≪FiVE村外伝≫古妖はじめてものがたり
●村に来たのは良いのだけれども……
「おい、箱の中に同族が封じ込められているぞ」
「それはテレビですよ、辰巳どん」
テレビ画像を指さして叫ぶ古妖に説明するゲンさん。
「なに!? 火も使わずに明かりを灯すのか!?」
「それは電気の力ですよ、辰巳どん」
照明のスイッチを入れて煌々と輝く光に驚愕する古妖とゲンさん。
「なんだと、雷を操れるというのか、ゲンさんとやら、貴様何者だ!?」
「あー、これ駄目だ。副村長さんFiVEに電話して」
とうとう丸投げしたゲンさん、そして副村長は受話器を持った。
●古妖に教えよう、今を
「先日の事件において、辰巳と名乗る古妖が王子マッチョマックス村改めマックス村――通称FiVE村に移住することになったのは知ってるな? 知らなければ手元にあるファイルを確認してみてくれ」
中 恭介(nCL2000002)が眉一つ変えずに皆に告げる。
「その辰巳だが、どうも古い時期に封印されているのもあって今の世界に戸惑っているようだ、具体的にいうと『テレビを小人の居る箱か板』と思っているくらいに。そこでだ……」
恭介を皆に視線を向けると。
「諸君らには辰巳に対して今現在の歴史と世界の状況、文化などを色々と教えてやってほしい。幸いにも本人も今の時代の事に関しては興味を持っているらしく、村の方でも色々と聞いてはいるようだが、何も知らな過ぎてあちらも困っているようだ。このままでは支障が出る」
任務の内容を説明した後、恭介は何かに気づいたような顔をして。
「いい機会だから、お前達も今の世界とその状況を復習してみると良いかもしれない。教えつつ学び取る、だな」
笑みをうかべた。
「おい、箱の中に同族が封じ込められているぞ」
「それはテレビですよ、辰巳どん」
テレビ画像を指さして叫ぶ古妖に説明するゲンさん。
「なに!? 火も使わずに明かりを灯すのか!?」
「それは電気の力ですよ、辰巳どん」
照明のスイッチを入れて煌々と輝く光に驚愕する古妖とゲンさん。
「なんだと、雷を操れるというのか、ゲンさんとやら、貴様何者だ!?」
「あー、これ駄目だ。副村長さんFiVEに電話して」
とうとう丸投げしたゲンさん、そして副村長は受話器を持った。
●古妖に教えよう、今を
「先日の事件において、辰巳と名乗る古妖が王子マッチョマックス村改めマックス村――通称FiVE村に移住することになったのは知ってるな? 知らなければ手元にあるファイルを確認してみてくれ」
中 恭介(nCL2000002)が眉一つ変えずに皆に告げる。
「その辰巳だが、どうも古い時期に封印されているのもあって今の世界に戸惑っているようだ、具体的にいうと『テレビを小人の居る箱か板』と思っているくらいに。そこでだ……」
恭介を皆に視線を向けると。
「諸君らには辰巳に対して今現在の歴史と世界の状況、文化などを色々と教えてやってほしい。幸いにも本人も今の時代の事に関しては興味を持っているらしく、村の方でも色々と聞いてはいるようだが、何も知らな過ぎてあちらも困っているようだ。このままでは支障が出る」
任務の内容を説明した後、恭介は何かに気づいたような顔をして。
「いい機会だから、お前達も今の世界とその状況を復習してみると良いかもしれない。教えつつ学び取る、だな」
笑みをうかべた。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.古妖『辰巳』に色々と物事を教える事
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
どうも塩見です。
今回はEXイベントシナリオ的な感じで肩の力を抜いて、古妖に物を教えましょう。
具体的に求められている行動内容としては以下の通りになります。
●辰巳に今に至る歴史を話す。
どうも古い時代に生まれたようで、今の日本に関してよく知らないようです。
かと言って全ての歴史を伝えるには字数も足りないし大変ですから、端的に今の日本がどうなっているのかをまとめて話してみると良いと思います。
勿論、みんなで分担するのも良いと思います。
●辰巳に今の状況を教える
彼は今のアラタナル世界の状況を知りません、世界がどうなっているのか。
覚者がどういう存在か、古妖と妖の違いなどを説明してあげてください。
この辺りは世界観やこれまでのあらすじを参考にしてみると良いと思います。
●辰巳に文明の利器を教える
テレビに人が入っていると思ってる古妖です。
文明の利器を引っ張り出して、びっくりさせても良いとは思います。
服だって持って来たら着るんじゃないでしょうか?
