≪蒐囚壁≫禍々しき漆黒の原罪たるダークギルティ様
●禍々しき漆黒の原罪たるダークギルティ様
蒐囚壁財団から再収容作戦の協力依頼を正当な現金報酬で受諾。
達成条件は、ある意味とても危険な古妖を目標地点に誘導すること。
●ぜんちぜんのうのかみ(自称)
「『禍々しき漆黒の原罪たるダークギルティ様』を『永遠の呪縛から解き放たれし罪深き黒き祝福の塔』へ導くために『暗黒の神々さえも忌避した死と再生の輪舞(えんどれすろんど)』をおこないましょー」
久方 真由美(nCL2000003)は資料を片手に笑顔を貫いていた。
むりからぬ。
もう何言ってんだからわかんねーしいちいち黒いしギルティだしあらゆる単語に謎のルビがついてるしなんだこれほんとなんだこれ。
混乱している覚者たちに、真由美は噛み砕いて説明を始めた。
『禍々しき(中略)ギルティ様』は蒐囚壁財団がかつて収容していた怪異(古妖)のひとつである。
妖ショックの折に妖被害によって収容施設が崩壊。他多くの収容物と同じく野に放たれてしまったそうだ。
『禍々(中略)ルティ様』はきわめて強力な特異性を持ち、その禍々しき言動もさることながら触れるものや状況を強制的に禍々しきものに変えてしまう特性をもっている。
以下の録音テープを聴いて貰いたい。
A博士:やあ収容怪異六六五番。
六六五:我は禍々しき漆黒の原罪たるダークギルティ。
A博士:質問をしてもいいかい。
六六五:余の罪深き血の晩餐は神々をも冒涜せし呪われし定めの儀式。
A博士:君はなぜ、スクランブル交差点の真ん中で真っ黒なゴム製の剣を振り回して踊っていたんだね?
六六五:天界と魔界のはざまに生まれし俺様の罪深き剣が世界の理をも崩壊させ覚醒(めざ)めの刻(とき)を迎えん。
A博士:ならば漆黒の主たる死の神々が与えし永遠の呪縛をも破壊するというのか。
六六五:呪われし原罪の王(ギルティキングス)……。
A博士:機械仕掛けの永劫世界(パラドックスバラダイス)か!
六六五:いかにも。我が罪深き祭壇に――。
(アナウンスは中断されました。A博士は会話不能なレベルの精神汚染状態と診断。精神洗浄処理ののち解雇されました)
「…………」
「…………」
頭を抱える一同。
どうやらこの古妖に接していると完全におかしなムードに巻き込まれてしまう上に、自我が崩壊していくらしい。
「ええと、覚者にはこの特異性が通じづらいという実験結果が出ているそうで、皆さんの力をどうしても借りたいそうです。内容を説明しますね」
都市部のスクランブル交差点を通行している『禍(中略)ティ様』を言葉巧みに誘導し、1キロメートル離れた収容施設へ入らせるのが今回の目的だ。
収容施設は二階建てアパートに偽装した大型設備で、一度ドアを潜って中へ入ればロックがかかり、収容処理が完了するそうだ。
ただしそれには、『禍(中略)ティ様』を気分良く誘導するための口実が必要だろうし、なんなら巻き込まれた周囲の人々を引き離すことも必要になる。
勿論実力行使によって倒してから収容することも可能だが、財団側は『心から推奨しない』と言っている。
「ええと、みんなならできると思います。頑張ってください!」
蒐囚壁財団から再収容作戦の協力依頼を正当な現金報酬で受諾。
達成条件は、ある意味とても危険な古妖を目標地点に誘導すること。
●ぜんちぜんのうのかみ(自称)
「『禍々しき漆黒の原罪たるダークギルティ様』を『永遠の呪縛から解き放たれし罪深き黒き祝福の塔』へ導くために『暗黒の神々さえも忌避した死と再生の輪舞(えんどれすろんど)』をおこないましょー」
久方 真由美(nCL2000003)は資料を片手に笑顔を貫いていた。
むりからぬ。
もう何言ってんだからわかんねーしいちいち黒いしギルティだしあらゆる単語に謎のルビがついてるしなんだこれほんとなんだこれ。
混乱している覚者たちに、真由美は噛み砕いて説明を始めた。
『禍々しき(中略)ギルティ様』は蒐囚壁財団がかつて収容していた怪異(古妖)のひとつである。
妖ショックの折に妖被害によって収容施設が崩壊。他多くの収容物と同じく野に放たれてしまったそうだ。
『禍々(中略)ルティ様』はきわめて強力な特異性を持ち、その禍々しき言動もさることながら触れるものや状況を強制的に禍々しきものに変えてしまう特性をもっている。
以下の録音テープを聴いて貰いたい。
A博士:やあ収容怪異六六五番。
六六五:我は禍々しき漆黒の原罪たるダークギルティ。
A博士:質問をしてもいいかい。
六六五:余の罪深き血の晩餐は神々をも冒涜せし呪われし定めの儀式。
A博士:君はなぜ、スクランブル交差点の真ん中で真っ黒なゴム製の剣を振り回して踊っていたんだね?
