試練の終わり、F.i.V.E.の救済
試練の終わり、F.i.V.E.の救済



 わたくしを憐れんだ者が居た。
 わたくしの敵となると宣言した者が居た。
 わたくしを殺すと言った者が居た。
 色々な人が、様々な感情を以て、わたくしに相対しました。
 わたくしにとっては、何度も、何度も向けられたもの。
 如何なるそしりを受けようと、どのような烙印を押されようと、わたくしにはやらねばならないことがある。
 人を、救わなければ。
 わたくしのやり方で。
 わたくしの救済を。
 だってそれしか――わたくしには、人を救う手立てがない。
 もうそれしか、わたくしには打つ手がない。
 それが最善であると信じて。

 それでは始めましょう。
 おそらくこれが、あなた達とかかわる最後の機会。
 あなた達への試練を以て。
 あなた達の救済を。


「エリス・レンバートから連絡が来た。F.i.V.E.の皆さんに、試練のご案内だそうだ」
 神林 瑛莉(nCL2000072)は肩をすくめた。現状では多忙な中に変わり、この件の窓口的な仕事を任されたようだ。
「指定の日時にお待ちしてます、とさ。一応、今回の件を察知した夢見が居ないか確認してあってさ。夢見たヤツの話によれば、罠の類はなさそうだ」
 つまり純粋に、相対し、打ち倒せ、という話になる。
 瑛莉は夢見から得た情報を箇条書きにした資料を渡しながら、続けた。
「エリスって奴は戦闘向きじゃあないみたいだが、それでも十分危険な奴だ。ちゃんと注意してくれよ?」
 覚者達は頷いた。
 救いの末路が、間もなく訪れようとしている。


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:洗井 落雲
■成功条件
1.エリス・レンバートの撃退(生死を問わず)
2.なし
3.なし
 お世話になっております。洗井落雲です。
 エリスから挑戦状が届きました。

#エネミーデータ
 エリス・レンバート ×1
  暦の因子:木行
   使用スキル
    錬覇法
    ワイヤーによる攻撃 物近列 【出血】
    非薬・紅椿
    香仇花
    樹の雫
    破滅への導線
     修道女が絶望の果てに手にした絶望(きぼう)。
     自分の行動後、行動順判定にて決定した数値から『-(反応速度+50)』した値の行動順で再行動を行う。
     使用者が戦闘終了時に生存していた場合、重傷状態になる。
     このスキルはラーニング出来ない。

#戦場
 エリスの屋敷前庭。
 時刻は夕暮れ。周囲に人はなく、また乱入者、罠は一切存在しない。
 戦場のギミックやペナルティなども一切存在しない。

 エリスの生死は問いませんが、特に殺す旨の記載がプレイングになければ捕縛するものとします。
 殺害したい場合はプレイングかEXプレイングに記入していただければ反映しますが、結果は捕縛派との多数決で決定します。(プレイングに特に記入がない場合は捕縛としてカウントします)
 同数だった場合はダイス振ります。

 以上です。
 皆様のご参加をお待ちしております。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(1モルげっと♪)
相談日数
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
公開日
2017年07月04日

■メイン参加者 8人■

『ホワイトガーベラ』
明石 ミュエル(CL2000172)
『静かに見つめる眼』
東雲 梛(CL2001410)
『悪食娘「グラトニー」』
獅子神・玲(CL2001261)
『F.i.V.E.の抹殺者』
春野 桜(CL2000257)
『赤き炎のラガッツァ』
ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)
『冷徹の論理』
緒形 逝(CL2000156)
『ボーパルホワイトバニー』
飛騨・直斗(CL2001570)