※但し、あまりにひどいものはマスタリングします、ハイ。
●古妖『辰巳』について
拙作『<古妖覚醒>人も妖も踊り、武器を取る、牙をむく。』
/quest.php?qid=473
において交渉により、マックス村(4月現在)への移住を決めた古妖です。
麒麟の角がある、白髪長身で痩せた人間の姿の古妖。
天候、特に水と雷を操ることができ、人間嫌いで人に対しては不遜な態度で臨みますが、今回は好奇心と知識欲が優先しています。
かなり昔に封印されたらしく「蝦夷」「皇子」「朝廷」などの言葉を口にすることが確認されています。
それでは皆さん、古妖と一緒に勉強しましょう。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
相談日数
7日
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
10/10
10/10
公開日
2016年05月11日
2016年05月11日
■メイン参加者 10人■

●朝の会:会いましょう
「ここが…噂の古妖と共存できる村ッスね!!」
『猪突猛進』葛城 舞子(CL2001275)が村の入り口で歓声を上げた。
「凄いッス! 有名な妖が、本物がいるッス!!感激ッス!!」
初めてくる来たマックス村、古妖と人が共存するこの村に彼女は驚きを隠せない。
(人間に対して良い感情を持っていない辰巳が自分から知ろうと行動しているとはな)
その一方で『金狼』ゲイル・レオンハート(CL2000415)の表情は少し硬い。
(限られた機会……無駄にはしたくないものだ)
彼の隣では大きなスーツケースを持った『女帝』エメレンツィア・フォン・フラウベルク(CL2000496)が楽しそうに歩いていた。
(あらあら。ふふ、何年前からいた方なのかしら。教え甲斐がありそうね♪)
「ところでチョーテイって何かしら?」
エレメンツィアの言葉にどう答えたものかとゲイルは考えつつ、その後ろを他の覚者も続く、やがて彼の住む長屋へと近づくと
「……遅い」
そこで見たのは麒麟の角を持った白髪の古妖がすねこすりにタックルされたり、頭によじ登られたりとされるがままの姿で長屋の入り口で待つ姿だった。
●一時間目:社会
「全く、陽はとうに上っているというのに今の人間は呑気なものだ」
長屋の中で古妖――辰巳が口を開けば出てくるのは皮肉の混じった言葉。ちなみにすねこすりは無事に戻しました。
「あ、辰巳さん元気ッスか!? 私は元気ッス!」
だがそんなことも知らずに舞子は話しかける。猪突猛進に。
「辰巳さんが人間の生活に興味を持ってくれて嬉しいッス! 興味があるってことは、人間を好きになってくれる可能性があるって事ッスもんね! 私は古妖大好きッスから、できれば仲良くなりたいッス!」
「…………おい」
助けを求めるように古妖が視線を向ける。明らかに困っている。
「ああ、始めよう。まずは今のこの国に至るまで、封印されている間の事を話そう」
色々と察したゲイルがホワイトボードを持ってきて、準備をする。
そんな訳で古妖と人の触れ合いが始まった。
「辰巳が封印される前は恐らく天皇をトップとした朝廷が政治を動かしていたのだと思うが、今の日本では変化している」
「ほう……朝廷は打倒されたのか?」
興味深げに聞く辰巳、その隣には舞子と『裏切者』鳴神 零(CL2000669)も座り一緒に話を聞いていた。
「こういう時に便利な歴史の教科書持って来ました!」
『調停者』九段 笹雪(CL2000517)が持ち出したのは中学校の歴史の教科書(図表つき)
古妖をじっくり話す機会を得た笹雪は嬉しさと緊張を胸に日本の歴史を話し始める。
「朝廷に蝦夷……結構昔? 都の場所は? 年号は?」
「年号は分からんが、都は京にあったと聞くぞ」
「じゃあこの辺りかな?」
年表を指さして、順繰りに横書きの読み方、アラビア数字、そして
「このミミズのうねった文字は何だ?」
「仮名文字、読みやすくするために考えられた文字だよ」
仮名文字も交えて話は続く。
日本は日本として北海道から沖縄まででひとつの国になったこと。
時代は貴族から武士、今は民衆の世になったこと。
外国との交流も活発で文化や物がたくさん入ってきてること。
「この辺は図表見た方がいいかな」
「ほう……」
教科書に熱心に見入る辰巳、それをゲイルが補足していく。
「天皇は国の象徴としての面が強くなり政治そのものは行わないようになった。そして、一つの所に集中していた国の権力は3つに分けられている」
ゲイルが話すのは三権分立による文民政治。
「権力を分散させることで濫用されることを防ぎ国民の自由や権利を守ろうというのが分けられた理由だ」
「権力を分けるとは良くできたな人間?」
古妖の表情には感心と皮肉が見える。
「辰巳さんに昔の事も聞きたいな。」
笹雪がそこで言葉を挟めば辰巳は考え込み、そして口を開く。
「大したことは無い。そもそもそんなに歩き回っていたわけでは無いからな」
少女が無言で続きを促す。古妖は嘆息して話を続けた。
