燃え上がる太古の遺跡
燃え上がる太古の遺跡


●その炎は燃え尽きることなく……
 奈良県のとある遺跡。
 それは、某市の町外れにおいて、ボーリング調査を行っていた際に発見された。
 ボーリングマシンから突然炎が湧き出て、工事現場で働いていた男性達が焼死した事件があった。
 その後、原因を調べてみると、地中から炎の塊のような妖が多数出現したという。
 妖が出現するとあって、この場所の土地計画……商業施設が建設予定だったらしいが、白紙に戻された。
 これに興味を抱いたのは考古学者達だったが、如何せん、常に炎に包まれているという遺跡。調べようにも入り口から入ることすら叶わない。
 この為、他の遺跡探索に区切りがついた『F.i.V.E.』へと、遺跡突入に当たって妖退治の依頼が舞い込むのである。

 前回、発見した遺跡は、妖の出現がなくなったことで、多数の覚者がその探索を行う形となった。その為、あちらは有志のメンバーに任せ、考古学者達は別の遺跡の調査を行うことにした。だが……。
「その遺跡は、常に炎が燃え上がっておるそうなのじゃ」
 その為、探索にも制限が出てしまう。考古学者達は防火服を着て調査に臨むが、耐え難い熱などもあり、長時間の探索が出来ない。
 しかも、ここに妖まで出現するようなのだ。
「遺跡の炎から妖が生まれておるのか、妖がいるから炎が消えぬのかは分からぬが……」
 ともあれ、遺跡があれば、神秘解明に当たる『F.i.V.E.』としては黙っていられない。まずは調査できる環境を整え、自分達もその調査に参加してみたいものだ。
「今回は、ボーリングで開いた縦穴周囲と、穴の中に突入後周辺の妖の討伐じゃな」
 入り口すら目視で確認が難しいというのであれば、まずはそこからだ。
 穴の周囲には、常にランク1の妖が5体ほど浮いているという。その討伐はさほど苦労しないだろうが、問題は穴に入ってからだ。
「地中の穴は、垂直方向に20メートル程じゃな。そこから先は、よく分かってはおらぬのじゃが……」
 焼け焦げたボーリングマシンは穴を穿つ部分の尖端が溶けてしまっており、そこから燃え上がって地上部の機械、作業員へと引火したと思われる。どうやら通路の真上から、マシンは天井をぶち抜いてしまったらしい。
 まず、この近辺の妖を討伐しておきたい。こちらは、ランク2の妖も現れると予測されている。
「遺跡内の炎は、皆にも効果があるはず。じりじりとその身を焦がそうとするから、突入時は注意するのじゃ」
 炎は容赦なく体力を削っていく。遺跡内では自然に回復することもない為、現状では妖を倒したら満足に探索も難しい。妖を倒して炎が鎮火していけば、まだ違うかもしれないが……。
「ともあれ、探索の為の足がかりを作りたいのう。よろしく頼むぞ」
 けいはやや心配そうな眼差しを覚者達に向けつつも、依頼の成功を願うのだった。


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:なちゅい
■成功条件
1.炎の妖の討伐
2.なし
3.なし
初めましての方も、
どこかでお会いしたことのある方もこんにちは。なちゅいです。

新たな遺跡調査の開始ですが……。
なかなか難儀な状況のようです。
突入の為の状況作りを願います。

なお、遺跡関連シナリオ第2弾ですが、
(前回は神秘探索シナリオですので除外されます)
どなた様でも参加できますよう
シリーズシナリオとはなっておりませんので、
予めご了承願います。

●敵……妖(自然系)
 火の玉の形をした妖です。
 いずれも、浮遊、火傷無効状態にあります。
○ランク2
 直径20センチ余りある大きさの火の玉で、人の顔が浮かんでおります。
・火柱……特近列・火傷
・炎上……特遠単・怒り
・かぶりつき……物遠単・HP吸収

○ランク1
 直径15センチ前後の火の玉で、こちらには顔はありません。
・火炎弾……特遠単・火傷
・体当たり……物遠単

なお、火傷と下記特別ルールのHP減少のダメージは重複します。

●状況
○地上部
ランク1が5体のみ。穴だけ気をつければ、スペースを広く使って戦えます。

○穴内部
突入時は、ロープなどが使用可能です。
穴の底は遺跡の天井を突き破る形となっております。
通路は一定幅がありそうですが、
遺跡突入が出来ていない為、詳細は不明です。
ランク2が2体、ランク1が5体現れます。
戦い後は大事を取り、
探索できずに離脱することになるかと思われます。

