≪初心者歓迎≫動物園ゴリラ妖討伐依頼
●AAAより応援要請
危険度の低い動物系妖が廃動物園に巣くっている。
まだ被害は出ていないが、人が迷い込めば致命的な危険がある。
覚者でチームを組み、これを撃退して欲しい。
●妖ゴリラ
久方 真由美(nCL2000003)は資料をめくりながら説明を続けた。
「今回皆さんには、この妖と戦って頂きます。数はいますが個体スペックはとても低いので、戦闘経験の少ない方でも安心してご参加頂けます」
ランク1動物系。ゴリラ型の妖である。
これが園内に複数体散らばり、うろついているということだ。
「二十年以上前に閉園したこの動物園は、三つのエリアと一つのホールに分かれています。エリア間の移動はあまりありませんので、前半はチームを分けて戦闘。最後はホールに集合して戦闘という形になると思われます」
詳しい資料を配り、真由美は微笑んだ。
「それでは皆さん、頑張ってくださいね」
危険度の低い動物系妖が廃動物園に巣くっている。
まだ被害は出ていないが、人が迷い込めば致命的な危険がある。
覚者でチームを組み、これを撃退して欲しい。
●妖ゴリラ
久方 真由美(nCL2000003)は資料をめくりながら説明を続けた。
「今回皆さんには、この妖と戦って頂きます。数はいますが個体スペックはとても低いので、戦闘経験の少ない方でも安心してご参加頂けます」
ランク1動物系。ゴリラ型の妖である。
これが園内に複数体散らばり、うろついているということだ。
「二十年以上前に閉園したこの動物園は、三つのエリアと一つのホールに分かれています。エリア間の移動はあまりありませんので、前半はチームを分けて戦闘。最後はホールに集合して戦闘という形になると思われます」
詳しい資料を配り、真由美は微笑んだ。
「それでは皆さん、頑張ってくださいね」

■シナリオ詳細
■成功条件
1.全ての妖の撃破
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
今回の要素は足場とラッシュです。
●ゴリラ妖
ランク1動物系
殴る蹴る:物近単
石を投げる:物遠単
吠える:特近列(ダメージ小さめ)
●三つのエリア
岩場エリア、草むらエリア、プールエリアの三つに分かれています。
それぞれ名前の通りの足場になっており、凸凹の多い岩場は高いバランス感覚や飛行能力があると有利。プールは(なんでか綺麗なので)水上行動や水中での行動力があると有利。草むらエリアはあまり影響がありません。
それぞれのエリアに数体ずつの弱いゴリラ妖がうろついています。
こちらを見つけると仲間を呼んで向こうから襲いかかってくるので、探索の必要は無いでしょう。
後半は中央ホール。
ホール前で一旦全員合流してから突入しましょう。
裏手やなんかに入っているゴリラ妖が大量に出てくるという屋内ラッシュ戦闘になります。
回復や盾役、ヘイト調整なんかの担当を分けてラッシュをしのぎましょう。
前半は楽ちん、後半はちょっと歯ごたえありといった戦闘難易度になっております。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
7日
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
7/9
7/9
公開日
2016年07月20日
2016年07月20日
■メイン参加者 7人■

●岩場ゴリラ
ドラミングを咆哮を織り交ぜ、岩場を進行するゴリラ妖の集団。
いっそ末期的とも言える光景を前にしながらも、『罪なき人々の盾』天城 聖(CL2001170)は突き立った岩の上に寝そべっていた。
それも平らな箇所ではない。とがった岩の先端に寝そべっているのだ。
ばさりと翼を羽ばたかせ、身体を起こす聖。
「味気ないって言っておきながら、まーた来ちゃったよ」
聖は頭上に浮かぶアテンドのタマから錫杖を引っこ抜くと、寝そべり型戦闘態勢をとった。
といっても最初の姿勢との違いは仰向けか横向けかだけである。
「えいっ」
「うがぁ!?」
飛びかかろうと岩からジャンプしたゴリラの腹に空圧弾が命中し、ゴリラが激しく吹き飛んでいく。
