<初心者歓迎>ゴーストホテル大騒動 妖討伐作戦
<初心者歓迎>ゴーストホテル大騒動 妖討伐作戦


●妖討伐作戦
「皆、よく集まってくれた。今回はAAAから委託された妖討伐作戦についてもらいたい。
 といっても危険性は低く、戦闘経験の浅い覚者でも安心して戦える敵のようだ。
 実戦経験を積むのに丁度言いだろう。
 また、熟練の覚者も戦闘経験の浅い者に基礎知識を教えるなどして引率になってもらいたいとも考えている。
 皆、ふるって参加してくれ」

 というように中 恭介(nCL2000002)が説明したのは、ある廃墟のホテルだった。
 幽霊が出ると評判のホテルだが、ここに現われたのは心霊系妖、ランク1だ。
「熟練者にはもう常識ではあるだろうが、心霊系妖は現場にただよう残留思念などが妖化したものだ。
 妖はネコにもシャモジにもとりついて凶暴な妖にしてしまう。今回のケースも、元の残留思念に関わらず凶暴な妖になっているだろう。
 更に言えば、その場で死んでいない人や生きている人の妄執などからも発生するというのも特徴だ。
 今回出現している妖はかつて従業員だった者たちの思念が妖化したものと考えられている。西館、東館、北館の三つに分かれ、それぞれの妖を殲滅してもらいたい。
 これに加えて別館に比較的強力な妖も出現している。最後に3チームで合流し、これを倒して欲しい。
 詳しいことは、配った資料を読んでくれ。
 では、頼んだぞ」

 


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:八重紅友禅
■成功条件
1.全ての妖の討伐
2.なし
3.なし
●シチュエーションデータ
 周辺被害や民間人の立ち入りを警戒するべく夜間に作戦を行ないます。
 照明効果については後のトピックスをご覧ください。
 ホテルの建物はどれも老朽化が進み、壁や床が若干壊れやすくなっています。とはいえ元がホテルという都合上歩くだけで抜けるようなことはないでしょう。足場に関するペナルティも特にありません。安心してどたばたやってください。
 それぞれ3階建て。1フロアが狭いので、割とサクサク進むことが出来ます。
 別館は小さなコンサートホールになる予定だったようですが、建造中のまま破棄されています。吹き抜け1フロアのみです。

●エネミーデータ
 心霊系妖ランク1。ホテル従業員の格好をした妖が出現します。
 基礎能力の低さから、特殊・物理攻撃の両方が同じくらい効きます。
 基本的には道具を使った近接格闘を行ない、たまにものを投げてくる程度です。どれも単体攻撃に固定されています。
 数は不明ですが、向こうから勝手に集まってくるので一通り巡回すれば取り逃しは無くなるでしょう。

 別館では無数の心霊系妖が合体したような巨大な妖が出現します。
 こちらは心霊系妖らしく物理攻撃が聞きづらいので特殊攻撃をメインに据えましょう。
 攻撃方法は主に以下の通り。
 ・廃材を投げつける:物遠列
 ・掴んでどこかに叩き付ける:物近単
 ・呪いのいぶき:特近列【呪い】

●照明効果の判定
 現場が暗いということで視界に関するペナルティを設定しています。
 戦場は非常に暗いですが、PCたちの工夫によってペナルティを回避することができます。
 判定は『どれくらいよく見えるか、明暗の死角は生まれるか、その状態で動きやすいか』を基準に(今回は)三段階で行なうことにします。
 以下、判定結果の例となります。
・視界レベル0:命中-20、回避-5
・視界レベル1:命中-15、回避-3
・視界レベル2:命中-10、回避-1
・視界レベル3:命中-5
・視界レベル4:ペナルティ無し
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(5モルげっと♪)
相談日数
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
9/9
公開日
2016年09月06日

■メイン参加者 9人■

『若葉ノ陰陽師』
矢萩・誠(CL2001468)
『サイレントファイア』
松原・華怜(CL2000441)
『ストレートダッシュ』
斎 義弘(CL2001487)
『Overdrive』
片桐・美久(CL2001026)