●当シナリオ特別ルール
遺跡(炎上エリア)突入時は
1ターン(10秒)経過ごとにHPが10減少し、
戦闘以外でも回復することがありません。
今回は、縦穴の底に降り立った地点からのカウントです。
また、今後の展開次第で
このルール適用除外エリアが広がる可能性があります。

それではよろしくお願いいたします。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(0モルげっと♪)
相談日数
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
公開日
2016年11月16日

■メイン参加者 8人■

『五行の橋渡し』
四条・理央(CL2000070)
『静かに見つめる眼』
東雲 梛(CL2001410)
『ストレートダッシュ』
斎 義弘(CL2001487)
『雷麒麟』
天明 両慈(CL2000603)
『在る様は水の如し』
香月 凜音(CL2000495)
『研究所職員』
紅崎・誡女(CL2000750)

●燃え上がる遺跡とは……?
 奈良県某市。
 商業施設の建設の為、工事が行われていた場所。
 だが、その現場の地下に見つかった遺跡の為か、工事は中断されている。また、その場所は、遠目からでも真っ赤に見えた。
「さて、炎が巻き上がる遺跡を探索するのが、今回の仕事だ」
「遺跡ですか、面白そうですね。次の為に頑張りましょう」
 斎 義弘(CL2001487)が改めて依頼内容を確認すると、『研究所職員』紅崎・誡女(CL2000750)がかすれた声で仲間達へと依頼成功の為に檄を飛ばす。
「このご時世、未だに調査のなされていない遺跡とか出てくるものなんだな」
 こういうのは学者が喜ぶのだろうと、香月 凜音(CL2000495)は考える。
「また新しい遺跡……。今度は溶岩遺跡? ……じゃないわね。炎が生まれているのね、中から」
 『女帝』エメレンツィア・フォン・フラウベルク(CL2000496)は以前に調査、探索した大亀遺跡との共通性を考える。
「炎に包まれた遺跡か……。熱いのは苦手なのだが……いや、苦手がどうこうと言うレベルではないだろうな」
 暑く、そして、熱い場所。『雷麒麟』天明 両慈(CL2000603)は内部の状況を想像する。今回はそれでも、突入の為の足がかりを作る段階、この次の段階に臨むメンバーに比べれば、幾分か楽なのかもしれないのだが……。
「ふふ、どうなっているのかしら。気になるわね」
「火が関わりそうな遺跡で、火の妖か」
 やはり、妖や古妖といった存在が、炎を生み出しているのだろうかとエメレンツィアは推測する。『五行の橋渡し』四条・理央(CL2000070)もまた、大亀遺跡の探索へ足繁く通っていた。あちらの遺跡には、自然の洞窟を流用した場所に土系の妖がいた。
「これって、ただの偶然かな?」
 推論があっているのかどうかを確かめようと、理央は遺跡探索に臨む。
「妖……古妖がいて炎が生まれるのか、炎があって妖が生まれるのか」
 もし、後者であったならば。炎を生む何かがありそうかなと、東雲 梛(CL2001410) も推論を語っていた。
「いや、妖が現れ始めた時期を考えると、最初から炎の妖と関係する遺跡だったってのは考えにくいよな」
 続けて、『守人刀』獅子王 飛馬(CL2001466) はなんらかの理由で、この地に妖が住み着いたという持論を展開させる。もしかしたならば、炎の古妖が関係する遺跡という線もあると。
 かなり、遺跡に興味を抱き、自らの考えを語り合うメンバー達に対し、凜音はやや気乗りしない表情も垣間見せる。
 だが、遺跡の謎を解く前に……。その入り口となる工事現場では、死者も出ているという。妖を討伐せねば、遺跡突入もできぬどころか、周囲に被害すら出る懸念すらある。
「十分に気合を入れていかなければいけないな」
 義弘が呟く言葉に、メンバー達は改めて気合を入れ直すのである。