「おー、とぶとぶ。ちょっと遊んじゃおっかな」
聖は錫杖を地面に突き立て、その上に飛び乗った。
彼女を取り囲むように三匹のゴリラが周囲に回り込む。追い詰めたつもりなのか、一匹がドラミングを始めると同時に別の一匹が大きめの石を投擲。もう一匹が直接飛びかかってきた。
聖は飛来した石を片手でキャッチ。術式を練って空圧の膜でくるむと、眼前にひょいっと投げた。
正面から突撃してくるゴリラ。ほっぷすてっぷじゃんぷのタイミングで、空圧ボールは丁度聖のシュートポイントへと落下した。
「ひっさつしゅーとっ!」
ボールを蹴りつける聖。途端、常識ではありえない軌道を描いてゴリラの腹部に直撃。どころか、ゴリラを貫通して後ろの岩を粉砕した。
その様子に唖然とする残りのゴリラ。
「さてと、遊んでないで合流地点にいそがなきゃ」
聖はぴょんと錫杖から飛び降りると、ゴリラたちに背を向けたままパチンを指を慣らした。
迸る雷。
飛びかかろうか逃げようかで迷っていたゴリラたちはたちまち雷にあてられ、消滅していった。
●ゴリラプール
ここは元動物園。妖被害によって見事に廃墟化したエリアである。
そんな事情から、深くて広く入り組んだプールが存在していた。勿論人が泳ぐためのものではない。アザラシやセイウチ、もしくはペンギンなんかが泳いでいた場所だろう。
そんなプールの中にゆらめく桃色の影。
ゴリラたちはそれを人間だと察して、次々にプール内へ飛び込んでいった。
いかな因子強化された人間といえど水中では動きも鈍ろうもの。そう思っていたゴリラたちは浅はかだった。
『アンシーリーコートスレイヤー』神々楽 黄泉(CL2001332)は頬に空気をため、水底をまるで陸上と同じようにダッシュ。
水中の浮力があるぶん加速は陸上のそれより速く、ゴリラたちは身構えるより前に眼前まで接近された。ぱっと息を吐く黄泉。
「ぜろ」
手を翳す黄泉。と同時に手元に巨大なポールアックスが出現。握り込む。
ずしんと経年劣化したプールの底にヒビが走り、一瞬後には黄泉の斧が一閃。ゴリラたちはたちまち上下に分割され、そのまま消滅していった。
そのままでは呼吸が持たないので水上へキック。息継ぎがてらに、プールサイドへと上がった。
「ごりら、沢山、いるなら、薙ぎ払う、だけ。そっち、よろしく、ね? ……財城」
「ええそれはもう、任せてください。ボクが味方についているからには安心ですよ!」
『"慢心"創痍』財城 真珠(CL2001434)はぐいっと胸を張ると、金色のフルートをどこからともなく取り出した。
「見せてあげましょうっ!」
ぴょんと人工岩から飛ぶと、水面へ着地。アイススケートの要領で水面を滑り始めると、フルートを口元に当てた。
「僕はまだ打たれ弱いんで、後ろから攻撃させて貰いますね。決して恐いからとかではなく冷静な判断から――」
「でも」
黄泉のブロックを超えたゴリラたちが真珠めがけて突撃してきた。
二度見する真珠。
「押さえきるの、無理だけど」
「しし知ってましたよ! ブロックが下回った場合後衛まで接近されうるって! だから言ったじゃ無いですか恐いからじゃないってェ――!?」
顔面めがけて飛んできた石をのけぞってかわす真珠。
「あ、あぶないですね。ボクの高度な反射神経がなければ避けられなか――あ」
一斉に石を振り上げるゴリラたち。
真珠は急いでフルートを1小節ほど奏でると、ゴリラの周囲に術式性の霧が発生。投げた石がへろへろと明後日の方向に飛び、プールにぽちゃんと落ちていく。
「見ましたか、この通り! ボクにかかればゴリラくらい!」
フルートを指揮棒のごとく振り回し、天に向かって振り上げる。
と、鋭いスパークがほとばしり、ゴリラたちを直撃する。
ゴリラたちは断末魔をあげ、消滅していった。
「チョチョイのチョイですよ! ……ふう」
胸をなで下ろす真珠。その途端、水上歩行を忘れてプールの中にドボンした。
●ゴリラ草原
動物園には最も多い草むらのエリア。
その中で、緒形 逝(CL2000156)は襲い来るゴリラを文字通り千切っては投げ千切っては投げしていた。
