≪百・獣・進・撃≫ドラゴンバスター
≪百・獣・進・撃≫ドラゴンバスター


●AAA空挺部隊『コノハオトシ』
「まるで夢でも見てるようだ。テレビゲームのほうがまだ現実味がある」
 輸送ヘリのハッチが開き、眼下に広がる光景にダイバースーツの男は呟いた。
 奈良県の山間に位置するある土地に、巨大な妖が発生していた。
 狼の表皮にトカゲの鱗とコウモリの羽が備わったようなフォルムは、テレビゲームに登場するドラゴンを彷彿とさせた。
 ゴーグルの下に眼鏡をかけた男がタブレットPCを読み上げる。
「動物系妖。推定ランク3。今の装備で足りるかどうか。情報も少ないですし……」
「しかし放置すれば奴は確実に人里に移動する。避難が進んでいるとはいえ被害は甚大だ。F.i.V.Eに沢山いる夢見の誰かが予知してくれるのを祈るしか無い」
「つまり、今日も我らは足止め要員ですか」
 ひときわ背の低い少年が背中から翼を広げる。翼人専用のファイバースーツなのだ。
「光栄な役目じゃないか。それじゃあ行くよ」
「作戦名はそうだな……『ドラゴンバスター』、開始!」
 ハッチからリーダーらしき男が飛び降りる。
 暫くは自由降下だ。仮称ドラゴンめがけ狙いを定める。
 強化開始。
 術式発動。
 地面が急激に接近する。本来なら危険高度だ。
 暴風の中を滑り抜けていく感覚を更に鋭敏なものにしつつ、男はようやく翼を広げた。
 こちらめがけて噛みついてくるドラゴンをギリギリでかわしつつ腹の下を抜ける。アテンドから剣を抜いて腹の下を切りつける。
 ばっさりと切り裂いた筈だが、その傷はすぐに修復された。
「自動回復能力か。スキャナー!」
「今確認中――でました!」
 眼鏡の隊員が攻撃をせずにドラゴンのまわりを周回していた。エネミースキャンに全力で集中していたのだ。
「奴の角です! あの部分でエネルギーを蓄積して、自動回復に当てている模様!」
「破壊できるか!?」
「やってみる!」
 ドラゴンの頭上で対空していた少年が杖を翳し、巨大な魔方陣を描き出した。
「くらえ!」
 火炎の魔法弾を次々に乱射。ドラゴンに浴びせていく。
 対するドラゴンは翼をひろげ、上空へととびたつ。
「うわ――!?」
 目を見開く少年。が、次の瞬間にはドラゴンに食いつかれていた。
 耐えられるか? リーダーの祈りにも似た不安は砕かれ、少年は空に散った。
「一撃だと? いくら防御に弱いからといって……」
「リーダー、危ない。何か来ます!」
 眼鏡の隊員が叫んだ。
 だがもう遅い。上をとったドラゴンは喉の奥で何かを呟くと、巨大な暴風をはき出した。
 内部にナイフのように鋭い小石を含んだ暴風だ。二人はたちまち飲み込まれ……。

●仮称ドラゴン
「以上が、妖の情報だ。『視た』時には既に遅かった。彼らは離陸していて……」
 しかし彼らの応戦があったおかげで妖が回復のために立ち止まっていてくれているのも事実。
 久方 相馬(nCL2000004)は強く拳を握った。
「彼らの犠牲を無駄にしないために、なんとしても俺たちの手で妖を倒そう」

 この作戦は、現在奈良県で頻発している動物系妖事件対策のひとつである。
 AAAからF.i.V.Eへの協力要請という形で発生したこの依頼だが、この狭い範囲で妖がこうも連続して発生するのは不自然だ。
 それに妖たちは鉄道を攻撃目標としており、ライフラインが奪われれば人里は妖の手に落ちてしまう。
 早急な撃退が求められているのだ。

「今回の敵は形状から『ウルフドラゴン』と仮称しておく。戦闘力としては高い耐久力と攻撃力が特徴だ」
 強さの源はその巨体もさることながら、角からくる自己回復。そして翼による飛行能力。喉で何かを唱えて発生させるブレスだ。
「それぞれの部位を破壊することでこの能力を潰すことが出来る」
 集まったメンバーの能力に応じて不利な部分を潰していくのがいいだろう。
「この妖を野放しにすれば被害は大きい。皆、頼んだぞ!」


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:難
担当ST:八重紅友禅
■成功条件
1.ウルフドラゴンの討伐
2.なし
3.なし
 八重紅友禅でございます。

