<初心者歓迎>リバーウッド・ディフェンシブ
●
「みんな、よく集まってくれた。今回は山の麓にある森林地帯で発生した妖を退治してもらいたい」
AAAからの依頼で組まれたこの作戦は、川沿いに存在する妖の討伐作戦である。
「主に樹木や草花のランク1物質系妖になるだろう。地図とおおまかな戦力データを端末に入力して置いたから、参照してほしい。
では、よろしく頼む!」
「みんな、よく集まってくれた。今回は山の麓にある森林地帯で発生した妖を退治してもらいたい」
AAAからの依頼で組まれたこの作戦は、川沿いに存在する妖の討伐作戦である。
「主に樹木や草花のランク1物質系妖になるだろう。地図とおおまかな戦力データを端末に入力して置いたから、参照してほしい。
では、よろしく頼む!」

■シナリオ詳細
■成功条件
1.東西両方の妖の討伐
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
レベル上げや技の練習。新しい武器の試し切りやお友達との連携プレイなどお気軽にご参加くださいませ。
●作戦概要
川の西側と東側にわかれて討伐チームを分離します。
それぞれ敵の特徴が若干ことなるので、得意な方を選んでみるとよいでしょう。
・東側
杉妖:物質系ランク1
杉の木が妖化したものです。歩く樹木で、比較的数が少なく体力がタフです。
攻撃力の高いチームや防御で味方を庇いやすいチーム。もしくは回復で粘れるチームが向いています。
攻撃方法は
花粉:特遠列【弱体】
鋭い枝を振り回す:物近列【出血】
・西側
花妖:物質系ランク1
草花が集合して妖化したものです。個体数が多い代わりに体力や防御力が低く、一気に倒してガンガン進むチームに向いています。
攻撃方法は
毒を飛ばす:特遠単【毒】
足に巻き付く:物遠単【鈍化】
もし両方の作戦を終えた後で余力があるなら、『上流』にいる妖の討伐も頼みたいとのことです。
データはこちら
・樹木竜ノ妖:物質系ランク2
四つ足で翼を持った巨大なワニのようなシルエットをしています。
全身が樹木と草花でできており、自己修復能力に優れています。
BSはあまり効果がでないので純粋火力でガンガン押しましょう。
スキル以下の通り
自己回復:HP回復小、BS回復60%
薙ぎ払う:物近列中ダメージ
噛みつく:物近単大ダメージ
飛び回る:3ターン中、回避・速度・防御アップ(飛行ペナルティのつかないレベルで飛ぶので近接攻撃も届きます)
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
7日
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/6
6/6
公開日
2016年11月10日
2016年11月10日
■メイン参加者 6人■

●西側攻略ルート
瞑目していた『もう一人の自分を支えるために』藤 零士(CL2001445)が、ゆっくりと目を開ける。
小鳥が頭上を飛んでいき、ゆれた枝から葉がおちてくる。
ひらひらと舞う葉を掴んで、零士は遠くを眺めた。
「今回もまた、妖が暴れ回っているのか」
横で、『お察しエンジェル』シャロン・ステイシー(CL2000736)が組んだ手をぐーっと高く上げて背伸びをした。
「天気も良さそうだし、行楽びよりの妖退治びよりって感じだね。ん、どうしたの?」
「いや……」
零士はシャロンの視線を受けて、小さく首を振った。
そんな二人の間を割るように、『アンシーリーコートスレイヤー』神々楽 黄泉(CL2001332)が棍棒をずるずると引きずって歩く。
「おや、今日は斧じゃないんだね」
「いつもの武器、お留守番」
黄泉は棍棒をぺちぺちと叩くと、武器に向かって囁きかけた。
「気に入ったら、大きな斧に、改造、してあげるからね」
形容しがたい声を発して、一メートル大まで巨大化した花が這いずるように迫る。
