笑うカボチャの集団
●今年獲れたカボチャが!!
茨城県某所。
この近辺は都内に出荷される野菜を育てている場所も多いが、この農家はカボチャを育てている。
カボチャの収穫は基本、夏。現在だとすでに収穫を終えて、ほとんどは出荷し終えている状況にある。
川渕一家は農家を営み、カボチャだけを作っている。それは、品質と味にこだわり、この上なく甘いカボチャを育てているかららしい。
そんなわけで、品種改良の為にあれやこれやと試行錯誤。道具のメンテや畑の手入れ等々、オフシーズンだからといってのんびりしているわけではない。
その日も、畑の手入れをする為に、作業道具を取りに倉庫へと向かった川渕夫婦。
「…………ん?」
そこで、2人はそこで何かが聞こえた気がして、耳を澄ませる。
ケタケタケタケタ……。
ケタケタケタケタ……。
「何かしら、子供でも紛れ込んだかねえ」
2人とも、50代となっており、さすがにちょっとやそっとのことで驚くほど人生経験は浅くない。彼らは、その音の原因を探っていたのだが……。
ケタケタケタケタ!!
ケタケタケタケタ!!
倉庫に保管していたカボチャから、笑い声は聞こえてくる。保管していた籠一つが突然倒れ、カボチャがゆらりと宙に浮く。その数は10余り。中央には、一際大きく膨らんだカボチャが目を赤く輝かせている。
「……なんだこりゃあ!」
「あ、あんた……!」
さすがに妖が相手とならば、足が竦んでしまう。夫婦目掛け、妖となったカボチャ達は笑いを浮かべながら襲い掛かるのだった……。
●ハロウィン用のカボチャを確保しましょうか(にっこり)
会議室に集まる覚者達の下へ、久方 真由美(nCL2000003)が資料を持って現れる。
「丁度、かぼちゃが欲しかったので、取ってきてくださいね?」
にっこり微笑む彼女は、どさっと資料の束を置いてから背を向ける。
……あの、説明をください。
うふふ、にっこり。
真由美は笑って、会議室から去っていったのだった。
茨城県某所。
この近辺は都内に出荷される野菜を育てている場所も多いが、この農家はカボチャを育てている。
カボチャの収穫は基本、夏。現在だとすでに収穫を終えて、ほとんどは出荷し終えている状況にある。
川渕一家は農家を営み、カボチャだけを作っている。それは、品質と味にこだわり、この上なく甘いカボチャを育てているかららしい。
そんなわけで、品種改良の為にあれやこれやと試行錯誤。道具のメンテや畑の手入れ等々、オフシーズンだからといってのんびりしているわけではない。
その日も、畑の手入れをする為に、作業道具を取りに倉庫へと向かった川渕夫婦。
「…………ん?」
そこで、2人はそこで何かが聞こえた気がして、耳を澄ませる。
ケタケタケタケタ……。
ケタケタケタケタ……。
「何かしら、子供でも紛れ込んだかねえ」
2人とも、50代となっており、さすがにちょっとやそっとのことで驚くほど人生経験は浅くない。彼らは、その音の原因を探っていたのだが……。
ケタケタケタケタ!!
ケタケタケタケタ!!