六六五:天界と魔界のはざまに生まれし俺様の罪深き剣が世界の理をも崩壊させ覚醒(めざ)めの刻(とき)を迎えん。
A博士:ならば漆黒の主たる死の神々が与えし永遠の呪縛をも破壊するというのか。
六六五:呪われし原罪の王(ギルティキングス)……。
A博士:機械仕掛けの永劫世界(パラドックスバラダイス)か!
六六五:いかにも。我が罪深き祭壇に――。
(アナウンスは中断されました。A博士は会話不能なレベルの精神汚染状態と診断。精神洗浄処理ののち解雇されました)
「…………」
「…………」
頭を抱える一同。
どうやらこの古妖に接していると完全におかしなムードに巻き込まれてしまう上に、自我が崩壊していくらしい。
「ええと、覚者にはこの特異性が通じづらいという実験結果が出ているそうで、皆さんの力をどうしても借りたいそうです。内容を説明しますね」
都市部のスクランブル交差点を通行している『禍(中略)ティ様』を言葉巧みに誘導し、1キロメートル離れた収容施設へ入らせるのが今回の目的だ。
収容施設は二階建てアパートに偽装した大型設備で、一度ドアを潜って中へ入ればロックがかかり、収容処理が完了するそうだ。
ただしそれには、『禍(中略)ティ様』を気分良く誘導するための口実が必要だろうし、なんなら巻き込まれた周囲の人々を引き離すことも必要になる。
勿論実力行使によって倒してから収容することも可能だが、財団側は『心から推奨しない』と言っている。
「ええと、みんなならできると思います。頑張ってください!」

■シナリオ詳細
■成功条件
1.禍ティ様を収容する
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
周囲の一般市民も影響下に置かれており、調査員も近づけない状態です。
一応戦闘をして倒し、収容施設へ放り込むこともできますが、その場合はちょっと手こずると思われます。
なにせ戦闘スペックを含むあらゆる情報がわかりません。
●収容手順
・影響をうけづらい覚者(つまり皆さん)が彼を誘導します。
その際必要なのはつてきそうな状況作りと一般市民の引き離しです。
財団は収容のためなら一億円までの費用は出せると言っています。
・1キロメートルの移動は徒歩で行ないます。自動車をはじめとする乗り物の使用は厳禁です。財団から『何があっても絶対に乗り物に乗せないように』と言われています。スケボー程度でもアウトだそうです。
・徒歩の間は話を繋がなくてはなりません。この間影響を受ける可能性があります。無理に抵抗すると精神崩壊のおそれがあるので、あえて乗っかっておくと後で回復しやすいそうです。
・収容施設に『禍(略)ティ様』を一人で入らせます。
ドアが閉まるところまで行けばOKです。他に誰か入ってしまった場合あらゆる保証ができないと言われています。
●補足知識
・蒐囚壁財団
ファイヴが限定協力関係にある組織。覚者があまりいないらしい。
人類のため、怪異(古妖)をあらゆる科学的手段で無力化して閉じ込めることを目的としている。
妖ショックがおこるずっと前から存在していたらしいが、妖事件のあおりで収容施設が沢山壊され危険な怪異たちが逃げてしまったらしい。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
相談日数
7日
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
5/6
5/6
公開日
2016年06月07日
2016年06月07日
■メイン参加者 5人■

●禍々しき漆黒の原罪たるダークギルティ様の語り部となりて死のバイブルを解き放たん
光と闇の交わりし罪なき生命たちに混じりて、神々をも冒涜せしダークギルティは祈らん。
光無き漆黒の刃による血の晩餐に欲深くも罪なき生命は集まり、禁じられし光の封印術を行使すれど、漆黒の原罪たる心をゆるがすことはない。
そこへ現われ、神々を冒涜せし光の中で偽りの叙事詩を紡ぐ『かわいいは無敵』小石・ころん(CL2000993)。
「この反応、まさか、あなたが伝説の勇者様なのですか!?」
悠久の時の狭間で永劫の忘却を繰り返すダークギルティは血の晩餐のさなかに。
「神々に永劫の封印を施されし伝説か。確かに我は勇者なり」
ころんの太陽の祝福を拒まぬ封印具より冒涜せし定めの書を見つけた。
「神々を冒涜せし定め……されど罪深き者の懺悔の声を知れ、か」
欲深くも罪なき生命のまなざしは、忌むべき大気の冒涜による罪深き者どもによる死の狂気を思った。
されど欲深く若き生命は狂気をもたず。
「これより、『暗黒の神々さえも忌避した死と再生の輪舞』を執り行う! 根源へと至る、道を印せ……!」
神々の目を冒涜せし『突撃巫女』神室・祇澄(CL2000017)。彼女の罪深き言葉は神々をも冒涜せし力を秘めていたが、若き生命はその言葉を無知なる罪によってしりぞけた。
「……ちょっと、道を空けて、ください」
