<初心者歓迎>スチームブレイク 工業地帯妖討伐作戦
<初心者歓迎>スチームブレイク 工業地帯妖討伐作戦


●妖討伐作戦概要
「みんな、よく集まってくれた。今回依頼するのは、京葉工業地域に存在する妖発生エリアの掃討作戦だ。
 きわめて危険な妖は退治したが、まだランク1の妖が多数残っている。
 これを倒しきり、安全と平和を取り戻すんだ」

 今回対象となるのは京葉工業地域のごく一部。
 妖と事故の発生によって工場はだいぶ前に破棄され、解体せずに残されている。
 ギリギリ二車線の道路が複雑に入り組み、頭上には人を通せそうなくらい巨大なパイプや鉄骨が複雑に組み合わさっている。
 発生している妖は物質系妖と自然系妖の二種。
 第一ゲート突入班と第二ゲート突入班の二チームに分かれて活動することになるだろう。
「それぞれのエリアを掃討後、もし余力があるなら奥のエリアに潜んでいるランク2妖の討伐も頼みたいとのことだ。
 皆にもいい経験になるだろう。どうか、よろしくたのむ!」


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:八重紅友禅
■成功条件
1.妖の討伐
2.なし
3.なし
【シチュエーション・エネミーデータ】
●第一ゲート側
 頭上や側面など、無数のパイプが入り乱れたエリアです。
 視界が通りづらく、場合によっては奇襲を受けるおそれがあります。
 出現妖は以下の通り
  ・錆鉄ノ妖:物質系ランク1
  →なぐりつける:物近単中ダメージ
  →かたくなる:強化 物防アップ カウンター

●第二ゲート側
 巨大な炉の内部に広がるエリアです。炉といってもトラック十台くらいは入る広さなので戦闘には困りませんが、光がはいらず暗いので明かりがあると戦闘時は有利に動けるでしょう。
 出現妖は以下の通り
  ・灰炎ノ妖:自然系ランク1
  →こうねつ:特近単小ダメージ【火傷】
  →ひろがる:強化 回避アップ 反射

●奥エリア
 発電施設が妖化したものです。
 厳密には蒸気タービン発電といって、筒の中に扇風機のオバケみたいなモンが連なっている設備――が妖化したものです。ただでさえ殺人的な装置が妖化したため、注意が必要です。
 送風機妖:物質系ランク2
 全身が人を切り裂く刃のようになった蛇型の妖です。
 →とつげき:物近列中ダメージ【出血】
 →タービン回転:強化 物攻撃アップ カウンター 反射
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(1モルげっと♪)
相談日数
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/6
公開日
2016年10月21日

■メイン参加者 6人■

『サイレントファイア』
松原・華怜(CL2000441)
『ファイブブラック』
天乃 カナタ(CL2001451)
『お察しエンジェル』
シャロン・ステイシー(CL2000736)
『清純派の可能性を秘めしもの』
神々楽 黄泉(CL2001332)
『ストレートダッシュ』
斎 義弘(CL2001487)

●第一ゲート
 金網と鉄柵で重ねられたゲートの先は、妖の巣窟である。
 まるで死へ誘うがごとく、さび付いた巨大パイプとコンクリートのジャングルが、長く陰った道へと続いている。
「うち捨てられた区画っつー話だけど、だからって放っておけねーよな。さっぱり片付けて、またなにか建てられるようにしてやろうぜ」
 ほとんと斬撃能力を失ったような刀を抜いて、『守人刀』獅子王 飛馬(CL2001466)は戦闘態勢に入る。
 入ってきた柵を閉じつつ振り返る『お察しエンジェル』シャロン・ステイシー(CL2000736)。
「さて、キッチリやってやろうじゃないか。ふぁいぶの一員だってことを示してやるよ」
「……」
 動機は様々。『サイレントファイア』松原・華怜(CL2000441)は小さく息をついて、トンファーを腰にさげたホルスターから引き抜いた。
「毎回異なった場所で能力や対応を求められるのは大変ですね。大抵の仕事はそういうものですが……」