倉庫に保管していたカボチャから、笑い声は聞こえてくる。保管していた籠一つが突然倒れ、カボチャがゆらりと宙に浮く。その数は10余り。中央には、一際大きく膨らんだカボチャが目を赤く輝かせている。
「……なんだこりゃあ!」
「あ、あんた……!」
さすがに妖が相手とならば、足が竦んでしまう。夫婦目掛け、妖となったカボチャ達は笑いを浮かべながら襲い掛かるのだった……。
●ハロウィン用のカボチャを確保しましょうか(にっこり)
会議室に集まる覚者達の下へ、久方 真由美(nCL2000003)が資料を持って現れる。
「丁度、かぼちゃが欲しかったので、取ってきてくださいね?」
にっこり微笑む彼女は、どさっと資料の束を置いてから背を向ける。
……あの、説明をください。
うふふ、にっこり。
真由美は笑って、会議室から去っていったのだった。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.カボチャを『FiVE』本部に持って帰ること
2.カボチャの妖群の討伐
3.なし
2.カボチャの妖群の討伐
3.なし
どこかでお会いしたことのある方もこんにちは。なちゅいです。
近づくハロウィンに乗じて現れるカボチャの妖どもの討伐を願います。
●敵……妖(生物系)×13体
収穫したカボチャのうち、10数体が妖となってしまい、
農家の人々を襲ってしまっているようです。
全ての個体が浮遊しております。
○ランク2×1体
妖となり、力も強まったことで、大きさが3倍近くになっております。
だいたい、成人男性が両手を広げたくらいの大きさです。
・笑い声……特全・虚弱
・眼光……特遠列・呪い
・かぶりつく……物遠単・解除効果あり
○ランク1×12体
一般的なカボチャで、両手で持てるくらいの大きさです。
・笑い声……特遠列・弱体
・かぶりつく……物遠単・解除効果あり
●状況
茨城県某所で農家を営む川渕家の倉庫で、
カボチャの集団が襲い掛かってきます。
朝、川渕夫婦は作業を始めますので、
早朝に出向いて妖カボチャの討伐を行うことになります。
お土産にカボチャを持って帰らないと、
真由美が激おこになります。
それに影響ない量であれば、食べて帰っても問題ありません。
それでは、よろしくお願いいたします。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
6日
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/6
6/6
公開日
2016年11月02日
2016年11月02日
■メイン参加者 6人■

●カボチャの妖
茨城県某所でカボチャ農家を営む川渕夫妻の住む家へ、『F.i.V.E.』の覚者達はやってきていた。
「夫妻が不審に思って起きてこないように、大きな音を立てないように気をつけないといけないですね!」
「大切に育てた作物が妖になってしまうなんて……。他の被害が出ないうちに退治しないとですね」
まだ夜が明け切ってはいない早朝である。声を上げそうになる『Overdrive』片桐・美久(CL2001026)だが、そこは声量を抑えつつ仲間達へと語る。他の農作物への被害を懸念する『願いの翼』天野 澄香(CL2000194)がそれに応じて頷く。
「カボチャの妖ですか。土地が違えば、ジャックオーランタンに間違えられそうですね」
今回の話を聞いて望月・夢(CL2001307)が思い浮かべたのは、ジャックオーランタン。アイルランドに伝わる鬼火。あるいは、カボチャを纏ったり、カボチャ男の姿で現れることもあるという。
「カボチャ……って、ああ、そういえば、そろそろハロウィンか」
東雲 梛(CL2001410) は10月31日がハロウィンだと思い出す。それもあっての今回の依頼。おかげで、真由美から半ば強引に押し付けられるような形で、依頼に参加している覚者達である。
「あまり酷く攻撃しちゃうと壊れてしまうかもですし。悩ましいところですが、なるべく壊さないように頑張りましょう」
澄香は真由美へ土産を持っていくこともそうだが、パンプキンパイを作りたいから、できる限り形を残した状態で妖を討伐したいと考える。
「お土産にカボチャが貰えるなんて、超ラッキーなんよ」
茨田・凜(CL2000438) はというと、最近は野菜が高騰しているという話もあって困っていたらしい。彼女もまた、煮物、ポタージュ、ケーキといった利用法を考え、討伐に意欲を見せる。