補足広く張った根を虫のように動かして這う様に、シャロンは顔をしかめて後じさりする。
「気持ち悪。『お花キレー』ってわけにいかないよ、これは」
早速鞄から出した携帯用の消臭スプレーを周囲に散布するシャロン。リラックスアロマの香りが零士や黄泉たちを包んでいく。
「さてと、ちゃっちゃとやろうか」
同じく鞄からスマートホンを取り出し、左から右へ連続撮影。すると不思議な術式が働いて、花妖たちに雷が降り注いだ。
雷にひるんで軽く後じさりする花妖。追撃のチャンスだ。
「ガンガン斬っていけばいいんだろ。やってやるさ」
零士は刀を抜くと、地面へ垂直に突き立てた。
指で印を結びつつ飛び退く。
零士めがけてとびかかろうとした花妖を迎え撃つように、刀から強烈なスパークが飛び散り、花妖たちをはじき飛ばした。
「そこ――!」
零士は更に、抜いた刀に真空の刃を纏わせてスイング。
花妖を真っ二つに切断していく。
「何体いようと、全て斬るだけだ」
ただ本能的に人間を襲おうとしていた花妖たち。だが零士たちが自分たちの脅威になると察してより強い攻撃行動に出た。
足にしていた根を伸ばし、零士や黄泉の足にぐるぐると巻き付いていったのだ。
巻き付くそばからぶちぶちと引きちぎるがらちがあかない。
黄泉は転倒しないようにバランスをとりながら、敵の様子をうかがった。
花妖の一部が花弁を広げ、毒々しい粉を吹き付けてくる。
咄嗟に口元を覆うが、皮膚や服についた毒がじわじわと身体をむしばんでいった。
刀を振って花粉を払おうとする零士。
「この程度の攻撃……!」
「はいはい、無理しないでね。ちょっとじっとしてて」
シャロンが鞄から取り出した飴玉をぱくっと口に含むと、スリングショットを使って零士や黄泉にも発射した。
空中で溶けて身体に浸透していくキャンディドロップ。
みるみる回復する身体を見て、黄泉はぎゅっと棍棒の柄を握った。
「いつも通り、やる、だけ」
突撃、からのフルスイング。
力業で叩き込まれた棍棒が大地を弾き、周囲の花妖たちをまとめて吹き飛ばしていく。
勢いに軽く前のめりになった黄泉だが、体勢を整えて振り返った。
「これでいい」
森を走る黄泉。横合いから飛んでくる毒液を棍棒ではねのけるが、はじけた滴が頬を焼く。
すぐ頭上を飛んだシャロンが携帯スチーマーに詰めた回復アロマを散布しながら飛び抜けていく。
空を飛ぶ鳥を狩るように飛びかかった花妖。それを跳び蹴りでたたき落とした零士が、空中の花妖をまんま足場にして跳躍。
三回のひねりこみをかけて別の妖を切り払い、地面に円形の靴跡を残しながら着地、ブレーキ。
「後ろを」
「いーよー」
零士のアイコンタクトを受けたシャロンが空中で前後反転。
スマホを翳してありもしないサイトにあること無いこと書き込んだならば、不可思議なスパークが追いかける花妖たちを八つ裂きにしていく。
行く手を塞ぐ花妖の列。
花弁と葉を広げて押しとどめようにも、走る黄泉を止めることはできないのだ。
「どうする?」
「飛び込む」
黄泉は棍棒の柄と先端をそれぞれ持つと、花妖の列へとダイブ。
敵味方ひとつの塊となり、小さな川を飛び越えていく、一瞬以下の浮遊の後、棍棒と黄泉の自重、そして走った運動エネルギーそのものによって地面にプレスされた花妖たちが消滅。しおれた花へとかえっていく。
服についた土を落として、黄泉はゆらりと立ち上がった。
合流地点は、もうすぐだ。
●東側攻略ルート
突然だが、『残念な男』片桐・戒都(CL2001498)の心の声を聞いて頂きたい。
(回復担当が一人だけってケースは初めてだっけ? 初めてだっけか!? いやいや落ち着け俺落ち着こうお兄ちゃんは慌てない。周りは弟と同じくらいの子たちだぞ、怪我させたら大変だ。面目が丸つぶれになる。弟が『兄さんって弱かったんですね』なんて言うかも知れない。いや弟はそんなこと言わない。けど言ったらやだなあ! とにかく落ち着け、落ち着くんだお兄ちゃんは慌てない。よし、深呼吸!)
