チェンジリング・クロス
【CTS】チェンジリング・クロス


●調査記録
 白露、逝、奏空の三人の調査記録。
 病院地下室にて施錠された扉を発見。
 透視および物質透過にて解錠し、侵入。
 七体の死体を発見した。
 いずれも天井のパイプにロープを通しての首つり死体で、死後半年は経過しているとみられる。
 観察した限りは全員が十代の女性。一般的な学生服を着ており、近隣の中学校制服とみられるが、一年前に盗難届けが出されておりそれらとネームタグが一致。偽装目的の盗難であり、中学校は無関係とみられる。
 覚者たちは集団自殺と本件の関連性を調査中。

 きせきの調査記録。
 OSEの肉体構造は人間のものに酷似している。
 表皮がはがれ肉が露出していることと、首から上が断絶し空洞化していることを覗いて臓器は機能していたものと思われる。
 脳や顔面感覚器官を持たずにいかにして機能していたかどうかは不明。
 メカニズムの究明は現時点で不可能。最低でも十年単位の専門的研究を要する。

 ありす、頼蔵の調査記録。
 土地の所有者情報を入手。ただし偽造書類であったため一部のサンプルを持ち帰り科学調査を実施。
 土地所有者が大がかりな設備をどこか他県へ移動した形跡を発見。
 仲間の推測のもと、次なる検証へ移行。

 誘輔、タヱ子の推理記録。
 共通の夢に現われた雛代供犠についての探索と推理。
 本能的直感から青紫四五六番との類似性を指摘した。
 誘輔の過去の依頼経験から『天邪鬼』『ヴィオニッチ』との関連性を発見。
 また夢に関して『睡眠チャンバー』『白の仮面』に類似性を発見する。
 青紫四五六番についての情報整理。
 タヱ子の過去の依頼経験から『蒐囚壁財団』に収容されていたこと。後に襲撃・強奪され『能亜財団』の隔離施設に収容されたことを再確認。
 蒐囚壁財団への収容が日本逢魔化以前であることから夢見因子とは別の理由であると推測される。
 本人へのヒアリングを実行したが『一切の心当たりは無い』と発言した。

 複合情報から能亜財団のあおぞら記念病院を次なる調査目標とした。
 施設は既に引き払われており、電気メーター等の調査から無人と断定される。
 また、書類記録から『うぼつぜ島病院』から『可能性交換棺』が移送されたことを確認。どのような物体かは不明。

 あおぞら記念病院の調査の過程でOSEを発見。
 院内から外へ出てくるところが確認されており、速やかな殲滅を要する。


■シナリオ詳細
種別:シリーズ
難易度:普通
担当ST:八重紅友禅
■成功条件
1.OSEの全滅
2.なし
3.なし
 シリーズ二本目となります。
 本シリーズは全五本予定なので、これを含めてあと四回です。

 『あおぞら記念病院』にてOSEの発生を確認しました。
 目測で10体以上。
 前回の戦闘経験からして、戦闘力は武装していない憤怒者程度。つまり仮に20体いたとしても殲滅が可能です。

●シチュエーションデータ
 あおぞら記念病院は精神病院を装った隔離施設です。
 現在は持ち主が引き払っており、無人(電気やガスを使用していないのでだれも生活していない筈)であることが確認されています。
 元所有者の能亜財団は怪異の完全撲滅を目的とする組織であること以外不明。蒐囚壁財団からもこれ以上の情報開示を(セキュリティクリアランス違反であるとして)拒まれています。
 推察するに、覚者なども所属していたことから悪性の古妖や将来的に悪性になる可能性のある全ての古妖を末梢し、人類規模での平和を目的とした組織だと思われます。所属覚者も正義感の強い振る舞いをしていたと(タヱ子と逝から)報告されています。

 建物は四階建て。ほとんどの扉は施錠されており、OSEの大半は屋内をうろうろしていると見られています。
 窓などから外へ出た数体を駆除した後、屋内のOSEを全て駆除して下さい。

●調査行動についての補助
 プレイングの空振りを避けるため、今回のシナリオでは調査行動に補助ルールを設けます。
 EXプレイングに書き込んだ調査行動のみ、『完全成功(的確に真実を探り当てる)』か『無効(行動によるデメリットも無し)』のどちらかで判定されます。(書き込めるのは一行動まで)
 逆に通常プレイングでの調査行動は比較的失敗しやすくなりますので注意ください。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(5モルげっと♪)
相談日数
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
公開日
2016年09月14日