「しかし、妖化ってのは、何にでも起こるもんだよな」
『守人刀』獅子王 飛馬(CL2001466)はううんと唸って考える。ハロウィン間近に起こった事件と考えれば、確かに時期的には相応しい。だが、カボチャ農家である川渕夫妻にとっては間が悪い以外の何物でもない。
覚者達はこっそりと敷地内へと入り、倉庫へと近づく。その際も、メンバー達は音を立てないよう細心の注意を払う。
『川渕様、『F.i.V.E.』です。ただいま妖退治をしております。中に入るのは少々お待ち下さいね』
倉庫に立ち入る前に、澄香が予め用意していた張り紙を張る。これは万が一、物音に気づいた夫妻が倉庫に接近した場合に備えた対策だ。
飛馬は仲間達が突入のタイミングを図った際、岩を纏って身を固め、敵の攻撃に備える。
そして、メンバー達が倉庫の中に入ると……。
ケタケタケタケタ……。
ケタケタケタケタ……。
不気味な声を上げ、そいつらは籠をぶちまけて現れる。10体余りいるカボチャの妖だ。そして、その中に一際大きなカボチャが紛れている。
「これだけ数がいると、結構厄介だな」
覚醒し、額に第三の目を出現させた梛はそれらのカボチャを目にし、これからの戦いに難儀さを覚えていた。
美久はそのカボチャを見て、逆にポジティブな思考をしていたらしい。
「南瓜がこれだけあると、壮観ですね! 夫妻の愛情がたっぷり」
澄香も先ほど、憂いてはいたが、川渕夫妻が大切に育てたカボチャのはず。本来ならば、乱暴などをするのは本意ではないのだが……。
「人を害することは覚えたしまった悪い南瓜幽霊さんには、お仕置きが必要そうですね!」
刺青を桃色に輝かせる美久は、カボチャ達を倒すべく力を解き放つのである。
●不気味な笑いに包まれて
ケタケタケタケタ……。
ケタケタケタケタ……。
不気味な笑みと共に、飛びかかってくるカボチャ達。その笑い声は、覚者達の力を弱めてしまう。
夢は高密度の霧を倉庫内に発することで、全てのカボチャの身体能力を下げようとする。
同時に、彼女はいつ来るとも分からぬ川渕夫婦の来訪にも備えていた。もし来てしまったのならば、すぐにでも彼らに避難を促さねばならないのだ。
ケタケタと笑い、かぶりついてくるカボチャの前には、飛馬が立ちはだかる。
「悪ぃけど、澄香のねーちゃんは狙わせねーよ。回復の要が呪いで動けなくなるのは、まじーからな」
とりわけ、怖いのは大きなカボチャが目から発する光だ。今のところ使ってはこないが、カボチャどもはケタケタと笑い続けている。
「虚弱? 弱体? 関係ねーよ。巖心流の守り手は鍛え方が違うんでな」
飛馬はそれらから澄香を護るべく、全力でガードを行う。飛んでくるカボチャは刀を使って受け止めていたようだ。
黒い翼を広げた澄香もまた夫婦だけでなく、倉庫に接近する全ての者を超直感で警戒しながら、治癒力を高める香りを仲間へと振りまいていく。
ふわふわと浮かぶカボチャ群によって、笑い声がこだまする倉庫内。それらによって仲間達が弱っていくのを見た凜は、刺青を空色に輝かせた上で、癒しの滴での回復、そして、深想水の神秘の力で仲間の異常を取り払うべく動いていた。
「ハロウィンといえば南瓜ですが……。ここまで並んでいる上に笑い声だらけでは、何だか馬鹿にされているみたいです」
カボチャどもの様子にむっとしてしまう美久は痛覚を遮断し、ハイバランサーを使ってカボチャ達へと地を這うように仕掛ける。
「トリックオアトリート! なんて、悪戯しかしてあげられませんが!」
彼は小太刀『徒花』を握り、手前に浮遊するカボチャへと跳ね上がるような連撃を浴びせかけていく。
やや後手にはなったが、梛も特殊な花から発せられる香りの効果を強めた上で、カボチャの群れへと放つ。それにより、手前に浮かぶカボチャの勢いが弱まっていたようだ。
そこで、一際大きなカボチャがギラリと目を光らせ、覚者達を呪おうとしてきた。その呪いはまれに体を縛り付ける効力を持っている。
「呪いを放つ魔眼は、貴方だけの特権ではありませんよ?」
夢はくすりと笑い、額に発言させた目から怪光線を放つ。だが、一段後方にいた大型カボチャは、小さなカボチャを盾にしてそれを防ぐ。
まずは敵の数を減らさねばならないと、覚者達は改めてその撃破に当たっていくのだった。
カボチャに攻め入る覚者達。
