いくら涼しくなってきたとはいえ……
●その悪寒の原因は……
そこは、とある京都府内の学校。
下校時刻となり、学生達は日が沈む前に帰路につく。
夜の帳が下りてしまえば、妖の時間。重々それを承知しているほとんどの学生達は遊びに出ることもなく、素直に帰宅していく。
しかしながら、どこにでも規則や慣習に嫌う者がいるようで。
「ああ、家に帰るの嫌やなぁ……」
「やっぱ、外で思いっきり遊びたいなぁ」
茶髪の女子高生が2人、帰宅したくないと愚痴りつつ、校門の外へと出る。
彼女達はこの日、家とは逆方向に歩いていく。どうやら、近場のカラオケ店で一夜を過ごすつもりらしい。
夕暮れになり、徐々に辺りが暗くなっていく中、片方の女子が突然身震いをする。
「なんか、さむぅない?」
「せやな、なんかそんな気ぃするわ……」
道を歩く2人は寒気を感じてそう声を掛け合う。いくら9月になったからとはいえ、まだ夏服着用で問題ない時期のはずだ。昼間はあれほど暑さを感じるのに、日が暮れただけでこれほど寒くなるものだろうか。
早く建物の中に入って暖まろうと小走りで移動する2人。しかし、どれだけ走っても、身体は暖かくなるどころか、どんどん冷え切っていく気がして。
「あかん、寒いわ……」
「やばない、これ……」
2人は悪寒を感じ、ついに身震いして物陰で暖をとることにする。
だが、そいつらはここぞと2人を狙う。ゆらりと空中に半実体化したのは、白い着物を纏った妖達。
「うう……うあぁぁ……」
一見すれば水色がかった人影が5体、女子高生2人を取り囲む。
「ひっ……」
「やだ、こっち来んといてーな……!」
追い払おうとする女子高生達だったが、妖はお構いなしに次々に女子高生達へと触れ、体温を奪っていく。
妖が去りし後、その場には完全に体温を奪われた女子高生達が凍死体となって、横たわっていたのだった……。
会議室へとやってきた『F.i.V.E.』の覚者達。
そこではすでに、『薄幸の男の娘』菜花・けい(nCL2000118)が覚者の来訪を待っていた。
「すまぬのう。早速掛けてほしいのじゃ」
席につくよう促した彼は資料を配り、スクリーンに目撃される敵の姿を映し出す。
「妖討伐の依頼をしたいのじゃ。今回現れる妖、震々(ぶるぶる)……心霊系の妖じゃな」
現れる敵は5体。そのうち、3体がランク2、2体がランク1のようだ。主に取り付いて相手の体温……体力を奪い去り、相手を吹雪で凍らせ、そして、つららで貫いてくるという。
「放置すれば、次第に強力になる上、数も増えて危険なのじゃ」
これから寒くなれば、この妖は強力な力を持つ可能性も高い。だからこそ、今のうちに叩いておきたい。
まして、今回、この妖に2人の女子高生が襲われるという。
「京都府内の町外れにあるカラオケ店の近くの路地で、この女子高生達は震々達に襲われるようじゃの」
夕暮れ時を狙って現れた妖達は、まっすぐ家に帰らず遊び歩こうとする女子高生に目をつけたようだ。
道中で代わる代わる後から取り付いて体温を奪い、道の脇で女子高生達が止まったところで一斉に姿を見せて止めを刺す様がスクリーンに映し出される。
「作戦は皆に任せたいがの。無事に妖を倒した後は、説教してもよいかもしれんのじゃ」
夜に出歩くからこそ、命を危険に晒したのだとこの女子高生達に教えるべきだろう。
以上なのじゃと、けいは投影機の電源を落とし、片づけを始める。また別の夢見が事件説明の為にこの会議室を使用するのだろう。
「それでは、よろしく頼むのじゃ。吉報を待っておるぞ」
けいは可愛らしい笑顔で、覚者達を送り出すのだった。
そこは、とある京都府内の学校。
下校時刻となり、学生達は日が沈む前に帰路につく。
夜の帳が下りてしまえば、妖の時間。重々それを承知しているほとんどの学生達は遊びに出ることもなく、素直に帰宅していく。
しかしながら、どこにでも規則や慣習に嫌う者がいるようで。
「ああ、家に帰るの嫌やなぁ……」
「やっぱ、外で思いっきり遊びたいなぁ」
茶髪の女子高生が2人、帰宅したくないと愚痴りつつ、校門の外へと出る。
彼女達はこの日、家とは逆方向に歩いていく。どうやら、近場のカラオケ店で一夜を過ごすつもりらしい。
夕暮れになり、徐々に辺りが暗くなっていく中、片方の女子が突然身震いをする。
「なんか、さむぅない?」
「せやな、なんかそんな気ぃするわ……」
道を歩く2人は寒気を感じてそう声を掛け合う。いくら9月になったからとはいえ、まだ夏服着用で問題ない時期のはずだ。昼間はあれほど暑さを感じるのに、日が暮れただけでこれほど寒くなるものだろうか。
早く建物の中に入って暖まろうと小走りで移動する2人。しかし、どれだけ走っても、身体は暖かくなるどころか、どんどん冷え切っていく気がして。
「あかん、寒いわ……」
「やばない、これ……」
