だけアイコンタクトをとると、二人同時の蹴りを残酷大将軍の右頬にもう一度叩き込んだ。
「ぐおお!」
追撃をうけて転倒する残酷大将軍。
だたただ無防備に倒れはしない。受け身をとるように腕を伸ばす。
その腕に、たまきが思い切り飛びかかった。
「浄化して見せます。その憎しみ!」
激しく硬化させた護符軸を腕へ叩き付ける。
ささえを喪った残酷大将軍は派手に転倒した。
吹き上がる砂塵。
それに混じって巨大な刀が叩き込まれた。
たまきへの、いや更に向こうだ。ラーラへの直撃コースである。
「ラーラさん――ブルー!」
「分かっている!」
ブルーが水衣を展開。と同時にころんがキャンディケイン状の杖を振り上げた。
混ざり合った二つのオーラが巨大なチョコレートクッキーとなり、ラーラの前に現われた。
物理障壁とカウンターヒールによって刀をうち弾くクッキー。
それがぱっくりと二つに割れ、大量の加熱石炭を宙に浮かべたラーラが姿を現わす。
「良い子に甘い焼き菓子を、悪い子には石炭を。イオ・ブルチャーレ!」
大量の石炭が無防備な残酷大将軍へ浴びせられる。
起き上がったレッドが叫んだ。
「やったか!?」
「やったかとかゆーなや!」
振り返る時雨。
と同時に残酷大将軍が立ち上がった。身体に纏っていた鎧からは毛皮が抜け落ち、鮮やかな血の色をした鎧が露わになっている。
「ほらンなことゆーから起き上がったやんかあ」
「俺のせいか!?」
「まあええ――」
時雨は薙刀をくるくると頭上で回転させると、上段に構えた。
「勉強(修行)させてもらおか!」
踏みつけようとする残酷大将軍の足をジグザグ軌道で回避。
倒れて眼前を塞ごうとする樹幹を薙刀を利用したハイジャンプで超えると、木の枝に飛び乗って薙刀を激しく振り回した。
斬撃がオーラを纏い、巨大化した刃が残酷大将軍を下から上へと切り裂いていく。
「ぐああああ!」
顔を押さえて後じさりする。
ブルーがぐっと身を乗り出した。
「やっ――」
「「……」」
両側からころんとたまきに顔を覗き込まれ、口を自分の手で塞ぐブルー。
代わりにブラウンが身を乗り出した。
「やったか!」
「それ言わないとダメなんですか!?」
『もー』と言ってラーラが腕をぶんぶん振った。
ご多分に漏れず体勢を立て直す残酷大将軍。
だが、彼を包んでいた鎧は目も覚めるような蒼色だった。鮮血を塗りたくったような色は抜けている。
その様子に戸惑いを見せる残酷大将軍。
「なんだこれは。我が憎しみが色あせているというのか!? いや、違う、むしろ……」
「あらあら」
逝は刀で自分の肩をぽんぽんと叩き、疲れたように首を傾けた。
「憎しみで肥大化したのかと思って期待してみれば拍子抜けだなあ。全然違うモンに怒りや憎しみでコーティングしただけじゃあないかね、そりゃあ」
「コーティング? そら、どういうことや」
首を傾げる時雨。柾が『やはりな』と呟いた。
「怒りも憎しみも人間の感情だ。愛があるから人を憎み、喜びがあるから人に怒る。表裏一体のものだが……そのネガティブ面だけを見せようとすれば、ポジティブを全て内側に押し込めるしかない。奴はそうして自らの強大な力を維持していたんだ」
「じゃあ、怒りや憎しみを沢山解消しちまった今は……」
聖華は剣を握り、残酷大将軍を見上げた。
「ち、違う! 嘘だ! 我は残酷大将軍! 全てに怒り全てを憎む者だ! 幸せに生きている者は消えよ! この世から消えてなくなれ!」
「ヘッ、いつまでそう言っていられるかな。少なくとも。オレらは負けねえ!」
再び繰り出した残酷大将軍の人魂を、翔は雷撃によって蹴散らした。今度は一発で半数以上の人魂が消滅する。
その横には、残酷大将軍の呪いによって膝を突いていたイエローがいた。
「大丈夫かイエロー、無理すんなよ」
「無理なんてしてないんだな」
イエローはどこからともなく大盛りのカレーを取り出すと、それを一瞬でたいらげた。
「みんながお腹いっぱいカレーを食べられる。そんな未来を守ってみせるんだな!」
イエローを中心に雷撃が放たれる。翔ほどではないが人魂が蹴散らされていった。
「そろそろ仕上げかね」
残りの人魂に突撃する逝。
右から飛び込んできた人魂を強引に刀で弾き、左から来た人魂をスウェー回転で回避。
回避しながら撫で切りにすると、正面にとらえた数体の人魂をジグザグに駆け抜けつつ切り捨てた。
「もっともっておいで。食い足りないから」
「ぐぬぬ、お、おのれ……これでもくらえ!」
残酷大将軍は刀を両手で掴み、大上段に振り上げた。
「まずい、大技が来る!」
「だからどーした!」
「来るなら来い!」
聖華とレッドが前に出てアシンメトリーに剣を構えた。上段防御の構えだが、巨人相手に通用するものだろうか?