神々を冒涜せし祇澄の言葉により生命の海は割れる。押し寄せる波のごとき欲望を『騎士見習い?』天堂・フィオナ(CL2001421)はせき止めた。
「退け! 今からここは戦場だ! 大丈夫だ、背中は私が守る!」
フィオナにも神々を冒涜せし言葉の力が宿り、欲深くも罪なき生命は見守る民と化した。
見守る民に『二兎の救い手』秋津洲 いのり(CL2000268)は言った。
「魂の宿り木へ帰りなさい」
いのりの神々を冒涜せし偽りの神託。
黄昏の時きたれり。
華神 刹那(CL2001250)が王の資格を持つ許されざる衣を纏いてダークギルティへと挑まん。
天使の息をつくころんとダークギルティに、祇澄といのりは偽りの姿を顕現せん。
「我が姿に、気づくとは……やはり、原罪たる、汝が持つ、運命が為……か」
「貴様が約束されし運命を求めるならば、我は運命を受け入れん」
「なれば……彼の地にて、汝を待つ、運命に従い、導くが、我が定め……我は、神託の巫女……共に参らん、約束の地、祝福の塔へ……」
「お初に御目文字仕りますわ。高貴たる真紅の女王(クリムゾンレジーナ)秋津洲いのりと申します。(前略)祝福の塔には貴方にしか倒し得ぬ巨悪が存在するのです。この彷徨える衆愚の箱庭(スクランブル交差点)から旅立つ時が来たのですわ!」
「漆黒の業火が我をっ……否、漆黒の神は罪深き民の反逆をうけるか……」
「噂では祝福の塔には闇纏いし暗黒の処刑王(エクスキューショナー)がいると聞いておりますわ。ですが轟轟たる永久の言の葉(エターナルボイス)をお持ちと噂のギルティ様なら鶴の一声で沈められますわね。そのご様子を拝見するのが楽しみですわ」
「闇纏いし暗黒の処刑王……か」
「(※日本語表記ができません)」
「迷える罪人たちの宴が裏切りの業火に焼かれるか……」
漆黒の原罪たるダークギルティに忘却たる祝福の女神が微笑み、塔への道のりを開かん。
されと漆黒の神への反逆には闇の囁きあらんとし、されど闇纏いし暗黒の処刑王に罪深きダークギルティは業火に焼かれる日を思う。カサンドラの罪悪すらも生ぬるく。
現われし白銀の騎士フィオナ。
「さては貴様、私のことを知っているのか!?」
かつて白金のプラチナの刃。漆黒の処刑人の剣。光と闇。騎士の語る罪深き伝説にダークギルティは瞠目する。
「光と闇の剣が交わりし時、我が運命の罪科はよみがえらん。されど罪深き我が剣は血を欲してはいない」
「罪深き王よ、だが本当のあなたは罪人ではないのだろう」
「なん……だと……? 欲深き運命の交差が運命の神々をも裏切るか」
「教えてくれ、本当のことを」
「永劫の悲しき輪舞曲(サイレーンロンド)……」
かくして暗黒の神々さえも忌避した死と再生の輪舞はつむがれ、神々を冒涜せし者たちは永遠の呪縛から解き放たれし罪深き黒き祝福の塔へと訪れた。
しかし黒き魔女はあざ笑う。
「まんまと騙されるとは滑稽な。この<狂宴の魔女(サバト・クイーン)>様が小娘のふりをしていたのも、その扉を開けるチカラを奪うため。愚かな救世主よ、ここで終わりだ!」
ダークギルティは時の狭間にあった。偽りの生命にも偽りの宿命にもなく、かの神々を冒涜した死の運命へ反逆せし力を感じたがゆえに。
刹那は偽りの死を迎え、いのりとフィオナもまた偽りのラグナロクによって運命を裏切りし死を迎えた。
「汝を待つ、運命は、他を拒む、孤高の旅路……果てに待つのは、栄光か破滅か……」
祇澄の指し示す偽らざる運命にダークギルティは永遠の呪縛から解き放たれし罪深き黒き祝福の塔を目指した。
「我には栄光も挫折もない」
かくして永遠の呪縛から解き放たれし罪深き黒き祝福の塔は鋼鉄の封印の中に沈み、血の贖罪を生むことはなく、呪われし漆黒の言葉もなくなった。
――以下、財団から送られたミーム汚染除去処理後の報告書である。
●ダークギルティという人類が照明器具を発明する際に闇を司る神の反対を押し切り人類を助けてしまった古妖について説明することで本来読むだけで死亡する筈の文章をノーリスクで公開します。
スクランブル交差点の真ん中でダークギルティさんがゴム製の剣を振っていました。これはかつて夜を司る神がダークギルティさんに課した罰で、これを怠ると世界中で照明器具を使う全ての人々に溶血性貧血のリスクがもたらされるというものです。
しかし町中でゴム製の剣を振るという奇行を目にした一般市民たちは興味本位で集まってきます。
ダークギルティさんを面白がって写真撮影する人もいましたが、本人は一向に気にしません。なぜなら彼らを守るためにあらゆる罰を受け入れたからです。
そこへ現われたのは小石ころんでした。
自ら技能スキルで光り輝いた彼女は『この反応、まさか、あなたが伝説の勇者様なのですか!?』と演技を交えてダークギルティさんに話しかけました。
ダークギルティさんはころんのような人をこれまで沢山見かけてきたので別段珍しがらずに、『自分は確かに勇敢だったかもしれないけれど、そのお話は誰にも語られない呪いがかかっているはずだよ』と応えました。
