残暑の終わりと秋祭り
残暑の終わりと秋祭り



 少しずつ夏の暑さも、秋の風に吹かれて消えていく。
 そんな時期の、秋祭り。

 赤い提灯が列をなし、誘う向こうは。
 露店が規則正しく並んで、手招きをしている。


■シナリオ詳細
種別:イベント
難易度:楽
担当ST:工藤狂斎
■成功条件
1.お祭りを、楽しむ!
2.なし
3.なし
 工藤です、イベシナです

●状況
・秋祭り

●場所:神社にて
・秋祭りです。時刻は夕方~夜
 的屋が立ち並び、PCがあると思ったものは基本的にあると思います。
 僕は、チキン山賊焼きが好きです。フランクフルト300円高くないですか
 御神輿とか飾ってあったり、です

 ざっくりとした解説ですが、雰囲気は想像できるかと思いますので
 そんな感じで、プレイング楽しみにしております

●樹神枢
・呼ばれれば出てきます

●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の33%です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『御崎 衣緒(nCL2000001)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。

 ご縁がございましたら、宜しくお願い致します
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
(4モルげっと♪)
相談日数
7日
参加費
50LP
参加人数
33/∞
公開日
2016年10月04日

■メイン参加者 33人■

『探偵見習い』
賀茂・奏空(CL2000955)
『追跡の羽音』
風祭・誘輔(CL2001092)
『想い重ねて』
蘇我島 恭司(CL2001015)
『想い重ねて』
蘇我島 燐花(CL2000695)
『花屋の装甲擲弾兵』
田場 義高(CL2001151)
『聖夜のパティシエール』
菊坂 結鹿(CL2000432)
『花守人』
三島 柾(CL2001148)
『ハルモニアの幻想旗衛』
守衛野 鈴鳴(CL2000222)
『天を舞う雷電の鳳』
麻弓 紡(CL2000623)
『囁くように唄う』
藤 壱縷(CL2001386)
『冷徹の論理』
緒形 逝(CL2000156)
『影を断つ刃』
御影・きせき(CL2001110)
『サイレントファイア』
松原・華怜(CL2000441)


 赤い灯りが奥へと誘う、そんな境内前で。
「おまたせーっちょっと遅れてごめんっ」
 工藤・奏空(CL2000955)は照れながら、賀茂 たまき(CL2000994)の下へと走っていく。
 奏空がたまきの姿を見て、暫く目線が釘付けになってから右往左往と瞳が揺れ動く。それもそうだ、彼女の浴衣姿に心躍らない男性などいない。結い上げたたまきの髪の毛も愛らしいものだが、そこから覗いたうなじもいつもの彼女とは違うように魅せる。
 それから二人はお参りをして、出店を回っていく。因みにたまきは、奏空と来年もまた一緒に来られるようにとお祈りをした。
「……あ。 奏空さん。綿飴があります!」
 やはり女の子は甘い物が好きか。綿あめひとつを購入してから、彼女と分け合った。
 たまきは、ゆっくり彼と自分の口へと、甘い雲を少しずつ運んでいく。おいしさも二倍ではあるのだが、そこから生まれる心地よい気分も二倍になることだろう。
 人混みも多い境内で、離れ離れにならないように。奏空はたまきの肩を抱き寄せた。それは無意識であったが、
「はわわ……!」
 たまきの頬は、次第に好調していった。
 同じく紅潮した奏空は、兎の土鈴をたまきに差し出し、
「これ、おみくじの所で売ってたんだ。たまきちゃんにあげる」
 思わぬプレゼントに、
「……かわいい。ずっと、大切にしますね!」
 幸せな時間はまだまだ続くのであった。

