雨に惑う
しとしと、しとしと。
雨が、降っている。
雨の日は好きだった。皆家の中に引き籠もって、自分の事になど見向きもしないから。
だからこうして、大手を振って外を歩ける。
他人の視線は苦手だ。自分の言動が変じゃないか、逐一気になってしまう。
表面では気にしない素振りを見せていても、本心ではどうだろうか。気を悪くしてはいないだろうか、自分を嫌いになってはいないだろうか――そんな考えで頭が一杯になって、今自分が何をしているのかさえ分からなくなってしまうのだ。
だから良い。雨は。私のちっぽけな悩みなど、全て洗い流しておくれ。
「――――――――」
(?)
おかしいな。こんな雨の夕暮れに、しかも人の寄り付かない神社を選んだのに、誰かの気配?
「…………」
何故か、確かめなければならないという気になった。いつもの私なら真っ先に逃げ出すというのに。これも、この雨がそうさせているのだろうか。
だとしたら、悪くない。うん、悪くない気分だ。こんな私にも一歩が踏み出せるのならば。
神社の裏手に回る道へ進むと、一面に咲いた紫陽花の花が目に留まった。綺麗だな。雨を全身に受けて嬉しそうだ。まるで私みたい。
胸がドキドキする。頬が熱い。――あれ? こんなに熱っぽかったっけ、私?
息が苦しい。視界がぐるぐる回る。
嗚呼……でも綺麗だな、紫陽花――
「――という夢を見てしまったんですよね」
集まった覚者達を前に、『夢見』の久方真由美は沈んだ面持ちでほう、と息を吐いたのだった。
「私には情景しか見えなかったのですけれども、雨の中で女の子が人気の無い神社に独り切り。きっと、何か悩みを抱えていたんだと思います。さらに妖に襲われて殺されてしまうなんて、あまりにも救いようが無いじゃないですか」
この国ではよくある事件の一つかもしれないが、このままでは確実に一つの命が失われてしまう。そして、その先も……
「彼女を殺害するのは、植物が変異した妖です。その元は――」
真由美が差し出したのは、その名の通り鮮やかな紫の花が揺れる鉢植えだった。
「紫陽花。この国では古く万葉集の時代から愛されている花ですよね。現場にも沢山咲いているのですけれども、その一部が変異したようです。植物を元にしているだけあって、自分から動くよりは相手を誘い出す術に長けているみたいですね」
夢で見た少女の様子からして、精神的に何らかの攻撃を受けていた可能性が高い。実際に彼女を死に至らしめるのは、自在に動くようになった茎のようだ。動きだけでなく、太さも幅広く変えられる模様。
「今から向かえばまだ間に合います。どうか、お気をつけて」
深々とお辞儀する真由美に見送られ、覚者達は出発する。
ふと、雨の匂いがした気がした。
雨が、降っている。
雨の日は好きだった。皆家の中に引き籠もって、自分の事になど見向きもしないから。
だからこうして、大手を振って外を歩ける。
他人の視線は苦手だ。自分の言動が変じゃないか、逐一気になってしまう。
表面では気にしない素振りを見せていても、本心ではどうだろうか。気を悪くしてはいないだろうか、自分を嫌いになってはいないだろうか――そんな考えで頭が一杯になって、今自分が何をしているのかさえ分からなくなってしまうのだ。
だから良い。雨は。私のちっぽけな悩みなど、全て洗い流しておくれ。
「――――――――」
(?)
おかしいな。こんな雨の夕暮れに、しかも人の寄り付かない神社を選んだのに、誰かの気配?
「…………」
何故か、確かめなければならないという気になった。いつもの私なら真っ先に逃げ出すというのに。これも、この雨がそうさせているのだろうか。
だとしたら、悪くない。うん、悪くない気分だ。こんな私にも一歩が踏み出せるのならば。
神社の裏手に回る道へ進むと、一面に咲いた紫陽花の花が目に留まった。綺麗だな。雨を全身に受けて嬉しそうだ。まるで私みたい。
胸がドキドキする。頬が熱い。――あれ? こんなに熱っぽかったっけ、私?