「知ってるかい? 動物系妖ってぇのはね、倒すと動物の死体やその一部になるんだけど、場合によっては生きたまま開放されるケースがあるんさね」
上下をひっくり返してゴリラを地面に叩き付ける。野生の生物だったら完全に死んでる外傷を受けていたが、わずかな光に包まれた途端ゴリラはリアルゴリラとなってその場から逃げ出した。
「これはラッキーなケース」
「ふーん。じゃあ牛とか豚とかの妖倒しても食べられないんだ」
その辺のベンチに腰掛けて両手で顎肘をつく天乃 カナタ(CL2001451)。
「そ。よく勘違いされるけど、そういう意味じゃ『妖の死体』ってのはないのよ……って」
くるりと振り返る逝。
「おっさんにばっかやらせちゃダメでしょ」
「えー、だって歩くの疲れたしー。韋駄天足あるんでしょ、乗せてってよー。乗せたまま戦ってよー」
「……」
逝はメットの上から頭をかく仕草をした。
「おっさん、こういう指導役みたいな立場、ガラじゃないんだけどね」
「だけど?」
「韋駄天足は戦闘に使えないから、使うならエリア移動だけ。あとは自力でやらんと」
「ちぇー」
カナタはベンチから立ち上がると、馬用の鞭を取り出した。
「ほらゴリラ、おいでおいでー」
彼の手招きに逆上したのか、ゴリラは吠えながら飛びかかってくる。
拳によるパンチを紙一重で回避すると、脇の下をくぐり抜けるように鞭を放つ。
全身に走った衝撃に驚いて転倒するゴリラ。
カナタを背後から狙ったゴリラが前後からのサンドアタックに失敗してたたらをふむ。その隙をついて、カナタは振り向きざまに空圧弾を放った。
脳天に食らって転倒するゴリラ。
そこへ、『大魔道士(自称)』天羽・テュール(CL2001432)と黒樹・廻良(CL2001450)が駆け寄ってきた。
「すみません、あっちのゴリラに手こずっちゃって。意外と数がいるものですから」
テュールは三角帽子をぐいっとあげると、魔術師めいた杖を振りかざした。
「いきますよー!」
杖の先端で空気をかき混ぜる。すると魔術的な特殊空間が広がり、カナタや逝たちを包み込んだ。勿論廻良も例外ではない。
「えっと、うん。ありがと」
機化硬で強化したばかりの補助付与だったので、小さく頭を下げてテュールに礼を言った。
ファイヴでの実戦経験こそ積んでいないがもといた組織で知識を蓄えていた廻良である。割とベテランでも忘れがちな強化スキルの重複ルールもわきまえていた。
強化スキルは一つまで。補助スキルは因子術式体術でそれぞれ一つまで重複が可能になる。ややっこしいがとにかくそういうことなので、忘れかけたらマニュアルでも読み直したらいい。
「頑張らないと」
そう言って、腰の後ろにベルト固定していた斧を手に取った。
タクティカルミニアックスというもので、黒いステンレス素材にゴム製の持ち手。インパクト部分は斧状の表側とピッケル状の裏側で構成されている。
小柄で腕力も弱い廻良にはピッタリのアイテムだ。
「さあ、どっからでもかかってきなさい!」
そんな廻良に挑みかかるゴリラたち。
二匹のゴリラが同時に突撃。
対する廻良はあえて正面から突っ込み、パンチを誘う。
繰り出されたパンチをスウェー移動で回避。懐に潜り込むと、回転ステップで手斧を叩き込んだ。
小柄な彼女でも遠心力を使えば十分な打撃力を出せる。現にゴリラは激しく呻いて地面を転がり、もう一方を慌てさせた。
その間に背後へ回り込み、足首を引っかける要領で手斧を滑り込ませる。
あとはテコの原理である。斧の下部が『かえし』の効果を持ち、あとはぐいっと引っ張るだけでゴリラの身体をひっくり返すことが出来た。
倒れたゴリラに、手斧を高く振り上げる。
「悪いわね」
廻良は、ゴリラに全力で斧を叩き付けた。
そんな彼女を取り囲みにかかるゴリラたち。
斧を広く構えて防御の姿勢をとる廻良だが、そんな彼女にテュールが駆け寄った。
「伏せていてください! 薙ぎ払います!」
杖を掲げ、魔方陣を生み出すテュール。
魔方陣は幾多にも重なり、天空へと放たれる。
放たれたそれらがはじけて広がり、巨大な暗雲となってゴリラたちの頭上を覆った。
「……!?」
その様子に危機を察したゴリラが回避行動をとろうとするももう遅い。