 屋台の誘惑に瞳が揺れ動く天堂・フィオナ(CL2001421)。その隣には、風祭・誘輔(CL2001092)がいた。誘輔は、フィオナをまるで犬ころのように見ては、彼女が何処かへ走っていかないか面倒を見ている。
 そしてフィオナの足が止まったのは、射的の前だ。
「……誘輔、あれ取れるか?」
 フィオナの言葉に、誘輔は追憶の日々を思い出していた。子供のころであっただろうか、近所の祭りで皆、誘輔の射的の上手さに惚れ惚れしたとかで。
 結果、誘輔は射的の銃を構えた。フィオナは隣で、気持ちで応援をしながら静かに見守っていた。
 すれば、テンポよく落ちていく景品たち。金額の元は取れたのでは無いだろうか、というくらいに落ちていった。
 その中の一つに、くまのぬいぐるみがある。
「ほらよ、お前にやる。有難く受け取れ」
「大きい! もふり応えも凄いな! ありがとう、大事にする! 夜とか、この子と一緒にお茶するぞ」
 早速おおきめのクマを抱いた彼女の笑みは、満開の花が咲いたように愛らしいものであった。
 それから二人は、並んでたこ焼きや3種盛りを分け合いながら進んでいく。
「家族でご飯する時って、こんな感じかな」
 フィオナの何気ない一言に、誘輔は頭を掻いた。妹がいるせいか、誘輔がフィオナを見る目線はそれに向けるものと似ている。
「誘輔は、私から見ると……きょうだい、兄様?」
「いや、俺の年だと親子かな」
「慌てて食うと火傷するぞ」
「はふー! お話に夢中になって、たこ焼きで火傷した!」
「あーいわんこっちゃねえ」

 柳 燐花(CL2000695)は、ふと言葉を零した。
「夏祭りとは雰囲気が違っていいですね」
「うんうん、秋祭りは夏とはまた違った趣があるよねぇ」
 蘇我島 恭司(CL2001015)は、カメラを片手にお祭りへ。
 ご神体の飾ってあるのを一見した恭司は、とり付かれたようにそちらへカメラを向けつつ、ふと気づく。少々躍起になって彼女の存在を忘れていたこの一瞬。
「ごめんね燐ちゃん、ついつい撮影に……あれ?」
 彼女がいない。
 同じく、
「これは、はぐれてしまったのですよね……」
 困ったと。この人混みのなかで一人だけぽつんと残された燐花の尻尾は悲しそうに動かない。
 それからかなり時間が経った。二人とも探す術を模索すれども、どれも良い手とはお世辞にも言えなかった。となれば出たところ勝負。
 燐花の耳が揺れる。遠くで、自分を呼ぶ声に、燐花のくすんだ瞳の色がやっと潤いを持ってくるように。まるで一年に一度しか逢えない織姫と彦星の再開のように、燐花は駆けだしそうになった想いの手を伸ばし、そしてなぜか止めた。
「すみません。この年で迷子になるとは」
「いやいや、これは寧ろ僕が迷子になるんじゃないかな?」
 そう言って、恭司の方から手を差し出した。再び繋がれた二人の手は、あの海の中ぶりの体温を保っていた。いや、その時よりも少し『熱い』。
 今度こそ離れないよう。今後とも離れないよう。思いは交差しながら、直線で結ばれていくのであろう。

 田場 義高(CL2001151)は家族で祭りを楽しみに来ていた。
 奥様との間で、手を繋がれながらはしゃぐ娘は、初めての浴衣に大はしゃぎしながら、あれはこれはとお店を指さしている。
 そんな家族への愛からか、妻や娘に少しでも危険のようなものが及ぶなら、義高はそれを許せるかは、分からない。行動にすぐ移ってしまうかもわからないが。
 それは兎も角。
 まずは参拝を済ませてから、全ては始まるのだろう。
 今か今かと、はしゃぐ娘をしっかり面倒みつつ。明日の活力のために、今日は無礼講と遊ぶのだ。

