【CTS】ラストチルドレン・メーカー
●蒐囚壁財団・ブランク博士
『能亜財団が強行作戦に出た事実を掴んだ。我々蒐囚壁財団は攻撃部隊を派遣したが、事前にファイヴの覚者が現場を制圧していたことを発見し、撤退。作戦をファイヴとの共同作戦へとシフトさせることを決定した。
こちらは蒐囚壁財団、ブランク博士。
君たちの味方だ』
ビデオレターで、ジャンガリアンハムスターが喋っていた。
これ自体は特に驚くことではない。その理由についてはいずれ別の場で語るとして……。
『では、作戦内容を説明する共に、最高機密資料の一つを開示する。
この行為によって私には終了処分が下されるが、気にしないで欲しい』
≪チルドレンメーカー≫。
直径10メートルの金属製キューブに近い形状をした物体であり、妖怪(古妖)。
人間を一人喰わせることで大量の『将来生まれる可能性のある子供』を発生させるという妖怪である。喰わせた人間は衰弱状態ではき出される。
ある一つの巨大な目的のために存在する集合体のうちの一部……というところまで開示されている。
過去、蒐囚壁財団に所属する雛代絞滋郎博士が収容規則を破ってチルドレンメーカーを利用。一夜のうちに666体の『可能性の子供』を製造し、大規模な逃亡を謀った。
「この事件の結果――『可能性の子供』はお互いに殺し合いをはじめ、生き残った一人だけを『真実の子供』とするルールを持っていると分かった。
要するに博士の逃亡先で十代女性が殺し合いをした形跡を発見した所からの調査結果なのだが、とにかく……この『真実の子供』を収容したのが、君たちのいう『雛代供犠』であり、君たちに預けているその人間だ。
ちなみに、収容違反は重罪中の重罪だ。雛代絞滋郎博士には終了処分を下した筈だろう。つまり死んでいると思われる」
一拍おいて、ブランク博士は言った。
「『チルドレンメーカー』は能亜財団に奪われている。今回はその古妖の回収を頼みたい」
●チルドレンメーカー回収作戦
とある大型地下施設にそれは安置されている。
攻撃部隊(武装した非覚者)を向かわせたがこれが全て壊滅。
覚者戦力による防衛があると思われる。
夢見、蒼紫 四五九番(nCL2000137)が予知した所によると、大雑把な敵戦力と施設の一部構造は把握できている。
襲撃をかけ、古妖を回収。蒐囚壁財団へと引き渡すことが目的となる。
『能亜財団が強行作戦に出た事実を掴んだ。我々蒐囚壁財団は攻撃部隊を派遣したが、事前にファイヴの覚者が現場を制圧していたことを発見し、撤退。作戦をファイヴとの共同作戦へとシフトさせることを決定した。
こちらは蒐囚壁財団、ブランク博士。
君たちの味方だ』
ビデオレターで、ジャンガリアンハムスターが喋っていた。
これ自体は特に驚くことではない。その理由についてはいずれ別の場で語るとして……。
『では、作戦内容を説明する共に、最高機密資料の一つを開示する。
この行為によって私には終了処分が下されるが、気にしないで欲しい』
≪チルドレンメーカー≫。
直径10メートルの金属製キューブに近い形状をした物体であり、妖怪(古妖)。
人間を一人喰わせることで大量の『将来生まれる可能性のある子供』を発生させるという妖怪である。喰わせた人間は衰弱状態ではき出される。
ある一つの巨大な目的のために存在する集合体のうちの一部……というところまで開示されている。
過去、蒐囚壁財団に所属する雛代絞滋郎博士が収容規則を破ってチルドレンメーカーを利用。一夜のうちに666体の『可能性の子供』を製造し、大規模な逃亡を謀った。
「この事件の結果――『可能性の子供』はお互いに殺し合いをはじめ、生き残った一人だけを『真実の子供』とするルールを持っていると分かった。
要するに博士の逃亡先で十代女性が殺し合いをした形跡を発見した所からの調査結果なのだが、とにかく……この『真実の子供』を収容したのが、君たちのいう『雛代供犠』であり、君たちに預けているその人間だ。
ちなみに、収容違反は重罪中の重罪だ。雛代絞滋郎博士には終了処分を下した筈だろう。つまり死んでいると思われる」
一拍おいて、ブランク博士は言った。
「『チルドレンメーカー』は能亜財団に奪われている。今回はその古妖の回収を頼みたい」