●西館討伐記録
 これまで少なくない数の依頼をこなしてきた『巖心流継承者』獅子王 飛馬(CL2001466)が、西館担当チームの顔ぶれを見たときの感想をきわめて短く述べるなら。
「なんだか濃い奴らに当たっちまったな」
 である。
 腰に手を当て、目を大きく見開いて胸をそらす『残念系陰陽師』矢萩・誠(CL2001468)。「俺は陰陽師――練武矢萩流次期当主、矢萩誠だ! なに、妖退治など専門家の俺に任せておけばいいんだ、あんたらは!」
「まあ、とっても頼もしいですわ。共に頑張りましょうね」
 話を半分も聞いていないようなテンションで小首を傾げて笑う添木・小百合(CL2001488)。
 ファイヴという奇人変人のサファリパークみたいな所で軽くもまれた飛馬は、彼女たちに『常識で接したらヤバイ人』の気配を感じて、スッと半歩だけ引いた。
「よろしく」

 元は客間だったらしい西館はむき出しのコンクリートにスプレー缶による落書きがびっしりと広がり、廃墟の廃墟らしさを浮き彫りにしていた。
 飛馬は片手で懐中電灯を握り、聞き手で刀を構えるというフォームでじりじりと歩を進めていく。あえてアテンドスキルの『ともしび』を使わない作戦だが、脇や腰、頭にライトを接続固定できるタクティカルグッズの必要性をひしひしと感じていた。
 それに指向性の光というのもなかなか面倒なものである。
 通路は基本的に直線だが、ドアが枠ごと外れた客間が向かい合わせに存在している分、右か左かのどちらかに勘を絞って確認する必要があった。先頭を行く飛馬は特に狙われやすいので、勘を外すと奇襲を受けやすい。飛馬はこれを第六感を働かせることで対応していた。
「――来るぞ!」
 刀を叩き付けるように繰り出し、側面からの攻撃に対抗。妖の叩き付けてきたモップを無理矢理跳ね上げる。
 そんな彼の背後から叩き付けられるレンガ。
 軽く視界がねじれるが、歯を食いしばってこらえる。
 無理に対応せずとも仲間が倒してくれるのを待てばいいからだ。
「もっぺん死ねェ!」
 が、こんなこと言う仲間に覚えはなかった。
 懐中電灯と共に振り向くと、小百合が妖の顔面を銃のグリップで殴りつけ、よろめいたところを壁際まで押し込み、口に銃口を突っ込んだ。
「泣きわめきなさいなクズども! アハハッ!」
 妖の脳天をぶち抜いた直後に肩越しに三発発砲。
 背中を狙おうとしていた別の妖の頭部に種子弾がめり込み、内側から破裂した。
「……」
 小百合は序盤は大人しい雰囲気だったが、途中から人が変わったように暴れ回っていた。
 多分深く突っ込んだらダメなやつだと思って飛馬はスルーした。
 一方の誠はスルーしきれずにカタカタしていた。
「ヒィッ、み、味方なのに……」
 とか小声で言っていた。味方の方がどうかしてるというF.i.V.Eあるあるである。
 そんな誠の頭上から飛び降りてくる妖。
「ヒッ!」
 お化け屋敷でも戦場でも人間の驚くツボはみな同じだ。安心した所に来るもう一発。誠はビクついて思わず顔を庇ったが、それでは妖のやりたい放題だ。
「やべえ!」
 飛馬が誠を突き飛ばすように飛びかかった。
 包丁で背中を切りつけられた飛馬がごろごろと転がり、誠は壁にぶつかってよろめいた。
「撃て!」
 伏せたまま叫ぶ飛馬に気づいて慌てて印を結ぶ誠。
 術式を起動させると、周囲に激しい雷を発生させた。
 妖が断末魔を残して消滅していく。
 くるくると銃を回してホルスターに戻す小百合。
 誠は壁に頭をごつごつ叩き付けていじけ始めた。
「うう、俺は次期当主なんだぞ。庇うなよ! どうせお前らも出来損ないだと思ってるんだろう!?」
「オイオイ……」
 助けを求めて小百合をチラ見するが、小百合は知ったことじゃないという顔でずんずん先に進もうとしている。
 飛馬は顔を覆って呻いた。
 物理的なフォローだけでなく、精神的なフォローまで要するとは。