 鉄の臭いが酷い。風に砂鉄でも混ざっているのではと思うほどの、むっとした空気だ。
 長く生活したくない空間だなと思う一方で、缶コーヒーがひたすらに飲みたくなった。
「……後にしましょう。今は、目の前のことを」
 さびが集合してぐるぐるとねじ上がったような、どうにも形容の難しい妖が周囲からわらわらと集まってくる。
 行動の率直さやがしゃがしゃとした動きから足の多い昆虫を想像して、華怜は顔をしかめた。
 素早い蛇行で襲いかかってくる。
 常人なら悲鳴を上げて逃げ惑うところだが、華怜は既に常人の域にない。
 トンファーを棍棒状に持ち替え、飛びかかってきた所を横薙ぎに払う。
 その動作のまま120度ほど回転。握ったトンファーに炎を込め、パンチの動作で炎弾を撃ち出した。
 はじき飛ばされた妖と別の妖がぶつかり、そこへ連続して打ち込まれた炎弾が炎上。謝って電子レンジに入れたアルミホイルのごとく火花を散らして爆発した。
 第六感を働かせた華怜たちにとって、取り囲んで隙をつく戦法(それもR1妖らしい浅いつきかた)はほぼ無意味といっていい。
 彼女たちを驚異とみた妖たちはねじあがった曖昧な形状から、蝉の幼虫めいた硬い表皮を形成その表面にざくざくとトゲのようなものを生やしていく。
「そうくるのは知ってたよ。ほら」
 シャロンはカウンターカードでもきるように術式を発動。トゲにシャロンの霧がまとわりついて徐々にふやけさせていく。
 弱体効果で防御の上昇を軽減させたのだ。基礎体力の低い今はカウンターも地味に痛いが、物理攻撃さえ仕掛けなければ問題ない。
「トドメだっ」
 ポケットから出したスリングショットにパチンコ玉をひっかけ、狙いをつける。
 指先から電流を流し込み、ばちばちとスパークするボールを妖たちめがけて発射した。
 空中ではじけ飛ぶボール。スパークが広がり、妖たちを飲み込んでいく。
 それでもめげずに襲いかかってくる妖を、飛馬が刀ではねのけた。
 あまりちゃんと語ったことが無い気がするのでこの際解説していくが、飛馬の防御形態は約三段階ある。
 まずは術式によって生み出した無数のストーンプレートを鎧のように継ぎ合わせて着流しの上から纏い、帷子(かたびら)のようにしていく。
 更に鎧に祈りを込めることで強度を上昇する。古来より鎖帷子を女が組むと防御力が上がる言われ、それは祈りの力とされていた。飛馬の祈りもまた、岩の鎧に通じるのだ。
 その上で、両手に握った刀の表面に特殊なエネルギーフィールドをはっていく。
 彼の刀は強度に重きを置いた作りをしていて、人を斬る道具としてはかなり不適切な重量と刃をしている。これはいわば細長い鉄板であり、防御に特化した彼の剣術を最大限活かすための盾なのだ。
 そんな盾をコーティングするエネルギーは、飛来する弾丸や振り込まれる剣だけで無く、炎や雷をもはねのける力を付与してくれる。
 この三段階の防御を固めた上で、彼の味方ガード戦法は威力を発揮するのだ。
 それだけスタートダッシュが遅いということでもあるが、一度エンジンがかかれば彼の防御を抜ける者などこの場にいない。
 勝利が確定したも同然であった。