「サンダーボルト!」
テュールが杖を振り下ろした途端にゴリラたちを電撃が襲い、その場にいる全てのゴリラを殲滅した。
そんな一連の様子を、腕組みしながら眺める逝。
「上出来上出来。さて、そろそろ合流地点に行くかね」
●ゴリラホール
合流した七人の覚者たちは、遊園地の中央ホールへとやってきた。
「へー、結構広いんだ。で、ここの奥がゴリラ満載なの? ゴリラ工場なの?」
カナタがニコニコしながらその場にあった椅子に腰掛けた。テーブルに足をのっけた姿は行儀が悪いが、椅子もテーブルも使い物にならないくらい劣化しているので関係なかった。
「カナタくん。いいことを教えてあげる」
わざわざ君付けしてきた聖に、カナタはちらりと振り向いた。
意味ありげに、そして悲しげに微笑む聖。
「あんパンには、こしあんとつぶあんがあるんだよ」
「めちゃくちゃどーでもいーよ!」
思わずテーブルを蹴倒して立ち上がるカナタ。
そのタイミングを待っていたのかいないのか、奥のシャッターを突き破って無数のゴリラが突撃してきた。
「早速来ましたね!」
真珠はハンドネオンというアコーディオンの妖怪みたいな楽器を取り出すと、複雑に配置された演奏ボタンを操作し始めた。
「ゴリラの、群れくらい、ボクが、押し返して、みせますよ」
とか言いながら一歩ずつ後退する真珠である。
そうしながらも纏霧を発動。
突撃してきたゴリラの群れを丸ごと飲み込み、彼らの動きを緩慢にした。
纏霧は低ランクの敵が大量に現われるときにひたすら役に立つスキルだ。天行使いながら一度はお世話になるだろう。
「さあ、今です!」
「任せて」
黄泉が無表情のまま飛び出し、ゴリラの群れへ突撃を開始。
と同時に廻良も手斧を構えてダッシュ。
二人はお互いにアイコンタクトだけをとると、小さく頷きあった。
黄泉はあえて身を低くしてゴリラの中心を攻めるように加速。
その間廻良は椅子やテーブルを踏み台にしてジャンプ。
ゴリラがどちらを襲おうか迷ったその一瞬をついて、黄泉は大胆な大斧一文字斬りを繰り出した。
ゴリラの胴体を切断するというより、ゴリラたちの腹をひっかくつもりで繰り出した斬撃だ。思わず防御したゴリラたちだが、その頭上には上下反転した廻良があった。
ゴリラの首に手斧を二本ひっかけ、背後へすとんと着地。
彼女の体重をつかった『ねじり折り』によってゴリラは崩れ落ち、直後に廻良は斧の先端にエネルギーを集中。己の回転によってエネルギーの弾を拡散発射し、ゴリラたちを薙ぎ払った。
そうこうしている間にホール側面の窓ガラスが割られ、大量のゴリラが突入してくる。
急いでフォローに……と慌てた廻良を、黄泉が手を翳して止めた。
「大丈夫」
顎で示す黄泉。
示した先では、テュールが杖をライフルのように構えて立っていた。
杖の先端に電流と極小魔方陣が集まり、今にも暴れ出しそうにスパークしている。
「このくらいっ――大魔道士のボクにかかれば!」
右から左へ電撃のビームで薙ぎ払う。
が、ゴリラたちとてタダではやられない。
倒されたゴリラを踏み越え、さらなる群れが突撃してくる。
「り、リキャスト……!」
再び電撃を放とうとするが間に合わない。が、そこへ飛び出したのは真珠だった。
「そういうのは、ボクの役目でしょう!」
ハンドネオンの演奏を始める真珠。すると、周囲の空間からスパークボールが次々に出現。ゴリラの群れへと食らいついていく。
そうして打ち払ったゴリラの群れ。再び魔力の充填を終えたテュールは、真珠のフルートと交差するように杖を掲げた。
凄まじい電撃がはしり、ゴリラたちを一掃する。
「うんうん、キミたちは……もう分かったみたいだね」
聖が二人の肩を叩いて頷いた。
苦労を知る先人の目をして、口を開く。
「ドラミングをパソコンで打つと『銅鑼民具』って変換されて強そうだって、ことがさ」
「「すごくどうでもいい!」」
ぺっと手を振り払うテュール。
が、先程の電撃に聖がこっそり雷獣を織り交ぜていたことには、気づいていただろうか。
一方で、あの人何やってんだろうの顔(見えないけど)をしながら余ったゴリラを右へ左へ切り払って処理する逝。
「そうだ。折角だから回復頼んでいいかい」