否、通用するのだ。
「くたばれぃ!」
叩き込まれた巨大な刀。それを二人はクロスした剣で受け止めた。
本来なら二人とも叩きつぶされてもおかしくない衝撃だ。それだけではない。彼らを中心に全員が吹き飛ばされるような衝撃なのだ。
だがそうはならなかった。
「さっさと退散しなかったからこうなるの」
「我慢できんかったんやなあ」
まるでケーキショップのような甘くとろんとした香りが周囲を包んでいる。
ころんが放った回復フィールドがカウンターヒールの役割を果たし、衝撃を最低限にまで緩和していたからだ。
「まあアレや。恨みの発散、お手伝いしよか」
時雨がにやりと笑い、飛ぶ斬撃を放った。時雨の斬撃は空を穿ち、残酷大将軍の顔面へと直撃する。
「ぐあ!」
思わず腕の力を緩めたその瞬間、聖華とレッドは顔を見合わせた。
「一緒にやるぜ、レッド!」
「ああ!」
二人はせーので剣を打ち払うと、同時に攻撃を繰り出した。
残酷大将軍の軸足。それも膝を狙って飛びかかり、クロスアタックを叩き込む。
「ぐ、しまった!」
思わず膝を突く残酷大将軍。その表情には明らかな焦りが浮かんでいた。
表情。そう、残酷大将軍の恐ろしいドクロめいた顔には今や表情が生まれていたのだ。
「残酷大将軍さん……」
たまきは直感的に分かっていた。
たとえばいいことが一つも無かった日。
たとえば皆にいじめられた日。
全部が嫌になって、人に八つ当たりしたくなるときが、誰にだってある。
残酷大将軍はその象徴なのだ。
長く虐げられた人々の想いが、怒りや憎しみという形を取って暴れ出したのだ。
「なら、方法は一つです」
慰めることも。
分かってあげることも。
全ては『これ』のあとだ。
「お願いします!」
「「いつでも!」」
ブラウンとグリーンが、長さ二メートルはあろうかという大きな掛け軸を両側から引っ張って広げた。両開きの扉くらいはあろうかというシートに大量の護符が貼り付けられている。四国八十八箇所全ての護符を隙間無く敷き詰めたものだ。
たまきはそれを突き破る勢いでダッシュ。実際に突き破ると、自らを強固なフィールドが覆った。
そのまま残酷大将軍に体当たりをしかける。まるでダンプカーでもぶつかったような衝撃が巨体を襲った。
当然相手はしりもちをつく。
「うおお!」
「残酷大将軍さん。失ったものは取り返せません。誰から奪っても、何を壊しても、埋まることはないのです」
ラーラが樹枝の上で手を掲げた。
その横で柾が高く跳躍。
「良い子になるのです。――イオ・ブルチャーレ!」
空中へ大量に生まれる石炭。激しい炎を纏う。
そんな中で、柾もまた激しい炎を纏った。
「じゃあな、今度出てくるときは石碑壊すなよ」
大量の石と共に残酷大将軍へと突っ込む柾。
それは巨体の腹に大穴をあけ、樹幹を三本ほど破壊してから地面をスライドして止まった。
「ぐ、ぐぐぐ……」
残酷大将軍の前身から鎧がはげ落ち、巨大だった身体もみるみる縮んでいく。
最後に残ったのは半透明なひとりの男だった。
「そ、そう、か……我は……」
しっかりと肉付いた顔に手を当てる。
「わかってほしかった、だけか……」
そして、残酷大将軍は灰となり、さらさらと消えていったのだった。
●
残酷大将軍の残した灰は壺に入れ、新しい石碑の下へと埋めた。
文献も残っていないが、どうやらこの山にはずっと昔に平和な国が作られていたという。
ぽんぽんと叩く翔。
「喪った悲しみと、それを分かって欲しいという怒り……。残酷大将軍って、もしかしたらそれだけのことだったのかもな。新しい命に生まれ変わって、楽しく生きろよ」
「ふうん」
それまで付き合っていた逝がくるりと背を向けた。もう帰るのだろう。
炊き出しで作っていたカレーをぱくついていたたまきがてってこ走ってくる。
「慰霊碑、もう一個作れたんですね」