「…………」
以上、狐のお面を被って明後日の空を見上げる戒都の心中である。
「流石に18歳にもなると落ち着いてるんだな。戦いの前だってのに天気の心配なんかしてるぜ」
感心した様子で頷く『守人刀』獅子王 飛馬(CL2001466)。
「所で、杉の木の妖なんだっけ。テレビゲームで見たことあるぜ、トレントとか、そういう名前のやつがいたよな」
「これって、そういう分類になるんでしょうか……」
守護使役スキルを使って10メートル上空から森を見下ろしていた大辻・想良(CL2001476)は、勝手にうごうごと歩く杉の木の集団に首を傾げた。
「とにかく、来ます」
「方向は?」
「2時、5時、10時」
「ほぼ全部じゃねーか! 走れ!」
飛馬は想良の背中を叩くと、急いで走らせた。
樹木をへし折って道へ飛び出す杉妖。
「これって、追いかけられてる状況なんですか?」
「作戦だよ作戦! 多分!」
集団に囲まれないように突っ走り、敵を後方に集める作戦である。
頭のいい妖や人間には通用しづらいが、獣以下の知能しかもたない低ランク妖には割と有効な作戦だったりする。
「俺が一番後ろを走って防御するから、サポートと攻撃頼む! あとあんた、片桐! 回復頼む!」
「任せて、絶対怪我させないから」
戒都は落ち着き払った神谷浩史みたいな声で囁くと、両手の上に水の球を練り上げ始めた。
ヴオンという謎の咆哮で殴りかかってくる杉妖。
飛馬はタイミングを合わせてスピンジャンプ。
杉の枝による打撃に打ち合わせるように刀を叩き付け、威力を相殺させる。
しかし割れた枝が腕や肩に刺さり、どくどくと血が流れていく。
「BSが地味にキツ――へっくし! やべえ、花粉やべえ!」
鼻がむずむずするせいか語彙力が死んでいく飛馬。
「待ってくださいね、今対応するので」
想良は肩掛け鞄の中に入っていたスプレー缶を取り出して降ると、飛馬や自分たちめがけて噴射した。
「なんだこれっ、霧か?」
「少しは楽になるはずです。あとは……」
散布した成分に術式を流し込み、杉妖たちの動きを阻害するようにまとわりつかせる。
「回復するけど、いる?」
「たのむ!」
戒都は飛馬の呼びかけを受けて、両手で同時にフィンガースナップをかけた。
手の上に練り上げられていた水の球がぱちんとはじけ、飛馬の怪我を溶かすように修復していく。
「よしオッケーだ。あとは攻撃に専念してくれ。後は俺が防ぎきる!」
飛馬は反転ブレーキ。刀を広く構えると、三体の妖が繰り出す連撃を縦横無尽にはねのけ始めた。
「それじゃあ、お言葉に甘えて」
想良は鞄から卵形のチャームを取り出した。
念を込めて投げると、卵がはじけて空気の弾へと変化する。
「それ、いただき」
戒都が指の上で練っていた水を弾にして発射。想良の弾と混じり合い、二重螺旋になった水と空気の弾が杉妖を貫いていく。
のけぞり、バランスをとろうとし、結局仰向けに転倒する杉妖。
残る二体が飛馬から離れ、回り込むように囲んでくる。
「ブロックを抜かれた――けどな!」
想良めがけて繰り出される杉の枝。
素早く飛びかかって攻撃の間に割り込む飛馬。
彼の肩越しに指鉄砲を構えた想良は、よく狙って妖の中央にエアブリットを連射していく。