そしてころんのさげたビニールバッグに新人類教会の布教冊子が入っていることに気づいて、とても悲しい表情で『この力は本来人間が持っていいものではなかったのに』と言い、『けれどそれを助けた人もいたんだろうね』と昔を懐かしむ顔をしました。
ぶっちゃけ周りの人は二人が何言ってんのか分からないからボーッと見ていましたが、ころんの放つ合コンにいたら絶対話しかけないオーラと、イソプロピルメタンフルオロホスホネートと使った凶悪な大量殺人事件を彷彿とさせる宗教臭に話しかけづらい様子でした。
けれどやはり興味本位で近づいてしまう人もいます。深く考えない若者たちです。
神室祇澄が現われて『これより、暗黒の神々さえも忌避した死と再生の輪舞を執り行う。根源へと至る、道を印せ!』と言いました。けれど若者はチョーヤバイマジウケルと言い出したので、『ちょっと道をあけてください』と言って押しのけました。
ワーズワースという特殊な技能スキルを使っているので若者は簡単に道を空けてくれましたが、それでも面白がってついてこようとするので天堂フィオナが立ち塞がり『退け! 今からここは戦場だ! 大丈夫だ、背中は私が守る!』と叫びました。
とてもそうは見えませんでしたが彼女もまたワーズワースの技能スキルを使っています。彼女が戦場だと言えば戦場に見えてくるし、退けと言われれば退いてしまいたくなるものです。
とどめに秋津洲いのりです。彼女は魔眼という技能スキルを使って『自宅に帰りなさい』と一人一人順番に命令して、追跡を完全に防ぎました。
貰った着物の着付けに時間をかけていた華神刹那が『余った金で覚者を雇えと言ったのになにをしているのか』と言いました。二人ともなぜだろうと疑問を抱いたままでしたが、刹那がいった着物を仕立ててくれという要望に全額以上を出していたせいです。彼女の着物はさる人間国宝が手がけた作でリクエスト通り黒字に金で蝶の柄が入っています。もうこんなもの服じゃないし、人間が羽織っていいものじゃありませんね。
ちなみに一億円かけてよその覚者を雇うくらいなら今集まってる覚者いらないじゃんという話ですし、そもそも蒐囚壁財団は過去に同じことをやって横領や略奪といったひどい失敗を経験しているのでたとえ十億円払っても善良なファイヴに頼みたいと思っています。
さて、ここからは合流の時間です。
ころんとなんでもない雑談をしていたダークギルティさんの前に、祇澄といのりが同時に現われました。
祇澄は『我が姿に気づくとはやはり原罪たる汝が持つ運命が為か』と言いましたが、ダークギルティさんからすれば普通に立っているだけの人です。ステルスという技能スキルを使って浮き世離れした感じを出しましたが人払いも済んでいるためにあまり意味はありません。けれどダークギルティさんは存在感の薄い人なのかなと気を遣って『あなたが気づいて欲しいと思った時には、ちゃんと気づいてあげるようにするよ』と言いました。
けれど続けて祇澄が『なれば彼の地にて汝を待つ運命に従い導くが我が定め。我は神託の巫女。共に参らん。約束の地、祝福の塔へ』と言い出したので、ダークギルティさんは悲しい顔をしました。道案内をしてくれる人は歓迎するけれど、自分には祝福される権利はないと考えているからです。
『お初に御目文字仕りますわ。高貴たる真紅の女王(クリムゾンレジーナ)秋津洲いのりと申します。(前略)祝福の塔には貴方にしか倒し得ぬ巨悪が存在するのです。この彷徨える衆愚の箱庭(スクランブル交差点)から旅立つ時が来たのですわ!』
いのりが悲しい顔のダークギルティさんに、気分を変えるようなトーンで話しかけました。
彼女の言っていることを半分まで理解したダークギルティさんは『夜を司る神が自分を許すはずはないよ』と言いかけ、すぐに言葉を訂正しました。『もしかして夜を司る神が何者かに脅かされているのか』と言い換えます。
『噂では祝福の塔には闇纏いし暗黒の処刑王(エクスキューショナー)がいると聞いておりますわ。ですが轟轟たる永久の言の葉(エターナルボイス)をお持ちと噂のギルティ様なら鶴の一声で沈められますわね。そのご様子を拝見するのが楽しみですわ』
いのりがこう続けたので、ダークギルティさんはとてもとても昔のことを思い出して震えました。かつて夜の神がさしむけた刺客たちや、彼らを殺してでも人々の発展への許しを請おうとした苦難の日々を思い出したからです。
正直あの人たちにもう一回会うのは嫌でした。絶対嫌われているし、今度こそ殺されると思うからです。
そこへ優しい笑顔で刹那が語りかけます。『この前行った居酒屋のメニューに三種のチーズピザというものがあったけれど、注文してみたら二種類のチーズしか入っていなかったのでとても残念な気持ちになった』という内容です。ドイツ語とラテン語をめちゃくちゃに混ぜ合わせた内容なのでころんたちには何を言っているのかさっぱりです。これに対してダークギルティさんは『なぜ今そんな話をするのか分からないけれど、確かに注文と違うものが出てきたら残念な気持ちになるね』と言いました。
