その日、五麟は震撼する
その日、五麟は震撼する



「た、大変なのだ!!
 京都近郊の道路でトラックがスピンしてクラッシュして荷台から色々バーって出てきてしまい通行人がぎょっとして警察を呼んでファンファンファンとパトカーとか消防車とか色々きてその音にびっくりした鴉がギャーてなきながら山へ帰ったのだが止まった木が枝がバキって折れてその下にうっかりいた神様的な土地神様的なものがひえーてなりなんだかサプライズすぎる力をフオーって使ってしまったみたいなので今日は一日不思議なことが起こるかもしれないのだ!!」


■シナリオ詳細
種別:イベント
難易度:楽
担当ST:工藤狂斎
■成功条件
1.イベシナを楽しむ
2.なし
3.なし
 日常パートですよ。何も指定しなければ日常パートですよ

●状況
 OPの出来事があったため、今日は不思議なことがおこる

 何が起こるかって、それは『入れ替わり』である

●このイベシナでは何ができるの?
・特に何も指定が無ければ、普通の五麟市での一日としてイベシナをお使いください

・入れ替わり、とは
 単純に、誰かと誰かの中身が入れ替わります、一日。
 AちゃんとBくんがいて、入れ替わり指定のプレがきたとき、
 Aちゃんは中身がBくんに、BくんはAちゃんが中身になります
 精神交換です。肉体交換でもいいです
 不思議ですね

●入れ替わり指定する場合

★入れ替わる相手の名前を、プレかEXプレ内に明記ください。それが両人に記載されている場合のみ、採用します。片方だけだとだめです
 プレイングは、入れ替わる相手の外見で行動するものを書いてください

★3人以上で入れ替わる場合は?
 チームタグを作って、入れ替わる相手を指定してください。タグがあることで、相手と承認されていることと見なします
 AくんはBくんに、BくんはCくんに、CくんはAくんになります
 プレイングは、入れ替わる相手の外見で行動するものを書いてください

★距離とか関係ないので、
 例えば片方が朝起きたら相手になっていて驚いているところで、
 入れ替わった相手はすでにトラブルに適応して、外で好き勝手しているとかそういうプレでも対応します

●場所:五麟市

●その他
 タグや相手指定するほどでもなく、
 適当な誰かと絡んでもいいよっていう方のみ、EXプレで【絡みOK】と書いてください
 それが鉢会える状況で、絡めそうであれば描写します。ご縁が無いときもあります

●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の33%です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『御崎 衣緒(nCL2000001)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。

 それではご縁がありましたら、よろしくお願いします
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
(3モルげっと♪)
相談日数
7日
参加費
50LP
参加人数
24/∞
公開日
2016年12月21日

■メイン参加者 24人■

『聖夜のパティシエール』
菊坂 結鹿(CL2000432)
『ママは小学六年生(仮)』
迷家・唯音(CL2001093)
『追跡の羽音』
風祭・誘輔(CL2001092)
『探偵見習い』
賀茂・奏空(CL2000955)
『冷徹の論理』
緒形 逝(CL2000156)
『影を断つ刃』
御影・きせき(CL2001110)
『ホワイトガーベラ』
明石 ミュエル(CL2000172)
『愛求独眼鬼/パンツハンター』
瀬織津・鈴鹿(CL2001285)
『見守り続ける者』
魂行 輪廻(CL2000534)
『雷麒麟』
天明 両慈(CL2000603)
『使命を持った少年』
御白 小唄(CL2001173)
『たぶん探偵』
三上・千常(CL2000688)
『Queue』
クー・ルルーヴ(CL2000403)
『想い重ねて』
蘇我島 燐花(CL2000695)


