パーソナルマインド・ブレイク
【CTS】パーソナルマインド・ブレイク


●選択肢と分岐点
 能亜財団の残した資料と装置。
 その二つによって、メンバーの行動は分かることになった。
 『可能性交換棺を使ってあちら側へ行くこと』
 『東京タワーへ向かって能亜財団の企みを止めること』
 この二つにである。

 棺を使用して目覚めた逝が語ったのは、『あちら側』の事件である。
 説明を要約して語ると、こうだ。
 可能性交換棺とは実質的には強制睡眠装置だが、眠っている間は過去をやりなおすような夢をみることができる。これは古妖の関わった技術だというが、茶袋や狐窓など実際にそういった能力をもつ妖怪も珍しくない。
 それに、夢で過去をやり直したからといって今の現実が変わるようなことはない。だが『あのときこうしていたら』という妄想を叶える道具として強くもてはやされたそうだ。
 だがここからが問題だった。
 この装置を繰り返し使用した人間が次々に著しい脳障害を起こしたのだ。並列した複数の記憶を同時保管したことで脳の許容量がオーバーしたというのが専門家の意見である。
 そこで施設を移転。脳のオーバークロックを起こした人間を利用し、コンピューターで言うところの並列処理を行なうことで負担を軽減するという対策がなされた。
 だがそこから、事態は大きく悪化した。
 使用者が次々に『ネジレ』と呼ばれるバケモノに変容したのだ。
 このネジレは積極的に人間を殺害し、殺害された人間はネジレになるというゾンビスリラーさながらの事態に研究所の人間はたちまち全滅。古妖によるハザード現象となったのだ。
 その原因は夢を並列処理している部分にこそあると逝は主張した。
 止める方法はただひとつ。棺を利用して同じ夢の中へと落ち、原因となる人間を殺すことだ。
「その人間こそが雛代供犠、か」
 ここからは共通夢の中、いわばリアルなシミュレーターでの話だ。
 雛代供犠が六体のOSEによって守られている。このOSEは覚者に似た異能を使い、同等程度の戦闘力をもつという。
 夢では自分たちは今と同じだけの力を使えるので、恐らくガードを突破することは難しくないだろう。そして雛代供犠は戦闘能力的には一般人だ。殺すことは難しくない。

 一方で、頼蔵の見つけてきたZプランというファイルから判明した事態にも対応しなければならない。
 能亜財団は『可能性交換棺』によるOSEの発生を利用価値のある怪異現象としてとらえ、より大規模な実験を行なおうとしていた。
 それが東京タワーの改修計画である。
「東京タワーは電波封鎖状態の現在、ただの観光施設となっている。警備もかなりゆるい。能亜財団の覚者なら容易に突破できてしまうだろう」
 だが今からなら、改修工事を行なうより早くこの作戦を潰すことが出来る。
 偽の警備員などを配置し表向きには改装休業中にみせかけた東京タワーに突入。能亜財団の覚者を倒し、拘束するのだ。


■シナリオ詳細
種別:シリーズ
難易度:難
担当ST:八重紅友禅
■成功条件
1.雛代供犠の殺害
2.東京タワー改修計画の阻止
3.なし
 シリーズ第三回。これを含めてあと三回です。
 内容が複雑になってきたのでざっくりとまとめます。

●ネジレ事件阻止側
・可能性交換棺を使って夢へと入る。
 ※無事なチャンバーは一つだけでしたが、過去に白面鬼の施設から回収したチャンバーが応用できます。合計で6人まで可能。
 ここからは夢世界での行動になる。
・あおぞら記念病院を舞台に、6人のOSEと戦闘。
 このOSEは刀や銃器などで武装し、覚者に似た力を使う。土行的なのが3、木行的なのが1、火行的なのが2という構成です。
 こちらは病院の外から攻め込み、籠城しているOSEたちを倒す形になります。
・OSEを全て倒し、守られている雛代供犠を殺害しきればクリアとなります。
 ※睡眠状態は任意で解除できるため、いつでも離脱することができます。
 ※夢とはいえ現実と同じスペック、同じルールで戦闘します。

●東京タワー改修阻止側
・自動車で東京タワーへつけ、内部へ突入します。
 その際警備員を黙らせますが、相手は非覚者なので容易に突破できるでしょう。
 施設は休業中なので観光客も入っていません。
・屋内エレベーターを使って上部へ移動。
 改修工事の準備をしている覚者たちと戦闘になります。
 ここに配置されている覚者は4人。能亜財団からの救出作戦で戦ったメンバーと一部が同じです。
 盾で武装した土行暦(名前不明)、ナックルで武装した水行獣(名前不明)、銃で武装した天行現(名前:イエロウ)、ナイフで武装した木行械(名前:ブラウン)。
・四人を戦闘不能にできれば後は非覚者スタッフだけなので、投降を求められます。そう多くは無い筈なので、全員を拘束して状況を終了します。

