【CTS】イマジナリーライン・オーバー
●『所長さんによれば、この世界は壊れているそうです。テレビやラジオのチャンネルが混ざってノイズが走るように、おかしなものが流れ込んでいるそうです。けれど、だからなんだというのでしょうか』
八月某日、夜間。
卯没瀬島連絡船ポートより通報。
『警察か!? 今すぐ来てくれ! バケモノが出たんだ! 妖? そんなの分かるわけないだろ! 顔が穴みたいになったバケモノだよ! とにかく早く助けてくれ! 殺さっ……あっ、うわあああ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だあああああああああああああああ!』
この直後、ガラス等を破壊する音を挟んで通話は途絶えていた。
「以上が、通報記録となっています」
蒼紫 四五九番(nCL2000137)はタブレットPCの音声ファイルを閉じると、次に二つの画像ファイルを提示した。
ひとつは地図。
島根県北部の小島群の衛星写真をマップ化したものである。
その一つにシグナルピンが立っていた。
デジタルタグで『卯没瀬島』と表記されている。
そしてもう一つはある建物の念写画像である。
病院のようだが、朽ちた看板に『うぼつぜ島病院』と書かれているのがかろうじてわかった。
だが注目すべきは……。
「この連中、どこかで」
一部の覚者が見せた反応を受けることもなく、四五九番はメモ帳にさらさらとペンを走らせた。
「今回の任務は危険性のある古妖の駆除です。発生地点と発生数は確認されていますので……」
必要事項を書いたメモを切り離し、差し出してくる。
メモの内容はこうだ。
発生古妖:仮称『OSE(アウトサイドエネミー)』
発生地点:卯没瀬島病院
発生個体数:17体
以下詳細――。
ここまで読んだ所で、覚者たちは現地へと向かった。
八月某日、夜間。
卯没瀬島連絡船ポートより通報。
『警察か!? 今すぐ来てくれ! バケモノが出たんだ! 妖? そんなの分かるわけないだろ! 顔が穴みたいになったバケモノだよ! とにかく早く助けてくれ! 殺さっ……あっ、うわあああ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だあああああああああああああああ!』
この直後、ガラス等を破壊する音を挟んで通話は途絶えていた。
「以上が、通報記録となっています」
蒼紫 四五九番(nCL2000137)はタブレットPCの音声ファイルを閉じると、次に二つの画像ファイルを提示した。
ひとつは地図。
島根県北部の小島群の衛星写真をマップ化したものである。
その一つにシグナルピンが立っていた。
デジタルタグで『卯没瀬島』と表記されている。
そしてもう一つはある建物の念写画像である。
病院のようだが、朽ちた看板に『うぼつぜ島病院』と書かれているのがかろうじてわかった。
だが注目すべきは……。
「この連中、どこかで」
一部の覚者が見せた反応を受けることもなく、四五九番はメモ帳にさらさらとペンを走らせた。
「今回の任務は危険性のある古妖の駆除です。発生地点と発生数は確認されていますので……」
必要事項を書いたメモを切り離し、差し出してくる。
メモの内容はこうだ。
発生古妖:仮称『OSE(アウトサイドエネミー)』
発生地点:卯没瀬島病院
発生個体数:17体
以下詳細――。
ここまで読んだ所で、覚者たちは現地へと向かった。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.OSEすべての駆除
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
島根県の船発着場から船を使って島へ移動します。
事件発生時点で発着場が封鎖されているため、人の移動はありません。
卯没瀬島へ到着してからは徒歩移動になります。
島は星神島と二股島の間にある全長100メートル程度の小島であまり開発が成されていません。
発着場以外は土むきだしの道路と三階建ての病院が確認されています。
なおこの病院は行政登録されていないため、機能していないと思われます。
●発生地点と侵攻範囲
OSEは病院から発生し、その半数が発着場へと侵攻しています。
発着場の係員や派出所職員は既に死亡したとみられ、一般市民の生存者はゼロと報告されています。
分布は主に発着場周辺に5体前後。
発着場から病院までの経路に5体前後。
病院内に分散する形で5体前後、と見られています。
●OSE
古妖OSE(アウトサイドエネミー)は危険な存在です。
人間を見つけ次第殺害します。
シルエットこそ人間に近いですが、全身が生肉のようなピンク色をしており、顔面にはあらゆる器官が消失しており代わりにねじ巻き状に肉が変形しています。また、布ベルトの切れたボロボロの拘束衣のようなものを纏っているようです。
身体能力は戦闘非覚者とおよそ同等。
ごく一部の個体は鉄パイプを槍状にしたもの等を武器にしており、やや身体能力が高いようです。