 今日もこの世界ではどこかで誰かが叫び声をあげている。
 例えば酒々井 数多(CL2000149)とか。

 それとは知らず。

 時任・千陽(CL2000014)は自室で珈琲をお供に朗々たる文字の世界に浸ろうかと古書を開きかけた、その時。
 盛大な音をたてて扉が開き、切裂 ジャック(CL2001403)が無遠慮に入ってきた。
「こんにちは、切裂。どうしました?」
 ジャックは千陽の腕を強引に引き、それでいてベッドに押し付けるように彼を倒す。
 冷静な千陽は、ベッドに柔らかく受け止められた背と、一緒に倒れた友人に怪我が無く安堵していたところだが、どうにもこうにもジャックの方は未だに一言も言わぬままで。
 その視線は濡れ盛ったように妖艶であり、恋人に甘えるように身体を擦り付けていた。
「なあ、チカ、俺のことどう思ってる?」
「はい、親しき友人だと思っていますが」
「聞きたいのはそういうことじゃねぇよ」
 ジャックの片足が千陽の足の間に差し込まれる。千陽は片手首を抑えられたままの状態で、彼が呼んだ名前の違和感に瞳を細めた。
「なあ、いいだろ?」
 密着していたジャックの上半身が少しだけ持ち上がり、左手薬指が千陽の唇をなぞってから下へと伝い、顎を持ち上げる。
「君は――切裂では」

「ときちか!」

 再び扉が盛大に開き、ひとつに結われた髪を焦ったように揺らしながら入ってきた数多。
「どうしよう俺が桃色ゴリラに……て、あァァァ゛!? いたァ!! 俺の身体ァ!! おいどういう状況だ説明しろやっぱり説明しなくていい!!」
 元々女らしい顔つきのジャックが、遂に女の子らしい表情にくるりと変わった。
「ええええ! なによぅ! めっちゃいいとこだったのに」
 上半身を起こした千陽。
 自然とジャックは彼の腿に向かいあわせで座る形になったが、不機嫌そうに千陽を見つめていた。
「何よ」
「こっちが酒々井嬢」
 千陽は数多を見て、そういえば数多の脳天にアホ毛がぴょいーんぷらぷらおろおろ。
「そっちが切裂」
 はい正解。
「だ、大丈夫かときちか!? 数多お前何考えてんだ!」
 数多はジャックを羽交い絞めにして、ずるずると引きずりおろしていく。
「まあ、彼女の悪ふざけにはそろそろ慣れてきましたし、何もありませんでしたからご安心ください。押し倒される程度よくあることでしょうし」
「ちょっとまて今慣れてるとか聞き捨てらないこと聞いた」
 もっと聞き捨てならないこと言ってたと思うけど。
「そういうジャック君私のおっぱいもんだでしょ? わかる。私なら揉む。っていうか見た。まずみた」
 アレを。
「見んなや!! ていうか見て良かったの、じゃ早速!」
「いえ、その、できれば酒々井嬢の姿で脱がないでいただけると……」
 数多が服に手をかけ、下胸あたりがぽろ、と出た瞬間、ジャックが空中で三回転くらいして勢い溜めた蹴りがどごん。
 数多の身体が吹き飛び窓硝子破壊する前に、防衛本能に物言わせた千陽に受け止められた。
「今見んなや! っていうか私に私の体蹴らすなや! チカ君も受け止めんなや!」
「ゴ、ゴリッサ……あっいえ、い、家の破壊は困ります……っ!」
 半裸に近い数多が泣きそうになりながら。
「痛い……見ていいって言ったのに……、と、トイレ行きたい、漏れる」
 戦乱は続く。こんな三人に薬売り暴かれたかと思うと胃痛がするよ。


 十夜 八重(CL2000122)の身体が上半身だけ起きてから、暫く周囲を見回し、それから胸をふにふに触りだした。
 それからぴょんと飛び跳ねるように起きてから、洗面所へ走ると鏡に映った自分の顔に、にんまりと笑う。
「わーすごいすごいほんとに八重おねーさんだ!」
 くるりと回った八重。その中身は迷家・唯音(CL2001093)である。胸の大きさにも感動しながら、たまに定期的にそこへ手が触れていた。

 その頃。

 唯音の身体に入ってしまっていた八重も同じように洗面所の鏡を見て、瞳を開けたり閉めたり。
 上品に自分の顔へ、片手だけを触れて。柔らかい笑みはまるで小学生よりも、粋な熟れた女性のようなもの。
「ふふ、からかい難くなっちゃいましたね」
 兄を思い出すが、それよりは大きな身体か。さておき、それよりも自分の身体が心配である。突き動かされたように唯音は出かけていった。

