燃える遺跡にちらつく影
●工事現場跡に侵入者……?
奈良県のとある遺跡。
それは、某市の町外れにおいて、ボーリング調査を行っていた際に発見された。
きっかけはボーリングマシンから突然炎が湧き出て、工事現場で働いていた男性達が焼死した事件。この原因は、地中から現れた炎の塊のような妖であったという。
妖が出現するとあって、この場所の土地計画……商業施設が建設予定だったらしいが、白紙に戻された。
これにより、考古学者達は炎が噴き出すその場所に興味を抱き、調査を考えるのだが、妖を倒さねば始まらない。考古学者はほとんどが非覚者。この為、F.i.V.E.に妖討伐依頼が舞い込んだのだ。
会議室へとやってきたF.i.V.E.の覚者達。
「すまぬの、今回は遺跡調査と妖討伐依頼を願いたいのじゃ」
商業施設予定地の地下で見つかった遺跡の突入が今回の依頼だと、『薄幸の男の娘』菜花・けい(nCL2000118)が覚者達へと話す。
先の覚者の討伐依頼の後、考古学者達はボーリングで開けた穴にはしごを取り付けて、遺跡の突入を図った。しかし……。
「現状、炎が消えたのは、遺跡の突入口のみのようじゃ」
前回妖を倒したことでほんの少しだけではあるが、炎の勢いは弱まったようにも思える。しかしながら、調査を始めようと遺跡に降りた考古学者達の前に、妖が現れたという。
現れる妖は火の玉の姿をしている。詳しい能力は資料を参考願いたいが、顔が浮かぶ火の玉がやや手強い相手のようだ。
「上手く今回現れる火の玉の妖を倒せば、南北に伸びる通路の探索はできるかもしれんのじゃが……」
そこで、けいは別の懸念を口にする。
「前回、皆が妖を倒した後、怪しげな影が工事現場に出入りしていたようでの」
考古学者の調査の合間を見て、何者かが侵入した形跡がある。
状況から見て、おそらく侵入者は1人。ただ、現場の見張りがあっさり殺害されたところから見ても、相当な手練と見られる。
「うちが視たところ……、『濃霧』霧山・譲と思われるのじゃ」
けいの夢見の情報によれば、現場で何かを見回していた侵入者は、視線に気づいて見張りへと飛苦無を飛ばし、一撃で命を奪ってしまったらしい。
残念ながら、見張りの命を救うことはもう出来ないが、その腕から見ても霧山に間違いはなさそうだ。
「任務は妖討伐がメインじゃから、霧山への接触は程々にすべきじゃな」
彼の狙いが何なのかは分からない。ただ、目的はあくまでも妖の討伐。そう考えれば、彼とは交戦を控えるべきだろうが……。
「霧山に関しては、皆に一任するでの。ともあれ、遺跡調査進行の為にも、妖討伐の方をよろしく頼むのじゃ」
状況を前に進められるように。けいは改めて、覚者達へと願うのだった。
奈良県のとある遺跡。
それは、某市の町外れにおいて、ボーリング調査を行っていた際に発見された。
きっかけはボーリングマシンから突然炎が湧き出て、工事現場で働いていた男性達が焼死した事件。この原因は、地中から現れた炎の塊のような妖であったという。
妖が出現するとあって、この場所の土地計画……商業施設が建設予定だったらしいが、白紙に戻された。
これにより、考古学者達は炎が噴き出すその場所に興味を抱き、調査を考えるのだが、妖を倒さねば始まらない。考古学者はほとんどが非覚者。この為、F.i.V.E.に妖討伐依頼が舞い込んだのだ。
会議室へとやってきたF.i.V.E.の覚者達。
「すまぬの、今回は遺跡調査と妖討伐依頼を願いたいのじゃ」
商業施設予定地の地下で見つかった遺跡の突入が今回の依頼だと、『薄幸の男の娘』菜花・けい(nCL2000118)が覚者達へと話す。
先の覚者の討伐依頼の後、考古学者達はボーリングで開けた穴にはしごを取り付けて、遺跡の突入を図った。しかし……。
「現状、炎が消えたのは、遺跡の突入口のみのようじゃ」
前回妖を倒したことでほんの少しだけではあるが、炎の勢いは弱まったようにも思える。しかしながら、調査を始めようと遺跡に降りた考古学者達の前に、妖が現れたという。
現れる妖は火の玉の姿をしている。詳しい能力は資料を参考願いたいが、顔が浮かぶ火の玉がやや手強い相手のようだ。
「上手く今回現れる火の玉の妖を倒せば、南北に伸びる通路の探索はできるかもしれんのじゃが……」
そこで、けいは別の懸念を口にする。
「前回、皆が妖を倒した後、怪しげな影が工事現場に出入りしていたようでの」
考古学者の調査の合間を見て、何者かが侵入した形跡がある。
状況から見て、おそらく侵入者は1人。ただ、現場の見張りがあっさり殺害されたところから見ても、相当な手練と見られる。
「うちが視たところ……、『濃霧』霧山・譲と思われるのじゃ」
けいの夢見の情報によれば、現場で何かを見回していた侵入者は、視線に気づいて見張りへと飛苦無を飛ばし、一撃で命を奪ってしまったらしい。