息が苦しい。視界がぐるぐる回る。
嗚呼……でも綺麗だな、紫陽花――
「――という夢を見てしまったんですよね」
集まった覚者達を前に、『夢見』の久方真由美は沈んだ面持ちでほう、と息を吐いたのだった。
「私には情景しか見えなかったのですけれども、雨の中で女の子が人気の無い神社に独り切り。きっと、何か悩みを抱えていたんだと思います。さらに妖に襲われて殺されてしまうなんて、あまりにも救いようが無いじゃないですか」
この国ではよくある事件の一つかもしれないが、このままでは確実に一つの命が失われてしまう。そして、その先も……
「彼女を殺害するのは、植物が変異した妖です。その元は――」
真由美が差し出したのは、その名の通り鮮やかな紫の花が揺れる鉢植えだった。
「紫陽花。この国では古く万葉集の時代から愛されている花ですよね。現場にも沢山咲いているのですけれども、その一部が変異したようです。植物を元にしているだけあって、自分から動くよりは相手を誘い出す術に長けているみたいですね」
夢で見た少女の様子からして、精神的に何らかの攻撃を受けていた可能性が高い。実際に彼女を死に至らしめるのは、自在に動くようになった茎のようだ。動きだけでなく、太さも幅広く変えられる模様。
「今から向かえばまだ間に合います。どうか、お気をつけて」
深々とお辞儀する真由美に見送られ、覚者達は出発する。
ふと、雨の匂いがした気がした。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.妖の撃破
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
●妖について
本文にもある通り、植物が変化した妖になります。
直接的な攻撃としては、茎を変化させての打撃。棍棒のような太さの力強いもの、鞭のようにしたしなやかなもの、その動きは変幻自在ですが、同時に数十数百と操れるものではなさそうです。この人数でも対応可能と判断されています。
また、近くの人間に催眠を掛ける精神攻撃を有していますが、充分に効果を発揮するのは一般人相手だけとなります。覚者の皆様の場合は、軽い倦怠感や頭痛を覚える程度でしょう。行動自体を阻害する程のものではありません。
●現場について
とある地方都市の寂れた神社の裏手。大立ち回りを演じるスペースは充分にあります。時間帯は昼間から夕方まで自由に選べますが、夕方に近付く程に被害予定の少女と居合わせてしまう可能性は強まるでしょう。
当日の天候は雨。足下は舗装されていない地面という事も相まって、手元や足が滑る可能性は充分にあります。特にプレイングに記載が無くても滑り止めの類は用意できている事にしますが、晴天時と同じようにはいかない事を織り込んだ上での行動をお勧めします。
また、雨具にこだわりのある方は記載して頂ければ参考にさせて頂きます。
それでは、皆様のご参加を心よりお待ちしております。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
7日
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/6
6/6
公開日
2016年07月02日
2016年07月02日
■メイン参加者 6人■

●水の足音
その日、町は雨に包まれていた。陽はまだ高い時分だというのに、空は厚い雲に覆われ、降りしきる雨に風景はけぶって見える。
小高い丘のてっぺんに位置する寂れた神社においては、半ば朽ちた建物と、うっそうと茂る木々の作る陰によって、神の御座(おわ)す場所でありながら薄気味悪さを感じる程だ。
だが、この不気味な空気はそのせいだけではない。
ここには、人を食らう異形がいる。異形の名を、総じて『妖』という。
忍び迫りつつあるその存在を、人々は知らない。たとえ知ったとしても、只の人の身では抗う術を持つはずもなく。
ざり、と音を立てて、けぶる景色の中を進む人影があった。
只人にあらぬ者達――その名を『覚者』という。
「……ふむ、ここか」
「そのようですわね」
どこか茫洋とした声音に、芯を持った張りのある声。揃って手にした番傘を差す姿も対照的に、華神 刹那(CL2001250 )と『優麗なる乙女』西荻 つばめ(CL2001243 )は歩みを進めた。刹那の持つ傘は楽しげにふわふわと、つばめの持つ傘は微動だにせず雨を受け止めている。
こちらは小さめの洋傘を差した『二兎の救い手』明石 ミュエル(CL2000172 )が、自身の細い肩を抱くようにして表情を曇らせる。
「凄く、嫌な気配……」
「敵が近いんですか? でしたら注意しないといけませんね!」
『ワイルドキャット』猫屋敷 真央(CL2000247)はその言葉通り、周囲をキョロキョロと見回して警戒を露わにした。 羽織ったレインコートのフードの隙間から、毛をまとった猫耳が時折顔を出して音を探っている。
天野 澄香(CL2000194)の細い指が遠くの風景を指し示した。
「あそこに紫陽花の花が見えますね。今のところ、特に異常は無いようですが……」
レインコートの裾を揺らしながら進もうとするのを、『黒い太陽』切裂 ジャック(CL2001403 )が錫杖を手にした腕の動きで制した。キョトンとする澄香の視線の先で、ジャックの三白眼がすぅっ、と細められる。
「嫌な臭いがしやがるぜ。糞ったれな『死』の臭いだ」