2人は悪寒を感じ、ついに身震いして物陰で暖をとることにする。
だが、そいつらはここぞと2人を狙う。ゆらりと空中に半実体化したのは、白い着物を纏った妖達。
「うう……うあぁぁ……」
一見すれば水色がかった人影が5体、女子高生2人を取り囲む。
「ひっ……」
「やだ、こっち来んといてーな……!」
追い払おうとする女子高生達だったが、妖はお構いなしに次々に女子高生達へと触れ、体温を奪っていく。
妖が去りし後、その場には完全に体温を奪われた女子高生達が凍死体となって、横たわっていたのだった……。
会議室へとやってきた『F.i.V.E.』の覚者達。
そこではすでに、『薄幸の男の娘』菜花・けい(nCL2000118)が覚者の来訪を待っていた。
「すまぬのう。早速掛けてほしいのじゃ」
席につくよう促した彼は資料を配り、スクリーンに目撃される敵の姿を映し出す。
「妖討伐の依頼をしたいのじゃ。今回現れる妖、震々(ぶるぶる)……心霊系の妖じゃな」
現れる敵は5体。そのうち、3体がランク2、2体がランク1のようだ。主に取り付いて相手の体温……体力を奪い去り、相手を吹雪で凍らせ、そして、つららで貫いてくるという。
「放置すれば、次第に強力になる上、数も増えて危険なのじゃ」
これから寒くなれば、この妖は強力な力を持つ可能性も高い。だからこそ、今のうちに叩いておきたい。
まして、今回、この妖に2人の女子高生が襲われるという。
「京都府内の町外れにあるカラオケ店の近くの路地で、この女子高生達は震々達に襲われるようじゃの」
夕暮れ時を狙って現れた妖達は、まっすぐ家に帰らず遊び歩こうとする女子高生に目をつけたようだ。
道中で代わる代わる後から取り付いて体温を奪い、道の脇で女子高生達が止まったところで一斉に姿を見せて止めを刺す様がスクリーンに映し出される。
「作戦は皆に任せたいがの。無事に妖を倒した後は、説教してもよいかもしれんのじゃ」
夜に出歩くからこそ、命を危険に晒したのだとこの女子高生達に教えるべきだろう。
以上なのじゃと、けいは投影機の電源を落とし、片づけを始める。また別の夢見が事件説明の為にこの会議室を使用するのだろう。
「それでは、よろしく頼むのじゃ。吉報を待っておるぞ」
けいは可愛らしい笑顔で、覚者達を送り出すのだった。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.全ての妖の撃破
2.女子高生2名の生存。
3.なし
2.女子高生2名の生存。
3.なし
どこかでお会いしたことのある方もこんにちは。なちゅいです。
妖の討伐と、やや素行不良な少女達の救出を願います。
●敵
○妖……震々(ぶるぶる)5体。(心霊系)
水色で半透明の姿をした女性の妖です。
下半身はなく、時折呻いております。
背筋に寒気を走らせるという妖ですが、
相手の体温を奪い去り、死に至らしめます。
・ランク2×3体
成人女性くらいの大きさです。
吹雪……特遠列・凍傷
つらら……特単貫3(100・70・30)・出血
取り付き……特近単・HP吸収
・ランク1×2体
その体躯は一回り小さく、やや力が弱いようです。
吹雪……特遠列・凍傷
取り付き……特近単・HP吸収
●NPC
○女子高生2名。
高校1年生の女子2名で、やや素行が悪いようです。
この日、下校中に帰宅することなく、
2人でカラオケ店へと向かおうとしておりましたが、
途中、震々達に襲われてしまいます。
●状況
下校中の女子高生達に接触可能です。
(タイミングは乱数で前後する場合があります)
早いタイミングで女子高生に接触した場合、
帰宅を促そうとすると逃げだそうとしますので、
うまく接触する必要があるでしょう。
それでは、よろしくお願いいたします。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
6日
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
8/8
公開日
2016年09月29日
2016年09月29日
■メイン参加者 8人■

●夜遊びは危険がいっぱい
京都府内某所。
『F.i.V.E.』の覚者達は、夜遊びする女子高生が妖に狙われると聞き、彼女達を守るべく、現場へとやってきていた。
「夜遊びなんて、楽しそうな響きですね!」
小学生の『Overdrive』片桐・美久(CL2001026)は、「僕も一緒に……」と言いかけ、同行する目上のお姉さん達に怒られそうと感じたのか、しっかりとお口をチャックしていた。ちなみに、名前だけでは良く間違われるが、読み方は「よしひさ」であり、彼は男の子である。
「夜は妖がうろつきやすい。昼より警戒すべきなんだが……、危なっかしいな」