「え、別にいいけど。最初からそのつもりだけど」
カナタはミネラルウォーターのミニボトルに回復術式を込めると、逝へ向かって投げた。
ヘルメットしてるからどうやって飲むのかなくらいの気持ちで投げたが、逝はそれを空中で切断。あふれ出た液体を頭からばしゃーっと浴びた。
「はいありがと」
「……」
この人よくわかんないなって顔で首を傾げるカナタ。そんな彼の横に、聖がすっと立ち止まった。
「その通りだよ」
「えっ」
優しげな目で振り向く。
目が合う。
「食パンの袋をとめてるやつの正式名称は、そう……バッククロージャー」
「ちょーどうでもいー!」
そう言っている間に彼らの後ろに回り込んだゴリラがうなりを上げた。
咄嗟に振り返るカナタ。
振り上がるゴリラの拳。
が、その拳が下ろされるより早く、逝が腕を切断していた。
くるくると回って飛んでいくゴリラの腕。
一瞬の静寂。
逝がちょいちょいと指招きするので、カナタはにんまりと笑った。
「とどめっ!」
カナタは指でっぽうをゴリラの腹に押し当て、銃を撃つまねをした。
衝撃だけが走り、ゴリラを貫通。
仰向けに倒れ、そして消滅した。
「ひゅう、ゴリラって近くでみるとこえー」
丁度その頃、黄泉やテュールたちもゴリラを倒し終え、集まってくる所だった。
不思議な光景だった。
あれだけいた敵の群れが、たった七人の男女によって駆逐される。
そんな光景が広がっている。
「これで、もう分かったんじゃないかな」
聖は不敵に、そしてずるがしこい笑みを浮かべていった。
「ゴリラが皆、血液B型だってことがさ」
「「とてもどうでもいい!」」
妖討伐任務、完了。
被害、なし。
ドラミングを咆哮を織り交ぜ、岩場を進行するゴリラ妖の集団。
いっそ末期的とも言える光景を前にしながらも、『罪なき人々の盾』天城 聖(CL2001170)は突き立った岩の上に寝そべっていた。
それも平らな箇所ではない。とがった岩の先端に寝そべっているのだ。
ばさりと翼を羽ばたかせ、身体を起こす聖。
「味気ないって言っておきながら、まーた来ちゃったよ」
聖は頭上に浮かぶアテンドのタマから錫杖を引っこ抜くと、寝そべり型戦闘態勢をとった。
といっても最初の姿勢との違いは仰向けか横向けかだけである。
「えいっ」
「うがぁ!?」
飛びかかろうと岩からジャンプしたゴリラの腹に空圧弾が命中し、ゴリラが激しく吹き飛んでいく。
「おー、とぶとぶ。ちょっと遊んじゃおっかな」
聖は錫杖を地面に突き立て、その上に飛び乗った。
彼女を取り囲むように三匹のゴリラが周囲に回り込む。追い詰めたつもりなのか、一匹がドラミングを始めると同時に別の一匹が大きめの石を投擲。もう一匹が直接飛びかかってきた。
聖は飛来した石を片手でキャッチ。術式を練って空圧の膜でくるむと、眼前にひょいっと投げた。
正面から突撃してくるゴリラ。ほっぷすてっぷじゃんぷのタイミングで、空圧ボールは丁度聖のシュートポイントへと落下した。
「ひっさつしゅーとっ!」
ボールを蹴りつける聖。途端、常識ではありえない軌道を描いてゴリラの腹部に直撃。どころか、ゴリラを貫通して後ろの岩を粉砕した。
その様子に唖然とする残りのゴリラ。
「さてと、遊んでないで合流地点にいそがなきゃ」
聖はぴょんと錫杖から飛び降りると、ゴリラたちに背を向けたままパチンを指を慣らした。
迸る雷。
飛びかかろうか逃げようかで迷っていたゴリラたちはたちまち雷にあてられ、消滅していった。
●ゴリラプール
ここは元動物園。妖被害によって見事に廃墟化したエリアである。
そんな事情から、深くて広く入り組んだプールが存在していた。勿論人が泳ぐためのものではない。アザラシやセイウチ、もしくはペンギンなんかが泳いでいた場所だろう。
そんなプールの中にゆらめく桃色の影。
ゴリラたちはそれを人間だと察して、次々にプール内へ飛び込んでいった。
いかな因子強化された人間といえど水中では動きも鈍ろうもの。そう思っていたゴリラたちは浅はかだった。
『アンシーリーコートスレイヤー』神々楽 黄泉(CL2001332)は頬に空気をため、水底をまるで陸上と同じようにダッシュ。