残念ながら、見張りの命を救うことはもう出来ないが、その腕から見ても霧山に間違いはなさそうだ。
「任務は妖討伐がメインじゃから、霧山への接触は程々にすべきじゃな」
彼の狙いが何なのかは分からない。ただ、目的はあくまでも妖の討伐。そう考えれば、彼とは交戦を控えるべきだろうが……。
「霧山に関しては、皆に一任するでの。ともあれ、遺跡調査進行の為にも、妖討伐の方をよろしく頼むのじゃ」
状況を前に進められるように。けいは改めて、覚者達へと願うのだった。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.妖の討伐。
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
どこかでお会いしたことのある方もこんにちは。なちゅいです。
遺跡の調査を行う為、
更なる妖を討伐したいという状況に
水を差す侵入者が……。
こちらは、遺跡関連シナリオですが、
どなた様でも参加できますよう
シリーズシナリオとはなっておりませんので、
予めご了承願います。
●敵
○霧山・譲(nCL2000146) ……七星剣幹部『濃霧』です。
暦の因子、天行。鋭聴力、面接着を所持。
持っている飛苦無には、麻痺効果のある液体が塗られています。
以下のスキルをメイン使うことが確認されていますが、
それ以外にも体術、術式を使う可能性があります。
・鎧通し……体術中級・物近単貫2(50・100%)
重厚な鎧をも貫通する練り上げた気を両手から発出します。
・脣星落霜……天行二式スキル・特遠敵全
星のように輝く光の粒を降らし、敵を攻撃します。
・霧隠れ……体術・特近列・流血
濃い霧を噴射して自身と近場の敵を包み込み、
連続して苦無で切りかかってきます。
覚者達が工事現場にやってきたタイミングで、霧山は出現します。
交戦に関してはケースバイケースですが、
交戦した際の負傷度合いは、遺跡内での戦いに引き継がれます。
○妖(自然系)
火の玉の形をした妖です。
いずれも、浮遊、火傷無効状態にあります。
※ランク2×3体
直径20センチ余りある大きさの火の玉で、人の顔が浮かんでおります。
・火柱……特近列・火傷
・炎上……特遠単・怒り
・かぶりつき……物遠単・HP吸収
※ランク1×4体
直径15センチ前後の火の玉で、こちらには顔はありません。
・火炎弾……特遠単・火傷
・体当たり……物遠単
なお、火傷と下記特別ルールのHP減少のダメージは重複します。
●状況
突入に当たっては、はしごが設置されています。
(飛行で効果も可能です)
穴の底は遺跡の天井を突き破る形となっており、
通路は覚者5人ほどであれば並べる幅があります。
突入したならば、前回突入した付近のみ、炎が消えています。
ボーリングで穴があいた範囲、
覚者が密集して集まる広さ(3人×3人)です。
敵に攻め入るなど、大きく布陣が動く場合は
下記ルールが適応されます。
●当シナリオ特別ルール
遺跡(炎上エリア)突入時は
1ターン(10秒)経過ごとにHPが10減少し、
戦闘以外でも回復することがありません。
今回は、縦穴の底の一定範囲外に出たところからカウントです。
また、今後の展開次第で
このルール適用除外エリアが広がる可能性があります。
それではよろしくお願いいたします。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
6日
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
8/8
公開日
2016年12月27日
2016年12月27日
■メイン参加者 8人■

●招かれざる客
遺跡への侵入口が開く工事現場跡。F.i.V.E.の覚者達はそこを目指して歩いていく。
「ボーリング調査をしなければ、妖が出てくることもなかったのかもしれねーな」
寝た子を起こしてしまったこの状況。棲家を脅かされたのならば申し訳ない限りだと、『慧眼の癒し手』香月 凜音(CL2000495)は呟く。
「調査はいいとして。厄介な奴がいるそうで」
ただ、『五行の橋渡し』四条・理央(CL2000070)などは未探索の遺跡の突入に、心を躍らせる。
「今回は招かれざる客もいるようだけど、キッチリ調査していこうか」
「招かれざる客ですか……」
『研究所職員』紅崎・誡女(CL2000750) はそれに難色を示す。探索の前に対処しておきたいところだが……。
それは、『霧の名の鬼を咎める者』エメレンツィア・フォン・フラウベルク(CL2000496)も同じらしい。
「楽しく遺跡探索したかったところなのに、どうしてこんなところにいるのかしら」