「あ、八重おねーさんめっけ! あーそぼっ」
 八重が両手をぶんぶん横に振りながら、無邪気に走ってきていた。唯音はそれがおかしく思えて、微笑ましく思えて、くすくすと笑う。
「ふふ、一緒に遊びましょうね?」
 唯音は八重と手を繋いでから公園へ。
 ブランコやシーソーをしてみるものの、それ自体はなんらお姉さんと妹のように自然ではあるのだが。
 八重がキャッキャとはしゃぎながら、それを保護者のような目線で見つめている唯音には何か不思議な光景に思えてならない。
 それから疲れ果てた彼女たちはベンチで小休止。
 唯音が八重を膝枕しながら、その頭を撫でている。
「ふふ、いいこいいこ」
「へへーいい子いい子」
 再びにへらと笑った八重に、優しい母のような眼差しを送る唯音。
「このまま元に戻らなかったらどうしよ……ゆいねのママやパパゆいねの事わかってくれるかなあ」
「多少姿は変わっても唯音さんは変わらない良い子ですから。みんなもきっと判りますよ?」
 案外、寝て起きたら。戻っているかもしれないしね――。


「いいか……やっと尻尾を掴めそうな案件だ。慎重にいくぞ、奏空……」
 電柱の裏。三上・千常(CL2000688)が極まった表情で、食べ終わったあんぱんの袋をポケットに突っ込むと、
「はい!!」
「なんでお前が返事するんだ、ふざけてんのか?」
 風祭・誘輔(CL2001092)がいい返事をした。
 工藤・奏空(CL2000955)は一度、チッと舌打ちしてから、つい魂にしみついたクセか、ポケットから煙草を取り出す動作をしたが空ぶった。
 この依頼だからこそ、どっちとどっちが入れ替わっているのか読者は解るだろうが、千常自身は頭の上にハテナが浮かんでいる。探偵としての依頼案件に部下を連れてきたら何故か記者がついてきたノリであるからして。
 ……まあ、いいんだけどよ。と落ち着いた千常の懐の深さは海を凌駕していただろう。
 さておき、あちらに少々動きがあったようだ。ヤクザの家の前で張り込みをしているのだが、家の中が少しざわついている。ここで全て逃がす訳にはいかない。
「おい、誘輔お前から行け。慣れてるだろう?」
 千常は誘輔をからかうように見やれば、びくっと飛び跳ねた彼。
「え? 俺!?」
 なんて半泣きになりながら、そわそわあわあわし始めた誘輔に千常の眉が疑問を呈するように動いた。
 対して、奏空はさっきから半目になりながら、煙草の代わりと称してガムを噛み始めていた。もう直ぐにでもここから抜け出してコンビニで煙草を買いそうな気配さえある。
「逆に工藤君は異様に落ち着いてるが……なんだこれ?」
 千常が疑問を口にした、その時、動きがあった。
「わーんっそ、その……っ、お前のやった事はすべてお見通しなんだぞー! 白状しろー! 悪い奴めー!」
 誘輔が泣きながら乗り込んでいっていた。千常と奏空は目元を片手で抑えた。
 罵声に怒号、どうやら張り込みがバレたか。
「やべっ見つかっちまった! しゃあねえ いくぞ三上……じゃねえ先生、誘輔サン!」
 奏空が黒い笑みを浮かべ、
「いや、お前誰だよ。もうなんか張り込みとかどうでもいいわ、誰なんだよお前」
 千常の疑問には誰も答えそうにない。
 ヤクザ宅では、怖いお兄さんたちに囲まれて、ぷるぷる震える誘輔。まるで、まるで、あの殺芽という蜘蛛女に中指立てた男とは思えない。
 奏空は飛び込み、小回り効く身体でバッタバッタと千切っては投げ千切っては投げ。
「わああああこわかったああああ!!」
 と千常に近寄っていく誘輔。
「……いやお前誰だよ生まれたての子鹿かなんかか? ほら見ろ相手調子乗ってるじゃねーか。いつものどっちがヤクザかわからん啖呵はどこいったよ」
「オラオラオラァ!! 煙草代になりてえやつから前出ろォォ!!」
「いやお前誰だよ。あんだけのびのび殴る工藤君見たことねぇ……」