これらを全て駆除し終えた段階で、依頼完了となります。
●調査行動についての補助
プレイングの空振りを避けるため、今回のシナリオでは調査行動に補助ルールを設けます。
EXプレイングに書き込んだ調査行動のみ、『完全成功(的確に真実を探り当てる)』か『無効(そもそもその行動をしない)』のどちらかで判定されます。書き込めるのは一行動までとします。
※こちらはシリーズシナリオとなっております
約1月おきのペースでオープニングを公開する予定で、シナリオの進行具合によって話数と内容が大きく変化します。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
7日
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
8/8
公開日
2016年08月16日
2016年08月16日
■メイン参加者 8人■

●『ここはどこなんだろう? ボクはたしかに帰ってきたはずなんだけれど……』
船が水面を切り裂いて、島の全形を少しずつ大きくしていく。
葉柳・白露(CL2001329)はその様子を眺めながら、靡く髪をおさえた。
「……あれはあくまで夢。現実の出来事じゃないよね」
呟きを耳にして、横にいた『ゴシップ探偵』風祭・誘輔(CL2001092)が吸っていた煙草をつまんだ。
「やっぱあの悪夢のこと、気になるよな」
「まあ、ね」
「俺たちは共通の夢を見た。別世界から来たと思い込んでる精神病院の患者で、ちょうどあの島にいるみてーな肉塊に襲われてた」
「………………」
ちらり、と緒形 逝(CL2000156)のほうを見る。
逝は小さく肩をふるわせていた。笑っているのだろうか。表情はまるで読めない。
「OSE(アウトサイドエネミー)があの夢みてえに元人間だったとして、別世界の俺たちの慣れはて……なんてオチはぞっとしねーぞ」
「どうなんだろうね」
白露は手すりを握って、ため息のように言った。
「さてさて、どう動こうかな」
●『早く報告しなければ。反逆者になるのはごめんだぞ!』
肩をふるわせる逝の顔を、『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)が心配そうに覗き込んでいた。
顔といってもヘルメットのバイザーに隠れて見えやしないが。
「大丈夫、ですか?」
「アァ、なんでもないよ。ちょっと船酔いかしら? 島は危ないから、そばから離れたらいかんよ工藤ちゃん」
「あ、はい……分かってます」
『共通の悪夢を見た』という報告書の内容を、今回の事件に関連するものとして奏空も読んでいた。『ある彼女』へのヒアリングは都合がつかずにできなかったが、何か大きなことが起こっているように思えてならない。
丁度その報告書を読み終えた八重霞 頼蔵(CL2000693)が、バインダーを閉じて息をついた。
「正体不明の存在に、奇怪な夢。是非に私もみてみたかったものだ」
「そ、そうですか?」
「知的好奇心というものだ。君も、それでこの任務に志願したのだろう」
頼蔵はすらりとした紳士だ。逝とは別の意味で背筋が伸びている。
随分と大人に囲まれたものだと、奏空は少しばかり場違いなことを考えた。
●『ずるいよ! なんであの子だけ外に出たの? ぼくも一緒に行きたかったのに!』
「見たことも、聞いたこともない古妖のはずなのに……覚えてる気がする。こんな島、来たことも無いのにね」
『鬼籍あるいは奇跡』御影・きせき(CL2001110)は頼蔵と同じバインダーを閉じて独りごちた。
到着が近いことを知らせるアナウンスを聞いて鞄を下ろす。
一方で『溶けない炎』鈴駆・ありす(CL2001269)はまだ報告書を読んでいた。
「OSE、外側からの来訪者……これも古妖に分類されるのね」
考えれば考えるほど、古妖というものの曖昧さに頭を悩まされる。
ここまでくると、同族把握という能力の出所すら怪しくなってくるものだ。
「さすがにそれは飛躍しすぎね。今回だけで全てはっきりするとは思えないけど、できる限りのことはしましょ」
「はい……」
納屋 タヱ子(CL2000019)は報告書とは別の資料を読み込みながら、到着の時を待っていた。
「それは?」
「地図です。地名にはすべからく所以があるものですけれど、卯没瀬島というネガティブなワードで定着しているのが気になるんです。読みも、まるでぜつぼうの逆さ読みですし」
「コトダマってやつじゃないかしら。それより、つくわよ」
船着き場へと船を寄せる。
その景色の醜悪さに、タヱ子は顔をしかめた。
●『お父さんは、お母さんはどこですか。こんな場所が、私の世界なはずがないんです』
船着き場を一人で管理していたと思われるスタッフが浮き桟橋にひっかかるようにして死んでいた。恐らく通報記録にあった男だろう。
死んでいるというのに、何が憎いのかOSEが握った煉瓦ブロックで何度も殴りつけている。
キッとこちらに顔を向けるOSE。
「態々ご苦労」