●聖女の救済
「お待ちしておりましたわ」
 そう言うと、エリス・レンバートは、嬉しそうに、とても嬉しそうに、微笑んだ。
 夕焼けに染まる、古めかしい屋敷。ささやかながら整えられたその前庭にて。
 聖女と呼ばれた女は、まるで旧知の友人に会ったかのような顔をしている。
「俺は、止めろ、って言った気がしたけどな」
 『人妖の架橋』切裂 ジャック(CL2001403)が、言った。
「そうでしたわね。でも、わたくしは……止めるわけにはまいりませんので」
 エリスは、困ったような顔で、返した。
「皆様もどうか、お覚悟のほどを。と言っても、難しい事ではありませんわ。ただあるがままに、己を受け入れ、現状を乗り越える。ただそれだけの――」
 エリスの雰囲気が、少しだけ変わった。微細なものではあったが、かつてそれに対峙した事のある『”狂気”に応ずる者』春野 桜(CL2000257)、エリスの感情を感知していた『冷徹の論理』緒形 逝(CL2000156)は、その変化に気づいた。
 それは、戦意、と言うべきものか。
「――至極簡単な、試練ですわ」
 きぃ、と何かがこすれるような音が聞こえる。桜には聞き覚えのある音。エリスが、武器である仕込みワイヤーを解放したのだろう。
 戦端を開いたのはその小さな音だった。
 一斉に、覚者達が動く。4人ずつ、二手に別れた覚者達は、エリスを挟むように布陣。後方に展開した覚者達を、エリスがちらりと見やる。焦りの色はない。余裕か、或いは本当に何も感じていないのか。
「俺のことは覚えてるかい! エリスさんよォ! 今回は直球だなぁ、嫌いじゃないぜ!」
 『ボーパルホワイトバニー』飛騨・直斗(CL2001570)が、虚弱の香りを生み出した。
「ええ、覚えておりますわ。お気に召していただいたなら幸いですわ」
 その香りは、エリスの身体を確かに蝕んでいる。
「エリス、聞け!」
 カッ。カッ。カツン。三度ならされる踵の音。それは死を告げる踵の音。
 血でできた大鎌を振りかざし、ジャックがエリスへと迫る。
「言葉であんたは止められない。ならば俺は、殴ってでもあんたを止める! あんたを救う!」
 エリスはバトルワイヤーを展開、大鎌の勢いを殺しにかかる。幾重ものワイヤーを切り裂き、火花ならぬ血しぶきを散らしながら、ジャックの大鎌はエリスに迫る。接触まで紙一重。エリスの眼前わずか数センチ。そこで大鎌は止まった。ギリギリとワイヤーと刃がこすれる音がする。
「あなたとは縁がありますわね、因幡さん。わたくしを救う――以前も、そのような事を仰っていましたね。何があなたをそうさせるんですの?」
 表情は変えず、エリスが言った。しかし、鎌を受け止めるワイヤーを操作するその手には、全力を込め。
「そうだな……惚れた弱みって奴、かな」
 その言葉に、エリスはきょとん、とした顔をした。一瞬、ワイヤーの拘束が緩む。血の鎌が、数ミリ、エリスへと接近した。
「……それは予想外の答えでしたわ」
 そう言うと、今度は意図的にワイヤーの力を緩めた。同時に後方へ軽くステップ。大鎌の射程から逃れる。
「や、おっさんの相手もしてもらうぞぉ」
 自身に強化術式を施しつつ、逝が言う。
「まぁ、ご無沙汰しておりますわ。その後、納得のいく答えは見つかりましたか?」
「いや、これが分からないままよ、アハハ! 所で、また質問があってね、今度はエリスちゃん、貴女に対する事だ」
 そう言うと、逝は人差し指を立てた。
「一つ。『誰を救う気なんだね?』」
「――は?」
 エリスが虚をつかれたような顔をした。
「いやいや、貴女の救い方は画一的すぎるというかね。『自分の薬』を人に飲ませているようだ。それじゃあいけないよ。それから二つ目」
 間髪入れずに、続ける。同時に、エリスへの感情探査は忘れない。
「『何故、死んだモノに意味を求めたかね?』」
 じわり。と。
 エリスの感情に、何かが混ざるのを、逝は認識した。
 以前、相対した時にはなかった状況変化。冷静、冷徹であった――いや、完全に死んでいたはずの感情が、再び目覚めるのを、観測する。
「嫌な言い方をするけどね、死は偶然だよ。選択された死、というのもあるけどね。だからね、言っちゃおうか」
「――やめなさい」
「概ね、殆どの死に意味なんてないのさ。運命なんてものはない。神の意志なんてものはない。ただただ、間が悪かっただけ――」
「やめなさい!」
 エリスが動いた。ワイヤーが走る。それは、おおざっぱな――あるいは、自棄になったかのような――滅茶苦茶な攻撃だった。逝と、『静かに見つめる眼』東雲 梛(CL2001410)へと向けて、ワイヤーが襲い掛かる。2人はワイヤーの一部を武器で叩き落とし、一部は避ける。
「三つ目の質問も用意してたけど――いいか。なるほど、ようやく出てきたわけだ、エリスちゃん」
 そんなやり取りを眺めながら、桜は自身の強化を行う。
 ――今は動き時じゃない。そう、今は。
 胸中で、桜が呟く。
 『ホワイトガーベラ』明石 ミュエル(CL2000172)が生成した中和薬を散布。仲間への援護を行う。
 ――なにか、おかしい……?
 ミュエルは思う。
 エリスと言う人間は、ミュエルの知る限り、あのように激昂するようなタイプではないはずだった。
 逝の言葉を思い出す。
 ――……アレが、本当の、エリスさん……っていう事、なの?
 そう考えた途端、ミュエルがエリスに抱いていた、得体のしれない不安と恐怖感が、少し薄れていくのを自覚した。
 もしかしたら、エリスとは。
 ただの、臆病な人間なのかもしれない。