レインコートと呼ぶには生活感のあり過ぎる雨合羽から覗く口元の薄い笑みは、愉しげな様子にも見て取れる。最高の好敵手に出逢えたかのような、そんな不敵な笑み。
「……ふむ」
小さく思案すると、刹那は足下の小石を拾い上げ、何気無い動作で放り投げた。
濡れた小石は放物線を描き、そして――
シュバッ
風切り音と共に『何か』によって弾かれ、四散した。
同時に、雨の粒が重さを増したかのように全身にのしかかる。脳味噌を直接鷲掴みにしてくるような気配を、澄香はカッと目を見開いて拒絶した。
「そのような卑劣な攻撃には負けませんっ!」
番傘が宙を舞う。姿勢を低くして駆け出す刹那の手は、既に腰の得物に添えられていた。一方ではつばめが行儀良く傘を閉じ、傍らへ置いた後に相手を鋭く見据える。
「わ、わ、華神さん、独りじゃ危にゃいですよ! ――あ」
思わず訛ってしまった自らの言葉に頬を染める真央だったが、今はそんな事を気にしている場合でもない。慌てて刹那を追い掛けていく。
杖を取り出したミュエルは、大きく深呼吸すると瞳を閉じた。意識を集中すれば、その両足が変化を起こし、車輪となって硬質の光を帯びる。開かれた瞳にも、どこか神秘的な色が漂っていた。
「よっしゃ、気合い入れてやってやんぞ! どこからでもかかってこいや!!」
ジャックの声が、高らかに戦いの始まりを宣言した。
●飛沫、踊る
一直線に敵へと向かう刹那に、針のように変化した妖の茎が殺到する。
が、それ等は彼女に届く前に、空気の弾ける大きな音と共に霧散した。背中から小さな翼を生やし、宙に浮いた澄香による援護だ。タロットカードと術符を両手の指の間に挟んだ彼女は、立て続けに術式を練り上げる。
「木行を司る者として、絶対に負けられませんね」
紫陽花の花が咲き乱れる辺りに飛来したいくつもの植物の種子が根を下ろし、急速に肥大化し、やがて発芽を経て散っていく。
声を発する事の無い相手にどれだけ効いているのかは未知数だったが、攻撃の手を緩めるつもりは無い。ゆらゆらと意思を持ってうねる紫陽花の花畑を包み込むように、濃厚な香りが空間を満たす。その根源は、ミュエルの頭に咲いた一輪の花である。
「ごめんね……でも、すぐに終わらせるから……」
車輪の足で走り抜ける彼女を捕らえるべく、鞭のようにしなった茎が迫り来る。
ヒュッ
剣閃一閃。一筋の光が走ったかと思うと、次の瞬間にはバラバラにされた妖の茎が地面に無残な姿を晒していた。
左右の手に刀を携えたつばめは妖の純粋な敵意を感じながらも、眉一つ動かさず次の攻撃に備える。
「狂気に支配された欲望……一旦鎮めるしかありませんわね。この鬼丸と十六夜に斬れぬ物はありませんわよ」
刹那と真央がいよいよ妖に肉薄した。
「まずは私が! ハアァッ!!」
一気に刹那を追い抜いた真央が大地を蹴り、勢い良く腕を薙ぎ払った。猫の手を模した武器から生えた鋭い爪に切り裂かれ、色鮮やかな花弁が大量に舞い散る。彼女はさらに反対の腕で十字を描くように振り抜くと、迫る反撃から逃れる為に横っ飛びで地面を転がった。
真央の切り開いた道に、刹那の刃が深く突き刺さる。両手で構えた日本刀による力強い連撃。切断された茎が彼女を覆い隠すかのように飛び散る。
すん、と鼻を鳴らした刹那がふと呟いた。
「……庭木の手入れをしているような気がしないでもない」
鼻を刺す緑の匂いも相まってそんな気分にさせるのだろう。しかし庭木として愛でるには少々危なっかしい存在だ。
このまま押し切れるのならば押し込んでしまおうとさらに踏み込んだ刹那だったが、するりと伸びた茎が彼女の手の甲に突き刺さった。「む」、彼女にしてみれば何という事の無い傷であったが、一瞬の痛みが手元を緩ませ、得物を取り落としてしまう。
刀は彼女自身と言っても良い存在。反射的に拾いに向かおうとするも、直感で危険を感じた刹那は敢えて反対側へと跳んだ。案の定、追っていればそこにいたであろう空間を、巨大化した茎が盛大に押し潰していた。それくらいの知恵はあるらしい。
武器を失ってしまった格好だが、刹那は慌てず騒がず、徒手空拳の構えで次の動きを考える。
「なかなかに打たれ強いですわね」
横に並んだつばめが「お使いになりますか?」と小太刀の方を差し出してくるが、刹那は首を横に振った。
「使い慣れぬ物を使って、歪ませてしまっては悪いからな。それに――」
地面に落ちたままの刀へと視線を走らせる。
「どうせすぐに取り戻す」
「そうですわね」
つばめはくすり、と微笑むと、妖へと目を移した。結構な痛手を与えたはずなのだが、妖の勢いが衰える様子は無い。
「再生能力があるのかもしれませんね」
「このままだと、キリが無いかも……?」
澄香とミュエルも、それぞれが感じた事を口にした。
「踏ん張りが利かないから、手応えもイマイチにゃんですよね」
これは真央の言だ。降りしきる雨で視界が揺らぎ、狙いを定めるのに苦労している影響もあるだろう。
と、そこへ後方からジャックの怒鳴り声が聞こえてきた。
「えーい、もう面倒だ! まとめて焼き払ってやるからちょっと道空けてくれー!!」
振り上げた錫杖には、既に膨大な力が集まっている。一行は慌てて左右へ飛び退った。
収束せし力は、この雨をも物ともしない紅蓮の炎となって燃え盛る。それは、彼の胸に宿る想いそのものだ。
(頼む! 元に戻ってくれ! きちんと植物生を全うするんだ。己を忘れて誰かを傷つけるなんざ、許さねぇぞ!)
