【CTS】ハッピーエンド・レス
●
物語は終着点へと近づいている。
真実を知った覚者たちは一路、東床尾山中隠し倉庫へと車を走らせた。
敵は雛代絞滋郎。またの名を天邪鬼。
『白面鬼』をしたがえた、狂人である。
彼は無数の睡眠チャンバーが並んだ倉庫の中央で、にたりと笑った。
「僕の娘を返してもらう。さあ、目覚めなさい。真実の子供たち」
●シークレットノイズ
これはあなたがみた白昼夢。
どこの時間でもどこの場所でもない別次元での邂逅。
「とうとう、ここまでたどり着くことができたわね。あなたの、もしくはあなたの仲間の夢に介入してから随分と経ったけれど……」
5.5次元空間に存在する上下左右も分からない歪な場所で。
彼女は――。
『アウトサイダー』は――。
雛代供犠は――。
ただ一言こう述べた。
「パパを止めて」
物語は終着点へと近づいている。
真実を知った覚者たちは一路、東床尾山中隠し倉庫へと車を走らせた。
敵は雛代絞滋郎。またの名を天邪鬼。
『白面鬼』をしたがえた、狂人である。
彼は無数の睡眠チャンバーが並んだ倉庫の中央で、にたりと笑った。
「僕の娘を返してもらう。さあ、目覚めなさい。真実の子供たち」
●シークレットノイズ
これはあなたがみた白昼夢。
どこの時間でもどこの場所でもない別次元での邂逅。
「とうとう、ここまでたどり着くことができたわね。あなたの、もしくはあなたの仲間の夢に介入してから随分と経ったけれど……」
5.5次元空間に存在する上下左右も分からない歪な場所で。
彼女は――。
『アウトサイダー』は――。
雛代供犠は――。
ただ一言こう述べた。
「パパを止めて」
■シナリオ詳細
■成功条件
1.倉庫の襲撃、および睡眠チャンバーの破壊
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
ことの元凶とも言うべき雛代絞滋郎の居所を突き止め、襲撃を仕掛け、洗脳に必要としている睡眠チャンバーを破壊しましょう。
そしてこの狂った挑戦に決定的なストップをかけることができます。
●シチュエーションデータ
既に目を覚ました少数の白面鬼が倉庫の周辺を固めています。
これを戦闘によって突破し、倉庫内部へ侵入。
チャンバーを含む洗脳装置を破壊します。
現地への移動は自動車一~二台を用いますが、なんなら白面鬼たちを撥ねてもろとも突入して頂いても構いません。多分それが一番手っ取り早い筈です。
●雛代絞滋郎
覚者。五行は不明。械の因子。
ただし戦闘能力はとても低いものと思われる。ある意味非戦闘員。
白面鬼は雛代絞滋郎を逃がすために戦うため、彼は戦闘中に現場から逃走を可能とします。(今考え得るあらゆる方法で逃走の阻止ができないため、今のところ自動成功状態になっています)
・白面鬼(白面の天邪鬼)
覚者。五行と因子は不明。
主に体術を用い、近接戦闘を得意とする。
全部で20体ほどいますが、その半数ほどは完全に目を覚ましていません。
なので襲撃中に可能な限りの白面鬼を起こして撤退させることが、雛代絞滋郎側の主な作戦となるでしょう。
雛代絞滋郎を逃がすため、彼に多数の白面鬼がついていくことになります。
逃走は主に自動車を用いますが、状況が状況なので破壊はほぼ無理でしょう。
装置の破壊を阻むため、何体かの白面鬼は現場に残って戦闘を行ないます。
夢見、蒼紫 四五九番(nCL2000137)の情報では……
中衛アタッカー5
前衛アタッカー5
の編成でひたすらこちらを責め立てる作戦にでる筈です。
火力による押し込みを推奨します。
●真実の究明について
これまでの活躍により、かなり特殊なルートを通っては来ましたが、最終的に雛代絞滋郎阻止ルートへと入りました。
雛代供犠と青紫四五六番および四五九番の真実やOSE、びおにいちなどの真実が明かされるのはもっと別の機会となるでしょう。
そして、今回探索ルールは適用しません。
予定ではリプレイの序盤から中盤を戦闘パート、終盤を探索と解明パートに割り当てます。
『○○を調査します』といったプレイングは書かなくても一通り行なうものとして判定しますので、空振りにならないようくれぐれもご注意ください。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