「石くらいならいくらでも。要は気持ちさ」
「なんだな!」
にっこりと笑うブラウンとイエロー。
グリーンもそれに頷いた。
「僕らが毎日掃除しにくるよ。これからもきっと色んなことがあるけれど、それを受け入れて戦っていきたいから」
時雨がぽむんと手を叩いた。
「そういや、うちらがここに来た理由ってカクセイジャーをまともに戦えるチームに育てることやったな」
「そうだったの?」
「そやったの」
「でもそれは、ちゃんと達成できたの」
ころんが胸を張って言った。
「もうみんな、ちゃんと戦えるの。苦しい時には手を取り合って、できないこともできるようになるの。だから、ころんたちの役目はおしまい」
「皆さんと戦えて、よかったです。よかったらこれからも……」
ラーラが控えめに言うと、ブルーが手を広げて言葉を制止した。
「みなまでいうな」
それを見た柾が苦笑した。
「そういえば、カクセイジャー。本当の名前を聞いてなかったな」
「知りたいか?」
「いや、いい。カクセイジャーはカクセイジャーだろ。レッド、ブルー、イエロー、グリーン、ブラウン」
「そしてホワイト」
さらっと混じる聖華。
「第六の戦士かよ」
「なんだよ。これからも一緒に遊んだり戦ったりしようぜ。もう仲間だろ」
「それこそ」
レッドは笑って言った。
「『みなまでいうな』だぜ、親友!」
こうして、カクセイジャーとその村をめぐる戦いは終わった。
と、みせかけて。
「ちょっと待ちな!」
村の皆やカクセイジャーが手を振り、聖華たちF.i.V.E覚者たちも手を振り分かれていく。
アニメやドラマだったらスタッフロールとテーマ曲が流れているようなそんなタイミングで。
ブルーのおばあさんが現われた。
「えっ、なんで今?」
「あんたたちに預けておきたいものがあるんだよ。ほら」
おばあさんは巾着袋から真っ赤な勾玉を取り出して、聖華たちに突きだした。
だが翔やラーラたちが覗き込んだ途端、それは目も覚めるような蒼色へと変化した。
「これは……」
「勾玉。もしや!」
「そうだよ。特別な力をもった勾玉さ。カクセイジャーが危なくなったら使ってやろうと思ったが、もうこんなもんはいらないからね」
話を聞いてみれば、それは残酷大将軍の残した最後の欠片であるらしい。これを使って病院に妖をおびき寄せていたのだろう。
怒りと憎しみ。転じて、愛と期待の力がこもった勾玉だ。
「ありがとう。使わせて貰う」
勾玉を握りしめ、覚者たちは頷いた。
こうして、こんどこそ。
この村をとりまく戦いは終わった。
きっといつか、また手を取り合って戦う日が来るだろう。
世界はつながっているのだから。
「村中に我への憎しみが集まり、いずれ山すら動かす巨体へ変わるつもりが……おのれ、おのれ、ことごとく邪魔しおって! こうなれば、今持てる全ての力を使って貴様らを葬り去ってくれるわ!」
ついに姿を現わした残酷大将軍を、F.i.V.E覚者とカクセイジャーたちは一様に見上げていた。
不敵に笑う『百合の追憶』三島 柾(CL2001148)。
「いよいよか。ここまで色々あったが、全部守ってきた。そうだよな?」
「その通りなんだな。もう昔のオイラたちじゃない」
「弱い人たちのために立ち向かう勇気と優しさを教えて貰ったからね」
頷くイエローとブラウン。
『デジタル陰陽師』成瀬 翔(CL2000063)が照れくさそうに笑った。
「へへ。しっかしデケえなあいつ。どうやって勝手やろうかね」
「皆さんと力をあわせて頑張ります! それだけです!」
ロールした護符軸をを両手に握って構える賀茂 たまき(CL2000994)。
『エピファニアの魔女』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)も魔方陣を縫い込んだ手袋をしっかりと着用した。