澄香は仲間の中央に布陣し、圧縮した特殊な香りを解き放ち、カボチャを弱めて無力化していく。
これらの方法で戦う彼女達は、できる限り原型を留めて撃破を考えていたのだろう。
個々のカボチャはさほど強くはない。だが、それは、覚者達が全力を尽くした場合の話だ。
資料での説明であることが大きかったとはいえ、覚者達の対策は甘すぎたと言わざるを得ない。
実際に攻撃を仕掛けていたのは、美久、澄香、梛の3人がほとんど。ほぼ澄香のガードに徹していた飛馬、後で回復こそ行いが、さほど対策を練らずに戦いに臨む凜。それもあり、カボチャの数はなかなか減らない。
そんな中、支援メインではあるが、仲間達をカバーするように立ち回っていたのは夢だ。霧を発して敵を弱め、あるいは浮遊するカボチャの真下の地面から蔓を伸ばして動きを鈍らせようとする。
その上で、カボチャの笑い声や呪いを受けたメンバーの為にと、浄化物質を飛ばし、仲間の負担を軽減させようとする。
ただ、夢が効果的な立ち回りをしていたのはいいが、如何せん攻撃の手が足りない。
その為、敵の数を減らす間に、覚者達は徐々に疲弊してしまう。
岩の鎧と刀で絶え続けていた飛馬だったが、仲間の盾となることで、必然的に攻撃は集まってしまう。刀で受け止めていた飛馬は限界を感じながらも命を削って立ち上がり、なおも仲間を護ろうと耐え続ける。
敵の数が多いことも災いし、飛びかかるカボチャ達の攻撃は後方にまで及ぶ。凜は注意こそしてはいたが、さほど効果的な対策を立ててはいなかったのか、幾度目かのかぶりつきを受けて倒れかけてしまう。
それでも、凜は命の力を砕いて倒れるのを拒絶し、さらなる回復へと当たっていた。
想像以上に、カボチャ達に苦戦する覚者達。それでも、メンバー達は小型のカボチャを1体、1体と叩き落とし、その数を減らしていく。
それまでの疲労、そして気力の減少によって戦術の幅は狭められつつあったが、小型が減ってくれば、幾分か覚者達にも余裕は出てくる。
「助かります」
梛が発した大樹の滴を受けた美久は少々複雑な顔をしながら礼を言い、徒花を握り締める。
その少し後にいた梛は手を上げてそれに応えながら、大型カボチャを観察していた。そいつは目をギラリと光らせ、見つめた覚者達を呪おうとしていたのである。
「破眼光と似ているけど、違うな。……だけど、似ている部分も多いよな」
自らが怪の因子持ちだからこそ、感覚を掴むことが出来るかもしれないと梛は考え、幾度もそれを目にする。仲間の迷惑にならぬようにと気に掛けながら、注視をしていたが……。残念ながら会得には至らなかった。
その間も夢が怪光線を発して敵を倒していく。いつの間にか、カボチャの数は片手で足る数にまで減っていた。
梛は大型カボチャに命中させた種を急成長させ、そいつの動きを封じようとする。
「ハロウィンだし、これ以上悪戯されたくなかったら、何か頂戴。……まぁ、もらっても倒すけどね」
勝利を確信した彼が微笑む。なぜなら、後から仲間達が敵を仕留めるべく仕掛けていたからだ。
気力が少なくなっていたことで、澄香は敵へと圧縮した空気を撃ち込む。すると、全身に傷を負っていた大型カボチャがついに粉砕され、地面へと転がっていく。
残る小型。数が少なくなれば、覚者達の敵ではない。
「これでお仕舞いです!!!」
徒花を正しく構えた美久は、刃を一閃させ、最後のカボチャの体を他断ち切る。浮かんでいた顔が消え、そのカボチャは真っ二つになってぽとり、ぽとりと倉庫の床に落ちていったのだった。
●謝罪と謝礼
かなり傷を負ってしまったが、覚者達はどうにか妖となった全ての妖を無力化することができた。
あちらこちらに飛び散ったカボチャ。半分以上は欠けていたり、原型すら留めていないものもあったが、澄香が拾い始めたのに合わせ、メンバー達は落ちたカボチャを回収していく。
「さて、理由はどうあれ、大事なカボチャの入った倉庫で暴れちまったわけだし……。何て話したもんかな」
飛馬が正直に話すしかねーかなと考えていたところに、やってきた川渕夫妻が倉庫の惨状に唖然としてしまっていた。
張り紙は確認してくれたであろう夫婦に対し、覚者達はまず頭を下げて謝罪した上で、倉庫で起こっていたことを話す。その説明は、美久や澄香が代わる代わる行う。
「何というか、騒がしくして申し訳ねー……。妖になったカボチャは倒しちまったし、信じて貰うには俺らのこの有様を見てもらうしかねーんだけど……」