「ははは、すごいなあ。こっちも守ってくれると助かるんだけど」
ひょうひょうとした様子で杉妖の打撃をかわしていく戒都。
かわすというよりは練り上げた小さな水の膜で身体をピンポイントで覆い、ダメージをうけたそばから治癒しているようだ。
「その割には余裕そーだけど」
「そう見える?」
狐の仮面を被っているせいで表情は見えないが、飛馬の目からみると全然余裕そうだった。
内心すごいことになっているかもしれないが、余人には分からぬ心中である。
「よ、っと」
杉妖の幹に手を当てる。
次の瞬間、ドリル状に螺旋を描いた水の弾が幹を貫通。杉妖はぐらりと揺らぎ、音を立てて地面に倒れた。
●上流、樹木竜ノ妖
合流地点にたどり着いた六人。
特に大きな怪我はしていないということで、気力や体力が回復するまで休憩してから上流を目指すことにした。
「そうだ。お弁当作ってきたんだよ。サンドイッチ」
鞄から小さなランチボックスを取り出すシャロン。
彼女からツナとマヨネーズのサンドイッチを受け取って、飛馬は上流に目をやった。
「植物の竜って、なんかかっけーな。飛ぶんだろ?」
「飛ぼうが叫ぼうが、斬るだけさ」
膝を抱えて、自分に言い聞かせるように呟く零士。
なんだか危ういやつだなあと思っていると、黄泉が飛馬の袖を引いた。
「後で、殴っていい?」
「俺なんかした!?」
「いや、その子たぶん、攻撃の練習がしたいんじゃないのかな」
サンドイッチをたいらげ、戒都は親指を舐めた。
「付き合ってあげなよ。余裕があればだけどさ」
「まあ、そのぐらいなら……」
そうこうしていると、想良がすっくと立ち上がって手を払った。
「わたしはもう大丈夫です。皆さんは?」
「ん、平気」
ぽんぽんと胸を叩くシャロン。
六人は頷きあうと、上流を目指して歩き始めた。
あるアジアの村のこと。川の上流にワニが住むとあれば、村を挙げて討伐にあたったと言われている。
一つは川からとれる魚のため。もう一つはいずれ流れてくるワニが子供を食わないため。
今こうして妖に立ち向かう六人の覚者たちもまた、遠からぬ理由でここにいた。
「準備は?」
「いつでも」
戒都とシャロンが同時に構える。
巨大な樹木のワニは、奇妙な金管楽器のような声で咆哮をあげた。
ワニの直線走行速度は恐ろしく速いという。飛馬は真っ先に前へ出たが、あまりの速度と威力に思い切り吹き飛ばされた。
空を泳いで岩に叩き付けられる飛馬。
心配そうに振り向く想良に、飛馬は無理矢理笑って叫んだ。
「構うな、霧だ!」
「はい……っ」
想良は卵形のチャームを鞄から複数いっぺんに取り出すと、ワニめがけて投げつけた。
卵は空中ではじけ、術式性の霧へ変わる。
霧がはったのを確認し、更にエアブリットを乱射。
対するワニは霧を裂き、大顎を開いて飛び出してくる。
開いた顎に飛び込む黄泉。
棍棒を縦向きに下顎へ叩き付けると、噛みつく動作を強制キャンセル。
更に顎の付け根に刀を滑り込ませた零士が――。
「真っ二つに開いてやる!」
叫びと共に走った。ワニの側面をざっくりと切り開いていく刀のライン。
これが野生のワニなら今ごろ死んでいた頃だろうが、ことは妖。樹木竜ノ妖である。
妖は高く吠えると、翼を広げて飛び上がった。