●北館討伐記録
 斎 義弘(CL2001487)は人懐っこそうな顔で手を出した。
「これが初めての仕事だ。精一杯頑張らせて貰う。よろしく!」
 表情筋はもとより、首や手首からスポーツマンのようながっしりとした印象が窺える。色も黒く、夏場というだけあってより真っ黒な顔をしていた。
「おー」
 対する十河 瑛太(CL2000437)は体育会系の空気に若干気圧されている様子だった。倍以上生きている男性から部活の先輩みたいな接し方をされると流石に対応しづらい瑛太である。
 そんな様子をぼーっとした様子で眺める大辻・想良(CL2001476)。
 自分の立場の置き所を探っているようでもあり、F.i.V.Eの気質を計っているようでもあった。年若い女子中学生である。義弘と瑛太は改めて顔を見合わせて、無言の内に何かを決めた。
「俺が敵の攻撃を積極的に弾きに行くから、それを片っ端から殲滅してくれ。三人とも暗視持ちだから問題ないよな。よし、行こう!」
 リードする形で北館の扉を引き開ける義弘。
 こんな状況でも無ければありえないような取り合わせと、シチュエーションだった。

 暗所での戦闘における暗視スキルの有用性はもはや語るまでも無い。
 二十年前のナイトスコープはカメラのフラッシュで目が潰れるなんてことがあったらしいが、暗視スキルにそれはないし、外見からはその状態を知られにくい。
 相手が闇に潜んでアドバンテージをとっていると思っている所で逆にアドバンテージを握れるというのはきわめて有利な状態である。
 なので、攻め方も強気だ。
 客室の並ぶ通路をずんずんと進み、義弘は出てくるそばから対応するというシンプルな作戦をとった。
 ドアを破壊して飛び出してくる浴衣姿の妖にメイスを叩き込み、逆側から飛びかかってきた子供の妖を盾ではねのける。
「今だ!」
 義弘の合図で飛び出す瑛太。
 刀を両手でしっかりと握り込むと、妖を腰から真っ二つにして駆け抜けた。
 ブレーキはかけずに壁を蹴って飛び、逆側の壁を更に蹴りつつもう一本の刀を出現させる。
「重力と、テコ――」
 頭の中で理想的な人間そのフォームを思い描きながら刀を上段から叩き込む。
 妖の頭を半分削って、残りは壁をがりがりとえぐり取っていく。
 首を振って三半規管を整える。足を止めて右へ左へ棒を振っているだけなら簡単だが、自分の身体がクルクル斜めに回るとそう簡単ではない。
「ヤり逃した。たのむ」
「はい」
 想良は手のひらを翳してエアブリットを連射。空圧の弾が妖を貫通して壁や床を削っていく。
 消滅していく妖を確認して、続けて周囲を確認。
 『近くに敵はもういませんよ』という顔をする想良に、義弘は頷くことで返答とした。
「狭いところが多い。後ろから攻撃されないように気をつけておいてくれ。じゃあ、次だ」

●東館討伐記録
「ゴーストホテルね……」
「いかにも夏みたいでワクワクします。って、不謹慎でしょうか?」
「さあ、僕にはどうとも」
 篁・三十三(CL2001480)はサングラスを片手で開いた。しかし装着することなく手を下ろす。
 目の色を変え、翼を広げた。
「ターゲット心霊系妖ランク1。これから全妖の討伐を行ないます」
「はい、了解ですよ」
 『Overdrive』片桐・美久(CL2001026)はフラッシュライトを腰にくくりつけた。身体を振るとライトがかなりブレるので、腰ベルトに通す形の固定ホルダーでもあればよかっただろうかと思ったが、今更無い物ねだりも大人げない。前方向を除いた敵の対応は直感任せでどうにかするしかない。
 そんな彼らの一方で、『サイレントファイア』松原・華怜(CL2000441)は暗視スキルをアクティブにして周囲を確認した。
 ライトつきの帽子は彼女にとって意味が無くなったが、照らしておけば味方の視界補助になるだろう。どこを索敵しているのか分かりやすくなると言う意味でも有効だ。
(思えば、妖案件は初めてですね……)
 三十三のともしびがアクティブになった所で、華怜は北館の正面玄関を引き開けた。