「そーらよっと!!」
渾身の力を込めて振り下ろせば、溢れ出た炎は波となって紫陽花の咲く一帯を呑み込んでいった。「に゛ゃー!」、頭を抱えた真央の悲鳴がこだまする。
焦げた臭いはすぐに雨の匂いと混じり合い、残されたのは一面の焼け野原であった。その中から、新たな緑が萌芽して形を為していく。まだだ、まだ終わっていない。
刹那が走った。最後の力を振り絞って再生する妖の攻撃をかわし、転がりながら地面に落ちた愛刀へと手を伸ばす。
泥まみれになりながらも、刀を手に起き上がる彼女の瞳には勝利への確信があった。
「必ず救ってみせます!」
「綺麗な元の姿に戻ろうよ……ね……?」
澄香とミュエルの術が妖の動きを封じる。
「大人しくするのです!」
跳び掛かった真央が、なおも暴れようとする妖を押さえ込んだ。
ヒュッ、と短く息を吐いた刹那が一気に妖の眼前へと躍り出る。濡れた白刃は雫を垂らしながらも、敵を両断すべく鈍い光を放っていた。
「――斬」
大上段からの唐竹割り。防御の一切を捨てた一撃によって、妖は遂に滅されたのだった。
急速にその存在を希薄にしていく妖を見送りながら、つばめは語り掛ける。
「さあ、気力を見せて下さいな。貴方の生きる力を」
それは祈りか、願いか、確信か。
薄闇に覆われた世界に光が満ちる。
やがて一行の目に映ったのは、それまでとは比べ物にならない程の小さな、小さな――しかし確かにそこにある、紫陽花の若木の姿であった。
同時に妖の気配は完全に消え去り、思わず安堵の息がそれぞれに零れる。
「終わっ……た……?」
まだ確信が持てないのか小首を傾げるミュエルに、真央がにっこりと満面の笑顔を向ける。
「はい! 終わったんです! 私達、勝ったんですよ!」
「やれやれ、一時はどうなる事かと思ったけどな。ま、結果オーライだな」
ジャックは大きく伸びをして開放感に身を委ねていた。こうして見れば、この雨も悪くないものだ。
そんな中、刹那は自分の投げ捨てた番傘に歩み寄ると、得物の切っ先を器用に引っ掛けて持ち上げた。宙で大きく弧を描いた傘が、次の瞬間にはすっぽりと彼女の手に収まる。
「実は替えを持っておらなんだ」
そう言って笑う表情は、妖にとどめを刺した時と同一人物とは思えない程に柔らかいものだった。
彼女はそのまま神社に背を向け、歩き出す。
「着替えも拭くものも用意しておらなんでな、拙は風邪をひく前に帰るのである。後は任せた」
「タオルくらいならばございますが?」
つばめの言葉にも軽く手を振るだけで応え、刹那はそのまま行ってしまった。彼女なりに思うところもあったのだろう。「皆が残るなら、悪いようにはなるまいさ」、そんな言葉だけを残して。
ふと思い出したように刀を抜くと、刹那は抜き身の刃に顔を寄せた。くん、と鼻孔が僅かに広がる。
「流石に臭いが気になるな。今日は念入りに手入れせねばなるまい」
だがまぁ、まずは風呂と飯だ。
足取りも軽く、刹那は帰途へと就いたのだった。
●雨が上がれば
夕暮れが近付き、雨の続く空は一層暗さを増していく。
普通の人間ならば外出を躊躇うような世界。そこだけが彼女の居場所だった。そう、彼女だけの――
「…………え…………?」
目の前の光景に、少女は言葉を失わずにはいられなかった。
激しく踏み荒らされたのが見て取れる地面に、一部が抉れるように失われた紫陽花の群れ。ここで一体何があったというのか。
回れ右して逃げ出したくなった彼女を引き留めたのは、神社の屋根に浮かぶ――そう、本当に浮かんでいる人影の存在だった。神様? でも、レインコートを着た神様なんているのかな?