けれど関係の無い雑談をすることで過去のトラウマをごまかせたダークギルティさんは、夜の神に何かあったのなら顔を出すくらいはしなくてはならないという義務感で歩き出しました。
けれど歩いて早々に刺客たちのことを思い出してめちゃくちゃヘコみました。だってあの人たち、毎日のように悪趣味な嫌がらせをするのです。絶望の未来を予知する力に誰も当人の言葉を信じなくなるオプションをつけてプレゼントするなんてザラです。
そこへ現われたのはフィオナでした。彼女は『私のことを知っているのか?』と急に言ってきました。前世の自分はしろがねのつるぎで、ダークギルティさんは夜の神の使いだと言うのです。本当にそうだったので、ダークギルティさんは驚きました。
これまで前世は織田信長だとかナイチンゲールだとか言って勘違いしたコスプレ野郎を沢山見てきたダークギルティさんは思わず『僕らは元々敵同士だったけれど、まして元主人を裏切った僕のところに来ても戦う気は無いよ』と言いました。
するとフィオナが『罪深き王よ、だが本当のあなたは罪人ではないのだろう』と思わせぶりなことを言いました。人類史から完全に抹消された古代文明の歴代国王の一人だったダークギルティさんはまたも驚きました。自分の代で文明が滅んでしまった責任を感じていますし、それが後の人類のためになると分かってくれた人は少なかったからです。
『分かってくれる人が敵だったなんて皮肉な運命だね』と言うダークギルティさんに、フィオナはさらなる真実を求めましたが、『きっと悲しみが増えるだけだよ』と言ってダークギルティさんはそれを拒みました。
けれど『こういう出会いもあるのだから、今日が夜を司る神に顔を出すチャンスなのかもしれない』と言って再び歩き出すことにしました。その足取りはとても重いものでした。あと刹那はずっと居酒屋のラストオーダーで何を頼むのかいつも迷わされると複数言語で話していましたが、ダークギルティさんは正直に言って居酒屋に行ったことが無いので適当に相づちをうつことしかできませんでした。
やがて現在一応夜を司っていることになっている古妖が、呪いを負ったダークギルティさんが毎日祈りの儀式をせずにすむようになる処刑施設へたどり着きました。
外観としてはただのアパートですが、この中に入ったものは無条件に細胞破壊と強制再生を繰り返され、永久に苦しむことになります。かわりに罰は帳消しになるので、溶血性貧血が蔓延するリスクがなくなるのです。
そうと知らずにドアの前に立つダークギルティさんに、ころんが突然『ふっふっふ』と笑い出しました。
『まんまと騙されるとは滑稽な。この<狂宴の魔女(サバト・クイーン)>様が小娘のふりをしていたのも、その扉を開けるチカラを奪うため。愚かな救世主よ、ここで終わりだ!』
ダークギルティさんは焦りました。
なぜかと言えば、ころんが覚者だったからでも年齢をかなり誤魔化していたからでもなく、ここで終わりだと言いながらころんが急に自分を回復し始めたからです。
覚者はいくらか見たことがありますが、回復術式を間違って使う人は初めてです。というかいません。
しかもなぜか刹那が飛び出していって回復術式を浴びたというのに勝手に倒れ出しますし、いのりやフィオナも杖や剣を振りながら戦うふりをし始めます。映画で見た殺陣(タテ)に似ていたので、丸わかりでしたが、急に始める意味が分かりません。
かなり無理のある演技は続き、フィオナやいのりはばたばたと倒れます。
祇澄がつらそうな顔で『汝を待つ運命は他を拒む孤高の旅路。果てに待つのは栄光か破滅か』と言い出しました。
ほとんどその通りなのですが、『栄光も破滅も経験しているし、きっとどちらでもないよ』とだけ訂正してダークギルティさんは祇澄の促した通りに処刑施設へと入りました。
処刑施設の扉が閉まったと同時に、強固な鉄板ロックがドアや壁を覆い隠しました。今日中には空輸部隊が到着し、施設ごとアメリカへ輸送するそうです。
けれどすぐに気を取り直して、さっきまでやっていた馬鹿な中二病患者みたいな演技を恥ずかしがりました。
本人たちは気づいていませんが、これでもう溶血性貧血が蔓延するリスクはなくなりましたし、彼の負った呪いによる特殊な言語障害にかかる心配もないでしょう。
光と闇の交わりし罪なき生命たちに混じりて、神々をも冒涜せしダークギルティは祈らん。
光無き漆黒の刃による血の晩餐に欲深くも罪なき生命は集まり、禁じられし光の封印術を行使すれど、漆黒の原罪たる心をゆるがすことはない。
そこへ現われ、神々を冒涜せし光の中で偽りの叙事詩を紡ぐ『かわいいは無敵』小石・ころん(CL2000993)。
「この反応、まさか、あなたが伝説の勇者様なのですか!?」
悠久の時の狭間で永劫の忘却を繰り返すダークギルティは血の晩餐のさなかに。
「神々に永劫の封印を施されし伝説か。確かに我は勇者なり」
ころんの太陽の祝福を拒まぬ封印具より冒涜せし定めの書を見つけた。