「ま、俺も依頼で夜中に出歩いたりするからあんま言えねーけどさ。こういう世の中だから、ふらふら遊び歩くのも感心しねーよな」
『笑顔の約束』六道 瑠璃(CL2000092)はそう考えるものの。女子高生達の素行の悪さに関しては、人のことは言えないとやや自虐する。『守人刀』獅子王 飛馬(CL2001466)は小学生だが、依頼で夜に出歩くこともある。ただ、危険を省みることなく遊ぶことには同意しかけるようだ。
「夜は妖が動き回る時間なのに、何で出歩くかなぁ」
「遊びたい盛りの子供とはいえ、このご時世で遅い時間まで遊ぼうというのは命知らずねぇ」
こちらは、一行のお姉さんメンバー。せめて、明るいうちに一晩過ごす場所に移動すればよかったのにと、『五行の橋渡し』四条・理央(CL2000070)は嘆息する。一方、『ドキドキお姉さん』魂行 輪廻(CL2000534)はというと、くすりと笑ってこう続ける。
「ま、楽しい青春を送りたいって事で、多少は大目に見てあげるわよん♪」
良くも悪くも、自分に正直な輪廻。露出も大きく、色気漂わす彼女の姿に対し、男性陣は目のやり場に困っていたようだ。
「素行が少し悪いからと言っても、本来、生死に関わる事には関係の無い子達だよね……」
鈴白 秋人(CL2000565)は思う。誰が被害者になってもおかしくない今の日本。ただ、今回の女子高生達は、妖の犠牲になる必要はない筈だ。
「少なくとも俺の知る限りでは、出来るだけそういう被害は防ぎたい……」
(失敗すると、ひとが、死ぬ。みんな、自分が戦って傷つく覚悟なんかはしてるんだろうけど)
宮神 羽琉(CL2001381)は未だ、その覚悟はできていない。ただ、他人が傷つく状況に直面した時。自分はどう考えるのか、そして、どう受け止めるべきなのか。彼は逡巡してしまう。
発現する意味、夢見の予知。どうすればいいのか、答えを見出せずにいる羽琉。
「けど、動き出した以上は、見捨てられないから」
妖から被害者を救う為、彼は迷いながらも、仲間と共に依頼に当たるのである。
●妖、震々出現!
覚者達はまず、襲われるという2人の女子高生の姿を探す。
「やっぱ、外で思いっきり遊びたいなぁ」
その2人は、カラオケ店に向かうことがすでに予知されている。その道中を見張ることで、メンバー達は用意に彼女達を発見できた。
問題は、その女子高生達を狙う妖、震々達の出現だ。
飛馬は敵の不意打ちに備えるが、スキルの活性に問題があったらしい。この為、超直感のみで対処しつつ女子高生達を尾行する。
美久も上空に守護使役のラピスを舞わせて偵察を行わせ、周囲を警戒する。見つからないようにと女子高生から距離をとって後を歩いていたのだが、どうやらバレバレだったらしい。
「しぃー。僕達もこれから遊びに行く所だから……。先生には内緒にして、お姉ちゃん?」
我ながら、馬鹿っぽい口調だと自虐してしまうが、彼は我慢我慢と自制する。普段の口調だと、怖がらせてしまうと美久は自覚していたのだ。
飛馬と美久が2人で並ぶと、その弁解も違和感がない。とはいえ、自分達だけでないと知り、女子高生達は気を良くしていたようだ。
そこからさらに離れた位置で、他の仲間達も続く。
理央は不自然にならぬようにと、本を片手に読みながら、距離を保ちつつ歩く。
(本来なら、本を読みながら歩くのは危険なんだけど)
理央が考える通り、ながら歩きは危険なので、報告書に目を通す覚者の皆々様はくれぐれもご遠慮願いたい。
羽琉、瑠璃は鷹の目を駆使し、他メンバー以上に距離を取って女子高生達を追う。
尾行の方法など分からぬ羽琉は仲間と固まらないように、それでいて建物の屋根などで隠れながら飛行し、追跡する。
瑠璃も、相手を見失わないようにと気がけていた。
「ま、陽が落ちてくれば、少しは近づきやすくもなるか」
暮れなずむ空。周囲が暗くなり、瑠璃は暗視を使って距離を詰めていく。
秋人もピヨに偵察を行わせるが、彼は妖の捜索に重きを置いて、行動する。
「来たね……」
秋人は自らの治癒力を高めながら、それらの下へと韋駄天足で駆け出した。
すでに、カラオケ店付近までやってきていた女子高生達。予知とは違い、寒気を覚えるタイミングが遅れていたのは、妖……震々らが覚者達の介入を察していたからかもしれない。
「う、うう……」
現れた妖、震々。人間大の個体が3体と、やや小さな個体が2体。それらは女子高生を狙うべく迫ってきていた。
もちろん、その介入を覚者達は見逃さない。真っ先に駆けつけた秋人が女子高生の前に立ち塞がり、不意打ちを防ぐ。
「な、何や?」
目の前に現れる青白い人影と、秋人の姿に驚く女子高生2人。
「だーるまさんがーこーろんだ♪ 残念。待ち伏せてるのは、あなた達だけじゃないのよん♪」
そう告げて、妖の前に姿を現す輪廻。彼女は予めカラオケ店付近に先回りし、迷彩で身を隠して敵の出現を待っていたのだ。