水中の浮力があるぶん加速は陸上のそれより速く、ゴリラたちは身構えるより前に眼前まで接近された。ぱっと息を吐く黄泉。
「ぜろ」
手を翳す黄泉。と同時に手元に巨大なポールアックスが出現。握り込む。
ずしんと経年劣化したプールの底にヒビが走り、一瞬後には黄泉の斧が一閃。ゴリラたちはたちまち上下に分割され、そのまま消滅していった。
そのままでは呼吸が持たないので水上へキック。息継ぎがてらに、プールサイドへと上がった。
「ごりら、沢山、いるなら、薙ぎ払う、だけ。そっち、よろしく、ね? ……財城」
「ええそれはもう、任せてください。ボクが味方についているからには安心ですよ!」
『"慢心"創痍』財城 真珠(CL2001434)はぐいっと胸を張ると、金色のフルートをどこからともなく取り出した。
「見せてあげましょうっ!」
ぴょんと人工岩から飛ぶと、水面へ着地。アイススケートの要領で水面を滑り始めると、フルートを口元に当てた。
「僕はまだ打たれ弱いんで、後ろから攻撃させて貰いますね。決して恐いからとかではなく冷静な判断から――」
「でも」
黄泉のブロックを超えたゴリラたちが真珠めがけて突撃してきた。
二度見する真珠。
「押さえきるの、無理だけど」
「しし知ってましたよ! ブロックが下回った場合後衛まで接近されうるって! だから言ったじゃ無いですか恐いからじゃないってェ――!?」
顔面めがけて飛んできた石をのけぞってかわす真珠。
「あ、あぶないですね。ボクの高度な反射神経がなければ避けられなか――あ」
一斉に石を振り上げるゴリラたち。
真珠は急いでフルートを1小節ほど奏でると、ゴリラの周囲に術式性の霧が発生。投げた石がへろへろと明後日の方向に飛び、プールにぽちゃんと落ちていく。
「見ましたか、この通り! ボクにかかればゴリラくらい!」
フルートを指揮棒のごとく振り回し、天に向かって振り上げる。
と、鋭いスパークがほとばしり、ゴリラたちを直撃する。
ゴリラたちは断末魔をあげ、消滅していった。
「チョチョイのチョイですよ! ……ふう」
胸をなで下ろす真珠。その途端、水上歩行を忘れてプールの中にドボンした。
●ゴリラ草原
動物園には最も多い草むらのエリア。
その中で、緒形 逝(CL2000156)は襲い来るゴリラを文字通り千切っては投げ千切っては投げしていた。
「知ってるかい? 動物系妖ってぇのはね、倒すと動物の死体やその一部になるんだけど、場合によっては生きたまま開放されるケースがあるんさね」
上下をひっくり返してゴリラを地面に叩き付ける。野生の生物だったら完全に死んでる外傷を受けていたが、わずかな光に包まれた途端ゴリラはリアルゴリラとなってその場から逃げ出した。
「これはラッキーなケース」
「ふーん。じゃあ牛とか豚とかの妖倒しても食べられないんだ」
その辺のベンチに腰掛けて両手で顎肘をつく天乃 カナタ(CL2001451)。
「そ。よく勘違いされるけど、そういう意味じゃ『妖の死体』ってのはないのよ……って」
くるりと振り返る逝。
「おっさんにばっかやらせちゃダメでしょ」
「えー、だって歩くの疲れたしー。韋駄天足あるんでしょ、乗せてってよー。乗せたまま戦ってよー」
「……」
逝はメットの上から頭をかく仕草をした。
「おっさん、こういう指導役みたいな立場、ガラじゃないんだけどね」
「だけど?」
「韋駄天足は戦闘に使えないから、使うならエリア移動だけ。あとは自力でやらんと」
「ちぇー」
カナタはベンチから立ち上がると、馬用の鞭を取り出した。
「ほらゴリラ、おいでおいでー」
彼の手招きに逆上したのか、ゴリラは吠えながら飛びかかってくる。
拳によるパンチを紙一重で回避すると、脇の下をくぐり抜けるように鞭を放つ。
全身に走った衝撃に驚いて転倒するゴリラ。
カナタを背後から狙ったゴリラが前後からのサンドアタックに失敗してたたらをふむ。その隙をついて、カナタは振り向きざまに空圧弾を放った。
脳天に食らって転倒するゴリラ。
そこへ、『大魔道士(自称)』天羽・テュール(CL2001432)と黒樹・廻良(CL2001450)が駆け寄ってきた。
「すみません、あっちのゴリラに手こずっちゃって。意外と数がいるものですから」