頼蔵は襟を正すと、船から浮き桟橋まで数メートルを幅跳びし、OSEを蹴り倒した。
懐から銃を抜き、倒れたOSEの頭と胸にそれぞれ発砲。
船に『つけろ』の合図を出した。
発砲音を聞きつけてか、周囲のOSEがわらわらと群がってくる。
ありすはその様子に顔をしかめた。
「いつまでたっても船が着けられないじゃないの。いくわよゆる――開眼!」
フィンガースナップで火をともすと。船の上からOSEめがけて炎弾を連射。
ガトリング射撃による強襲上陸そのものといった様子でOSEたちを押しのけると、浮き桟橋へと飛び移った。
そんなありすたちを驚異とみたのか、OSEたちが後じさりした。
ありすは炎を手にともしたまま、右から左へ目視確認。
こちらに背を向けて走り出すOSE。
「戦いやすい場所へ移ろうったてそうは行かないわ」
敵めがけ、炎の渦を解き放った。
炎に呑まれつつ、転がるように広い場所へと転がり出るOSEたち。
「行くわよ、急いで」
「わかってる!」
奏空も雷獣を放ちながら、浮き桟橋へ飛び移った。
仲間たちも桟橋へと移動を終えている。船をここに残しておくのは危険だろう。奏空は送受心でもってスタッフに船を離すように伝えた。100メートル程度なら離れていても送心できる。安全が第一だ。
試しにOSEたちにも送受心を試みたが、普通に拒絶された。敵相手にコールして切られることは別に珍しくない。普通のことだ。
「別にいいけどっ!」
刀を抜いて突撃。
OSEのうち何人かが振り返り、近くに落ちている硬そうなものを手に取った。
残りは病院方向へと走っていく。
身構え、奏空に目配せするありす。
「逃げるつもり?」
「仲間に襲撃を知らせるつもりじゃないかな。倒した敵、数だけでも記録しておいて!」
「もうしてるわよ!」
奏空とありすは同時にかけだした。
鉄パイプを振りかざすOSE。それが振り下ろされる直前に懐へ滑り込み、刀で十字斬りを叩き込む奏空。
その横を駆け抜けながら、ありすはすれ違いざまにOSEの側頭部へ手を翳す。
「一体目!」
「二体目じゃなくて!?」
「いや、二体目は今片付けた」
浮き桟橋でぐったりしていたOSEが起き上がり、煉瓦ブロックを振り上げる。
その腕を素早く射撃する頼蔵。
腕ごと飛んでいった煉瓦ブロックが海へと沈んでいく。頼蔵はどこからともなく抜いたサーベルでもってOSEの首を切り落とした。
血振りをして、振り返る。
「どうやら血は流れるらしいな。粘土細工でなくてむしろ安心した」
冗談ともとれるような頼蔵の言葉に、奏空は愛想笑いと苦笑いの間めいた顔をした。
小柄なOSEがこちらめがけてまっすぐ走ってくる。
対する白露はゆっくりと土と砂利の道を歩いていた。
距離が50メートルをきった頃。
両腰にぬらりと現われた柄に手をかけて、二本の刀を引き抜いた。
「さ、いこうか」
白露は歩みを早歩きに、早歩きを疾走に変えて突っ込んだ。
小石を投げてくるOSE。なんてことのない攻撃だ。白露はそれをあえてかわさず、額に跳ねた石と一滴の血をそのままに、OSEの首筋を切り裂いた。
流れるように胸、背中、腰を連続で切りつけ。まるで舞うようにOSEの周囲をぐるりと一週。計十二箇所の斬撃を与えた後に、開きの構えで背後に立ち止まった。
崩れ落ちるOSE。血の一滴もつかない刀をそのままに、白露は再び書けだした。
向こうからはOSEの集団。
「ぼくにまかせてっ!」
きせきが刀を抜き、集団へと文字通りに飛びかかる。
襲いかかってきたはずなのにOSEたちは慌てて顔を庇うような姿勢をとった。
かまうことなどない。きせきは目を子供のように光らせると、自らを回転させてOSEたちを薙ぎ払った。
落ちたパイプ椅子の残骸を拾い上げ、殴りつけてくるOSE。
軌道はきせきの後頭部を確かに狙っていたが、それを滑り込んだタヱ子が受け止めた。
リストバンドで固定した盾がパイプ椅子を弾き上げ、もう一方の西洋盾でシールドバッシュを仕掛ける。
大きくのけぞったOSE。その両肩からぬらりと刀がはえた。
否、背後に回ったきせきがクロスした刀をハサミよろしく首にすえたのだ。
「それっ」
血しぶきと共に首が飛んでいく。
タヱ子はその光景がなぜか残酷に見えて、思わず目をそらした。
こんなことをしている場合じゃ無い。
病院に急がなくては。
「いきましょう!」
病院の壁と地面と弾丸の列が跳ねていく。
壁を遮蔽物にして射撃を防ぐOSEに、誘輔は舌打ちした。
「いらねえ知恵つけやがって」
機関銃化した腕を盾のように翳してダッシュ。
木の板で作ったと思しき簡易バリケードを突き破ると、その裏でおさえようとしていたOSEもろとも突き飛ばした。
廊下を走って逃げていくOSEの背中に射撃をあびせる。
次々と転倒していくOSE。
誘輔の横を抜けるように逝が駆け抜け、OSEの背中や足を次々に切っては捨てていった。
肩がふるえている。笑っているのだろうか。
誘輔は無意識に舌打ちし、舌打ちの意味がわからず自らに顔をしかめた。
●『私を閉じ込めておくことは人類を守ることにつながるそうです。理解も共感も求められませんでしたが、私にはそれで充分でした』