ゆっくりと振り向いた相貌は、同性の自分ですら見惚れる程に整っていた。
「この場所、お好きなのですか?」
「え!? あ、いえ、はい……」
突然の問い掛けに思わずしどろもどろになってしまい、少女は顔を真っ赤にするが、神様(?)は「そう」と静かに微笑むだけだ。「でも何故、こんな雨の中を?」、そう尋ねられ、無意識に表情が沈んだ。
「……雨が降っていれば、誰とも会わずに済むから」
そこからは堰を切ったように、胸の内を吐露していた。何故そうしたのかは自分でもよく分からない。もしかしたら、この雨の中で出会った相手とならば、少しだけでも共感し合えると思ったのかもしれない。
神様(?)は間を置いた後、一語一語吟味するように唇を開いた。
「人と人とが分かり合うのは、簡単な事ではありません。でも、だからこそ、通じ合えた時は嬉しいのでは、と」
「そして、思っているだけでは何も伝わらないのですわ」
新しい声に、少女の全身がびくり、と震える。視線を落とせば、紫陽花の前にいくつかの人影が現れているのに気付いた。いつの間に……
時代劇から出てきたような袴姿の女の人は、遠目では日本人形のようだ。その横にいるのは、獣の耳と尻尾を生やした女の子――そこに至って初めて、彼女は『覚者』という存在を思い出した。人の身でありながら、異形の力を持つ者達。そうか、彼等が……
「そうですよ! 私も最初は周りから変な風に見られていないかって気にしましたから。だからまず、私は皆さんに私を知ってもらう事にしたんです。積極的に話しかけて、自分の事を話してみるようにしたんです」
そりゃあ、本物の猫耳や尻尾の生えた人が目の前に現れたらまじまじと見ちゃうよなぁ――一生懸命訴え掛けてくる彼女には悪いが、少女は上の空でそんな場違いな感想を抱く事しかできなかった。驚き過ぎて感覚が麻痺してきているのかもしれない。
「つ、つまり、にゃにが言いたいかというとですね……」
「考えるだけ考えたら、後は行動あるのみ、という事ですわよ」
猫耳さんの言葉を受け、日本人形さんがそう締めくくった。そんな事は分かっている。それができたら苦労はしない――反発しそうになる心を思い留まらせたのは、これまでとは違う異国の妖精を思わせる女性の姿だった。華奢な身体を雨から守る傘には、星空が踊っている。
「この子も……こんなに、人が来ないのに、一生懸命、綺麗に咲いてる……」
ぽつり、と零した言葉に視線を追えば、小さく咲いた一輪の花。まだ若い紫陽花は雨に押し潰されそうになりながらも、その命を誇示するかのように揺れていた。
そうだ。この花が好きだから、自分はここへ足を運んでいたのだ。雨に負けない――むしろ、雨の中でこそ綺麗に輝く花。
と、全身を濡らしていた雨が止んだ。振り返れば、赤毛の少年が傘を差し出している。
「笑いなよ! 女の子は笑った顔が一番でな、花が咲いたみたいに可愛いんだ。そうしたら周りも笑うから。笑うと副が来て、皆が幸せになる。そしたらちっちゃな悩みなんて消えるぜ!」
少年の笑顔を見て、「あぁ、そうかもしれないなぁ」と思うのだった。だって今、私、多分笑ってるもの。
嗚呼……綺麗だな、紫陽花――
雨が止んだ。
雨が止めば、虹が出るのだ。
七色の想いを乗せて。
その日、町は雨に包まれていた。陽はまだ高い時分だというのに、空は厚い雲に覆われ、降りしきる雨に風景はけぶって見える。
小高い丘のてっぺんに位置する寂れた神社においては、半ば朽ちた建物と、うっそうと茂る木々の作る陰によって、神の御座(おわ)す場所でありながら薄気味悪さを感じる程だ。
だが、この不気味な空気はそのせいだけではない。
ここには、人を食らう異形がいる。異形の名を、総じて『妖』という。
忍び迫りつつあるその存在を、人々は知らない。たとえ知ったとしても、只の人の身では抗う術を持つはずもなく。
ざり、と音を立てて、けぶる景色の中を進む人影があった。
只人にあらぬ者達――その名を『覚者』という。
「……ふむ、ここか」
「そのようですわね」
どこか茫洋とした声音に、芯を持った張りのある声。揃って手にした番傘を差す姿も対照的に、華神 刹那(CL2001250 )と『優麗なる乙女』西荻 つばめ(CL2001243 )は歩みを進めた。刹那の持つ傘は楽しげにふわふわと、つばめの持つ傘は微動だにせず雨を受け止めている。
こちらは小さめの洋傘を差した『二兎の救い手』明石 ミュエル(CL2000172 )が、自身の細い肩を抱くようにして表情を曇らせる。
「凄く、嫌な気配……」
「敵が近いんですか? でしたら注意しないといけませんね!」
『ワイルドキャット』猫屋敷 真央(CL2000247)はその言葉通り、周囲をキョロキョロと見回して警戒を露わにした。 羽織ったレインコートのフードの隙間から、毛をまとった猫耳が時折顔を出して音を探っている。
