≪神器争奪戦≫イモータル・ガーデン
≪神器争奪戦≫イモータル・ガーデン


●新人類教会過激派武装拠点襲撃作戦
「このままでは罪の無い人々に被害が及びます。皆さん、どうかこの作戦に協力してください」
 久方 真由美(nCL2000003)が説明したのは、とある武装拠点の襲撃作戦についてだった。

 『新人類教会』。覚者を新人類とよび、覚者被害に関わる被害者救済を表立って行なう宗教団体である。
 しかしその裏には過激派とよばれる覚者非覚者混合の武装集団が存在し、隊員への洗脳や全国に対する『教化作戦』など恐ろしい活動を行なっていた。
 そんな教会過激派の拠点のひとつ『イモータル・ガーデン』に、洗脳のキーとなるアイテム『神器』が収容されていることが確認された。
「この神器がどういったものなのか、奪取して調べることで判明するでしょう。しかし過激派隊員たちの洗脳に関わっていることは事実です。一刻も早く対象を奪い、彼らを解放してあげましょう」

●襲撃までのみちのり
 山中に隠れるように存在する『イモータル・ガーデン』はマシンタレットで武装した一階建ての装甲基地である。銃弾や覚者攻撃にも耐えうる壁を持ち、出入りは正面のゲートしかない。
 本来ならタレット射撃をかいくぐりながらゲートへ張り付き、操作盤からゲートを開いて突入……といった具合になるのだが。
「現在拠点は妖に包囲されています。ランク1の比較的弱い妖ですが、人間を見つけ次第攻撃してくるでしょう。教会はこの妖との戦闘に入っています」
 戦闘員の多くは非覚者であるため、妖に倒されれば確実に死亡します。
 状況判断ではあるが洗脳を受けていることは明白であり、罪なき人の死ともとれるでしょう。
「内部には教会覚者が3名。屋上や小窓から妖を攻撃しています。ゲートが開けばそれどころではなくなるでしょう」
 施設内の見取り図は存在しないが、内部構造は(外から観察するに)そう複雑ではないだろう。
「神器は写真画像が存在するので、一目見てそれと分かるでしょうし、ゲットしたら即座にその場を撤退しても構いません。ですがその場合は、残念ながら残った人々を見殺しにすることになるでしょう……。事前に相談したり、その時の状況をみたりして、判断して下さい」
 最後に一連の資料を渡し、真由美はしめくくった。
「妖に包囲された武装拠点への侵入。危険な任務になりますが、どうか気をつけてください」


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:八重紅友禅
■成功条件
1.神器の奪取
2.なし
3.なし
 こちらは新人類教会の第二弾全体シナリオとなっております。
 最終目的は神器の回収。
 それにいたる手段として、包囲された武装拠点へ襲撃をしかけます。

●シチュエーションデータ
○武装拠点の状態
 ランク1動物系妖の群れに包囲されています。サル型や犬型など陸戦タイプのシンプルな妖です。
 新人類教会の戦闘員と交戦状態になっており、軽く10ターンほど放置していれば外の隊員が全滅し、妖も消耗するので、突入が楽になるでしょう。
 逆に即座に飛び込めば隊員と妖の両方が敵に回るのでこちらの被害が大きくなります。その反面、隊員の死亡を食い止めることが可能になります。

○教会覚者
 この拠点には三人の覚者がおり、それぞれが戦闘に入っています。
・ジョー
 暦・水行。二刀流。前衛ヒール&アタッカー。
 傷ついて屋内で回復中。中盤には全快するため参戦してくる。
 こちらの突入が早まると傷ついたまま戦闘に参加する。
・ルーク
 暦・天行。ワイヤーのついたグルカナイフを操る遠~中距離アタッカー。
 屋上で戦闘中。場合によってはゲート外へと出てくることも。
・ドント
 暦・木行。二丁拳銃と毒ガスなどによる支援攻撃が主体。
 屋内を移動しながら柔軟に対応する。
・このほかの戦力
 武装した非覚者が小銃やマシンタレットなどを操作して妖と戦闘しています。
 死んだら終わりの状況なので全員必死です。
 人数は今のところ確認できませんが、少なくとも10人以上はいるようです。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(0モルげっと♪)
相談日数
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/6
公開日
2016年10月10日