7日
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
8/8
公開日
2017年01月22日
2017年01月22日
■メイン参加者 8人■
●アフターインタビューSK
不思議な事件でした。
何一つ分からない不気味な事件から始まって、何も分からない不気味な事件が続いて、今もまだ、不気味なままです。
けどハッキリしてることが一つだけあって……。
はい。
誰もが何かを取り戻そうとしていたんだ、ってことなんです。
もしかしたら、ただそれだけの話だったのかもって。
今は、思います。
●突入
山中を走る車の助手席で、『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)は強く拳を握った。
「つかまってろよ。揺れるどころじゃすまねえぞ」
煙草を噛み潰す『ゴシップ探偵』風祭・誘輔(CL2001092)。
施設が見えてきた段階で、白面鬼が通行を妨げるように腕を広げてきた。
大抵の者はここでブレーキを踏むだろうが、今日は時と事情が違う。
誘輔はアクセルを限界まで踏むと、ハンドルをしっかりと握り込んだ。
「ぶっ放せ!」
「……ごめん!」
車が止まらないとみた白面鬼は力尽くで止めようと踏み出すが、一手先んじて奏空が雷獣を放射。しびれた白面鬼たちを思い切り撥ね飛ばした。
自動車のルーフを転がって飛んでいく少女たち。
遮るより守る方を優先した白面鬼が建物の壁際まで追い詰められた所で、『淡雪の歌姫』鈴駆・ありす(CL2001269)が後部座席からぴょんと飛び出した。
空中でフィンガースナップ。
スローになった世界の中で、指先と瞳がぶわりと燃え上がる。
「いくわよ、ゆる……開眼!」
指さした光は巨大なレーザー光線となって白面鬼たちに照射され、そこへ自動車がまるごと突っ込んでいく。
壁を破壊して半分だけめり込む車。
後部座席にいた納屋 タヱ子(CL2000019)が反動でフロントガラスを突き破って飛び出したが、むしろあえての反動発射であったようで、驚いた雛代博士やアクティブ状態になった白面鬼たちへと自ら飛び込み、起き上がったばかりの白面鬼にマウントを掴んでそのままチャンバーの向こうへと転がり落ちていく。
その様子をなんとなく確認して、ありすは細く短く息を吐いた。
「色々してくれたけど、ここが年貢の納め時よ」
●アフターインタビューAS
嫌な事件だったわ。古妖の起こした事件だって言うけど、あんなのが古妖(どうぞく)なのかって思うような連中ばっかりで。
アウトサイダー、OSE、チルドレンメーカー。どれもおかしな連中だった。生命体って言い方も、存在って言い方も通じないような、めちゃくちゃなナニカだったわ。
関わってる間に周りの人たちまで錯乱しはじめて、どうしようかと思ったけど……。
けど、これで一端は落ち着いたのよね。
さっさと帰って眠りたいわ。
●追撃
雛代博士の倉庫を襲った車は、勿論ながら一台限りではない。
襲撃に対応した白面鬼の展開や、雛代博士を逃がすための動きを読んでの第二発。
八重霞 頼蔵(CL2000693)はハンドルを自転車のタイヤに使うゴムチューブで固定させると、思い切りアクセルを踏み込んだ。
「全員、前方に着地する気持ちで足を突っ張っていたまえ。場合によっては人が死ぬ衝撃だ」
「ははは、嫌いじゃ無いよこういうの。映画みたいでさ」
にこにこ笑って覚醒する葉柳・白露(CL2001329)。
車は誘輔たちの車の真横に突っ込み、壁を突き破るどころかカラのチャンバーを二台ほど破壊しながら屋内へと突っ込んだ。
直後、フロントガラスへと飛び込んでくる白面鬼。拳をハンマー代わりにしてガラスを突き破ってくるが、頼蔵と白露はしめていたシートベルトを切断。ドアを蹴破る勢いで左右へと飛び出した。
同じく後部座席から転がるように飛び出してくる『sylvatica』御影・きせき(CL2001110)。
白面鬼が鉄パイプを横スイングで繰り出してくるがこれを前転で回避。
立ち上がりと同時に抜ぬいた刀で相手の片足をまるごと切断し、強制的に転倒させた。
ふと振り返ると、あと一人が車から出てきていない。