頭上をぐるりと回るうちに傷を治し始める。
ワニとは呼べぬ。もはや竜だ。
「治癒する余裕なんか与えない」
「たたきつぶす」
黄泉と零士が飛びかかる――が、空を華麗に泳いだ竜が二人の攻撃をかわし、二人まとめて薙ぎ払った。
地面に叩き付けられ、バウンドして転がる黄泉。
棍棒を地面に叩き付けて強制ブレーキをかけると、キッと顔を上げた。
「はい、ここは大人の出番だよ」
「それあたしも入ってないわよね」
シャロンと竜の間に両サイドから割り込むと、それぞれの術式を練り合わせた。
空に放ったジグザグした水の塊が複雑にはじけ、零士や黄泉、飛馬たちの傷を癒やしていく。その一方で竜へ霧を纏わせて動きを遮りにかかった。
「どーせすぐに回復されちゃうから、期間限定だよ」
「バーゲンセールってわけね」
シャロンはスマホを眼前に翳すと、撮影した竜の画像をつながっても居ないネットに晒し上げた。術式が発動し、竜をうつ雷。
バランスを崩した竜が再び飛び上がろうとした所で、高くジャンプした黄泉が棍棒を叩き付けた。
脳天にくらった打撃で飛行をキャンセルされた竜の目に、深々と刀を突き刺す零士と飛馬。
「今だ、やれ!」
振り返った想良に頷き、想良と戒都が同時に弾丸を形成。
二人がかりで練り上げた泡の弾丸を乱射。
竜の身体にめいっぱいねじ込むと、内側から爆発させた。
はじけ飛びバラバラになった竜はただの枯れ木へと戻っていく。
空を小鳥が飛んでいく。
瞑目していた『もう一人の自分を支えるために』藤 零士(CL2001445)が、ゆっくりと目を開ける。
小鳥が頭上を飛んでいき、ゆれた枝から葉がおちてくる。
ひらひらと舞う葉を掴んで、零士は遠くを眺めた。
「今回もまた、妖が暴れ回っているのか」
横で、『お察しエンジェル』シャロン・ステイシー(CL2000736)が組んだ手をぐーっと高く上げて背伸びをした。
「天気も良さそうだし、行楽びよりの妖退治びよりって感じだね。ん、どうしたの?」
「いや……」
零士はシャロンの視線を受けて、小さく首を振った。
そんな二人の間を割るように、『アンシーリーコートスレイヤー』神々楽 黄泉(CL2001332)が棍棒をずるずると引きずって歩く。
「おや、今日は斧じゃないんだね」
「いつもの武器、お留守番」
黄泉は棍棒をぺちぺちと叩くと、武器に向かって囁きかけた。
「気に入ったら、大きな斧に、改造、してあげるからね」
形容しがたい声を発して、一メートル大まで巨大化した花が這いずるように迫る。
補足広く張った根を虫のように動かして這う様に、シャロンは顔をしかめて後じさりする。
「気持ち悪。『お花キレー』ってわけにいかないよ、これは」
早速鞄から出した携帯用の消臭スプレーを周囲に散布するシャロン。リラックスアロマの香りが零士や黄泉たちを包んでいく。
「さてと、ちゃっちゃとやろうか」
同じく鞄からスマートホンを取り出し、左から右へ連続撮影。すると不思議な術式が働いて、花妖たちに雷が降り注いだ。
雷にひるんで軽く後じさりする花妖。追撃のチャンスだ。
「ガンガン斬っていけばいいんだろ。やってやるさ」
零士は刀を抜くと、地面へ垂直に突き立てた。
指で印を結びつつ飛び退く。