「あ……ふたりとも、あれ見て? 型抜きよ、懐かしいわねぇ~」
 向日葵 御菓子(CL2000429)は型抜きを見ながら、思いにふける。菊坂 結鹿(CL2000432)と樹神枢はそれを見てから、顔を見合わせてふふ、と笑った。
「ちょっと何かうずうずしてこない? どう、二人とも勝負よ!」
「いきなりですね!?」
「いいのだぞ。初めてやるのだ」
 苦戦する小学生の隣に割って入った御菓子たちは、それぞれの型をつんつんと抜きながら――
「あーーっ!?」
「!? 何?どうしたの?」
「や、やっちゃった」
 結鹿の型抜きは、あと少しという所で、綺麗に割れてしまっていた。
「残念だな。あと少しであったのに」
 枢も遠慮気味な笑いをひとつ零した。しかし枢の前には完成した型抜きがあったとか。
 それからは、結鹿が人の波に押されて、その勢いで前へとつまづいていく。
「ひゃあああっ!?」
 力のままに流されていく結鹿であったが、硬い地面とこんにちはを決めることは無く。それよりは、ふわりと浮遊感。
「ふぅ……間一髪! ナイスキャッチ、枢ちゃん」
「怪我が無くて、安心致しました」
 御菓子の前では、大人の枢が結鹿をお姫様だっこの状態で持ち上げていた。
「きゃっ、ご、ごめんなさいぃ~っ」
 慌てて枢の上から降りた結鹿は反射的に頭を下げたが、気づけば子供に戻っていた枢が、
「おっちょこちょいな所も、好きだぞ」
 と笑っていた。

「枢ちゃん、こんなに屋台がいーっぱいだと。遊ぶのからいくか食べるのからいくか迷っちゃうの! 枢ちゃんはどっちからいく?」
「ボクは先に、おなかの虫をどうにかしたいと思っているのだ」
 野武 七雅(CL2001141)は樹神枢の手を引きながら、夜店の間をうろうろと歩いていく。
 たこ焼き、お好み焼き。りんご飴。どれも店の前で、凜として食べられるときを待っている。
「山賊焼きって山賊さんが焼いているのかなあ?」
「それは違うと思うのだが。でもおいしいぞ。あまり、メジャーでは無いらしいがな」
 七雅は、ふうんと呟きながら何気なく食べたたこ焼きが上顎の裏に張り付いて、叫びは祭り中に響いたとか。
 気を取り直して。
「金魚さんかわいいの。よし、どっちが多くすくえるか勝負なの!」
「ボクはあまり上手では無いから勝負になるか怪しいのだ」
 苦笑した枢と、七雅を横並びになりつつ同じく掬っていく。
「あわわ、意外とすばしっこいの。うー……結局3匹しかとれなかったの。枢ちゃんは?」
 枢はゼロ匹で、かなり負のオーラを醸し出しながら地面を見ていたのに七雅はぎょっとした。

 三島 柾(CL2001148)は、野性的な方法で炙られたチキンを食べながら、いや、奢ってくれてありがとう、と隣の阿久津ほのか(CL2001276)へ視線を移した。
 柾へ奢ったそれは、ある依頼でのお礼ではあったのだが、同じものを食べながらそれが不味い訳でも無いのに、ほのかの顔が何時もより影かかっている。
「どうしたんだ?」
「……すみません、急に黙り込んで。私、殺芽さんの糸で操られる人が増えるのが怖くて、悲しくて。
 薬売りさんに糸切炎を再度作成できないか相談して、その対価は殺芽の死体で如何か?と言われたんです。でも自分が対価を届けられるか不安で」
「死体をか……」
 それ以上を言わなかった柾は、言葉の代わりに、ほのかの頭を優しく叩いた。
「まあ……、要は自分がどうしたいのかってのが、大事なんじゃないかと思う」
 例え。不可能な事があったとしても、抗いたければ進むしか道は無く。けれどそれは何も一人で進む道では無い、柾も、他の誰かだって、力になるとほのかへ送れる一生懸命の言葉を紡いだ。
「はっ……いけませんね、こんな弱気では。柾さんも氷雨さんの事を守らないとですし、お互い頑張りましょうね!」
「ああ、お互い頑張ろう。ちょっと射的とかやっていかないか? 折角秋祭りに来たんだし」
「はい、折角のお祭りですし、射的で遊びま~す♪」
 そんな二人の足元で、一匹の蜘蛛が通り過ぎていった――。

