桜咲き その花びらに乾杯を
●久方の光のどけき春の日に しづ心なく花の散るらむ ――紀友則
桜。
バラ目バラ科モモ亜科スモモ属の総称である。
春に白桃色の花びらを咲かせる樹木で、日本文化の多くに関わっている。暦がない昔の農業では桜の咲く時期を開始としているなど、春の訪れを告げる代名詞である。
また咲く時期の短さから、儚い人生を示すものともなっている。命短くとも咲く時に咲き、散る時に散る。江戸時代から発生した武士道は、遠からず桜の影響があるのではなかろうか。
閑話休題。日本に古くからある桜。春になれば桜の木の下で花を愛でながら騒ぐというイベントがある。花見と言われるこの祭りは陰陽道で『陽』となり、桜の『陰』を打ち消すために必要だという。
そう。桜の元で祭りをするのは、平和の為に必要な事なのだ。
●FiVE
「と言うわけで花見をしよう」
久方 相馬(nCL2000004)は散々な前フリの後にそう告げた。
要するに騒ぎたいだけか、と詰め寄る覚者を手で制し、相馬は話を続ける。
「この桜、古妖なんだ。樹齢千年を超える桜で念による会話もできる。基本的に温厚なんだけど、この時期は祭りをしないと陰鬱な気分になって周囲の土地に影響を与えるんだ」
前フリもあながち嘘ではない。
「まあそんなわけで花見しようという流れだ。普通に飲み食いしてもいいし、派手な芸をやってもいい。咲いてる場所も山の中だから、人目を気にする必要はないぞ」
食べ物や飲み物はFiVEが用意するようだ。もちろん持参もOK。
「任務ってほどじゃないが、これも平和のため。楽しんでいこうぜ」
楽しい花見になりそうだ、と笑う相馬。
だが不幸なことに、彼はこの後春休みの宿題を忘れたことに気づき、カンヅメ状態となってしまい参加できないのであった。
桜。
バラ目バラ科モモ亜科スモモ属の総称である。
春に白桃色の花びらを咲かせる樹木で、日本文化の多くに関わっている。暦がない昔の農業では桜の咲く時期を開始としているなど、春の訪れを告げる代名詞である。
また咲く時期の短さから、儚い人生を示すものともなっている。命短くとも咲く時に咲き、散る時に散る。江戸時代から発生した武士道は、遠からず桜の影響があるのではなかろうか。
閑話休題。日本に古くからある桜。春になれば桜の木の下で花を愛でながら騒ぐというイベントがある。花見と言われるこの祭りは陰陽道で『陽』となり、桜の『陰』を打ち消すために必要だという。
そう。桜の元で祭りをするのは、平和の為に必要な事なのだ。
●FiVE
「と言うわけで花見をしよう」
久方 相馬(nCL2000004)は散々な前フリの後にそう告げた。
要するに騒ぎたいだけか、と詰め寄る覚者を手で制し、相馬は話を続ける。
「この桜、古妖なんだ。樹齢千年を超える桜で念による会話もできる。基本的に温厚なんだけど、この時期は祭りをしないと陰鬱な気分になって周囲の土地に影響を与えるんだ」
前フリもあながち嘘ではない。
「まあそんなわけで花見しようという流れだ。普通に飲み食いしてもいいし、派手な芸をやってもいい。咲いてる場所も山の中だから、人目を気にする必要はないぞ」
食べ物や飲み物はFiVEが用意するようだ。もちろん持参もOK。
「任務ってほどじゃないが、これも平和のため。楽しんでいこうぜ」
楽しい花見になりそうだ、と笑う相馬。
だが不幸なことに、彼はこの後春休みの宿題を忘れたことに気づき、カンヅメ状態となってしまい参加できないのであった。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.花見を楽しむ
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
咲くも桜。散るも桜。
●説明!