●フィールド
 山間のフィールド。既に住民はいません。
 突然の襲撃によって死亡したか、生きて避難したかです。
 山を渡っていくのは難しいので、輸送ヘリで上空からの降下作戦を行ないます。
 飛行能力のない覚者は簡易パラシュートがあるので問題ありません。
 (アテンド能力の『ふわふわ』でもいいですが、移動速度が戦闘しながら使うのは危険すぎるので着地用だけにしておきましょう)

●ウルフドラゴン
 巨体のため、ブロック要員が7人いないと後衛に抜かれます。
 【飛行】状態の時はこちらも飛行していないと近接攻撃が届かなくなります。
 射撃攻撃が豊富なメンバーなら問題ないでしょう。
 能力は以下の三つ。

・かみつき:物近単【必殺】【流血】【負荷】
 強い顎でもって噛みつきます。人間がどうこうできる圧力ではないので、噛みつかれたらかなりのダメージが入るでしょう。体術使用不能も人によっては痛いかもしれません。
・暴風ブレス:特遠列【二連撃】【出血】【鈍化】
 かみつきほどのダメージはありませんが、命中率が高く二連なのでほぼ確実に出欠と鈍化を貰います。
 ちなみにここでいうブレスは『息』じゃなく『フレーズ』の方です。厳密には違いますが、魔法を唱えてるようなものと思ってください。
 なのでドラゴンの喉を破壊しきると使えなくなります。
・自己回復:毎ターン自動で小回復。
 覚者の通常攻撃一回分を余裕をもってカバーする程度の回復力があります。
 高火力メンバーならゴリ押しでいけるので放って置いてもいいですが防衛重視のメンバーだとジリ貧になるでしょう。
 額から出ている角を破壊すると回復が止まります。

 目安としては、回復や防御にすぐれたメンバーなら角から。回復が弱く火力に強いメンバーなら喉から。ついでに飛行戦闘が難しそうなら翼を攻撃しましょう。
 相手が巨大なため、これらの攻撃は部位狙いペナルティ(命中低下)を受けずに行なえます。
 ちなみに飛行中はきっちり飛行ペナルティ(両防御低下)を受けるので、囮を出してあえて飛ばして打ちまくるのも作戦としてはアリかもしれません。

●その他いろいろ
 ドラゴンに飛び乗って戦闘する場合、激しく動く足場として足場ペナルティ(命中回避低下)をうけますが、いくつかの技能スキルの使用によって大幅軽減できます。
 また、飛行中でもドラゴンの表皮を足場とした3メートル以内ならペナルティを受けません。
状態
完了
報酬モルコイン
金:1枚 銀:0枚 銅:0枚
(1モルげっと♪)
相談日数
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
9/9
公開日
2016年06月10日

■メイン参加者 9人■


●ウルフドラゴン
 パラシュートを身につけながら、『鬼灯の鎌鼬』椿屋 ツバメ(CL2001351)は窓からの光景を眺めていた。ウルフドラゴンが傷ついた肉体を修復しながらじっと足を止めている。
「妖でなければ幻想的でいい光景なんだが……」
「こんなに大きい妖見たの初めてかも。今からこれと戦うんだよね……」
 同じく窓から下を覗く『天使の卵』栗落花 渚(CL2001360)。
 不安げな彼女とは対照的に、『裏切者』鳴神 零(CL2000669)は喜色満面で窓に張り付いている。
「ドラゴン退治♪ ドラゴン退治♪ 食べられるかな、楽しそう!」
 そんな彼女たちをよそに、緒形 逝(CL2000156)や赤坂・仁(CL2000426)は最後の武器点検を行なっていた。
 二人とも武器は対戦車ロケット発射装置。いわゆるバズーカ砲である。
「生き物に使うモンじゃあないが、まあいいか」
「あの規模の生物を意識した兵器などない。必然的にこうなる」
 仁はパラシュート装置の点検に移った。趣味人がスカイダイビングに用いるパラシュートとは根本的に異なる、戦場における降下作戦のために作られたものだ。肉体的負担は大きいが、そのぶん隙も少ない。
「訓練は受けたが、実戦は初めてだ」
「……」
 そんな二人のすぐ脇で、『雷麒麟』天明 両慈(CL2000603)が椅子に腰掛けたまま黙っていた。
 一瞥する仁。
「体調が悪いなら申し出たほうがいいぞ」
「いや、気にするな。先日ドタバタしてな……体調は万全だ。作戦に集中する」
 やがてヘリのハッチが開放される。
 『白い人』由比 久永(CL2000540)と三島 椿(CL2000061)はそれぞれ翼を広げて降下体勢に入った。
「空挺部隊が命がけでもたらした情報。無駄にするわけにはいかぬ」
「最後まで自分たちの役目を果たそうとした彼らの意志もね」
「絶対仇をとってやる! ドラゴンバスターは俺たちが引き継ぐからな!」
 『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)は腹に力を込め、息を止めてハッチから飛び出した。