テュールは三角帽子をぐいっとあげると、魔術師めいた杖を振りかざした。
「いきますよー!」
杖の先端で空気をかき混ぜる。すると魔術的な特殊空間が広がり、カナタや逝たちを包み込んだ。勿論廻良も例外ではない。
「えっと、うん。ありがと」
機化硬で強化したばかりの補助付与だったので、小さく頭を下げてテュールに礼を言った。
ファイヴでの実戦経験こそ積んでいないがもといた組織で知識を蓄えていた廻良である。割とベテランでも忘れがちな強化スキルの重複ルールもわきまえていた。
強化スキルは一つまで。補助スキルは因子術式体術でそれぞれ一つまで重複が可能になる。ややっこしいがとにかくそういうことなので、忘れかけたらマニュアルでも読み直したらいい。
「頑張らないと」
そう言って、腰の後ろにベルト固定していた斧を手に取った。
タクティカルミニアックスというもので、黒いステンレス素材にゴム製の持ち手。インパクト部分は斧状の表側とピッケル状の裏側で構成されている。
小柄で腕力も弱い廻良にはピッタリのアイテムだ。
「さあ、どっからでもかかってきなさい!」
そんな廻良に挑みかかるゴリラたち。
二匹のゴリラが同時に突撃。
対する廻良はあえて正面から突っ込み、パンチを誘う。
繰り出されたパンチをスウェー移動で回避。懐に潜り込むと、回転ステップで手斧を叩き込んだ。
小柄な彼女でも遠心力を使えば十分な打撃力を出せる。現にゴリラは激しく呻いて地面を転がり、もう一方を慌てさせた。
その間に背後へ回り込み、足首を引っかける要領で手斧を滑り込ませる。
あとはテコの原理である。斧の下部が『かえし』の効果を持ち、あとはぐいっと引っ張るだけでゴリラの身体をひっくり返すことが出来た。
倒れたゴリラに、手斧を高く振り上げる。
「悪いわね」
廻良は、ゴリラに全力で斧を叩き付けた。
そんな彼女を取り囲みにかかるゴリラたち。
斧を広く構えて防御の姿勢をとる廻良だが、そんな彼女にテュールが駆け寄った。
「伏せていてください! 薙ぎ払います!」
杖を掲げ、魔方陣を生み出すテュール。
魔方陣は幾多にも重なり、天空へと放たれる。
放たれたそれらがはじけて広がり、巨大な暗雲となってゴリラたちの頭上を覆った。
「……!?」
その様子に危機を察したゴリラが回避行動をとろうとするももう遅い。
「サンダーボルト!」
テュールが杖を振り下ろした途端にゴリラたちを電撃が襲い、その場にいる全てのゴリラを殲滅した。
そんな一連の様子を、腕組みしながら眺める逝。
「上出来上出来。さて、そろそろ合流地点に行くかね」
●ゴリラホール
合流した七人の覚者たちは、遊園地の中央ホールへとやってきた。
「へー、結構広いんだ。で、ここの奥がゴリラ満載なの? ゴリラ工場なの?」
カナタがニコニコしながらその場にあった椅子に腰掛けた。テーブルに足をのっけた姿は行儀が悪いが、椅子もテーブルも使い物にならないくらい劣化しているので関係なかった。
「カナタくん。いいことを教えてあげる」
わざわざ君付けしてきた聖に、カナタはちらりと振り向いた。
意味ありげに、そして悲しげに微笑む聖。
「あんパンには、こしあんとつぶあんがあるんだよ」
「めちゃくちゃどーでもいーよ!」
思わずテーブルを蹴倒して立ち上がるカナタ。
そのタイミングを待っていたのかいないのか、奥のシャッターを突き破って無数のゴリラが突撃してきた。
「早速来ましたね!」
真珠はハンドネオンというアコーディオンの妖怪みたいな楽器を取り出すと、複雑に配置された演奏ボタンを操作し始めた。
「ゴリラの、群れくらい、ボクが、押し返して、みせますよ」
とか言いながら一歩ずつ後退する真珠である。
そうしながらも纏霧を発動。
突撃してきたゴリラの群れを丸ごと飲み込み、彼らの動きを緩慢にした。
纏霧は低ランクの敵が大量に現われるときにひたすら役に立つスキルだ。天行使いながら一度はお世話になるだろう。
「さあ、今です!」
「任せて」
黄泉が無表情のまま飛び出し、ゴリラの群れへ突撃を開始。
と同時に廻良も手斧を構えてダッシュ。
二人はお互いにアイコンタクトだけをとると、小さく頷きあった。