「雨を呼び、水を呼び、雷を呼ぶ。自分で操れないものを操れる事が出来る者が居たら、人は恐れるか自分の手の中にいれるか、大体そんなものだろう?」
●二時間目:科学の時間
(ふむ~、「蝦夷」「皇子」「朝廷」の言葉を口にするということは……)
阿久津 ほのか(CL2001276)が思考する。
(となると、ボタンを押してどうこうっていうのに慣れてなさそうですよね)
考えた末、彼女はリモコンをすちゃっと出した。
「初めまして~阿久津 ほのかっていいます」
言うなりテレビのリモコンを操作して電源を起動させる。
「ぬお! 触らずにてれびを操作しただと……!?」
「これはテレビを操作するのに必要なもので、リモコンっていうんですよ~」
「理網魂、いやリモコンというのか」
イントネーションが少し馴染んできた古妖はほのかより操作法を教わる。
「着ける、消す、ちゃんねるをかえる、録画に再生……それにしてもこのような箱で鳥獣戯画のようなものが動くとは不思議なものだ」
「これはあちこちの地域のお知らせを見たり、物語を聞いたり見たりできる道具で、中には誰もいないですよ~」
説明しながらDVDをプレーヤーに入れて再生する。映し出されるのは落語の映像。
「ほう……目白に行けばサンマというものが食べられるのか」
「こういうテンポの良い臨場感のあるお話で気分転換になるといいな~と思ったんですけど、気に入っていただけたら嬉しいです~」
話しかける少女の言葉は古妖には届かない、それほどまでに辰巳は落語に見入っていた。
「あ、そういえば。辰巳さんはお風呂の沸かし方はご存じなのでしょうか」
「風呂? 行水なら、ちゃんと行っているぞ? 水には不便しないからな」
「…………」
数分後、風呂場に風呂の使い方が絵付きで貼られました。
●三時間目:家庭科
『スマイル押し売り中!』ゆかり・シャイニング(CL2001288)、本名、たなかゆかりは炊飯器とガスコンロを持ち込んでハンバーグとご飯を作り始めた。
「この機械は、電気の力でご飯を炊く機械です! 現代は、電気で便利に動いてくれる道具が色々あるんです! 今日みんなで用意したものなら、ゲーム機もテレビも……あっ、この部屋の明かりもですね!」
「知っておるぞ、人々は雷を操ることが出来るのだな」
答えつつ何故か一緒に米を研ぐ古妖、見ているだけに飽きているようだ。
「この電気は、私たちがわざわざ起こしてるものではなくてですね……大きな炉や人工の滝のエネルギーを電気に変えてくれる技術がある人に、お金払って分けてもらってるんですよ!」
「そうなのか、力を金で買うという訳だな。だとしたら電気の使い手の倉は銭で大変だろうに」
「あ、そこはお札とかありますんで……」
指先から水を出してとぎ汁を綺麗にしている古妖にハンバーグの種を作りながら、ゆかりは紙幣や銀行も説明した方が良いか考えてしまうが、まずは調理に集中する。
「そしてこのガスコンロは、誰でも簡単に火を使える道具です! ここにフライパンをのせて、ハンバーグ種をのせて……」
ガスコンロに乗せたフライパンにハンバーグ種を乗せて火をつけると部屋の中を肉汁が弾ける音と香ばしい匂いが支配する。
「こ……これは! どういう事だ!?炎が熱があの丸めた肉に力を与えているというのか!?」
驚愕する古妖。得意満面にゆかりは語る。
「どうです、美味しそうな匂いでしょう?唐や高麗より遠い国から伝わった、獣の肉のお料理ですよ! そんな遠い国の文化を色々取り入れて、今の日本があるんです!」
「何だと……この地以外にも土地があるというのか国があるというのか!?」
「そうなのです、そしてこれが!」
フライパンに被せた蓋を開くと出てくるのは……
「ハンバーグ!」
「犯ばーぐ!?」
辰巳が言葉をリフレインする。さらにゆかりが炊飯器を開けるとそこにはシャイニングな白米が炊き上がっていた。
「でも、日本古来のものも、大事にされてるんですよ?」
出来上がった食事の前の正座する古妖。
「ハンバーグと白飯を一緒に食べると美味しいように、和洋今昔色々なものをミックスして出来上がったのが今の日本なんです!」
「これが今の日本と言うのか……」
辰巳は箸でハンバーグを切り分け口に運ぶ。
「……旨い」
●四時間目:ファッションショー
エメレンツィアが持ち出したのはスーツケース一杯の服の数々。
「スーツとか着流しがよさそうだな?」
「背の高い方だから、スーツは格好良さそうよね。白髪だし、黒のスーツは絶対似合うわ」
ゲイルとエメレンツィアが相談して選んだのは黒のスーツ。任せるがままに古妖はネクタイを締めジャケットを羽織る。
「ふふ、とても見栄えがいいわよ。よく似合ってるわ」
「そうか……それにしても襟元が苦しいな」
「確かに首回りは苦しいかも。でもこれが要人の前や公的な場に着るなのよ」
エメレンツィアが説明したところで舞子がカメラを持って現れた。
「カメラも持ってきたッス! デジカメだとプリント大変ッスから、ポラロイドにしたッス!」
一枚撮影して、現像された写真を見せる。