 数分後。

「ふーひでえ目にあった……って、煙草返せよ三上!」
「あ! お前未成年だろーが!」
 奏空は額の汗をぬぐった瞬間、千常が彼が持っていた煙草を没収した。
「火ィつけてねーならセーフだろ」
「まだはえーよ阿呆!」
 その頃、誘輔は女性の群れに襲われていた。
「ちょっと私との約束どーなってるのよ!?」
「ひ、ひええ、一体何したの誘輔さんってばーーー!!」
「社会勉強だと思って諦めてくれ」
 千常は額を抑えた、頭痛がする、胃痛もする。
「……いや本当今日はなんだったんだ。あいつら中身入れ替えたの? ……馬鹿馬鹿しい、俺もあいつらも疲れてるだけだ!」


 菊坂 結鹿(CL2000432)は、自分の顔をぺたぺたと触った。
 なんだかいつもと違う感覚。身長はいつもより高い気がするし、心無しか髪の毛の重みも違う。
(今、わたしは結鹿ちゃんになってる)
 鏡を見た結鹿は色々なポーズを取ってみるが、どの角度から見ても結鹿である。中身は、向日葵 御菓子(CL2000429)であるのに。
 今、覚醒すれば彼女が一番全盛期である年齢を知ることができる。好奇心に満たされていく胸中ではあるが、しかしまだ理性がそれはいけないと、よろしくはない、と訴えているのだ。
 首を横に振った結鹿は、寝るときも傍らから離さない愛器『タラサ』を構えた。身体が入れ替わったからといって、演奏技術まで消えたら今はただの合法ロリ。いやそれは元の身体でも変わらないのではとツッコミはどこだ。
 結鹿は一呼吸置いた。

 ――部屋中に、澄んだ音色が響き渡っていく。

 納得のいく演奏は問題無くできるようだ。むしろ緊張していた分、いつもより上手く弾けていたのではないだろうか。

 一方。

「あれ?」
 樹神枢の身体が目覚め、鏡の前に行くよりも先に、いつもとは違う風景の部屋に瞳を何度も閉じたり開けたりを繰り返している。
 和室、それもちょっとお嬢様レベルで広い。畳の臭いが新鮮で、障子の奥からぼんやりと朝日が差し込んでいる。
 中身は、結鹿であった。
 昨日の事を思い出し見てるが、いつも通りに帰宅していたから別の部屋にいるというのはまずありえないことなのだが。
 時刻を見れば、枢はその顔をぶす、と不機嫌に歪めた。まだ早朝という時刻だ、何処からかお味噌汁のいい匂いがしてきた。
 枢はゆっくりと起き上がってから、洗面所へと向かう。
「ん? 鏡に映ってるのは枢ちゃん? ……あれ?」
 飛び跳ねてからどたどたと忙しく部屋に駆け戻り、机の教科書を手に取れば丁寧な字で名前が『樹神枢』と書かれていた。
(うん……どうやらわたし、今、枢ちゃんになってるみたい)
 急いで着替えて(とは言え着物ばかりで少々手こずったが)家にダッシュ。

 合流した三人。傍から見れば、いつもの三人なのだが、中身が総入れ替えとなっていた。
「ええと、そちらが結鹿か?」
 御菓子が正座をしながら、顔をこてんと傾けた。
「うん……枢ちゃんだね? って、なんでわたしの姿をしたお姉ちゃんは、鼻歌交じりで楽しそうに楽器弾いてるんだろう……なんだか慌ててる私たちが変みたいじゃないですかっ!」
「うふふっ」
「御菓子は余裕なのだ」
 そんな三人であった。