きせきは、この依頼で特に気になっていることが二つある。
ひとつは鉄パイプの槍をもった敵で、もうひとつは……。
「あっ……!」
病院廊下の角を曲がった所で、OSEを発見した。
パイプ椅子をねじ曲げたような簡易槍を持ったOSEと、その影に隠れる小柄なOSEだ。
「今度は逃げないもん!」
思わず叫んで、きせきは飛び込んだ。
きせきの刀が的確に首を狙ったにもかかわらず、OSEは予備動作のないダウンスウェーできせきの死角へ回り込んだ。
振り向き斬りが槍にとめられる。
小柄なOSEが飛びかかり、きせきを押し倒した。
「は、はなして……! やめて……!」
自分の口が勝手に喋ったように思えて、きせきは強い嫌悪感を覚えた。
こんなことを言うのは自分じゃない。
しかしこんなことを言うのも自分のような気がする。
何が本当で、何が自分で、何が現実で、何が夢で、何が正しいのか、何を選ぶべきなのは自分の夢に現実が自分のゾンビが見た夢の正しさは卒業式の記憶なんて自分は正しさのゾンビが博士の研究所のパパがどうして事故が夢が病院がぼくが世界の夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が――。
「うわあ!」
きせきは全力でOSEを振り払った。
壁に頭をぶつけ、ぐったりを崩れるOSE。
それを守るように割り込む、槍のOSE。
槍が自分の胸を貫くが、きせきはそれを無視した。
直後、OSEの首が二つまとめて飛んでいった。
はたと我に返るきせき。
頼蔵がサーベルの血降りをして、手を出した。
「迎えに来た。合流するぞ」
言われて、自分がしりもちをついていることに気づいたきせきは、頼蔵の手を取った。
きせきがOSEに遭遇しても仲間の助けを得られなかったことには二つの理由がある。
ひとつはきせきの無意識的な執着心であり、もうひとつはOSEの強襲による分断であった。
「これで何体目だっけ――とにかく、次!」
奏空はOSEを切り払い、階段から蹴落とした。
ごろごろと転がって階段の最下層でぐったりととまるOSE。僅かにあげた頭を、駆けつけた頼蔵が拳銃で打ち抜いた。見もせずにワンショットで額を抜いている。
ネクタイを締め直して、階段踊り場の奏空を見上げた。
「無事か」
「そっちは?」
「御影君を回収した。私たちも合流する」
「そっか……。二階の探索に移るんです。一緒に来てください!」
奏空の呼びかけに頷いて、頼蔵は階段を上がった。
耳をすませるように手を当てる奏空。
「二階に敵はいないみたいです。三階に行きましょう」
「三階ね……じゃあ、おっさんたちが先行するから後ろみといてくれるかい」
「え、あ……はい」
絶妙なタイミングで言われたせいで頷いてしまったが、気づいた時には逝が三階へ駆け上がっていた。
「……」
複雑な顔をしてそれを追いかける誘輔。
階段の上からは、まるで待ち構えていたかのようにOSEが飛びかかってくる。
攻撃を引き受けるべく飛び出すタヱ子。
タヱ子によって押し返されたOSEたちを切り裂いて、逝が踊り場を通過。
跳ねるように三階へ転がり込み、奥を目視。
三体のOSEが振り向き、こちらへ突撃してくる。
迎え撃ち、先頭の一人を投げ飛ば――したかと思うと、逝が逆にひっくり返された。
地面に頭を強打する。
「なめんな……!」
いつの間にか入り込んでいた誘輔が近くのパイプベッドを無理矢理引っ張り出して投擲。更に機関銃を乱射すると、OSEたちを背後の壁ごと吹き飛ばし、野外へと放り出した。
「おっと……いいの?」
崩れた壁から顔を覗かせる白露。
「大丈夫だろ。あっちには確か……」
OSEたちの落下した場所には、丁度ありすがいた。
がたがたと身体をゆすって起き上がるOSE。
「しぶといんだかか弱いんだか」
手の中に炎を宿すありす。
「でも、もうおしまいよ」
ありすは炎の渦を解き放ち、OSEたちを焼き尽くした。
ため息をついて、あたりを見回す。
「古妖の気配は……もうしないみたいね」
頭に手を当てて、奏空からの送受心を受け取った。
『大丈夫? 敵が行ったみたいだけど』
『瞬殺よ。それより、そっちはどう?』
『特に問題ないみたい。皆いるし……それより敵の気配は?』
『同族把握にはもうかかってないからゼロだと思うけど』
『そっか、ありがと。じゃあ探索に移るよ。何かあったら……』
『合図でしょ。分かってる』
通信を終えて、ありすは深呼吸した。
「念のため外に残ったけど、どうしましょうかね。聞き込み調査……は、無理ね。島の人たちはもう亡くなってるし」
ありすはとりあえずという風に、周囲を散策することにした。
●『みんなどこ? 私、帰ってきたよ! どこにいるの!?』
「ねえ、この建物って三階建てだよね」
「まあそうね。隠し扉とか、そういうのはあるかい」
屋上に出て、白露と逝は周囲をぐるりと見回していた。
「この周辺には特に。けど、なんだろう……この建物、四階建てだったような気がするんだけど」