最悪、女子高生が違う動きをする可能性も示唆していただけに、予定通りにいってしたり顔の輪廻は震々の1体を抑えにかかる。
「お姉さん達が魅力的だからって、お触りはいけませんよ!」
「ねーちゃん達、いいって言うまで俺らと一緒にいるんだぞ」
妖へと近づいてきた美久が仲間を庇いつつ、呼びかける。飛馬も一緒だ。
さらに、空からはともしびで明かりを確保しつつ羽琉が降り立ち、理央と一緒に女子高生を守るように妖の前に立ちはだかる。
「2人を今のうちに逃げさせろ!」
フリーの敵を抑える瑠璃の声に応え、ここぞと登場したのは、お姉さんメンバーの1人、ちびっ子先生、『音楽教諭』向日葵 御菓子(CL2000429)である。彼女は守護空間を展開し、妖の接近を防ぐ。
「わたしは五麟学園中等部の教師、向日葵御菓子っていうの。よろしくね」
御菓子は女子高生を保護の為に声をかける。そして、幼く見える自らの容姿を自認していた為、身分証を片手で示し、教師であることを彼女達へと示す。
「話は後ね……。あまりよろしくないのに目をつけられちゃってるから、今日だけ、わたしと一緒に帰路についてほしいの。……だめかな?」
手を合わせ、上目遣いで小首を傾げる御菓子に、愛らしさを覚える女子高生達。その願いを聞くことにしていたようだ。
「敵は、1、2、……5体。大丈夫です、行ってください!」
「お姉さん達! このまま僕と一緒に走ってくださいね!」
飛馬は敵の数が事前情報の通りと確認して避難を促すと、美久が女子高生の手を引いて御菓子と共に駆け出すのだった。
●狙われる女子高生の安全確保を
「う、うあぁぁ……」
嗚咽のような声を吐いてくる妖は、前面の覚者に取り付き、また吹雪を吹き付けてくる。どういう形で現れたモノかは分からないが、倒すべき敵であることは変わらない。
「皆、頼むぜ!」
女子高生を守る飛馬が、仲間達へと呼びかける。
相手は、ランク2……人物大の妖2体と、ランク1……小型の1体が前衛に、残りが中衛に位置取っていた。後ろのランク2が直接抑えられない状況にあったが、そこは人数で囲いをなしてカバーする。
(遠距離攻撃に加えて、貫通攻撃まで使ってくる相手だ。庇いながらは戦えない)
瑠璃が抑えるのは、人間大、ランク2の震々だ。こいつはつららで後方まで攻撃してくるという。だからこそ、完全に女子高生が現場を離れるまでは安心できない。
できる限り敵の移動を阻むよう位置取りながら、瑠璃は敵の頭上に起こした雲から雷を叩き落とす。
「敵は心霊系……。物理が通用し辛いから、私は少し相性が悪いかしらん?」
輪廻は不利な部分を分析しながらも、着物をはだけさせながら「それはお互い様かもねん」と笑う。露出の高い彼女だが、水の心で震々の与える寒気など意にも介してはいない。
「灼熱化の炎と私の水の心、あなた達の冷気で止められるかしらん」
そうして、彼女は色気を振りまき、体内に宿る炎を燃え上がらせて敵の侵攻を防ぐ。
隣のやや小さい震々には、美久が張り付き、吊り目の瞳で敵を鋭く見据えていた。彼は敵の足元から蔓を巻きつかせ、相手の身体を縛り付ける。
「お姉さん達を無傷で逃がす為に、足を鈍らせられれば、役に立つかもしれませんしね!」
美久は狙い通りに敵の体を縛り付けるものの。震々に足はないことを確認してしまうのである。
その戦場から、女子高生を避難させる御菓子と飛馬。
飛馬が飛んでくる敵の攻撃を、刀を器用に使って器用に抑える間、御菓子もまた彼女達を庇おうと立ち回る。
「わたしだって学生のときは、夜に遊んだこともあるもの、気持ちはわかるよ」
警戒心を抱かせないようにと、御菓子は優しく語りかけた。徐々に戦場から遠ざかりながらも、彼女はおおよその事情を女子高生達へと説明する。
「実はね、この辺で妖の目撃情報があったのよ……。信じられない気持ちはわかるけど、現実だったことはわかるわよね?」
御菓子が言う通り、実際に妖を目にした女子高生達はただ首を縦に振る。そんな彼女達へこれは内緒よと付け加えながら、念の為にと深層水の神秘の力を振りまく。
「ただ、夜暗くなると、妖じゃなくても若い子を狙うろくでもないのが、掃いて捨てるほど出てくるから……。気をつけなきゃね」
ウインクする可愛らしい教師の姿に女子高生達は思わず、御菓子の頭を撫でてしまうのである。
戦場に再び目を向ければ、覚者達は妖のブロックを続けていた。
(命が消えるかも知れない事を知っていて、放って置くわけには行かない)
秋人は前で敵を抑えながら、回復役となる御菓子の抜けた穴を埋めるべく、癒しの雨を降り注がせる。
(出来る限りの事は、最低限して最善を尽くすよ……)
そうして、彼は避難役の2人の合流を待つ。
他の仲間達は積極的に、震々へと攻め込んでいたようだ。
覚醒し、瞳を紅く染めた理央は最初、治癒力を高める香りを振りまいていた。そうして万全の対策を取った彼女は、拳大の大きさの炎を連続して撃ち放つ。