 魂行 輪廻(CL2000534)はむくりと起き上がった。なんだか乾燥していたのか、喉が渇いて起き上がったら、ずしりと胸元に重み。
 うん? 輪廻は不思議に思って鏡の前に立ってみると、
「うわぁ……すごくスタイルいい……」
 口元を抑えた輪廻(の中身は、明石 ミュエル(CL2000172))は、溜息のような声色で暫く自分を見つめていた。
 しかし暫くしてからなんとなくいつもとは違うような感覚がひとつ。姿見には見えない部分、そう、下着を一切身に纏っていないのだ。
「えっ……ど、どうしよう……」
 慌てて下着を探せども、恐らくいつもあるであろう定位置のタンスのなかには、一切のそれらしいものが見つからない。こんな事ってあるのか。彼女は常に風にあらゆる部位を野放しであるというのか。

 その頃。

 ミュエルという身体を着た輪廻は、あらあら、と状況把握。
 いつもより肩が楽だ、それもあるのだが、違和感がある。それに気づいた瞬間、まず下着を脱いだミュエルであった。

 さらに。

 リーネ・ブルツェンスカ(CL2000862)は、半開きの瞳を擦りながら鏡の前を素通りした。素通りしてから、またすごい速さで鏡の前へ戻ってきた。
「え? ブルツェンスカ……さん?」
 長い髪を引っ張ったり、さらっと流してみたりしているリーネの中身は柳 燐花(CL2000695)である。
 リーネの整った顔を見てから、まるで自分の躰ではないように大事に扱わねばと理解しながら、ふと、うっとり、少女らしい瞳を魅せた。
「綺麗な方……」
 硝子に映る、サラサラの長い髪に抜群のスタイル。私が体をお借りしてるのが申し訳ない気分に。

 それでもって。

 鏡の前。
「ム? ここはドコデスカ? 私は誰……ってホントニ誰デスカー!?」
 燐花の軽い身体が部屋中を駆けまわってから、鏡の前に再び立った。どうみても、いつもの自分ではない、大事件である。
 思い出すのは、この子が誰であるかということだ。そういえば――
「アッ! この子は確か、以前両慈と一緒に居た女の子デスネ!」
 ちょっとした小さな嫉妬に沸きながら、それでいて、しかし。
「何故私がこの子に……?」
 その疑問は神のみぞ知るというやつだ。