何かあったのかと思った矢先、緒形 逝(CL2000156)がのっそりと車から降りてきた。
顔面から胴体にかけてを刀で串刺しにした白面鬼を引きずり出し、なんか居酒屋で焼き鳥をクシから外してくれる人みたいないい加減さで地面に放り捨てた。
「止めればいいと、じゃあ止めるわよ。やり方は聞いてないからね」
●アフターインタビューKM
楽しかったよ。うん、楽しかった……と、思う。
途中で、色んなことがあって、色んなことが分かんなくなっちゃって、どうしたらいいか、とっても変な気持ちになってたけど、けどちゃんと終わらせたんだ。
えっとね、とっても長い計算ドリルを解いたときと、一緒かな。
スッキリはしてないけど、けど終わったなって思ったんだ。
けどまだ、答え合わせが残ってるんだよね。
解いた問題をそのままにはできないよ。
僕が殺したのは何だったのか、ちゃんと知っておかないと。
なんだか、ダメな気がするんだ。
●混乱
倉庫内、雛代博士を肉眼で確認。
タブレットPCのようなもので何かを操作した後、慌てた様子で突っ込んできた車とは逆方向に走った。
車から降りた誘輔は、まずは変装を試みた。蒼紫 四五九番の容姿に似せて立ち、『お父さん』と呼びかけるのだ。
一瞬動きを止めた雛代博士だが、すぐに首を振って走りなおした。こんな所にいるはずが無い。偽物だ。そんな風に言ったような気がしたが、聞き取れるものではなかった。
全方位から取り囲むようにアクティブになった白面鬼が襲いかかってくるからだ。
舌打ちし、変装道具を捨てて殴り飛ばす。
正面から飛びかかる相手の腹めがけてランチャー化した腕を叩き付けるのだ。
後続の白面鬼もろともドミノ倒しになって転がった所に、すかさずグレネードを発射する。かなり今更な話だが、誘輔の装備しているグレネードランチャーはよくある爆弾のピンを抜いて飛ばし、ワンテンポ遅れてドカンとなるやつとは若干異なり勢いよく飛ばして火薬弾頭が接触即爆する仕組みのものである。
焼かれる白面鬼たちを飛び越え、白露とありすが雛代博士を追う。
ありすはフィンガースナップで描いた横一文字を炎に変え、巨大な獣の如く襲いかからせる。
白面鬼が飛び出し、雛代博士を庇うように立った。
その横をすり抜けて走る白露。
刀がヒートアップし、流れる軌跡が炎の線を引く。
雛代博士に刃が迫る直前、別の白面鬼が割り込んで刃を素手で握り込む。
苦笑と微笑の中間くらいの顔で、白露は白面鬼を蹴りつけた。
一方で、奏空が真言を唱えて大気中にエネルギーの波紋を生成。仲間を回復し始めた。
「娘を助けたい親心だったのかも知れないけど、やってることは人の道を外れてる。必ず止めるよ!」
そんな奏空を取り押さえようとタックルを仕掛けてくる白面鬼。
押し倒されそうになった所へ、タヱ子が割り込んでガード。
奏空はよろめき、チャンバーに寄りかかる形になった。
チャンバーの中では仮面の少女が眠っている。
空気が吹き出し、ケースの蓋が開き始めたところで、奏空は頼蔵たちに呼びかけた。
「こっちです! 今のうちに!」
頼蔵は頷き、開いたケースの中めがけて拳銃で射撃しながら急接近。
むくりと起き上がった所で、首をすぱんとはねた。
一方でカラのチャンバーの上を飛ぶように駆け寄ってきたきせきが、二人の頭上を飛んで別のチャンバーへと着地。
着地と同時にケースに刀を突き立てた。
透明なカバーを貫く刃が、眠った仮面の少女の胸へと突き刺さる。
横合いから飛びかかってくる白面鬼。
きせきは刀を引き抜き、顔面めがけて振り込んだ。
仮面が砕け、転がり落ちる白面鬼。
素顔を晒し、そのことに気づいた途端、白面鬼は血の涙を吹いて発狂した。
舌を自ら噛み千切って絶命する白面鬼に、念のためのトドメとして胸を刀で突く逝。
トントンとヘルメットをつついて振り返る。
●アフターインタビューRY
私がこの依頼を引き受けたのは、好奇心ゆえだ。
未知なる敵。怪奇現象。暗躍する財団。非常に興味深い案件だった。
そんな状況に対して、私たちは真相の究明を求めて行動していたつもりだ。
勿論、全容が解明したわけではないが、一つの終点にはたどり着けたように思う。
ところで、私からも聞いていいかな。
……雛代博士が死んだというのは本当か?