■メイン参加者 8人■


●ノイズ・A
 ピンク色のベッドで目が覚める。
 小鳥の声とスマートホンのアラームがうるさくて、『能亜研究所特別顧問』鈴駆・ありす(CL2001269)はベッドから手を伸ばした。
 どこを叩いてもアラームが止まらない。仕方が無いから布団をはいで、薄目をこすりながら周囲を探した。
 犬がスマホをくわえている。
「もう、ゆる……持って行っちゃダメっていってるでしょ」
 スマホを奪い返してアラームをとめた。
 着信が一件。『雛代絞滋郎』と表示されていた。
 スワイプしてリダイヤル。三回のコールで相手が出た。
「ハカセ。丑三つ時に電話をかけてくるなんて、非常識だと思わないの?」
 ベッドから出て、洗面台に向かう。通話をフリーハンドモードにしてから、髪型を整え始める。
 スピーカーからは五十代ほどの男の声がした。
『ごめん! それよりすごい実験結果が出たんだ。鈴駆くんも是非見てくれ。未知なる生物の存在を裏付ける革命的な――あ、今から研究所に来られるかな?』
「コーヒー飲んでからね」
 話を続けようとする相手を通話終了ボタンで黙らせると、ありすは鏡を見つめた。
「まったく、ヒトってどうしてこう勝手なのかしら」

●あおぞら記念病院跡地
「いくわよ、ゆる……開眼!」
 覚醒した『溶けない炎』鈴駆・ありす(CL2001269)は炎を右から左へと放ちOSEの集団を打ち払った。
 炎にまみれて混乱するOSEの中へと自ら飛び込んでいく『ゴシップ探偵』風祭・誘輔(CL2001092)。
「ったく、こいつら一体何なんだ? 白面のガキといいわからねーことだらけだぜ!」
 グレネードのピンを歯で引っこ抜き、緩慢な動作で掴みかかるOSEの集団をすり抜ける。爆発寸前のグレネードを背中越しに放り、そのまま駆け抜けた。
 爆発に包まれるシルエット。
 舞い上がる砂埃を破るように、ありすや葉柳・白露(CL2001329)たちが駆け抜けてくる。
「ボクは裏手を見ておくよ。屋内の探索範囲も近いしね」
 建物の裏側を目指して走る白露。角を曲がった直後にOSEに出くわすが、一切の乱れなく相手の首筋と足首の筋を正確に切り裂いてすれ違った。
 背後で崩れ落ちる敵。目視の必要は無い。
 そのまま更に奥にいた数人のOSEを確認。身を屈め、風のように駆け抜ける。
 相手が反応できた頃には、既に彼らのずっと向こうに立っていた。
 刀を納める白露。
 緑色の血を吹き出して、OSEたちは次々と崩れ落ちた。
「うん? OSEの血って、赤かったんじゃなかったのかな。別種もあるのかあ。ふうん……」
 うぼつぜ島病院に出現したOSEは確かに赤い血液を流していた筈。白露は一旦その事実を横に置いて透視能力を発動。
「掃討確認……っと」
 屋外の掃討完了の通知を入れた。

●ノイズ・S
「い、いやだ……死にたくない……死にたくない!」
 『ネジレハンター』工藤・奏空(CL2000955)は死体だらけの裏路地を駆け抜け、大通りへと飛び出した。
「うわ!」
 何かに躓いて転ぶ。足下を見ると、警察官が倒れていた。
 頭が潰されている。
 それを見て、奏空はとても慣れた様子で立ち上がった。
「よかった、ただの死体だ……」
 落ち着いている場合じゃない。ホルスターを探ると拳銃が出てきた。
 固定具を外し、震える手で弾を確認。
「ほ、本で読んだことがある。大丈夫。つかえる。俺にだって使える……使えなきゃ、死ぬだけだ……!」
 近くの窓ガラスが割れた。
 鉄パイプを持った集団が窓を乗り越えて大通りへと這い出てくる。
 その全ての顔がねじれ、表皮が生肉のようなピンク色をしていた。
「『ネジレ』だ……く、来るなあああああ!」
 奏空は半狂乱になって銃の引き金に指をかけた。

