≪教化作戦≫混乱の種が芽吹かぬうちに
≪教化作戦≫混乱の種が芽吹かぬうちに


●新人類教会
 新人類教会と呼ばれる組織がある。
 表向きは覚者および覚者事件における被害者の保護を理念とし、その為に生活支援や養護施設の経営、関連企業への就職斡旋まで行っている。彼らは覚者を『新人類』と称して、手厚く保護する活動をしていた。
 構成員の多くは源素を使えない普通の人で、宗主の指導の元に幅広い活動を行う宗教団体だ。
『新人類はその能力故に旧人類に恐れられ迫害されてもいる。彼らを守り育てる事が教会の使命の一つである』
『新人類を迫害する者達を許してはならない。教会は未来の平和のため自らの身命を賭して新人類の敵と戦うべし』
 その理念の元に武装していることもあるが、構成員の多くは武装を持たないただの人である。
 だが昨今、教会内は過激化する世情に合わせて武装を強化する『過激派』と、それを止めようとする『穏健派』に分裂してきていた。
 そして一月某日。穏健派の『村瀬・幸来』を過激派から保護する『F.i.V.E.』。
 一時雌伏の時を過ごしていた新人類教会過激派だが、力を蓄えた過激派達がまた活動を開始する。

 奈良県奈良支部。
 一見すると、こぢんまりとした教会なのだが、そこには地下室が存在する。
 地上部よりも大きなその場所では、黒のジャケットにズボン、防弾チョッキを着た男達が忙しなく動き回っていた。
「ようやくだな」
 この一団の指揮を執る女性がサーベルの手入れをしつつ、中年男性へと語る。
 女性の年は20代前半といったところか。髪を飾る金細工は人という形に作られており、非常に目を引く。
 一方の男性。こちらは40代くらいに見える。顔に髭を蓄えた大男だ。胸に銀色に光る人という形のラペルピンをつけている。
「はい。この好機、逃すわけには行きません」
 彼女達は、『過激派』の一員だ。2人の周囲では、戦闘員達が武器を運び入れてきている。その武器の出所が気になるところだが、そこは教会として活動する組織。何かツテがあるのだろう。
「我ら、新人類が旧人類を支配する為の1歩だ。宗主様の為にもぬかりは許されぬぞ」
「はっ……」
 指示を飛ばす彼女の瞳からは、光が失われている。彼女が声高らかに告げる姿に、男性はにやりと笑いを浮かべるのであった。
 
●過激派の狙いは……?
「……つまりは、武装集団を止めて欲しいのじゃ」
 『薄幸の男の娘』菜花・けい(nCL2000118) は会議室に集まった覚者達へと、現状について説明を行う。
 『新人類教会』なる新興宗教。そこで色々といざこざが起こっているのは、覚者達も耳にしているところだが、けいが依頼するのはその支部の1つの制圧だ。
 場所は、奈良県奈良支部。この地下で、教会が抱える戦力の一部……過激派に属する信者が密かに武装しているのだという。
「指揮を執っておるのは、藤見・千鶴という女性じゃな」
 藤見は奈良支部の支部長であり、覚者である。覚者を新人類と持ち上げる教団であればこそ、力の強い者を上に立てるのは当然といえるもかもしれない。
 藤見を筆頭に、副支部長の犬塚。そして、10人余りの信者……いや、戦闘員で構成されている。藤見以外は全員、非覚者のようだ。
 支部はやや市街地からは離れた、林の中に建てられている。
「一見すると、普通の教会として建てられた建築物じゃな。地上階は礼拝堂となっており、ミサを行うこともあるようじゃの」
 しかし、祭壇には地下の入り口があり、地下は過激派のアジトとなっているのだという。地下部は地上部よりも大きな空間があり、そこで過激派は決起の為の準備を行っているという。何らかの陰謀が働いているのは、間違いない。
 具体的な目的は不明ではあるのだが、過激派が行動する前に支部を抑えておきたい。
「嫌な予感がするのじゃ」
 夢見のけいが感じる予感。それは決して杞憂ではないだろう。
 この過激派の一隊が動き出す前に。覚者達はその制圧に動き始めたのだった。