●突入の環境作り
 工事現場にやってきた覚者達。
 撃ち捨てられた機械に重機。現場の中央には深い穴が穿たれていた。
「まずは、地上の掃除からだ」
 凜音は自分達の頭上に浮かぶ、5体の火の玉を見上げる。
「何で、新しい遺跡には必ず、表にも敵がいるのかしら」
 そんな疑問を抱くエメレンツィアだが、妖は構うことなく覚者達のほうへと近づいてくる。
「この場は出し惜しみなしよ」
 銀の長髪を赤く染めたエメレンツィアが英霊の力を引き出す間、誡女は敵との距離を維持しつつ、敵に向けて高密度の霧を発して身体能力をダウンさせていく。
 仲間に補助を任せ、長い髪を銀に変色させた両慈は直接攻撃に乗り出す。頭上から光の粒を降らせ、敵陣へと叩きつけていく。
「顔がない火の玉の妖か。まぁ、よっぽど油断しなきゃ楽勝だね」
 額に瞳を出現させた梛も気を抜かぬように、妖の討伐に臨む。敵は手前から3、2に分かれて展開している。中衛に立つ彼はその布陣を確認し、特殊な花から香りを放って敵を弱体化させていった。
 ともあれ、数を減らそうと赤い瞳で敵を見据えた理央は神秘の力を持つ水竜を放つ。水竜は敵陣を火の玉を飲み込んでいく。
 ただ、その程度で妖の勢いは衰えず、直接特攻して自らの体を叩き付けて来る他、炎の弾を発して放ってくる。
 威力はそこそこといったところ。それでも、ダメージが積もれば危険だ。灰色の髪となっていた凜音が雨を降らして仲間を癒していく。
「地面に穴も開いてるから、注意しろよ」
 最年少の飛馬は刀で飛んでくる炎を防ごうとしつつ、周囲の岩を鎧のように纏い、祝詞を唱えて補助に回る。

 戦闘自体は無難に進む。
 エメレンツィアの発する水竜が2体の火の玉を消滅させ、誡女が義腕で殴って別の1体を消化し沈黙させる。額の目から梛が怪光線で敵を射抜き、迫った義弘がメイスを叩き付けた瞬間に爆発させ、そいつの活動を停止させる。
「これで一区切り、だな」
 外周の敵を倒し、義弘は一旦息をつく。
 ここからが本番ではあるのだが、妖との戦いによる疲弊は小さく積もってはいる。
 この後の戦いに備え、万全を期すべく理央や両慈が仲間の傷を全快させていった。
「悪ぃけど、俺の気力回復頼めるか?」
 同じく、回復に回っていた凜音が声を上げる。この後も凜音は回復に当たる予定だからこそ、準備はしっかりと行っておきたい。彼は自身以外にも回復に頼れる仲間の手を借り、誡女に気力を分け与えてもらっていた。
「ありがとう」
 その傍らでは、傷がすっかり塞がったことを確認した梛が仲間に礼を告げていた。

●突入後すぐに……
 遺跡内部は炎により、体力が削られてしまうという話がある。この為、可能な限り体力を万全にした覚者達は体力が多い順に突入することにした。
「みんな足元には注意してくれよな」
 先陣を切ってロープで突入するのは、飛馬だ。
 熱気に気をつけながら、誡女が続く。さほど、焦げ臭さなどを感じることがないことから、物理的な要因による炎ではなさそうと考えつつ降りていく。
 梛が3番手。遺跡内に降り立った彼は、超直感、同属把握も合わせて警戒を行う。古妖の存在を探るが、近場にはそれらしきモノは感じられない。
 次に、両慈、理央が続く。突入するメンバー全員にベールを包み込んだエメレンツィアが後を追い、凜音が後から2番目で突入する。
「寒い時期には暖を求めたくなるが、この暑さは御免だな」
 しかも、長いこと放置されていたと思われる遺跡。その時代のものはあるべきままにしておきたいと凜音は密かに思う。
 それでも、何か役に立つものがでるのであれば、それはそれで御の字ではある。彼は多少考えを割り切り、燃え上がる遺跡に入っていく。
(本来であれば、先頭に立って仲間を守りたいんだが)
 そして、殿の義弘。ただ、彼はそれを余計な考えと切り捨て、スキルを使った上で警戒を強めながらもロープをつたって降りていった。