天野 澄香(CL2000194)の細い指が遠くの風景を指し示した。
「あそこに紫陽花の花が見えますね。今のところ、特に異常は無いようですが……」
レインコートの裾を揺らしながら進もうとするのを、『黒い太陽』切裂 ジャック(CL2001403 )が錫杖を手にした腕の動きで制した。キョトンとする澄香の視線の先で、ジャックの三白眼がすぅっ、と細められる。
「嫌な臭いがしやがるぜ。糞ったれな『死』の臭いだ」
レインコートと呼ぶには生活感のあり過ぎる雨合羽から覗く口元の薄い笑みは、愉しげな様子にも見て取れる。最高の好敵手に出逢えたかのような、そんな不敵な笑み。
「……ふむ」
小さく思案すると、刹那は足下の小石を拾い上げ、何気無い動作で放り投げた。
濡れた小石は放物線を描き、そして――
シュバッ
風切り音と共に『何か』によって弾かれ、四散した。
同時に、雨の粒が重さを増したかのように全身にのしかかる。脳味噌を直接鷲掴みにしてくるような気配を、澄香はカッと目を見開いて拒絶した。
「そのような卑劣な攻撃には負けませんっ!」
番傘が宙を舞う。姿勢を低くして駆け出す刹那の手は、既に腰の得物に添えられていた。一方ではつばめが行儀良く傘を閉じ、傍らへ置いた後に相手を鋭く見据える。
「わ、わ、華神さん、独りじゃ危にゃいですよ! ――あ」
思わず訛ってしまった自らの言葉に頬を染める真央だったが、今はそんな事を気にしている場合でもない。慌てて刹那を追い掛けていく。
杖を取り出したミュエルは、大きく深呼吸すると瞳を閉じた。意識を集中すれば、その両足が変化を起こし、車輪となって硬質の光を帯びる。開かれた瞳にも、どこか神秘的な色が漂っていた。
「よっしゃ、気合い入れてやってやんぞ! どこからでもかかってこいや!!」
ジャックの声が、高らかに戦いの始まりを宣言した。
●飛沫、踊る
一直線に敵へと向かう刹那に、針のように変化した妖の茎が殺到する。
が、それ等は彼女に届く前に、空気の弾ける大きな音と共に霧散した。背中から小さな翼を生やし、宙に浮いた澄香による援護だ。タロットカードと術符を両手の指の間に挟んだ彼女は、立て続けに術式を練り上げる。
「木行を司る者として、絶対に負けられませんね」
紫陽花の花が咲き乱れる辺りに飛来したいくつもの植物の種子が根を下ろし、急速に肥大化し、やがて発芽を経て散っていく。
声を発する事の無い相手にどれだけ効いているのかは未知数だったが、攻撃の手を緩めるつもりは無い。ゆらゆらと意思を持ってうねる紫陽花の花畑を包み込むように、濃厚な香りが空間を満たす。その根源は、ミュエルの頭に咲いた一輪の花である。
「ごめんね……でも、すぐに終わらせるから……」
車輪の足で走り抜ける彼女を捕らえるべく、鞭のようにしなった茎が迫り来る。
ヒュッ
剣閃一閃。一筋の光が走ったかと思うと、次の瞬間にはバラバラにされた妖の茎が地面に無残な姿を晒していた。
左右の手に刀を携えたつばめは妖の純粋な敵意を感じながらも、眉一つ動かさず次の攻撃に備える。
「狂気に支配された欲望……一旦鎮めるしかありませんわね。この鬼丸と十六夜に斬れぬ物はありませんわよ」
刹那と真央がいよいよ妖に肉薄した。
「まずは私が! ハアァッ!!」
一気に刹那を追い抜いた真央が大地を蹴り、勢い良く腕を薙ぎ払った。猫の手を模した武器から生えた鋭い爪に切り裂かれ、色鮮やかな花弁が大量に舞い散る。彼女はさらに反対の腕で十字を描くように振り抜くと、迫る反撃から逃れる為に横っ飛びで地面を転がった。
真央の切り開いた道に、刹那の刃が深く突き刺さる。両手で構えた日本刀による力強い連撃。切断された茎が彼女を覆い隠すかのように飛び散る。
すん、と鼻を鳴らした刹那がふと呟いた。
「……庭木の手入れをしているような気がしないでもない」
鼻を刺す緑の匂いも相まってそんな気分にさせるのだろう。しかし庭木として愛でるには少々危なっかしい存在だ。
このまま押し切れるのならば押し込んでしまおうとさらに踏み込んだ刹那だったが、するりと伸びた茎が彼女の手の甲に突き刺さった。「む」、彼女にしてみれば何という事の無い傷であったが、一瞬の痛みが手元を緩ませ、得物を取り落としてしまう。
刀は彼女自身と言っても良い存在。反射的に拾いに向かおうとするも、直感で危険を感じた刹那は敢えて反対側へと跳んだ。案の定、追っていればそこにいたであろう空間を、巨大化した茎が盛大に押し潰していた。それくらいの知恵はあるらしい。
武器を失ってしまった格好だが、刹那は慌てず騒がず、徒手空拳の構えで次の動きを考える。
「なかなかに打たれ強いですわね」
横に並んだつばめが「お使いになりますか?」と小太刀の方を差し出してくるが、刹那は首を横に振った。