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:なちゅい
■成功条件
1.過激派の制圧
2.なし
3.なし
初めましての方も、
どこかでお会いしたことのある方もこんにちは。なちゅいです。

●敵……新人類教会奈良支部の過激派の一隊です。
○藤見・千鶴(ふじみ・ちづる)……支部長。
 この過激派の一隊における唯一の覚者で、
 黒のロングコートを羽織った女性です。
 髪に『人』と書かれた金細工を付けているのが特徴です。
 暦×火、サーベル所持。

○犬塚・祥晃(いぬづか・ひろあき)……副官。非覚者です。
 同じく黒のロングコートを着た渋い髭面の中年男性です。
 グレートソードを所持。

○戦闘員……10名。いずれも非覚者。
 黒のジャケットにズボン、防弾チョッキを着た男達です。
 ハンドガン、機関銃で武装しております。

●状況
場所は林の中に建てられた教会です。
民家などからは距離がありますので、
戦いによる被害などは考慮しなくても問題ありません。
教会はそれほど大きいものではなく、
少し大きめの民家程度の規模です。
しかしながら、地下室は大きく、
そこは十分に戦うことの出来る空間があります。
ただ、地下室に向かうはしごは1つのみで、
人一人が行き来できる大きさしかありません。

それでは、今回も楽しんでいただければ幸いです。
よろしくお願いいたします!
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(0モルげっと♪)
相談日数
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
公開日
2016年05月05日

■メイン参加者 8人■


●その目的はどうあれ
 新人類教会……。
 その支部の1つ、奈良支部を目指し、『F.i.V.E.』の覚者達は林の中を行く。
「何ぞ事が起これば、いろんな奴が沸いてくるもんだが。面倒な事だ。日々平穏、世は事も無しで良いろうに」
「新人類教会……最初はいい事をしてたんでしょ?」
 悪態をつく深緋・幽霊男(CL2001229)。新人類教会は覚者や被害者の保護を理念としていた組織だったはずだと、『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)は語る。今の穏健派に当たる考え方だ。
「覚者が非覚者を支配する、か」
 それで皆が幸せになるなら良いと『想い受け継ぎ‘最強’を目指す者』天楼院・聖華(CL2000348)は思うのだが、支配される側は間違いなく反発、抵抗をするだろう。それによって大きな戦争が勃発してしまえば、皆が不幸になってしまうのは明白だ。
「そんなことにならないよう、争いの火種って奴は今ここで消しておかないとな」
「過激派かぁ……。なんでそう極端に走っちゃうんだろう」
 組織が大きくなれば、別の解釈、考え方を持つものも出るものだ。奏空はそれを嘆く。
「この手の輩は正直虫が好かんな。俺の父の様な……憤怒者の様な臭いがする」
 結局は、視点と対象が代わっただけにすぎず、双方に大した差はない。そう考える『雷麒麟』天明 両慈(CL2000603)は舌打ちし、今回の作戦に私情が混じってしまいそうだと感じていた。ただ、それで判断を誤ることがないようにと、彼は自身を戒める。
 教えの是非は分からないとしながらも、これだけは言えると『天使の卵』栗落花 渚(CL2001360)は主張する。
「武力で自分の考えを押し付けるのは良くない事だって」
「新人類か~、思ってる分にはドンドン思っちゃって構わないわよ? けど、その思想を他人に強制している時点でもうアウトー」
 どんな考え方であっても。押し付けている地点でダメだというのが、エルフィリアの考え方だ。
「ちぐはぐよね、やってる事が」
 『女帝』エメレンツィア・フォン・フラウベルク(CL2000496)も、新人類教会の考え方については言及しなかったものの。そのやり方には眉を潜める。
「まあ、篭に閉じ込めようっていうよりは好感は持てるけど、洗脳はいただけないわね」
「教化だかなんだか分かんない怪しげな洗脳と、過剰な武装なんて犯罪行為もいいとこだろ」
 結局のところ、新人類教会は覚者や信者をいいように使って、世の中を思い通りにしたいのではないかと、奏空は告げる。その行為は許されるものではない。
「粛々とその計画ぶっ壊させて頂きますよっと」
 奏空もそうだが、『優麗なる乙女』西荻 つばめ(CL2001243)もまた、暴徒と化した教会の人間を止める為に、この依頼に参加している。
「覚者集団のわたくし達と新人類教会が対立するこの構図……。世の中に与える影響を考えながら動きたいと思いますわ」
 『F.i.V.E.』は神秘解明を主眼とする集団だが、世の中は覚者集団という認識でしかないだろう。だからこそ、つばめはしっかり考えながら動きたいと考える。
 メンバー達が話していると、視界の向こうに教会が見えてくる。覚者達は気を引き締め、その制圧に乗り出すのである。