■メイン参加者 6人■


●イモータルガーデン
 山中を走る六人。いずれもF.i.V.E覚者。
 先頭をゆく『侵掠如火』坂上 懐良(CL2000523)が、接近に振り向いたシカ型妖の首を即座に切断。ワンスピンして更に走り続ける。
「全員分かってるな。施設正面から突入して速攻をかける! 兵法的には楽して勝つことが最上ではあるが……リスク覚悟で洗脳された連中を救いたいんだろ?」
 横から飛びかかってきた犬型妖を刀ではじき飛ばす『守人刀』獅子王 飛馬(CL2001466)。
「敵が消耗するのを待った方が安全なのは分かってんだ。ただ、洗脳されてる奴が死ぬのが我慢ならないだけでな」
「いやあ、ハハハ」
 『デブリフロウズ』那須川・夏実(CL2000197)は頬をかき、懐から治癒効果のあるゼリーパック飲料を取り出して飛馬へとパスした。
「ショージキ、すごくキツそうだけど……でもダキョーするのはゴーハラってこと! べ、べつに人死にがイヤっていうアマッチョロイ理由じゃないんだからね!?」
「ふん……」
 立ち塞がる猿型妖を槍で切りつけ、横を抜けていくアネモネ・モンクスフード(CL2001508)。
(愚者集団か。私には理解できん。彼らと相容れられる気はしないが、態々和を乱すこともないな。精々、粛々と命令をこなすさ)
「邪魔だ!」
 猿型妖を一刀両断して、『星護の騎士』天堂・フィオナ(CL2001421)が突き進む。
「罪もない人々をよくも……新人類教会! ノブリス・オブリージュを果たすぞ!」
 リス型妖が鋭い歯をむき出しにして樹枝から飛び降りてくる。
 『覚悟の事務員』田中 倖(CL2001407)が兎足ブーツの踵を踏み込み、高く跳躍。ハイキックでもってリス妖をはねのけた。
「非覚者を前線に立たせて覚者が安全圏に引っ込むとは……まるで捨て駒ではないですか」
 落ち葉の上に着地し、倖は更に走り出す。
「このような集団が、いるから……!」
 木々の間から、こじんまりとした施設が見えてくる。
 コンテナハウスをいくつか連結させたような施設が見えてくる。
 目的の施設だ。既に妖に包囲され、武装非覚者たちがマシンタレットやスタンロッドなどで対抗している。
 倖は眼鏡の反射で一度目元を隠すと、走る速度を上げた。

