【兵器開発局】ショットガントレット改良量産計画・弐
●二種類のショットガントレット
プロトタイプの検証実験を経て、ショットガントレットは二通りの完成形を得ることになった。
ショットガントレット甲。
ノックバック性能をもった格闘武器で、命中補正がついている。
散弾の発射機構は完全にノックバック専用となり、弾数も増えている。
格闘カテゴリー。
ショットガントレット乙。
射撃属性のついた物理攻撃特化武器。いわゆる腕にはめる砲台。
散弾の代わりにライフル弾を側面備え付けのレバーによって発射し、ノックバック性や格闘能力はオミットされている。
銃カテゴリー。
この二つのうちどちらかを使用し、妖との実戦を行なうのだ。
●妖
山側の観光地に存在する物質系妖ランク1。
岩石が妖化したもので、小さな岩石と大きな岩石の二種類に分かれている。
作戦上『小型』と『大型』と呼ぼう。
小型妖は数が10体にも及ぶが戦闘能力は低い妖だ。しかし前衛にでてブロックするため、ひたすら邪魔になる。
また、大型妖が3ターンに一度小型妖を作成するため、いくら倒してもまた沸いてくるのだ。
一方で大型妖は硬い防御力を誇り、物質系にしては珍しく特殊防御が非常に高い。近くの石を投擲する列攻撃を得意とし、放っておくとダメージがかなり蓄積していくだろう。
とはいえ実験の場に選べる程度の妖だ。いつものように油断せずに戦えば負けはしないはずだろう。
新たな武器の性能テストや選別に活用しよう。
プロトタイプの検証実験を経て、ショットガントレットは二通りの完成形を得ることになった。
ショットガントレット甲。
ノックバック性能をもった格闘武器で、命中補正がついている。
散弾の発射機構は完全にノックバック専用となり、弾数も増えている。
格闘カテゴリー。
ショットガントレット乙。
射撃属性のついた物理攻撃特化武器。いわゆる腕にはめる砲台。
散弾の代わりにライフル弾を側面備え付けのレバーによって発射し、ノックバック性や格闘能力はオミットされている。
銃カテゴリー。
この二つのうちどちらかを使用し、妖との実戦を行なうのだ。
●妖
山側の観光地に存在する物質系妖ランク1。
岩石が妖化したもので、小さな岩石と大きな岩石の二種類に分かれている。
作戦上『小型』と『大型』と呼ぼう。
小型妖は数が10体にも及ぶが戦闘能力は低い妖だ。しかし前衛にでてブロックするため、ひたすら邪魔になる。
また、大型妖が3ターンに一度小型妖を作成するため、いくら倒してもまた沸いてくるのだ。
一方で大型妖は硬い防御力を誇り、物質系にしては珍しく特殊防御が非常に高い。近くの石を投擲する列攻撃を得意とし、放っておくとダメージがかなり蓄積していくだろう。
とはいえ実験の場に選べる程度の妖だ。いつものように油断せずに戦えば負けはしないはずだろう。
新たな武器の性能テストや選別に活用しよう。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.妖の撃破
2.ショットガントレットの方向性を決定する
3.なし
2.ショットガントレットの方向性を決定する
3.なし
皆さんはガントレットの『甲』か『乙』のどちらかを選んで装備してください。
ガントレットは片手武器なので、もう一方に愛用の武器を持つのもOKです。
勿論体術や術式などのスキル攻撃をばんばん使っていってください。ショットガントレットの応用にもつながるでしょう。
更に、EXプレイングにて『甲』と『乙』のどちらかに投票して下さい。
投票数の多かった方を正式採用として量産、神具庫で販売します。
●エネミーデータ
・小型
回避能力低め。体力低め。
前衛と中衛にばらけて配置される。
3ターンごとに3~5体ずつ出現する。
体当たり:物近単小ダメージ
・大型×3
攻撃力高め。特殊防御た極めて高い。
岩石投げ:物遠列中ダメージ
大型妖を全て倒すと、小型妖は消滅します。
そのため、大型妖が最後の一体になると小型妖2体を『味方ガード』につけるようになります。
●シチュエーションデータ
山岳地帯で岩場が多く、凹凸が激しい地形になっています。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