「奇遇だねえ。おっさんもそんな風に思ってたところさね」
逝は親指を下に向けて肩をすくめた。
「地下とか、見てみるかい?」
頼蔵は事務所で資料を漁っていた。
といっても、医学的な専門用語ばかりであまり理解はできないが……とにかく病気の治療らしいことをしていたことはわかった。
それもあまり珍しい病気ではないようだ。
「古い精神病院、と言ったところか」
隣ではきせきがオモチャでも分解するようにOSEの死体を切り開いている。
「ねえ見て、表面はおばけみたいだけど、中身は教科書で見たまんまなんだよ。でも首から上が途切れてからっぽなの。なんでかなあ」
「…………」
あまりにナチュラルに聞かれるものだから、頼蔵は返答に困ったが。
「調べる、か」
きせきの調査に付き合うことにした。
病院そのものを警戒するという目的でありすを外に置いてきた奏空は、送受心で会話をしながら屋内を探索していた。
向かう先は地下室だ。
『病院の地下室って、なんか恐いな』
『おまけに廃墟だものね。帰ってきてもいいのよ。交代してあげましょうか?』
『大丈夫だよ!』
地下には鉄の扉があった。
頑丈で開かない。鍵がかかっているようだ。
するとそこへ、逝と白露がやってきた。
「おや、奇遇だね。その先を調査するのかい」
「そうなんですけど鍵が……」
「おっさんに任せな。壁抜け出来るから。それより、透視頼めるかね」
逝は白露に目配せをした。
白露は壁をじっと見つめたまま、暫く黙っていた。
「どうしたの?」
「ううん……なんだか、とても退廃的でさ」
扉の先には……。
「雛代供犠……か」
「この島にはいないんですかね、やっぱり」
タヱ子と誘輔は病院内を歩きながら会話していた。
「いや、なんかあるはずだ。引っかかるんだよ、色々と」
ぱらぱらと手帳をめくる誘輔。
そして、あるところで手が止まった。
汚い走り書きでこうある。
『卯没瀬島病い』
「おい……おいおいおいおいおい」
心配そうに見てくるタヱ子に、誘輔は複雑な顔を向けた。
「俺、ここを知ってるぞ」
――『チェンジリング・クロス』へつづく。
船が水面を切り裂いて、島の全形を少しずつ大きくしていく。
葉柳・白露(CL2001329)はその様子を眺めながら、靡く髪をおさえた。
「……あれはあくまで夢。現実の出来事じゃないよね」
呟きを耳にして、横にいた『ゴシップ探偵』風祭・誘輔(CL2001092)が吸っていた煙草をつまんだ。
「やっぱあの悪夢のこと、気になるよな」
「まあ、ね」
「俺たちは共通の夢を見た。別世界から来たと思い込んでる精神病院の患者で、ちょうどあの島にいるみてーな肉塊に襲われてた」
「………………」
ちらり、と緒形 逝(CL2000156)のほうを見る。
逝は小さく肩をふるわせていた。笑っているのだろうか。表情はまるで読めない。
「OSE(アウトサイドエネミー)があの夢みてえに元人間だったとして、別世界の俺たちの慣れはて……なんてオチはぞっとしねーぞ」
「どうなんだろうね」
白露は手すりを握って、ため息のように言った。
「さてさて、どう動こうかな」
●『早く報告しなければ。反逆者になるのはごめんだぞ!』
肩をふるわせる逝の顔を、『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)が心配そうに覗き込んでいた。
顔といってもヘルメットのバイザーに隠れて見えやしないが。
「大丈夫、ですか?」
「アァ、なんでもないよ。ちょっと船酔いかしら? 島は危ないから、そばから離れたらいかんよ工藤ちゃん」
「あ、はい……分かってます」
『共通の悪夢を見た』という報告書の内容を、今回の事件に関連するものとして奏空も読んでいた。『ある彼女』へのヒアリングは都合がつかずにできなかったが、何か大きなことが起こっているように思えてならない。
丁度その報告書を読み終えた八重霞 頼蔵(CL2000693)が、バインダーを閉じて息をついた。
「正体不明の存在に、奇怪な夢。是非に私もみてみたかったものだ」
「そ、そうですか?」
「知的好奇心というものだ。君も、それでこの任務に志願したのだろう」
頼蔵はすらりとした紳士だ。逝とは別の意味で背筋が伸びている。
随分と大人に囲まれたものだと、奏空は少しばかり場違いなことを考えた。
●『ずるいよ! なんであの子だけ外に出たの? ぼくも一緒に行きたかったのに!』
「見たことも、聞いたこともない古妖のはずなのに……覚えてる気がする。こんな島、来たことも無いのにね」
『鬼籍あるいは奇跡』御影・きせき(CL2001110)は頼蔵と同じバインダーを閉じて独りごちた。
到着が近いことを知らせるアナウンスを聞いて鞄を下ろす。
一方で『溶けない炎』鈴駆・ありす(CL2001269)はまだ報告書を読んでいた。
「OSE、外側からの来訪者……これも古妖に分類されるのね」
考えれば考えるほど、古妖というものの曖昧さに頭を悩まされる。
ここまでくると、同族把握という能力の出所すら怪しくなってくるものだ。