「終わったら、ちゃんと供養してあげますよ」
「弱ってもここまで巨大化できるほどの恨みだもんね。こうなったら、とことんまで相手してあげるの」
『かわいいは無敵』小石・ころん(CL2000993)も最初から覚醒状態になり、ブルーへと振り返った。
「俺もだ。指示はあるか?」
「おまかせするの。だってあなたたちは……ヒーローだもの」
「っ、恥ずかしいことを言うな」
面と向かって言われたブルーは、言葉に詰まって顔を背けた。肩を叩くグリーン。
「今更だよブルー。君も今まで随分恥ずかしいことを言ってたよ」
「せやな。積極的に動いてくれて助かるわ」
からから笑う『柔剛自在』榊原 時雨(CL2000418)。
その後ろで緒形 逝(CL2000156)が適当な柔軟体操を終えて刀を発現させた。
「さて、そろそろいこうかね」
「「おう!!」」
剣を抜く『想い受け継ぎ‘最強’を目指す者』天楼院・聖華(CL2000348)とレッド。
「正義のヒーローチーム、華麗に参上だぜ!」
「小癪な! ちっぽけなお前たちに何ができるか!」
残酷大将軍が激しい炎をはき出すと、炎は無数の青白い人魂となって展開した。
「あれじゃあ残酷大将軍に近づけない!」
「オレに任せとけ!」
翔はスマホのアプリにスワイプで暗号文字を描くと、それを天空に翳した。
「新必殺!」
光がプラネタリウムよろしく天空へと投射され、それらひとつひとつが人魂や残酷大将軍へと降り注ぐ。
突然の全体攻撃にひるむ残酷大将軍。
「なんだと!?」
「僕も手伝うよ!」
グリーンが機関銃を右から左に掃射。
次々に爆散していく人魂。
そこへ、逝が単独で飛び込んだ。
「フフ、底無しの大喰らいにどれ程喰わせてやれるかしら」
逝が刀を無造作に振り回すと、人魂が次々に切り裂かれて消えていく。
自らの初手を即座に破壊された残酷大将軍は怒りを露わに刀を振り上げる。
「人魂を喰った程度で調子に乗る出ないわ! 砕け散れぃ!」
逝めがけて振り下ろされる巨大な刀。
逝は攻撃を察して素早くその場から離脱した。
刀は地面に直撃。大地をめくり上げるかのごとき衝撃が周囲へと走った。
「ぐわっ!?」
グリーンやレッドが吹き飛ばされる。
ガード姿勢をとった柾も地面から足が離れてしまったが、その腕背中をイエローがどっしりと掴んで止めた。
「盾はまかせるんだな!」
「よし――」
柾は体勢を立て直し、振り下ろされた刀の上に飛び乗った。
身体からバシュンと蒸気が吹き上がり、まるで体内で蒸気機関を燃やしたかのように熱を放ち始めた。
「負ける気がしないな」
「何ぃ!?」
骸骨の奥にあるであろう眼光を大きくする残酷大将軍。
柾は刀を駆け上がり、腕さえも駆け上がると残酷大将軍の右頬めがけて蹴りを繰り出した。
「よそ見してる暇はないぜっ!」
いつの間にか同じように駆け上がっていた聖華が続けざまに斬撃を繰り出す。
身体を軽くのけぞらせる残酷大将軍。
柾と聖華は一瞬だけアイコンタクトをとると、二人同時の蹴りを残酷大将軍の右頬にもう一度叩き込んだ。
「ぐおお!」
追撃をうけて転倒する残酷大将軍。
だたただ無防備に倒れはしない。受け身をとるように腕を伸ばす。
その腕に、たまきが思い切り飛びかかった。
「浄化して見せます。その憎しみ!」
激しく硬化させた護符軸を腕へ叩き付ける。
ささえを喪った残酷大将軍は派手に転倒した。
吹き上がる砂塵。
それに混じって巨大な刀が叩き込まれた。
たまきへの、いや更に向こうだ。ラーラへの直撃コースである。
「ラーラさん――ブルー!」
「分かっている!」
ブルーが水衣を展開。と同時にころんがキャンディケイン状の杖を振り上げた。
混ざり合った二つのオーラが巨大なチョコレートクッキーとなり、ラーラの前に現われた。
物理障壁とカウンターヒールによって刀をうち弾くクッキー。