「ほう……こんな風に姿が残るのか?」
写真に見入る古妖。次にエメレンツィアが持ち出すのは青系に染められた着流し。
「こっちだと窮屈じゃなくていいでしょう?」
「そうだな、いつも着ているのと変わりはないがこれはこれでいい」
服は人の心に左右することがあるが古妖にもそれは通じるらしい。調子に乗って次に取り出すのは……
「あらあら……これもまた不思議に似合うわね?」
ジーンズに柄物のTシャツ、そしてパーカー。
「角が引っ掛かるな」
フードに苦戦しながらもパーカーを着る辰巳。
「食事の後だが、菓子や酒はどうだ。今の時代のを知って見たくはないか?」
ゲイルが酒と菓子を手に提案する。
「いや、せっかくの誘いだが、酒はまたいずれにしよう。今は色々と知りたい……そうだな今の世を」
●五時間目:今の日本
「ここが日本で、他に世界があって、人の生活が豊かになったのは理解した。では今のこの国はどうなっているのだ?」
気に入ったのかジーンズにパーカー姿のまま古妖は問いかける
それに答えたのは零。
「色々とあるけど、まず七星剣、イレブン、古妖に、妖」
「ふむ……」
「七星剣は、つまり能力者のヤクザ。ヤクザっていうのは、暴力的で危険なやつらで、利己的な私利私欲を中心に動くやつら。限りではないから、違う理由で動く奴もいるだろうね。イレブンは、能力者じゃないこたちでー、それの……」
説明を興味深く聞く辰巳、それに反して零の説明はだんだんとおざなりになってきて。
「めんどくさくなってきた……とりま、罪もない人に手をあげるやつらは全員ギルティってことで」
投げた。
「おいおい、半分しか話してないではないか。とりあえず悪い奴がいることは分かったが」
「まあ、色々と大変なんだよ今のニポンも、聞いてくれる?」
プリンス・オブ・グレイブル(CL2000942)が話すは今の日本の状況。
経済大国だったはずの日本は電波障害によって技術革新に取り残され、かつて世界一と呼ばれた治安は妖と隔者や憤怒者によって悪化している。
「でもね、余も民も毎週楽しみにしてるんだ。この国から、次は何が出てくるんだろうってね」
「皇子、貴様と話すと何か調子が狂うな。まるで今の状況を楽しんでいるようにも思えるぞ」
古妖が苦笑した。
場の空気が少し和らいだのを確認した桂木・日那乃(CL2000941)が改めて今の現状を説明する。
「ええと、今が、前と、一番違うところは。妖と覚者がいるって、ところ。妖と覚者が現れるようになったのは、25年前。」
まずは妖から。
「妖は、ええと、動物や無機物、自然現象などに命が宿った新たな生命体。ひとを殺したり、喰らったりする、の。大妖っていう、妖を束ねるすごく強い妖もいる、って。古妖は昔からいて、仲良くなれるひともいる、けど……」
「まあ、我のようなものか、大丈夫だ続けてくれ」
辰巳は促し少女は覚者の話へと繋げていく。
「ええと、それで、人間にも覚者になるひとがでてきた、の」
「お主達の事だな」
「覚者は、因子の力を得て、五行術式が使える。それと守護使役が見える。体力とかも、普通のひとより少し強い」
話はさらに因子から五行に続き、そして
「前、辰巳さんの使う術は、天行の術に似てる気がした、けど……?」
「我も天候を操ることが出来るからな、自然と似るものだろう?」
古妖には能力が似ることに関しては興味は感じられないようだ。
「あ、覚者と妖がいるのは日本だけ。日本から離れると覚者は普通のひとにもどる、の」
「日本を離れると能力を失うのか……この地に縁でもあるのかな?」
日那乃が付け加えるように話した言葉に考え込む古妖。
最後に鈴白 秋人(CL2000565)が今までの事をまとめていく。
「初めまして。鈴白と言います。他のメンバーから聞きましたが、人間が嫌いだそうですね」
「そうやって単刀直入にいう奴は特にな……冗談だ」
「失礼しました。では最後に『今』と『昔』とで変わっている所、そして、『今も昔も変わってない所』をお伝えします」
そして話し始めるのは生活様式の変化と物と技術の流通の速さ。その結果がテレビや照明、炊飯器などに繋がっていくこと。それが変わっていると事。
「それから、今も昔も変わらない所は『人の心の動き』でしょうか……それは『悪い方向性』でも『良い方向性』にでも言える事で。それにより今でも『心持ちが違う』事で対立したり、こうして協力しあったりして、皆、生きています」
変わらないと話すのは人の心。そしてそれは古妖が封印を望んだ理由でもあることを秋人は気づいていたであろうか。
「『人の心』や『思う事』は、殆ど変わってないよ。そこは、知っている分、安心して構えていてもいいと思う」
「安心できるか、若者よ? 今も人は争っているというのに」
古妖の顔に浮かんだのは嘲笑と言うよりは自嘲の笑み。
「故に我はお主ら人間に見切りをつけて、自ら封印されたのだ」
●六時間目:みんなで遊ぼう
空気が重くなった。誰もが口を開こうとしない――なんてことはなかった。
「そんなタッチィの為に余のコレクション持ってきました!」
ドドドン!