ボロボロになっていた飛馬は川渕夫妻に傷だらけの自分達を見るよう促したうえで、この惨状について詫びる。
覚者達がある程度片付けてくれてはいるが、それでも、所々に飛び散ったカボチャ、そして、戦いによって破壊された倉庫、そして備品。夫婦のショックは決して小さくはなかったはずだ。
「いや、命あっての物種というからな……」
「生きていれば、どうにかなるからねえ。気にしないでおくれ」
夫婦も覚者達の状況と、自分達が置かれていた危険を察してくれた。
時期的にオフシーズンだったこともあり、夫婦も忙しくはないからと、覚者達と共に倉庫の片づけを行う。穴の書いた屋根や壁の補修、備品の修復など行い、とりあえずの片づけを完了させる。
覚者達の目的はもう1つある。どうにかして、カボチャを『F.i.V.E.』本部まで持ち帰らねばならない。
「何というか、ほんとに申し訳ないんだけど、実はお使いでカボチャをどっかで手に入れて来いって言われててさ」
飛馬が自分達の状況を夫婦へと説明する。持ち帰らねば、激おこになってしまうお姉さんがいるのだと。
「ほんとにどんなのでもいいし、出来の良くなかったのとかでも良いから、ちょっとばかし分けてもらえたりしねーかな」
「妖化したカボチャなら、お持ち帰りして宜しいでしょうか?」
飛馬に続き、夢が籠を指して夫婦へと願う。確かに妖となっていたカボチャの残骸が籠の中にありはする。
美久も、申し訳なさそうに視線で訴える。澄香は、購入という手段も交えて交渉していた。
「世話になったからな。ほら、持っていきな」
「これも持っていきなさいな」
それもあり、川渕夫婦は『F.i.V.E.』メンバーに好印象を抱き、砕けたカボチャの他、籠一杯のカボチャを追加して渡してくれた。
「持ち帰るのめんどくさいけど、皆も料理するみたいだし、まぁいいか」
それを、荷物持ちとして控えていた梛が受け取る。仲間達にも少しずつ手分けして持つよう、梛は頼んでいた。重傷を負っていたものの、凜もまたお土産が出来て喜んでいたようだ。
「これだけあれば、色々と使えそう。ハロウィンパーティとかも出来そうだな。……もしかして、それの為?」
今更ながらの梛の発言に、その場にいたメンバー達からは笑いが起きていた。
『F.i.V.E.』に戻ったメンバー達は、早速、土産のカボチャを真由美に差し出す。
「トリックオアトリートです。久方のお姉さん!」
「はい、確かに。お疲れ様でした」
悪戯っぽく笑みを浮かべた美久から、カボチャを受け取った彼女は嬉しそうに笑って覚者達をねぎらう。
余ったカボチャを使い、メンバー達は折角だからと調理場を使ってカボチャ料理を作ることにしていたようだ。
「かぼちゃの煮つけが食べたいな……」
受け取ったカボチャに人型の顔を掘りながら梛が口にすると、凜が煮物を作り始めていた。
(後日、パンプキンパイを作って、ご夫妻へ持って行きたいですね)
澄香はパイを焼きながら、改めて夫婦の下へと向かおうと考えるのだった。
茨城県某所でカボチャ農家を営む川渕夫妻の住む家へ、『F.i.V.E.』の覚者達はやってきていた。
「夫妻が不審に思って起きてこないように、大きな音を立てないように気をつけないといけないですね!」
「大切に育てた作物が妖になってしまうなんて……。他の被害が出ないうちに退治しないとですね」
まだ夜が明け切ってはいない早朝である。声を上げそうになる『Overdrive』片桐・美久(CL2001026)だが、そこは声量を抑えつつ仲間達へと語る。他の農作物への被害を懸念する『願いの翼』天野 澄香(CL2000194)がそれに応じて頷く。
「カボチャの妖ですか。土地が違えば、ジャックオーランタンに間違えられそうですね」
今回の話を聞いて望月・夢(CL2001307)が思い浮かべたのは、ジャックオーランタン。アイルランドに伝わる鬼火。あるいは、カボチャを纏ったり、カボチャ男の姿で現れることもあるという。
「カボチャ……って、ああ、そういえば、そろそろハロウィンか」
東雲 梛(CL2001410) は10月31日がハロウィンだと思い出す。それもあっての今回の依頼。おかげで、真由美から半ば強引に押し付けられるような形で、依頼に参加している覚者達である。
「あまり酷く攻撃しちゃうと壊れてしまうかもですし。悩ましいところですが、なるべく壊さないように頑張りましょう」
澄香は真由美へ土産を持っていくこともそうだが、パンプキンパイを作りたいから、できる限り形を残した状態で妖を討伐したいと考える。