 『赤き炎のラガッツァ』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)も、自身の強化を行った。
 ――聞いていた印象と、少し違います。まるで話の通じない相手、だと思っていましたけれど……。
 ラーラは思う。
 理解しあえない、価値観の全く違う存在。それが、今までの調査報告で下された結論であった。はずだ。
 だが、先ほどのエリスは……。
 ラーラは頷いた。
 分かり合うための余地は、きっとある。でも、今は、エリスを力で止めないといけない。
「やっぱり。そうなんだな」
 梛は術式の種を放つ。エリスに付着したそれは急成長を果たし、エリスの自由を奪う。
「さっきの――緒形さんとのやり取りで分かったよ。本当に救われたかったのは、あんた自身だったんだ」
「わたくしを……!?」
「人を救いたかった。でも、救えなかった。あんたはそれが我慢できなかったんだな。だから、壊れるしかなかった。でも、本当は誰よりも希望を欲してたんだ」
 エリスが、ぎり、と歯噛みする。
 『悪食娘「グラトニー」』獅子神・玲(CL2001261)は弱体化の霧をまきながら、
 ――救われたかった? もし、そうだとしても……。
 思う。手にした人形を、強く抱きしめながら。
「……先ほどから何をおっしゃっているのです」
 エリスは自身の体力を回復させつつ、言った。
「……わたくしが救われたい? 何を。わたくしが望むのは、人類の救済、人の安寧。仮にわたくしが救われずとも――」
「それこそがお前の救いなんだよ!」
 ジャックが再び走る。踵を鳴らす。三度。出現する血の大鎌。
「お前は自分を救うために、人を救ってた。でも、普通のやり方じゃ救えなくて、追い詰められて、こんな風になってしまったんだ!」
 振りかざされる大鎌。動揺か、エリスは対処が遅れた。その大鎌は、エリスの腕を切り裂いた。深手ではないが、確かなダメージ。聖女が顔をゆがめた。
「追い詰められてるな、同類!」
 直斗が雷を操る。放たれた雷光は、エリスの身体を貫いた。
「ま、真実はどうあれ、おっさんは喰わせてもらうだけだけさね」
 逝は妖刀で斬りかかる。エリスはそれを避けることができなかった。
「あっははは! どうしたのよ! 最初の余裕がなくなってきたみたいじゃない!」
 笑いながら、桜は必殺の打撃を繰り出す。
「あなたの、人を救いたい、っていう気持ちは否定しない……けれど……!」
 ミュエルは術式の香りでエリスを攻撃。
「あなたのやり方は……新しいあなたを生み出すだけ、だから……あの子を……あなたと同じにするなんて……できない……!」
 かつて出会った、エリスの信徒の一人である、幼い少女の姿を思い出す。屈託のない、少女の笑顔を、歪んだものにしてはいけない、とミュエルは思う。
「目の前で、遠くで、今苦しんでいる人達をそこから救ってあげたい……それだけじゃだめなんでしょうか?」
 ラーラが尋ねる。エリスは答えない――答えられない。
「あなたの救済と、私達が思い描く救済。今は、違うものになってしまったけれど、その気持ちは、本質は同じはずです。だから、きっと――いつか私達は分かり合える。でも、今は……!」
 ラーラの周りに、こぶし大の炎が出現する。
「良い子に甘い焼き菓子を、悪い子には石炭を……イオ・ブルチャーレ!」
 炎が射出される。エリスは回避もままならない。
「あんたは救いの果てに絶望して、こうなった。でも、俺達は……どれだけ絶望しても、あんた同じ答えは導き出さない。俺達は、俺達の方法で、人を救って見せる」
 梛が言う。エリスは言葉に詰まった。
 おかしい、とエリスは思った。言葉が出てこない。この程度の事、何度も言われ慣れていたはずだ。今までは何も感じなかったはずだ。さっきもそうだ。好意を伝えられた、程度で妙な動揺を? おかしい。おかしい。おかしい。どこかで歯車が狂ったのだ。一体、どこで――。
 まさか――。
 F.i.V.E.とかかわりを持った事こそが、間違いであったのか――。
 F.i.V.E.の覚者。恐らく彼らは、希望を信じて疑わない。或いは。仮に絶望に塗れても、再び這い上がるだけの力を有しているのだろう。
 彼らは、光だ。あまりにも強い光。ならば自分のようなものは。闇に救いを求めてしまったものは。そんな光を直視してしまったのならば。
「ああ、ああ、ああ!」
 エリスが頭を抱えた。
「やめて……やめて! わたくしにそんなものは必要ない! わたくしに――そんなものを見せないで……!」
 エリス・レンバートは、その瞬間まで、確実に狂気の中にいた。それこそが、彼女が身を守る術であったのだ。
 だが、幾度かのF.i.V.E.の覚者達との接触は、彼女の心に様々なさざ波を立てつづけた。
 その結果、彼女は正気を少しずつ取り戻しつつあった。
 だが、その正気はあまりにも不安定なものである。
 いっそ、完全に狂気に陥っていた方が、人の心という物は見かけ上の安定を見せる。狂気には狂気の、完成された理論があるからだ。
 狂気と正気の間――エリスの精神は、今最も不安定な状態にあった。
 その結果、その行動、攻撃も精彩を欠いたものになっていく。
 行動は支離滅裂であり、まるでだだをこね暴れる子供のようであった。
 エリス・レンバートは戦闘向きではなく、七星剣に所属する者の中で最も弱い、と言っても過言ではない。それでも、覚者8人を相手取り、引けを取らない程度の実力を、本来は持ち合わせていた。狂気に身を任せていた状態であったなら。
 だが、今は、その実力の半分も発揮できてはいない。
 そんな相手を制圧することなど、8人の覚者にとっては造作もない事であった。