と積み重なる重たい段ボール五箱。中に入っているのは彼の国とニポンを繋いだ文化、MANGA。ただし半分くらいはコンビニで買ってきた週刊誌のバックナンバーだ。
「血統・覚醒・勝利!まさに王家にピッタシのテーマだよね。そりゃもう国家をあげてドキドキワクワクなのさ!」
「ほう……絵と文字を使ってさっきの落語のような事を記録しているものか?」
国と国とつないだ? 漫画をパラパラとめくりながら興味を持つ古妖。
「世界の民はこれで学んでいるんだよ!」
「ふむ、人はみんなマンガで学んでいるのか? さっきの教科書とは違うようだが……」
笹雪に視線を巡らせれば彼女も漫画を読んでいる、というか漫画を盾に視線を防いでいる。他のみんなも目をそらしている。
「それより、ゲームしよう! ホラーゲームとか好き?」
零が畳みかけるようにゲーム機をテレビにつないだ。
「ホラーゲームってのは怖いゲームだよお」
日本と海外のホラーゲームの違いを説明する零に辰巳は面白そうに笑う。
「でもどっちも、割と最終的に、生きている人間が怖いって風に終わるのが多いね!」
「そこは大体同意できる……が、この人から恐れられた我を恐れさせるというのか、面白い」
意気揚々とコントローラーを持った数分後。
「ぬおおおっ! おい、これはどうするんだ?」
肩肘張って、ゲームと格闘する古妖が見れました。
「じゃあ今度はコレもするッス」
舞子が持ち出したのは携帯ゲーム機。
「今度は小さくなったな?」
「いつでもどこでもできるし、物によっては世界中の人と遊べるッス! やり方を教えるので、一緒に遊ぶッス!」
通信ケーブルを繋ぎ、対戦する覚者と古妖。以前争っていた二人が今度は道具を通じて触れ合う。何か滑稽でそれでいてほほえましい。
「そうだ、辰巳」
零が問いかければ、ゲーム機から辰巳は視線を離す。
「FiVEへようこそ! 君はこれから何をしたい?」
「何を……か? そうだな……」
彼が何かを言いかけた時、ゲームが終了した。
「あああああっ! 貴様ぁ!」
「手加減は無しっス! 目を離したのが悪いんっス!」
そんな姿にある者は笑い、ある者は微笑み、ある者は興味深そうに見つめていた。
●帰りの会:これから
全てが終わり、覚者達が帰った後。
辰巳の部屋に残されたのはゲーム機と漫画と沢山の衣服、そしてカメラ。全て覚者がくれたもの。
「…………」
それをずっと見つめていたジーンズにパーカー姿の古妖は長屋を出ると、村の補修作業に励んでいるゲンさんに話しかける。
「ゲンさんとやら、我は何をしたらいい?」
人間嫌いの古妖に話しかけられた非覚者の男は一瞬呆けた顔を見せた後、笑みを浮かべて。
「そうだな、畑の方を手伝ってくれ、天候を操れるんだよな? 辰巳どん」
「ああ、任せろ。雨だって降らせてやるぞ」
「いや、それは困る」
「…………なんでだ?」
「これから梅雨の季節、雨が降りっぱなし」
「ああ、それは困るな」
そしてお互いに笑いあう。
この日、一人の古妖は再び人の世を生きることを選んだ。
「ここが…噂の古妖と共存できる村ッスね!!」
『猪突猛進』葛城 舞子(CL2001275)が村の入り口で歓声を上げた。
「凄いッス! 有名な妖が、本物がいるッス!!感激ッス!!」
初めてくる来たマックス村、古妖と人が共存するこの村に彼女は驚きを隠せない。
(人間に対して良い感情を持っていない辰巳が自分から知ろうと行動しているとはな)
その一方で『金狼』ゲイル・レオンハート(CL2000415)の表情は少し硬い。
(限られた機会……無駄にはしたくないものだ)
彼の隣では大きなスーツケースを持った『女帝』エメレンツィア・フォン・フラウベルク(CL2000496)が楽しそうに歩いていた。
(あらあら。ふふ、何年前からいた方なのかしら。教え甲斐がありそうね♪)
「ところでチョーテイって何かしら?」
エレメンツィアの言葉にどう答えたものかとゲイルは考えつつ、その後ろを他の覚者も続く、やがて彼の住む長屋へと近づくと
「……遅い」
そこで見たのは麒麟の角を持った白髪の古妖がすねこすりにタックルされたり、頭によじ登られたりとされるがままの姿で長屋の入り口で待つ姿だった。
●一時間目:社会
「全く、陽はとうに上っているというのに今の人間は呑気なものだ」
長屋の中で古妖――辰巳が口を開けば出てくるのは皮肉の混じった言葉。ちなみにすねこすりは無事に戻しました。
「あ、辰巳さん元気ッスか!? 私は元気ッス!」
だがそんなことも知らずに舞子は話しかける。猪突猛進に。
「辰巳さんが人間の生活に興味を持ってくれて嬉しいッス! 興味があるってことは、人間を好きになってくれる可能性があるって事ッスもんね! 私は古妖大好きッスから、できれば仲良くなりたいッス!」
「…………おい」
助けを求めるように古妖が視線を向ける。明らかに困っている。
「ああ、始めよう。まずは今のこの国に至るまで、封印されている間の事を話そう」
色々と察したゲイルがホワイトボードを持ってきて、準備をする。
そんな訳で古妖と人の触れ合いが始まった。