千年生きた桜の古妖。彼はこの山の土地神的な存在です。
春のこの時期に祭りをしないと、咲いた桜の強い『陰』が影響して山全体に陰気が溜まります。そうなると山に住む動植物に悪影響が及ぶとかなんとか。
それを防ぐために祭りをしなければいけません。祭りの『陽』で陰気を打ち消す為です。
そんなわけでお花見です。参加するだけで陰気が払えます。なのであとはご自由に。
山の中なので貴方達以外の人はいません。また、それなりに広い場所なので、多少派手に暴れても支障はありません(意図して桜を傷つけるのはダメです)。
飲み食いするもよし。友人と語らうもよし。派手に芸をするもよし。勿論それ以外もよし。
お花見を楽しんでください。
お約束事項ですが、未成年(実年齢。変化などで成人になっても不可)の飲酒喫煙はマスタリング対象です。ご了承ください。
●場所情報
京都の山中。大きな桜が咲く草原。かなりの広さがあります。
時刻は昼。天候は晴れ。春の穏やかな空気にあふれています。桜は満開。
●NPC
桜の古妖
1000年を生きた桜が古妖となりました。名前は『櫻老(おうろう)』。
穏やかな性格なのですが、桜の特性上この時期に陰気を放ってしまうのは申し訳なく思っています。
●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の33%です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『御崎 衣緒(nCL2000001)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。
皆様のプレイングをお待ちしています。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
相談日数
6日
6日
参加費
50LP
50LP
参加人数
20/∞
20/∞
公開日
2017年04月20日
2017年04月20日
■メイン参加者 20人■

●
「五臓六腑に染み渡るね」
義高(CL2001151) は胃に広がる熱い感覚に息を吐く。目の前には薄紅色の花びら。頬を撫でる風は暖かく、遠くを見渡せば美しい山々の風景。まさに絶好の花見日和だ。今日と言う日を逃せば、次はいつこの光景を見ることが出来るのか。
花見は日本の文化だ。海外では飲食禁止の区域もある。酒を吞む者としては悲しい話だ。フキノトウやたらのめ、菜の花など苦みのある食材を酢漬けにしたつまみを口にする。春の光景に春の味。これこそ格別だ。酒が進み、気分が高揚してくる。
「いい酒にいいツマミにいい桜。これが日本の文化だぜ」
「榊原の爺さんも来るかと思ったんだがなぁ」
残念そうに逝(CL2000156)が呟く。酒飲みの爺さんならこういうイベントはやってくると思ったのだが、用事が入ったらしい。まあそれでも構わないと桜の枝に乗って酒を飲む。眼下で祭りに興じる若者たちがいい肴だ。
普段しているフルフェイスは流石に外してある。その為春風が心地良い。さて、花見など何年振りやら。ふと御猪口を見ると、風に舞った桜の花弁が盃に浮かんでいた。
「瘴気が無ければ調子も悪くなるし、一つ陰気とやらを酒と一緒に頂くとしよう」
これまた風流と、一気に酒をあおる逝。アルコールの為か、春の陽気か。死んだような目だがその声は弾んでいた。
●
春風に舞う白藤柄の紬姿。黄色の帯と巾着。
そして色鮮やかな落雁と桜の干琥珀。
茶をかき回す音は静かに。そして優雅に差し出される。
「どうぞ」
紡(CL2000623)が声をかければ、他の澄香(CL2000194)、彩吹(CL2001525) 、行成(CL2000352)は一礼した後にお茶に口をつける。
「そんなに気を張らなくてもいいよ。野点は決まった形がないし」
【四葩】の提案者である紡はにこりと微笑み硬くなっている参加者に告げる。野点は茶会と言うよりは催しに近い。この風景と共にお茶を楽しもうというのが趣旨だ。
「ふふ、頑張って作っちゃいましたよ」
白い花びらを散らした薄紅色の着物を着た澄香が、作ってきた練りきりやきんとんを用意する。灰色の髪の毛を桜の髪飾りで止めた姿は着物とマッチしており、その動きも着物を着慣れていることを感じさせる。
「これで和風っぽいかな?」
伸ばした黒髪をおろし、着物を着た彩吹。自分ではガサツと思っている彩吹だが、場に合わせようという気づかいを怠っているわけではない。付け焼刃に思える格好だが、すらりと伸びた黒髪と着物は桜舞う山に映えていた。
「お誘いありがとう。花見に茶と菓子というのは最高の組み合わせだ」
守護使役の『もちまる』と共に野点に参加した行成が、紡に礼を言う。花弁舞う春の陽気の元、点てられたお茶と美味しい御菓子。『もちまる』が桜の花弁を頭にのせて、うとうととしていた。のどかな風景に顔はほころぶ行成。
「それじゃあ一曲」
和菓子を堪能した後で、紡が琴を持ち出す。触るのは久しぶりだが、指が覚えているのだろう。心に染み入るような音が広がっていく。静かに、決して早いわけではない琴の調べ。それは春の陽気を表現するかのように。
「今日は精一杯 陰気を消させてもらうね」
その曲に合わせて彩吹が舞う。日本刀を抜き、円を描くように足を動かしてゆるりと踊る。戦闘の時のような素早い動きではないが、それは確かに刀舞。桜と共にくるりくるりと。
「ふむ。では付き合おう」
彩吹の刀舞に合わせるように行成が薙刀を手にして舞う。薙刀が振るわれるたびに、暖かい風がふわりと舞う。それは桜の花弁を舞い上がらせて、小さな桜吹雪を生み出した。
「ふふ。お疲れさま。さあ、お菓子をどうぞ」
一曲終えた紡と、舞った彩吹と行成にお菓子を振舞う。特製のイチゴ大福を皆に配り、そして桜の古妖を見た。薄紅色の花を咲かせる古妖。千年も春を告げ続けた存在。来年もここに来れるといいな、と静かに願った。
【四葩】の賑わいは続いていく。
●
「ときちか、こっち!」
「登っていいんですか? 相手は土地神ですよ! その、失礼します……」