●地上部分の占拠を
 新人類教会過激派のアジトの1つは、目の前にある教会の地下にある。ただ、そこに繋がる通路は祭壇下のはしごのみだという。
 当初の目的はその入り口周りの制圧だが、地上部に見張りがいる可能性は否定できないと覚者達は考える。
 その為、奏空がまず空に守護使役のライライさんを飛ばし、建物外に人がいないか偵察をさせる。
 エルフィリア・ハイランド(CL2000613)もまた、守護使役のリックに協力してもらい、見張りの戦闘員がいないか臭いで判断する。幽霊男は木陰を利用して教会に接近し、同様に敵の臭いをかぎ分けようとした。
 幸いにも、建物外部に見張りはいないらしい。その存在を気にしていたエメレンツィアやつばめは、やや拍子抜けしたように武器を下げる。
 それでも、メンバー達はすぐに切り替え、教会内部の状況を探る。
 奏空が感情探査で確認すると、地上部には戦闘員が2人いると、彼は送受心・改を使って仲間達へと伝達する。
 同じく、臭いをかぎ分けてその把握をしていたエルフィリアは、仲間に先んじて壁を通り抜け、ぼんやりと地上部にて待機していた戦闘員の1人へと奇襲を掛ける。
 彼女は踏み込み、特殊な力を加えながら相手を投げ飛ばす。不意を突かれて為す術なく崩れ落ちる戦闘員。
「し、侵入者だ!」
 もう1人の戦闘員がそれに気づいてハンドガンを抜くが、すでに残りの覚者が教会内へとなだれ込んでいた。構えを続けていたつばめが素早く対処し、『双刀・鬼丸』を振るって二連撃を繰り出し、戦闘員を倒してしまう。
 メンバー達はすぐにその2人を拘束する。その間に、渚が地下室への階段を発見していた。
 誰かが登ってくる様子はない。敵はすでに、何者かが教会に乗り込んできていることを把握しているはず。それにも関わらず登ってこないのは、降りてきた侵入者を狙い撃つつもりなのかもしれない。
 ならばと、覚者達も十分に準備を行う。
 聖華は鋭聴力で索敵をする。真下からは全く音が聞こえず、少々離れたい位置で金属音が聞こえる。敵は敢えて階段からは距離を取る布陣だろうか?
 覚者達は予め、1つしかない突入口を降下する順番を決めていた。自身の順番が来る前に、錬覇法などで自己強化を図る者も多い。
「思いの他、厚いようだな」
 両慈はこの床下も外壁同様物質透過できるかと試すが、地下までは3メートルほどあるらしく、通り抜けることができない。仕方なく、彼は予定していた自身の突入の順番を後に倒すことにする。
 エルフィリアも幅が1人分しか行き来できぬ大きさだと確認し、やむを得ず最後に突入することにしていたようだ。
 最初に突入を図る幽霊男。当然、敵からの集中砲火を浴びると予想される。この為、できる限り敵の状況把握が出来るようにと、ステルスを使う。エメレンツィアが身を張って突入する彼女を気遣い、海のベールを纏わせていた。
 幽霊男はゆっくりとハシゴを降りていく。そして……。