「七星剣幹部の霧山。めんどくさいのが出てきたかな」
現場に現れる相手に東雲 梛(CL2001410)も眉を顰めるが、それでも、七星剣幹部が出てくるくらいの何かがそこにはあるのだろうかと、エメレンツィアも梛も考える。
「……だとしたら、絶対に渡せないわね」
「前回進めなかった先に、今度は行きたいし出来れば戦闘はしたくないな」
それを聞いていた『二兎の救い手』秋津洲 いのり(CL2000268) 。彼女はこの遺跡を訪れるのは初めてだったが、やはり、他メンバーと同様に首を傾げている。
「何にせよ、碌な目的ではなさそうですけれど」
「霧山……誘拐事件の黒幕だよな。許せねーけど、今回はまず出方を見なきゃな」
相手は規格外の強さを持つ。別件の事件でも暗躍する霧山に対して『守人刀』獅子王 飛馬(CL2001466)は怒りを抑えながらも、仲間と共に工事現場跡へと踏み込むのである。
一行封鎖された入り口を開くと、そこには何者かが背を向けて立っていた。
「待ちなさい、ユズル!」
幾度か出会っていたエメレンツィアはその姿だけで相手が誰なのかを悟り、大声で呼び止める。
「F.i.V.E.……か」
その男……『濃霧』霧山・譲はゆっくりと振り返った。
「こんなところで出会うなんて、思いもしなかったわ」
彼に対してぶつけたい様々な思いが、そして、聞き出したい沢山の事がエメレンツィアにはあるのだが……。
「これは妙な所でお会いしますわね。会って早々申し訳御座いませんが、お引き取り願えませんか?」
いのりは霧山を見上げ、凛とした態度で告げる。
今回の覚者達の目的は遺跡の調査。この後を考えれば、彼を相手にするのは覚者としても避けたいところだ。
「あんたが七星剣の霧山? ここに調査に来たみたいだけど、1人ならやめた方が良いよ」
「ここはこれから、ボク等F.i.V.E.が調査予定だし、回れ右してそのまま退いてもらえると助かるよ」
梛、理央が言葉を続け、覚者側の事情と主張を簡単に告げる。
「俺らも敵と見れば見境なく斬りかかるようなことはしねーつもりなんだが、差し支えなければ教えてくんねーかな」
飛馬が続けて問いかける。やや皮肉めいた物言いなのは、すでに相手が見張りを倒しているからに他ならない。
また、タイミングを考えるに、霧山はしばしの間この場に留まっていたはずだ。
「中はもう探索済みだったりするのか?」
「中……?」
霧山は訝しむように言葉を返す。その目的がはっきりしない状況もあり、覚者達は彼の腹を探ることにする。
「このまま、互いにやりあっても良いけど、ボク等と戦えばそちらも無事ではすまないんじゃない?」
理央は対話によって、引き取ってもらおうと試みる。
「内部はまともに進行できる状態ではありませんが、ご存知ですか?」
御石 司(CL2001518) が遺跡について話を振る。内部は炎上していて体力を削られるし、妖だって存在する。仮に1人で突入した後で出てきたのならば、疲弊した霧山を狙うだけだと司は告げた。
「いくら幹部だからって、1人で行くのは辛くない?」
梛も威嚇するように呼びかける。自分達と交戦してから遺跡に突入するのもきついと思う、と。
そうして、理央は相手の出方を窺う。
誡女と凜音はこの場を仲間に任せ、状況の推移を見守っていた。
「見張りを殺してまで、この中に入りたい理由があるのでしょう? でも、それを見過ごすと思うかしら」
「あ、俺達に引く選択はないから、あんたと戦うか戦わないかだけだから」
このまま推し通るのであれば。エメレンツィアと梛は覚醒し、構えを取る。司は霧山の臭いを覚えることで、後々彼の痕跡を追えるようにと備えていた。
(現状、損はあっても益は無いと見ますが、出来れば、引き下がっていただきたいものですね)
残念ながら、この場を見張っていた者が霧山によって命を奪われているという。だが、そう簡単に仇を討てる相手ではないと、司はそう考える。
そこで、何かを得心した霧山は、声を上げて笑い始めた。
「ふふふ、そうか、君達は僕が遺跡に入ると思ったのか」
「「「………………?」」」
これには、覚者達も呆気に取られてしまう。霧山の狙いは遺跡だと、誰一人疑っていなかったのだから。
「そろそろ引いてくれね?」
戦闘になりそうな空気を感じた凜音も撤退を促す。霧山はそんな覚者の様子を鼻で笑った。
「止めとくよ。戦っても得などなさそうだし」
彼は両手を上げてから、覚者に背を向けた。
「遺跡が好きなら勝手に調べるといい。僕は地下に用なんてないからね」
新たな疑惑を残しつつ、嘲笑を浮かべた霧山はこの場を去って行ったのだった。
●調査を邪魔する火の玉達
無事、交戦することもなく、交渉によって霧山を退けた覚者達。
場合によっては体力回復もと備えていたが、その必要もなさそうだ。