●破壊
暴れる白面鬼に馬乗りになり、刀の柄で殴りつける。
幾度も幾度も殴りつけて仮面を破壊して、血を吹く相手を押さえつける。
きせきは自分が無表情で相手を殴っていたことに気づいて、少しだけ目を険しくした。
「あぶないきせき、伏せて!」
奏空の声がする。慌てて伏せると、奏空が彼の頭上を抜けるように雷獣を放った。
白面鬼たちに直撃し、動きが鈍った所に斬りかかる。
追撃するように、白露も炎を纏った刀で斬りかかった。
ばさばさと切り捨てられていく白面鬼。
「そろそろ、おしまいにしましょうか」
ありすは両手を組むと、まるで銃を撃つように人差し指を突き出した。
炎が集まり、光の球に変わっていく。
ありすはそれこそ大口径の銃でも撃つように、炎の弾を白面鬼たちへと乱射していく。
炎に包まれ、焼け焦げていく白面鬼たち。
制圧するように銃撃をしながら進む頼蔵と誘輔。
まるで地獄のような騒音は、最後の白面鬼を逝が踏みつけたところで鳴り止んだ。
「もう、敵はいないかい?」
●アフターインタビューHH
一番印象に残ってること?
なにかなあ……ああ、チャンバーの中にボクを見た時かな。これは何かあるなって思ったよ。
それが何だったのかは、実はまだ全然分かっていないんだけどね。
ねえ、思わない? これが物語だったとしたら、誰も報われないお話になるってさ。
子供たちは死んで、雛代博士は消えてしまって、雛代供犠も青紫もあのままさ。
変わったことといえば、奪われたチルドレンメーカーを回収したことくらいで……。
……ん?
ちょっと待って、君って、そんな名前だったっけ?
●残骸
誘輔は、煙草をくわえてライターを探した。
どこにもないことに気づいて舌打ちしていると、頼蔵がフィンガースナップによって火をつけてくれた。
苦笑する誘輔。
「なあアンタ、こういう光景……見たことあるか?」
「戦闘の後はこんなものだろう」
倉庫の中は地獄めいていた。
壁や自動車によって突き破られ、あたり一面焦げ後だらけで、火薬なのか焼けた鉄なのか、それとも蒸発した血なのか分からないようなぐちゃぐちゃした臭いが立ちこめている。
「いや、俺たちがこうなる前だよ」
「……まあ、日本には珍しい光景だろうね」
ある国で自爆テロが多発したことがあった。
銀行に爆弾を積んだ車が突っ込んだという、誘輔あたりからすればもはや当たり前のような事件である。
海外のクソ安いホテルで寝ていた時に、ドンという衝撃で目覚め、それが爆発だと気づいて外へかけだしていく。
警察の封鎖は進んでいるが、ジャーナリストだということを証明カードと共に説明するとまだ封鎖されていない橋の存在を教え『走れ』と言われた。
走る背中に警察官は、『このクソみたいな現実を広めてくれ』と叫んだものだったが……。
「ま、集められるだけの資料は集めてみるか」
あちこち拾い集めていくと、奏空がぶつぶつと何かを言っているのがわかった。
「あっちの世界とこっちの世界。そもそもそれを生み出したのは何なんだろう。青紫さんに夢見としての能力の他に平行世界へ行ける能力があったのかどうか。青紫さんはチルドレンメーカーで作られた真実の子供。親である雛代博士がそうしたんだと思う。なんらかの事情で死にそうになった娘を助ける為か、そして雛代博士自信もチルドレンメーカーに? 俺達が対峙した博士は元の雛代博士ではなく覚者として生き残った一人なのかもしれ――」
「おい、なにぶつぶつ言ってるんだ」
「あ、いや……なんだか頭がぐるぐるしちゃって」
無理もない。誘輔はそう思って奏空の頭をがしがしとしてやった。
●アフターインタビューYK
胸くそ悪い事件だと思わねえか。
何が何だか分からねえまま、俺たちはあの倉庫に飛び込んでいった。
そりゃあ、あれを放っておけば最悪の事態が起きただろうさ。
理由も最悪なら手段も最悪の、クソを喰ってひり出したクソみてえな、最悪な事態だぜ。
大体なんだってんだ。あのガキどもは実験に利用されただけだってのか?