「神々を冒涜せし定め……されど罪深き者の懺悔の声を知れ、か」
欲深くも罪なき生命のまなざしは、忌むべき大気の冒涜による罪深き者どもによる死の狂気を思った。
されど欲深く若き生命は狂気をもたず。
「これより、『暗黒の神々さえも忌避した死と再生の輪舞』を執り行う! 根源へと至る、道を印せ……!」
神々の目を冒涜せし『突撃巫女』神室・祇澄(CL2000017)。彼女の罪深き言葉は神々をも冒涜せし力を秘めていたが、若き生命はその言葉を無知なる罪によってしりぞけた。
「……ちょっと、道を空けて、ください」
神々を冒涜せし祇澄の言葉により生命の海は割れる。押し寄せる波のごとき欲望を『騎士見習い?』天堂・フィオナ(CL2001421)はせき止めた。
「退け! 今からここは戦場だ! 大丈夫だ、背中は私が守る!」
フィオナにも神々を冒涜せし言葉の力が宿り、欲深くも罪なき生命は見守る民と化した。
見守る民に『二兎の救い手』秋津洲 いのり(CL2000268)は言った。
「魂の宿り木へ帰りなさい」
いのりの神々を冒涜せし偽りの神託。
黄昏の時きたれり。
華神 刹那(CL2001250)が王の資格を持つ許されざる衣を纏いてダークギルティへと挑まん。
天使の息をつくころんとダークギルティに、祇澄といのりは偽りの姿を顕現せん。
「我が姿に、気づくとは……やはり、原罪たる、汝が持つ、運命が為……か」
「貴様が約束されし運命を求めるならば、我は運命を受け入れん」
「なれば……彼の地にて、汝を待つ、運命に従い、導くが、我が定め……我は、神託の巫女……共に参らん、約束の地、祝福の塔へ……」
「お初に御目文字仕りますわ。高貴たる真紅の女王(クリムゾンレジーナ)秋津洲いのりと申します。(前略)祝福の塔には貴方にしか倒し得ぬ巨悪が存在するのです。この彷徨える衆愚の箱庭(スクランブル交差点)から旅立つ時が来たのですわ!」
「漆黒の業火が我をっ……否、漆黒の神は罪深き民の反逆をうけるか……」
「噂では祝福の塔には闇纏いし暗黒の処刑王(エクスキューショナー)がいると聞いておりますわ。ですが轟轟たる永久の言の葉(エターナルボイス)をお持ちと噂のギルティ様なら鶴の一声で沈められますわね。そのご様子を拝見するのが楽しみですわ」
「闇纏いし暗黒の処刑王……か」
「(※日本語表記ができません)」
「迷える罪人たちの宴が裏切りの業火に焼かれるか……」
漆黒の原罪たるダークギルティに忘却たる祝福の女神が微笑み、塔への道のりを開かん。
されと漆黒の神への反逆には闇の囁きあらんとし、されど闇纏いし暗黒の処刑王に罪深きダークギルティは業火に焼かれる日を思う。カサンドラの罪悪すらも生ぬるく。
現われし白銀の騎士フィオナ。
「さては貴様、私のことを知っているのか!?」
かつて白金のプラチナの刃。漆黒の処刑人の剣。光と闇。騎士の語る罪深き伝説にダークギルティは瞠目する。
「光と闇の剣が交わりし時、我が運命の罪科はよみがえらん。されど罪深き我が剣は血を欲してはいない」
「罪深き王よ、だが本当のあなたは罪人ではないのだろう」
「なん……だと……? 欲深き運命の交差が運命の神々をも裏切るか」
「教えてくれ、本当のことを」
「永劫の悲しき輪舞曲(サイレーンロンド)……」
かくして暗黒の神々さえも忌避した死と再生の輪舞はつむがれ、神々を冒涜せし者たちは永遠の呪縛から解き放たれし罪深き黒き祝福の塔へと訪れた。
しかし黒き魔女はあざ笑う。
「まんまと騙されるとは滑稽な。この<狂宴の魔女(サバト・クイーン)>様が小娘のふりをしていたのも、その扉を開けるチカラを奪うため。愚かな救世主よ、ここで終わりだ!」
ダークギルティは時の狭間にあった。偽りの生命にも偽りの宿命にもなく、かの神々を冒涜した死の運命へ反逆せし力を感じたがゆえに。
刹那は偽りの死を迎え、いのりとフィオナもまた偽りのラグナロクによって運命を裏切りし死を迎えた。
「汝を待つ、運命は、他を拒む、孤高の旅路……果てに待つのは、栄光か破滅か……」
祇澄の指し示す偽らざる運命にダークギルティは永遠の呪縛から解き放たれし罪深き黒き祝福の塔を目指した。
「我には栄光も挫折もない」
かくして永遠の呪縛から解き放たれし罪深き黒き祝福の塔は鋼鉄の封印の中に沈み、血の贖罪を生むことはなく、呪われし漆黒の言葉もなくなった。
――以下、財団から送られたミーム汚染除去処理後の報告書である。
●ダークギルティという人類が照明器具を発明する際に闇を司る神の反対を押し切り人類を助けてしまった古妖について説明することで本来読むだけで死亡する筈の文章をノーリスクで公開します。
スクランブル交差点の真ん中でダークギルティさんがゴム製の剣を振っていました。これはかつて夜を司る神がダークギルティさんに課した罰で、これを怠ると世界中で照明器具を使う全ての人々に溶血性貧血のリスクがもたらされるというものです。
しかし町中でゴム製の剣を振るという奇行を目にした一般市民たちは興味本位で集まってきます。