「さすがにそれは飛躍しすぎね。今回だけで全てはっきりするとは思えないけど、できる限りのことはしましょ」
「はい……」
納屋 タヱ子(CL2000019)は報告書とは別の資料を読み込みながら、到着の時を待っていた。
「それは?」
「地図です。地名にはすべからく所以があるものですけれど、卯没瀬島というネガティブなワードで定着しているのが気になるんです。読みも、まるでぜつぼうの逆さ読みですし」
「コトダマってやつじゃないかしら。それより、つくわよ」
船着き場へと船を寄せる。
その景色の醜悪さに、タヱ子は顔をしかめた。
●『お父さんは、お母さんはどこですか。こんな場所が、私の世界なはずがないんです』
船着き場を一人で管理していたと思われるスタッフが浮き桟橋にひっかかるようにして死んでいた。恐らく通報記録にあった男だろう。
死んでいるというのに、何が憎いのかOSEが握った煉瓦ブロックで何度も殴りつけている。
キッとこちらに顔を向けるOSE。
「態々ご苦労」
頼蔵は襟を正すと、船から浮き桟橋まで数メートルを幅跳びし、OSEを蹴り倒した。
懐から銃を抜き、倒れたOSEの頭と胸にそれぞれ発砲。
船に『つけろ』の合図を出した。
発砲音を聞きつけてか、周囲のOSEがわらわらと群がってくる。
ありすはその様子に顔をしかめた。
「いつまでたっても船が着けられないじゃないの。いくわよゆる――開眼!」
フィンガースナップで火をともすと。船の上からOSEめがけて炎弾を連射。
ガトリング射撃による強襲上陸そのものといった様子でOSEたちを押しのけると、浮き桟橋へと飛び移った。
そんなありすたちを驚異とみたのか、OSEたちが後じさりした。
ありすは炎を手にともしたまま、右から左へ目視確認。
こちらに背を向けて走り出すOSE。
「戦いやすい場所へ移ろうったてそうは行かないわ」
敵めがけ、炎の渦を解き放った。
炎に呑まれつつ、転がるように広い場所へと転がり出るOSEたち。
「行くわよ、急いで」
「わかってる!」
奏空も雷獣を放ちながら、浮き桟橋へ飛び移った。
仲間たちも桟橋へと移動を終えている。船をここに残しておくのは危険だろう。奏空は送受心でもってスタッフに船を離すように伝えた。100メートル程度なら離れていても送心できる。安全が第一だ。
試しにOSEたちにも送受心を試みたが、普通に拒絶された。敵相手にコールして切られることは別に珍しくない。普通のことだ。
「別にいいけどっ!」
刀を抜いて突撃。
OSEのうち何人かが振り返り、近くに落ちている硬そうなものを手に取った。
残りは病院方向へと走っていく。
身構え、奏空に目配せするありす。
「逃げるつもり?」
「仲間に襲撃を知らせるつもりじゃないかな。倒した敵、数だけでも記録しておいて!」
「もうしてるわよ!」
奏空とありすは同時にかけだした。
鉄パイプを振りかざすOSE。それが振り下ろされる直前に懐へ滑り込み、刀で十字斬りを叩き込む奏空。
その横を駆け抜けながら、ありすはすれ違いざまにOSEの側頭部へ手を翳す。
「一体目!」
「二体目じゃなくて!?」
「いや、二体目は今片付けた」
浮き桟橋でぐったりしていたOSEが起き上がり、煉瓦ブロックを振り上げる。
その腕を素早く射撃する頼蔵。
腕ごと飛んでいった煉瓦ブロックが海へと沈んでいく。頼蔵はどこからともなく抜いたサーベルでもってOSEの首を切り落とした。
血振りをして、振り返る。
「どうやら血は流れるらしいな。粘土細工でなくてむしろ安心した」
冗談ともとれるような頼蔵の言葉に、奏空は愛想笑いと苦笑いの間めいた顔をした。
小柄なOSEがこちらめがけてまっすぐ走ってくる。
対する白露はゆっくりと土と砂利の道を歩いていた。
距離が50メートルをきった頃。
両腰にぬらりと現われた柄に手をかけて、二本の刀を引き抜いた。
「さ、いこうか」
白露は歩みを早歩きに、早歩きを疾走に変えて突っ込んだ。
小石を投げてくるOSE。なんてことのない攻撃だ。白露はそれをあえてかわさず、額に跳ねた石と一滴の血をそのままに、OSEの首筋を切り裂いた。
流れるように胸、背中、腰を連続で切りつけ。まるで舞うようにOSEの周囲をぐるりと一週。計十二箇所の斬撃を与えた後に、開きの構えで背後に立ち止まった。
崩れ落ちるOSE。血の一滴もつかない刀をそのままに、白露は再び書けだした。
向こうからはOSEの集団。
「ぼくにまかせてっ!」
きせきが刀を抜き、集団へと文字通りに飛びかかる。
襲いかかってきたはずなのにOSEたちは慌てて顔を庇うような姿勢をとった。
かまうことなどない。きせきは目を子供のように光らせると、自らを回転させてOSEたちを薙ぎ払った。
落ちたパイプ椅子の残骸を拾い上げ、殴りつけてくるOSE。
軌道はきせきの後頭部を確かに狙っていたが、それを滑り込んだタヱ子が受け止めた。
リストバンドで固定した盾がパイプ椅子を弾き上げ、もう一方の西洋盾でシールドバッシュを仕掛ける。
大きくのけぞったOSE。その両肩からぬらりと刀がはえた。