死人は戻らねえんだよ。雛代博士がしたことはしょっぱい現実逃避だ。
誰かの迷惑にしかならねえんだよ。
●夢見、追加報告
山中を走る雛代博士。
何かにおびえるように、周囲をきょろきょろと見回しては息を切らせて走っていた。
振り向き、拳銃を乱射する。
弾が切れて、銃をまるごと投げつけるが、それは弾き落とされた。
木の根につまづき転倒する雛代博士。
彼の胸を靴で踏みつける男。
彼はロシア語で何かを呟くと、博士の額に六度銃撃を加えた。
拳銃を持ったまま脈を取り、死亡を確認。懐にあった端末やメモを取り出し、火をつけて焼却する。
「装置の回収と、関係者の抹殺……か。あと八人、って所だな」
●だれかの見た夢
病院を出て走る。
タヱ子は息を切らせて、光の先にある光景に目をこらした。
無数のパトカーと救急車がとまり、自分を注目している。
膝から力が抜け、駆け寄ってきた警察官に抱きかかえられた。
「もう大丈夫だ。中はどうなっている?」
「バケモノが沢山いて、みんなが……」
「分かった。後は任せなさい」
銃を持った警官たちが病院へ駆け込んでいく。
そんな光景をぼうっと眺めていると、二人の男女が駆け寄ってきた。
「タヱ子ちゃん! タヱ子ちゃん!」
「すまない、もう病院に入れるなんて言わないから! お父さんを許してくれ!」
二人に抱きかかえられ、ああこの人たちがこの世界での両親なのかとぼんやり思う。
「さあ、家に帰りましょ。これを……」
母親に何かを差し出される。
真っ白な仮面だ。
両親も、警察官も、やじうまも、皆同じ仮面をつけていた。
「……はい」
タヱ子は仮面をつけ、手を引かれて行った。
●アフターインタビューTN
すみません、気持ちの悪い夢を見たんです。
話すのは、また今度でいいですか?
不思議な事件でした。
何一つ分からない不気味な事件から始まって、何も分からない不気味な事件が続いて、今もまだ、不気味なままです。
けどハッキリしてることが一つだけあって……。
はい。
誰もが何かを取り戻そうとしていたんだ、ってことなんです。
もしかしたら、ただそれだけの話だったのかもって。
今は、思います。
●突入
山中を走る車の助手席で、『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)は強く拳を握った。
「つかまってろよ。揺れるどころじゃすまねえぞ」
煙草を噛み潰す『ゴシップ探偵』風祭・誘輔(CL2001092)。
施設が見えてきた段階で、白面鬼が通行を妨げるように腕を広げてきた。
大抵の者はここでブレーキを踏むだろうが、今日は時と事情が違う。
誘輔はアクセルを限界まで踏むと、ハンドルをしっかりと握り込んだ。
「ぶっ放せ!」
「……ごめん!」
車が止まらないとみた白面鬼は力尽くで止めようと踏み出すが、一手先んじて奏空が雷獣を放射。しびれた白面鬼たちを思い切り撥ね飛ばした。
自動車のルーフを転がって飛んでいく少女たち。
遮るより守る方を優先した白面鬼が建物の壁際まで追い詰められた所で、『淡雪の歌姫』鈴駆・ありす(CL2001269)が後部座席からぴょんと飛び出した。
空中でフィンガースナップ。
スローになった世界の中で、指先と瞳がぶわりと燃え上がる。
「いくわよ、ゆる……開眼!」
指さした光は巨大なレーザー光線となって白面鬼たちに照射され、そこへ自動車がまるごと突っ込んでいく。
壁を破壊して半分だけめり込む車。
後部座席にいた納屋 タヱ子(CL2000019)が反動でフロントガラスを突き破って飛び出したが、むしろあえての反動発射であったようで、驚いた雛代博士やアクティブ状態になった白面鬼たちへと自ら飛び込み、起き上がったばかりの白面鬼にマウントを掴んでそのままチャンバーの向こうへと転がり落ちていく。
その様子をなんとなく確認して、ありすは細く短く息を吐いた。