「初めて使う術式だし、使い勝手を試させて貰うね」
本来水行の理央だが、使う術式は実に幅広い。火行弐式スキルの威力を確かめようと撃ち放った火炎連弾。それらは手前にいた小型の震々へと命中し、火傷を負わせる。
「あぁ……、ああぁぁあぁあぁああ……」
半透明な身体であっても、しっかりと痛みを感じているのか、そいつは苦しみの声を上げる。
「見ているだけで悪寒が走るけど、撃たなきゃ」
相手は所謂、幽霊の類。恐ろしさを感じはするが、倒さないとこの戦いは終わらないと、羽琉は意を決する。
「奔れ、雷獣」
1体でも多く、一撃でも早く。そんな想いを込め、羽琉は起こした雷雲から激しい雷を叩き落とす。
それによって、全身に電撃を走らせた小型の震々は姿を消していく。
「早く終われば、傷つく人が少なくて済むよね」
羽琉はそうして、次なる相手に視線を傾けるのである。
●その震えを止める為
妖、震々はしつこく覚者達へと纏わりつき、身に纏う冷気を吹き付け、あるいは氷柱を飛ばしてくる。
しばらくそれらの攻撃を抑える前線の覚者達を、回復に回る秋人が支える。
そこへ、女子高生の避難を済ませた2人が合流する。御菓子は仲間を海のベールで包み込んで支援を始めると、秋人は攻撃に転じ、目の前の震々に波動弾を飛ばす。
だが、震々は怯むことなく、反撃に尖端を鋭くした氷柱を撃ち出してきた。
仲間が駆けつけて負担も軽減したものの。飛馬はそれに貫かれ、その身に凍傷を負わされてしまう。
「確かに、こんな奴らが増えたり強くなったりするようだと、一般人はたまったもんじゃねーよな」
放置すれば、妖も力をつけてしまう。今のうちに何とかしなければと考える飛馬は土を鎧のように纏い、ガードをメインで立ち振る舞う。
戦線に加わる美久は仲間の援護を受け、敵に軽口すら叩いてみせる。
「着物美人さんは素敵ですよね……! 次は是非、実体でどうぞ!」
美久は植物の大蔓をムチのようにしならせ、妖へと叩きつける。半透明の身体であるにも関わらず、傷口から血を流しながら、小型の震々は姿を消していった。
瑠璃も依然としてランク2の震々を抑え、敵前列の妖目掛けて雷を落とし続けていた。
「どんどんいくわよん♪」
前に立つ妖もかなり弱ってきている。輪廻はすらりと刀を抜いて攻撃……と見せかけて、着物の裾を捲り上がらせてこれ見よがしに生足を見せつけ、震々の腰に蹴りを食らわせる。表情を歪めたそいつはついに力尽きて霧散していく。
秋人の正面にいた妖もまた苦しそうな息遣いをしているように見える。時に仲間へと癒しを振りまき、臨機応援な立ち回りをしていた理央。彼女は隙を見て、またも炎の連弾を飛ばす。
ついには身体を燃え上がらせた妖は、蒸発してなくなった。
これで、残るは後にいた人物大の妖のみ。瑠璃は攻撃方法を切り替え、握り締めた大鎌、クレセントフェイトの刃の切れ味を増してから妖へと斬りかかる。
さらに、秋人が放った神秘の力を持つ水竜が震々の身体へと食らい付いていく。
「うぅ……うぁぁ……」
妖は自身だけとなったこともあり、逃げ出すことも考えたがもう遅い。羽琉が落とした雷がトドメとなり、呻く声は完全に途絶えてしまったのだった。
●今日は帰りましょう
妖、震々を全て討伐した覚者達。
一息つく覚者達だが、妖の出現もあって結局動けずにいた女子高生2人を発見することになる。
「今日のところは、家に帰った方がいい」
ほぼ同世代の瑠璃が促すと、御菓子が頷く。さすがに妖に囲まれ、恐怖に直面した状況で、さらに遊ぶことができるほど彼女達の神経は図太くなかった。
「こんなテンションで遊べないだろ」
今度は女子高生2人が首肯する。今日は帰ると了承してくれたようだ。
「無事でいてくれて、よかった」
羽琉が小さく呟く。夜遊びした結果、親などに叱られる可能性はあるだろうが、助かったのは喜ばしいことだ。
「身体も暖まったことですし、アイスでも買って帰りましょうか?」
そこで、美久がそんな提案をする。とはいえ、寒さを感じさせる敵との交戦の後だ。身体を冷やしたメンバーの多くは遠慮してしまうのだった。
京都府内某所。
『F.i.V.E.』の覚者達は、夜遊びする女子高生が妖に狙われると聞き、彼女達を守るべく、現場へとやってきていた。
「夜遊びなんて、楽しそうな響きですね!」
小学生の『Overdrive』片桐・美久(CL2001026)は、「僕も一緒に……」と言いかけ、同行する目上のお姉さん達に怒られそうと感じたのか、しっかりとお口をチャックしていた。ちなみに、名前だけでは良く間違われるが、読み方は「よしひさ」であり、彼は男の子である。
「夜は妖がうろつきやすい。昼より警戒すべきなんだが……、危なっかしいな」