●チルドレンメーカー回収作戦
とある大型地下施設にそれは安置されている。
攻撃部隊(武装した非覚者)を向かわせたがこれが全て壊滅。
覚者戦力による防衛があると思われる。
夢見、蒼紫 四五九番(nCL2000137)が予知した所によると、大雑把な敵戦力と施設の一部構造は把握できている。
襲撃をかけ、古妖を回収。蒐囚壁財団へと引き渡すことが目的となる。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.装置を回収すること
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
皆さんの活躍の結果、今までの段階でいくつかの隠しフラグを開放したため、ルートがかなり特殊なところへ食い込んでいます。
さておき、今回の任務は蒐囚壁財団との共同作戦。
一度奪取された装置を回収します。
詳しい補足はこちらで。
●シチュエーションデータ
地下施設。
入り口はシェルタードアの一つだけだが、覚者の能力なら時間をかけて破壊可能。
物質透過などで内側に入り込んで開ける手もある。
内部はぐねぐねと入り組んだ通路や無駄に柱(遮蔽物)が多い広間など、襲撃を警戒した作りになっている。
装置はその一番奥に置かれているため、敵戦力を全て倒さなければ回収は不可能だと思われる。
敵も馬鹿じゃないので戦力の適時投入みたいなことはしないはず。
順当に行くと、ぐねぐねした通路でひたすら前衛スイッチで粘りながらこちらの戦力をすりつぶす作戦に出る筈。
強制的に押し込むか気づかれないうちに広間まで侵入すればあるていど有利にはなるはず。
●エネミーデータ
覚者戦力10人。
命数復活するかどうかは不明。あんまりしないだろう、との予想はたっている。
五行や因子はバラバラだとされ、武装もバラバラ。つまり戦闘スペックに統一感がない。
逆に言えば『全部まとめて平均化したらフツーになる』ということで、『こういう奴がいたら徹底的に潰してブレイクスルーを狙う』といった作戦もたてられる。
●蒐囚壁財団
古妖などの未知なる存在が人類に混乱を与えないように、人類の目から隠すことを目的とした組織――の日本支部。
無害な古妖は普通に施設内をうろついていたりスタッフと戯れていたりするので、『収容』と言う名の保護であるケースも多い。
ただし危険な古妖やそのアイテムである場合は厳重に閉じ込め、科学の限りを尽くして無力化し続けている。例えば絶対死なない肉食恐竜とか。
●チルドレンメーカー
喰わせることで大量に『可能性の子供』を生み出すという古妖。
通常は金属キューブの状態のまま動作しないため、運び出すことは容易。
生み出した子供は製造した段階で既に十代まで育つらしく、その理由は全くの不明。人類には理解できないレベルらしい。
これが世間に出回ってしまうと勘違いした国家が少子化問題の解決だとかいってガンガン作ってガンガン殺し合いを勃発させてしまう。この殺し合いのレベルが成長につれて先鋭化深刻化するため、厳重な収容を要するとしている。
例えばの話、残った数人がお互いを絶対殺すべく地域や国家を支配下に置いて戦争をやらかす可能性もありえる。とにかくあらゆる手段をつかうので危険、ということらしい。
なお、何が起こるかわからず危険であるとして『喰わせるために必要な手順』は資料から削除されている。
●調査行動についての補助
今回のシナリオでは調査行動に補助ルールを設けます。
EXプレイングに書き込んだ調査行動のみ、『完全成功(的確に真実を探り当てる)』か『無効(行動によるデメリットも無し)』のどちらかで判定されます。(書き込めるのは一行動まで)
※注意! 通常プレイングでの調査行動は空振りやデメリットがしっかり入る危険があるので推奨しません。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
8日
8日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
8/8
公開日
2016年11月10日
2016年11月10日
■メイン参加者 8人■

●文書介入1
わたしはぶらうんはかせ