「熱い。肌がピリピリする」
「物凄い暑さだな。蒸し風呂どころではない……」
 梛、義弘は降り立った遺跡内部を見渡す。
 内部は、壁や天井はもちろんのこと、時折中に発火する炎がメンバーの体力を容赦なく削っていく。
 エメレンツィアは壁に向けて水つぶてを飛ばしてみる。一時的に炎は消えたようだが、それでも周囲の火が燃え広がり、元のように燃え上がってしまう。勢いが若干弱まっているようにも見えるが、これではキリがなさそうだ。
「早く終わらせて、一杯やりたくなってしまうな……」
 義弘はいち早く喉を潤したいと考える。依頼後に飲むビールはさぞかし美味しいことだろう。
「酸欠の恐れはないと思いますが、体調の変化には気をかけましょう」
 熱い空気が体内に入っていくが、すぐに酸欠になるという状況ではなさそうだ。
 炎が通路を照らしてはいるが、光源としては微妙なところ。梛、飛馬は竜系の守護使役、まもりとともしびに周囲を照らし出す。
 飛馬は土の心で、この近辺の地形を把握に努めていた。
「んー、そこまで複雑じゃなさそうだけどな、ここの構造」
 だが、それをのんびりさせる気がないのか、壁の炎から分離するようにして、またも炎の妖の集団が現れる。そのうちの2体は大きく、奇妙な顔らしきものが浮かんでいた。
「人の顔が浮かんだ火の玉とか、夏場のやっすいホラーみたいだよなぁ……」
「確かあの火の玉を倒してけば、だんだん遺跡内の炎上も収まってくって話だったな」
 凜音も飛馬も再び戦闘態勢を整えると、敵は人間の姿を認めて襲い掛かってきたのだった。

●業火の中での戦い
 宙を飛ぶ火の玉の妖。小さな個体は地上時と変わらないが、一回り大きな炎には顔が浮かぶ。あからさまにそいつからは力を感じさせる。
「人死にが出てる以上、これ以上妖が地上流出するのは絶対防がねーとな」
 この連中を外に出すわけにはいないと、飛馬が攻撃に移る間、素早いメンバーが攻撃に乗り出していた。
(ひとまずは、攻勢を重視して行動いたしましょうか)
 こうしている間にも、遺跡内の炎が身を焦がしていく。
 誡女は今回も霧を発して敵の弱体化を図る。さらに、彼女は敵の状況を確認し、敵の状況をチェックしていく。
(見た目である程度は判別できそうですが、念の為ですね)
 弱れば、炎の勢いが衰えるのは先ほどチェック済み。しかし、デバフ……弱体状況が確認できるに越したことはない。
「悪いが、暑いのは苦手でな……。さっさと決めて終わらせて貰うぞ」
 両慈は熱いのに参っている様子。出来るだけ早く終わらせてしまおうと、敵全員へと光の粒を振らせていく。
「さあ、女帝の前に跪きなさい!」
 こちらも地上に続き、エメレンツィアは自身の力を高めてから水竜を生成し、手前の敵に食らいつかせていく。理央も攻撃対象を合わせるように、水竜を操っていた。
 エメレンツィアは可能な限り、力を攻撃の為に使う。何せ、凜音が回復専属として動いてくれるのだ。
「こいつがどうして発生したのかとかは、ここが落ち着いて調査が進めば、分かるようになるんだろうか」
 火の玉は地上と同様、直接突撃してくるだけでなく、炎を操ってくる。凜音は癒しの雨を降らし、出来る限り妖の炎から受けたダメージを癒そうと動いていた。
 ただ、顔が浮かぶ火の玉が起こす炎上。顔面を発火させることで、燃やした相手の正気を失わせることがあるので非常に面倒だ。
 折角水のベールに包まれている状況だが、体術が使えなくなるのは大きいと梛は判断する。治癒力を高める香りを振り撒くことで、炎上を受けた仲間がすぐに我を取り戻すように対策する。
 そして、やや出遅れはしたが、飛馬は出来るだけ仲間をサポートしようと、スキルで守りを固めたり、刀で炎を受け止めたり、最悪身を挺することで仲間のガードに集中していた。
 そうして、補助に、回復に、動いてくれるメンバーの力を借りながら、義弘は飛んでくる炎を楯で受け止めた直後、メイスを叩き付けて爆発させる。
 その直後、その火の玉は完全に燃え尽き、蒸発するように消えていったのだった。