「ま、俺も依頼で夜中に出歩いたりするからあんま言えねーけどさ。こういう世の中だから、ふらふら遊び歩くのも感心しねーよな」
『笑顔の約束』六道 瑠璃(CL2000092)はそう考えるものの。女子高生達の素行の悪さに関しては、人のことは言えないとやや自虐する。『守人刀』獅子王 飛馬(CL2001466)は小学生だが、依頼で夜に出歩くこともある。ただ、危険を省みることなく遊ぶことには同意しかけるようだ。
「夜は妖が動き回る時間なのに、何で出歩くかなぁ」
「遊びたい盛りの子供とはいえ、このご時世で遅い時間まで遊ぼうというのは命知らずねぇ」
こちらは、一行のお姉さんメンバー。せめて、明るいうちに一晩過ごす場所に移動すればよかったのにと、『五行の橋渡し』四条・理央(CL2000070)は嘆息する。一方、『ドキドキお姉さん』魂行 輪廻(CL2000534)はというと、くすりと笑ってこう続ける。
「ま、楽しい青春を送りたいって事で、多少は大目に見てあげるわよん♪」
良くも悪くも、自分に正直な輪廻。露出も大きく、色気漂わす彼女の姿に対し、男性陣は目のやり場に困っていたようだ。
「素行が少し悪いからと言っても、本来、生死に関わる事には関係の無い子達だよね……」
鈴白 秋人(CL2000565)は思う。誰が被害者になってもおかしくない今の日本。ただ、今回の女子高生達は、妖の犠牲になる必要はない筈だ。
「少なくとも俺の知る限りでは、出来るだけそういう被害は防ぎたい……」
(失敗すると、ひとが、死ぬ。みんな、自分が戦って傷つく覚悟なんかはしてるんだろうけど)
宮神 羽琉(CL2001381)は未だ、その覚悟はできていない。ただ、他人が傷つく状況に直面した時。自分はどう考えるのか、そして、どう受け止めるべきなのか。彼は逡巡してしまう。
発現する意味、夢見の予知。どうすればいいのか、答えを見出せずにいる羽琉。
「けど、動き出した以上は、見捨てられないから」
妖から被害者を救う為、彼は迷いながらも、仲間と共に依頼に当たるのである。
●妖、震々出現!
覚者達はまず、襲われるという2人の女子高生の姿を探す。
「やっぱ、外で思いっきり遊びたいなぁ」
その2人は、カラオケ店に向かうことがすでに予知されている。その道中を見張ることで、メンバー達は用意に彼女達を発見できた。
問題は、その女子高生達を狙う妖、震々達の出現だ。
飛馬は敵の不意打ちに備えるが、スキルの活性に問題があったらしい。この為、超直感のみで対処しつつ女子高生達を尾行する。
美久も上空に守護使役のラピスを舞わせて偵察を行わせ、周囲を警戒する。見つからないようにと女子高生から距離をとって後を歩いていたのだが、どうやらバレバレだったらしい。
「しぃー。僕達もこれから遊びに行く所だから……。先生には内緒にして、お姉ちゃん?」
我ながら、馬鹿っぽい口調だと自虐してしまうが、彼は我慢我慢と自制する。普段の口調だと、怖がらせてしまうと美久は自覚していたのだ。
飛馬と美久が2人で並ぶと、その弁解も違和感がない。とはいえ、自分達だけでないと知り、女子高生達は気を良くしていたようだ。
そこからさらに離れた位置で、他の仲間達も続く。
理央は不自然にならぬようにと、本を片手に読みながら、距離を保ちつつ歩く。
(本来なら、本を読みながら歩くのは危険なんだけど)
理央が考える通り、ながら歩きは危険なので、報告書に目を通す覚者の皆々様はくれぐれもご遠慮願いたい。
羽琉、瑠璃は鷹の目を駆使し、他メンバー以上に距離を取って女子高生達を追う。
尾行の方法など分からぬ羽琉は仲間と固まらないように、それでいて建物の屋根などで隠れながら飛行し、追跡する。
瑠璃も、相手を見失わないようにと気がけていた。
「ま、陽が落ちてくれば、少しは近づきやすくもなるか」
暮れなずむ空。周囲が暗くなり、瑠璃は暗視を使って距離を詰めていく。
秋人もピヨに偵察を行わせるが、彼は妖の捜索に重きを置いて、行動する。
「来たね……」
秋人は自らの治癒力を高めながら、それらの下へと韋駄天足で駆け出した。
すでに、カラオケ店付近までやってきていた女子高生達。予知とは違い、寒気を覚えるタイミングが遅れていたのは、妖……震々らが覚者達の介入を察していたからかもしれない。
「う、うう……」
現れた妖、震々。人間大の個体が3体と、やや小さな個体が2体。それらは女子高生を狙うべく迫ってきていた。
もちろん、その介入を覚者達は見逃さない。真っ先に駆けつけた秋人が女子高生の前に立ち塞がり、不意打ちを防ぐ。
「な、何や?」
目の前に現れる青白い人影と、秋人の姿に驚く女子高生2人。
「だーるまさんがーこーろんだ♪ 残念。待ち伏せてるのは、あなた達だけじゃないのよん♪」
そう告げて、妖の前に姿を現す輪廻。彼女は予めカラオケ店付近に先回りし、迷彩で身を隠して敵の出現を待っていたのだ。