零士めがけてとびかかろうとした花妖を迎え撃つように、刀から強烈なスパークが飛び散り、花妖たちをはじき飛ばした。
「そこ――!」
零士は更に、抜いた刀に真空の刃を纏わせてスイング。
花妖を真っ二つに切断していく。
「何体いようと、全て斬るだけだ」
ただ本能的に人間を襲おうとしていた花妖たち。だが零士たちが自分たちの脅威になると察してより強い攻撃行動に出た。
足にしていた根を伸ばし、零士や黄泉の足にぐるぐると巻き付いていったのだ。
巻き付くそばからぶちぶちと引きちぎるがらちがあかない。
黄泉は転倒しないようにバランスをとりながら、敵の様子をうかがった。
花妖の一部が花弁を広げ、毒々しい粉を吹き付けてくる。
咄嗟に口元を覆うが、皮膚や服についた毒がじわじわと身体をむしばんでいった。
刀を振って花粉を払おうとする零士。
「この程度の攻撃……!」
「はいはい、無理しないでね。ちょっとじっとしてて」
シャロンが鞄から取り出した飴玉をぱくっと口に含むと、スリングショットを使って零士や黄泉にも発射した。
空中で溶けて身体に浸透していくキャンディドロップ。
みるみる回復する身体を見て、黄泉はぎゅっと棍棒の柄を握った。
「いつも通り、やる、だけ」
突撃、からのフルスイング。
力業で叩き込まれた棍棒が大地を弾き、周囲の花妖たちをまとめて吹き飛ばしていく。
勢いに軽く前のめりになった黄泉だが、体勢を整えて振り返った。
「これでいい」
森を走る黄泉。横合いから飛んでくる毒液を棍棒ではねのけるが、はじけた滴が頬を焼く。
すぐ頭上を飛んだシャロンが携帯スチーマーに詰めた回復アロマを散布しながら飛び抜けていく。
空を飛ぶ鳥を狩るように飛びかかった花妖。それを跳び蹴りでたたき落とした零士が、空中の花妖をまんま足場にして跳躍。
三回のひねりこみをかけて別の妖を切り払い、地面に円形の靴跡を残しながら着地、ブレーキ。
「後ろを」
「いーよー」
零士のアイコンタクトを受けたシャロンが空中で前後反転。
スマホを翳してありもしないサイトにあること無いこと書き込んだならば、不可思議なスパークが追いかける花妖たちを八つ裂きにしていく。
行く手を塞ぐ花妖の列。
花弁と葉を広げて押しとどめようにも、走る黄泉を止めることはできないのだ。
「どうする?」
「飛び込む」
黄泉は棍棒の柄と先端をそれぞれ持つと、花妖の列へとダイブ。
敵味方ひとつの塊となり、小さな川を飛び越えていく、一瞬以下の浮遊の後、棍棒と黄泉の自重、そして走った運動エネルギーそのものによって地面にプレスされた花妖たちが消滅。しおれた花へとかえっていく。
服についた土を落として、黄泉はゆらりと立ち上がった。
合流地点は、もうすぐだ。
●東側攻略ルート
突然だが、『残念な男』片桐・戒都(CL2001498)の心の声を聞いて頂きたい。
(回復担当が一人だけってケースは初めてだっけ? 初めてだっけか!? いやいや落ち着け俺落ち着こうお兄ちゃんは慌てない。周りは弟と同じくらいの子たちだぞ、怪我させたら大変だ。面目が丸つぶれになる。弟が『兄さんって弱かったんですね』なんて言うかも知れない。いや弟はそんなこと言わない。けど言ったらやだなあ! とにかく落ち着け、落ち着くんだお兄ちゃんは慌てない。よし、深呼吸!)