 客室だけで作られた西館と北館とは異なり、東館は広々としたロビーが存在していた。
 華怜たちが入ってくるや否や、カウンターの裏や物陰などから次々と妖が現われてくる。
 妖がビール瓶を投擲してくるのと美久が小瓶を投擲したのはほぼ同時だった。交差する瓶。妖が大きくよろめく中で、華怜は飛来したビール瓶をトンファーで破壊。
 砕け散るガラス片の中を駆け抜け飛び膝蹴りを繰り出した。
 妖を蹴倒しながら視界を左右に巡らせる。
 モップやパイプ椅子を装備した妖が左右から挟み込むように駆け込んでくるが、片方がパイプ椅子を振り上げた所で三十三のエアブリットが側頭部に直撃。妖が大きく体勢を崩す。
 なら対応すべきはこっちだ。腹へめがけてスイングされたモップをトンファーでガード。滑らせるように懐へ潜り込むと、スピンをかけながら背後へ回り込んだ。思わず飛び退いた相手の勢いを利用するように後ろ蹴り。自らの動作と相まって吹き飛んでいった妖が先程の妖ともつれるように転倒した。
(対人戦闘とそう変わりませんね。技術も、感覚も……)
「できればそのまま寝ていてくださいよ」
 たちまち振り上がる美久の鞭。
 勢いよく叩き付けられた植物のツルた妖を粉砕。素早く転じてからの一撃で押しぶつしていた妖もまとめて破壊した。
 華怜のそばへと歩み寄ってくる三十三。
 ガラス片で斬った腕に手を当てると、出欠した傷を治癒し始めた。
「もう暫く、戦闘が続きそうです」
 互いに背を預け合う形で周囲に目を巡らせる三人。
 戦闘の気配を察知した妖たちが次々とロビーへ駆け込んでくる音が聞こえる。
「さて、いよいよワクワクしてきましたよ」
 美久はコダチとクナイをそれぞれ握り込むと、ぺろりと唇を舐めた。

●別館戦闘記録
 スチール扉を破壊し、妖ごと蹴り出す華怜。
 震えながら起き上がろうとした妖に深緑鞭を叩き付け、佳久が北館から外へ出た。
 治癒液を生成しながら彼らに続く三十三。
 ちらりと見ると、そこには既に三人の仲間が待機していた。
 待機していたっていうか、難儀していた。
「いいんだ! どうせ私なんかいらない子なんだ! F.i.V.Eに行けって言われたのだってお払い箱にできるからに違いないんだ、どうせ私なんて、う、うう……!」
 地面に意味不明の模様を書きながらぷるぷるする誠。
「いや、そんなことねーって。さっきだって妖を一斉にさ、こう、倒してただろ? 初仕事にしてはかなりよくやったって」
 それを必死に慰める飛馬。
「ふう、思わずハッスルしてしまいましたわ。でも勘違いなさらないでくださいな、私はごく普通のJKですのよ?」
 汗をハンカチでぬぐってニコニコする小百合。
「ごく普通のJKは正確に子供の脳天ぶち抜いたりしねーよ! あとお前もフォロー手伝えよ!」
「……私が?」
「よせ、やっぱ何も言うな!」
 三十三は彼らの様子をある程度観察してから、とりあえず回復を始めた。
「回復します」
「他にやって欲しいことあるんだけどな」
「大変そうですね、頑張ってください!」
 三歩ほど距離をとってからパスの姿勢をとる美久。
 華怜は華怜で『こういう人は下手に慰めるとヒートアップするから』みたいな顔で武器の手入れに熱中するフリをしていた。
 飛馬から味方が消えた。
 が、そんなときこそ年長者が役に立つというものである。
「なんだ、皆既に到着していたのか。待たせて悪い!」
 義弘が妖の頭を鷲づかみにした状態で北館の裏口から現われた。
 地面に放り投げると、力尽きて消滅する妖。
 その後ろを想良と瑛太が大人しくついてくる。
 最年少らしき瑛太ではあるが、軽く社会を達観しているのか現状の終わりっぷりを完全にスルーしていた。
 想良も想良で『大人はなにかと大変ですね』みたいな顔でじーっと観察している。
 そんな中で、義弘がずんずんと誠のそばまで寄っていく。
「どうした、怪我してるのか?」
「してない」
「疲れたか?」
「つかれてない」
「そうか。初めての依頼でよく頑張ったな。もう一息だ、一緒に頑張ろう」
「……いっしょに? いいのか? 役立たずじゃないか?」
 顔を上げる誠。
 ニッカリと笑う義弘。
「当然! 頼もしい仲間だ」
「本当?」
 急に答えを求められ、飛馬がカクカクと首を縦に振った。
「仲間仲間!」
「仲間か! ふ……フハハハハハ! いいだろう! やってやろうじゃないか!」
 誠が復活した。
 その間淡々と填気をかけて回っていた想良が顔を上げる。
「そろそろ行けそうですか」
「らしいですね」
 完全に他人任せにしていた美久が頷き、ぐるりと肩を回した。