●F.i.V.E.の救済
「さて、もういいわよね」
 座り込み、うなだれるエリスを前にして、桜が言った。
 戦闘による物理的なダメージ、精神的なダメージ、スキルの仕様による反動と、もはやエリスにまともに動けるだけの力は残されていない。
 そんなエリスへ、桜はナイフを突きつける。
「結構我慢してたのよ。さっきまではね。皆お優しいから。でもここからは別。別よ。もう我慢するつもりはないわ」
 桜は笑った。おぞけがするほど、美しい笑顔だった。
「殺すわ。彼女は殺す。今までやってきたことは許されない。彼女は敵よ。今までも、これからも。敵なんだから、殺さなきゃ。そうでしょう? ええ、そうですとも」
「ま、まっ……て……!」
 ミュエルが、何とか声を絞り出した。エリスとは別の狂気、桜の狂気に飲まれぬように。
「エリスさんのしたことは、許せない……けど、それで、殺してしまう、というのは……違う、と……思う……!」
「はぁ?」
 桜が首をかしげる。
「生きて罪を償って~みたいな奴かしら。無駄よ。それにほら、この人が私の試練だって言ってたし。応援するって言ってたし。そこまで言われたら、ね? ……もしかして、皆も、殺すのは良くない~、みたいなクチかしら?」
 桜の問いに、
「いや、おっさんにとっては餌よ。喰い殺すのに躊躇はないさね」
 悪食を抜き放ち、逝が言う。
「緒形さん……!」
 ミュエルが呻いた。
「……それはさせない」
 ジャックが、言った。
「彼女は……多分、ようやく、抜け出せたんだ。もう一度、スタート地点に立てるんだよ。だったら、もう一度エリスが歩きだすのを、本当にエリスがやりたかったはずの救済を、俺は手伝いたい。だから」
 ジャックが、武器を構える。明確な意思を持って。
「エリスは、俺が守る」
「そうです。もしかしたら、ちゃんと分かり合えるかもしれないんですから。だったら、殺してしまうなんて、そんなの、ダメです!」
 ラーラが言う。
「そうだね。死と言う終わりは嫌だな」
 梛が賛同する。
「そ。そうなのね。じゃあ、あなた達も敵、って事ね」
 徐々に、場の空気が、対立へと向かって行く。
「玲さん……?」
 直斗が、言った。
 視線の先には、玲が居た。
 その瞳は冷たく、殺意すら感じさせる。
「エリスさん。僕はずっと考えていたんです。貴女を殺すべきが、生かすべきか」
 玲が、言った。
「殺そうと、思いました。僕の中には、ある種の飢えがある。貴女を殺せば、それは癒えるんだと」
 でも、と続けた。
 手にした人形を、玲の親友を模した人形を、強く抱きしめる。
「でも……僕の親友が……あの子が、悲しむんです。そう考える僕を見て……だから、エリスさん」
 玲の瞳に、熱が戻る。それは、いつもの玲の瞳であった。
「貴女の言う試練、という言葉を借りるなら……僕はこの飢えを抱えたまま生きる事。それが、僕にとっての試練なんです。親友に恥じない幸せな人生を送る……それがこれからずっと続く、僕の、僕だけの試練なんです。だから」
 玲が、エリスを守るように立ちはだかった。
「この人は殺させない。それが、僕の、生き方だから」
「玲さん……よかったよ。姉さんの親友が俺と同じ『化物』にならなくて……」
 直斗が言った。それは、安堵と、優しさの色を持った言葉だった。
「っつーわけで、俺もこっち側だな! 桜さん、あなたの言う通りだよ。この人には、生きて罪を償わせる。この人はその贖罪を生き続けて苦しみながら払うんだよ 」
 2対6。趨勢は決した。
「……うーん、しょうがないさねぇ。残念だ。残念だけど、身内で本気で斬り合うのも馬鹿馬鹿しいかね」
 逝が武器をしまいながら、言った。
「……いいわ。ここは従ってあげる」
 桜が言った。
 ――でも、必ずこいつは殺す。どれだけ時間がかかっても、必ず。ええ、必ずよ。そのチャンスはいくらでもあるわ。ふふ、うふふ。
 胸中で舌を出しつつ、この場は恭順の意思を見せた。