●互いの協力とフォローがあってこそ……
 じりじりと覚者達の体を焦がす遺跡の炎。
 それは、戦いの中でもお構いなしに、メンバーを苛む。
 仲間の状態を確認しつつ飛馬は仲間をガードし、海を見守り続ける古妖と巫女の力を借りて自らの強化を行い、防御力を高めていく。
 飛馬は刀で飛んでくる炎を防ぎはするが、さすがに奇妙な笑いを浮かべる火の玉は甘くない。
 回復は、凜音が担当し続ける。特に疲弊が大きくなっていく飛馬に対して、彼は神秘の滴を落としていく。
 それでも、中盤、傷が深くなる飛馬を中心にして、両慈が癒しの雨を降らせ、梛が大樹の生命力を凝縮させた滴を振り撒き、誡女が癒力活性で仲間全員を回復し、フォローを行う。さらに、一時は義弘が代わりに攻撃を受け止めていた。
 また、凜音の気力が減ってくれば、理央がすかさず精神力を転化させる。おかげで、凜音も気兼ねなく回復に専念できていた。
 カバーし合いながら妖との戦いを続けていたこともあり、覚者達は小さな火の玉を1体、また1体とこの場から消していく。
 中衛より後ろに下がるメンバーが多いこともあり、前線から積極的に攻める義弘。
 楯で体当たりや炎を受け止めながら、義弘はメイスで敵を殴打していく。物理攻撃の効果が薄い敵である為、彼は爆発力をぶつけることで大ダメージを与える。それを受けた小さな火の玉は姿を消してしまった。
 残るは、顔が浮かぶ不気味な火の玉だ。そいつらは時に笑い、威圧するように燃え上がり、覚者達を攻め立ててくる。
 何も対策を練らなかったならば、怪我人は免れなかっただろう。ただ、覚者達は出来うる策をあれこれと講じていた。
 幾度目かの輝く星のような光の粒。両慈が呼び起こしたタイミングで転機が訪れる。ついに、片方の炎から笑いが消えたのだ。
 理央が同列に並ぶ炎に次なる攻撃の隙を与えず、こちらも何度目かの水の竜が理央の体から飛び出していく。それに飲み込まれた火の玉は恐れを抱くような表情を浮かべ、消滅していった。
 仲間がいなくなったから、というわけではないだろうが、残る火の玉がものすごい形相を浮かべてかぶりついてきた。
 もちろん、それも飛馬がしっかりとガードする。それに怯む敵の状態をしっかりと把握していた誡女。もはや敵の状況など把握するまでもないと握り締めたムチを振るい、火の玉を縛り付けてしまう。
「一気に終わらせるわよ!」
 相手は炎の勢いが衰えてきていることから、弱っているのは明らか。エメレンツィアも、水竜を放出して火の玉へとぶつける。
 もはや、妖は文字通り風前の灯。梛が飛ばした種を急成長させて火の玉を包み込むと、それらを燃やす力すら残されていなかった妖は完全に燃え尽きてしまったのだった。

●妖を倒せど……
 妖を討伐し、遺跡を見回す一行。
 残念ながら、妖を倒したからすぐに鎮火するというわけではないらしい。
「遺跡探索では無理は禁物よね。場固めをしていきましょう」
 エメレンツィアは仲間達へと水のベールを纏わせ、ダメージの軽減を図る。全く効果がないわけではないが、それでも、熱気を全カットとはいかなかったらしい。
「やれやれ……、まさかこの季節に、真夏の猛暑以上の暑さを体験する事になるとは思わなかったな」
 冬も近いというこの時期なのに、凄い汗である。両慈は普段近しい女性達の姿を思い浮かべながら、早く汗を流したいと考えていた。
「妖を倒したのに、すぐ火が消えるというものもないようですね……」
 誡女はこの炎が鎮火しない理由を考える。外気が取り込まれているのか、呼吸はなんとかできそうだが、どこかに可燃物が紛れているのか……。
「気持ち涼しくなったか……? いや、気のせいか」
 見た目、遺跡に大きな変化はない。だが、義弘は気持ち気温が下がったようにも感じる。
 梛も理央も出来る限り状況を把握し、情報を得ようとしていた。
(大亀遺跡との関連性があるかどうか、知りたいからね)
 どうやら、前回と同じようにどこか途中の通路であることには違いない。二方向に伸びるこの先には、果たして何が待ち受けているのか……。
「俺達の役割はここまでだな」
「ええ、次に見つければ十分よ」
 元々、今回の依頼は妖の討伐。深入りすると危険だ。両慈が仲間達を制すと、壁に水つぶてを飛ばしていたエメレンツィアもそれに合わせ、探索を切り上げるよう仲間に促した。
 遺跡についてはほとんど情報が得られる状況にはなかったが、大事を取った覚者達は垂らしたロープを登り、遺跡を脱出していくのだった。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし



■あとがき■

リプレイ公開です。

皆様、妖討伐にあれこれと策を講じていただきましたが、
その中でも、色々な状況に対応できるよう
プレイングを手がけていただいたあなたへMVPをお送りします。

今回の一件で、
突入の為の足がかりを作ることが出来ました。
考古学者達が突入しやすくする為に、
はしごの取り付けなど、工事業者に委託を行う予定のようです。
危険ではある為、状況を確認しつつといった具合ですが……。
ともあれ、今回も参加していただき、
本当にありがとうございました!




 
ここはミラーサイトです