 ゴーストホテル別館。
 元々何があったのか想像もできないような、崩壊しきった屋内の中央にそれは居た。
 無数の幽霊が不規則に混濁したような、それでいて不思議と人型を維持した物体が四つん這いの姿勢で存在している。
 ライトで照らし出された瞬間、獣のように吠えて動き出す。
 妖がまず手に取ったのは長い机のような物体だった。これを振り上げ、ぶん投げてくる。
「受け切れるか!?」
「さあな!」
 真っ先に前へ飛び出す飛馬と義弘。
 盾を翳して机を受け止めると。吹き飛ばされそうになる自らの身体を足の踏ん張りだけでこらえた。
 彼らの脇を回り込むように飛び出す小百合と瑛太。
「てめぇみたいなグズがあたしらに勝てると思ってんじゃねえよ! くらばれや!」
 小百合が銃を乱射しながら円周移動を開始。
 一方で瑛太が逆方向から円周移動をかけながら刀を振り込む。スピンショットによって繰り出した火炎弾が小百合の空圧弾と合わさって妖のボディに次々と叩き込まれていく。
 どちらを狙うべきか。
 これが人間であれば多少の判断力はもてたものだろうが、ランク1の妖はかなり知能が低いとされている。どうしていいのか分からず、彼女たちを拒絶するように呪詛を吹き出した。
 たちまち霊体に絡みつかれる小百合たち。
 その瞬間、飛馬と義弘は同時に振り返って叫んだ。
「「矢萩!」」
「任せておけ!」
 誠は柏手を打つと、両手の間から半透明な和槍を生み出した。
 槍を掴み、地面めがけて突き立てる。
 すると不思議な波動が伝わり、小百合と瑛太にまとわりついていた霊体がはじけ飛んでいく。
 ここぞとばかりに鞭を繰り出し、足に巻き付ける小百合。彼女が鞭を引くのと同時に、瑛太が足下に滑り込んで刀によるクロススラッシュを繰り出した。
 見事に切断された足にバランスを崩し、妖の身体が大きく傾く。
「今です!」
 美久が小瓶に回転をかけながら投擲。
 妖の眼前に迫った瞬間、義弘たちの後ろから空中へ飛び上がった三十三が両手を砲撃姿勢に構えた。
 翼を広げ上体固定。
 瓶と妖の顔面が斜線上に重なるその瞬間を狙い澄まして空圧弾を発射した。
 毒性の霧がはじけ、妖の顔に開いた傷口からしみこんでいく。
 混乱して腕を振り回す妖。
 四方を取り囲んだ小百合や三十三たちが集中砲火を開始。
 その間を抜けるように華怜が飛び込む――が、吹き上がった粉塵の中から突き出た第三の腕が華怜を掴み取った。
「――!」
 高く振り上がり、地面に叩き付けられる。
 地面をバウンドし、回転する華怜。追撃にと伸びたさらなる腕が彼女を掴み取る直前、飛馬が華怜を突き飛ばした。
 代わりに掴まれ、柱に叩き付けられる。崩壊した柱の向こうへと吹き飛んでいく飛馬。
 再び振り上がった腕が飛馬を狙わんとした、その時。
 闇を縫って放たれた一発の空圧弾が腕に直撃。膨張とねじれを起こした妖の腕ははじけるように崩壊した。
 分断され地面はねる腕。
 射線のさきには想良が指鉄砲を構えて立っていた。
 アイコンタクト。
 闇を通して飛ばされたシグナルを正確に受け取った華怜は地を駆け、崩れた柱を飛び越え、闇雲に振るわれた腕をローリングで抜け、顔面めがけて飛び回し蹴りを繰り出した。
「お覚悟を」
 炎を伴った蹴りが、妖の顔面を崩壊させた。
 やがて肩、胸、腹、全ての部位が崩壊し、そして淡い光となって散っていく。
 それはまるで、妖という異物にとらわれていた魂が解放されたかのようにみえた。

 かくして。
 全ての妖の撃破を確認し、幕を閉じたゴーストホテル妖討伐作戦。
 戦いを終えた彼らの変化や帰り道についてはとても興味のわく所だが、紙幅がそれを許さない。いずれ別の形で、語ることにしよう。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
『守人刀』
取得者:獅子王 飛馬(CL2001466)
『若葉ノ陰陽師』
取得者:矢萩・誠(CL2001468)
特殊成果
なし




 
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