「お土産にカボチャが貰えるなんて、超ラッキーなんよ」
茨田・凜(CL2000438) はというと、最近は野菜が高騰しているという話もあって困っていたらしい。彼女もまた、煮物、ポタージュ、ケーキといった利用法を考え、討伐に意欲を見せる。
「しかし、妖化ってのは、何にでも起こるもんだよな」
『守人刀』獅子王 飛馬(CL2001466)はううんと唸って考える。ハロウィン間近に起こった事件と考えれば、確かに時期的には相応しい。だが、カボチャ農家である川渕夫妻にとっては間が悪い以外の何物でもない。
覚者達はこっそりと敷地内へと入り、倉庫へと近づく。その際も、メンバー達は音を立てないよう細心の注意を払う。
『川渕様、『F.i.V.E.』です。ただいま妖退治をしております。中に入るのは少々お待ち下さいね』
倉庫に立ち入る前に、澄香が予め用意していた張り紙を張る。これは万が一、物音に気づいた夫妻が倉庫に接近した場合に備えた対策だ。
飛馬は仲間達が突入のタイミングを図った際、岩を纏って身を固め、敵の攻撃に備える。
そして、メンバー達が倉庫の中に入ると……。
ケタケタケタケタ……。
ケタケタケタケタ……。
不気味な声を上げ、そいつらは籠をぶちまけて現れる。10体余りいるカボチャの妖だ。そして、その中に一際大きなカボチャが紛れている。
「これだけ数がいると、結構厄介だな」
覚醒し、額に第三の目を出現させた梛はそれらのカボチャを目にし、これからの戦いに難儀さを覚えていた。
美久はそのカボチャを見て、逆にポジティブな思考をしていたらしい。
「南瓜がこれだけあると、壮観ですね! 夫妻の愛情がたっぷり」
澄香も先ほど、憂いてはいたが、川渕夫妻が大切に育てたカボチャのはず。本来ならば、乱暴などをするのは本意ではないのだが……。
「人を害することは覚えたしまった悪い南瓜幽霊さんには、お仕置きが必要そうですね!」
刺青を桃色に輝かせる美久は、カボチャ達を倒すべく力を解き放つのである。
●不気味な笑いに包まれて
ケタケタケタケタ……。
ケタケタケタケタ……。
不気味な笑みと共に、飛びかかってくるカボチャ達。その笑い声は、覚者達の力を弱めてしまう。
夢は高密度の霧を倉庫内に発することで、全てのカボチャの身体能力を下げようとする。
同時に、彼女はいつ来るとも分からぬ川渕夫婦の来訪にも備えていた。もし来てしまったのならば、すぐにでも彼らに避難を促さねばならないのだ。
ケタケタと笑い、かぶりついてくるカボチャの前には、飛馬が立ちはだかる。
「悪ぃけど、澄香のねーちゃんは狙わせねーよ。回復の要が呪いで動けなくなるのは、まじーからな」
とりわけ、怖いのは大きなカボチャが目から発する光だ。今のところ使ってはこないが、カボチャどもはケタケタと笑い続けている。
「虚弱? 弱体? 関係ねーよ。巖心流の守り手は鍛え方が違うんでな」
飛馬はそれらから澄香を護るべく、全力でガードを行う。飛んでくるカボチャは刀を使って受け止めていたようだ。
黒い翼を広げた澄香もまた夫婦だけでなく、倉庫に接近する全ての者を超直感で警戒しながら、治癒力を高める香りを仲間へと振りまいていく。
ふわふわと浮かぶカボチャ群によって、笑い声がこだまする倉庫内。それらによって仲間達が弱っていくのを見た凜は、刺青を空色に輝かせた上で、癒しの滴での回復、そして、深想水の神秘の力で仲間の異常を取り払うべく動いていた。
「ハロウィンといえば南瓜ですが……。ここまで並んでいる上に笑い声だらけでは、何だか馬鹿にされているみたいです」
カボチャどもの様子にむっとしてしまう美久は痛覚を遮断し、ハイバランサーを使ってカボチャ達へと地を這うように仕掛ける。
「トリックオアトリート! なんて、悪戯しかしてあげられませんが!」
彼は小太刀『徒花』を握り、手前に浮遊するカボチャへと跳ね上がるような連撃を浴びせかけていく。
やや後手にはなったが、梛も特殊な花から発せられる香りの効果を強めた上で、カボチャの群れへと放つ。それにより、手前に浮かぶカボチャの勢いが弱まっていたようだ。
そこで、一際大きなカボチャがギラリと目を光らせ、覚者達を呪おうとしてきた。その呪いはまれに体を縛り付ける効力を持っている。
「呪いを放つ魔眼は、貴方だけの特権ではありませんよ?」