●いざ、敵のアジトへ!
 幽霊男が真っ先にハシゴを伝って地下へと降りると、そこには、地上部の教会よりも大きな空間があった。
 ステルスを使っていた幽霊男。そこにいたのが非覚者の信者だけだったなら、狙われずに済んだかもしれない。
 しかし、そこには覚者である支部長、藤見・千鶴がおり、幽霊男の姿は丸見えだったのだ。
「総員、撃て!」
 幽霊男に対して一斉に浴びせかけられる銃弾。続けて、聖華がジャンプして飛び降り、奏空も続く。メンバー達が態勢を整えるのも待たずに、戦闘員は弾丸の嵐を浴びせかけてくる。
(ヌシら、少し待つのじゃ)
「うわっちゃっちゃっ!」
「うわっと、あぶなっ!」
 幽霊男の送受心での伝達が後手になり、聖華、奏空は戦闘員の攻撃を浴びることとなってしまう。聖華はしのびあしを使おうと考えていたが、それどころではない。奏空は防御してそれに耐える。
 両慈は第六感を働かせていたことで、ギリギリその銃弾を避けることが出来ていた。続いてはしごを使わず飛び降りてきたのは、エメレンツィアだ。スカートを押さえる彼女が着地したタイミングで、丁度銃弾の嵐が止む。
 降りてきていた3人は送受心を聞きつけて降下の手を止め、難を逃れたようだ。
 銃弾が一度止まると、覚者達はすかさず動き始める。幽霊男がはしごで止まった3人に伝達すると、つばめ、渚が降りてきた。
「この人達を止めれば、後で傷つく人達を少しでも減らせるんだよね……?」
 渚はそう信じて、非常に重そうな金棒を振り上げた。
 その間に、先に降りていたメンバーは戦闘員へと攻め入る。
「撃て!」
 続けて飛ぶ藤見の指示。戦闘員はまたもハンドガンや機関銃を構える。
「正義の味方、天楼院・聖華参上!」
 しかし、覚者達も黙っていない。聖華は戦闘員に叫び掛けると、仲間達の気の流れを活性化させて、回復に当たる。
「ふふ、お待たせ。もう大丈夫よ」
 エメレンツィアもすぐに多数の銃弾を浴びた仲間の周囲へと霧を展開していき、銃弾による傷を塞いで見せた。
「それにしても……よくもまあここまでモノを揃えたわねえ」
 彼女は地下のその空間を見回す。ずらりと並べられた武器の数々。兵糧もかなりの量を積んでいる。この場には十数人の戦闘員しかいないが、その気になれば数十倍の人員にも対応できたことだろう。あんな狭い入り口から運び入れるのは大変だったと思われる。
「まあ、それも全て無駄になるけどもね。ご苦労様」
 エメレンツィアが敵に告げる間にも、後続のメンバーが降りてくる。つばめは自らの因子の力で耐性を高め、渚もまた集中をすることで次なる攻撃に備える。
 戦闘員が次なる弾丸を撃ち放ってくるところに、最後のエルフィリアははしごを使わず、翼を広げて減速しつつ着地する。これで、メンバーが揃った。
 ここからが本当の戦い。まずは弾丸を飛ばす戦闘員を排除すべく、覚者達は攻め込んでいくのである。