否、背後に回ったきせきがクロスした刀をハサミよろしく首にすえたのだ。
「それっ」
血しぶきと共に首が飛んでいく。
タヱ子はその光景がなぜか残酷に見えて、思わず目をそらした。
こんなことをしている場合じゃ無い。
病院に急がなくては。
「いきましょう!」
病院の壁と地面と弾丸の列が跳ねていく。
壁を遮蔽物にして射撃を防ぐOSEに、誘輔は舌打ちした。
「いらねえ知恵つけやがって」
機関銃化した腕を盾のように翳してダッシュ。
木の板で作ったと思しき簡易バリケードを突き破ると、その裏でおさえようとしていたOSEもろとも突き飛ばした。
廊下を走って逃げていくOSEの背中に射撃をあびせる。
次々と転倒していくOSE。
誘輔の横を抜けるように逝が駆け抜け、OSEの背中や足を次々に切っては捨てていった。
肩がふるえている。笑っているのだろうか。
誘輔は無意識に舌打ちし、舌打ちの意味がわからず自らに顔をしかめた。
●『私を閉じ込めておくことは人類を守ることにつながるそうです。理解も共感も求められませんでしたが、私にはそれで充分でした』
きせきは、この依頼で特に気になっていることが二つある。
ひとつは鉄パイプの槍をもった敵で、もうひとつは……。
「あっ……!」
病院廊下の角を曲がった所で、OSEを発見した。
パイプ椅子をねじ曲げたような簡易槍を持ったOSEと、その影に隠れる小柄なOSEだ。
「今度は逃げないもん!」
思わず叫んで、きせきは飛び込んだ。
きせきの刀が的確に首を狙ったにもかかわらず、OSEは予備動作のないダウンスウェーできせきの死角へ回り込んだ。
振り向き斬りが槍にとめられる。
小柄なOSEが飛びかかり、きせきを押し倒した。
「は、はなして……! やめて……!」
自分の口が勝手に喋ったように思えて、きせきは強い嫌悪感を覚えた。
こんなことを言うのは自分じゃない。
しかしこんなことを言うのも自分のような気がする。
何が本当で、何が自分で、何が現実で、何が夢で、何が正しいのか、何を選ぶべきなのは自分の夢に現実が自分のゾンビが見た夢の正しさは卒業式の記憶なんて自分は正しさのゾンビが博士の研究所のパパがどうして事故が夢が病院がぼくが世界の夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が夢が――。
「うわあ!」
きせきは全力でOSEを振り払った。
壁に頭をぶつけ、ぐったりを崩れるOSE。
それを守るように割り込む、槍のOSE。
槍が自分の胸を貫くが、きせきはそれを無視した。
直後、OSEの首が二つまとめて飛んでいった。
はたと我に返るきせき。
頼蔵がサーベルの血降りをして、手を出した。
「迎えに来た。合流するぞ」
言われて、自分がしりもちをついていることに気づいたきせきは、頼蔵の手を取った。
きせきがOSEに遭遇しても仲間の助けを得られなかったことには二つの理由がある。
ひとつはきせきの無意識的な執着心であり、もうひとつはOSEの強襲による分断であった。
「これで何体目だっけ――とにかく、次!」
奏空はOSEを切り払い、階段から蹴落とした。
ごろごろと転がって階段の最下層でぐったりととまるOSE。僅かにあげた頭を、駆けつけた頼蔵が拳銃で打ち抜いた。見もせずにワンショットで額を抜いている。
ネクタイを締め直して、階段踊り場の奏空を見上げた。
「無事か」
「そっちは?」
「御影君を回収した。私たちも合流する」
「そっか……。二階の探索に移るんです。一緒に来てください!」
奏空の呼びかけに頷いて、頼蔵は階段を上がった。
耳をすませるように手を当てる奏空。
「二階に敵はいないみたいです。三階に行きましょう」
「三階ね……じゃあ、おっさんたちが先行するから後ろみといてくれるかい」
「え、あ……はい」
絶妙なタイミングで言われたせいで頷いてしまったが、気づいた時には逝が三階へ駆け上がっていた。
「……」
複雑な顔をしてそれを追いかける誘輔。
階段の上からは、まるで待ち構えていたかのようにOSEが飛びかかってくる。
攻撃を引き受けるべく飛び出すタヱ子。
タヱ子によって押し返されたOSEたちを切り裂いて、逝が踊り場を通過。
跳ねるように三階へ転がり込み、奥を目視。
三体のOSEが振り向き、こちらへ突撃してくる。
迎え撃ち、先頭の一人を投げ飛ば――したかと思うと、逝が逆にひっくり返された。
地面に頭を強打する。
「なめんな……!」
いつの間にか入り込んでいた誘輔が近くのパイプベッドを無理矢理引っ張り出して投擲。更に機関銃を乱射すると、OSEたちを背後の壁ごと吹き飛ばし、野外へと放り出した。
「おっと……いいの?」
崩れた壁から顔を覗かせる白露。
「大丈夫だろ。あっちには確か……」
OSEたちの落下した場所には、丁度ありすがいた。
がたがたと身体をゆすって起き上がるOSE。
「しぶといんだかか弱いんだか」
手の中に炎を宿すありす。
「でも、もうおしまいよ」
ありすは炎の渦を解き放ち、OSEたちを焼き尽くした。
ため息をついて、あたりを見回す。