●第二ゲート
 反対側の第一ゲートと比べて小さく、奥まった場所にある鉄柵の先には巨大な炉が存在している。
 いわゆるコークス炉といって、火力発電で発生した炭を更に燃やしてさらなる電力を得る施設である。
 今はその役割を完全に失い、巨大なカバーだけが残っている。
 恐らく妖発生よりずっと前に施設が撤去されたのだろう。
「それにしても視界が悪い。警戒して進まなければな……」
 スパイクのついた足でコンクリートの地面を踏みしめつつ、斎 義弘(CL2001487)は周囲に目を配った。
 暗視能力を備えた彼にとって暗闇は暗闇でない。超直観も相まって、隙は無いと言っていい。
 一方で、そういった技能に頼らない天乃 カナタ(CL2001451)は腰のベルトに接続したフラッシュライトで周囲を照らしている。はじめはヒモで縛り付けようとした彼だったが、義弘がホームセンターから買ってきたベルト接続式の固定具を貸してくれた。
 激しく動いた際にもブレが少なく、懐中電灯がぶれたせいでかえって狙いづらくなるなんて心配を軽減してくれている。今は懐中電灯も親指サイズなので、こういった固定も楽なのだ。
 エレキショットガンに電池を弾のようにさくさく込めつつ、カナタはちらりと振り返った。
「なあそれ……」
 『アンシーリーコートスレイヤー』神々楽 黄泉(CL2001332)が懐中電灯を左手に持ち、スイッチを入れたりきったりと繰り返している。
「楽しいのか?」
「……うん。便利。すごい、ね」
「そ、そっか……」
 未開地の人かな、と思ったが、ファイヴにはそういう人も割と珍しくないのでそっとしておくカナタである。
「でも、目だけで、どうにかできる、ように……なりたいね」
「だったら暗視技能がお勧めだな。激しく動き回るなら尚のこと便利だぞ。正直にいって、これに勝る暗闇対策は無いに等しいからな」
「うん……」

 炉の中を進んでいくと、地面からなにやら灰の集まりのようなものがぶわりと吹き上がった。
 風のせいにしては不自然な動きである。
 黄泉は斧をどこからともなく取り出して、肩にどっしりと構えた。
 本来両手持ちのものを片手で持っているので、構えがかなり大胆だ。
「くる、よ」
 熱を持った灰は、多くの人が想像するような色をしていない。大体は真っ黒だし、その状態で大やけど必死の熱を発している。
 これがぶつかってくるだけで既にかなりのダメージなのだ。
 黄泉を扇状に囲むようにして急接近してくる灰炎の妖。
 対して黄泉は、身体をぐい、とひねってから強引に斧を振り込んだ。
 斧は妖たちをかるく外れてコンクリートの地面に叩き付けられたが、その衝撃が周囲の妖たちをうずまき状に巻き込んで、一瞬の遅延を挟んで激しく吹き飛ばしていった。
「今はこれしか、出来ないから」
「安心しろ、みんなそうだ!」
 義弘は彼女の後ろを守るように反転すると、取り囲もうと広がってきた妖に盾を翳した。
 ぶつかってくる灰が盾で僅かに遮られるが、呼吸をすれば胸が焼けるほどの熱が彼を覆った。
 手のひらに術式性の熱をため込んで、相手に叩き付ける。
 それで妖は吹き飛んでくれたが、腕にざくざくととがった灰の塊が突き刺さった。
「反射能力か。地味に厄介だな……!」
「えっ、これってそうなの!? ま、なんとかなるっしょ!」
 カナタはパンチ動作を繰り出すと、術式性の空圧弾を発射。跳ね返ってきた灰が胸や肩に刺さるがごり押しで妖を穴だらけにしていった。
「っし、何とかなった! ほら、回復回復!」
 ポケットから取り出したペットボトルを、義弘や黄泉に投げて渡した。