今度は遺跡突入の為の準備を整えた上で、メンバー達は一人一人、ボーリングによって穿たれた穴へ入っていき、取り付けられたはしごをつたって長い縦穴を降りていく。
「燃えている音が聞こえてくんな」
鋭聴力で燃え盛る遺跡の炎の音を聞きつける凜音は、仲間についていく形で降りていく。
降り立った場所からは炎が消え失せていた。しかしながら、それもほんの一部だけ。だが、飛馬は前回の成果をそれで実感する。
「今回も張り切って行っとくか」
飛馬は腕まくりしようとしたが、肌がちりちりとした為、止めてしまう。
「妖であれば、人間によってくるとは思いますが……、不意打ちなど受けないように、ですね」
誡女は仲間に注意を促しつつ、その地点から南北に伸びる通路を見回す。通路には空気の流れが余りないようにも思える。吹き付けてくる炎は体力を削ってくる。その消耗の前に、現れる妖を討伐したいが……。
「あまり長くは居られないわ、効率的に行きましょう」
エメレンツィアはこの場を中心に、仲間と調査を始める。
前回はほとんど調べることが出来なかった。だからこそ、今回は調査したい部分を絞って探索に当たる。
エメレンツィアは熱感知と超視力を使い、梛も超直感で不自然なものがないかとそれぞれ遺跡内を見回す。
そんな中、いのりが遺跡内へと呼びかける。
「炎の中にいたら、攻撃されないとお思いですの? 臆病な妖達ですわね!」
馬鹿にしたように、いのりが声を上げて笑うと。南側の壁からゆらりゆらりと火の玉が現れる。そのうちの幾つかには顔が浮かんでいた。
言葉が分かったようには思えないが、そいつらは人間の姿を認めてすぐさま襲い掛かってきた。
飛んでくる火炎弾。そして、顔がついた妖は覚者の中心に燃え上がる火柱を立ち上らせてくる。
「何度も戦うことになりそうですし、情報収集ですね」
誡女は絡みつく霧を発して敵の能力を抑えながら、エネミースキャンを使い、敵の能力を出来る限り探ろうとする。
その間に、メンバーは妖を排除すべく攻撃する。
いのりは敵陣へと輝く光の粒を降り注がせる。彼女はその際も、できる限り遺跡の壁に傷をつけないようにと配慮していたようだ。
妖も応戦を繰り返す。燃える炎の他、体当たりを繰り出してきていた。それらの攻撃を、主に飛馬が受け止める。
飛馬は自らの体をスキルで固めていた。まずは、その身を岩で覆っていき、その上から海のベールを纏う。さらに、祝詞を強く念じることで、戦巫女の恩恵を受けた彼は、できる限り仲間の周りとなって妖の攻撃を受け止める。
顔のついた火の玉は大きく口を開き、飛馬の体力を奪わんと食らいついてくるが、彼は器用にそいつの口を二本の刀で防ぐ。しかしながら、顔つきの炎はないものと比べてランクが高く、全てを受け止めるというわけには行かなかったようだ。
妖が飛ばす炎のダメージは決して小さくはないが、序盤は覚者達もそれに耐えつつ、攻撃を繰り出す。
「速やかに殲滅しましょう。時間をかけられないもの」
エメレンツィアは神秘の力によって生成した水竜を敵陣へと放ち、妖の殲滅を図る。
中衛に布陣する理央は火焔連弾の効きがあまり良くないことを感じ、前に出て群がる火の玉へと同じく水竜を発していた。
それに飲み込まれた火の玉1体の炎が完全に消え去り、地面に落ちる前に消えてしまう。
こちらは、梛。彼は敵の数を減らすべく、力の弱い火の玉の撃破を優先させる。一旦、回復の力を高める香りを振りまいた後は、特殊な花の香りを振りまく。心身にダメージを受けた1体の灯火が消え失せ、消滅してしまった。
「1、2……」
仲間が攻勢に出ている後ろから、英霊の力を引き出した凜音は水のつぶてを放ちながら、仲間の倒した妖の数をカウントする。
遺跡の炎を直接受けないように、入り口付近に立つ司。彼はそこから妖へと種を投げ飛ばし、敵が動くタイミングで急成長させた。
いくら燃え盛ろうとも、妖は絡みつく植物を焼き払うことは出来ない。逆に植物のトゲにその身を引き裂かれることとなり、火の玉はその存在を滅してしまうのだった。
燃え上がる炎。とりわけ、顔が浮かぶ妖は手強く、覚者達もその撃破には手を焼くどころか、その身まで焼かれることとなる。
誡女は顔の浮かぶ高位の火の玉をメインに、濃い霧を纏わせ続けた。
「体当たりや燃え盛る攻撃をしてきますが……。得意とする行動などあるのでしょうか」
やはり、炎の妖。得意とするはその炎。そして、炎がほぼ効かないのは、理央が確認した通りだ。
自らが展開した霧の残存状況も確認しつつ、誡女は敵へと義手と義足を叩きつける。
「その顔なしの火の玉を……」
それを聞き、いのりが動く。彼女は仲間の回復にも動いていたが、ここぞと光の粒を降り注がせる。その直撃を受けた火の玉1体が完全に沈黙してしまった。
ただ、残る顔つきの火の玉は依然として活発に動き、覚者へと炎を放ってくる。