夢はくすりと笑い、額に発言させた目から怪光線を放つ。だが、一段後方にいた大型カボチャは、小さなカボチャを盾にしてそれを防ぐ。
まずは敵の数を減らさねばならないと、覚者達は改めてその撃破に当たっていくのだった。
カボチャに攻め入る覚者達。
澄香は仲間の中央に布陣し、圧縮した特殊な香りを解き放ち、カボチャを弱めて無力化していく。
これらの方法で戦う彼女達は、できる限り原型を留めて撃破を考えていたのだろう。
個々のカボチャはさほど強くはない。だが、それは、覚者達が全力を尽くした場合の話だ。
資料での説明であることが大きかったとはいえ、覚者達の対策は甘すぎたと言わざるを得ない。
実際に攻撃を仕掛けていたのは、美久、澄香、梛の3人がほとんど。ほぼ澄香のガードに徹していた飛馬、後で回復こそ行いが、さほど対策を練らずに戦いに臨む凜。それもあり、カボチャの数はなかなか減らない。
そんな中、支援メインではあるが、仲間達をカバーするように立ち回っていたのは夢だ。霧を発して敵を弱め、あるいは浮遊するカボチャの真下の地面から蔓を伸ばして動きを鈍らせようとする。
その上で、カボチャの笑い声や呪いを受けたメンバーの為にと、浄化物質を飛ばし、仲間の負担を軽減させようとする。
ただ、夢が効果的な立ち回りをしていたのはいいが、如何せん攻撃の手が足りない。
その為、敵の数を減らす間に、覚者達は徐々に疲弊してしまう。
岩の鎧と刀で絶え続けていた飛馬だったが、仲間の盾となることで、必然的に攻撃は集まってしまう。刀で受け止めていた飛馬は限界を感じながらも命を削って立ち上がり、なおも仲間を護ろうと耐え続ける。
敵の数が多いことも災いし、飛びかかるカボチャ達の攻撃は後方にまで及ぶ。凜は注意こそしてはいたが、さほど効果的な対策を立ててはいなかったのか、幾度目かのかぶりつきを受けて倒れかけてしまう。
それでも、凜は命の力を砕いて倒れるのを拒絶し、さらなる回復へと当たっていた。
想像以上に、カボチャ達に苦戦する覚者達。それでも、メンバー達は小型のカボチャを1体、1体と叩き落とし、その数を減らしていく。
それまでの疲労、そして気力の減少によって戦術の幅は狭められつつあったが、小型が減ってくれば、幾分か覚者達にも余裕は出てくる。
「助かります」
梛が発した大樹の滴を受けた美久は少々複雑な顔をしながら礼を言い、徒花を握り締める。
その少し後にいた梛は手を上げてそれに応えながら、大型カボチャを観察していた。そいつは目をギラリと光らせ、見つめた覚者達を呪おうとしていたのである。
「破眼光と似ているけど、違うな。……だけど、似ている部分も多いよな」
自らが怪の因子持ちだからこそ、感覚を掴むことが出来るかもしれないと梛は考え、幾度もそれを目にする。仲間の迷惑にならぬようにと気に掛けながら、注視をしていたが……。残念ながら会得には至らなかった。
その間も夢が怪光線を発して敵を倒していく。いつの間にか、カボチャの数は片手で足る数にまで減っていた。
梛は大型カボチャに命中させた種を急成長させ、そいつの動きを封じようとする。
「ハロウィンだし、これ以上悪戯されたくなかったら、何か頂戴。……まぁ、もらっても倒すけどね」
勝利を確信した彼が微笑む。なぜなら、後から仲間達が敵を仕留めるべく仕掛けていたからだ。
気力が少なくなっていたことで、澄香は敵へと圧縮した空気を撃ち込む。すると、全身に傷を負っていた大型カボチャがついに粉砕され、地面へと転がっていく。
残る小型。数が少なくなれば、覚者達の敵ではない。
「これでお仕舞いです!!!」
徒花を正しく構えた美久は、刃を一閃させ、最後のカボチャの体を他断ち切る。浮かんでいた顔が消え、そのカボチャは真っ二つになってぽとり、ぽとりと倉庫の床に落ちていったのだった。
●謝罪と謝礼
かなり傷を負ってしまったが、覚者達はどうにか妖となった全ての妖を無力化することができた。
あちらこちらに飛び散ったカボチャ。半分以上は欠けていたり、原型すら留めていないものもあったが、澄香が拾い始めたのに合わせ、メンバー達は落ちたカボチャを回収していく。
「さて、理由はどうあれ、大事なカボチャの入った倉庫で暴れちまったわけだし……。何て話したもんかな」
飛馬が正直に話すしかねーかなと考えていたところに、やってきた川渕夫妻が倉庫の惨状に唖然としてしまっていた。
張り紙は確認してくれたであろう夫婦に対し、覚者達はまず頭を下げて謝罪した上で、倉庫で起こっていたことを話す。その説明は、美久や澄香が代わる代わる行う。