最悪、女子高生が違う動きをする可能性も示唆していただけに、予定通りにいってしたり顔の輪廻は震々の1体を抑えにかかる。
「お姉さん達が魅力的だからって、お触りはいけませんよ!」
「ねーちゃん達、いいって言うまで俺らと一緒にいるんだぞ」
妖へと近づいてきた美久が仲間を庇いつつ、呼びかける。飛馬も一緒だ。
さらに、空からはともしびで明かりを確保しつつ羽琉が降り立ち、理央と一緒に女子高生を守るように妖の前に立ちはだかる。
「2人を今のうちに逃げさせろ!」
フリーの敵を抑える瑠璃の声に応え、ここぞと登場したのは、お姉さんメンバーの1人、ちびっ子先生、『音楽教諭』向日葵 御菓子(CL2000429)である。彼女は守護空間を展開し、妖の接近を防ぐ。
「わたしは五麟学園中等部の教師、向日葵御菓子っていうの。よろしくね」
御菓子は女子高生を保護の為に声をかける。そして、幼く見える自らの容姿を自認していた為、身分証を片手で示し、教師であることを彼女達へと示す。
「話は後ね……。あまりよろしくないのに目をつけられちゃってるから、今日だけ、わたしと一緒に帰路についてほしいの。……だめかな?」
手を合わせ、上目遣いで小首を傾げる御菓子に、愛らしさを覚える女子高生達。その願いを聞くことにしていたようだ。
「敵は、1、2、……5体。大丈夫です、行ってください!」
「お姉さん達! このまま僕と一緒に走ってくださいね!」
飛馬は敵の数が事前情報の通りと確認して避難を促すと、美久が女子高生の手を引いて御菓子と共に駆け出すのだった。
●狙われる女子高生の安全確保を
「う、うあぁぁ……」
嗚咽のような声を吐いてくる妖は、前面の覚者に取り付き、また吹雪を吹き付けてくる。どういう形で現れたモノかは分からないが、倒すべき敵であることは変わらない。
「皆、頼むぜ!」
女子高生を守る飛馬が、仲間達へと呼びかける。
相手は、ランク2……人物大の妖2体と、ランク1……小型の1体が前衛に、残りが中衛に位置取っていた。後ろのランク2が直接抑えられない状況にあったが、そこは人数で囲いをなしてカバーする。
(遠距離攻撃に加えて、貫通攻撃まで使ってくる相手だ。庇いながらは戦えない)
瑠璃が抑えるのは、人間大、ランク2の震々だ。こいつはつららで後方まで攻撃してくるという。だからこそ、完全に女子高生が現場を離れるまでは安心できない。
できる限り敵の移動を阻むよう位置取りながら、瑠璃は敵の頭上に起こした雲から雷を叩き落とす。
「敵は心霊系……。物理が通用し辛いから、私は少し相性が悪いかしらん?」
輪廻は不利な部分を分析しながらも、着物をはだけさせながら「それはお互い様かもねん」と笑う。露出の高い彼女だが、水の心で震々の与える寒気など意にも介してはいない。
「灼熱化の炎と私の水の心、あなた達の冷気で止められるかしらん」
そうして、彼女は色気を振りまき、体内に宿る炎を燃え上がらせて敵の侵攻を防ぐ。
隣のやや小さい震々には、美久が張り付き、吊り目の瞳で敵を鋭く見据えていた。彼は敵の足元から蔓を巻きつかせ、相手の身体を縛り付ける。
「お姉さん達を無傷で逃がす為に、足を鈍らせられれば、役に立つかもしれませんしね!」
美久は狙い通りに敵の体を縛り付けるものの。震々に足はないことを確認してしまうのである。
その戦場から、女子高生を避難させる御菓子と飛馬。
飛馬が飛んでくる敵の攻撃を、刀を器用に使って器用に抑える間、御菓子もまた彼女達を庇おうと立ち回る。
「わたしだって学生のときは、夜に遊んだこともあるもの、気持ちはわかるよ」
警戒心を抱かせないようにと、御菓子は優しく語りかけた。徐々に戦場から遠ざかりながらも、彼女はおおよその事情を女子高生達へと説明する。
「実はね、この辺で妖の目撃情報があったのよ……。信じられない気持ちはわかるけど、現実だったことはわかるわよね?」
御菓子が言う通り、実際に妖を目にした女子高生達はただ首を縦に振る。そんな彼女達へこれは内緒よと付け加えながら、念の為にと深層水の神秘の力を振りまく。
「ただ、夜暗くなると、妖じゃなくても若い子を狙うろくでもないのが、掃いて捨てるほど出てくるから……。気をつけなきゃね」
ウインクする可愛らしい教師の姿に女子高生達は思わず、御菓子の頭を撫でてしまうのである。
戦場に再び目を向ければ、覚者達は妖のブロックを続けていた。
(命が消えるかも知れない事を知っていて、放って置くわけには行かない)
秋人は前で敵を抑えながら、回復役となる御菓子の抜けた穴を埋めるべく、癒しの雨を降り注がせる。
(出来る限りの事は、最低限して最善を尽くすよ……)
そうして、彼は避難役の2人の合流を待つ。
他の仲間達は積極的に、震々へと攻め込んでいたようだ。
覚醒し、瞳を紅く染めた理央は最初、治癒力を高める香りを振りまいていた。そうして万全の対策を取った彼女は、拳大の大きさの炎を連続して撃ち放つ。