しゅうしゅうへきざいだん かさんどらけいかくたんとう
きみがこのほうこくしょをよむころには
わたしのからだは もうこのよにないだろう
さいごのおくりものだ
このほうこくしょをつうじて きみののうないに とくていのじょうほうを ながしこむ
ひどいずつうや はきけをかんじるだろうが たえてもらいたい
このじょうほうが きみたちののぞむけっかをもたらすかどうかは わからないが
きっと やくにたつはずだ
さいごにひとつ
わたしのみを あんじるひつようはない
そのかわり
ひなしろはかせを とめてくれ
――メモリアルメーカー、起動。
――シークレットノイズの注入を開始。
――抵抗をやめてください。
――抵抗をやめてください。
――エラー:可能性間移動の痕跡を確認しました。
――復旧処理を開始します。
――完了。
――抵抗をやめてください。
――抵抗をやめてください。
――抵抗をやめてください。
――抵抗をやめてください。
――抵抗をやめてください。
――おつかれさまでした。
●突入
葉柳・白露(CL2001329)にとって、閉じられたドアはドアではない。
物質透過でドアを通り抜け、内側からそっと解錠できるからだ。その際に透視能力を発動させ、内部で鉢合わせをおこさないように注意することも忘れない。
通路の先から誰もきていないことを確認して、仲間たちを招き入れた。
足音を潜めながら鋭聴力を働かせる『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)。
仲間に送受心で語りかけて、攻撃の是非を問う。
賛成4、否定2、条件付き賛成2。
多数決により賛成とし、『溶けない炎』鈴駆・ありす(CL2001269)が先行、壁づたいに背をつけて歩き、広間に出たところで……。
「戦闘開始。いくわよ、ゆる――開眼!」
フィンガースナップと共に無数の火炎を発射した。
●シークレットノイズA
東床尾山中。
十代の少女が死んでいた。
鋭く研いだ木の枝を喉に刺され、即死していた。
その1メートル先には同様の死体、2メートル先には岩で頭部を殴打された死体、その3メートル先には折り重なるようにして燃える無数の少女の死体があった。
炎に背を向けて。
頭から血をながし、あらぬ方向へと折れた腕を庇って歩く少女があった。
大きく避けた背中には459の文字が焼き付けられている。
視線の先には。
一糸まとわぬ少女が一人。
座っている。足はぴくりとも動かず、ただ揺れる花弁を見つめていた。
腹には456の文字が焼き付いていた。
「私を殺すんですか」
●広間の戦い
炎に包まれる人影。
しかし痛がることも、嫌がることも、恐れることも無く、人影はこちらに向けて走ってきた。
警報が鳴り響く。
緒形 逝(CL2000156)が飛び出し、駆け寄る相手を投げ飛ばした。
直後に足払いを受け、顎に膝蹴りを食らう逝。
囲みにかかった彼らを打ち払うべく、飛びかかる『鬼籍あるいは奇跡』御影・きせき(CL2001110)。
飛び回し蹴りの直撃をうけた相手は激しく吹き飛び、あとから駆けつけた仲間にキャッチされる。
駆けつけた仲間が機関銃を取り出した。
乱射。
ライオットシールドを翳した納屋 タヱ子(CL2000019)が弾を弾きながら突撃。
腕を振り込み円形のシールドを発射すると、柱の間を抜け、壁を跳ね返って相手へとぶつかった。
直後、爆発が起こる。
吹き飛ばされるタヱ子。
●シークレットノイズB
「任務完了。これより帰投……は、できないか」
小型無線機を捨て、足で踏み砕く男がいた。
見上げる。
棺に囲まれた柱のような装置が、炎をあげていた。
くずれゆく柱。
倒れ、砕けた表面のプレートの隙間から、見知った顔が覗いていた。
「やあ、あんたはそこにいたんだな」
炎に背を向け、歩き出す男。
「雛代供犠」
●奪還作戦
飛んできたタヱ子をキャッチする八重霞 頼蔵(CL2000693)。
追撃にと飛来するボウガンの矢を剣で切り落としてから、銃を乱射して進む。
柱の陰から飛び出し、ナイフを翳す敵。
しかしその襲撃は予見していた。正確には透けて見えていた。
出てきたそばから額を銃撃。
更に突き進む。