「古妖の気配は……もうしないみたいね」
頭に手を当てて、奏空からの送受心を受け取った。
『大丈夫? 敵が行ったみたいだけど』
『瞬殺よ。それより、そっちはどう?』
『特に問題ないみたい。皆いるし……それより敵の気配は?』
『同族把握にはもうかかってないからゼロだと思うけど』
『そっか、ありがと。じゃあ探索に移るよ。何かあったら……』
『合図でしょ。分かってる』
通信を終えて、ありすは深呼吸した。
「念のため外に残ったけど、どうしましょうかね。聞き込み調査……は、無理ね。島の人たちはもう亡くなってるし」
ありすはとりあえずという風に、周囲を散策することにした。
●『みんなどこ? 私、帰ってきたよ! どこにいるの!?』
「ねえ、この建物って三階建てだよね」
「まあそうね。隠し扉とか、そういうのはあるかい」
屋上に出て、白露と逝は周囲をぐるりと見回していた。
「この周辺には特に。けど、なんだろう……この建物、四階建てだったような気がするんだけど」
「奇遇だねえ。おっさんもそんな風に思ってたところさね」
逝は親指を下に向けて肩をすくめた。
「地下とか、見てみるかい?」
頼蔵は事務所で資料を漁っていた。
といっても、医学的な専門用語ばかりであまり理解はできないが……とにかく病気の治療らしいことをしていたことはわかった。
それもあまり珍しい病気ではないようだ。
「古い精神病院、と言ったところか」
隣ではきせきがオモチャでも分解するようにOSEの死体を切り開いている。
「ねえ見て、表面はおばけみたいだけど、中身は教科書で見たまんまなんだよ。でも首から上が途切れてからっぽなの。なんでかなあ」
「…………」
あまりにナチュラルに聞かれるものだから、頼蔵は返答に困ったが。
「調べる、か」
きせきの調査に付き合うことにした。
病院そのものを警戒するという目的でありすを外に置いてきた奏空は、送受心で会話をしながら屋内を探索していた。
向かう先は地下室だ。
『病院の地下室って、なんか恐いな』
『おまけに廃墟だものね。帰ってきてもいいのよ。交代してあげましょうか?』
『大丈夫だよ!』
地下には鉄の扉があった。
頑丈で開かない。鍵がかかっているようだ。
するとそこへ、逝と白露がやってきた。
「おや、奇遇だね。その先を調査するのかい」
「そうなんですけど鍵が……」
「おっさんに任せな。壁抜け出来るから。それより、透視頼めるかね」
逝は白露に目配せをした。
白露は壁をじっと見つめたまま、暫く黙っていた。
「どうしたの?」
「ううん……なんだか、とても退廃的でさ」
扉の先には……。
「雛代供犠……か」
「この島にはいないんですかね、やっぱり」
タヱ子と誘輔は病院内を歩きながら会話していた。
「いや、なんかあるはずだ。引っかかるんだよ、色々と」
ぱらぱらと手帳をめくる誘輔。
そして、あるところで手が止まった。
汚い走り書きでこうある。
『卯没瀬島病い』
「おい……おいおいおいおいおい」
心配そうに見てくるタヱ子に、誘輔は複雑な顔を向けた。
「俺、ここを知ってるぞ」
――『チェンジリング・クロス』へつづく。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
『鉄パイプの槍』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:御影・きせき(CL2001110)
『ダイイングメッセージ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:緒形 逝(CL2000156)
『聞き込み調査書』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:鈴駆・ありす(CL2001269)
『記憶のかけら』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:工藤・奏空(CL2000955)
『病院記録』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:八重霞 頼蔵(CL2000693)
カテゴリ:アクセサリ
取得者:御影・きせき(CL2001110)
『ダイイングメッセージ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:緒形 逝(CL2000156)
『聞き込み調査書』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:鈴駆・ありす(CL2001269)
『記憶のかけら』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:工藤・奏空(CL2000955)
『病院記録』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:八重霞 頼蔵(CL2000693)