●能亜財団
 『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)は耳に手を当てつつ、八重霞 頼蔵(CL2000693)たちへと振り返った。
「白露さんから連絡来ました。屋外の敵はもういないそうです。中にはうじゃうじゃ……だそうですけど」
「問題ない。どのみち行かなければならぬ」
 頼蔵は落ち着いた調子で銃のセーフティを解除すると、建物内へと侵入した。入り口付近で待ち構えていたOSEが両サイドから襲いかかってきた。
 古風な西洋剣を振りかざしたタイプと、トンファーを握ったタイプだ。
「武器持ちか――だが」
 飛びかかってくるトンファー持ちの脳天へ正確に銃弾を撃ち込む。排出される空薬莢が空中にある内に腰のサーベルを抜き、柄で薬莢を打ち弾く。
 思わぬ飛来物に動きがブレた剣持ちへと向き直ると、一呼吸の間に接近。
 三段突きで相手の動きを完全に殺した。
「あまりに遅い」
 血降りをしてサーベルを納める。
 『先へ』の合図を送ると、奏空たちは頷いて階段へと進んでいく。
「奴らは、なかなか積極的に動いているようだね」
「奴らって?」
 一旦遅れてやってきた白露に、頼蔵は振り向いた。
「仲間は上へ向かったようだ。こちらも探索を始めよう」
「目的のものがあればいいけど……」
 透視スキルを発動させて周囲の索敵を始める白露。
 彼の後ろを歩きながら、頼蔵はネクタイを締め直した。
「目的の達成度はどの程度か。もし実証実験の結果として今があるのなら、よろしくない状況だ。関連案件の秘匿性からしても慎重な奴らだが……現状を見る限り、既にアタリを付け初めている可能性があるが……ふむ」
 サーベルに手をかけ、次の戦闘に備える。
「とにかく情報は足で集める。それが一番確実だ……いつだってな」

 一階を頼蔵たちに任せ、奏空と『鬼籍あるいは奇跡』御影・きせき(CL2001110)は二階の探索を始めていた。
「奏空くん、どうしたの? 元気ないよ?」
 倒れたOSEの心臓部を正確に刀を突き立てながら、きせきはあどけない顔で振り返った。
 首をふる奏空。
「い、いや、なんでもない。こんなことあるわけないんだ。俺がしっかりしなくちゃダメなんだ……」
 戦闘中もどこか上の空で、自分に言い聞かせるようなことばかり呟いている。
 恐い夢でも見たのかな。きせきは励ましてあげることにした。
「大丈夫だよ、こわくないよ。ほら見て」
 きせきは扉を蹴破って飛び出してくるOSEの首を振り向きざまに切断すると、飛び跳ねたくびを刀で突き刺すかたちでキャッチした。昆虫採集に成功した子供がカブトムシの腹を見せるように、首の断面図を見せてくる。
「頭の中がからっぽなの。人間に似てるけど、人間じゃ無いんだよ。だから安心して? これは人殺しじゃないよ? 安心してぜんぶたおしていいんだよ?」
「きせき……それ……みえてないのか?」
 奏空が自分の肩を掴んでかたかたと震えている。
「なにいってるの? もしかして、奏空くんの言ってた『別の世界の仲間』って話なの? そんなの信じないもん。もうコドモじゃないんだから、ばかにしないでよね!」
 刀を振って首を壁際へ放り投げるきせき。
 壁に当たって転がる首が、奏空には……。

 三階の担当はありすと納屋 タヱ子(CL2000019)だ。
 精神病院に偽装していたからだろうか、階段を上がった先はすぐに仕切りがなされ、通り抜けができないようにされていた。
 しかし扉は既に開かれ、バリケードのようなものを組んだ形跡はあるがそれも崩れている。その中でも特に気になったのは引きちぎられたパイプ椅子だ。
 途中でねじ切れたかのように足が無くなっている。
「この先にもOSEはいるはずです。鈴駆さん、準備はいいですか」
 ありすとアイコンタクトをとり、タヱ子は奥へと進んでいく。
 施錠された扉がドスンと鳴る。か弱い乙女ではないのだ。ビクつくようなことはない。
 合図をして、タヱ子はドアノブに盾を叩き付けた。
 施錠を破壊。つんのめるように飛び出してきたOSEに軽いシールドバッシュを与えてから、そくざにバックステップ。
 よろめいたOSEをありすが即座に焼却した。
 室内を見てみる。
「収容部屋……のようですね」
 かつて蒼紫四五九番を回収したのと同じタイプの部屋だ。この階はそういった部屋ばかいのようだが……。
 『人間の味方なのに、なぜこんなことを』『人の手に渡れば人類が』。能亜財団に投げかけられた言葉を思い出す。
 もしや彼女は……。
「次の部屋へ行きましょう」
 言葉を飲み込んで、タヱ子は進む。