●調査行動についての補助
 今回のシナリオでは調査行動に補助ルールを設けます。
 EXプレイングに書き込んだ調査行動のみ、『完全成功(的確に真実を探り当てる)』か『無効(行動によるデメリットも無し)』のどちらかで判定されます。(書き込めるのは一行動まで)
 ※注意! 逆に通常プレイングでの調査行動は比較的失敗しやすくなります。
状態
完了
報酬モルコイン
金:1枚 銀:0枚 銅:0枚
(2モルげっと♪)
相談日数
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
公開日
2016年10月16日

■メイン参加者 8人■


●アウトサイドノイズ:帝都電波塔防衛作戦
 銃に弾を込める。エレベーターの表示が近づいてくる。
 皆扉の前に固まり、一斉に構えた。
「開いた瞬間に撃つんだ。いいな!?」
「分かってる。蜂の巣にしてやる……化け物め!」
 ベルの音。開く扉。
「■■■■!」
 エレベーターの向こうから現われた『ネジレ』が電撃を放ち、たちまち我々の七割を壊滅させた。
 薄れ行く意識の中で、思うことはただ一つ。
「皆さん。頼みます……世界を……」

●東京タワー制圧作戦
 車の通りもある、昼の東京タワー前。
 暇そうにする警備員に、少年――『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)が話しかけた
「すみません、今日ってここ休みなんです?」
「え? ああ……」
 応えようとした警備員だが、急に眠気に襲われてよろめいた。
「すみません。行かなきゃいけないんです」
 奏空は警備員の後ろに回り込むと、素早く手刀を叩き込んだ。

 非覚者を気絶させるのは、実はそう簡単なことではない。
 覚者と非覚者の戦闘力の差についてはどこか親切な人に語って貰うとして。
「これだけ大がかりに動いたのだ。実験で何かしらの確証を得たのだろう。……少しばかり暢気にしすぎたか?」
 警備員を気絶させた八重霞 頼蔵(CL2000693)が、東京タワーの一階の土産屋へと引きずってきていた。
 奏空と『溶けない炎』鈴駆・ありす(CL2001269)も同じように倒した警備員を引きずり込んでいる。
「だがついに追いついた。今回はこちらが攻める番、か」
「それにしれも、能亜財団もほんと怪しいわね。ただでさえややこしい状況だってのに」
 エレベーターのベルが鳴り、扉が開く。
 急いで振り返るが、誰も乗っては居なかった。
 一度上に行ったエレベーターが下りてきたのだろう。
「……準備はいい?」

 地上からはるか高く、高速で登るエレベーター。
 奏空は深く深呼吸をして、攻撃の構えをとった。
 ベルの音。開く扉。
「行きます!」
 奏空は開幕から雷獣を放ち、警戒していた作業員たちをまずは一掃。
 そのまま飛び出すと、駆けつけてきた青年と目が合った。
 金髪に眼鏡をかけた男性だ。特殊なメリケンサックを握り込むと、奏空めがけて駆け込んでくる。
 だが奏空の方が早い。先に踏み込み、斬撃を叩き込んだ。
 吹き飛ぶ青年。
 一足遅れて盾で武装した眼鏡少女、くわえてイエロウとブラウンが駆け込んできた。
「誰だか知らないけど、さっさと帰って!」
「悪いけど、あんまり時間はかけたくないのよ」
 ありすは大きく手を翳すと、火焔連弾を発射。
 銃撃をしかけてきたイエロウと直接の撃ち合いになった。
 ナイフを手に間をすり抜けるブラウン。
 対抗して間合いを詰める頼蔵。サーベルとナイフが中間でぶつかり合い、直後に頼蔵は銃を抜いて連射。
 直撃をくらったブラウンは数歩下がったが、近くにあるパイプ椅子を蹴飛ばして追撃を妨害。
 その間に眼鏡少女が両手に構えた盾を翳し、思い切りぶつかってきた。
 サーベルを押し込むようにしてこらえる頼蔵。
 あまりの衝撃に、彼の身体が僅かに引きずられる。
 奏空は叫んだ。
「イエロウさん! あなたたちの目的は――」
「うるっさい! 話しかけるな!」
 飛来した銃弾が胸に直撃。奏空は強く吹き飛ばされ、後ろに積まれた段ボールの山へとぶつかった。