7日
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
8/8
公開日
2016年08月29日
2016年08月29日
■メイン参加者 8人■

●ショットガントレット実用試験
突き立った岩の影に隠れ、赤坂・仁(CL2000426)は拳銃のリボルバー弾倉を確認。セーフティー解除。いつでも飛び出せる姿勢をとってから手鏡で敵を視認した。
岩場をゆっくりと移動する妖の集団が鏡ごしに見えている。
相手はこちらに気づいていて、徐々に距離を詰めている段階だ。
岩陰に隠れられては投擲攻撃が役に立たないと察してか、こちらの出方を待っている風でもある。
「妖との距離を確認。安定射撃可能範囲と推定。攻撃を開始する」
『了解しました。迷霧、散布開始まで三秒』
別の物陰から合成音声を放つ『研究所職員』紅崎・誡女(CL2000750)。
『二、一……今』
物陰から転がり出た誡女が術式を発動。攻撃に出ようとした妖たちに霧がまとわりつき、動きを大きく阻害していく。
誡女は深追いせずに仁が隠れていた岩陰に転がり込み、入れ替わるように仁が自らの身体を大きく露出。大型妖へ右から順に一発ずつ撃ってサイドステップ。
恐ろしく精度のいい射撃だ。大型妖のボディそれぞれに弾を命中させ、反撃とばかりに放ってきた岩石を仁は先読みしたかのようなステップでかわしにかかる。
この際かわしきれない分は甘んじて受けた方がマシだ。誡女によって攻撃力を弱められている。こういった弱体散布系スキルは複数体からの集団攻撃にこそ効果を発揮するのだ。
それに、防御担当がいてくれるから防御や回避にリソースを割く必要が無い。
「獅子王」
「よしきた!」
岩をよけきれない仁にかわって、『巖心流継承者』獅子王 飛馬(CL2001466)が割り込みガード。さすが回避と命中を殺してでも防御に回しただけあってレベル一桁台とは思えないほどの防御力だ。
普段使っている刀とガントレットをそれぞれ使って飛来する岩をはじき飛ばしていく。
とはいえ回避を殺している彼である。びっくりするほど高倍率ヒットされるのはもうしょうがない話だった。150%ヒットは当たり前の比率なので体力もめりめり減っていくが、そこは回復担当に任せるしか無い。
同じく岩のシャワーを浴びることになった『ジャンガリアンマスター』工藤・奏空(CL2000955)と『侵掠如火』坂上 懐良(CL2000523)だが構わず突撃。
奏空は両手にはめたガントレットをクロスさせつつ降り注ぐ岩の中を駆け抜けた。
「いててっ! 岩が岩投げるってめちゃくちゃだよ!」
「言ってみりゃゴリラがゴリラ投げてるようなモンだしな」
「なんでゴリラ」
「それより作戦覚えてるか!?」
懐良は脳天めがけて落ちてきた岩を剣でたたき落とすと、ガントレットを翳して見せた。
「う、うん!」
今回の作戦は『いかに大型妖へダメージを与えるか』が鍵になってくる。
その生涯となるのはなんといっても前中二列に挟まった小型妖の集団だ。
今現在はまだ五体がうろついている程度だからブロック対抗に五人ぶちあてて三人で殴りかかるという手も使えるし、なんなら遠距離攻撃だけで砲撃戦に発展させるのもアリだ。が、今回はあくまで武器の実用試験。ノックバック戦法を試すいい機会だ。
試すのは前回学習したノックバックの利用法である。
「ノックバックの発動条件は他の追加効果と同じく100%ヒット以上だ。ヒット率が上がれば上がるほど効果が期待できる。で、その効果というのはターン中のブロックと味方ガードの不能ときてる。今回の戦いには丁度いいだろ」
ということで、彼らが第一候補として立てた道筋は敵前衛だけを列攻撃で排除。中衛と後衛だけになった所にノックバックからの浸透攻撃をしかけるというものだ。
「でもちゃんと当たるかな。100%以上なんでしょ?」
「今回出てきてる小型のヤツは回避が苦手らしい。命中補正をよほど下げてない限りはいけるだろ! ――ってことで早速!」
懐良はガントレットのセーフティーレバーを引いてショットモードに切り替えると、彼らを通せんぼしようとする小型妖の群れめがけておもむろにパンチを繰り出した。