 暴風に覆われながらも目標へと降下する覚者たち。
 先行したのは身体をまっすぐに畳んで急速降下したツバメだった。
 射程距離に侵入する直前にパラシュートを展開して減速。
 額の目を開き、激しい熱を帯びたビームを連射する。
 その攻撃によって敵の襲来に気づいたドラゴンが反撃のブレスを放つが、パラシュートの強制離脱によって高速接近。ツバメは空中で器用にバランスをとりながら、ネコのようなしなやかさでドラゴンの背に着地した。懐へと飛び込んだ形である。
 それに続く椿と久永。
 放たれたブレスが仁たちを襲うが、降下中に椿から借りた水衣でギリギリ軽減。
 パラシュートを開きつつもバズーカ砲を乱射。ドラゴンを牽制する。
 ブレスによる暴風と交差する爆発。
 一方で椿と久永はブレス効果範囲のギリギリ外で緊急制動。
 ホバリングをかけながら椿は弓を構えた。手の中には無数の矢。それらをいっぺんに弓につがえ、あえて天空めがけて放つ。
 すると矢が途中で霧に変わり、雨となり、ブレス攻撃をうけた仲間たちに浴びせられていく。
 雨に混じって七色の羽扇を振りかざす久永。
 上から下へと繰り出した羽扇に応えるように雨の中から無数の雷が生成され、ドラゴンへと食らいついていく。
「かなりの威力ね。噛みつきと組み合わせたら厄介だわ」
「心配ない。対策は打っている」
 見ろ、と言って久永は上空を指さした。
 遅れて降下してくる両慈と零が見える。
 二人はアイコンタクトをとると、手を取り合って舞い始めた。
 清風と慟哭の演舞である。
 二人の生み出した空間は戦場全体を包み込み、味方の身体を軽く、ドラゴンの身体を重くした。
 ドラゴンの攻撃方法が必然的に絞られてくる。
 喉を鳴らしてうなりをあげ、ドラゴンは再びブレスを放とうとした。
「そうはいくか!」
 奏空が霧を生み出してドラゴンへと放射。身体を更に重くしたドラゴンはブレスの勢いもまた弱まっていた。
 癒力活性を発動させて味方の損傷を防ぐ渚。
「まずはこのブレスからなんとかしないと。性能がずるい!」
 言いながらも渚と奏空は地面に着地。
 両慈も零を一旦抱える形で着地した。
 彼らは即座に攻撃にシフト。ドラゴンの喉を狙う。
 彼らの破壊優先順位は喉、翼、角の順番だ。回復力もある程度あるため、翼までを破壊すれば勢いをつけられる。反面ブレスを封じる前に味方がやられると厄介だ。
 やや流れた位置で逝と仁もパラシュートを外して着地。転がりながら衝撃を逃がし、立ち上がりと同時にバズーカ砲の安全装置を解除。同時にドラゴンの喉へ照準を合わせ、芸術的な早業で連射した。
 無数の爆発がドラゴンの頭部を襲う。
 煙がはれた頃には、ドラゴンの喉はひどく焼けただれていた。
「喉の破壊を確認。次の目標に移る!」
 集中砲火によって喉を破壊した逝たち。
 噛みつきによる追撃にそなえて何人かは移動を開始した。
 ポジション移動にはターンを消費するので場合によってはリスキーだが、相手の攻撃が近接範囲に絞られたことでリスク管理はむしろしやすくなっている。時間をかける価値はあるのだ。
「今度は翼ね。ぶっ潰す!」
 零は虚空から現われた刀の柄を握り込むとそのままダッシュ。長い刀身を露出させ、ドラゴンの翼めがけて飛びかかった。
 狙うは先端。飛行機でも翼の先端が折れただけで航行能力を著しく喪うものだ。(余談だが、現代の旅客機はそう簡単に落ちないようにできているらしい)
 翼の膜になっている部分に飛びついて刀を突き立てると、下方向に切り裂くように張りし出す。