黄泉はあえて身を低くしてゴリラの中心を攻めるように加速。
その間廻良は椅子やテーブルを踏み台にしてジャンプ。
ゴリラがどちらを襲おうか迷ったその一瞬をついて、黄泉は大胆な大斧一文字斬りを繰り出した。
ゴリラの胴体を切断するというより、ゴリラたちの腹をひっかくつもりで繰り出した斬撃だ。思わず防御したゴリラたちだが、その頭上には上下反転した廻良があった。
ゴリラの首に手斧を二本ひっかけ、背後へすとんと着地。
彼女の体重をつかった『ねじり折り』によってゴリラは崩れ落ち、直後に廻良は斧の先端にエネルギーを集中。己の回転によってエネルギーの弾を拡散発射し、ゴリラたちを薙ぎ払った。
そうこうしている間にホール側面の窓ガラスが割られ、大量のゴリラが突入してくる。
急いでフォローに……と慌てた廻良を、黄泉が手を翳して止めた。
「大丈夫」
顎で示す黄泉。
示した先では、テュールが杖をライフルのように構えて立っていた。
杖の先端に電流と極小魔方陣が集まり、今にも暴れ出しそうにスパークしている。
「このくらいっ――大魔道士のボクにかかれば!」
右から左へ電撃のビームで薙ぎ払う。
が、ゴリラたちとてタダではやられない。
倒されたゴリラを踏み越え、さらなる群れが突撃してくる。
「り、リキャスト……!」
再び電撃を放とうとするが間に合わない。が、そこへ飛び出したのは真珠だった。
「そういうのは、ボクの役目でしょう!」
ハンドネオンの演奏を始める真珠。すると、周囲の空間からスパークボールが次々に出現。ゴリラの群れへと食らいついていく。
そうして打ち払ったゴリラの群れ。再び魔力の充填を終えたテュールは、真珠のフルートと交差するように杖を掲げた。
凄まじい電撃がはしり、ゴリラたちを一掃する。
「うんうん、キミたちは……もう分かったみたいだね」
聖が二人の肩を叩いて頷いた。
苦労を知る先人の目をして、口を開く。
「ドラミングをパソコンで打つと『銅鑼民具』って変換されて強そうだって、ことがさ」
「「すごくどうでもいい!」」
ぺっと手を振り払うテュール。
が、先程の電撃に聖がこっそり雷獣を織り交ぜていたことには、気づいていただろうか。
一方で、あの人何やってんだろうの顔(見えないけど)をしながら余ったゴリラを右へ左へ切り払って処理する逝。
「そうだ。折角だから回復頼んでいいかい」
「え、別にいいけど。最初からそのつもりだけど」
カナタはミネラルウォーターのミニボトルに回復術式を込めると、逝へ向かって投げた。
ヘルメットしてるからどうやって飲むのかなくらいの気持ちで投げたが、逝はそれを空中で切断。あふれ出た液体を頭からばしゃーっと浴びた。
「はいありがと」
「……」
この人よくわかんないなって顔で首を傾げるカナタ。そんな彼の横に、聖がすっと立ち止まった。
「その通りだよ」
「えっ」
優しげな目で振り向く。
目が合う。
「食パンの袋をとめてるやつの正式名称は、そう……バッククロージャー」
「ちょーどうでもいー!」
そう言っている間に彼らの後ろに回り込んだゴリラがうなりを上げた。
咄嗟に振り返るカナタ。
振り上がるゴリラの拳。
が、その拳が下ろされるより早く、逝が腕を切断していた。
くるくると回って飛んでいくゴリラの腕。
一瞬の静寂。
逝がちょいちょいと指招きするので、カナタはにんまりと笑った。
「とどめっ!」
カナタは指でっぽうをゴリラの腹に押し当て、銃を撃つまねをした。
衝撃だけが走り、ゴリラを貫通。
仰向けに倒れ、そして消滅した。
「ひゅう、ゴリラって近くでみるとこえー」
丁度その頃、黄泉やテュールたちもゴリラを倒し終え、集まってくる所だった。
不思議な光景だった。
あれだけいた敵の群れが、たった七人の男女によって駆逐される。
そんな光景が広がっている。
「これで、もう分かったんじゃないかな」
聖は不敵に、そしてずるがしこい笑みを浮かべていった。
「ゴリラが皆、血液B型だってことがさ」
「「とてもどうでもいい!」」
妖討伐任務、完了。
被害、なし。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