その横を『ゴシップ探偵』風祭・誘輔(CL2001092)が走った。
駆けつける足音を聞きつけ、グレネードを発射。
地面を二回バウンドした弾が爆発をおこし、相手を炎の中に埋めていく。
●シークレットノイズC
「嘘だ嘘だこんなの嘘だ絶対に嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だああああああああああああああああああああ!」
血にまみれた少女の死体を抱きしめ、白衣の男が泣きわめいている。
「死んでいる。死んでいる。みんな死んでいる。そんな、そんな、嘘だ、嘘だ、そんな……!」
辺りには無数の死体が転がっていた。全て同年代の、少年少女の死体だった。
血だまりに額をつけ、枯れるほど泣いて叫んだその後に。
男はゆっくりと顔を上げた。
「やりなおさなくちゃ」
●死を悼む者は
広間の戦いは圧倒的な優勢で進んでいく。
奏空の放った雷が相手を焼き付け、柱の裏に隠れた敵も白露が逃さず追尾し、次々に切り裂いていく。
やけになって飛び出した敵ですら、ありすの放った炎に打ち払われるのみである。
刀で斬りかかってくる敵。
斬撃を刀で払い、蹴り飛ばすきせき。
斧が飛んでくる。キャッチするタヱ子。
槍や薙刀を構えた敵が迫る。
跳躍し、一気に距離を詰めた逝が二人まとめて転倒させ、頼蔵が的確に胸を撃っていく。
それでも強引に飛び込んでくる敵を、誘輔はランチャーと化した腕で殴り倒した。
誘輔は息を吐く。
粗く粗く吐く。
「なんなんだよ」
血を吐き捨てて、叫んだ。
「なんでこいつらが、ここにいるんだよ!」
倒した敵は皆、真っ白な仮面をつけていた。
●シークレットノイズD
彼は控えめに言って、可哀想な人でした。
海外の大学を優秀な学歴で卒業し、人並みに恋愛をして結婚し、娘を授かったというのに、あんな怪異に巻き込まれるなんて。
いえ、詳細を話すわけには……。
そうですね、ええと……。
テディベアをご存じですか?
う、ご、ごめんなさい。吐きそうで。
とにかく、悲惨な事故……いえ、事件だったんです。可哀想な人でした。
けれど、だからって、収容違反を起こすなんて。
記憶処理をしておくべきだって、私は再三……。
●チルドレンメーカー
直径10メートルの金属製キューブ。
これが古妖だと説明されて納得できるものも、そう多くは無いだろう。
ありすもその一人だった。古妖の姿や性質は千差万別ではあるが、だからこそ身近な古妖と比較してしまう。
一番よく知っている古妖が例えば物言わぬタンスや夜に勝手に灯る提灯だったなら、納得もできたかもしれないが。誰もがそうではない。
「これ、どうやって運び出すの? ……私は、できれば近づきたくないんだけど」
「せーので持ち上げるわけにはいかないですよね」
「重そうだねー」
ぺたぺたと触って感触を確かめる奏空やきせき。
逝は黙って様子を見ている。
壁に背をつけて腕組みしていた白露が、彼らに呼びかけた。
「別にボクらが持って運ぶ必要はないさ。こういうのはそれ専用の道具や人員があるものだよ」
「そはいっても、特に何も持ってきていませんし」
タヱ子の呟きに苦笑して、白露は身体をずらした。
壁に作られたくぼみの中に、電話機が一つ。
●シークレットノイズE
額を銃で撃ち抜かれた男の死体があった。
うち捨てられた死体だった。
誰が見ても、それは死体だったのだが。
恐怖に見開いた目が、ぎょろりと動く。
額の傷が、じわじわとふさがっていく。
身体を起こしたその男は、開口一番にこう言った。
「やりなおさなくちゃ」
雛代絞滋郎は、この瞬間から自らを『天邪鬼』と名乗ることに決めた。
●収集癖財団とブランク博士
運び出しは順調に進んでいる。
その様子を、頼蔵と誘輔は施設の外から眺めていた。
煙草の吸い殻を携帯灰皿にねじ込み、ため息をつく誘輔。
「あの博士は死んだのかね」
「できれば身柄を求めたかったが、そうもいかないようだ」
「組織だって嫌がらせで処分してるわけじゃねえ。漏れたら何が起こるかわからないような情報を漏らしたんなら、二度とそうならないようにしねえと……」
「…………」
頼蔵は車のドアを開いた。
「所で、変装の件はいいのかね?」