「使い慣れぬ物を使って、歪ませてしまっては悪いからな。それに――」
地面に落ちたままの刀へと視線を走らせる。
「どうせすぐに取り戻す」
「そうですわね」
つばめはくすり、と微笑むと、妖へと目を移した。結構な痛手を与えたはずなのだが、妖の勢いが衰える様子は無い。
「再生能力があるのかもしれませんね」
「このままだと、キリが無いかも……?」
澄香とミュエルも、それぞれが感じた事を口にした。
「踏ん張りが利かないから、手応えもイマイチにゃんですよね」
これは真央の言だ。降りしきる雨で視界が揺らぎ、狙いを定めるのに苦労している影響もあるだろう。
と、そこへ後方からジャックの怒鳴り声が聞こえてきた。
「えーい、もう面倒だ! まとめて焼き払ってやるからちょっと道空けてくれー!!」
振り上げた錫杖には、既に膨大な力が集まっている。一行は慌てて左右へ飛び退った。
収束せし力は、この雨をも物ともしない紅蓮の炎となって燃え盛る。それは、彼の胸に宿る想いそのものだ。
(頼む! 元に戻ってくれ! きちんと植物生を全うするんだ。己を忘れて誰かを傷つけるなんざ、許さねぇぞ!)
「そーらよっと!!」
渾身の力を込めて振り下ろせば、溢れ出た炎は波となって紫陽花の咲く一帯を呑み込んでいった。「に゛ゃー!」、頭を抱えた真央の悲鳴がこだまする。
焦げた臭いはすぐに雨の匂いと混じり合い、残されたのは一面の焼け野原であった。その中から、新たな緑が萌芽して形を為していく。まだだ、まだ終わっていない。
刹那が走った。最後の力を振り絞って再生する妖の攻撃をかわし、転がりながら地面に落ちた愛刀へと手を伸ばす。
泥まみれになりながらも、刀を手に起き上がる彼女の瞳には勝利への確信があった。
「必ず救ってみせます!」
「綺麗な元の姿に戻ろうよ……ね……?」
澄香とミュエルの術が妖の動きを封じる。
「大人しくするのです!」
跳び掛かった真央が、なおも暴れようとする妖を押さえ込んだ。
ヒュッ、と短く息を吐いた刹那が一気に妖の眼前へと躍り出る。濡れた白刃は雫を垂らしながらも、敵を両断すべく鈍い光を放っていた。
「――斬」
大上段からの唐竹割り。防御の一切を捨てた一撃によって、妖は遂に滅されたのだった。
急速にその存在を希薄にしていく妖を見送りながら、つばめは語り掛ける。
「さあ、気力を見せて下さいな。貴方の生きる力を」
それは祈りか、願いか、確信か。
薄闇に覆われた世界に光が満ちる。
やがて一行の目に映ったのは、それまでとは比べ物にならない程の小さな、小さな――しかし確かにそこにある、紫陽花の若木の姿であった。
同時に妖の気配は完全に消え去り、思わず安堵の息がそれぞれに零れる。
「終わっ……た……?」
まだ確信が持てないのか小首を傾げるミュエルに、真央がにっこりと満面の笑顔を向ける。
「はい! 終わったんです! 私達、勝ったんですよ!」
「やれやれ、一時はどうなる事かと思ったけどな。ま、結果オーライだな」
ジャックは大きく伸びをして開放感に身を委ねていた。こうして見れば、この雨も悪くないものだ。
そんな中、刹那は自分の投げ捨てた番傘に歩み寄ると、得物の切っ先を器用に引っ掛けて持ち上げた。宙で大きく弧を描いた傘が、次の瞬間にはすっぽりと彼女の手に収まる。
「実は替えを持っておらなんだ」
そう言って笑う表情は、妖にとどめを刺した時と同一人物とは思えない程に柔らかいものだった。
彼女はそのまま神社に背を向け、歩き出す。
「着替えも拭くものも用意しておらなんでな、拙は風邪をひく前に帰るのである。後は任せた」
「タオルくらいならばございますが?」
つばめの言葉にも軽く手を振るだけで応え、刹那はそのまま行ってしまった。彼女なりに思うところもあったのだろう。「皆が残るなら、悪いようにはなるまいさ」、そんな言葉だけを残して。
ふと思い出したように刀を抜くと、刹那は抜き身の刃に顔を寄せた。くん、と鼻孔が僅かに広がる。
「流石に臭いが気になるな。今日は念入りに手入れせねばなるまい」
だがまぁ、まずは風呂と飯だ。
足取りも軽く、刹那は帰途へと就いたのだった。
●雨が上がれば
夕暮れが近付き、雨の続く空は一層暗さを増していく。
普通の人間ならば外出を躊躇うような世界。そこだけが彼女の居場所だった。そう、彼女だけの――
「…………え…………?」
目の前の光景に、少女は言葉を失わずにはいられなかった。
激しく踏み荒らされたのが見て取れる地面に、一部が抉れるように失われた紫陽花の群れ。ここで一体何があったというのか。
回れ右して逃げ出したくなった彼女を引き留めたのは、神社の屋根に浮かぶ――そう、本当に浮かんでいる人影の存在だった。神様? でも、レインコートを着た神様なんているのかな?