ジャック(CL2001403) と千陽(CL2000014)は古妖の桜の枝を昇っていた。ジャックは特に気にしたつもりもなく、 千陽は古妖に謝罪しながら登っていた。
「お叱りは後で受けるから!」
「受けるつもりないでしょう。貴方は」
「いいからいいから。見ろよこの風景!」
桜の木の上から見下ろすジャック。眼下には桜色の花弁が舞い、それが風に乗って踊っている光景が見えた。まるで桜の大地を歩いているような錯覚すら覚える。
「これは……確かに壮観ですね」
「これだけ大きな桜なんだから見上げただけの風景じゃもったいない! 翼人なら飛んでもいいんだろうけど!」
枝に座り、千陽に笑いかけるジャック。ここまでの光景は予想していなかったが、昇ってきてよかったと思う。
「なあ櫻老。俺に桜の花を少しだけ分けて欲しいんよ」
ジャックは桜の古妖に語りかける。その様子を千陽は黙って見ていた。古妖からすれば『体の一部をよこせ』と言っているようなものだが、その真摯さをみて言葉を止めた。
「言葉にできないほどヒトを好きになったんだ。想いを伝えればきっと強くなれる」
だからその為に桜が欲しい。たとえ思いを伝えた結果、仲が壊れようとも構わない。
「櫻老、自分からもお願いします。少しで構いませんので」
千陽はジャックの想い人を察し、懇願する。何処かふざけているように見えるジャックだが、その心は純粋だ。その想いを伝えるきっかけになるのなら、何度でも頭を下げよう。
二人の願いを聞き遂げたのか、それとも偶然か。
桜の枝が手折れ、ジャックと千陽の胸ポケットに収まった。
「中学校進学おめでとうな」
「ありがとうなんだぞ! お姉さんになったんだぞ!」
凜音(CL2000495)はこの春から中学生になった椿花(CL2000059)に祝いの言葉を送った。頷き笑みを浮かべる椿花を見て、まだまだ子供だよなぁと心の中で思う凜音。
シーツを広げ、桜の木を見ながら桜餅を食べる二人。作ったのは凜音だ。
「二種類あるんだぞ! 餡子を包んだのと餅米っぽいのと!」
「関東風と関西風だ。試しに作ってみた」
桜餅は関東と関西で違う。関東の桜餅が小麦粉の生地で餡子を包んだ菓子で、関西の桜餅はもち米を使ったものだ。塩漬けした桜の葉は同じだが、食感も味も別物である。
「ああ、そうだ。これ進学祝い」
「……ピアス?」
「耳に貼るタイプのピアスな。穴開ける必要もないし、重さもないから」
「こんなのもあるんだー……。ありがとう! 流石凜音ちゃん、オシャレなんだぞ!」
喜ぶ椿花。今まではぬいぐるみのような子供にあげる物が多かったが、年相応のプレゼントをという事で選んだピアス。凜音はピアスをつけた椿花を想像し、悪くないかなと頷く。
「あ! 凜音ちゃん、寝転がって桜見たくない? 椿花、膝枕するんだぞ!」
「あー……。俺はそういうのは……」
膝を叩き凜音を呼ぶ椿花。断ろうと手を振るが、みるみる内にしょぼんとする椿花を見て、凜音は頭を掻いた。断わる言葉がこれ以上出そうにない。
「わかった。重たくなったらすぐに言うんだぞ?」
「うん、椿花頑張って膝枕するんだぞ!」
椿花の膝に頭を預ける凜音。その頭を椿花は優しく撫でる。
温かな風が二人を祝福するように桜吹雪を舞わせた。
「桜の古妖って普通のお弁当とか食べるのかな? 肥料とかじゃなくて」
「そうね。それを含めて聞いてみるのもいいかもしれないわ」
結鹿(CL2000432)と御菓子(CL2000429)は桜の木の下で弁当を広げていた、作ったのは結鹿だ。御菓子に言われて古妖の分まで作るように言われたのだが、さて木の古妖が人間の食事を食べるかどうか。
結果としては『口』に相応する器官がないため、お供えの形となった。ここを訪れる動物達が食べるか、肥料となるか。どちらにせよ無駄にはならないとの事である。
「流石結鹿ちゃん。美味しいわ」
「えへへー。頑張って作りました」
朝早く起きて作ったお弁当。花見という事でハムを多く使って桜を表現してみた。色彩鮮やかな弁当は食欲を増幅させる。食べる時の笑顔を想像して作ったお弁当は、想像以上の笑顔を引き出してくれる。
「花見って『花を見る』以上の意味があるのよ」
桜吹雪を見上げながら御菓子が口を開く。桜は春の訪れを告げる花。新しい季節を祝うと同時に、新たな期の始まりを祝う祭り。心機一転、新たな旅立ち。そういった意味を持っているのだ。
「桜は短い時期に一斉に咲くから、それだけ強いエネルギーを持っているのかもしれないわね」
桜は陰の気を放つ。過剰なエネルギーが影響するだけで、陽も陰も同じこと。用はバランスなのだ。だから、
「感謝するわ。『櫻老』さん。綺麗な花を咲かせてくれて」
桜の古妖に感謝を告げる御菓子。そして結鹿の作った卵焼きを口に運び、舌つつみを打った。
●
「綺麗……」
「うん。すごくきれい」
桜を見上げてミュエル(CL2000172)と羽琉(CL2001381)がため息をつく。静かな山の中に咲く大きな桜の木。それが咲かす幽玄ともいえる花の舞に心を奪われていた。
「のんびり……するのもいいかも、ね」
レジャーシートを広げ、腰かける二人。最も、羽琉が心奪われているのは桜だけではなかった。目の前に広がるミュエルが作ってきたお弁当。
(手作りのお弁当とか、期待で落ち着いていられないですよ)
手まり寿司風のおにぎりと玉子焼き。そして珍しい者としては、
「茄子?」
「ママ直伝の、茄子のラタトゥイユ風……。
フランスから日本に来たばかりで、故郷の料理が恋しかったパパのために、地元のもので工夫して作ったメニュー……だよ」
ラタトゥイユ。フランス南部の煮込み料理である。オリーブオイルとトマト、ミュエルの作った物には隠し味に味噌を入れている。
「フランス……お父さん……あぁ、それで」
ミュエルの髪の色を見て、納得する羽琉。
「ミュエルさんの気配りは、お母さんゆずりなんですね」
「……そう、かも」
言って微笑むミュエル。家族のことを褒められた事もあるが、外国人であることを奇異に思われなかったことは、素直に嬉しい。
「はい……。あーん」
(!? こ、これは……!)