 大きく翼を斬られたことでドラゴンは声にならぬ声をあげ、翼をばたつかせて空へと飛び上がった。
 うっかり持って行かれないように離脱。飛行中の久永に手を借りて安全に地面に着地――からの、振り向き回転斬撃。虚空を斬った刀の軌道がそのまま衝撃波となり、ドラゴンの翼を打つ。
 大きく揺れるドラゴンの身体。
 一方で大変なのは身体の上に乗っていたツバメである。
 ハイバランサーを用いて足場の不利を減少させているが、流石にゼロというわけではない。
 運転中のトラックなど比ではない風とはね飛ばされそうなほどの揺れを、あろうことかバク転と小刻みなステップだけで軽減し、ツバメは踊るようにドラゴンの背を切り続けていた。
 それも翼の付け根にあたる部分だ。このままでは飛行能力を喪失する。ドラゴンは怒りの叫びと共に身体を上下反転。
 流石にバランスどころではなくなったツバメは宙へ放り出され、ターンしてきたドラゴンが大きく口を開く。
 が、その口がツバメに食らいつくことは無かった。
 地上から狙い澄ましたように放った奏空の刀がドラゴンの頬に刺さったのだ。
 ギリギリで軌道を変えツバメの横をかすめていく。
 ツバメは落下制御をかけながら着地体勢に。
 一方で、奏空の刀はスパークしながら頬に刺さったままである。
「こっちだ、かかってこい!」
 奏空はもう一方の刀を握って走り出した。
 手を翳せば刀がひとりでに奏空のもとへと戻ってくる。
 それを逆手持ちにしてドラゴンへあえてのダイブ。
 腕を交差させ、逆手持ちの刀をドラゴンの顎の上下に突っ張らせるように構えた。
 勿論突っ張るというより刺さるだけなので固定効果は無いが、噛み砕かれる速度を遅くするくらいはできる。
 と、覚悟を決めた次の瞬間。
 飛行した椿が閉じる直前のドラゴンの顎を掠めるように通過。
 重量によるバランス低下から地面へ不時着。ごろごろと転がりつつも、奏空の折れた腕を強制治癒。あとに控えていた渚へとパスした。
「この子をお願い!」
「まかせて!」
 渚は奏空の断裂した組織を自らの生命力を注ぎ込むことで治癒させる。変な話かも知れないが、人間のおった怪我が仮に超高速で治癒したとしたら神経の再接続やらで激痛が走るそうだ。顔をしかめた奏空の背を、渚がばしんと叩いた。
「よしオッケー! 痛いとこない?」
「た、体術がちょっと……」
「貸してみろ」
 両慈が手の中に深想水を生み出すと、無理矢理奏空の口内に流し込んだ。
「ンぐ!?」
「これで身体の負荷は消えたはずだ。攻めるぞ」
 そうしている間にも仁と逝は地面を走りながらバズーカ砲を連射。空を飛ぶドラゴンに浴びせている。
 噛みつき攻撃をしかけようと急降下をしかけてくるが、バラバラに逃げることで攻撃を回避。
 地面を大きくえぐっていったドラゴンとすれ違いながらも身体を反転。追いかけるようにロケット弾を放っていく。
 彼らの放ったロケット弾はドラゴンの両翼に命中。
 ややバランスを崩し低空飛行に入った所で、久永はドラゴンとすれ違った。
 翳した羽扇を刀のように振り込む。
 空圧が歪み、断裂した空気がドラゴンの翼を片方まるまる切断して落としていく。
 ドラゴンもまた飛行能力を失い、地面に激突。大量の土を巻き上げて転倒した。
「おやおや、これじゃあもう飛べないさね」
 腕の機械と接続されたバズーカ砲を向けたまま大きく息を吐く逝。
 仁はぎらりとサングラスの奥にある目を光らせた。
「翼の破壊を確認。好機――集中砲火!」