顔つきの妖がこちらの上半身を発火させて来るのは、非常に面倒だ。体術、術式が使えなくなってしまうと、一気に態勢が崩されてしまいかねない。
この為、飛馬は出来るだけ異常回復のできるメンバーを庇い、刀を構えて防御態勢を続ける。
飛馬を支えるのは、仲間に対する回復をメインで動き、神秘の滴を落とす凜音だ。
ただ、飛馬の上半身を発火させる妖。それによって、飛馬は顔を真っ赤にしてしまう。
そこで、いのりが濃縮した浄化物質を振りまいて正気に戻す。異常回復の出来る彼女達がまたターゲットにならぬようにと、正気を取り戻した飛馬が再度術式などで自らを強化し、妖の前に立ちはだかる。
そうした状況の合間も、梛が投げ飛ばした種を急成長させることで、妖の身動きを封じようとする。
そこへ、エメレンツィアがまたも水竜を発する。飛びついていく水竜は大きく口を開き、焦りを感じてうろたえた妖の顔を消し去るように突撃した。その火の玉からは顔面がなくなり、他の妖と同じように姿を失ってしまう。
残る妖2体はやや後方にいたのだが、それもあって、覚者達の矢面にさらされることとなる。
だが、覚者達は傷つきながらも順当に敵を攻め立て、戦いを進めていた。霧山と戦っていたならば、気力が持たずに危険だったかもしれないが、万全に近い状況で戦いを始めたメンバー達。多少敵が強くとも、全力を尽くせば倒せぬ相手ではない。
戦いが長引きはするが、覚者は消耗しきってしまう前に、妖を追い込む。
誡女が気力を分け与え、さらに仲間達が攻撃してくれるなどサポートもあり、司は決定的な攻撃のタイミングを得て、植物を操り、鋭いトゲで妖を苛む。実を覆うトゲに力を失った火の玉は、力なく落下して鎮火してしまう。
「そこまで、組織的な動きをしているようには見えませんね……」
妖の観察を行ってはいた誡女は効率を重視し、攻撃を優先させる。
誡女が残った火の玉にソバットを喰らわせた瞬間、落下していくその妖へと理央が水のつぶてを飛ばす。
それを浴び、さらに燃え上がる力がなくなっていた妖は、完全に燃え尽きて消失してしまった。
「これで、7体……か」
入り口付近に現れる妖の数は、報告書によれば7体。全ての妖を討伐したことを確認し、覚者達は一息つくのである。
●遺跡の調査を……
火の玉の妖を全て討伐し終えて、覚者達はさらに遺跡の探索を行おうとする。
ただ、遺跡内の炎が消えたわけではない。仲間の身をまた炎が焦がすことを懸念した凜音が、癒しの雨を降り注がせることで仲間の体力を回復させはしたものの……。やはり、通路から噴き出す炎の勢いは強い。
炎上している通路へ、司は外から持ち込んだ土を被せたり、仲間に水行スキルをかけてもらったりすることで消化を試みるのだが、炎の勢いはすぐには弱まることはない。
「調査書も読みましたが……。この炎も、何かしら妖の仕業なのでしょう」
前回の遺跡が土に亀の妖、そして、今回は炎となれば、火の鳥、四神・朱雀なのかと彼は推察する。
「先に進みたいな。この奥には何があるのかな」
梛は入り口から二方向に伸びる通路を見渡す。同じく、この遺跡に関心を抱くメンバー達は入り口から少しずつ南北に探索の足を伸ばしたが……、とりわけ変化を見つけることが出来ない。思った以上に通路は長そうだ。
結局、炎で消耗していくだけの状況が続く。奥に進むような強攻策を取るには至らず、メンバー達はある程度の調査を進めた上で、引き上げることにする。
「七星剣の幹部が出張ってくるということは、何かあるのでしょうか?」
誡女が仲間に問いかける。どうやら、遺跡には関心を抱いていない様子だったが……。
仲間達が事後処理に当たる間に、いのりは男性遺体を発見する。この男性が霧山に命を奪われた見張りに違いない。
地下に興味を抱いていない霧山の目的が気になるところだが、一体ここで何をしていたのか……。
「……助けられなくて、申し訳ありませんでしたわ」
いのりは静かに、その魂へと祈りを捧げていたのだった。
遺跡への侵入口が開く工事現場跡。F.i.V.E.の覚者達はそこを目指して歩いていく。
「ボーリング調査をしなければ、妖が出てくることもなかったのかもしれねーな」
寝た子を起こしてしまったこの状況。棲家を脅かされたのならば申し訳ない限りだと、『慧眼の癒し手』香月 凜音(CL2000495)は呟く。
「調査はいいとして。厄介な奴がいるそうで」
ただ、『五行の橋渡し』四条・理央(CL2000070)などは未探索の遺跡の突入に、心を躍らせる。
「今回は招かれざる客もいるようだけど、キッチリ調査していこうか」
「招かれざる客ですか……」
『研究所職員』紅崎・誡女(CL2000750) はそれに難色を示す。探索の前に対処しておきたいところだが……。