●アウトサイドノイズ:うぼつせ島病院防衛戦
 病院を出て行った岩虎や鮫島さんたちは、それ以降戻っては来ませんでした。
 私に出来たことといえば、怪我をした雛代さんを抱えて病院内に立てこもることだけで……。
 震える私の肩を叩いて、白髪の彼が言いました。
「来るよ。今度のは強そうだ」
 割れた曇りガラスから、六体の『ネジレ』がこちらへ向かってくるのが見えました。
「大丈夫だよっ! あんな化け物ぜーんぶやっつけて、みんなのこと、僕が守るからね!」
「……チッ」
 にこやかに励ましてくれる少年。煙草を噛み潰しながら黙るお兄さん。
 そんな私たちを見て、妙なスーツ姿のおじさんが笑いました。
「ハハハ、よおし。それじゃあおっさん、珍しく張り切っちゃうぞう」

●雛代供犠殺害計画
「………………」
 刀を引きずるように持ち、『5057-1』緒形 逝(CL2000156)は沈黙していた。
「緒形さん、あの時の約束、覚えてますか?」
「……」
「緒形さん」
「ああ、すまない。集中してるんだ。帰ってからでもいいか?」
「……はい」
 納屋 タヱ子(CL2000019)は強く自分の手を握った。
「ループした対象者は他者から正常に認識されなくなる。そして私たちがループを脱する唯一の方法は、雛代供犠を殺すこと……」
「そうだよ! OSEたちはきっとみんなをあっちの世界に連れて行こうとしてるんだ。そんなの、絶対に許さないよ。みんなを、僕が守るんんだ」
 アクセルを踏みすぎた自動車のように、強くまっすぐな意志をもって刀を握り込む『鬼籍あるいは奇跡』御影・きせき(CL2001110)。
 その一方で葉柳・白露(CL2001329)はどこか愉快そうな様子だった。
「ボクが現実なのか、夢のボクが現実なのか……なんてね。ねえ、あっち視点だと、ボクらがOSEに見えていたりするのかもね。あっちのOSEはボクだったりして。もしそうならボクらはループしたってことになるのかなあ」
「何でもいい。俺らがやるべきことは一緒だ。生き延びるために、雛代供犠を殺す。その邪魔をするのが仮に俺自身だとしても……」
 拳を振り、覚醒する『ゴシップ探偵』風祭・誘輔(CL2001092)。
 腕をグレネードランチャーに変化させると、病院めがけて走り出した。
「ぶっ殺す……!」

 二刀流のOSEが階段の踊り場から全段抜かしで飛びかかってくる。
 白露ときせきはそれぞれ抜刀。繰り出された刀を自らの刀で受け止める。
 パワーは拮抗。わずかにこちらが上。
 落下衝撃を引き下げた片足でこらえる二人。回り込む逝。
 背負った刀を跳ね上げると、両手で強く握り込む。
 スイング――の途中で割り込んできたOSE。盾の側面を滑って跳ね上げられる。
 ならばとOSEにタックルを仕掛け、押し倒す逝。
「そこを動くんじゃねえぞ!」
 誘輔はグレネードランチャーに特殊弾を装填、発射。
 集団の中央に落ちた爆弾がコンマ一秒のラグを挟んで炸裂。
 OSEたちを一斉に吹き飛ばしていく。
 爆発を突き抜けて飛びかかってくるOSE。空中で体勢を切り替え、蹴りつけてくる。
 ランチャーを翳してガードするが、思い切り蹴飛ばされた。
 追撃を仕掛けようとするOSEにタヱ子が向かっていこう――とした直後、背後からフルフェイスヘルメットを被ったOSEが出現。
「バックアタック!? 回り込むような場所はなかった筈――!」
 と考えつつ、床を透過してショートカットしたのだとすぐに気づいた。
 身を反転――しかけた所で首を掴まれ、振り上げられる。
 頭から地面に叩き付けられた。
 床が抜けるかというほどの衝撃に頭がゆすられる。脳が潰れなかったのは空中でなんとか衝撃を逃がすように身体をひねったからだ。
 起き上がろうとした瞬間に足首を掴まれ、再度投げられる。
 窓から外へ。二階分の高さを舞い、地面をバウンドするタヱ子。
 バウンド直後に両足と腕で強制着地。即座に走り出す。