 ブレスを封じられ、飛行能力まで失ったウルフドラゴン。
 しかし伊達にこの巨体を持っているわけではない。
 空を飛ぶ巨大狼がただの巨大狼になったところで、驚異であることには変わらないのだ。
 獲物をかみ殺すかのように食らいついてくるドラゴン。
 そこへ飛び込んだのは渚だった。
 本来ならばっくりと噛み千切られているはずの肉体を気合いでつなぎ止め、一度体外に放出した生命力を増幅させて自らに注入。えぐられた肉体を壊れたそばから強制修復していく。
「やっと降りてきたねドラゴンさん。これ以上暴れたりはさせないよ!」
 牙を掴み、無理矢理に口を開かせる渚。
 口外へ飛び出すと、椿が彼女をキャッチした。
 回復力の高い水を大量に生み出し、渚の肉体を包み込む。
「この子は回復しておくわ。その間に――」
「分かってる。まずはあの角だ!」
 そうしている間に、奏空がドラゴンの頭へと跳躍。
 食らいつこうとしたドラゴンの牙をかわし、角に思い切り双剣を叩き込んだ。
 強くヒビが入る。
 ドラゴンの側面を飛ぶ久永がエアブリッドを乱射した。
 すべてが角へ直撃。
 ドラゴンが身体をぐらつかせる。
「畳みかけろ。回復の暇を与えるな」
「ふうむ……」
 逝は反対側から回り込み、バズーカ砲を連射していく。
 頭部。それも角にことごとく命中した弾は爆発による黒煙と風に変わっていった。
 食らいついてはねのけようと試みるドラゴンだが、翼を喪って動きのバランスも落としたドラゴンの噛みつきはそう簡単にあたるものではなかった。
 狙いを外してすぐ近くの樹幹に噛みつき、一息にへし折る。
 あれが自分だったらと想像して、久永は顔をしかめた。
 が、そんな時間もそろそろ終わりだ。
 木の上にスタンバイしていたツバメが跳躍。
 ドラゴンの頭部に着地すると、角めがけて鎌を幾度も叩き付けた。斬撃というより打撃の構えだ。
 野球のバット。もしくは木こりの斧か。ツバメは渾身のパワーでもって振りかざすと、鎌に激しい炎を宿した。
 スイング。木こりの斧でもここまでは切れまいという勢いで、ドラゴンの角がへし折れた。
 反撃をくらわぬように即座に離脱。
「角を破壊した。最後の仕上げだ」
「了解――」
 バズーカ砲をただのチューブ型鈍器として握り込む仁。
 砲身が真っ赤に輝き、熱を放って付着した僅かな水分を蒸発させた。
「殲滅する」
 仁の打撃はシンプルだ。
 どんな相手にも等しく通用するフルスイングアタックが、ドラゴンの脇腹へとめり込んだ。
 ドウンという不吉なほどの音を立てて波打つボディ。
 よろめき、転倒するドラゴン。
 起き上がろうとするも、既に遅い。
 両慈が自らのエネルギーを頭上の人工雲に集中させ、激しいスパークをまき散らしながら増大させていた。
「トドメだ。行け」
「いっただっきまーす!」
 両慈が丸ごと排出した雷雲を突き抜けるように飛びかかる零。
 零の振り上げた刀には両慈の雷撃が大量にまとわりつき、巨大な剣の様相を成していた。
 最後の力を振り絞って身を起こし、食らいつくドラゴン。
 牙が零の頬を大きく削っていく。
 その一方。
 零の刀はドラゴンの顎を切り裂き、さらなる勢いで後頭部までを切断。
 ドラゴンのは顎から上の部分を失い、地面にドサリと落下したのだった。
 かなり無理矢理な姿勢で切り込んだ零はバランスを崩して落下。
 泥のある地面に落ちそうになったが、滑り込んだ両慈がそれをキャッチした。
「怪我は無いか」
「ほっぺ痛いだけ、大丈夫。けど……」
 倒れたドラゴンの巨体を見る。
 ウルフドラゴン。
 狼のシルエットにコウモリの羽根とトカゲの鱗。
 そんな化け物が、みるみる溶けて消えていく。
「食べられるかと思ったのに」
「妖は食べ物じゃ無いぞ」
 消滅していくドラゴンに歩み寄る椿。
「妖たちが鉄道を執拗に狙っているわ。本能でできる行動とは思えない。誰かが、貴方たちに指示しているの?」
「……」
 ドラゴンは消えゆくさなかで、耳を澄まさなければ聞こえないほどの声量で呟いた。
「キバ……オウ……」

 巨大な妖との戦いである。
 周辺の土地はめくれかえり、手のつけられない状態になっていた。
 その分ヘリが下りるには不自由しなかったようで、両手を振って誘導する渚たちのもとへ迎えに来ていた。
「犠牲になった隊員たちは、弔えないのか?」
 ヘリに乗り込んでいく逝や久永たちを見送りつつ、ツバメが仁に振り返った。
「次の任務が待っている。あたり一面を掘り返している時間が惜しい。『彼ら』も、そう考えるだろう」
 そう応えた仁の手には三つのドッグタグが握られていた。降下の際に素早く回収したのだろう。
 奏空がヘリからせかすように呼びかけている。ツバメたちは頷き合い、ヘリへ乗り込んだ。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし




 
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