放たれた散弾に彼のエネルギーが加わり二段花火のように炸裂。小型妖たちを軽くのけぞらせる。
そこへ飛び込む深緋・久作(CL2001453)。
レバーを両腕のフックにそれぞれひっかけ、手枷のチェーンを広げるようなイメージでレバーを開放。地面に打ち込んだライフル弾がはじけ、小型妖たちを蹴散らしていく。
三体中二体撃破といったところだ。
「二人がかり……で、ややギリギリといった具合ですか。時任様」
「了解……!」
『狗吠』時任・千陽(CL2000014)が砕けた小型妖の前衛エリアを突破し、中衛エリアへ食い込んでいく。
あえてややこしい書き方をしたが、三列構成の一列目が消えたので二列になったよと思って頂いて構わない。実際の敵味方分布はかなりごちゃごちゃ入り乱れているが、さておきである。
「大震、打ちます。突入準備――!」
ガントレットで地面を殴りつける千陽。
レバーを引いて術式を直接地面に打ち込むと、激しい揺れによって小型妖たちが一斉に転倒。
彼らに敵の接近を牽制してもらっていた大型妖たちが丸裸だ。
「もらった!」
奏空が飛び込みからの貫殺撃。
ショットモードのショットガントレットを直接大型妖に叩き付け、零距離から散弾をねじ込んでいく。
貫通攻撃だけに中衛からでも届くと言えば届くが威力が半減してしまう。(詳しくは貫殺撃のヒット割合を見て欲しい)
しかし零距離で打てば威力を百パーセント伝えることが出来るのだ。
「追撃!」
「あ? あーはいはい」
全く乗り気じゃ無いという顔で『燃焼系ギャル』国生 かりん(CL2001391)がガントレットのレバーを引き、ライフル弾を発射。
籠もった術式によって分裂した火炎弾が全て大型妖に叩き込まれていく。
仰向けに転倒する大型妖。
「やったな!」
「……」
かりんはガントレットを振ってぼやいた。
「つかいづれえ。腕に固定されてるから射線あわせずれーし。ピストルでいいじゃん! 考えた奴馬鹿なんじゃないの!?」
「「はい?」」
表情を変えずに振り返る久作と誡女。
「ぶっちゃけガントレットの意味ねーし! これ絶対アレだよ、戦時の珍兵器とかのたぐいだよ。イギリスとかで作ってそうだよ! アタシがこれを選んだのはなー! いかに失敗作であるかを証明するためだよ!」
お前なにかっつーと文句ばっかり言うなあという顔で振り返る飛馬と奏空。
FNP90を配備したベルギー兵士も同じこと言ってた気がすると思ったけど顔には出さない仁。
火炎連弾の照準方法も大概では? という微妙にズレたことを考えて振り返る千陽。
あの子おっぱい大きいなという顔で振り返る懐良。
「なんだよ! 事実だろ!」
「そうだね。ラインやってる?」
「やってねー!」
そうこうしているうちに、小型妖が周辺の岩場からぽこぽこと発生。前衛メンバーへと張り付くようにブロックを開始した。
状況を分析し直す仁と誡女。
「前衛の数はともかく、中衛の数が時間経過と共に増加していくな」
『ここへきてノックバックによる一斉ブロック妨害がより重要になってきますね。もし近接列攻撃だけで排除しようとすれば最低でも五人がかりで当たることになりますが……』
「ノックバックなら倒す必要はないというわけか」
マンツーマンディフェンスをしかけてくる小型妖を殴り飛ばし、ついでに他のメンバーにはりついている妖たちも次々に殴り飛ばしてく久作。
「ということは、行動不能系のバッドステータスでも同じことができますね。とはいえ不能率50%程度では期待できませんから、麻痺系ランク3、呪縛系ランク3、氷結系ランク2以上、睡眠系全般……といった具合ですね」
「いずれも高レベルを要求するスキルだ。比較的取得の早い大震が有用なのはそういう理由か……」
仁は頷き、大型妖への射撃を続行した。
戦闘はおおむね順調に進んだ。
前列の小型妖が補充され次第排除し、中衛の妖は列ノックバックで除外。空いた隙間を潜るようにして大型妖に激しい近接攻撃を加えるというサイクルだ。
順調に大型妖二体を撃破し、残るは一体。
想定通り小型妖をダブルで味方ガードに加はじめた。
「さて、問題はここからだぞ」
ガントレットて手をぐーぱーさせる飛馬。