得意の玉子焼きを箸でつまみ、羽琉の口に近づけてくるミュエル。その自然な動きに、ゆっくりと口を開ける。
甘い味は玉子焼きの絶品さゆえか、この空気故か。今まで食べた玉子焼きの中で、最もおいしかった。
「静かね」
「ああ、春だからな」
春風に身を委ねて微笑む悠乃(CL2000231)。両慈(CL2000603)も同じように温かな風に包まれ、頷いた。
二人の前にはお茶やお酒や料理が並んでいた。作ったのは悠乃だ。この日のために腕によりをかけて作ってきたのだ。
だが両慈の顔には喜びの色がない。確かに自分のために作ってきてくれたことは嬉しいが、それ以上に疲労がたまっていた。
「……ああ、すまない。昨夜は調べ物をしていて眠れてなくてな……少し意識が飛んでいたらしい」
頭を振りながら眠気を払う両慈。睡眠不足が影響しているのか、顔に疲れが出ていた。
「お疲れですか……では、こちらへどうぞ」
言って悠乃は正座し、笑顔で自分の太ももを叩く。
「何? 膝を貸して、くれるのか?」
答えはない。ただ悠乃は笑顔のまま待っている。その笑顔に安堵するように両慈は頭を悠乃の膝に預け、上を見るように寝転がった。
「折角ですもの、桜を見ながらお休みになってくださいな。何でしたら、歌もつけちゃいますか?」
「いや……歌はいい」
こちらを見下ろす悠乃の顔。後頭部に感じる安宅カウ、そして柔らかい膝の感触。それを感じながら両慈は答える。
こうして見上げる桜も悪くないが、それよりも悠乃の顔を見ていた。温かな桜舞う風に微笑む彼女を見るだけで、心が落ち着いてくる。いつしか睡魔に身を委ね、両慈は眠りにつく。
悠乃はそんな両慈の寝顔をじっと見ていた。春風よりも暖かく、和やかな心で。
「我儘にお付き合いくださって、ありがとうございます」
「燐ちゃんのお願いだからね。喜んでご一緒させてもらうよ」
燐花(CL2000695)と恭司(CL2001015) は並んで桜を見ていた。青空と桜。題名をつけるならそんな光景。恭司は仕事柄そんなことを考えていた。抜けるような青空と桜。余計な手を加えずにこの光景を切り取る。悪くない、と頷いた。
静かに桜を見る二人。胸に手を当てて、深呼吸をした後に燐花が口を開く。
「一緒に、写真を撮ってくださいませんか?」
「……?」
「今まで蘇我島さんに何枚も写真を撮って頂いたり、練習ということで逆に被写体になって頂いたりしましたが。一緒に撮った写真は、ないのです」
真剣な瞳で燐花が言葉を紡ぐ。恭司はそういう事か、と納得して頷いた。
「そうか、今まで僕か燐ちゃんがカメラを持ってたから、一緒に撮った事はなかったんだねぇ」
盲点だった、と頭を掻いて近くにいた人にカメラを渡す。恭二は少しかがんで燐花と高さを合わせ、燐花の肩を抱く。その手を意識しながら燐花は上手く笑おうとする。
パシャ!