それがぱっくりと二つに割れ、大量の加熱石炭を宙に浮かべたラーラが姿を現わす。
「良い子に甘い焼き菓子を、悪い子には石炭を。イオ・ブルチャーレ!」
大量の石炭が無防備な残酷大将軍へ浴びせられる。
起き上がったレッドが叫んだ。
「やったか!?」
「やったかとかゆーなや!」
振り返る時雨。
と同時に残酷大将軍が立ち上がった。身体に纏っていた鎧からは毛皮が抜け落ち、鮮やかな血の色をした鎧が露わになっている。
「ほらンなことゆーから起き上がったやんかあ」
「俺のせいか!?」
「まあええ――」
時雨は薙刀をくるくると頭上で回転させると、上段に構えた。
「勉強(修行)させてもらおか!」
踏みつけようとする残酷大将軍の足をジグザグ軌道で回避。
倒れて眼前を塞ごうとする樹幹を薙刀を利用したハイジャンプで超えると、木の枝に飛び乗って薙刀を激しく振り回した。
斬撃がオーラを纏い、巨大化した刃が残酷大将軍を下から上へと切り裂いていく。
「ぐああああ!」
顔を押さえて後じさりする。
ブルーがぐっと身を乗り出した。
「やっ――」
「「……」」
両側からころんとたまきに顔を覗き込まれ、口を自分の手で塞ぐブルー。
代わりにブラウンが身を乗り出した。
「やったか!」
「それ言わないとダメなんですか!?」
『もー』と言ってラーラが腕をぶんぶん振った。
ご多分に漏れず体勢を立て直す残酷大将軍。
だが、彼を包んでいた鎧は目も覚めるような蒼色だった。鮮血を塗りたくったような色は抜けている。
その様子に戸惑いを見せる残酷大将軍。
「なんだこれは。我が憎しみが色あせているというのか!? いや、違う、むしろ……」
「あらあら」
逝は刀で自分の肩をぽんぽんと叩き、疲れたように首を傾けた。
「憎しみで肥大化したのかと思って期待してみれば拍子抜けだなあ。全然違うモンに怒りや憎しみでコーティングしただけじゃあないかね、そりゃあ」
「コーティング? そら、どういうことや」
首を傾げる時雨。柾が『やはりな』と呟いた。
「怒りも憎しみも人間の感情だ。愛があるから人を憎み、喜びがあるから人に怒る。表裏一体のものだが……そのネガティブ面だけを見せようとすれば、ポジティブを全て内側に押し込めるしかない。奴はそうして自らの強大な力を維持していたんだ」
「じゃあ、怒りや憎しみを沢山解消しちまった今は……」
聖華は剣を握り、残酷大将軍を見上げた。
「ち、違う! 嘘だ! 我は残酷大将軍! 全てに怒り全てを憎む者だ! 幸せに生きている者は消えよ! この世から消えてなくなれ!」
「ヘッ、いつまでそう言っていられるかな。少なくとも。オレらは負けねえ!」
再び繰り出した残酷大将軍の人魂を、翔は雷撃によって蹴散らした。今度は一発で半数以上の人魂が消滅する。
その横には、残酷大将軍の呪いによって膝を突いていたイエローがいた。
「大丈夫かイエロー、無理すんなよ」
「無理なんてしてないんだな」
イエローはどこからともなく大盛りのカレーを取り出すと、それを一瞬でたいらげた。
「みんながお腹いっぱいカレーを食べられる。そんな未来を守ってみせるんだな!」
イエローを中心に雷撃が放たれる。翔ほどではないが人魂が蹴散らされていった。
「そろそろ仕上げかね」
残りの人魂に突撃する逝。
右から飛び込んできた人魂を強引に刀で弾き、左から来た人魂をスウェー回転で回避。
回避しながら撫で切りにすると、正面にとらえた数体の人魂をジグザグに駆け抜けつつ切り捨てた。
「もっともっておいで。食い足りないから」
「ぐぬぬ、お、おのれ……これでもくらえ!」
残酷大将軍は刀を両手で掴み、大上段に振り上げた。
「まずい、大技が来る!」
「だからどーした!」
「来るなら来い!」
聖華とレッドが前に出てアシンメトリーに剣を構えた。上段防御の構えだが、巨人相手に通用するものだろうか?