ノックバックが通常攻撃につくというのは今まで無かった。ノックバック属性の攻撃は今のところ火行と土行のみ。それも結構なコストを要求する。必要なときに必要な手段をとれるという意味では、『武装を切り替えるだけで対応可能』というのが魅力的なのだ。
「つっても俺の命中補正じゃ攻撃をあてられねえ。ガードは俺に任せて、敵陣の突破に集中してくれ」
「了解した」
仁は銃を懐にしまい、ガントレットをショットモードにシフト。敵陣めがけて走り出した。
先んじて動く久作。
彼らを阻もうとスクラムを組んだ小型妖の脇へ回ると、乙型ショットガントレットのレバーを引いてライフル弾を発射。
小型妖を気力を纏ったライフル弾が次々に貫いていく。
そこへ飛来した岩石を飛馬が横っ飛びに割り込む形で身代わりガード。
狙いをつけるが、まだ撃たないかりん。
「せめてノックバック残ってれば乙も悪くなかったんだけどねェ」
『それは今後に期待しましょう。投石機なしに弾道ミサイルは開発されませんからね』
「あ? 意味わかんね」
かりんに開発ツリーという発想はない。
さておき。
飛馬が大型妖への道筋を見極め、千陽によびかけた。
「あいつらビビって中衛に味方を集中させてるぜ。出番だ!」
「了解。ここまで必要とされる機会も珍しい」
千陽は大型妖の周囲に固まって接近を阻もうとする小型妖たちへと突撃。
この機会を狙うために一度集中を挟んでいるのだ。外しはしない。
「打ちます。突入――!」
まるで屋内突入におけるドアクラッシャーのように、千陽は地面を激しく殴りつけた。
ヒビがはしり、小型妖たちを一斉に転倒させる。
残るは大型妖とそのガードについている小型妖二体だけだ。
集中をキッチリはさみ、殴りかかる誡女。
割り込んだ小型妖に拳を押し当て、振り抜く。
放たれたチップが炸裂し、小型妖を空の彼方へ跳ね飛ばした。
焦りを見せる大型妖。
だが攻撃の手は緩めない。
「おいおまえ、サッカーしようぜ!」
懐良が脇に回り込み、ボディブローを叩き込む。
ショットモードになったショットガントレットからチップが放たれ、小型妖は近くの岸壁にワンバウンドしてから大型妖のさらに後ろへと吹き飛んでいった。
「あやっべ、サッカーじゃねーなこれ!」
「撃て!」
「いわれなくてもー」
追撃するようにかりんが火焔連弾を乱射。
大型妖が激しく炎上し始める。
振りを悟って逃げだそうとする大型妖。しかし時既に遅し。仁が零距離まで接近していた。
ガントレットを大型妖の腹に押しつける。
振り抜きと同時にチップが放たれるが、気力によって炸裂したチップはそのまま大型妖のボディを貫いて大穴を開けた。
「続け工藤」
「よっしゃ!」
ガントレットをショットモードにしたまま拳のラッシュを叩き込む奏空。
それぞれ放たれたチップによってほぼ防御不能な連続攻撃が大型妖を襲う。
ボディを構成する岩が次々にそぎ落とされ、ほっそりと削れていく大型妖。
「小型妖のポップまであと十秒。丸裸ですね」
「タコ殴りだぜ!」
久作、飛馬、懐良がそれぞれで大型妖をとり囲んだ。
飛馬と懐良が同時にアッパーカット。
チップショットによって宙に浮いた大型妖。そのすぐ上をとった久作が、たたき落とすようなパンチと同時にライフル弾を発射。
大型妖が地面に思い切り叩き付けられる。
両側面を押さえた仁とかりんが集中砲火をあびせにかかる。
大型妖のボディだか地面だかそのへんの石ころだか分からない破片が次々に吹き上がり、土埃があがっていく。
大型妖が土埃にすっかり埋まった頃、奏空と誡女が急接近。
前後両サイドから同時にパンチを叩き込み、同時にチップショットを打ち込んだ。
大型妖にヒビが走っていくのが分かる。
トドメをさすなら今だ。
千陽は地面に拳を打ち付けると、反動を使って跳躍。
強烈なプレッシャーを拳に集めると、レバーを引いてシュート。大型妖に直撃し、妖のボディは細かい石になって砕け散った。
はれゆく煙の中に着地。空になった薬莢を排出し、千陽は瞑目した。
「実験終了。お疲れ様でした」
●新兵器完成
戦いを終え、ファイヴへと戻ってきた八人。
彼らは休憩をかねて会議室へと集まっていた。
「さて……」
ミネラルウォーターを飲み干し、ボトルを置く千陽。
「実戦で使用してみて、いかがだったでしょうか」