 戦いは激化の一途をたどる。
 白露はOSEと打ち合いながら、自分の中の全てがぐちゃぐちゃにかき混ぜられているような感覚を味わっていた。
「ははは、はは、おもしろいなあ、おもしろい! 一度やってみたかったんだ、こういうの!」
 OSEの右腕を強制的に切断。
 と同時に自分の腕が千切れて飛んでいく。
 心臓部に突き刺す。
 と同時に心臓が破裂した。
 まったく同じ動きをするゆえか、それとも運命か。白露は血を吐き出し、目を見開き、OSEの首に刀を押しつけた。
「逃がさないよ。ここまで来たんだから」
 首を切り取りながら蹴り飛ばす。
 階段の段差にぶつかって息絶えるOSE。
 それを飛び越えるように走る誘輔。
 三階へ到達した途端、パイプベッドが飛んできた。
 直撃をさけるためにガード――した直後に足下に転がってくるグレネード。
「やべ――っ!」
 爆発、直撃。
 壁に叩き付けられた誘輔。胸にねじれたパイプが刺さっている。
 引き抜いて投げる。
 はねのけて突き進んでくるOSE。
「こいつ、心が読めねえ。なんなんだテメェは……!」
 ランチャーからエネルギー弾を乱射。
 そのうちの一発が直撃し、OSEは仰向けに倒れた。
 駆け込んでくる二刀流のOSE。
 それを追いかけて走るきせき。
 向かう先はどこか。病室の並ぶ、壊れた格子の向こうだ。
「まてっ!」
 きせきは種子を無数に詰めたネットを握りしめ、ブラックジャックの要領で振り回して投擲。
 後頭部で連鎖炸裂した種子に弾かれ、OSEは転倒した。
 追いつき、刀を突き立てるきせき。
 一度では死なないかも知れない。
 二度でも死なないかも。
 三度、四度刺してもわからない。こんな見た目で、死んだかどうかなんてわからない。
 もっと刺して確実に、確実に殺さなきゃ。
 そうしているうち、逝がゆっくりと三階へ上がってきた。
 ヘルメットをしたOSEを投げ捨てる。既に力尽きていた。
 満身創痍の白露。
 足や腕を引きずって歩く誘輔。
 やがて途中のOSEを倒してきたタヱ子が合流し、互いに頷きあった。
 全てのOSEは倒した。あとは雛代供犠だけだ。
 ひとつひとつ病室を確かめ、そのうちの一つを開く。
 そこに、雛代供犠はいた。
 雛代供犠は喪服の女性だった。
 既に死んでいるのではと思うほど顔は青白く、被ったベールや無表情のせいで死体や人形を思わせる。
 椅子に腰掛けての読書だが、本は『人間失格』。
 本は『人間失格』。
 いまドア一枚むこうで戦闘が起きているというのに、本から目すら離さない。
「あなた方が現われることを――」
 そこでようやく本から手を離した。
 重力に引かれて落ちる本。『置く』とか『閉じる』という行為をせず、ただ捨てたようにすら見えた。
「予め知っていました」
「えっと……」
「あなた方には、簡単なことだったでしょう」
 タヱ子が困っていると、逝が詰め寄った。
「雛代供犠。あんたの容れ物はどこにある」
「聞く必要がありますか」
「無いとは言わせない」
「あなたがたの、すぐそばに」
「……わかった」
 それだけで充分だったのか、逝は引き下がった。
 誘輔がやってくる。
「おい、俺はこの事態をどうにかしてえ。洗いざらい教えてくれ」
「……その時間はないと思いますが」
「どういうこ……痛っ!」
 誘輔は強烈な頭痛に見舞われた。
 まるで『分かってはいけない事実』に気づいてしまったかのように。鼻血が流れ出る。 それまでキイキイとわめいていたOSEたちの声が、正しく日本語として認識できてしまったように、彼には思えた。
 だがそれを思い出してはならない。自分を保てなくなる。
 首を振って質問を続けた。
「こっちとあっちのネジレを正す方法はあるのか?」
「ネジ……? ねえ、それはなんのこと? 『どこでそんな名前を聞いたの?』」
 白露が聞いてきた。何を言っているんだという顔で振り返る誘輔。
「今更どうした。今さっき倒してきた連中の……い、いってえ!」
 頭が割れるように痛い。立っているのも難しい。
 そんな彼の様子を、一切どうでもいいというように雛代供犠は語る。
「ねじれ現象は病気や外傷ではありません。あくまで他者からの認識障害。あれは人間です。気づいている筈だと、思いましたが」
「……そりゃあ、どういう」
「世界を何重にも経験した人間を、人間は人間と認識することはできません。おぞましい何かとして、拒絶するほかありません。『そう見えているだけ』ですよ」
「……ち、ちがうよ。ちがう」
 きせきが耳を塞いで震えている。無視して話を続ける白露。
「自分自身がOSEになって現われるなんてこと、あると思う?」
「……それは、私の把握する事実ではありませんね。『別の要因』が存在しているとしか言えません。それよりも――」
「もういいでしょ! この人は殺すしか無いんだよ! いつまで喋ってるの!? 皆がやらないなら、僕がやるから!」
 きせきが刀を抜いた。
「待ってください、殺さなくても方法があるかも――」
「ないよ! OSEはみんなを浚っていっちゃう悪いオバケなんだ! この人を殺さなきゃ皆が危ないんだもん! だから、殺さなきゃだめなんだよ!」
「させません!」
 タヱ子はきせきを無理矢理蹴飛ばすと、雛代供犠の手を取って走り出した。
 がたんと転倒する雛代供犠。どうやら足が動かないようだ。
「……これ、って」
「終わりだ。終わりにする」
 鎗輔が、重いランチャーを高く振り上げた。