●地下アジトの占拠を!
「我らの悲願、邪魔はさせぬ!」
 人と象られた髪飾りを煌めかせて近づいてくる藤見を、それまで逐一仲間に地下の状況を伝えていた幽霊男が抑えに回る。
(なんぞ目ぼしいモンも持ってなさそうだし。使い捨ての駒じゃろ)
 彼女はそう考えながらも、サーベルを振るってくる藤見の攻撃に目を見張る。ただの傀儡かと思っていたら、炎を纏わせて来る一撃はかなりの威力だ。
 仲間の手当てで多少は持ち直しているが……。幽霊男は藤見の力を知り、にやりと口元を吊り上げた。
 他のメンバーは全力で戦闘員を減らしていく。
 奏空はまず、絡みつくような霧を発生させる。その上で頭上に起こした雷雲から雷を落とす。それに痺れた戦闘員がバタリ、バタリと倒れていく。
 覚者達は極力、戦闘員の命を奪わぬように立ち回る。
「ぐぬぬ…………」
 気になるのは、表立って動かず、苦々しい顔で戦況を見守る犬塚だ。
 後方を見れば、穴を掘っている途中であるのが分かる。脱出経路を作ろうとしていたが、間に合わなかったのだろう。
 もちろん、こうしてアジトの占拠を考える以上、覚者としては彼らを野放しにする気はない。
 並んでハンドガンの引き金を引く敵にエルフィリアが仕掛ける。彼女は特殊な花を取り出し、その香りで敵を弱らせ、2体の敵を倒してしまう。
 戦闘員は所詮非覚者でしかなく、倒すだけなら苦労することない。だが、彼らの手にする武器の殺傷力は覚者の命を十分に奪うことが出来る。
 とりわけ、先に下りたメンバーの傷は深い。両慈も後ろに下がっていたが、序盤は敵が多かったこともあって傷を受けていた。それを癒す為にと彼は恵みの雨を仲間全員に降らしていく。
「一般人への襲撃計画、ここで阻止させて貰うぜ!」
 幾分か体力を持ち直した聖華はブレードを抜く。彼女は出来る限り、敵の同士討ちが狙えないかと立ち回りつつ、駆け抜けるように敵陣を切り裂く。機関銃を撃っていた敵の1人が呻いて崩れ落ちる。
 エメレンツィアもまた癒しの滴や霧を発生させ、仲間を手当てする。
「ところで、アナタ達に聞きたいのだけど」
 支部長藤見は幽霊男の相手で手一杯。エメレンツィアの言葉にピクリと眉を動かしたのは、犬塚だ。
 新人類教会の教義、『新人類を迫害する者達を許してはならない。教会は未来の平和のため自らの身命を賭して新人類の敵と戦うべし』に触れたエメレンツィアはこう続ける。
「アナタ達は、私達新人類の敵なのだけど。ねえ、どう思う? 自害する?」
「我らを愚弄するか……」
 嘲笑する彼女に、犬塚の額の血管が浮き出る。
「あら、なぁに? 馬鹿にされて怒った? ふふふっ……その程度なの?」
 思った以上にこの副官も小物だと悟り、エメレンツィアは笑う。
 つばめは疾風のように駆け抜けて戦闘員2人を気絶させた後、犬塚を抑えるべく張り付く。
(覚者社会での被害者を演じる可能性があると思っていたのですが)
 相手は非覚者が多い組織。今回の戦闘を今後聖戦等と言い回し、利用されない様に。つばめは当初そう思っていた。
 実際、エメレンツィアが先程まで動かずにこちらの動きを探っていたではないか。ただ、彼女が挑発して犬塚が攻撃を仕掛けてきたことで、戦う大義名分はできそうだ。後は、彼らを殺さないよう配慮しつつ捕縛するのみである。
 戦闘員の数も減っていた。中衛へと上がった渚は金棒を操り、機関銃を構える戦闘員へと2回連続で殴打し、殴り倒す。
 傷を負いながらも戦闘員全てを倒した覚者達。残る相手は、支部長と副支部長のみだ。