「くそつかいづれえ。乙型いらねーだろ!」
ぺっと乙型ガントレットをぶんなげるかりん。
それを拾い上げ、久作は小さく息をついた。
「この発想はまだ実用段階にはないということでしょうか。しかし、物理攻撃への集中に加えて取り回しの良さと汎用性を高めれば、スロット枠の増加による拡張性を加えてひとつの個性として確立できるのでは?」
頷く千陽。
「将来的に、無い話ではありませんね。ガントレットとしての側面をつきつめて防御に特価させるというのもいいでしょう」
「ふむ……防御に特化した射撃武器か……それはそれで魅力的だな」
銃の整備をしながら呟く仁。
これまでの防御型射撃武器といったら、『盾をぶん投げる』くらいしかなかった。
そりゃカタログスペックだけを見るなら格闘も射撃もできてBS付け放題のスロット百個あって全ステータスが9999ぐらい上がるやーつがいいに決まってるが、そんなのはテレビゲームにチートコードでも打ち込まないとでてこないアイテムである。そんなもんがリアルに出てきたとしたらこの世の終わりだ。
それよりなにより、モーション的な意味でのバトルスタイルに適した武器として価値が出るだろう。
「工藤、どう思う」
「そーだなー、スキルポイントふらずにノックバックできるって意味じゃ甲型のショットガントレットはあってほしいかな。『いつかどっかで使うかもしれないもの』を『すぐに用意できる』ってのはかなり重要っぽい気がするんだ」
「それは同感だ」
椅子を並べて寝転がっていた飛馬がむくりと起き上がる。
「カスタマイズっていうのか? 色んな奴の貢献度が上がるよな」
飛馬はカンペキにガードするためだけのカスタマイズをしているので、攻撃方法はむしろ気にしないくらいがいいのだが、中には命中率だけを突き詰めた人もいるだろう。
それまで腕組みしてうつむいてた懐良がカッと目を開いた。
「いいこと思いついた。ショットガントレットに愛を付与して……」
「多数決……といわずとも、甲型になりそうですね」
内容を書き記した書類をトントンとまとめて、誡女は立ち上がった。
『では、この仕様で開発室に回しましょう。遠からず、神具庫で購入できるようになるはずですよ』
突き立った岩の影に隠れ、赤坂・仁(CL2000426)は拳銃のリボルバー弾倉を確認。セーフティー解除。いつでも飛び出せる姿勢をとってから手鏡で敵を視認した。
岩場をゆっくりと移動する妖の集団が鏡ごしに見えている。
相手はこちらに気づいていて、徐々に距離を詰めている段階だ。
岩陰に隠れられては投擲攻撃が役に立たないと察してか、こちらの出方を待っている風でもある。
「妖との距離を確認。安定射撃可能範囲と推定。攻撃を開始する」
『了解しました。迷霧、散布開始まで三秒』
別の物陰から合成音声を放つ『研究所職員』紅崎・誡女(CL2000750)。
『二、一……今』
物陰から転がり出た誡女が術式を発動。攻撃に出ようとした妖たちに霧がまとわりつき、動きを大きく阻害していく。
誡女は深追いせずに仁が隠れていた岩陰に転がり込み、入れ替わるように仁が自らの身体を大きく露出。大型妖へ右から順に一発ずつ撃ってサイドステップ。
恐ろしく精度のいい射撃だ。大型妖のボディそれぞれに弾を命中させ、反撃とばかりに放ってきた岩石を仁は先読みしたかのようなステップでかわしにかかる。
この際かわしきれない分は甘んじて受けた方がマシだ。誡女によって攻撃力を弱められている。こういった弱体散布系スキルは複数体からの集団攻撃にこそ効果を発揮するのだ。
それに、防御担当がいてくれるから防御や回避にリソースを割く必要が無い。
「獅子王」
「よしきた!」
岩をよけきれない仁にかわって、『巖心流継承者』獅子王 飛馬(CL2001466)が割り込みガード。さすが回避と命中を殺してでも防御に回しただけあってレベル一桁台とは思えないほどの防御力だ。
普段使っている刀とガントレットをそれぞれ使って飛来する岩をはじき飛ばしていく。
とはいえ回避を殺している彼である。びっくりするほど高倍率ヒットされるのはもうしょうがない話だった。150%ヒットは当たり前の比率なので体力もめりめり減っていくが、そこは回復担当に任せるしか無い。