「辰巳が封印される前は恐らく天皇をトップとした朝廷が政治を動かしていたのだと思うが、今の日本では変化している」
「ほう……朝廷は打倒されたのか?」
興味深げに聞く辰巳、その隣には舞子と『裏切者』鳴神 零(CL2000669)も座り一緒に話を聞いていた。
「こういう時に便利な歴史の教科書持って来ました!」
『調停者』九段 笹雪(CL2000517)が持ち出したのは中学校の歴史の教科書(図表つき)
古妖をじっくり話す機会を得た笹雪は嬉しさと緊張を胸に日本の歴史を話し始める。
「朝廷に蝦夷……結構昔? 都の場所は? 年号は?」
「年号は分からんが、都は京にあったと聞くぞ」
「じゃあこの辺りかな?」
年表を指さして、順繰りに横書きの読み方、アラビア数字、そして
「このミミズのうねった文字は何だ?」
「仮名文字、読みやすくするために考えられた文字だよ」
仮名文字も交えて話は続く。
日本は日本として北海道から沖縄まででひとつの国になったこと。
時代は貴族から武士、今は民衆の世になったこと。
外国との交流も活発で文化や物がたくさん入ってきてること。
「この辺は図表見た方がいいかな」
「ほう……」
教科書に熱心に見入る辰巳、それをゲイルが補足していく。
「天皇は国の象徴としての面が強くなり政治そのものは行わないようになった。そして、一つの所に集中していた国の権力は3つに分けられている」
ゲイルが話すのは三権分立による文民政治。
「権力を分散させることで濫用されることを防ぎ国民の自由や権利を守ろうというのが分けられた理由だ」
「権力を分けるとは良くできたな人間?」
古妖の表情には感心と皮肉が見える。
「辰巳さんに昔の事も聞きたいな。」
笹雪がそこで言葉を挟めば辰巳は考え込み、そして口を開く。
「大したことは無い。そもそもそんなに歩き回っていたわけでは無いからな」
少女が無言で続きを促す。古妖は嘆息して話を続けた。
「雨を呼び、水を呼び、雷を呼ぶ。自分で操れないものを操れる事が出来る者が居たら、人は恐れるか自分の手の中にいれるか、大体そんなものだろう?」
●二時間目:科学の時間
(ふむ~、「蝦夷」「皇子」「朝廷」の言葉を口にするということは……)
阿久津 ほのか(CL2001276)が思考する。
(となると、ボタンを押してどうこうっていうのに慣れてなさそうですよね)
考えた末、彼女はリモコンをすちゃっと出した。
「初めまして~阿久津 ほのかっていいます」
言うなりテレビのリモコンを操作して電源を起動させる。
「ぬお! 触らずにてれびを操作しただと……!?」
「これはテレビを操作するのに必要なもので、リモコンっていうんですよ~」
「理網魂、いやリモコンというのか」
イントネーションが少し馴染んできた古妖はほのかより操作法を教わる。
「着ける、消す、ちゃんねるをかえる、録画に再生……それにしてもこのような箱で鳥獣戯画のようなものが動くとは不思議なものだ」
「これはあちこちの地域のお知らせを見たり、物語を聞いたり見たりできる道具で、中には誰もいないですよ~」
説明しながらDVDをプレーヤーに入れて再生する。映し出されるのは落語の映像。
「ほう……目白に行けばサンマというものが食べられるのか」
「こういうテンポの良い臨場感のあるお話で気分転換になるといいな~と思ったんですけど、気に入っていただけたら嬉しいです~」
話しかける少女の言葉は古妖には届かない、それほどまでに辰巳は落語に見入っていた。
「あ、そういえば。辰巳さんはお風呂の沸かし方はご存じなのでしょうか」
「風呂? 行水なら、ちゃんと行っているぞ? 水には不便しないからな」
「…………」
数分後、風呂場に風呂の使い方が絵付きで貼られました。
●三時間目:家庭科
『スマイル押し売り中!』ゆかり・シャイニング(CL2001288)、本名、たなかゆかりは炊飯器とガスコンロを持ち込んでハンバーグとご飯を作り始めた。
「この機械は、電気の力でご飯を炊く機械です! 現代は、電気で便利に動いてくれる道具が色々あるんです! 今日みんなで用意したものなら、ゲーム機もテレビも……あっ、この部屋の明かりもですね!」
「知っておるぞ、人々は雷を操ることが出来るのだな」
答えつつ何故か一緒に米を研ぐ古妖、見ているだけに飽きているようだ。
「この電気は、私たちがわざわざ起こしてるものではなくてですね……大きな炉や人工の滝のエネルギーを電気に変えてくれる技術がある人に、お金払って分けてもらってるんですよ!」
「そうなのか、力を金で買うという訳だな。だとしたら電気の使い手の倉は銭で大変だろうに」
「あ、そこはお札とかありますんで……」
指先から水を出してとぎ汁を綺麗にしている古妖にハンバーグの種を作りながら、ゆかりは紙幣や銀行も説明した方が良いか考えてしまうが、まずは調理に集中する。
「そしてこのガスコンロは、誰でも簡単に火を使える道具です! ここにフライパンをのせて、ハンバーグ種をのせて……」
ガスコンロに乗せたフライパンにハンバーグ種を乗せて火をつけると部屋の中を肉汁が弾ける音と香ばしい匂いが支配する。