「色々してくれたけど、ここが年貢の納め時よ」
●アフターインタビューAS
嫌な事件だったわ。古妖の起こした事件だって言うけど、あんなのが古妖(どうぞく)なのかって思うような連中ばっかりで。
アウトサイダー、OSE、チルドレンメーカー。どれもおかしな連中だった。生命体って言い方も、存在って言い方も通じないような、めちゃくちゃなナニカだったわ。
関わってる間に周りの人たちまで錯乱しはじめて、どうしようかと思ったけど……。
けど、これで一端は落ち着いたのよね。
さっさと帰って眠りたいわ。
●追撃
雛代博士の倉庫を襲った車は、勿論ながら一台限りではない。
襲撃に対応した白面鬼の展開や、雛代博士を逃がすための動きを読んでの第二発。
八重霞 頼蔵(CL2000693)はハンドルを自転車のタイヤに使うゴムチューブで固定させると、思い切りアクセルを踏み込んだ。
「全員、前方に着地する気持ちで足を突っ張っていたまえ。場合によっては人が死ぬ衝撃だ」
「ははは、嫌いじゃ無いよこういうの。映画みたいでさ」
にこにこ笑って覚醒する葉柳・白露(CL2001329)。
車は誘輔たちの車の真横に突っ込み、壁を突き破るどころかカラのチャンバーを二台ほど破壊しながら屋内へと突っ込んだ。
直後、フロントガラスへと飛び込んでくる白面鬼。拳をハンマー代わりにしてガラスを突き破ってくるが、頼蔵と白露はしめていたシートベルトを切断。ドアを蹴破る勢いで左右へと飛び出した。
同じく後部座席から転がるように飛び出してくる『sylvatica』御影・きせき(CL2001110)。
白面鬼が鉄パイプを横スイングで繰り出してくるがこれを前転で回避。
立ち上がりと同時に抜ぬいた刀で相手の片足をまるごと切断し、強制的に転倒させた。
ふと振り返ると、あと一人が車から出てきていない。
何かあったのかと思った矢先、緒形 逝(CL2000156)がのっそりと車から降りてきた。
顔面から胴体にかけてを刀で串刺しにした白面鬼を引きずり出し、なんか居酒屋で焼き鳥をクシから外してくれる人みたいないい加減さで地面に放り捨てた。
「止めればいいと、じゃあ止めるわよ。やり方は聞いてないからね」
●アフターインタビューKM
楽しかったよ。うん、楽しかった……と、思う。
途中で、色んなことがあって、色んなことが分かんなくなっちゃって、どうしたらいいか、とっても変な気持ちになってたけど、けどちゃんと終わらせたんだ。
えっとね、とっても長い計算ドリルを解いたときと、一緒かな。
スッキリはしてないけど、けど終わったなって思ったんだ。
けどまだ、答え合わせが残ってるんだよね。
解いた問題をそのままにはできないよ。
僕が殺したのは何だったのか、ちゃんと知っておかないと。
なんだか、ダメな気がするんだ。
●混乱
倉庫内、雛代博士を肉眼で確認。
タブレットPCのようなもので何かを操作した後、慌てた様子で突っ込んできた車とは逆方向に走った。
車から降りた誘輔は、まずは変装を試みた。蒼紫 四五九番の容姿に似せて立ち、『お父さん』と呼びかけるのだ。
一瞬動きを止めた雛代博士だが、すぐに首を振って走りなおした。こんな所にいるはずが無い。偽物だ。そんな風に言ったような気がしたが、聞き取れるものではなかった。
全方位から取り囲むようにアクティブになった白面鬼が襲いかかってくるからだ。
舌打ちし、変装道具を捨てて殴り飛ばす。
正面から飛びかかる相手の腹めがけてランチャー化した腕を叩き付けるのだ。
後続の白面鬼もろともドミノ倒しになって転がった所に、すかさずグレネードを発射する。かなり今更な話だが、誘輔の装備しているグレネードランチャーはよくある爆弾のピンを抜いて飛ばし、ワンテンポ遅れてドカンとなるやつとは若干異なり勢いよく飛ばして火薬弾頭が接触即爆する仕組みのものである。