ゆっくりと振り向いた相貌は、同性の自分ですら見惚れる程に整っていた。
「この場所、お好きなのですか?」
「え!? あ、いえ、はい……」
突然の問い掛けに思わずしどろもどろになってしまい、少女は顔を真っ赤にするが、神様(?)は「そう」と静かに微笑むだけだ。「でも何故、こんな雨の中を?」、そう尋ねられ、無意識に表情が沈んだ。
「……雨が降っていれば、誰とも会わずに済むから」
そこからは堰を切ったように、胸の内を吐露していた。何故そうしたのかは自分でもよく分からない。もしかしたら、この雨の中で出会った相手とならば、少しだけでも共感し合えると思ったのかもしれない。
神様(?)は間を置いた後、一語一語吟味するように唇を開いた。
「人と人とが分かり合うのは、簡単な事ではありません。でも、だからこそ、通じ合えた時は嬉しいのでは、と」
「そして、思っているだけでは何も伝わらないのですわ」
新しい声に、少女の全身がびくり、と震える。視線を落とせば、紫陽花の前にいくつかの人影が現れているのに気付いた。いつの間に……
時代劇から出てきたような袴姿の女の人は、遠目では日本人形のようだ。その横にいるのは、獣の耳と尻尾を生やした女の子――そこに至って初めて、彼女は『覚者』という存在を思い出した。人の身でありながら、異形の力を持つ者達。そうか、彼等が……
「そうですよ! 私も最初は周りから変な風に見られていないかって気にしましたから。だからまず、私は皆さんに私を知ってもらう事にしたんです。積極的に話しかけて、自分の事を話してみるようにしたんです」
そりゃあ、本物の猫耳や尻尾の生えた人が目の前に現れたらまじまじと見ちゃうよなぁ――一生懸命訴え掛けてくる彼女には悪いが、少女は上の空でそんな場違いな感想を抱く事しかできなかった。驚き過ぎて感覚が麻痺してきているのかもしれない。
「つ、つまり、にゃにが言いたいかというとですね……」
「考えるだけ考えたら、後は行動あるのみ、という事ですわよ」
猫耳さんの言葉を受け、日本人形さんがそう締めくくった。そんな事は分かっている。それができたら苦労はしない――反発しそうになる心を思い留まらせたのは、これまでとは違う異国の妖精を思わせる女性の姿だった。華奢な身体を雨から守る傘には、星空が踊っている。
「この子も……こんなに、人が来ないのに、一生懸命、綺麗に咲いてる……」
ぽつり、と零した言葉に視線を追えば、小さく咲いた一輪の花。まだ若い紫陽花は雨に押し潰されそうになりながらも、その命を誇示するかのように揺れていた。
そうだ。この花が好きだから、自分はここへ足を運んでいたのだ。雨に負けない――むしろ、雨の中でこそ綺麗に輝く花。
と、全身を濡らしていた雨が止んだ。振り返れば、赤毛の少年が傘を差し出している。
「笑いなよ! 女の子は笑った顔が一番でな、花が咲いたみたいに可愛いんだ。そうしたら周りも笑うから。笑うと副が来て、皆が幸せになる。そしたらちっちゃな悩みなんて消えるぜ!」
少年の笑顔を見て、「あぁ、そうかもしれないなぁ」と思うのだった。だって今、私、多分笑ってるもの。
嗚呼……綺麗だな、紫陽花――
雨が止んだ。
雨が止めば、虹が出るのだ。
七色の想いを乗せて。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