ダークギルティさんを面白がって写真撮影する人もいましたが、本人は一向に気にしません。なぜなら彼らを守るためにあらゆる罰を受け入れたからです。
そこへ現われたのは小石ころんでした。
自ら技能スキルで光り輝いた彼女は『この反応、まさか、あなたが伝説の勇者様なのですか!?』と演技を交えてダークギルティさんに話しかけました。
ダークギルティさんはころんのような人をこれまで沢山見かけてきたので別段珍しがらずに、『自分は確かに勇敢だったかもしれないけれど、そのお話は誰にも語られない呪いがかかっているはずだよ』と応えました。
そしてころんのさげたビニールバッグに新人類教会の布教冊子が入っていることに気づいて、とても悲しい表情で『この力は本来人間が持っていいものではなかったのに』と言い、『けれどそれを助けた人もいたんだろうね』と昔を懐かしむ顔をしました。
ぶっちゃけ周りの人は二人が何言ってんのか分からないからボーッと見ていましたが、ころんの放つ合コンにいたら絶対話しかけないオーラと、イソプロピルメタンフルオロホスホネートと使った凶悪な大量殺人事件を彷彿とさせる宗教臭に話しかけづらい様子でした。
けれどやはり興味本位で近づいてしまう人もいます。深く考えない若者たちです。
神室祇澄が現われて『これより、暗黒の神々さえも忌避した死と再生の輪舞を執り行う。根源へと至る、道を印せ!』と言いました。けれど若者はチョーヤバイマジウケルと言い出したので、『ちょっと道をあけてください』と言って押しのけました。
ワーズワースという特殊な技能スキルを使っているので若者は簡単に道を空けてくれましたが、それでも面白がってついてこようとするので天堂フィオナが立ち塞がり『退け! 今からここは戦場だ! 大丈夫だ、背中は私が守る!』と叫びました。
とてもそうは見えませんでしたが彼女もまたワーズワースの技能スキルを使っています。彼女が戦場だと言えば戦場に見えてくるし、退けと言われれば退いてしまいたくなるものです。
とどめに秋津洲いのりです。彼女は魔眼という技能スキルを使って『自宅に帰りなさい』と一人一人順番に命令して、追跡を完全に防ぎました。
貰った着物の着付けに時間をかけていた華神刹那が『余った金で覚者を雇えと言ったのになにをしているのか』と言いました。二人ともなぜだろうと疑問を抱いたままでしたが、刹那がいった着物を仕立ててくれという要望に全額以上を出していたせいです。彼女の着物はさる人間国宝が手がけた作でリクエスト通り黒字に金で蝶の柄が入っています。もうこんなもの服じゃないし、人間が羽織っていいものじゃありませんね。
ちなみに一億円かけてよその覚者を雇うくらいなら今集まってる覚者いらないじゃんという話ですし、そもそも蒐囚壁財団は過去に同じことをやって横領や略奪といったひどい失敗を経験しているのでたとえ十億円払っても善良なファイヴに頼みたいと思っています。
さて、ここからは合流の時間です。
ころんとなんでもない雑談をしていたダークギルティさんの前に、祇澄といのりが同時に現われました。
祇澄は『我が姿に気づくとはやはり原罪たる汝が持つ運命が為か』と言いましたが、ダークギルティさんからすれば普通に立っているだけの人です。ステルスという技能スキルを使って浮き世離れした感じを出しましたが人払いも済んでいるためにあまり意味はありません。けれどダークギルティさんは存在感の薄い人なのかなと気を遣って『あなたが気づいて欲しいと思った時には、ちゃんと気づいてあげるようにするよ』と言いました。
けれど続けて祇澄が『なれば彼の地にて汝を待つ運命に従い導くが我が定め。我は神託の巫女。共に参らん。約束の地、祝福の塔へ』と言い出したので、ダークギルティさんは悲しい顔をしました。道案内をしてくれる人は歓迎するけれど、自分には祝福される権利はないと考えているからです。
『お初に御目文字仕りますわ。高貴たる真紅の女王(クリムゾンレジーナ)秋津洲いのりと申します。(前略)祝福の塔には貴方にしか倒し得ぬ巨悪が存在するのです。この彷徨える衆愚の箱庭(スクランブル交差点)から旅立つ時が来たのですわ!』
いのりが悲しい顔のダークギルティさんに、気分を変えるようなトーンで話しかけました。
彼女の言っていることを半分まで理解したダークギルティさんは『夜を司る神が自分を許すはずはないよ』と言いかけ、すぐに言葉を訂正しました。『もしかして夜を司る神が何者かに脅かされているのか』と言い換えます。
『噂では祝福の塔には闇纏いし暗黒の処刑王(エクスキューショナー)がいると聞いておりますわ。ですが轟轟たる永久の言の葉(エターナルボイス)をお持ちと噂のギルティ様なら鶴の一声で沈められますわね。そのご様子を拝見するのが楽しみですわ』
いのりがこう続けたので、ダークギルティさんはとてもとても昔のことを思い出して震えました。かつて夜の神がさしむけた刺客たちや、彼らを殺してでも人々の発展への許しを請おうとした苦難の日々を思い出したからです。