シャッター音が鳴る。この時、この場所、この二人。それを切り取った写真。時が流れても、この写真があればこの日この場所この二人を思い出すことが出来るだろう。
「ありがとうございます。大事にお部屋に飾らせて頂きますね」
「良い写真を撮ってもらえたねぇ」
二人は写真を大事にしまい込み、散り行く桜を見る。たとえこの桜が散っても、写真の中ではまだ桜は咲いている。
●
「櫻老さん、少しお話していってもいいですか?」
ラーラ(CL2001080)は守護使役のベスカと共に桜の古妖の元にやってくる。花見自体は嫌いではないが、騒がしいのは苦手とばかりにため息をつく。最初は静かに眺めていたのだが、頭の中で言いたいことを整理して口を開く。
「桜が陰気を放ってしまう……というのはあるのかもしれません。ですが気にすることはないと思います」
『ほう? どうしてかね?』
「ピンクのお花は暖色、きっと陽の色だって思うんです。こんな風に暖かい色のお花だからこそ、みんな楽しくお祭できるんですよ」
ラーラは西方の魔女だ。その知識に従えば、桜の色は明るく祭りを賑わす色になる。それを咲かせることが悪いはずがない。そう励ました。
『ふふ。ありがとうな、お嬢さん。アンタも楽しんでいってくれ』
聞こえてくる思念の声。その声にラーラは笑顔を浮かべた。
「ワシも混ぜとくれ。なに、たわいもない話じゃ」
樹香(CL2000141) も櫻老に近づき、その幹に触れる。因子発現した時のことを思い出しながら、木に語りかけるように意識を集中した。
「千年桜よ、ワシは檜山樹香じゃよ。お前様がどんな世界を見て、どんな人間を見てきたのか、興味があるのぅ」
『この山の風景と動物達。時折訪れる人間、それでよければ聞かせてやるぞ』
櫻老が語るのは、とりとめのない山の話だ。動かない桜の木は、旅をすることがない。移り変わる山の風景。動物達や植物。一番変化があるのは人間達。時代と共に服装も変わり、そして祭りのやり方も変わる。
「でも酌み交わしてみたいものじゃが、まだワシは酒は飲めぬ。またいずれ来るその時には、付き合ってほしいのぅ」
『うむ。その時が来たら付き合おう』
それは平和な春に結ばれた、確かな約束だった。
そして祭りは終わり、帰路につく覚者達。
ふと見返れば、満月に照らされる櫻老の姿。
その姿が覚者達に感謝するように見えたのは錯覚だろうか。
春風が、静かに桜を舞わした――
「五臓六腑に染み渡るね」
義高(CL2001151) は胃に広がる熱い感覚に息を吐く。目の前には薄紅色の花びら。頬を撫でる風は暖かく、遠くを見渡せば美しい山々の風景。まさに絶好の花見日和だ。今日と言う日を逃せば、次はいつこの光景を見ることが出来るのか。
花見は日本の文化だ。海外では飲食禁止の区域もある。酒を吞む者としては悲しい話だ。フキノトウやたらのめ、菜の花など苦みのある食材を酢漬けにしたつまみを口にする。春の光景に春の味。これこそ格別だ。酒が進み、気分が高揚してくる。
「いい酒にいいツマミにいい桜。これが日本の文化だぜ」
「榊原の爺さんも来るかと思ったんだがなぁ」
残念そうに逝(CL2000156)が呟く。酒飲みの爺さんならこういうイベントはやってくると思ったのだが、用事が入ったらしい。まあそれでも構わないと桜の枝に乗って酒を飲む。眼下で祭りに興じる若者たちがいい肴だ。
普段しているフルフェイスは流石に外してある。その為春風が心地良い。さて、花見など何年振りやら。ふと御猪口を見ると、風に舞った桜の花弁が盃に浮かんでいた。
「瘴気が無ければ調子も悪くなるし、一つ陰気とやらを酒と一緒に頂くとしよう」
これまた風流と、一気に酒をあおる逝。アルコールの為か、春の陽気か。死んだような目だがその声は弾んでいた。
●
春風に舞う白藤柄の紬姿。黄色の帯と巾着。
そして色鮮やかな落雁と桜の干琥珀。
茶をかき回す音は静かに。そして優雅に差し出される。
「どうぞ」
紡(CL2000623)が声をかければ、他の澄香(CL2000194)、彩吹(CL2001525) 、行成(CL2000352)は一礼した後にお茶に口をつける。
「そんなに気を張らなくてもいいよ。野点は決まった形がないし」
【四葩】の提案者である紡はにこりと微笑み硬くなっている参加者に告げる。野点は茶会と言うよりは催しに近い。この風景と共にお茶を楽しもうというのが趣旨だ。
「ふふ、頑張って作っちゃいましたよ」
白い花びらを散らした薄紅色の着物を着た澄香が、作ってきた練りきりやきんとんを用意する。灰色の髪の毛を桜の髪飾りで止めた姿は着物とマッチしており、その動きも着物を着慣れていることを感じさせる。
「これで和風っぽいかな?」
伸ばした黒髪をおろし、着物を着た彩吹。自分ではガサツと思っている彩吹だが、場に合わせようという気づかいを怠っているわけではない。付け焼刃に思える格好だが、すらりと伸びた黒髪と着物は桜舞う山に映えていた。
「お誘いありがとう。花見に茶と菓子というのは最高の組み合わせだ」
守護使役の『もちまる』と共に野点に参加した行成が、紡に礼を言う。花弁舞う春の陽気の元、点てられたお茶と美味しい御菓子。『もちまる』が桜の花弁を頭にのせて、うとうととしていた。のどかな風景に顔はほころぶ行成。