それは、『霧の名の鬼を咎める者』エメレンツィア・フォン・フラウベルク(CL2000496)も同じらしい。
「楽しく遺跡探索したかったところなのに、どうしてこんなところにいるのかしら」
「七星剣幹部の霧山。めんどくさいのが出てきたかな」
現場に現れる相手に東雲 梛(CL2001410)も眉を顰めるが、それでも、七星剣幹部が出てくるくらいの何かがそこにはあるのだろうかと、エメレンツィアも梛も考える。
「……だとしたら、絶対に渡せないわね」
「前回進めなかった先に、今度は行きたいし出来れば戦闘はしたくないな」
それを聞いていた『二兎の救い手』秋津洲 いのり(CL2000268) 。彼女はこの遺跡を訪れるのは初めてだったが、やはり、他メンバーと同様に首を傾げている。
「何にせよ、碌な目的ではなさそうですけれど」
「霧山……誘拐事件の黒幕だよな。許せねーけど、今回はまず出方を見なきゃな」
相手は規格外の強さを持つ。別件の事件でも暗躍する霧山に対して『守人刀』獅子王 飛馬(CL2001466)は怒りを抑えながらも、仲間と共に工事現場跡へと踏み込むのである。
一行封鎖された入り口を開くと、そこには何者かが背を向けて立っていた。
「待ちなさい、ユズル!」
幾度か出会っていたエメレンツィアはその姿だけで相手が誰なのかを悟り、大声で呼び止める。
「F.i.V.E.……か」
その男……『濃霧』霧山・譲はゆっくりと振り返った。
「こんなところで出会うなんて、思いもしなかったわ」
彼に対してぶつけたい様々な思いが、そして、聞き出したい沢山の事がエメレンツィアにはあるのだが……。
「これは妙な所でお会いしますわね。会って早々申し訳御座いませんが、お引き取り願えませんか?」
いのりは霧山を見上げ、凛とした態度で告げる。
今回の覚者達の目的は遺跡の調査。この後を考えれば、彼を相手にするのは覚者としても避けたいところだ。
「あんたが七星剣の霧山? ここに調査に来たみたいだけど、1人ならやめた方が良いよ」
「ここはこれから、ボク等F.i.V.E.が調査予定だし、回れ右してそのまま退いてもらえると助かるよ」
梛、理央が言葉を続け、覚者側の事情と主張を簡単に告げる。
「俺らも敵と見れば見境なく斬りかかるようなことはしねーつもりなんだが、差し支えなければ教えてくんねーかな」
飛馬が続けて問いかける。やや皮肉めいた物言いなのは、すでに相手が見張りを倒しているからに他ならない。
また、タイミングを考えるに、霧山はしばしの間この場に留まっていたはずだ。
「中はもう探索済みだったりするのか?」
「中……?」
霧山は訝しむように言葉を返す。その目的がはっきりしない状況もあり、覚者達は彼の腹を探ることにする。
「このまま、互いにやりあっても良いけど、ボク等と戦えばそちらも無事ではすまないんじゃない?」
理央は対話によって、引き取ってもらおうと試みる。
「内部はまともに進行できる状態ではありませんが、ご存知ですか?」
御石 司(CL2001518) が遺跡について話を振る。内部は炎上していて体力を削られるし、妖だって存在する。仮に1人で突入した後で出てきたのならば、疲弊した霧山を狙うだけだと司は告げた。
「いくら幹部だからって、1人で行くのは辛くない?」
梛も威嚇するように呼びかける。自分達と交戦してから遺跡に突入するのもきついと思う、と。
そうして、理央は相手の出方を窺う。
誡女と凜音はこの場を仲間に任せ、状況の推移を見守っていた。
「見張りを殺してまで、この中に入りたい理由があるのでしょう? でも、それを見過ごすと思うかしら」
「あ、俺達に引く選択はないから、あんたと戦うか戦わないかだけだから」
このまま推し通るのであれば。エメレンツィアと梛は覚醒し、構えを取る。司は霧山の臭いを覚えることで、後々彼の痕跡を追えるようにと備えていた。
(現状、損はあっても益は無いと見ますが、出来れば、引き下がっていただきたいものですね)
残念ながら、この場を見張っていた者が霧山によって命を奪われているという。だが、そう簡単に仇を討てる相手ではないと、司はそう考える。
そこで、何かを得心した霧山は、声を上げて笑い始めた。
「ふふふ、そうか、君達は僕が遺跡に入ると思ったのか」
「「「………………?」」」
これには、覚者達も呆気に取られてしまう。霧山の狙いは遺跡だと、誰一人疑っていなかったのだから。
「そろそろ引いてくれね?」
戦闘になりそうな空気を感じた凜音も撤退を促す。霧山はそんな覚者の様子を鼻で笑った。
「止めとくよ。戦っても得などなさそうだし」
彼は両手を上げてから、覚者に背を向けた。
「遺跡が好きなら勝手に調べるといい。僕は地下に用なんてないからね」
新たな疑惑を残しつつ、嘲笑を浮かべた霧山はこの場を去って行ったのだった。
●調査を邪魔する火の玉達