 からん、ころん、と雅な音をたてる足音の主は椿 那由多(CL2001442)だ。薄紫色の浴衣を着こなしながら、露店で買ったたこ焼きに櫛を刺す。
 対して、浅葱色の浴衣を着るのは守衛野 鈴鳴(CL2000222)だ。彼女はりんご飴を持ちながら、那由多の差し出したたこ焼きを快く口で受け取った。
 鈴鳴の、たこ焼きと少々格闘する姿に、那由多は小さく笑みを零し、
「次はどこ行こか?」
「あ、那由多さん、金魚さんですよ。可愛いです!」
「ん? 金魚すくい……?」
 金魚掬いへ嬉々として向かっていく鈴鳴の後ろで、那由多は顔を斜めに転がしながら
「苦手って言うべきやろか言わんとこか、まいった」
 しかし、ここは腹をくくって年上の威厳をと、鈴鳴の背中を負いながら袖をまくった。
 鈴鳴は真剣な表情で、掬っていく。一筋縄ではいかないか、すぐに穴が開いてしまうポイ。何度挑戦しても、財布の中だけが消えていく。
「仇は取るよってうちに任せてっ!」
「那由多さん、ファイトですっ。応援してます!」
 ここで勢いを見せて、勝てる流れを引き寄せたように見えた那由多であったが――結果は、残念か。ポイは見事、穴だらけになってしまう。
 二人で一緒に肩を落とした、ものの。でもお店の人が、一匹ずつ金魚を分けてくれたことに二人に笑みは戻っていく。
「えへへ……この子、大切に育てますっ」
 楽しそうな鈴鳴を見て、那由多の心もあたたく彩られた。

 納屋 タヱ子(CL2000019)に緒形 逝(CL2000156)と御影・きせき(CL2001110)という珍しい組み合わせで、夜道を行く。
「逝おじちゃん、焼きそば買ってー! ……あれ、おじちゃんどうしたの?」
 元気に振る舞うきせきとは裏腹に、初めての秋祭りの赤一色の提灯や人混みにあてられた逝が、なかなかの挙動不審さと共に頭を斜めにこてんと落とした。
 きせきはそれを、仕事とプライベートでは一定のけじめをつけているものだとして、ピリオドを打ってみた。
 三人はとある依頼(多分車椅子さんところのかな?)で何度も同行している仲であり、その奇縁の延長線上に今日の逢瀬があるとかで。
 きせきと逝のぎこちない会話を聞きながら、タヱ子は、そういえばとある節目から二人の様子がおかしいことには気づいていた――のだが、あえて口には出さずに確定的な野暮からは手を引いていた。
「あ、次はあっちの屋台見たい!」
 再び、不安定なテンションの高さできせきは屋台のほうへと駆けていく。
 子供は国の宝であるからと、逝はきせきのことをそういった目線で見ていたが、フルフェイスの奥ではどういう顔をしているのは本人でもわからないことだろう。
 そして二人を追いかけるタヱ子もまた、
「そろそろ逢魔が時でしょうか……」
 と燃ゆる夕焼けに炎を重ねて見ていた。ふと、遅れていたタヱ子を気にしたきせきが、彼女の手を引く。
「タヱ子ちゃんは見たい屋台とかある? ……タヱ子ちゃん、どうしたの? 元気ないのかな? 一緒に屋台のおいしいもの食べて元気出そうよ!」
 きせきとタヱ子の間で、何かが一線引かれていた。けれど、より明るい方へ導くようにきせきは彼女の手を引く。
「あ、トルネードポテトとかおいしそう!」
「あ、あの、自分の分のお金はお義父さんに貰ってきていますから……!」
「御影は、疲れないのか? やけに明るく見えるぞ」
「いつだって元気だよ!」
 綿あめを買ってきた逝が合流し、しかし逝もタヱ子の様子はくまなく観察していた。
 依頼は時に、人の心に何か影響を及ぼす事はあるだろう。それさえ抱えて成していくのが覚者という生き物か。何が言いたいか纏めれば、君たち大丈夫じゃないだろ、大丈夫か。