 四階の担当は緒形 逝(CL2000156)と誘輔だった。
 施設内の構造は廊下を端から端まで歩かないと次の階へ行けない作りになっているせいで途中まではタヱ子たちと同行していたのだが……。
「なあ風祭ちゃん。この光景、見覚えないかい」
「見覚えあるのはアンタだけだろ。俺は夢見の救出作戦に参加して……」
 四階へ上がる階段に立ち、誘輔は目をこすった。
「いや、あれは夢だ。荒唐無稽な。こいつは……デジャビューってやつだろ」
 科学的な意味でのデジャビューとは、テレビで何気なく見た観光案内を自分でも忘れていて、現地を初めて歩いたのにまるで光景に覚えがあるように感じるといったような記憶の誤認識をさす。
 仮にそうだとして。
 階段のタイルの色まで覚えがあるなんてことが、あるだろうか。
「アンタが先に行け。俺は後ろを見ておく」
「あいよ」
 階段を上った先にはすぐドアがあった。スチール扉だ。
 強引に開けられた形跡がある。内側から棚でバリケードを作った形跡もあったが、無残に崩れていた。
「……」
 慎重に部屋へと入る。
 すると、壁際に潜んでいたOSEが襲いかかってきた。
 それもスチールデスクを蹴り出すという奇策でもって逝に叩き付けてきたのだ。
 強引に蹴りつけ、デスクをひしゃげさせる逝。
「味なマネしやがって!」
 誘輔は即座に組み付き、機械化した腕を思い切り叩き付けた。
 頭部へ直撃。
 近くの棚もろとも崩れ落ちるOSE。
 更に周囲を確認するが、敵が潜んでいる様子は無い。
「四階はここで最後……じゃあ、なさそうだな」
「そうみたいさね」
 扉がひとつ。
 硬く施錠されているようだ。
 誘輔の目配せに逝はジェスチャーで応え、物質透過スキルでもって壁の向こうへと抜けていった。
 その直後。
 『ドスン!』という音が壁に響いた。
 壁から飛び退く誘輔。敵の待ち伏せにあったのだろうか。壁越しでは事態が把握できない。物質透過は屋内侵入には有効なスキルだが、壁抜け直後が無防備になりやすいという欠点も持ち合わせている。
「おい緒形! どうした!」
 壁を叩く。応答がない。
 耳を壁に当てる。
 向こうから奇声のようなものが響いた所で、誘輔は目を見開いた。
「チッ……!」
 周囲を見回す。使えそうなものは……。
 暫く見回してから、自分の腕が一番使えることに気がついた。
 タイムロスを気にしている場合ではない。ドアから離れて、グレネードランチャーを発射。爆発。拉げた扉をひっぺがして、中へと飛び込んだ。
「緒形ァ!」
「ン?」
 その場にあったものは、大きく分けて三つ。
 頭を潰されて今しがた死んだらしいOSEが一体。
 刀から赤色の血をしたたらせながら振り返る逝。
 それらの背後に聳え立つ、巨大な装置。
「『可能性交換棺』……」
 巨大な柱と、それを囲むように配置された睡眠チャンバー。
 チャンバーの殆どは崩壊していたが、一つだけは確認できる。誘輔が以前回収した資料や現物にそっくりな作りだ。
「こいつで、間違いなさそうだ」

●ノイズ・T
「雛代さん……みんな……!」
 必死の思いで走った納屋 タヱ子(CL2000019)は、光さす病院の出口を抜けた。
 ついに脱出したのだ。
 バケモノだらけの病院から、自分は生還したのだ。
 自分を庇った人たちのことが気になる。
 けれど戻るわけにはいかなかった。自分一人では無力すぎる。
「そ、そうです。助けを呼んで……」
 まだ外の光に目が慣れない。
 逆光の中に人影が見えた。
 助けが来た。そう思えた。
「あの……!」
 聞いてください、中で人が襲われてるんです。そう叫ぼうとした。
 駆け寄るタヱ子。
 手を翳す人影。
「■■■■、■■。……■■!」
 途端、激しい炎がタヱ子を包んだ。
 悲鳴をあげながら見たその人影は、顔がねじれていた。