正直あの人たちにもう一回会うのは嫌でした。絶対嫌われているし、今度こそ殺されると思うからです。
そこへ優しい笑顔で刹那が語りかけます。『この前行った居酒屋のメニューに三種のチーズピザというものがあったけれど、注文してみたら二種類のチーズしか入っていなかったのでとても残念な気持ちになった』という内容です。ドイツ語とラテン語をめちゃくちゃに混ぜ合わせた内容なのでころんたちには何を言っているのかさっぱりです。これに対してダークギルティさんは『なぜ今そんな話をするのか分からないけれど、確かに注文と違うものが出てきたら残念な気持ちになるね』と言いました。
けれど関係の無い雑談をすることで過去のトラウマをごまかせたダークギルティさんは、夜の神に何かあったのなら顔を出すくらいはしなくてはならないという義務感で歩き出しました。
けれど歩いて早々に刺客たちのことを思い出してめちゃくちゃヘコみました。だってあの人たち、毎日のように悪趣味な嫌がらせをするのです。絶望の未来を予知する力に誰も当人の言葉を信じなくなるオプションをつけてプレゼントするなんてザラです。
そこへ現われたのはフィオナでした。彼女は『私のことを知っているのか?』と急に言ってきました。前世の自分はしろがねのつるぎで、ダークギルティさんは夜の神の使いだと言うのです。本当にそうだったので、ダークギルティさんは驚きました。
これまで前世は織田信長だとかナイチンゲールだとか言って勘違いしたコスプレ野郎を沢山見てきたダークギルティさんは思わず『僕らは元々敵同士だったけれど、まして元主人を裏切った僕のところに来ても戦う気は無いよ』と言いました。
するとフィオナが『罪深き王よ、だが本当のあなたは罪人ではないのだろう』と思わせぶりなことを言いました。人類史から完全に抹消された古代文明の歴代国王の一人だったダークギルティさんはまたも驚きました。自分の代で文明が滅んでしまった責任を感じていますし、それが後の人類のためになると分かってくれた人は少なかったからです。
『分かってくれる人が敵だったなんて皮肉な運命だね』と言うダークギルティさんに、フィオナはさらなる真実を求めましたが、『きっと悲しみが増えるだけだよ』と言ってダークギルティさんはそれを拒みました。
けれど『こういう出会いもあるのだから、今日が夜を司る神に顔を出すチャンスなのかもしれない』と言って再び歩き出すことにしました。その足取りはとても重いものでした。あと刹那はずっと居酒屋のラストオーダーで何を頼むのかいつも迷わされると複数言語で話していましたが、ダークギルティさんは正直に言って居酒屋に行ったことが無いので適当に相づちをうつことしかできませんでした。
やがて現在一応夜を司っていることになっている古妖が、呪いを負ったダークギルティさんが毎日祈りの儀式をせずにすむようになる処刑施設へたどり着きました。
外観としてはただのアパートですが、この中に入ったものは無条件に細胞破壊と強制再生を繰り返され、永久に苦しむことになります。かわりに罰は帳消しになるので、溶血性貧血が蔓延するリスクがなくなるのです。
そうと知らずにドアの前に立つダークギルティさんに、ころんが突然『ふっふっふ』と笑い出しました。
『まんまと騙されるとは滑稽な。この<狂宴の魔女(サバト・クイーン)>様が小娘のふりをしていたのも、その扉を開けるチカラを奪うため。愚かな救世主よ、ここで終わりだ!』
ダークギルティさんは焦りました。
なぜかと言えば、ころんが覚者だったからでも年齢をかなり誤魔化していたからでもなく、ここで終わりだと言いながらころんが急に自分を回復し始めたからです。
覚者はいくらか見たことがありますが、回復術式を間違って使う人は初めてです。というかいません。
しかもなぜか刹那が飛び出していって回復術式を浴びたというのに勝手に倒れ出しますし、いのりやフィオナも杖や剣を振りながら戦うふりをし始めます。映画で見た殺陣(タテ)に似ていたので、丸わかりでしたが、急に始める意味が分かりません。
かなり無理のある演技は続き、フィオナやいのりはばたばたと倒れます。
祇澄がつらそうな顔で『汝を待つ運命は他を拒む孤高の旅路。果てに待つのは栄光か破滅か』と言い出しました。
ほとんどその通りなのですが、『栄光も破滅も経験しているし、きっとどちらでもないよ』とだけ訂正してダークギルティさんは祇澄の促した通りに処刑施設へと入りました。
処刑施設の扉が閉まったと同時に、強固な鉄板ロックがドアや壁を覆い隠しました。今日中には空輸部隊が到着し、施設ごとアメリカへ輸送するそうです。
けれどすぐに気を取り直して、さっきまでやっていた馬鹿な中二病患者みたいな演技を恥ずかしがりました。
本人たちは気づいていませんが、これでもう溶血性貧血が蔓延するリスクはなくなりましたし、彼の負った呪いによる特殊な言語障害にかかる心配もないでしょう。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