同じく岩のシャワーを浴びることになった『ジャンガリアンマスター』工藤・奏空(CL2000955)と『侵掠如火』坂上 懐良(CL2000523)だが構わず突撃。
奏空は両手にはめたガントレットをクロスさせつつ降り注ぐ岩の中を駆け抜けた。
「いててっ! 岩が岩投げるってめちゃくちゃだよ!」
「言ってみりゃゴリラがゴリラ投げてるようなモンだしな」
「なんでゴリラ」
「それより作戦覚えてるか!?」
懐良は脳天めがけて落ちてきた岩を剣でたたき落とすと、ガントレットを翳して見せた。
「う、うん!」
今回の作戦は『いかに大型妖へダメージを与えるか』が鍵になってくる。
その生涯となるのはなんといっても前中二列に挟まった小型妖の集団だ。
今現在はまだ五体がうろついている程度だからブロック対抗に五人ぶちあてて三人で殴りかかるという手も使えるし、なんなら遠距離攻撃だけで砲撃戦に発展させるのもアリだ。が、今回はあくまで武器の実用試験。ノックバック戦法を試すいい機会だ。
試すのは前回学習したノックバックの利用法である。
「ノックバックの発動条件は他の追加効果と同じく100%ヒット以上だ。ヒット率が上がれば上がるほど効果が期待できる。で、その効果というのはターン中のブロックと味方ガードの不能ときてる。今回の戦いには丁度いいだろ」
ということで、彼らが第一候補として立てた道筋は敵前衛だけを列攻撃で排除。中衛と後衛だけになった所にノックバックからの浸透攻撃をしかけるというものだ。
「でもちゃんと当たるかな。100%以上なんでしょ?」
「今回出てきてる小型のヤツは回避が苦手らしい。命中補正をよほど下げてない限りはいけるだろ! ――ってことで早速!」
懐良はガントレットのセーフティーレバーを引いてショットモードに切り替えると、彼らを通せんぼしようとする小型妖の群れめがけておもむろにパンチを繰り出した。
放たれた散弾に彼のエネルギーが加わり二段花火のように炸裂。小型妖たちを軽くのけぞらせる。
そこへ飛び込む深緋・久作(CL2001453)。
レバーを両腕のフックにそれぞれひっかけ、手枷のチェーンを広げるようなイメージでレバーを開放。地面に打ち込んだライフル弾がはじけ、小型妖たちを蹴散らしていく。
三体中二体撃破といったところだ。
「二人がかり……で、ややギリギリといった具合ですか。時任様」
「了解……!」
『狗吠』時任・千陽(CL2000014)が砕けた小型妖の前衛エリアを突破し、中衛エリアへ食い込んでいく。
あえてややこしい書き方をしたが、三列構成の一列目が消えたので二列になったよと思って頂いて構わない。実際の敵味方分布はかなりごちゃごちゃ入り乱れているが、さておきである。
「大震、打ちます。突入準備――!」
ガントレットで地面を殴りつける千陽。
レバーを引いて術式を直接地面に打ち込むと、激しい揺れによって小型妖たちが一斉に転倒。
彼らに敵の接近を牽制してもらっていた大型妖たちが丸裸だ。
「もらった!」
奏空が飛び込みからの貫殺撃。
ショットモードのショットガントレットを直接大型妖に叩き付け、零距離から散弾をねじ込んでいく。
貫通攻撃だけに中衛からでも届くと言えば届くが威力が半減してしまう。(詳しくは貫殺撃のヒット割合を見て欲しい)
しかし零距離で打てば威力を百パーセント伝えることが出来るのだ。
「追撃!」
「あ? あーはいはい」
全く乗り気じゃ無いという顔で『燃焼系ギャル』国生 かりん(CL2001391)がガントレットのレバーを引き、ライフル弾を発射。
籠もった術式によって分裂した火炎弾が全て大型妖に叩き込まれていく。
仰向けに転倒する大型妖。
「やったな!」
「……」
かりんはガントレットを振ってぼやいた。
「つかいづれえ。腕に固定されてるから射線あわせずれーし。ピストルでいいじゃん! 考えた奴馬鹿なんじゃないの!?」
「「はい?」」
表情を変えずに振り返る久作と誡女。
「ぶっちゃけガントレットの意味ねーし! これ絶対アレだよ、戦時の珍兵器とかのたぐいだよ。イギリスとかで作ってそうだよ! アタシがこれを選んだのはなー! いかに失敗作であるかを証明するためだよ!」
お前なにかっつーと文句ばっかり言うなあという顔で振り返る飛馬と奏空。