「…………」
以上、狐のお面を被って明後日の空を見上げる戒都の心中である。
「流石に18歳にもなると落ち着いてるんだな。戦いの前だってのに天気の心配なんかしてるぜ」
感心した様子で頷く『守人刀』獅子王 飛馬(CL2001466)。
「所で、杉の木の妖なんだっけ。テレビゲームで見たことあるぜ、トレントとか、そういう名前のやつがいたよな」
「これって、そういう分類になるんでしょうか……」
守護使役スキルを使って10メートル上空から森を見下ろしていた大辻・想良(CL2001476)は、勝手にうごうごと歩く杉の木の集団に首を傾げた。
「とにかく、来ます」
「方向は?」
「2時、5時、10時」
「ほぼ全部じゃねーか! 走れ!」
飛馬は想良の背中を叩くと、急いで走らせた。
樹木をへし折って道へ飛び出す杉妖。
「これって、追いかけられてる状況なんですか?」
「作戦だよ作戦! 多分!」
集団に囲まれないように突っ走り、敵を後方に集める作戦である。
頭のいい妖や人間には通用しづらいが、獣以下の知能しかもたない低ランク妖には割と有効な作戦だったりする。
「俺が一番後ろを走って防御するから、サポートと攻撃頼む! あとあんた、片桐! 回復頼む!」
「任せて、絶対怪我させないから」
戒都は落ち着き払った神谷浩史みたいな声で囁くと、両手の上に水の球を練り上げ始めた。
ヴオンという謎の咆哮で殴りかかってくる杉妖。
飛馬はタイミングを合わせてスピンジャンプ。
杉の枝による打撃に打ち合わせるように刀を叩き付け、威力を相殺させる。
しかし割れた枝が腕や肩に刺さり、どくどくと血が流れていく。
「BSが地味にキツ――へっくし! やべえ、花粉やべえ!」
鼻がむずむずするせいか語彙力が死んでいく飛馬。
「待ってくださいね、今対応するので」
想良は肩掛け鞄の中に入っていたスプレー缶を取り出して降ると、飛馬や自分たちめがけて噴射した。
「なんだこれっ、霧か?」
「少しは楽になるはずです。あとは……」
散布した成分に術式を流し込み、杉妖たちの動きを阻害するようにまとわりつかせる。
「回復するけど、いる?」
「たのむ!」
戒都は飛馬の呼びかけを受けて、両手で同時にフィンガースナップをかけた。
手の上に練り上げられていた水の球がぱちんとはじけ、飛馬の怪我を溶かすように修復していく。
「よしオッケーだ。あとは攻撃に専念してくれ。後は俺が防ぎきる!」
飛馬は反転ブレーキ。刀を広く構えると、三体の妖が繰り出す連撃を縦横無尽にはねのけ始めた。
「それじゃあ、お言葉に甘えて」
想良は鞄から卵形のチャームを取り出した。
念を込めて投げると、卵がはじけて空気の弾へと変化する。
「それ、いただき」
戒都が指の上で練っていた水を弾にして発射。想良の弾と混じり合い、二重螺旋になった水と空気の弾が杉妖を貫いていく。
のけぞり、バランスをとろうとし、結局仰向けに転倒する杉妖。
残る二体が飛馬から離れ、回り込むように囲んでくる。
「ブロックを抜かれた――けどな!」
想良めがけて繰り出される杉の枝。
素早く飛びかかって攻撃の間に割り込む飛馬。
彼の肩越しに指鉄砲を構えた想良は、よく狙って妖の中央にエアブリットを連射していく。
「ははは、すごいなあ。こっちも守ってくれると助かるんだけど」
ひょうひょうとした様子で杉妖の打撃をかわしていく戒都。
かわすというよりは練り上げた小さな水の膜で身体をピンポイントで覆い、ダメージをうけたそばから治癒しているようだ。
「その割には余裕そーだけど」
「そう見える?」
狐の仮面を被っているせいで表情は見えないが、飛馬の目からみると全然余裕そうだった。
内心すごいことになっているかもしれないが、余人には分からぬ心中である。
「よ、っと」
杉妖の幹に手を当てる。
次の瞬間、ドリル状に螺旋を描いた水の弾が幹を貫通。杉妖はぐらりと揺らぎ、音を立てて地面に倒れた。
●上流、樹木竜ノ妖
合流地点にたどり着いた六人。