 時任千陽(CL2000014)は麻弓 紡(CL2000623)の手を引いていた。少しでも油断すれば、この鳥さんは恐らく屋台トラップに引っかかって飛んでいく事だろう。
「ほら、アレもこれもでは全部食べきれませんよ」
 しかし。
 紡の頭に狐面、右手にチョコバナナ、まるで全身で屋台トラップに浸かりながら次の獲物の品定めを開始していた。
 左手は千陽に捕まっていたのだが、いつの間に……と千陽を感心させる程だ。
「あ、千陽ちゃん。リンゴ飴あるよー、リンゴ飴。大きいのと小さいのあるんだねー」
 赤くてまぁるいお祭りのど定番。大きいのと、小さいのが飴のコーティングで宝石のように輝きを放って立っていた。千陽は小さく愛らしいリンゴ飴をふたつ買う。ひとつは、自分の。もうひとつは、紡のもの。
「同じものを買うというのも祭りの風物詩ですし、欲しそうでしたので。付き合ってくださったお礼です」
「ふふ、でもそっちのをひとくち……――」
 言いかけて、紡は小さくクシャミをした。
「同じものを買ったのに俺のほうがほしいんですか?」
 苦笑した千陽は、自分の外套を紡にそっとかけてやった。いくらなんでも秋の夕闇が落ちる頃は寒いか。こんな事もあろうか、予想していたかは判らないが、温もりが篭るそれは紡にとって十分過ぎるもの。
 その気遣いが嬉しくて、
「可愛らしい浴衣が見えなくなるのは残念ですが、風邪をひくほうが大変ですからね」
「……ありがと、千陽ちゃん大好き」

 離宮院・太郎丸(CL2000131)は出店をくまなく探索していく。そして気づいたときには、両手に沢山に戦利品を抱えていた。
 彼には彼の思うものがあるらしく、これをお土産なのだという。それは喜んでくれるか、まだわからないが。帰る足は、とても軽くなっていた。

 一色・満月(CL2000044)は赤鈴 いばら(CL2000793)と共に、夜道を行く。しばらく言葉のいらない時間を過ごしつつも、いばらの尻尾はブンブン揺れていた。
 ワクワクしているのだろう、それを見ただけでも満月の心は自然と穏やかになっていく。
「いばらは、何が好きだ?」
 そういえば彼女の好みを知らなかった。満月はたこ焼きが好きだと付け足してから、彼女の返答を待つ。
「そうですねー、甘い物なら割と何でも……。あっ、あれ! リンゴ飴がいいです!」
 お祭りという感じが好き、可愛くて甘くて好き、と付け足しながら無邪気にも笑ういばらの表情。
「たこ焼きもいいですね~! 後で買いに行きましょうっ、マヨはつける方がお好きですか?」
「あったらいいな。いいのか、いばら。太るぞ、その一歩が命取り……と。どうやら俺はお前のことが好きらしい。ああ、友達としてだ。さすがに友人の妹に手を出すわけには、いかんしな」
「ふふ、嬉しいですっ! 私も満月さんのこと、好きですよ。こちらこそ、これからも宜しくお願いしますねっ!」
 握手され、友情のそれをぎゅっとかわす。何故だか満月の心がチクリと何かが刺さった。気づかない、気づけない思いにいばらが気づくことは難しいかもしれないが、しかし今こうしている時間を何より大切に、不思議な縁の二人の時間は続いていく。