無事、交戦することもなく、交渉によって霧山を退けた覚者達。
場合によっては体力回復もと備えていたが、その必要もなさそうだ。
今度は遺跡突入の為の準備を整えた上で、メンバー達は一人一人、ボーリングによって穿たれた穴へ入っていき、取り付けられたはしごをつたって長い縦穴を降りていく。
「燃えている音が聞こえてくんな」
鋭聴力で燃え盛る遺跡の炎の音を聞きつける凜音は、仲間についていく形で降りていく。
降り立った場所からは炎が消え失せていた。しかしながら、それもほんの一部だけ。だが、飛馬は前回の成果をそれで実感する。
「今回も張り切って行っとくか」
飛馬は腕まくりしようとしたが、肌がちりちりとした為、止めてしまう。
「妖であれば、人間によってくるとは思いますが……、不意打ちなど受けないように、ですね」
誡女は仲間に注意を促しつつ、その地点から南北に伸びる通路を見回す。通路には空気の流れが余りないようにも思える。吹き付けてくる炎は体力を削ってくる。その消耗の前に、現れる妖を討伐したいが……。
「あまり長くは居られないわ、効率的に行きましょう」
エメレンツィアはこの場を中心に、仲間と調査を始める。
前回はほとんど調べることが出来なかった。だからこそ、今回は調査したい部分を絞って探索に当たる。
エメレンツィアは熱感知と超視力を使い、梛も超直感で不自然なものがないかとそれぞれ遺跡内を見回す。
そんな中、いのりが遺跡内へと呼びかける。
「炎の中にいたら、攻撃されないとお思いですの? 臆病な妖達ですわね!」
馬鹿にしたように、いのりが声を上げて笑うと。南側の壁からゆらりゆらりと火の玉が現れる。そのうちの幾つかには顔が浮かんでいた。
言葉が分かったようには思えないが、そいつらは人間の姿を認めてすぐさま襲い掛かってきた。
飛んでくる火炎弾。そして、顔がついた妖は覚者の中心に燃え上がる火柱を立ち上らせてくる。
「何度も戦うことになりそうですし、情報収集ですね」
誡女は絡みつく霧を発して敵の能力を抑えながら、エネミースキャンを使い、敵の能力を出来る限り探ろうとする。
その間に、メンバーは妖を排除すべく攻撃する。
いのりは敵陣へと輝く光の粒を降り注がせる。彼女はその際も、できる限り遺跡の壁に傷をつけないようにと配慮していたようだ。
妖も応戦を繰り返す。燃える炎の他、体当たりを繰り出してきていた。それらの攻撃を、主に飛馬が受け止める。
飛馬は自らの体をスキルで固めていた。まずは、その身を岩で覆っていき、その上から海のベールを纏う。さらに、祝詞を強く念じることで、戦巫女の恩恵を受けた彼は、できる限り仲間の周りとなって妖の攻撃を受け止める。
顔のついた火の玉は大きく口を開き、飛馬の体力を奪わんと食らいついてくるが、彼は器用にそいつの口を二本の刀で防ぐ。しかしながら、顔つきの炎はないものと比べてランクが高く、全てを受け止めるというわけには行かなかったようだ。
妖が飛ばす炎のダメージは決して小さくはないが、序盤は覚者達もそれに耐えつつ、攻撃を繰り出す。
「速やかに殲滅しましょう。時間をかけられないもの」
エメレンツィアは神秘の力によって生成した水竜を敵陣へと放ち、妖の殲滅を図る。
中衛に布陣する理央は火焔連弾の効きがあまり良くないことを感じ、前に出て群がる火の玉へと同じく水竜を発していた。
それに飲み込まれた火の玉1体の炎が完全に消え去り、地面に落ちる前に消えてしまう。
こちらは、梛。彼は敵の数を減らすべく、力の弱い火の玉の撃破を優先させる。一旦、回復の力を高める香りを振りまいた後は、特殊な花の香りを振りまく。心身にダメージを受けた1体の灯火が消え失せ、消滅してしまった。
「1、2……」
仲間が攻勢に出ている後ろから、英霊の力を引き出した凜音は水のつぶてを放ちながら、仲間の倒した妖の数をカウントする。
遺跡の炎を直接受けないように、入り口付近に立つ司。彼はそこから妖へと種を投げ飛ばし、敵が動くタイミングで急成長させた。
いくら燃え盛ろうとも、妖は絡みつく植物を焼き払うことは出来ない。逆に植物のトゲにその身を引き裂かれることとなり、火の玉はその存在を滅してしまうのだった。
燃え上がる炎。とりわけ、顔が浮かぶ妖は手強く、覚者達もその撃破には手を焼くどころか、その身まで焼かれることとなる。
誡女は顔の浮かぶ高位の火の玉をメインに、濃い霧を纏わせ続けた。
「体当たりや燃え盛る攻撃をしてきますが……。得意とする行動などあるのでしょうか」
やはり、炎の妖。得意とするはその炎。そして、炎がほぼ効かないのは、理央が確認した通りだ。
自らが展開した霧の残存状況も確認しつつ、誡女は敵へと義手と義足を叩きつける。
「その顔なしの火の玉を……」