●棺実験
 一階を探索していた頼蔵や白露たちが予備電源と蓄電装置を見つけてきた。
「これで装置を動かせる」
「ところで、トリセツとかないの?」
「とりせつって、これ?」
 きせきが箱いっぱいに詰め込んできたファイルの束を、地面にどさりと置いた。
「こいつは随分な……」
「専門文書だ。知識なしでは読み解けぬ。私たちに任せておけ」
 誘輔と頼蔵は適当な場所に腰掛け、ファイルの束を読み始めた。
 自分にできることは……と考えてから、きせきは別の箱を引っ張った。
 中には拳銃やビジネススーツ。白衣やトンファーといった道具がごろごろと入っている。
「うーん、前のはみんなヘンな服(拘束衣)だったのに、ここの敵はすごく人間みたい。人間のマネっこしてるのかな。どう思う? 奏空くん」
 振り返ると、奏空は壁際に座り込んでいた。
 顔を青くして、膝を抱えている。
「どうしたの? おなかいたいの?」
「……いや、なんでもないんだ。なんでも……見間違いだ……あんなの……」
 首を傾げるきせき。
 そっとしておこう。
 背を向ける。道具を調べる作業に戻ろう。
 そんなきせきの耳に、奏空のつぶやきが聞こえた。
「OSEが、人間に見えるなんて」
 目を見開く。
 見開く。

 ありすやタヱ子が見守る中、実験は行なわれた。
 唯一無事に残っている睡眠チャンバーを利用して、『可能性交換棺』を稼働させてみようというものである。
 何が起こるか本当に分からなかったが、逝が易々とチャンバーへ入ったことで周りはかえって安堵した。
 彼の精神性は心配ない。むしろ彼がバケモノになって飛び出してこないかが心配だった。
 誘輔たちが資料を片手にではあるが操作して、装置を動かす。
 手順としては人間を酸素カプセルにいれて睡眠させるのと同じ作業だ。難しいことはない。
 中央の柱が軽い音を立てて淡く光る以外は、複雑なことは起きていない。ただチャンバーに入った逝が寝ているだけだ。
「はじめは意図的に装置を残したと考えたが……」
 呟く頼蔵。
 資料の残り方や建物内の荒れ方を考えると、どうも突発的な事故によって施設を手放したと見る方が近そうだ。
「特に重要なものだけを持ち出して逃げた、か。だとしたら次に移るべき場所は検討がつく」
 頼蔵は『Zプラン』と書かれたファイルを手に取った。

 一方、ありすとタヱ子は稼働する装置を眺めながらぼうっと立っていた。
「ねえ……この施設に来てから、気分が悪そうよ」
「そう、ですか?」
「アタシのこと、避けてない?」
 きっぱり言うありすに、タヱ子は慌てて首を振った。
「そんなことは無いですよ。ただここへ来る途中、変な夢を見て」
「……ふうん」
 ありすはそれ以上は聞かなかった。
 施設へ至るまでの車内で、体力を温存しようと仮眠をとっていた時のこと。
 ありすは妙な夢を見た。
 自分が自分じゃないような、全く別の可能性の世界にいたような夢だ。
 ……いや、誰だってそんな夢くらい見るだろう。
 考えすぎだ。
 ゴウンという音を立てて装置が止まった。
 チャンバーが開く。
 ありすたちを庇うように誘輔が前に出て、頭に手を当てた。
「おい、アンタ……緒形だよな」
 むっくりと身体を起こす逝。
 ヘルメットに手を当てて、暫く黙っていた。
「おい、答えろ」
「ん。ああ、そうだが? 何か問題でも?」
 チャンバーから出て、ぐいぐいとストレッチをしている。
 守護使役も見えているようだし、普通に覚者だ。
 持ち物や服装が変わっている様子もない。
 身体を充分に伸ばしてから、逝は皆に向き直った。
「早速だが、重要なことが分かった。急いで対応して欲しいんだが……」

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
『手帳への走り書き』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:納屋 タヱ子(CL2000019)
『破り捨てた日記』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:工藤・奏空(CL2000955)
『エアメッセージ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:緒形 逝(CL2000156)
『手帳のメモ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:風祭・誘輔(CL2001092)
『設計図』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:八重霞 頼蔵(CL2000693)




 
ここはミラーサイトです