 藤 壱縷(CL2001386)は赤い提灯を見て楽し気に、髪を揺らしつつ歩んでいく。いろんな場所を見てみたい、色んな人に会って見たいと高ぶる気持ちが抑えきれない。
 皆は……どこに集まっているのだろうか。頭を右へ左へ向けながら、樹神枢を見つけては、枢は手を振っていた。無邪気なその返しに、壱縷も同じく手を振り返した。
「あ、林檎飴、美味しそう」
 弟にもお土産として買っていきましょうか。穏やかな雰囲気に、彼も連れてくるべきだっただろうかと思案する。次はきっと、一緒に来たいとも思いつつ。
 …その頃。
 切裂 ジャック(CL2001403)は十夜 八重(CL2000122)は、2人。
「八重、頼むな。悪いな」
 買い込んだ沢山のごはんをみて、八重は苦笑まじりに、
「食べきれなくても知りませんよ?」
 と、くすくす笑った。ジャックは大丈夫だとは言うのだが、果たしてその細身の体型のどこに入るのかは摩訶不思議で。
 そんなことをしつつ、八重はジャックをお姫様抱っこで抱え、翼を広げて飛び上がった。言ってしまえば、男のジャックが八重に抱えられているのは不本意なのか、ジャックは全力で泣きそうになっているのを八重は気づかないふり。そして、木の上へ。
「さながら、お忍びで来た古妖が人間たちを見下ろす気分や!」
「普段とは違う視点を古妖視点って言いえて妙ですね」
 先ほど買った食べ物を食べながら、二人は他愛のない話に花を咲かせた。
 そんなところで八重、身近な人を見つける。ジャックは、八重の目線を追って気づけば、ムっとしつつも小声で、
「……俺だけ見てればいいのに」
 とつぶやいていた。八重はそれさえ可愛らしいと思いつつ、手元のたこ焼きを一つ突き。
「はい、あーん」
「え?! いいの? んじゃあ、あーん!」
 しかしジャックが口を開けた刹那、滑り落ちて真っ逆さまに。その下で壱縷が通りかかるまであと数秒。

 今日は皆で屋台巡り。生徒会も、今日は学校の行事や勉強を全て忘れて、無礼講な夕方ら夜にかけての魅惑の余暇タイムである。
「お祭りといえば屋台よね。せっかくだから全制覇してみたいわ。みんなで分け合ったら、いけるかしら?」
「食べ歩きなのですっ。ふっ、屋台全制覇しちゃいましょうかっ」
「皆と屋台の食べ歩き……我輩一人では二店目すら怪しいが、皆と一緒なら全店制覇も夢ではないな!」
 折角なので全制覇を目指す姫神 桃(CL2001376)、月歌 浅葱(CL2000915)、神野 美咲(CL2001379)。この三人は生徒会面子の中でも、かなり張り切って小銭で膨れた財布を握り締めていた。
 面子のなかには宮神 羽琉(CL2001381)が一人。もしかして一人だけの男かもしれないと、だがしかしそんな状況も慣れてしまったのはこの五麟市が元々男性の方が少ないという事もあるからだろうか。
 同じく桃に誘われた明石 ミュエル(CL2000172)は、その長い金髪を夕焼けに赤く染めて、まるでみんなの保護者のように見守っていた。
 昼間の間、羽琉は下見をしていたからだ、それに沿って歩けば皆んなが迷う事はない。羽琉の気が効くその行動には大きく賞賛たるものがある。
 さてここでやっと、ミュエルは綿あめを買って来て、屋台の買い物の先陣を切った。
「あっ、鈴カステラですねっ。買っちゃいますよ大きな袋をお一つくださいなっ」
 鈴カステラを買いに行くのは浅葱だ。ミュエルに続き、そしてそれからみんなの口にかすてらぽいぽい。
「うん…焼きたてでふわふわで、すごく美味しい…。アタシからも…はい、どうぞ…」
 ミュエルは小さな感触に舌つづみしつつも、浅葱へお返しのわたあめ攻撃。
 桃もカステラを浅葱に、あーんの形で渡されて。朱に染める頬を隠しながらも好意を受け取った。
「うむ、ありがとうだぞ浅葱! 鈴カステラ……ちょっと量が多くて、一人で食べるのには厳しいからな!」
 美咲も感謝の言葉を述べながら浅葱のカステラを食べていく。あっという間に、大きな袋に入っていたカステラは、マジックのように消えていく。
 羽琉はその間、飛んだり跳ねたりを繰り返しながら人混みから皆んなが剥がれないように留意した目線で気遣っていた。なんだかこのチームのリーダーになったような気分がジワリと胸を埋めていく。
 桃はタコ焼きを買い、美咲は猫舌だから冷ましてから食べてと一言起きつつ、美咲の口にぽんとたこ焼きひとつ渡せば、外側は冷めていても内側はどうにも熱かったようで、飛び上がった美咲に、桃は苦笑していた。そのまま桃は浅葱にも、あーん。ミュエルにもあーんしつつ……ミュエルは、ふふ、とにこやかに笑う。甘いもののあとにしょっぱいのが来ておいしいのは、幸せと言うべきか。お返しにミュエルは桃へ、綿あめを渡した。
 個人的には、牛串焼きやお好み焼きが好きかなと思う羽琉は、桃からたこ焼きふたつをほど貰い、これまでの頑張りを認められたような形で、染み染みとたこ焼きを味わった。努力した甲斐があったというものか。
 美咲はミュエルはわたあめをじぃ、と見つめていたが、それに気づいたミュエルは快く、小さくなってしまった甘い雲を渡す。…ふわふわもふっとしてるのに、口に入れるとシュって溶けて……美咲は、舌の上ですぐになくなってしまった至福を惜しみながら、甘いツバを飲み込んでいく。しかしだ!思えば美咲自身はまだ何も戦利品を所持していない。
「我輩は何にするか……羽琉に聞けば色々教えてもらえそうだが」
 焦る瞳が、屋台を舐めるように見ていく。あまり量が少ないものは分け合えないのでナンセンスだ、かと言ってインパクトがあるもので欲しい。
 詰まる所、美咲の正解はじゃがバタで。お店がある方へ全員を引き連れつつ、集まったお菓子や食べ物を揃えて制覇を目指していくのであった。