●送風機ノ妖
 第一ゲートチーム、および第二ゲートチームは体力をほとんどすり減らすこと無く奥のエリアへ到達した。
 ここまできて引き返す理由はあるまい。
 巨大なトタン(古い家の壁や駐輪場の屋根とかに使われるなみなみした板)で覆われた建物へと近づいていく。
 すると、建物の壁を内側から破壊して、巨大な妖が姿を見せた。
 全身を二千枚の大小様々な鉄の刃で覆った芋虫のような妖である。頭が鉄のドクロめいた形状をしていて、妖化にあたっての凶暴さを思わせた。
 鉄の刃は大きいもので一メートル。小さい者で二十センチとかなり円錐に近い全体形状だが、油断してかかれば全身を八つ裂きにされかねない。
「出てきたからには逃がさねーぞ。ここでケリをつけてやる!」
 飛馬が防御をかため始める。
 その間に華怜と義弘が妖へと突撃した。
 ずりずり這いずって襲いかかろうとする妖を、左右に分かれて翻弄しにかかる。
 側面に回り込み、体当たりをトンファーでガードする華怜。
 棍の先端に熱を集中させ、突きを食らわせる。
 刃の回転を始めた妖にバチンと弾かれた。火花が飛び散り、華怜は大きく飛び退く。
「防御はさして硬くない筈ですが……反射能力が痛いですね」
「それでも倒せない相手じゃない。回復は任せたぞ!」
「任されたよー」
 手をぐーぱーして応えるカナタを背に、義弘は盾を突きだした完全防御形態で体当たりを仕掛けにいった。
 回転する刃が盾をがりがりと削っていく。スパイクで踏ん張った足が押し込まれ、コンクリートの地面に長い筋を作っていく。
「この……!」
 盾越しにエネルギーを伝達。表面で爆発を起こし、妖をわずかにはねのけた。
 衝撃で自分も吹き飛んだが、それをカナタがキャッチ。
「ダイジョブ? 気力はまだゼンゼン残ってるからさ……ぜってー倒して、勝って帰ろうぜ!」
 ペットボトルの蓋を親指でガシッと開くと、天高く放り投げる。破裂したボトルの中から回復の術式が込められた水が降り注ぎ、義弘たちの傷口を修復していった。
「ここで負けたらカッコ悪い。ってか、はずいじゃん?」
「それな」
 シャロンはカナタの術式に併せるようにして自らの術を発動。
 まき散らされた水の一部が意志をもったかのように妖の刃へとまとわりついていく。
 回転を完全に殺すほどではなかったが、刃の切断力や防御力を落としていく。
「もう若くないし、効率考えないとへばっちゃうからね」
「んっ?」
 二度見するカナタを無視して今度は癒力活性を発動。出血した義弘たちの傷口がみるみるふさがっていく。
 反撃の時である。
 黄泉は斧をしっかりと両手で握りしめ、妖めがけて突撃した。
 頭部のガイコツめいたカバーに大上段から打ち込む。打ち込んでへこんだ部分に再び斧を叩き込み、真っ二つにかち割った。
 妖が悲鳴のような声をあげるが、中から飛び散った小さな刃の群れが黄泉の包帯をかすっていく。
 落ちそうになった包帯を押さえる黄泉。
 追撃のために突撃してくる妖。
 が、その間に立ち塞がったのが飛馬であった。
 刀を交差させ、突撃の衝撃を全身で受け止める。
「今だ、一気に畳みかけろ!」
 周囲を囲んでいた華怜、義弘、カナタ、シャロン、黄泉の全員が自らのエネルギーを武器に集中。
 シャロンとカナタの放ったエネルギー弾が妖を貫通し、もろくなった箇所めがけて黄泉と義弘のパワーアタックが炸裂。
 べきんとひしゃげた妖に、華怜がトドメとばかりにトンファーの先端を突っ込み、零距離から炎弾を乱射。内側から爆発させた。
「ふう、なんとかなったか……」
 妖の撃破を確認して肩の力を抜く飛馬。その裾を、黄泉がぐいぐいと引いた。
「シショーに、なって」
「なに!? 急に言われても!」
「ともかく、これで一休みできますね」
 華怜はポケットから小さな缶コーヒーを取り出し、カナタはカラになった電池をばらばらと排出している。
 義弘は義弘でかるくストレッチをしながらどっちのゲートから帰ろうかなんて話を始めていた。完全に放置された飛馬であった。
 さておき。
「晴れて一人前、ってとこかな」
 シャロンは肩のこりでもほぐすように腕を回して、深く息をついた。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし




 
ここはミラーサイトです