焼かれる白面鬼たちを飛び越え、白露とありすが雛代博士を追う。
ありすはフィンガースナップで描いた横一文字を炎に変え、巨大な獣の如く襲いかからせる。
白面鬼が飛び出し、雛代博士を庇うように立った。
その横をすり抜けて走る白露。
刀がヒートアップし、流れる軌跡が炎の線を引く。
雛代博士に刃が迫る直前、別の白面鬼が割り込んで刃を素手で握り込む。
苦笑と微笑の中間くらいの顔で、白露は白面鬼を蹴りつけた。
一方で、奏空が真言を唱えて大気中にエネルギーの波紋を生成。仲間を回復し始めた。
「娘を助けたい親心だったのかも知れないけど、やってることは人の道を外れてる。必ず止めるよ!」
そんな奏空を取り押さえようとタックルを仕掛けてくる白面鬼。
押し倒されそうになった所へ、タヱ子が割り込んでガード。
奏空はよろめき、チャンバーに寄りかかる形になった。
チャンバーの中では仮面の少女が眠っている。
空気が吹き出し、ケースの蓋が開き始めたところで、奏空は頼蔵たちに呼びかけた。
「こっちです! 今のうちに!」
頼蔵は頷き、開いたケースの中めがけて拳銃で射撃しながら急接近。
むくりと起き上がった所で、首をすぱんとはねた。
一方でカラのチャンバーの上を飛ぶように駆け寄ってきたきせきが、二人の頭上を飛んで別のチャンバーへと着地。
着地と同時にケースに刀を突き立てた。
透明なカバーを貫く刃が、眠った仮面の少女の胸へと突き刺さる。
横合いから飛びかかってくる白面鬼。
きせきは刀を引き抜き、顔面めがけて振り込んだ。
仮面が砕け、転がり落ちる白面鬼。
素顔を晒し、そのことに気づいた途端、白面鬼は血の涙を吹いて発狂した。
舌を自ら噛み千切って絶命する白面鬼に、念のためのトドメとして胸を刀で突く逝。
トントンとヘルメットをつついて振り返る。
●アフターインタビューRY
私がこの依頼を引き受けたのは、好奇心ゆえだ。
未知なる敵。怪奇現象。暗躍する財団。非常に興味深い案件だった。
そんな状況に対して、私たちは真相の究明を求めて行動していたつもりだ。
勿論、全容が解明したわけではないが、一つの終点にはたどり着けたように思う。
ところで、私からも聞いていいかな。
……雛代博士が死んだというのは本当か?
●破壊
暴れる白面鬼に馬乗りになり、刀の柄で殴りつける。
幾度も幾度も殴りつけて仮面を破壊して、血を吹く相手を押さえつける。
きせきは自分が無表情で相手を殴っていたことに気づいて、少しだけ目を険しくした。
「あぶないきせき、伏せて!」
奏空の声がする。慌てて伏せると、奏空が彼の頭上を抜けるように雷獣を放った。
白面鬼たちに直撃し、動きが鈍った所に斬りかかる。
追撃するように、白露も炎を纏った刀で斬りかかった。
ばさばさと切り捨てられていく白面鬼。
「そろそろ、おしまいにしましょうか」
ありすは両手を組むと、まるで銃を撃つように人差し指を突き出した。
炎が集まり、光の球に変わっていく。
ありすはそれこそ大口径の銃でも撃つように、炎の弾を白面鬼たちへと乱射していく。
炎に包まれ、焼け焦げていく白面鬼たち。
制圧するように銃撃をしながら進む頼蔵と誘輔。
まるで地獄のような騒音は、最後の白面鬼を逝が踏みつけたところで鳴り止んだ。
「もう、敵はいないかい?」
●アフターインタビューHH
一番印象に残ってること?
なにかなあ……ああ、チャンバーの中にボクを見た時かな。これは何かあるなって思ったよ。
それが何だったのかは、実はまだ全然分かっていないんだけどね。
ねえ、思わない? これが物語だったとしたら、誰も報われないお話になるってさ。
子供たちは死んで、雛代博士は消えてしまって、雛代供犠も青紫もあのままさ。
変わったことといえば、奪われたチルドレンメーカーを回収したことくらいで……。
……ん?
ちょっと待って、君って、そんな名前だったっけ?