 松原・華怜(CL2000441)は呟いた。
『……こういうのもたまにはいいですね』
 人混みと、お祭りの賑やかさと言うものは別の話。その波に揺られながら、華怜は歩いていく。ちなみに転ばないように、ハイバランサーを積みながら。
 この探索にゴールというものは無いが、林檎飴というお供と共に、気がむくままに歩んでいく。

 諏訪 刀嗣(CL2000002)は屋台で衝動買いした食べ物を両手に持ちつつ、見たことがある小さな子供を見つけた。
「おい、ガキ。えーっと、こどもくるるだったか?」
「樹神、枢。くるるなのだ。こんばんは、諏訪殿。ボクに何か用か?」
「1人で何やってんだ?一緒に回るダチはいねぇのか?」
「うむ、先程まで居たのだがな。逸れてしまい、一人なのだ。ちょうど帰るか迷って居たところだ」
 とは言え彼女はまだ幼い。その歳でファイヴに預けられているということは、何か面倒な事情でもあるのだろう。
「いや、なんでも良い。お前ちっこいんだからちゃんと食え、ほら」
「!?むぐっ」
 焼きそば、フランクフルト、からあげ、刀嗣は買った物をかたっぱしから枢の口の中へと詰め込んでいく。彼女の小さな口はあらゆる味でいっぱいになりつつ、嫌そうではないのだが苦しそうではあるので、気づいて欲しいと行き場のない手が彷徨っていた。
「ガキに興味はねぇがお前が俺好みのいい女になったら遊んでやるぜ」
 笑いながら刀嗣は、次詰め込むものを突いた刹那。ふと、刀嗣が振り向けば大人のお淑やかそうな女性が口元を押さえながらもぐもぐしていた。
 現の因子。刀嗣は突いたからあげを、落とした。

 今日は秋祭りなんだとか。ゲイル・レオンハート(CL2000415)は守護使役の小梅と共に、秋夜の道を行く。普段から小梅にはお世話になっているので、それのお礼も兼ねてだ。
 お祭りの中で食べるご飯は、何時もより何倍も美味しく感じていた。だからか、財布の中身なんて関係なくとも、買うだけ買って行く。炭水化物系に、わたあめりんごあめ。チョコバナナ。いってしまえば、普段あまり食べることのないものばかりではある。
 小梅も美味しそうに食べていたのが、ゲイルにとって嬉しくて、優しく撫でやりながら静かな時間を過ごしていく。小梅もゲイルを見上げて幸せそうに笑っているようにも見えていた。
 戦いの思い出の、一瞬の安らぎである今を大切に。秋の夜は更けていくのだ。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし




 
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