否、通用するのだ。
「くたばれぃ!」
叩き込まれた巨大な刀。それを二人はクロスした剣で受け止めた。
本来なら二人とも叩きつぶされてもおかしくない衝撃だ。それだけではない。彼らを中心に全員が吹き飛ばされるような衝撃なのだ。
だがそうはならなかった。
「さっさと退散しなかったからこうなるの」
「我慢できんかったんやなあ」
まるでケーキショップのような甘くとろんとした香りが周囲を包んでいる。
ころんが放った回復フィールドがカウンターヒールの役割を果たし、衝撃を最低限にまで緩和していたからだ。
「まあアレや。恨みの発散、お手伝いしよか」
時雨がにやりと笑い、飛ぶ斬撃を放った。時雨の斬撃は空を穿ち、残酷大将軍の顔面へと直撃する。
「ぐあ!」
思わず腕の力を緩めたその瞬間、聖華とレッドは顔を見合わせた。
「一緒にやるぜ、レッド!」
「ああ!」
二人はせーので剣を打ち払うと、同時に攻撃を繰り出した。
残酷大将軍の軸足。それも膝を狙って飛びかかり、クロスアタックを叩き込む。
「ぐ、しまった!」
思わず膝を突く残酷大将軍。その表情には明らかな焦りが浮かんでいた。
表情。そう、残酷大将軍の恐ろしいドクロめいた顔には今や表情が生まれていたのだ。
「残酷大将軍さん……」
たまきは直感的に分かっていた。
たとえばいいことが一つも無かった日。
たとえば皆にいじめられた日。
全部が嫌になって、人に八つ当たりしたくなるときが、誰にだってある。
残酷大将軍はその象徴なのだ。
長く虐げられた人々の想いが、怒りや憎しみという形を取って暴れ出したのだ。
「なら、方法は一つです」
慰めることも。
分かってあげることも。
全ては『これ』のあとだ。
「お願いします!」
「「いつでも!」」
ブラウンとグリーンが、長さ二メートルはあろうかという大きな掛け軸を両側から引っ張って広げた。両開きの扉くらいはあろうかというシートに大量の護符が貼り付けられている。四国八十八箇所全ての護符を隙間無く敷き詰めたものだ。
たまきはそれを突き破る勢いでダッシュ。実際に突き破ると、自らを強固なフィールドが覆った。
そのまま残酷大将軍に体当たりをしかける。まるでダンプカーでもぶつかったような衝撃が巨体を襲った。
当然相手はしりもちをつく。
「うおお!」
「残酷大将軍さん。失ったものは取り返せません。誰から奪っても、何を壊しても、埋まることはないのです」
ラーラが樹枝の上で手を掲げた。
その横で柾が高く跳躍。
「良い子になるのです。――イオ・ブルチャーレ!」
空中へ大量に生まれる石炭。激しい炎を纏う。
そんな中で、柾もまた激しい炎を纏った。
「じゃあな、今度出てくるときは石碑壊すなよ」
大量の石と共に残酷大将軍へと突っ込む柾。
それは巨体の腹に大穴をあけ、樹幹を三本ほど破壊してから地面をスライドして止まった。
「ぐ、ぐぐぐ……」
残酷大将軍の前身から鎧がはげ落ち、巨大だった身体もみるみる縮んでいく。
最後に残ったのは半透明なひとりの男だった。
「そ、そう、か……我は……」
しっかりと肉付いた顔に手を当てる。
「わかってほしかった、だけか……」
そして、残酷大将軍は灰となり、さらさらと消えていったのだった。
●
残酷大将軍の残した灰は壺に入れ、新しい石碑の下へと埋めた。
文献も残っていないが、どうやらこの山にはずっと昔に平和な国が作られていたという。