「こ……これは! どういう事だ!?炎が熱があの丸めた肉に力を与えているというのか!?」
驚愕する古妖。得意満面にゆかりは語る。
「どうです、美味しそうな匂いでしょう?唐や高麗より遠い国から伝わった、獣の肉のお料理ですよ! そんな遠い国の文化を色々取り入れて、今の日本があるんです!」
「何だと……この地以外にも土地があるというのか国があるというのか!?」
「そうなのです、そしてこれが!」
フライパンに被せた蓋を開くと出てくるのは……
「ハンバーグ!」
「犯ばーぐ!?」
辰巳が言葉をリフレインする。さらにゆかりが炊飯器を開けるとそこにはシャイニングな白米が炊き上がっていた。
「でも、日本古来のものも、大事にされてるんですよ?」
出来上がった食事の前の正座する古妖。
「ハンバーグと白飯を一緒に食べると美味しいように、和洋今昔色々なものをミックスして出来上がったのが今の日本なんです!」
「これが今の日本と言うのか……」
辰巳は箸でハンバーグを切り分け口に運ぶ。
「……旨い」
●四時間目:ファッションショー
エメレンツィアが持ち出したのはスーツケース一杯の服の数々。
「スーツとか着流しがよさそうだな?」
「背の高い方だから、スーツは格好良さそうよね。白髪だし、黒のスーツは絶対似合うわ」
ゲイルとエメレンツィアが相談して選んだのは黒のスーツ。任せるがままに古妖はネクタイを締めジャケットを羽織る。
「ふふ、とても見栄えがいいわよ。よく似合ってるわ」
「そうか……それにしても襟元が苦しいな」
「確かに首回りは苦しいかも。でもこれが要人の前や公的な場に着るなのよ」
エメレンツィアが説明したところで舞子がカメラを持って現れた。
「カメラも持ってきたッス! デジカメだとプリント大変ッスから、ポラロイドにしたッス!」
一枚撮影して、現像された写真を見せる。
「ほう……こんな風に姿が残るのか?」
写真に見入る古妖。次にエメレンツィアが持ち出すのは青系に染められた着流し。
「こっちだと窮屈じゃなくていいでしょう?」
「そうだな、いつも着ているのと変わりはないがこれはこれでいい」
服は人の心に左右することがあるが古妖にもそれは通じるらしい。調子に乗って次に取り出すのは……
「あらあら……これもまた不思議に似合うわね?」
ジーンズに柄物のTシャツ、そしてパーカー。
「角が引っ掛かるな」
フードに苦戦しながらもパーカーを着る辰巳。
「食事の後だが、菓子や酒はどうだ。今の時代のを知って見たくはないか?」
ゲイルが酒と菓子を手に提案する。
「いや、せっかくの誘いだが、酒はまたいずれにしよう。今は色々と知りたい……そうだな今の世を」
●五時間目:今の日本
「ここが日本で、他に世界があって、人の生活が豊かになったのは理解した。では今のこの国はどうなっているのだ?」
気に入ったのかジーンズにパーカー姿のまま古妖は問いかける
それに答えたのは零。
「色々とあるけど、まず七星剣、イレブン、古妖に、妖」
「ふむ……」
「七星剣は、つまり能力者のヤクザ。ヤクザっていうのは、暴力的で危険なやつらで、利己的な私利私欲を中心に動くやつら。限りではないから、違う理由で動く奴もいるだろうね。イレブンは、能力者じゃないこたちでー、それの……」
説明を興味深く聞く辰巳、それに反して零の説明はだんだんとおざなりになってきて。
「めんどくさくなってきた……とりま、罪もない人に手をあげるやつらは全員ギルティってことで」
投げた。
「おいおい、半分しか話してないではないか。とりあえず悪い奴がいることは分かったが」
「まあ、色々と大変なんだよ今のニポンも、聞いてくれる?」
プリンス・オブ・グレイブル(CL2000942)が話すは今の日本の状況。
経済大国だったはずの日本は電波障害によって技術革新に取り残され、かつて世界一と呼ばれた治安は妖と隔者や憤怒者によって悪化している。
「でもね、余も民も毎週楽しみにしてるんだ。この国から、次は何が出てくるんだろうってね」
「皇子、貴様と話すと何か調子が狂うな。まるで今の状況を楽しんでいるようにも思えるぞ」
古妖が苦笑した。
場の空気が少し和らいだのを確認した桂木・日那乃(CL2000941)が改めて今の現状を説明する。
「ええと、今が、前と、一番違うところは。妖と覚者がいるって、ところ。妖と覚者が現れるようになったのは、25年前。」
まずは妖から。
「妖は、ええと、動物や無機物、自然現象などに命が宿った新たな生命体。ひとを殺したり、喰らったりする、の。大妖っていう、妖を束ねるすごく強い妖もいる、って。古妖は昔からいて、仲良くなれるひともいる、けど……」
「まあ、我のようなものか、大丈夫だ続けてくれ」
辰巳は促し少女は覚者の話へと繋げていく。
「ええと、それで、人間にも覚者になるひとがでてきた、の」
「お主達の事だな」
「覚者は、因子の力を得て、五行術式が使える。それと守護使役が見える。体力とかも、普通のひとより少し強い」
話はさらに因子から五行に続き、そして