 というわけで。

 寝起きの天明 両慈(CL2000603)が寝ぐせを戻しながら、よそよそしく、居心地が悪そうにしている輪廻とリーネを順番に見た。
 なんとなく、いつもの彼女たちでは無いような異様な雰囲気に両慈の眉間にシワがよる。
「……輪廻、そしてリーネ、どうかし……いや、本当にお前達どうした?」
 瀬織津・鈴鹿(CL2001285)がのそのそと歩いて来て、おはよう! と輪廻へ抱き着けば。輪廻は柔らかみ笑みを浮かべながら、はい、……おはよう、ございます……と明らかに不審に超えた、鈴鹿の顔が強張る。
 それでいて、リーネは無表情を決めたまま。まるで武士か何か、礼儀正しく腰から折れておはようございます、という。
 両慈は自分の頬をつねる、うん、これは夢じゃないらしい。残念、いやどこも残念じゃないだろうが、現実だ。
「輪廻は服をしっかり着ているし、何やら先ほどから胸を気にしている、リーネは表情が少なくさらに発音が完璧だぞ?」
 鈴鹿はそのまま関係無いぜとばかりに、輪廻の胸元に顔を埋めて擦りつけているのだが、あたふたしながら、時折艶やかな声色が単発で出てくるのは最早なんか色々全年齢が危険域。
(……あれ? 何だかいつもと反応違うの……別人みたいな、ごくり……これは新鮮なの)
 この少女、鈴鹿は、小さな体に似合わぬような発想でそのままミュエルの入った輪廻を弄り倒した。
 と、その時。
 燐花が持ち合わせていた最高速度をフルで使って飛んできたようで、スッパーン! と玄関扉を開いたかと思えば、
「アー! 見つけマシタネ私! ……と両慈ー♪ 大好きデース!」
「燐……? 待て、燐花!!? ぐあああ!!」
 燐花はそのまま両慈へと突っ込んだ。激麟みたいなもの発動させながら両慈へと突っ込んだ。
 そして、大きめのニット(しか着てない)を、だらんと片側の肩だけはだけさせて着ているミュエルが、とろんとした瞳で見回してから、ゆらゆらと手を振る。
「やっほー、後輩君にリーネちゃんに私♪」
 ミュエルは襟を指で伸ばして、若干薄っすらとした胸見えるそのぎりぎりの場所まで引かれる。すると輪廻が顔を真っ赤にしながら、鈴鹿を抱っこしつつ、あわあわ。
「って、輪廻さん……アタシの身体で、そんなことしないで……!」
「あら、やっぱり私って解っちゃう? ちょっと嬉しいわねぇ♪」
「わかるけど、っその」
 輪廻は立ち上がった瞬間、股の間をすり抜けていった風に色々無いあれとかそれとかの寂しさを感じて、その場にへなへなと座り込んでしまった。
 胸元では、今も鈴鹿が脱がそうと躍起になっているのを、リーネが羽交い絞めにして止めていた。
「鈴鹿、二人をどう見る?」
 両慈は、「デース、デース!」と暴れる燐花を羽交い絞めにして(とは言え燐花の力量を抑えるのは大変時間がかかった)いた。
 両慈が話しかけた鈴鹿はもはやトランス状態で今この状況を楽しんでいると見える。
 唯一まともというか、冷静というか、あらゆる戦場で危機があっても対処してきたからか、リーネはふと歩き出してから両慈に耳打ちした。
「天明さん。私達入れ変わっているようでして…」
「なるほど、君がいてくれてよかった。マジで。燐花がリーネで、リーネが燐花で。輪廻が明石で、明石が……か」
 両慈はため息を吐きつつ、艶やかなミュエルをあまり見ないように顔を下へ向けた。
「あらあら、早く捕まえないと、こーこ、捲っちゃうわよ?」
 ミュエルは今度は、足下を少しずつたくし上げながら、輪廻は叫び声にも似た小さな声を出した。しかし彼女は身動きができず、自然治癒では治らない麻痺を受けてしまったようだ。
「今日こそチューしてクダサーイ! ワオ、この身体とても速いデスネ! これなら両慈を逃がしマセンヨー!」
 燐花は両慈に抑え込まれながらも、抵抗し続けていた。その顔はどこか恍惚の表情らしきものを浮かべていたが、当の本人であるリーネは両手で顔を覆っていた。
「恋人が居ても、既成事実サエ出来てしまえばそのまま結婚、大逆転ホームランデスネ!」
「て。私の身体でそれは色々と……待ってくださ……」
 眉が少しだけ山のように斜めになったリーネ。その姿は儚く、なんていうか、美しい。
 というわけで収集つかないのだが。最後に。
「今日は一体なんなんだ!!?」
 両慈の悲鳴がこだました。