●古妖排除計画
「邪魔よ……!」
 ありすは柱を遮蔽物にして銃弾をよけると、横っ飛びになりながら火弾を連射。
 盾で武装した相手を打ち倒すと。そのまま転がって膝立ち姿勢からのさらなる連射。距離を詰めようとしたナックル装備の敵を撥ね飛ばした。
 強化ガラスにぶつかってずり落ちる。
 残るはイエロウと、ナイフで武装したブラウンだけだ。
 ブラウンが距離を詰めようとしてくる。割り込む奏空と頼蔵。
 ナイフの斬撃を刀で強制的に打ち払う奏空。生まれた隙。銃を半身に構える頼蔵。
 銃を連射。
 三段階に身体を踊らせたブラウンはそのまま背後の段ボールの山へと突っ込んでいく。
 イエロウは、銃を構えたまますり足で距離を取り始める。
「今からでも遅くないわ。攻撃をやめなさい。」
「そっちこそやめてくれ! OSE現象を何に利用しようっていうんだ!」
「ど素人に言って理解できるとは思わないわ。共感なんてなおさらよ。いいから! 黙って、帰れ!」
「残念だが、それは無理だ」
 頼蔵はサーベルを垂直に立て、ゆっくりと歩み寄る。
 耐えきれずに銃撃を放ったイエロウ。飛来する弾を打ち払い、頼蔵はダッシュで距離を詰めた。
 額に銃を押し当てる。
「全て話して貰う」

 拘束した能亜財団の覚者たちを個室に詰め込み、暫くしてから一般の作業員たちも別の部屋に詰め込んだ。
「何か分かった?」
 作業を終えたありすに、奏空が尋ねてきた。
 一度感情探査を嘘発見器代わりに使おうとしたありすだが、奏空が過去の経験からそれは勘違いを起こしやすいから辞めた方がいいととめられたので、結局は率直に尋問するしかなかったのだが……。
「アタシにはさっぱりよ。けど録音はしたから、後で八重霞サンに聞かせるわ」
「そっか……」
 今回、調査に関して奏空はあまり有効に動けなかった。戦闘も片手間になってしまったので、あまり奮ったとはいえない。しょんぼりとしていたので、ありすは大雑把に慰めた。
「大丈夫よ。必要なものは集まってるはずだから」
「……そのようだ。この場を押さえられたのが決定的だったな」
 頼蔵は『時間を無駄にしたくないのでな』と言ってノートに必要な内容をまとめていった。
「OSE現象は認識障害のひとつだ。人間を人間として見られなくなる。逆もしかりで、必ずお互いを排除しようと動くようになるようだ。『相手は人間だ』とは、ゾンビスリラーで述べすぎていて陳腐化しているか……」
 重要なのはここからだ。
「ただし全人類がOSE化したならば、強い共感によって互いを尊重し合う関係を生むことが出来る。共感から外れるのは人類では無い、動物とも言えぬもの……つまり『古妖』だ」
「古妖……じゃあ能亜財団の目的って、古妖を人類社会から排除することだってこと?」
「『科学信仰で維持されている国家社会に古妖というくさびを打つことで、世界は崩壊してしまうだろう』というのが彼らの主張だ。平たく述べると、古妖は世界を壊すものと考えているのだろう」
「八重霞さん、このことを皆に知らせなきゃ! 今から施設にいって……」
「そんな時間はない。まずは資料を運び出して、ファイヴに持ち帰らなければな」
「……はい」
 奏空は再びしょんぼりとして、書類の束を持ち上げた。
 その中に、ある単語を見つける。
 『蒐囚壁財団 Aランク機密資料 ■■■■-■■■ チルドレンメーカー』

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし




 
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