「あのあと報告書を読んだ。蒼紫をファイブで預かる条件に施設から出さないことが含まれてる。勝手に出たと勘違いされたらこっちから喧嘩ふっかけるようなもんだ」
「違いない」
車に乗り込む。
キーを取り出し、エンジンをかける。
●シークレットノイズF
少女を抱え、少女が走っている。
何かに追われているのだろうか、血を流し、走っていた。
抱えられている少女の腹は大きくさけている。
「あなた」
「はい」
「犠牲になる気はある?」
「……それは」
少女は返答をしかけて、ためらった。
目をそらして地面を見る。
抱えていた側の少女は、笑って言った。
「じゃあ、犠牲になるのは私ね」
突如少女は投げ飛ばされた。
川へと落ちる。
流されていく。
足が動かない。動かないのだ。なぜ動かない。こんな時だというのに。
手を伸ばすも、かの少女は遠ざかっていく。
きびすを返した彼女の背には、459の文字が焼き付けられていた。
「パパをよろしく」
●リアルノイズG・H
車の後部座席から起き上がる人体模型。
びくりとして振り返った誘輔と頼蔵に、人体模型がまあまあという風に手を上げた。
「一瞬だ」
たった一瞬だけ、頼蔵たちの脳裏にチリリとした刺激が走った。
まばゆいスパークが目の前でおきたように錯覚した。
気づけば、人体模型はそこにはない。
当然だ。そんな物を積んだ覚えは無い。
「おい、頼蔵」
気を取り直してギアレバーに手をかけた彼の腕を、誘輔が掴んだ。
「俺たちは、今、とんでもない知識を手に入れていないか?」
その後、八人はハンバーガーショップへ訪れていた。
がやがやとうるさい店内の中央。誰も他人の話を気にしないような空間で、頼蔵は語り始める。
「『白面の天邪鬼』というものが、あったね」
びくりとして手を止める奏空たちを横目に、頼蔵は話を続けよう――とした所で、タヱ子が話を継いだ。
「チルドレンメーカーによって生み出された子供に互いを殺し合う性質があるのなら、それを繰り返すことで『真実の子供』を量産することが可能ではないでしょうか」
「しんじつのこどもはひとりだけ。そうきまってるんだよ。でもたくさんうまれちゃったら、みんな自分をゆるせなくなっちゃうね」
「だから、蓋をしたんだ」
奏空が、手の中でハンバーガーを握りつぶした。
「自己認識を上書きし続ける科学的な洗脳方法を用いて、真実の子供をただの子供に仕立て上げたんだ。それだけじゃ――」
「――ないわ。無数の子供の中から優れた一体だけが生き残るシステムだもの。覚者に発現した子供が生き残る可能性が高い。発現確率が低くても、数がそろえば当たるもの」
飲みきったホットティーのカップをテーブルにおくありす。
白露がパイを千切ってくすくすと笑った。
「ああ、今分かったよあの施設の地下で首を吊っていたのは、『最初の実験体』の慣れは手なんだ。洗脳は継続的に受け続けないといけないのに、途中で打ち切られてしまったから、自ら命を絶ったんだ。けど、これってなんだかコミックで見たことがあるよ。こうやって洗脳した兵士を――」
「兵士を運用できれば、自分の意のままに動く強力な覚者兵力を作ることが出来る……クソッ!」
誘輔は強かにテーブルを叩いた。
「あの博士の言ってたのはこういうことか!」
立ち上がる。
他の七人も、同じように立ち上がっていた。
もう、分からないことなどない。
『あの瞬間』に流し込まれた知識が、ある一つの答えを示していた。
「雛代博士は生きている」
「チルドレンメーカーを使ったんだ」
「『天邪鬼』の完成形で支配して、自分の兵隊にしてやがる」
「次の目標は、ファイヴね」
「あの博士……蒼紫をファイヴから出さないって条件はこのためかよ。面倒ごとを押しつけてくれやがる」
「急ぎましょう」
店を出て、車に乗り込む八人。
目指すは東床尾山中隠し倉庫。
この場所に、全ての終着点がある。
いや、開始点と言うべきだろうか。
円を描くように並んだ睡眠チャンバーが次々に開く。
パネルを操作していた白衣の男は、起き上がった十代の少女の髪を撫でて言った。
「いい子だ、さすがは、僕の子だ」
少女はみな、白い仮面をつけている。
身体を起こした少女たちが、一斉に男を見た。
「僕の娘を取り返す」
「「はい、パパ」」
わたしはぶらうんはかせ
しゅうしゅうへきざいだん かさんどらけいかくたんとう