「それじゃあ一曲」
和菓子を堪能した後で、紡が琴を持ち出す。触るのは久しぶりだが、指が覚えているのだろう。心に染み入るような音が広がっていく。静かに、決して早いわけではない琴の調べ。それは春の陽気を表現するかのように。
「今日は精一杯 陰気を消させてもらうね」
その曲に合わせて彩吹が舞う。日本刀を抜き、円を描くように足を動かしてゆるりと踊る。戦闘の時のような素早い動きではないが、それは確かに刀舞。桜と共にくるりくるりと。
「ふむ。では付き合おう」
彩吹の刀舞に合わせるように行成が薙刀を手にして舞う。薙刀が振るわれるたびに、暖かい風がふわりと舞う。それは桜の花弁を舞い上がらせて、小さな桜吹雪を生み出した。
「ふふ。お疲れさま。さあ、お菓子をどうぞ」
一曲終えた紡と、舞った彩吹と行成にお菓子を振舞う。特製のイチゴ大福を皆に配り、そして桜の古妖を見た。薄紅色の花を咲かせる古妖。千年も春を告げ続けた存在。来年もここに来れるといいな、と静かに願った。
【四葩】の賑わいは続いていく。
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「ときちか、こっち!」
「登っていいんですか? 相手は土地神ですよ! その、失礼します……」
ジャック(CL2001403) と千陽(CL2000014)は古妖の桜の枝を昇っていた。ジャックは特に気にしたつもりもなく、 千陽は古妖に謝罪しながら登っていた。
「お叱りは後で受けるから!」
「受けるつもりないでしょう。貴方は」
「いいからいいから。見ろよこの風景!」
桜の木の上から見下ろすジャック。眼下には桜色の花弁が舞い、それが風に乗って踊っている光景が見えた。まるで桜の大地を歩いているような錯覚すら覚える。
「これは……確かに壮観ですね」
「これだけ大きな桜なんだから見上げただけの風景じゃもったいない! 翼人なら飛んでもいいんだろうけど!」
枝に座り、千陽に笑いかけるジャック。ここまでの光景は予想していなかったが、昇ってきてよかったと思う。
「なあ櫻老。俺に桜の花を少しだけ分けて欲しいんよ」
ジャックは桜の古妖に語りかける。その様子を千陽は黙って見ていた。古妖からすれば『体の一部をよこせ』と言っているようなものだが、その真摯さをみて言葉を止めた。
「言葉にできないほどヒトを好きになったんだ。想いを伝えればきっと強くなれる」
だからその為に桜が欲しい。たとえ思いを伝えた結果、仲が壊れようとも構わない。
「櫻老、自分からもお願いします。少しで構いませんので」
千陽はジャックの想い人を察し、懇願する。何処かふざけているように見えるジャックだが、その心は純粋だ。その想いを伝えるきっかけになるのなら、何度でも頭を下げよう。
二人の願いを聞き遂げたのか、それとも偶然か。
桜の枝が手折れ、ジャックと千陽の胸ポケットに収まった。
「中学校進学おめでとうな」
「ありがとうなんだぞ! お姉さんになったんだぞ!」
凜音(CL2000495)はこの春から中学生になった椿花(CL2000059)に祝いの言葉を送った。頷き笑みを浮かべる椿花を見て、まだまだ子供だよなぁと心の中で思う凜音。
シーツを広げ、桜の木を見ながら桜餅を食べる二人。作ったのは凜音だ。
「二種類あるんだぞ! 餡子を包んだのと餅米っぽいのと!」
「関東風と関西風だ。試しに作ってみた」
桜餅は関東と関西で違う。関東の桜餅が小麦粉の生地で餡子を包んだ菓子で、関西の桜餅はもち米を使ったものだ。塩漬けした桜の葉は同じだが、食感も味も別物である。
「ああ、そうだ。これ進学祝い」
「……ピアス?」
「耳に貼るタイプのピアスな。穴開ける必要もないし、重さもないから」
「こんなのもあるんだー……。ありがとう! 流石凜音ちゃん、オシャレなんだぞ!」
喜ぶ椿花。今まではぬいぐるみのような子供にあげる物が多かったが、年相応のプレゼントをという事で選んだピアス。凜音はピアスをつけた椿花を想像し、悪くないかなと頷く。
「あ! 凜音ちゃん、寝転がって桜見たくない? 椿花、膝枕するんだぞ!」
「あー……。俺はそういうのは……」
膝を叩き凜音を呼ぶ椿花。断ろうと手を振るが、みるみる内にしょぼんとする椿花を見て、凜音は頭を掻いた。断わる言葉がこれ以上出そうにない。
「わかった。重たくなったらすぐに言うんだぞ?」
「うん、椿花頑張って膝枕するんだぞ!」
椿花の膝に頭を預ける凜音。その頭を椿花は優しく撫でる。
温かな風が二人を祝福するように桜吹雪を舞わせた。
「桜の古妖って普通のお弁当とか食べるのかな? 肥料とかじゃなくて」
「そうね。それを含めて聞いてみるのもいいかもしれないわ」
結鹿(CL2000432)と御菓子(CL2000429)は桜の木の下で弁当を広げていた、作ったのは結鹿だ。御菓子に言われて古妖の分まで作るように言われたのだが、さて木の古妖が人間の食事を食べるかどうか。
結果としては『口』に相応する器官がないため、お供えの形となった。ここを訪れる動物達が食べるか、肥料となるか。どちらにせよ無駄にはならないとの事である。