特に大きな怪我はしていないということで、気力や体力が回復するまで休憩してから上流を目指すことにした。
「そうだ。お弁当作ってきたんだよ。サンドイッチ」
鞄から小さなランチボックスを取り出すシャロン。
彼女からツナとマヨネーズのサンドイッチを受け取って、飛馬は上流に目をやった。
「植物の竜って、なんかかっけーな。飛ぶんだろ?」
「飛ぼうが叫ぼうが、斬るだけさ」
膝を抱えて、自分に言い聞かせるように呟く零士。
なんだか危ういやつだなあと思っていると、黄泉が飛馬の袖を引いた。
「後で、殴っていい?」
「俺なんかした!?」
「いや、その子たぶん、攻撃の練習がしたいんじゃないのかな」
サンドイッチをたいらげ、戒都は親指を舐めた。
「付き合ってあげなよ。余裕があればだけどさ」
「まあ、そのぐらいなら……」
そうこうしていると、想良がすっくと立ち上がって手を払った。
「わたしはもう大丈夫です。皆さんは?」
「ん、平気」
ぽんぽんと胸を叩くシャロン。
六人は頷きあうと、上流を目指して歩き始めた。
あるアジアの村のこと。川の上流にワニが住むとあれば、村を挙げて討伐にあたったと言われている。
一つは川からとれる魚のため。もう一つはいずれ流れてくるワニが子供を食わないため。
今こうして妖に立ち向かう六人の覚者たちもまた、遠からぬ理由でここにいた。
「準備は?」
「いつでも」
戒都とシャロンが同時に構える。
巨大な樹木のワニは、奇妙な金管楽器のような声で咆哮をあげた。
ワニの直線走行速度は恐ろしく速いという。飛馬は真っ先に前へ出たが、あまりの速度と威力に思い切り吹き飛ばされた。
空を泳いで岩に叩き付けられる飛馬。
心配そうに振り向く想良に、飛馬は無理矢理笑って叫んだ。
「構うな、霧だ!」
「はい……っ」
想良は卵形のチャームを鞄から複数いっぺんに取り出すと、ワニめがけて投げつけた。
卵は空中ではじけ、術式性の霧へ変わる。
霧がはったのを確認し、更にエアブリットを乱射。
対するワニは霧を裂き、大顎を開いて飛び出してくる。
開いた顎に飛び込む黄泉。
棍棒を縦向きに下顎へ叩き付けると、噛みつく動作を強制キャンセル。
更に顎の付け根に刀を滑り込ませた零士が――。
「真っ二つに開いてやる!」
叫びと共に走った。ワニの側面をざっくりと切り開いていく刀のライン。
これが野生のワニなら今ごろ死んでいた頃だろうが、ことは妖。樹木竜ノ妖である。
妖は高く吠えると、翼を広げて飛び上がった。
頭上をぐるりと回るうちに傷を治し始める。
ワニとは呼べぬ。もはや竜だ。
「治癒する余裕なんか与えない」
「たたきつぶす」
黄泉と零士が飛びかかる――が、空を華麗に泳いだ竜が二人の攻撃をかわし、二人まとめて薙ぎ払った。
地面に叩き付けられ、バウンドして転がる黄泉。
棍棒を地面に叩き付けて強制ブレーキをかけると、キッと顔を上げた。
「はい、ここは大人の出番だよ」
「それあたしも入ってないわよね」
シャロンと竜の間に両サイドから割り込むと、それぞれの術式を練り合わせた。
空に放ったジグザグした水の塊が複雑にはじけ、零士や黄泉、飛馬たちの傷を癒やしていく。その一方で竜へ霧を纏わせて動きを遮りにかかった。
「どーせすぐに回復されちゃうから、期間限定だよ」
「バーゲンセールってわけね」
シャロンはスマホを眼前に翳すと、撮影した竜の画像をつながっても居ないネットに晒し上げた。術式が発動し、竜をうつ雷。
バランスを崩した竜が再び飛び上がろうとした所で、高くジャンプした黄泉が棍棒を叩き付けた。
脳天にくらった打撃で飛行をキャンセルされた竜の目に、深々と刀を突き刺す零士と飛馬。
「今だ、やれ!」
振り返った想良に頷き、想良と戒都が同時に弾丸を形成。
二人がかりで練り上げた泡の弾丸を乱射。
竜の身体にめいっぱいねじ込むと、内側から爆発させた。
はじけ飛びバラバラになった竜はただの枯れ木へと戻っていく。
空を小鳥が飛んでいく。