●残骸
誘輔は、煙草をくわえてライターを探した。
どこにもないことに気づいて舌打ちしていると、頼蔵がフィンガースナップによって火をつけてくれた。
苦笑する誘輔。
「なあアンタ、こういう光景……見たことあるか?」
「戦闘の後はこんなものだろう」
倉庫の中は地獄めいていた。
壁や自動車によって突き破られ、あたり一面焦げ後だらけで、火薬なのか焼けた鉄なのか、それとも蒸発した血なのか分からないようなぐちゃぐちゃした臭いが立ちこめている。
「いや、俺たちがこうなる前だよ」
「……まあ、日本には珍しい光景だろうね」
ある国で自爆テロが多発したことがあった。
銀行に爆弾を積んだ車が突っ込んだという、誘輔あたりからすればもはや当たり前のような事件である。
海外のクソ安いホテルで寝ていた時に、ドンという衝撃で目覚め、それが爆発だと気づいて外へかけだしていく。
警察の封鎖は進んでいるが、ジャーナリストだということを証明カードと共に説明するとまだ封鎖されていない橋の存在を教え『走れ』と言われた。
走る背中に警察官は、『このクソみたいな現実を広めてくれ』と叫んだものだったが……。
「ま、集められるだけの資料は集めてみるか」
あちこち拾い集めていくと、奏空がぶつぶつと何かを言っているのがわかった。
「あっちの世界とこっちの世界。そもそもそれを生み出したのは何なんだろう。青紫さんに夢見としての能力の他に平行世界へ行ける能力があったのかどうか。青紫さんはチルドレンメーカーで作られた真実の子供。親である雛代博士がそうしたんだと思う。なんらかの事情で死にそうになった娘を助ける為か、そして雛代博士自信もチルドレンメーカーに? 俺達が対峙した博士は元の雛代博士ではなく覚者として生き残った一人なのかもしれ――」
「おい、なにぶつぶつ言ってるんだ」
「あ、いや……なんだか頭がぐるぐるしちゃって」
無理もない。誘輔はそう思って奏空の頭をがしがしとしてやった。
●アフターインタビューYK
胸くそ悪い事件だと思わねえか。
何が何だか分からねえまま、俺たちはあの倉庫に飛び込んでいった。
そりゃあ、あれを放っておけば最悪の事態が起きただろうさ。
理由も最悪なら手段も最悪の、クソを喰ってひり出したクソみてえな、最悪な事態だぜ。
大体なんだってんだ。あのガキどもは実験に利用されただけだってのか?
死人は戻らねえんだよ。雛代博士がしたことはしょっぱい現実逃避だ。
誰かの迷惑にしかならねえんだよ。
●夢見、追加報告
山中を走る雛代博士。
何かにおびえるように、周囲をきょろきょろと見回しては息を切らせて走っていた。
振り向き、拳銃を乱射する。
弾が切れて、銃をまるごと投げつけるが、それは弾き落とされた。
木の根につまづき転倒する雛代博士。
彼の胸を靴で踏みつける男。
彼はロシア語で何かを呟くと、博士の額に六度銃撃を加えた。
拳銃を持ったまま脈を取り、死亡を確認。懐にあった端末やメモを取り出し、火をつけて焼却する。
「装置の回収と、関係者の抹殺……か。あと八人、って所だな」
●だれかの見た夢
病院を出て走る。
タヱ子は息を切らせて、光の先にある光景に目をこらした。
無数のパトカーと救急車がとまり、自分を注目している。
膝から力が抜け、駆け寄ってきた警察官に抱きかかえられた。
「もう大丈夫だ。中はどうなっている?」
「バケモノが沢山いて、みんなが……」
「分かった。後は任せなさい」
銃を持った警官たちが病院へ駆け込んでいく。
そんな光景をぼうっと眺めていると、二人の男女が駆け寄ってきた。
「タヱ子ちゃん! タヱ子ちゃん!」
「すまない、もう病院に入れるなんて言わないから! お父さんを許してくれ!」
二人に抱きかかえられ、ああこの人たちがこの世界での両親なのかとぼんやり思う。
「さあ、家に帰りましょ。これを……」
母親に何かを差し出される。
真っ白な仮面だ。
両親も、警察官も、やじうまも、皆同じ仮面をつけていた。
「……はい」
タヱ子は仮面をつけ、手を引かれて行った。
●アフターインタビューTN
すみません、気持ちの悪い夢を見たんです。
話すのは、また今度でいいですか?
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし

■あとがき■
・判定補足
『変装の達人』を使用するプレイングがありましたが、当スキルが活性化されていなかったため通常行動として判定しております。
『変装の達人』を使用するプレイングがありましたが、当スキルが活性化されていなかったため通常行動として判定しております。