きみがこのほうこくしょをよむころには
わたしのからだは もうこのよにないだろう
さいごのおくりものだ
このほうこくしょをつうじて きみののうないに とくていのじょうほうを ながしこむ
ひどいずつうや はきけをかんじるだろうが たえてもらいたい
このじょうほうが きみたちののぞむけっかをもたらすかどうかは わからないが
きっと やくにたつはずだ
さいごにひとつ
わたしのみを あんじるひつようはない
そのかわり
ひなしろはかせを とめてくれ
――メモリアルメーカー、起動。
――シークレットノイズの注入を開始。
――抵抗をやめてください。
――抵抗をやめてください。
――エラー:可能性間移動の痕跡を確認しました。
――復旧処理を開始します。
――完了。
――抵抗をやめてください。
――抵抗をやめてください。
――抵抗をやめてください。
――抵抗をやめてください。
――抵抗をやめてください。
――おつかれさまでした。
●突入
葉柳・白露(CL2001329)にとって、閉じられたドアはドアではない。
物質透過でドアを通り抜け、内側からそっと解錠できるからだ。その際に透視能力を発動させ、内部で鉢合わせをおこさないように注意することも忘れない。
通路の先から誰もきていないことを確認して、仲間たちを招き入れた。
足音を潜めながら鋭聴力を働かせる『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)。
仲間に送受心で語りかけて、攻撃の是非を問う。
賛成4、否定2、条件付き賛成2。
多数決により賛成とし、『溶けない炎』鈴駆・ありす(CL2001269)が先行、壁づたいに背をつけて歩き、広間に出たところで……。
「戦闘開始。いくわよ、ゆる――開眼!」
フィンガースナップと共に無数の火炎を発射した。
●シークレットノイズA
東床尾山中。
十代の少女が死んでいた。
鋭く研いだ木の枝を喉に刺され、即死していた。
その1メートル先には同様の死体、2メートル先には岩で頭部を殴打された死体、その3メートル先には折り重なるようにして燃える無数の少女の死体があった。
炎に背を向けて。
頭から血をながし、あらぬ方向へと折れた腕を庇って歩く少女があった。
大きく避けた背中には459の文字が焼き付けられている。
視線の先には。
一糸まとわぬ少女が一人。
座っている。足はぴくりとも動かず、ただ揺れる花弁を見つめていた。
腹には456の文字が焼き付いていた。
「私を殺すんですか」
●広間の戦い
炎に包まれる人影。
しかし痛がることも、嫌がることも、恐れることも無く、人影はこちらに向けて走ってきた。
警報が鳴り響く。
緒形 逝(CL2000156)が飛び出し、駆け寄る相手を投げ飛ばした。
直後に足払いを受け、顎に膝蹴りを食らう逝。
囲みにかかった彼らを打ち払うべく、飛びかかる『鬼籍あるいは奇跡』御影・きせき(CL2001110)。
飛び回し蹴りの直撃をうけた相手は激しく吹き飛び、あとから駆けつけた仲間にキャッチされる。
駆けつけた仲間が機関銃を取り出した。
乱射。
ライオットシールドを翳した納屋 タヱ子(CL2000019)が弾を弾きながら突撃。
腕を振り込み円形のシールドを発射すると、柱の間を抜け、壁を跳ね返って相手へとぶつかった。
直後、爆発が起こる。
吹き飛ばされるタヱ子。
●シークレットノイズB
「任務完了。これより帰投……は、できないか」
小型無線機を捨て、足で踏み砕く男がいた。
見上げる。
棺に囲まれた柱のような装置が、炎をあげていた。
くずれゆく柱。
倒れ、砕けた表面のプレートの隙間から、見知った顔が覗いていた。
「やあ、あんたはそこにいたんだな」
炎に背を向け、歩き出す男。
「雛代供犠」
●奪還作戦
飛んできたタヱ子をキャッチする八重霞 頼蔵(CL2000693)。
追撃にと飛来するボウガンの矢を剣で切り落としてから、銃を乱射して進む。
柱の陰から飛び出し、ナイフを翳す敵。
しかしその襲撃は予見していた。正確には透けて見えていた。
出てきたそばから額を銃撃。
更に突き進む。
その横を『ゴシップ探偵』風祭・誘輔(CL2001092)が走った。