「何というか、騒がしくして申し訳ねー……。妖になったカボチャは倒しちまったし、信じて貰うには俺らのこの有様を見てもらうしかねーんだけど……」
ボロボロになっていた飛馬は川渕夫妻に傷だらけの自分達を見るよう促したうえで、この惨状について詫びる。
覚者達がある程度片付けてくれてはいるが、それでも、所々に飛び散ったカボチャ、そして、戦いによって破壊された倉庫、そして備品。夫婦のショックは決して小さくはなかったはずだ。
「いや、命あっての物種というからな……」
「生きていれば、どうにかなるからねえ。気にしないでおくれ」
夫婦も覚者達の状況と、自分達が置かれていた危険を察してくれた。
時期的にオフシーズンだったこともあり、夫婦も忙しくはないからと、覚者達と共に倉庫の片づけを行う。穴の書いた屋根や壁の補修、備品の修復など行い、とりあえずの片づけを完了させる。
覚者達の目的はもう1つある。どうにかして、カボチャを『F.i.V.E.』本部まで持ち帰らねばならない。
「何というか、ほんとに申し訳ないんだけど、実はお使いでカボチャをどっかで手に入れて来いって言われててさ」
飛馬が自分達の状況を夫婦へと説明する。持ち帰らねば、激おこになってしまうお姉さんがいるのだと。
「ほんとにどんなのでもいいし、出来の良くなかったのとかでも良いから、ちょっとばかし分けてもらえたりしねーかな」
「妖化したカボチャなら、お持ち帰りして宜しいでしょうか?」
飛馬に続き、夢が籠を指して夫婦へと願う。確かに妖となっていたカボチャの残骸が籠の中にありはする。
美久も、申し訳なさそうに視線で訴える。澄香は、購入という手段も交えて交渉していた。
「世話になったからな。ほら、持っていきな」
「これも持っていきなさいな」
それもあり、川渕夫婦は『F.i.V.E.』メンバーに好印象を抱き、砕けたカボチャの他、籠一杯のカボチャを追加して渡してくれた。
「持ち帰るのめんどくさいけど、皆も料理するみたいだし、まぁいいか」
それを、荷物持ちとして控えていた梛が受け取る。仲間達にも少しずつ手分けして持つよう、梛は頼んでいた。重傷を負っていたものの、凜もまたお土産が出来て喜んでいたようだ。
「これだけあれば、色々と使えそう。ハロウィンパーティとかも出来そうだな。……もしかして、それの為?」
今更ながらの梛の発言に、その場にいたメンバー達からは笑いが起きていた。
『F.i.V.E.』に戻ったメンバー達は、早速、土産のカボチャを真由美に差し出す。
「トリックオアトリートです。久方のお姉さん!」
「はい、確かに。お疲れ様でした」
悪戯っぽく笑みを浮かべた美久から、カボチャを受け取った彼女は嬉しそうに笑って覚者達をねぎらう。
余ったカボチャを使い、メンバー達は折角だからと調理場を使ってカボチャ料理を作ることにしていたようだ。
「かぼちゃの煮つけが食べたいな……」
受け取ったカボチャに人型の顔を掘りながら梛が口にすると、凜が煮物を作り始めていた。
(後日、パンプキンパイを作って、ご夫妻へ持って行きたいですね)
澄香はパイを焼きながら、改めて夫婦の下へと向かおうと考えるのだった。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
軽傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
『カボチャの置物』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:東雲 梛(CL2001410)
カテゴリ:アクセサリ
取得者:東雲 梛(CL2001410)

■あとがき■
リプレイ、公開です。
苦戦はありましたが、
カボチャを無事持ち帰ることが出来て何よりです。
真由美もこれにはにっこりとしていることでしょう。
MVPは苦しい戦いの中、
自身のできる立ち回りを細かく考え、
それを実戦していただいたあなたへ。
今回は参加していただき、
本当にありがとうございました!
苦戦はありましたが、
カボチャを無事持ち帰ることが出来て何よりです。
真由美もこれにはにっこりとしていることでしょう。
MVPは苦しい戦いの中、
自身のできる立ち回りを細かく考え、
それを実戦していただいたあなたへ。
今回は参加していただき、
本当にありがとうございました!