「流石結鹿ちゃん。美味しいわ」
「えへへー。頑張って作りました」
朝早く起きて作ったお弁当。花見という事でハムを多く使って桜を表現してみた。色彩鮮やかな弁当は食欲を増幅させる。食べる時の笑顔を想像して作ったお弁当は、想像以上の笑顔を引き出してくれる。
「花見って『花を見る』以上の意味があるのよ」
桜吹雪を見上げながら御菓子が口を開く。桜は春の訪れを告げる花。新しい季節を祝うと同時に、新たな期の始まりを祝う祭り。心機一転、新たな旅立ち。そういった意味を持っているのだ。
「桜は短い時期に一斉に咲くから、それだけ強いエネルギーを持っているのかもしれないわね」
桜は陰の気を放つ。過剰なエネルギーが影響するだけで、陽も陰も同じこと。用はバランスなのだ。だから、
「感謝するわ。『櫻老』さん。綺麗な花を咲かせてくれて」
桜の古妖に感謝を告げる御菓子。そして結鹿の作った卵焼きを口に運び、舌つつみを打った。
●
「綺麗……」
「うん。すごくきれい」
桜を見上げてミュエル(CL2000172)と羽琉(CL2001381)がため息をつく。静かな山の中に咲く大きな桜の木。それが咲かす幽玄ともいえる花の舞に心を奪われていた。
「のんびり……するのもいいかも、ね」
レジャーシートを広げ、腰かける二人。最も、羽琉が心奪われているのは桜だけではなかった。目の前に広がるミュエルが作ってきたお弁当。
(手作りのお弁当とか、期待で落ち着いていられないですよ)
手まり寿司風のおにぎりと玉子焼き。そして珍しい者としては、
「茄子?」
「ママ直伝の、茄子のラタトゥイユ風……。
フランスから日本に来たばかりで、故郷の料理が恋しかったパパのために、地元のもので工夫して作ったメニュー……だよ」
ラタトゥイユ。フランス南部の煮込み料理である。オリーブオイルとトマト、ミュエルの作った物には隠し味に味噌を入れている。
「フランス……お父さん……あぁ、それで」
ミュエルの髪の色を見て、納得する羽琉。
「ミュエルさんの気配りは、お母さんゆずりなんですね」
「……そう、かも」
言って微笑むミュエル。家族のことを褒められた事もあるが、外国人であることを奇異に思われなかったことは、素直に嬉しい。
「はい……。あーん」
(!? こ、これは……!)
得意の玉子焼きを箸でつまみ、羽琉の口に近づけてくるミュエル。その自然な動きに、ゆっくりと口を開ける。
甘い味は玉子焼きの絶品さゆえか、この空気故か。今まで食べた玉子焼きの中で、最もおいしかった。
「静かね」
「ああ、春だからな」
春風に身を委ねて微笑む悠乃(CL2000231)。両慈(CL2000603)も同じように温かな風に包まれ、頷いた。
二人の前にはお茶やお酒や料理が並んでいた。作ったのは悠乃だ。この日のために腕によりをかけて作ってきたのだ。
だが両慈の顔には喜びの色がない。確かに自分のために作ってきてくれたことは嬉しいが、それ以上に疲労がたまっていた。
「……ああ、すまない。昨夜は調べ物をしていて眠れてなくてな……少し意識が飛んでいたらしい」
頭を振りながら眠気を払う両慈。睡眠不足が影響しているのか、顔に疲れが出ていた。
「お疲れですか……では、こちらへどうぞ」
言って悠乃は正座し、笑顔で自分の太ももを叩く。
「何? 膝を貸して、くれるのか?」
答えはない。ただ悠乃は笑顔のまま待っている。その笑顔に安堵するように両慈は頭を悠乃の膝に預け、上を見るように寝転がった。
「折角ですもの、桜を見ながらお休みになってくださいな。何でしたら、歌もつけちゃいますか?」
「いや……歌はいい」
こちらを見下ろす悠乃の顔。後頭部に感じる安宅カウ、そして柔らかい膝の感触。それを感じながら両慈は答える。
こうして見上げる桜も悪くないが、それよりも悠乃の顔を見ていた。温かな桜舞う風に微笑む彼女を見るだけで、心が落ち着いてくる。いつしか睡魔に身を委ね、両慈は眠りにつく。
悠乃はそんな両慈の寝顔をじっと見ていた。春風よりも暖かく、和やかな心で。
「我儘にお付き合いくださって、ありがとうございます」
「燐ちゃんのお願いだからね。喜んでご一緒させてもらうよ」
燐花(CL2000695)と恭司(CL2001015) は並んで桜を見ていた。青空と桜。題名をつけるならそんな光景。恭司は仕事柄そんなことを考えていた。抜けるような青空と桜。余計な手を加えずにこの光景を切り取る。悪くない、と頷いた。
静かに桜を見る二人。胸に手を当てて、深呼吸をした後に燐花が口を開く。
「一緒に、写真を撮ってくださいませんか?」
「……?」
「今まで蘇我島さんに何枚も写真を撮って頂いたり、練習ということで逆に被写体になって頂いたりしましたが。一緒に撮った写真は、ないのです」
真剣な瞳で燐花が言葉を紡ぐ。恭司はそういう事か、と納得して頷いた。
「そうか、今まで僕か燐ちゃんがカメラを持ってたから、一緒に撮った事はなかったんだねぇ」
盲点だった、と頭を掻いて近くにいた人にカメラを渡す。恭二は少しかがんで燐花と高さを合わせ、燐花の肩を抱く。その手を意識しながら燐花は上手く笑おうとする。
パシャ!