駆けつける足音を聞きつけ、グレネードを発射。
地面を二回バウンドした弾が爆発をおこし、相手を炎の中に埋めていく。
●シークレットノイズC
「嘘だ嘘だこんなの嘘だ絶対に嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だああああああああああああああああああああ!」
血にまみれた少女の死体を抱きしめ、白衣の男が泣きわめいている。
「死んでいる。死んでいる。みんな死んでいる。そんな、そんな、嘘だ、嘘だ、そんな……!」
辺りには無数の死体が転がっていた。全て同年代の、少年少女の死体だった。
血だまりに額をつけ、枯れるほど泣いて叫んだその後に。
男はゆっくりと顔を上げた。
「やりなおさなくちゃ」
●死を悼む者は
広間の戦いは圧倒的な優勢で進んでいく。
奏空の放った雷が相手を焼き付け、柱の裏に隠れた敵も白露が逃さず追尾し、次々に切り裂いていく。
やけになって飛び出した敵ですら、ありすの放った炎に打ち払われるのみである。
刀で斬りかかってくる敵。
斬撃を刀で払い、蹴り飛ばすきせき。
斧が飛んでくる。キャッチするタヱ子。
槍や薙刀を構えた敵が迫る。
跳躍し、一気に距離を詰めた逝が二人まとめて転倒させ、頼蔵が的確に胸を撃っていく。
それでも強引に飛び込んでくる敵を、誘輔はランチャーと化した腕で殴り倒した。
誘輔は息を吐く。
粗く粗く吐く。
「なんなんだよ」
血を吐き捨てて、叫んだ。
「なんでこいつらが、ここにいるんだよ!」
倒した敵は皆、真っ白な仮面をつけていた。
●シークレットノイズD
彼は控えめに言って、可哀想な人でした。
海外の大学を優秀な学歴で卒業し、人並みに恋愛をして結婚し、娘を授かったというのに、あんな怪異に巻き込まれるなんて。
いえ、詳細を話すわけには……。
そうですね、ええと……。
テディベアをご存じですか?
う、ご、ごめんなさい。吐きそうで。
とにかく、悲惨な事故……いえ、事件だったんです。可哀想な人でした。
けれど、だからって、収容違反を起こすなんて。
記憶処理をしておくべきだって、私は再三……。
●チルドレンメーカー
直径10メートルの金属製キューブ。
これが古妖だと説明されて納得できるものも、そう多くは無いだろう。
ありすもその一人だった。古妖の姿や性質は千差万別ではあるが、だからこそ身近な古妖と比較してしまう。
一番よく知っている古妖が例えば物言わぬタンスや夜に勝手に灯る提灯だったなら、納得もできたかもしれないが。誰もがそうではない。
「これ、どうやって運び出すの? ……私は、できれば近づきたくないんだけど」
「せーので持ち上げるわけにはいかないですよね」
「重そうだねー」
ぺたぺたと触って感触を確かめる奏空やきせき。
逝は黙って様子を見ている。
壁に背をつけて腕組みしていた白露が、彼らに呼びかけた。
「別にボクらが持って運ぶ必要はないさ。こういうのはそれ専用の道具や人員があるものだよ」
「そはいっても、特に何も持ってきていませんし」
タヱ子の呟きに苦笑して、白露は身体をずらした。
壁に作られたくぼみの中に、電話機が一つ。
●シークレットノイズE
額を銃で撃ち抜かれた男の死体があった。
うち捨てられた死体だった。
誰が見ても、それは死体だったのだが。
恐怖に見開いた目が、ぎょろりと動く。
額の傷が、じわじわとふさがっていく。
身体を起こしたその男は、開口一番にこう言った。
「やりなおさなくちゃ」
雛代絞滋郎は、この瞬間から自らを『天邪鬼』と名乗ることに決めた。
●収集癖財団とブランク博士
運び出しは順調に進んでいる。
その様子を、頼蔵と誘輔は施設の外から眺めていた。
煙草の吸い殻を携帯灰皿にねじ込み、ため息をつく誘輔。
「あの博士は死んだのかね」
「できれば身柄を求めたかったが、そうもいかないようだ」
「組織だって嫌がらせで処分してるわけじゃねえ。漏れたら何が起こるかわからないような情報を漏らしたんなら、二度とそうならないようにしねえと……」
「…………」
頼蔵は車のドアを開いた。
「所で、変装の件はいいのかね?」
「あのあと報告書を読んだ。蒼紫をファイブで預かる条件に施設から出さないことが含まれてる。勝手に出たと勘違いされたらこっちから喧嘩ふっかけるようなもんだ」