ぽんぽんと叩く翔。
「喪った悲しみと、それを分かって欲しいという怒り……。残酷大将軍って、もしかしたらそれだけのことだったのかもな。新しい命に生まれ変わって、楽しく生きろよ」
「ふうん」
それまで付き合っていた逝がくるりと背を向けた。もう帰るのだろう。
炊き出しで作っていたカレーをぱくついていたたまきがてってこ走ってくる。
「慰霊碑、もう一個作れたんですね」
「石くらいならいくらでも。要は気持ちさ」
「なんだな!」
にっこりと笑うブラウンとイエロー。
グリーンもそれに頷いた。
「僕らが毎日掃除しにくるよ。これからもきっと色んなことがあるけれど、それを受け入れて戦っていきたいから」
時雨がぽむんと手を叩いた。
「そういや、うちらがここに来た理由ってカクセイジャーをまともに戦えるチームに育てることやったな」
「そうだったの?」
「そやったの」
「でもそれは、ちゃんと達成できたの」
ころんが胸を張って言った。
「もうみんな、ちゃんと戦えるの。苦しい時には手を取り合って、できないこともできるようになるの。だから、ころんたちの役目はおしまい」
「皆さんと戦えて、よかったです。よかったらこれからも……」
ラーラが控えめに言うと、ブルーが手を広げて言葉を制止した。
「みなまでいうな」
それを見た柾が苦笑した。
「そういえば、カクセイジャー。本当の名前を聞いてなかったな」
「知りたいか?」
「いや、いい。カクセイジャーはカクセイジャーだろ。レッド、ブルー、イエロー、グリーン、ブラウン」
「そしてホワイト」
さらっと混じる聖華。
「第六の戦士かよ」
「なんだよ。これからも一緒に遊んだり戦ったりしようぜ。もう仲間だろ」
「それこそ」
レッドは笑って言った。
「『みなまでいうな』だぜ、親友!」
こうして、カクセイジャーとその村をめぐる戦いは終わった。
と、みせかけて。
「ちょっと待ちな!」
村の皆やカクセイジャーが手を振り、聖華たちF.i.V.E覚者たちも手を振り分かれていく。
アニメやドラマだったらスタッフロールとテーマ曲が流れているようなそんなタイミングで。
ブルーのおばあさんが現われた。
「えっ、なんで今?」
「あんたたちに預けておきたいものがあるんだよ。ほら」
おばあさんは巾着袋から真っ赤な勾玉を取り出して、聖華たちに突きだした。
だが翔やラーラたちが覗き込んだ途端、それは目も覚めるような蒼色へと変化した。
「これは……」
「勾玉。もしや!」
「そうだよ。特別な力をもった勾玉さ。カクセイジャーが危なくなったら使ってやろうと思ったが、もうこんなもんはいらないからね」
話を聞いてみれば、それは残酷大将軍の残した最後の欠片であるらしい。これを使って病院に妖をおびき寄せていたのだろう。
怒りと憎しみ。転じて、愛と期待の力がこもった勾玉だ。
「ありがとう。使わせて貰う」
勾玉を握りしめ、覚者たちは頷いた。
こうして、こんどこそ。
この村をとりまく戦いは終わった。
きっといつか、また手を取り合って戦う日が来るだろう。
世界はつながっているのだから。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし

■あとがき■
勾玉ゲット!
勾玉名:大将軍のかけら
勾玉名:大将軍のかけら