●新人類教会と洗脳
 施設への突入方法はざっくりと分けて二つある。
 まず、側面からじわじわ妖戦力を削って施設に侵入する方法。
 妖の追加戦力を先に落とすことで継続的に戦闘を安定化させることができ、正面ゲートに入った時点でも新人類教会側の抵抗力が弱まっているため押し込むのが難しくない。
 更に言えば屋内に入った後も妖が突入してくるリスクを半減させられるというメリットもある。
 次に正面ゲートに真正面から突入する方法。
 施設に突入しようとしている妖とそれを防衛している新人類教会の両方がこちらに気づく上、妖よりも脅威度の高いこちら側を優先的に攻撃してくる可能性が高い。
 妖はそういった判断をあまりしないが、新人類教会側は一旦退いて敵を押しつけるという形をとることができるので状況的にも不利だ。
 だがそんなことは、ハナから承知の上である。
「どいてな!」
 戦闘中の新人類教会の武装非覚者と妖。
 懐良はその中央に刀を叩き込むと、衝撃で双方を吹き飛ばした。
「敵襲、覚者だ! 施設を襲撃するつもりかもしれん! 迎撃態勢を引き上げろ!」
 拡声器から響く声に、懐良は小さく舌打ちした。
「何も間違っちゃいないが、少しは遠慮してくれてもいいんだぜ」
 マシンタレットのライン射撃が大地をえぐりながら迫ってくる。
 懐良は狙いをつけづらいように斜めに走りながら、飛来する弾を刀ではじき飛ばした。
 戦闘行為を放棄しているような隊員がいるなら魔眼で戦線離脱を促そうかとも思ったが、この状態では無駄打ちも甚だしい。相手もそこまでヤワではないだろう。
「正面突入を仕掛けた時点で、大体の細工は使えなくなったとみていいな。ぶっちゃけ、『死ぬ前に突っ切る』くらいの大雑把さでないと乗り切れないぞ」
 前方には新人類教会の防衛戦力。後方には回り込みをかけている妖たち。
 地烈で一掃しようにも挟み撃ち状態でうまくさばけない。チームが壊滅しないためには前衛チームを前後左右に分けて後衛スタッフを中央にしまい込む布陣をとらねばならないのだ。
 幸いにも前衛スタッフが飛馬、懐良、倖、フィオナと豊富だったので、夏実とアネモネを中央に抱えるのに苦労はしていないが……屋内で分断したらハッキリ言って何人かリタイアする覚悟をした方がいいだろう。
 全員が『そこそこ』づつダメージを負っていくので、夏実も癒しの霧が手放せない。
 微妙な損傷状態の違いをうまく見極めているから霧と雨を上手に使い分けている辺りはしたたかというか、頼もしい限りである。
 一方でアネモネは黙って仲間の隙間から槍で妖に攻撃をしかけている。
 夏実は苦笑した。
「突入前にヒトリかフタリの戦闘不能は覚悟しといてね」
 飛馬は攻撃の命中率が全く期待できないので味方のガードに回るとして、優先すべきはやはり夏実になる。
 その夏実が主に懐良、倖、フィオナ、アネモネの四人の損傷具合を見ながら回復を行なうという形になる。アネモネは既にリタイア寸前の状態にある。内部への突入前にリタイアする可能性もあった。体力が下がれば後方へ下がることも考えていたが、現状で安全圏らしい場所はない。
 そんな中で、妖と戦いながら呼びかけるフィオナ。
「新人類が守りに来たぞ! 猛大丈夫だから、皆は建物内の安全な場所へ!」
「う、嘘をつくな異教徒め! 襲撃者のくせに!」
 教会の武装非覚者たちが射撃をしかけてくる。
 洗脳のせいも勿論あるが、敵対している状態での説得はかなり無理があるようだ。
「できれば挟み撃ちと行きたかったが、両方を相手取る状態は逃れようがなさそうだな……」
 苦しげに呟きながらも、機銃射撃を刀で弾き落としていく飛馬。
 夏実へ殺到した弾を、遮るように立ち塞がって刀でがしがしと弾き落としていく。
 真っ二つになった弾頭があたりに散らばった。
「フィオナ、呼びかけを続けろ! 相手だって人の子だ、言葉が通じりゃ躊躇もすんだろ!」
「諦めなければ言葉は届きます。きっと!」 
 非覚者と妖が格闘しているさなかへ、倖が飛び込んでいく。
 妖側に突っ張るような蹴りを叩き込み、踵を強く押し込む。
 チップの放出によって妖が非覚者の前から吹き飛んでいった。
 明らかに非覚者を守ろうとする姿勢に、彼らを異教徒呼ばわりしていた非覚者たちは動揺を見せていた。
 敵対していれば通じない言葉も、行動が伴えば通じることがある。
「後でいくらでも相手をしてやる! 今は妖をなんとかしないと全滅だぞ! 協力しよう!」
「くっ……!」
 機銃を操作していた覚者が、狙いをフィオナから妖へと変更した。
「お前たちに協力したんじゃないぞ。妖の排除を優先しただけだ! いいな!」
「……それでいい!」
 フィオナは小さく笑って、妖に剣を向けた。
「覚悟しろ、妖。一人たりとも死なせたりしない!」

●守るための戦い
 正面ゲートへ陣取り、守護空間を展開するフィオナ。
 その間彼女は無防備になるが、妖の新たな施設侵入を防ぐことができる。
 正面突破作戦におけるリスクのうちの一つを、フィオナが一人で解消したことになる。
 とはいえこれはフィオナが残っている間だけだ。
「戦闘不能になった隊員は施設内に逃げ込め! ここは押さえてみせる!」
 そんなフィオナに、イタチ型妖が飛ぶ斬撃を仕掛けてきた。
 他にも投石や波動によって、唯一の障害であるところのフィオナを押しのけようと集中攻撃をしかけてくる。
「させるか!」
 飛馬はそんなフィオナの前に立ち塞がり、飛来する斬撃を刀で断ち切り、波動を正面から受け止めた。
 身体の各所がぶちぶちと音を立てて切れ、出血を始める。
「攻撃はともかく、防御なら任せろ! この戦いが終わるまで保たせてやる!」
「流石に一人じゃムリでしょ。けど、二人がかりならなんとか……」
 夏実が加わり、飛馬の怪我を治癒し始めた。
 幸い、特別攻撃力の高い敵や凶悪なバッドステータスをもつ敵は少ない。外の妖を屋上の機銃攻撃チームが倒しきるまでの間、フィオナ一人をゲートに立たせておく程度のことは飛馬の味方ガードと夏実の定期回復をもってすれば不可能ではなかった。
「でも心配なのは田中サンたちなのよね。回復抜きでダイジョブかしら……」