それを聞き、いのりが動く。彼女は仲間の回復にも動いていたが、ここぞと光の粒を降り注がせる。その直撃を受けた火の玉1体が完全に沈黙してしまった。
ただ、残る顔つきの火の玉は依然として活発に動き、覚者へと炎を放ってくる。
顔つきの妖がこちらの上半身を発火させて来るのは、非常に面倒だ。体術、術式が使えなくなってしまうと、一気に態勢が崩されてしまいかねない。
この為、飛馬は出来るだけ異常回復のできるメンバーを庇い、刀を構えて防御態勢を続ける。
飛馬を支えるのは、仲間に対する回復をメインで動き、神秘の滴を落とす凜音だ。
ただ、飛馬の上半身を発火させる妖。それによって、飛馬は顔を真っ赤にしてしまう。
そこで、いのりが濃縮した浄化物質を振りまいて正気に戻す。異常回復の出来る彼女達がまたターゲットにならぬようにと、正気を取り戻した飛馬が再度術式などで自らを強化し、妖の前に立ちはだかる。
そうした状況の合間も、梛が投げ飛ばした種を急成長させることで、妖の身動きを封じようとする。
そこへ、エメレンツィアがまたも水竜を発する。飛びついていく水竜は大きく口を開き、焦りを感じてうろたえた妖の顔を消し去るように突撃した。その火の玉からは顔面がなくなり、他の妖と同じように姿を失ってしまう。
残る妖2体はやや後方にいたのだが、それもあって、覚者達の矢面にさらされることとなる。
だが、覚者達は傷つきながらも順当に敵を攻め立て、戦いを進めていた。霧山と戦っていたならば、気力が持たずに危険だったかもしれないが、万全に近い状況で戦いを始めたメンバー達。多少敵が強くとも、全力を尽くせば倒せぬ相手ではない。
戦いが長引きはするが、覚者は消耗しきってしまう前に、妖を追い込む。
誡女が気力を分け与え、さらに仲間達が攻撃してくれるなどサポートもあり、司は決定的な攻撃のタイミングを得て、植物を操り、鋭いトゲで妖を苛む。実を覆うトゲに力を失った火の玉は、力なく落下して鎮火してしまう。
「そこまで、組織的な動きをしているようには見えませんね……」
妖の観察を行ってはいた誡女は効率を重視し、攻撃を優先させる。
誡女が残った火の玉にソバットを喰らわせた瞬間、落下していくその妖へと理央が水のつぶてを飛ばす。
それを浴び、さらに燃え上がる力がなくなっていた妖は、完全に燃え尽きて消失してしまった。
「これで、7体……か」
入り口付近に現れる妖の数は、報告書によれば7体。全ての妖を討伐したことを確認し、覚者達は一息つくのである。
●遺跡の調査を……
火の玉の妖を全て討伐し終えて、覚者達はさらに遺跡の探索を行おうとする。
ただ、遺跡内の炎が消えたわけではない。仲間の身をまた炎が焦がすことを懸念した凜音が、癒しの雨を降り注がせることで仲間の体力を回復させはしたものの……。やはり、通路から噴き出す炎の勢いは強い。
炎上している通路へ、司は外から持ち込んだ土を被せたり、仲間に水行スキルをかけてもらったりすることで消化を試みるのだが、炎の勢いはすぐには弱まることはない。
「調査書も読みましたが……。この炎も、何かしら妖の仕業なのでしょう」
前回の遺跡が土に亀の妖、そして、今回は炎となれば、火の鳥、四神・朱雀なのかと彼は推察する。
「先に進みたいな。この奥には何があるのかな」
梛は入り口から二方向に伸びる通路を見渡す。同じく、この遺跡に関心を抱くメンバー達は入り口から少しずつ南北に探索の足を伸ばしたが……、とりわけ変化を見つけることが出来ない。思った以上に通路は長そうだ。
結局、炎で消耗していくだけの状況が続く。奥に進むような強攻策を取るには至らず、メンバー達はある程度の調査を進めた上で、引き上げることにする。
「七星剣の幹部が出張ってくるということは、何かあるのでしょうか?」
誡女が仲間に問いかける。どうやら、遺跡には関心を抱いていない様子だったが……。
仲間達が事後処理に当たる間に、いのりは男性遺体を発見する。この男性が霧山に命を奪われた見張りに違いない。
地下に興味を抱いていない霧山の目的が気になるところだが、一体ここで何をしていたのか……。
「……助けられなくて、申し訳ありませんでしたわ」
いのりは静かに、その魂へと祈りを捧げていたのだった。

■あとがき■
リプレイ、公開です。
遺跡の探索、妖討伐、
並びに霧山の対処、お疲れ様でした。
MVPはぶれることなく、
主目的にまっすぐ向き合ったあなたへ
お送りしたいと思います。
参加していただきまして、
本当にありがとうございました!
遺跡の探索、妖討伐、
並びに霧山の対処、お疲れ様でした。
MVPはぶれることなく、
主目的にまっすぐ向き合ったあなたへ
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参加していただきまして、
本当にありがとうございました!