 月歌 浅葱(CL2000915)と姫神 桃(CL2001376)と樹神枢はケーキバイキングに来ていた。三人は特大のパフェを前に、フォークを握りしめている。
「あっ、これも美味しいですよっ!」
 桃はフォークに刺した一口大のそれを、浅葱へ差し出せば、浅葱は――ってあれ?
「私が目の前に!!」
 どうやらこの時点で、浅葱と桃の中身が入れ替わってしまっていたらしい。
 朝、そんなことがあった枢はもう慣れたように、今日はそんな日なのだ、と笑っていた。
「この胸の重さ!! 入れ替わってますね!!」
 と黙々と桃はパフェを掘っていく。
「な、別に重くな……逆に軽くて違和感あるわ、この身体。あら、これは美味しいわね」
 浅葱は上品に紅茶をまじえてながら、パフェを一口掘っていく。
「ふふ、人の身体だと慣れないものだな。いつ治るか、僕にも予想ができん」
 にこにこしながら、お茶をずず、と飲んだ枢。
「なんだか物真似してるみたいに見えちゃいますねっ」
 桃は一旦フォークを置いてから、決めポーズを取った。よく浅葱が戦場で、爆光と共に覚醒するときによくやるポーズである。それを桃がやっているのはなかなかにレアな光景だ。枢はふと、カメラ持ってくればよかったと思ったとか。
「ふっ、樹神さん似てますかねっ私が浅葱ですよっ」
「うむ、わかりやすいのだ!! かっこいいのだ!!」
「カロリー過ごそうね、このパフェ。っていうか私の身体でなにやってるのっ」
 かりかりとパフェ底に余ったソースをほじくりながら、浅葱はちょっとだけ顔を赤らめていた。 
「はい、改めてあーんですよ」
「……あーんなんて、しなくていいのよ」
 とはいえ、浅葱は桃から差し出された苺の乗ったクリームをぱくっと食べた。ふわっととろけるクリームに、甘酸っぱい苺のハーモニー。女子なら誰でも、ふぁぁ、って漏れ出るようなそんな甘さの快楽。
「樹神さんもしてみませんか、すずいって桃さんにっ」
「僕がか!?」
「ふっ、遠慮せずとも体が私のならカロリー気にしなくていいですよっ」
 確かに日頃あれだけ動いていれば大丈夫だろうか。枢は恐る恐る、(一応皆さん年上なので恐る恐る)浅葱へと抹茶のパフェの一部を差し出した。
「雛に餌付けするように、さあっ」
 桃、浅葱を後ろから羽交い絞めにした。
「美味しそうで気になったけどって、浅葱! 誰が雛よ」
「あ、あーん、なのだっ」
「ん」
 枢から出されたそれを口に運んだ浅葱。その瞬間、恍惚の笑みを浮かべて頬を抑えた。 
「わっ! これもふわっとして美味しい♪ はー幸せ」
「僕のも美味しいって言ってくれて嬉しいのだぞ」


 野武 七雅(CL2001141)は起きたら、枢になっていた。いつもと違う背丈と、いつもと違って見せる世界。
「なつね、一体どうなったの!?」
 枢は思考する、どうやら、ていうか何が起きたのか誰か説明してほしいくらいだ。
「あ、そうなの。これはきっと夢なの。なつねがなつねじゃないなんてありえないの。いくら神秘なことがおこる世界だからって、さすがになつねがなつねじゃなくなるなんて夢だとおもうの」
 枢は暫く独り言を言ってから、駆けだしていく。どうせこれは夢なのだから、いけるところまで楽しむのも一興か。
 夢のなかの五麟はいつもとは変わらない世界であった。というか夢にしては出来過ぎている感じもある。
 ふと、プールから戻ってきているところの椿屋 ツバメ(CL2001351)が通りかかったとき、七雅との視界が交差した。
「樹神か」
「なつねなの」
「?」
「なつねはなつねなのぉぉぉぉ」
 ツバメの太ももあたりをぽかぽかぽか!! と叩いてから、七雅の入った枢はその場を物凄い速さで消えていく。
「な、なんだったんだ……?」
 ツバメはぽかん……としてから、そういえば今日はやけにいつもより五麟が騒がしいような――と首を斜めに傾けた。


 緒形 逝(CL2000156)は起きてから、商品列を……瞳を輝かせてみていた。いつものヘルメットは無いから顔面にはモザイクを入れておくべきだろうか。
「うわぁー、いろんな刀がいっぱいだぁー!!」
 中身は、御影・きせき(CL2001110)である。
 並べられている刀は全て、独特な個性を持ったものばかりで。中には異様な雰囲気したものもあり、それは本能で逝は近づかなかった。
「そういえば、この刀ってみんな妖刀なんだよね。悪食さんみたいに、みんな意志とかあるのかな?」
 挨拶とかしてみたら、どう反応するのだろうか。
「こんにちは!」
 ――と言ってみれば、風が通り抜けていく。とはいえ、いつも見ている姿だろうこの逝の身体で話しかけてもいつも通りなのかな、と逝は甘い微笑みを浮かべた。
 ととと、と走って行けば、台所の戸棚にお団子が入ってるの発見。
 右見て、左見て、勝手に食べちゃっていいのか迷ったのだが、大丈夫だろう、誘惑に敗北した逝はアーンと大きな口を開けた。
「うわぁー、このお団子、すごく美味しい! 普段買ってるスーパーのやつと全然違う! どこで買ったのかな? 元に戻ったらお買い物に連れてってもらおーっと!」