シャッター音が鳴る。この時、この場所、この二人。それを切り取った写真。時が流れても、この写真があればこの日この場所この二人を思い出すことが出来るだろう。
「ありがとうございます。大事にお部屋に飾らせて頂きますね」
「良い写真を撮ってもらえたねぇ」
二人は写真を大事にしまい込み、散り行く桜を見る。たとえこの桜が散っても、写真の中ではまだ桜は咲いている。
●
「櫻老さん、少しお話していってもいいですか?」
ラーラ(CL2001080)は守護使役のベスカと共に桜の古妖の元にやってくる。花見自体は嫌いではないが、騒がしいのは苦手とばかりにため息をつく。最初は静かに眺めていたのだが、頭の中で言いたいことを整理して口を開く。
「桜が陰気を放ってしまう……というのはあるのかもしれません。ですが気にすることはないと思います」
『ほう? どうしてかね?』
「ピンクのお花は暖色、きっと陽の色だって思うんです。こんな風に暖かい色のお花だからこそ、みんな楽しくお祭できるんですよ」
ラーラは西方の魔女だ。その知識に従えば、桜の色は明るく祭りを賑わす色になる。それを咲かせることが悪いはずがない。そう励ました。
『ふふ。ありがとうな、お嬢さん。アンタも楽しんでいってくれ』
聞こえてくる思念の声。その声にラーラは笑顔を浮かべた。
「ワシも混ぜとくれ。なに、たわいもない話じゃ」
樹香(CL2000141) も櫻老に近づき、その幹に触れる。因子発現した時のことを思い出しながら、木に語りかけるように意識を集中した。
「千年桜よ、ワシは檜山樹香じゃよ。お前様がどんな世界を見て、どんな人間を見てきたのか、興味があるのぅ」
『この山の風景と動物達。時折訪れる人間、それでよければ聞かせてやるぞ』
櫻老が語るのは、とりとめのない山の話だ。動かない桜の木は、旅をすることがない。移り変わる山の風景。動物達や植物。一番変化があるのは人間達。時代と共に服装も変わり、そして祭りのやり方も変わる。
「でも酌み交わしてみたいものじゃが、まだワシは酒は飲めぬ。またいずれ来るその時には、付き合ってほしいのぅ」
『うむ。その時が来たら付き合おう』
それは平和な春に結ばれた、確かな約束だった。
そして祭りは終わり、帰路につく覚者達。
ふと見返れば、満月に照らされる櫻老の姿。
その姿が覚者達に感謝するように見えたのは錯覚だろうか。
春風が、静かに桜を舞わした――
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
『桜の花弁』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)
『桜の花弁』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:華神 悠乃(CL2000231)
『桜の花弁』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:宮神 羽琉(CL2001381)
『桜の花弁』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:明石 ミュエル(CL2000172)
『桜の花弁』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:天明 両慈(CL2000603)
『ピアス』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:神楽坂 椿花(CL2000059)
『桜の花弁』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:香月 凜音(CL2000495)
『桜の花弁』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:田場 義高(CL2001151)
『桜の花弁』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:檜山 樹香(CL2000141)
『桜の花弁』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:向日葵 御菓子(CL2000429)
『桜の花弁』
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取得者:菊坂 結鹿(CL2000432)
『桜の花弁』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:麻弓 紡(CL2000623)
『桜の花弁』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:天野 澄香(CL2000194)
『桜の花弁』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:如月・彩吹(CL2001525)
『桜の枝』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:切裂 ジャック(CL2001403)
『桜の枝』
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取得者:時任・千陽(CL2000014)
『桜の花弁』
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取得者:志賀 行成(CL2000352)
『二人の写真』
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取得者:柳 燐花(CL2000695)
『二人の写真』
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取得者:蘇我島 恭司(CL2001015)
『桜の花弁』
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取得者:緒形 逝(CL2000156)
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取得者:ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)
『桜の花弁』
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取得者:天明 両慈(CL2000603)
『ピアス』
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『桜の花弁』
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取得者:天野 澄香(CL2000194)
『桜の花弁』
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『桜の枝』
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取得者:切裂 ジャック(CL2001403)
『桜の枝』
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『桜の花弁』
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取得者:志賀 行成(CL2000352)
『二人の写真』
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『二人の写真』
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取得者:蘇我島 恭司(CL2001015)
『桜の花弁』
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取得者:緒形 逝(CL2000156)

■あとがき■
このリプレイが出るころには、桜もほぼ散っているでしょう。
桜が散り、時がすぎる。そしてまた春が来る。
同じ仲間と過ごす春ではないかもしれませんが、また来るであろう春にむけて桜は花を咲かせます。
お花見にお付き合いいただきありがとうございました。
それではまた、五麟市で。
桜が散り、時がすぎる。そしてまた春が来る。
同じ仲間と過ごす春ではないかもしれませんが、また来るであろう春にむけて桜は花を咲かせます。
お花見にお付き合いいただきありがとうございました。
それではまた、五麟市で。