「違いない」
車に乗り込む。
キーを取り出し、エンジンをかける。
●シークレットノイズF
少女を抱え、少女が走っている。
何かに追われているのだろうか、血を流し、走っていた。
抱えられている少女の腹は大きくさけている。
「あなた」
「はい」
「犠牲になる気はある?」
「……それは」
少女は返答をしかけて、ためらった。
目をそらして地面を見る。
抱えていた側の少女は、笑って言った。
「じゃあ、犠牲になるのは私ね」
突如少女は投げ飛ばされた。
川へと落ちる。
流されていく。
足が動かない。動かないのだ。なぜ動かない。こんな時だというのに。
手を伸ばすも、かの少女は遠ざかっていく。
きびすを返した彼女の背には、459の文字が焼き付けられていた。
「パパをよろしく」
●リアルノイズG・H
車の後部座席から起き上がる人体模型。
びくりとして振り返った誘輔と頼蔵に、人体模型がまあまあという風に手を上げた。
「一瞬だ」
たった一瞬だけ、頼蔵たちの脳裏にチリリとした刺激が走った。
まばゆいスパークが目の前でおきたように錯覚した。
気づけば、人体模型はそこにはない。
当然だ。そんな物を積んだ覚えは無い。
「おい、頼蔵」
気を取り直してギアレバーに手をかけた彼の腕を、誘輔が掴んだ。
「俺たちは、今、とんでもない知識を手に入れていないか?」
その後、八人はハンバーガーショップへ訪れていた。
がやがやとうるさい店内の中央。誰も他人の話を気にしないような空間で、頼蔵は語り始める。
「『白面の天邪鬼』というものが、あったね」
びくりとして手を止める奏空たちを横目に、頼蔵は話を続けよう――とした所で、タヱ子が話を継いだ。
「チルドレンメーカーによって生み出された子供に互いを殺し合う性質があるのなら、それを繰り返すことで『真実の子供』を量産することが可能ではないでしょうか」
「しんじつのこどもはひとりだけ。そうきまってるんだよ。でもたくさんうまれちゃったら、みんな自分をゆるせなくなっちゃうね」
「だから、蓋をしたんだ」
奏空が、手の中でハンバーガーを握りつぶした。
「自己認識を上書きし続ける科学的な洗脳方法を用いて、真実の子供をただの子供に仕立て上げたんだ。それだけじゃ――」
「――ないわ。無数の子供の中から優れた一体だけが生き残るシステムだもの。覚者に発現した子供が生き残る可能性が高い。発現確率が低くても、数がそろえば当たるもの」
飲みきったホットティーのカップをテーブルにおくありす。
白露がパイを千切ってくすくすと笑った。
「ああ、今分かったよあの施設の地下で首を吊っていたのは、『最初の実験体』の慣れは手なんだ。洗脳は継続的に受け続けないといけないのに、途中で打ち切られてしまったから、自ら命を絶ったんだ。けど、これってなんだかコミックで見たことがあるよ。こうやって洗脳した兵士を――」
「兵士を運用できれば、自分の意のままに動く強力な覚者兵力を作ることが出来る……クソッ!」
誘輔は強かにテーブルを叩いた。
「あの博士の言ってたのはこういうことか!」
立ち上がる。
他の七人も、同じように立ち上がっていた。
もう、分からないことなどない。
『あの瞬間』に流し込まれた知識が、ある一つの答えを示していた。
「雛代博士は生きている」
「チルドレンメーカーを使ったんだ」
「『天邪鬼』の完成形で支配して、自分の兵隊にしてやがる」
「次の目標は、ファイヴね」
「あの博士……蒼紫をファイヴから出さないって条件はこのためかよ。面倒ごとを押しつけてくれやがる」
「急ぎましょう」
店を出て、車に乗り込む八人。
目指すは東床尾山中隠し倉庫。
この場所に、全ての終着点がある。
いや、開始点と言うべきだろうか。
円を描くように並んだ睡眠チャンバーが次々に開く。
パネルを操作していた白衣の男は、起き上がった十代の少女の髪を撫でて言った。
「いい子だ、さすがは、僕の子だ」
少女はみな、白い仮面をつけている。
身体を起こした少女たちが、一斉に男を見た。
「僕の娘を取り返す」
「「はい、パパ」」
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