●教化とは
 藤見を抑え続ける幽霊男。
「邪魔をするな!」
 炎を操り、地面から火柱を上げる藤見。仲間が手早く取り巻きを倒してくれているからこそ持ってはいるが。相手の力はこちらと幽霊男は見ていた。
(限界を超えてる力……ってわけじゃなさそうじゃの)
 教化の一端を垣間見た気がしつつも、幽霊男はその抑えを続ける。
 次なるメンバーの狙いは、副官犬塚だ。犬塚も結局は一般人。これ見よがしに倒さぬようにと気遣いつつ、つばめは犬塚を投げ飛ばす。
「ていうか、犬塚さん何か知ってるでしょ」
「犬塚、お前さー。覚者に支配されるって、本当に支配されたいのか?」
 そこで、奏空、聖華が起き上がろうとする犬塚に問う。
「俺からしたら、非覚者が覚者に首輪をつけようと何か企んでるように見えるぜ」
 今なお抵抗する藤見。彼女の手綱を握っているのは犬塚ではないのかと、覚者達は考えている。非覚者が支配されたがっていて、そのために武装してまで戦うというのはおかしな話なのだ。
「ふっ、ならば本人に聞くがいい」
 しかし、犬塚はそれを一笑する。ともあれ、捕らえてから聞き出そうと、聖華は犬塚を卒倒させようと素早く両手のブレードを叩きつける。
 そして、兄貴分の奏空も同時に、双刀を逆手に構えて刀身を突き入れた。
「ぐ……はっ……」
 血を吐いて崩れ落ちる犬塚。2人はまだ犬塚の息があることを確認した上で捕縛するのである。
 残るは藤見だ。幽霊男の執拗なガードもあり、藤見は他メンバーに攻め入ることができずにいた。
 また、傷つくメンバーには回復支援にほぼ専念していたエメレンツィア。
(洗脳及び、マインドコントロール等をされている可能性があるからな)
 両慈もまた、仲間を心地良い風で包み込み、身体能力を向上させていたが。できるなら、藤見を捕獲したいと考える。
「新人類たる我らが迫害する側に回っては、意味がないだろう!?」
 またも、藤見は火柱を地面から起こし、覚者達に火傷を負わしてくる。じりじりとひりつく痛みを覚えるメンバー達。
だが、後ろにいて難を逃れたエルフィリアが藤見の体に付着させた種を急成長させて動きを封じれば、渚は鬼の金棒で藤見の体をしたたかに殴りつける。覚者であれば、多少の攻撃ならば倒れはしないはずと、全力で叩きつけていた。
「く、なぜ、我らの教義が理解できぬ……?」
 教化が完全なのか、全く考えがぶれることなく、藤見は覚者達に炎を放つ。
 だが、幽霊男がそれに耐え切り、剣にも見える機関銃から銃弾を飛ばす。連弾は藤見の関節を撃ち抜き、その動きを止めた。
「無念、だ……」
 藤見はそう言い残し、気を失ったのだった。

●全員を捕らえて
 信者を倒した覚者一行。首謀者となる藤見、犬塚を中心に、全員を拘束する。
 奏空は信者に成りすます為にとピンの準備も考えていたが、間に合わなかった。これに仕掛けがあるのではと考えたのだが。どうやらそんなことはなかったらしい。
 ただ、藤見は己の意思で行動したと譲らない。教化はよほど強力に、催眠のような形で刷り込まれているのだろう。
 また、武器の出所も気になるところ。つばめが尋問するのだが。すぐにそれを吐く気配はない。
「やっぱり、重要拠点ではないのかな」
 地上部含めて調べていた聖華だったが。めぼしい物を発見するには至らない。
 他の作戦に出かけた者達ならば、何かつかめただろうか。メンバー達は手早くこの場を片付け、新たな情報を得ようと作業に当たるのだった。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし



■あとがき■

教会支部の制圧、お疲れ様でした。
MVPは悩みましたが、
一番槍で降下後の抑えを行ったあなたへ。

今回は参加していただき、
本当にありがとうございました!




 
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