 夜の闇があたりを包み込んだ。護送車に運び込まれたエリスは、今までの超然としたその姿とは似ても似つかぬほどに、憔悴しきっていた。
 多分、この姿こそが、本当のエリス・レンバートなのだと、覚者達は思った。
 あがき、疲れ、壊れ、狂気によって身を守っていただけの、ただの人間なのだと。
 聖女など、最初からどこにもいなかったのだ。
「やれやれ、1人『同類』が減っちまったな。ま、喜ばしい事だな」
 直斗が呟いた。
「もし試練ってのがホントにあるなら、エリスにとっての試練はここから始まるんだ」
 ジャックが、言った。
「試練、かぁ……」
 ミュエルが呟く。
「アタシ達の試練は……いつ……どんな形で、やってくるのかな……」
 その問いに、答える言葉はない。
 いつか、覚者達の人生を変えてしまうような、そんな大きな試練が訪れるかもしれない。それはまだ、誰にもわからない。
 ただ、今は、ひとつの事件の終わりを喜ぼう。

 1人の人間が起こした一連の事件……その幕は、ここに降りる事となった。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
『F.i.V.E.の救済者』
取得者:明石 ミュエル(CL2000172)
『F.i.V.E.の救済者』
取得者:東雲 梛(CL2001410)
『試練に立ち向かう者』
取得者:獅子神・玲(CL2001261)
『聖女の救済者』
取得者:切裂 ジャック(CL2001403)
『F.i.V.E.の抹殺者』
取得者:春野 桜(CL2000257)
『F.i.V.E.の救済者』
取得者:ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)
『F.i.V.E.の食らう者』
取得者:緒形 逝(CL2000156)
『試練を見届けた者』
取得者:飛騨・直斗(CL2001570)
特殊成果
なし




 
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