「前、辰巳さんの使う術は、天行の術に似てる気がした、けど……?」
「我も天候を操ることが出来るからな、自然と似るものだろう?」
古妖には能力が似ることに関しては興味は感じられないようだ。
「あ、覚者と妖がいるのは日本だけ。日本から離れると覚者は普通のひとにもどる、の」
「日本を離れると能力を失うのか……この地に縁でもあるのかな?」
日那乃が付け加えるように話した言葉に考え込む古妖。
最後に鈴白 秋人(CL2000565)が今までの事をまとめていく。
「初めまして。鈴白と言います。他のメンバーから聞きましたが、人間が嫌いだそうですね」
「そうやって単刀直入にいう奴は特にな……冗談だ」
「失礼しました。では最後に『今』と『昔』とで変わっている所、そして、『今も昔も変わってない所』をお伝えします」
そして話し始めるのは生活様式の変化と物と技術の流通の速さ。その結果がテレビや照明、炊飯器などに繋がっていくこと。それが変わっていると事。
「それから、今も昔も変わらない所は『人の心の動き』でしょうか……それは『悪い方向性』でも『良い方向性』にでも言える事で。それにより今でも『心持ちが違う』事で対立したり、こうして協力しあったりして、皆、生きています」
変わらないと話すのは人の心。そしてそれは古妖が封印を望んだ理由でもあることを秋人は気づいていたであろうか。
「『人の心』や『思う事』は、殆ど変わってないよ。そこは、知っている分、安心して構えていてもいいと思う」
「安心できるか、若者よ? 今も人は争っているというのに」
古妖の顔に浮かんだのは嘲笑と言うよりは自嘲の笑み。
「故に我はお主ら人間に見切りをつけて、自ら封印されたのだ」
●六時間目:みんなで遊ぼう
空気が重くなった。誰もが口を開こうとしない――なんてことはなかった。
「そんなタッチィの為に余のコレクション持ってきました!」
ドドドン!
と積み重なる重たい段ボール五箱。中に入っているのは彼の国とニポンを繋いだ文化、MANGA。ただし半分くらいはコンビニで買ってきた週刊誌のバックナンバーだ。
「血統・覚醒・勝利!まさに王家にピッタシのテーマだよね。そりゃもう国家をあげてドキドキワクワクなのさ!」
「ほう……絵と文字を使ってさっきの落語のような事を記録しているものか?」
国と国とつないだ? 漫画をパラパラとめくりながら興味を持つ古妖。
「世界の民はこれで学んでいるんだよ!」
「ふむ、人はみんなマンガで学んでいるのか? さっきの教科書とは違うようだが……」
笹雪に視線を巡らせれば彼女も漫画を読んでいる、というか漫画を盾に視線を防いでいる。他のみんなも目をそらしている。
「それより、ゲームしよう! ホラーゲームとか好き?」
零が畳みかけるようにゲーム機をテレビにつないだ。
「ホラーゲームってのは怖いゲームだよお」
日本と海外のホラーゲームの違いを説明する零に辰巳は面白そうに笑う。
「でもどっちも、割と最終的に、生きている人間が怖いって風に終わるのが多いね!」
「そこは大体同意できる……が、この人から恐れられた我を恐れさせるというのか、面白い」
意気揚々とコントローラーを持った数分後。
「ぬおおおっ! おい、これはどうするんだ?」
肩肘張って、ゲームと格闘する古妖が見れました。
「じゃあ今度はコレもするッス」
舞子が持ち出したのは携帯ゲーム機。
「今度は小さくなったな?」
「いつでもどこでもできるし、物によっては世界中の人と遊べるッス! やり方を教えるので、一緒に遊ぶッス!」
通信ケーブルを繋ぎ、対戦する覚者と古妖。以前争っていた二人が今度は道具を通じて触れ合う。何か滑稽でそれでいてほほえましい。
「そうだ、辰巳」
零が問いかければ、ゲーム機から辰巳は視線を離す。
「FiVEへようこそ! 君はこれから何をしたい?」
「何を……か? そうだな……」
彼が何かを言いかけた時、ゲームが終了した。
「あああああっ! 貴様ぁ!」
「手加減は無しっス! 目を離したのが悪いんっス!」
そんな姿にある者は笑い、ある者は微笑み、ある者は興味深そうに見つめていた。
●帰りの会:これから
全てが終わり、覚者達が帰った後。
辰巳の部屋に残されたのはゲーム機と漫画と沢山の衣服、そしてカメラ。全て覚者がくれたもの。
「…………」
それをずっと見つめていたジーンズにパーカー姿の古妖は長屋を出ると、村の補修作業に励んでいるゲンさんに話しかける。
「ゲンさんとやら、我は何をしたらいい?」
人間嫌いの古妖に話しかけられた非覚者の男は一瞬呆けた顔を見せた後、笑みを浮かべて。
「そうだな、畑の方を手伝ってくれ、天候を操れるんだよな? 辰巳どん」
「ああ、任せろ。雨だって降らせてやるぞ」
「いや、それは困る」
「…………なんでだ?」
「これから梅雨の季節、雨が降りっぱなし」
「ああ、それは困るな」
そしてお互いに笑いあう。
この日、一人の古妖は再び人の世を生きることを選んだ。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