 一方。

 寝ている少年のすぐ隣、ぞぞぞぞと影の中から現れた刀。まるで選ばれた人間にしか抜けない聖剣のように、床に突き刺さった状態で君臨している。
 ぱち、と眼を覚ましたきせきはふと、隣の慣れた気配を見た。
「おや、悪食。久し振りに横に突き刺さって……ん?」
 きせき(中身は逝)は……、立ってみれば視界がいつもより低くてそして、
「なんだね、コレ……」
 悪食を抜いて、刃に自分の顔を映してみれば無表情のきせきが。
「つまり、入れ替わったって事かね……」
 とりあえず憑いてきた悪食は引っこ抜いて紙と布で巻いて転がして、……逝は暫く微動さえせずにどうすればいいか考えてみたが、答えが出てこない。
 どうすれば、いいのだろう。
「……」
 また暫く考えたが、いつもの習慣でいこう。きせきが持っている刀の手入れをすることにした。
 研ぎもやろう。包丁用の研ぎ石でイケる。のそのそと歩き出したきせきは、悪食ともう一振りの刀を脇に挟みながら欠伸した。ふと、足下にご都合主義という世界の不思議で置かれていた見慣れたフルフェイスが落ちていたのを拾い、きせきの小さな頭はそれにすっぽりと入った。
 大広間に出て、中央に座る。カキ、と抜いた刃――あっ! 刃毀れ……。


 御白 小唄(CL2001173)はクー・ルルーヴ(CL2000403)の家にいた。
 と、いうのもクーが何かあったようで、その看病なのだという。
「先輩に膝枕をして耳かきをしてあげるのです。普段の恩返しですから。一杯甘えてください!」
 とん、と胸を片手拳で叩いた小唄。クーは、無表情といえばそうかもしれないが、口元が少しだけゆるりと笑う。
 しかし内心、少しクーはどきどきしていた。甘えていいと言われても、今まで素直にそうしてきたことはあっただろうか。
 甘え慣れていない自分を呪うわけでは無いが、この鼓動が彼に伝わるのは少々……乙女心としては恥ずかしいのだ。
 小唄の小さな膝に頭を乗せたクー。そこは特別な定位置。
 小唄は彼女に傷をつけないように細心の注意を払いながら、耳かきを。そして、クーの銀髪を時折優しく撫でていく。
 最初は緊張して時折震えた小唄の手も、いつしか温かみを以てゆっくりと髪の毛の質を確かめていく。クーはそれを、瞳を閉じて受け取っていた。
 耳かきが終わり、手が離れてしまうと、消えた温もりを繋ぎ留めたいと喉が鳴るのだが、しかしあまり欲張って彼に幻滅されるものちょっと。
「小唄さん」
 ふと、クーは彼に向き合って、彼の手を持ち上げてから頬にあてた。再び、温もりが。そこから伝わるものに、ふ、とクーの表情は一層柔らかく、氷が溶けるよう。
「耳かき終わりました、よ……?」
「ありがとうございます」
「……あ、え、っと」
 小唄は少しだけ強引にクーを引いた。ふわ、と彼女の香りがした瞬間、触れたのは唇。
(僕は、何を……?)
 突き放すようでは無いが、飛び退いた小唄は反射的に頭を下げていた。謝罪の言葉を口にしながら、しかし、クーは口元を抑えて、まだ温かい唇をなぞる。
 そこから言葉は無かったが、クーは思わず小唄を胸元に抱き寄せていた。これが離してしまえば彼が消えてしまうような気がして――。
「先輩、こんなときですが、お誕生日おめでとうございます――」
 その後は二人だけの空間なのであろう。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
『下着』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:魂行 輪廻(CL2000534)




 
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