FNP90を配備したベルギー兵士も同じこと言ってた気がすると思ったけど顔には出さない仁。
火炎連弾の照準方法も大概では? という微妙にズレたことを考えて振り返る千陽。
あの子おっぱい大きいなという顔で振り返る懐良。
「なんだよ! 事実だろ!」
「そうだね。ラインやってる?」
「やってねー!」
そうこうしているうちに、小型妖が周辺の岩場からぽこぽこと発生。前衛メンバーへと張り付くようにブロックを開始した。
状況を分析し直す仁と誡女。
「前衛の数はともかく、中衛の数が時間経過と共に増加していくな」
『ここへきてノックバックによる一斉ブロック妨害がより重要になってきますね。もし近接列攻撃だけで排除しようとすれば最低でも五人がかりで当たることになりますが……』
「ノックバックなら倒す必要はないというわけか」
マンツーマンディフェンスをしかけてくる小型妖を殴り飛ばし、ついでに他のメンバーにはりついている妖たちも次々に殴り飛ばしてく久作。
「ということは、行動不能系のバッドステータスでも同じことができますね。とはいえ不能率50%程度では期待できませんから、麻痺系ランク3、呪縛系ランク3、氷結系ランク2以上、睡眠系全般……といった具合ですね」
「いずれも高レベルを要求するスキルだ。比較的取得の早い大震が有用なのはそういう理由か……」
仁は頷き、大型妖への射撃を続行した。
戦闘はおおむね順調に進んだ。
前列の小型妖が補充され次第排除し、中衛の妖は列ノックバックで除外。空いた隙間を潜るようにして大型妖に激しい近接攻撃を加えるというサイクルだ。
順調に大型妖二体を撃破し、残るは一体。
想定通り小型妖をダブルで味方ガードに加はじめた。
「さて、問題はここからだぞ」
ガントレットて手をぐーぱーさせる飛馬。
ノックバックが通常攻撃につくというのは今まで無かった。ノックバック属性の攻撃は今のところ火行と土行のみ。それも結構なコストを要求する。必要なときに必要な手段をとれるという意味では、『武装を切り替えるだけで対応可能』というのが魅力的なのだ。
「つっても俺の命中補正じゃ攻撃をあてられねえ。ガードは俺に任せて、敵陣の突破に集中してくれ」
「了解した」
仁は銃を懐にしまい、ガントレットをショットモードにシフト。敵陣めがけて走り出した。
先んじて動く久作。
彼らを阻もうとスクラムを組んだ小型妖の脇へ回ると、乙型ショットガントレットのレバーを引いてライフル弾を発射。
小型妖を気力を纏ったライフル弾が次々に貫いていく。
そこへ飛来した岩石を飛馬が横っ飛びに割り込む形で身代わりガード。
狙いをつけるが、まだ撃たないかりん。
「せめてノックバック残ってれば乙も悪くなかったんだけどねェ」
『それは今後に期待しましょう。投石機なしに弾道ミサイルは開発されませんからね』
「あ? 意味わかんね」
かりんに開発ツリーという発想はない。
さておき。
飛馬が大型妖への道筋を見極め、千陽によびかけた。
「あいつらビビって中衛に味方を集中させてるぜ。出番だ!」
「了解。ここまで必要とされる機会も珍しい」
千陽は大型妖の周囲に固まって接近を阻もうとする小型妖たちへと突撃。
この機会を狙うために一度集中を挟んでいるのだ。外しはしない。
「打ちます。突入――!」
まるで屋内突入におけるドアクラッシャーのように、千陽は地面を激しく殴りつけた。
ヒビがはしり、小型妖たちを一斉に転倒させる。
残るは大型妖とそのガードについている小型妖二体だけだ。
集中をキッチリはさみ、殴りかかる誡女。
割り込んだ小型妖に拳を押し当て、振り抜く。
放たれたチップが炸裂し、小型妖を空の彼方へ跳ね飛ばした。
焦りを見せる大型妖。
だが攻撃の手は緩めない。
「おいおまえ、サッカーしようぜ!」
懐良が脇に回り込み、ボディブローを叩き込む。
ショットモードになったショットガントレットからチップが放たれ、小型妖は近くの岸壁にワンバウンドしてから大型妖のさらに後ろへと吹き飛んでいった。
「あやっべ、サッカーじゃねーなこれ!」
「撃て!」
「いわれなくてもー」
追撃するようにかりんが火焔連弾を乱射。
大型妖が激しく炎上し始める。