 その頃、倖とアネモネは神器の前までやってきていた。
 施設の奥に安置されている神器……だが。
「悪いけど、これは誰にも渡すわけにはいかないよ!」
「親切で来てくれたとこ悪いけど、帰ってもらうから」
 ドントとルークが神器の前に陣取る形で防衛していた。
 正面突破を仕掛けた時点で、こうなることは想定できてはいた。
 構える倖とアネモネ。
「外では非覚者の皆さんが戦っています。だというのに、まだその神器に拘るというのですか」
「ごめんね。異教徒とは交渉しないんだ。帰ってくれないなら、死んで貰うよ!」
 ドントが二丁拳銃を取り出して連射。
 アネモネは槍を回転させることで数発を弾いたが、肩や足に命中した弾にバランスを崩した。
 そこへルークがグルカナイフで斬りかか――ろうとした所に倖が割り込み腕時計でもってナイフを受け止めた。
「あなたの相手は僕です!」
 チップショットをかけながらハイキック。
 凄まじい速度で跳ね上がった蹴りがルークの肩をとらえ、激しく転倒させる。
 一方でアネモネはドントに槍による攻撃をしかけ、機動力をそいでいく。
 とはいえ戦力差は大きいようだ。
「全盛期ならこの程度……仕方ない、先に退くぞ」
 アネモネは戦闘不能につき、後を倖に任せて撤退。
 残った倖はルークとドントを相手に構えなおした。

 一方その頃、懐良はジョーとの一騎打ち状態に入っていた。
 絶え間なく繰り出される斬撃を、懐良は時にはかわし時には受け流していく。
「なんで俺の相手が男しかいないかね。美少女担当じゃあなかったのか?」
「何をわけのわからないことを。死ね――!」
 首めがけて繰り出される斬撃。
 懐良はそれをバックスウェーで回避。回転と共に踏み込んで斜めに切り下ろしてくるジョー。
 それを、懐良は刀で受け止めつつ、相手の腹を蹴りつけた。
 壁に叩き付けられるジョー。
 脇腹に巻いた包帯の下からじんわりと血がにじみ出た。
「傷が開いたんじゃあないか? 投降するつもりは?」
「笑わせるな!」
 再び斬りかかるジョーだが、動きは懐良の方が早かった。
 素早く懐に潜り込み、ジョーの刀を連続ではじき飛ばし、更に頭へ強烈な打撃を叩き込む。
「ぐっ……!」
 がくりと崩れ落ちるジョー。
「安心しな、峰打ちってやつだ。先へ行かせて貰うぜ!」

 神器を安置した部屋へと懐良が向かった所で、形勢は大きく懐良たちにとって有利に傾いた。
 二人がかりでドントとルークを倒し、神器を奪取。
 急いで施設の外へと走って行く。
 ゲートで粘っていたフィオナに合図を送ると、アネモネ含む残りのメンバーで周囲の妖を掃討。立場上こちらに襲いかかるつもりの新人類教会の戦闘員たちとはそれ以上戦わず、即座に現場から撤退した。
 ……ということで、今は施設から遠く離れた山道である。
「ふう、何とかテッシュウできたかな」
 額の汗をぬぐう夏実。
 飛馬は疲労困憊の様子でゼリー飲料を咥えている。
「残してきた新人類教会の連中は大丈夫か? また妖に襲われたり……」
「その心配はないだろう。寄ってくる原因でもあった神器は今こうして手元にあるしな」
 懐良が箱に入った神器を軽く翳して見せた。
「しかし、今回は俺の見せ場が少なくないか。もっと女性相手にこう、な? こう……」
「何を言ってるんだ。誰も死ななかったんだから、私たちの作戦は成功じゃないか。懐良も大活躍だったぞ!」
 すげーいい笑顔でフィオナが言うもんだから懐良は妙な顔で同意した。
「……」
 一方でアネモネは黙って明後日の方向を見ている。なれ合うつもりはないといった様子だ。
 咳払いする倖。
「とにかく、神器を失ったことで彼らの洗脳は解かれる……と思いたいですね。これが洗脳に必要な道具だと仮定すれば、道具が失われれば毒が抜ける要領で洗脳が解けていくと考えられますから」
 倖たちは頷きあい、山をあとにした。
 まずはファイヴに戻らなくてはならない。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし




 
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