「初めて使う術式だし、使い勝手を試させて貰うね」
本来水行の理央だが、使う術式は実に幅広い。火行弐式スキルの威力を確かめようと撃ち放った火炎連弾。それらは手前にいた小型の震々へと命中し、火傷を負わせる。
「あぁ……、ああぁぁあぁあぁああ……」
半透明な身体であっても、しっかりと痛みを感じているのか、そいつは苦しみの声を上げる。
「見ているだけで悪寒が走るけど、撃たなきゃ」
相手は所謂、幽霊の類。恐ろしさを感じはするが、倒さないとこの戦いは終わらないと、羽琉は意を決する。
「奔れ、雷獣」
1体でも多く、一撃でも早く。そんな想いを込め、羽琉は起こした雷雲から激しい雷を叩き落とす。
それによって、全身に電撃を走らせた小型の震々は姿を消していく。
「早く終われば、傷つく人が少なくて済むよね」
羽琉はそうして、次なる相手に視線を傾けるのである。
●その震えを止める為
妖、震々はしつこく覚者達へと纏わりつき、身に纏う冷気を吹き付け、あるいは氷柱を飛ばしてくる。
しばらくそれらの攻撃を抑える前線の覚者達を、回復に回る秋人が支える。
そこへ、女子高生の避難を済ませた2人が合流する。御菓子は仲間を海のベールで包み込んで支援を始めると、秋人は攻撃に転じ、目の前の震々に波動弾を飛ばす。
だが、震々は怯むことなく、反撃に尖端を鋭くした氷柱を撃ち出してきた。
仲間が駆けつけて負担も軽減したものの。飛馬はそれに貫かれ、その身に凍傷を負わされてしまう。
「確かに、こんな奴らが増えたり強くなったりするようだと、一般人はたまったもんじゃねーよな」
放置すれば、妖も力をつけてしまう。今のうちに何とかしなければと考える飛馬は土を鎧のように纏い、ガードをメインで立ち振る舞う。
戦線に加わる美久は仲間の援護を受け、敵に軽口すら叩いてみせる。
「着物美人さんは素敵ですよね……! 次は是非、実体でどうぞ!」
美久は植物の大蔓をムチのようにしならせ、妖へと叩きつける。半透明の身体であるにも関わらず、傷口から血を流しながら、小型の震々は姿を消していった。
瑠璃も依然としてランク2の震々を抑え、敵前列の妖目掛けて雷を落とし続けていた。
「どんどんいくわよん♪」
前に立つ妖もかなり弱ってきている。輪廻はすらりと刀を抜いて攻撃……と見せかけて、着物の裾を捲り上がらせてこれ見よがしに生足を見せつけ、震々の腰に蹴りを食らわせる。表情を歪めたそいつはついに力尽きて霧散していく。
秋人の正面にいた妖もまた苦しそうな息遣いをしているように見える。時に仲間へと癒しを振りまき、臨機応援な立ち回りをしていた理央。彼女は隙を見て、またも炎の連弾を飛ばす。
ついには身体を燃え上がらせた妖は、蒸発してなくなった。
これで、残るは後にいた人物大の妖のみ。瑠璃は攻撃方法を切り替え、握り締めた大鎌、クレセントフェイトの刃の切れ味を増してから妖へと斬りかかる。
さらに、秋人が放った神秘の力を持つ水竜が震々の身体へと食らい付いていく。
「うぅ……うぁぁ……」
妖は自身だけとなったこともあり、逃げ出すことも考えたがもう遅い。羽琉が落とした雷がトドメとなり、呻く声は完全に途絶えてしまったのだった。
●今日は帰りましょう
妖、震々を全て討伐した覚者達。
一息つく覚者達だが、妖の出現もあって結局動けずにいた女子高生2人を発見することになる。
「今日のところは、家に帰った方がいい」
ほぼ同世代の瑠璃が促すと、御菓子が頷く。さすがに妖に囲まれ、恐怖に直面した状況で、さらに遊ぶことができるほど彼女達の神経は図太くなかった。
「こんなテンションで遊べないだろ」
今度は女子高生2人が首肯する。今日は帰ると了承してくれたようだ。
「無事でいてくれて、よかった」
羽琉が小さく呟く。夜遊びした結果、親などに叱られる可能性はあるだろうが、助かったのは喜ばしいことだ。
「身体も暖まったことですし、アイスでも買って帰りましょうか?」
そこで、美久がそんな提案をする。とはいえ、寒さを感じさせる敵との交戦の後だ。身体を冷やしたメンバーの多くは遠慮してしまうのだった。

■あとがき■
リプレイ、公開です。
妖の対処、お疲れ様でした。
MVPは
幅広い戦況を見据えて依頼に当たり、
仲間達を支えてくれた貴方へ。
女子高生達も、
さすがに夜遊びは懲りたことでしょう。
皆様も、危ないですから、
夜に出歩くのは程ほどに……。
参加された皆様、
本当にありがとうございました!
妖の対処、お疲れ様でした。
MVPは
幅広い戦況を見据えて依頼に当たり、
仲間達を支えてくれた貴方へ。
女子高生達も、
さすがに夜遊びは懲りたことでしょう。
皆様も、危ないですから、
夜に出歩くのは程ほどに……。
参加された皆様、
本当にありがとうございました!