振りを悟って逃げだそうとする大型妖。しかし時既に遅し。仁が零距離まで接近していた。
ガントレットを大型妖の腹に押しつける。
振り抜きと同時にチップが放たれるが、気力によって炸裂したチップはそのまま大型妖のボディを貫いて大穴を開けた。
「続け工藤」
「よっしゃ!」
ガントレットをショットモードにしたまま拳のラッシュを叩き込む奏空。
それぞれ放たれたチップによってほぼ防御不能な連続攻撃が大型妖を襲う。
ボディを構成する岩が次々にそぎ落とされ、ほっそりと削れていく大型妖。
「小型妖のポップまであと十秒。丸裸ですね」
「タコ殴りだぜ!」
久作、飛馬、懐良がそれぞれで大型妖をとり囲んだ。
飛馬と懐良が同時にアッパーカット。
チップショットによって宙に浮いた大型妖。そのすぐ上をとった久作が、たたき落とすようなパンチと同時にライフル弾を発射。
大型妖が地面に思い切り叩き付けられる。
両側面を押さえた仁とかりんが集中砲火をあびせにかかる。
大型妖のボディだか地面だかそのへんの石ころだか分からない破片が次々に吹き上がり、土埃があがっていく。
大型妖が土埃にすっかり埋まった頃、奏空と誡女が急接近。
前後両サイドから同時にパンチを叩き込み、同時にチップショットを打ち込んだ。
大型妖にヒビが走っていくのが分かる。
トドメをさすなら今だ。
千陽は地面に拳を打ち付けると、反動を使って跳躍。
強烈なプレッシャーを拳に集めると、レバーを引いてシュート。大型妖に直撃し、妖のボディは細かい石になって砕け散った。
はれゆく煙の中に着地。空になった薬莢を排出し、千陽は瞑目した。
「実験終了。お疲れ様でした」
●新兵器完成
戦いを終え、ファイヴへと戻ってきた八人。
彼らは休憩をかねて会議室へと集まっていた。
「さて……」
ミネラルウォーターを飲み干し、ボトルを置く千陽。
「実戦で使用してみて、いかがだったでしょうか」
「くそつかいづれえ。乙型いらねーだろ!」
ぺっと乙型ガントレットをぶんなげるかりん。
それを拾い上げ、久作は小さく息をついた。
「この発想はまだ実用段階にはないということでしょうか。しかし、物理攻撃への集中に加えて取り回しの良さと汎用性を高めれば、スロット枠の増加による拡張性を加えてひとつの個性として確立できるのでは?」
頷く千陽。
「将来的に、無い話ではありませんね。ガントレットとしての側面をつきつめて防御に特価させるというのもいいでしょう」
「ふむ……防御に特化した射撃武器か……それはそれで魅力的だな」
銃の整備をしながら呟く仁。
これまでの防御型射撃武器といったら、『盾をぶん投げる』くらいしかなかった。
そりゃカタログスペックだけを見るなら格闘も射撃もできてBS付け放題のスロット百個あって全ステータスが9999ぐらい上がるやーつがいいに決まってるが、そんなのはテレビゲームにチートコードでも打ち込まないとでてこないアイテムである。そんなもんがリアルに出てきたとしたらこの世の終わりだ。
それよりなにより、モーション的な意味でのバトルスタイルに適した武器として価値が出るだろう。
「工藤、どう思う」
「そーだなー、スキルポイントふらずにノックバックできるって意味じゃ甲型のショットガントレットはあってほしいかな。『いつかどっかで使うかもしれないもの』を『すぐに用意できる』ってのはかなり重要っぽい気がするんだ」
「それは同感だ」
椅子を並べて寝転がっていた飛馬がむくりと起き上がる。
「カスタマイズっていうのか? 色んな奴の貢献度が上がるよな」
飛馬はカンペキにガードするためだけのカスタマイズをしているので、攻撃方法はむしろ気にしないくらいがいいのだが、中には命中率だけを突き詰めた人もいるだろう。
それまで腕組みしてうつむいてた懐良がカッと目を開いた。
「いいこと思いついた。ショットガントレットに愛を付与して……」
「多数決……といわずとも、甲型になりそうですね」
内容を書き記した書類をトントンとまとめて、誡女は立ち上がった。
『では、この仕様で開発室に回しましょう。遠からず、神具庫で購入できるようになるはずですよ』
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
