≪蒐囚壁≫シビラブレイカー
●
外部組織からの応援任務。
内容は不死身の大型恐竜との戦闘である。
詳細を説明しよう。
F.i.V.Eと限定的協力関係にある組織蒐囚壁財団から相応な金銭取引によって応援任務が発生した。
「戦闘を補助する諸々の始末は組織蒐囚壁が行ないます。任務では戦闘に集中してください。戦闘に必要な情報をまずはご覧ください」
――戦闘目標:シビラブレイカーとの戦闘に必要な情報
F.i.V.Eの認識カテゴリーは『古妖』。
シビラブレイカーは鱗状の皮膚に覆われた二足歩行式大型肉食恐竜に酷似した形状をしています。
巨体を利用した単純な強力な物理単体攻撃、『衰退波動』と呼ばれるBS性の高い特殊全体攻撃を用いる。
高い自動回復能力をもち、頻繁にダメージを与え続ける必要がある。
財団のサポートによって巨大シェルター内に誘導し、戦闘を行ないます。
制限時間は一時間。
この機会を逃した場合リトライまで一年かかるとされています。
確実な撃破を狙ってください。
ただしこの古妖は不死身であり、完全な死滅は不可能です。そのため撃破後は財団員が即座に駆けつけ、封じ込め処理を行ないます。後は彼らに任せてください。
「シビラブレイカーは存在しているだけで生物を死に至らしめる性質をもちます。都市部に進行した場合莫大な人的被害が予想され、山岳地帯へ信仰した場合には生態系と一次産業に莫大な被害が及ぶでしょう。確実な遂行を望む、とのことです」
外部組織からの応援任務。
内容は不死身の大型恐竜との戦闘である。
詳細を説明しよう。
F.i.V.Eと限定的協力関係にある組織蒐囚壁財団から相応な金銭取引によって応援任務が発生した。
「戦闘を補助する諸々の始末は組織蒐囚壁が行ないます。任務では戦闘に集中してください。戦闘に必要な情報をまずはご覧ください」
――戦闘目標:シビラブレイカーとの戦闘に必要な情報
F.i.V.Eの認識カテゴリーは『古妖』。
シビラブレイカーは鱗状の皮膚に覆われた二足歩行式大型肉食恐竜に酷似した形状をしています。
巨体を利用した単純な強力な物理単体攻撃、『衰退波動』と呼ばれるBS性の高い特殊全体攻撃を用いる。
高い自動回復能力をもち、頻繁にダメージを与え続ける必要がある。
財団のサポートによって巨大シェルター内に誘導し、戦闘を行ないます。
制限時間は一時間。
この機会を逃した場合リトライまで一年かかるとされています。
確実な撃破を狙ってください。
ただしこの古妖は不死身であり、完全な死滅は不可能です。そのため撃破後は財団員が即座に駆けつけ、封じ込め処理を行ないます。後は彼らに任せてください。
「シビラブレイカーは存在しているだけで生物を死に至らしめる性質をもちます。都市部に進行した場合莫大な人的被害が予想され、山岳地帯へ信仰した場合には生態系と一次産業に莫大な被害が及ぶでしょう。確実な遂行を望む、とのことです」

■シナリオ詳細
■成功条件
1.シビラブレイカーの撃破
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
依頼目的:財団と協力してモンスターの封じ込め処理を完了すること。
【補足】
●シビラブレイカーの戦闘スペック
・体力:とても高い
・物理防御:ふつう
・特殊防御:ふつう
・固有スキル
自己回復能力:毎ターン約三人が全力で攻撃してプラマイゼロになる程度。つまりそれ以上の継続攻撃が必要。
物理攻撃:噛みつく、踏みつけるなどのシンプルな物理攻撃。かなりダメージ量が高いため、連続して受けると戦闘不能は避けられない。
衰退波動:生命エネルギーを直接弱体化させる波動。[全]属性の[虚弱]BS扱い。純ダメージ量はカバー可能なレベルだがこの後に物理攻撃を受けると非常に危険。
●戦闘に用いる空間
この作戦のために財団が建設した専用シェルター。
充分な対破壊構造になっているため作戦中に脱出される心配はない。
F.i.V.E覚者はシェルター内にて事前に待機。
シビラブレイカーはこのシェルター内にテレポーテーションによって移動してくるので、その時点から戦闘が開始される。
(※シビラブレイカーは一時間に一回限りのテレポーテーション能力を有しており、誘導によってシェルター内へ移動します。そのため次のテレポーテーションまでの一時間が実質的な制限時間となります)
作戦完了後はシビラブレイカーを継続的に破壊し続けるためにシェルター内に大量の強酸を流し込みます。係員の指示に従ってただちにシェルターを出てください。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
6日
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
9/9
9/9
公開日
2016年05月19日
2016年05月19日
■メイン参加者 9人■

●シビラブレイカーと蒐囚壁財団
F.i.V.Eへ依頼されたシビラブレイカー再収容協力。指定されたシェルター内での待機を求められた『烏山椒』榊原 時雨(CL2000418)たちは、言われたとおりシェルターの中央で準備運動をしていた。
とはいえ戦闘開始のタイミングはある程度定まっているのだ。全員できる限りの強化術を施していた。秒単位で定まっていないとはいえ、一回か二回空振りすることを計算に入れれば問題ない。
「しっかし不死身の恐竜なあ。古妖いう話やし、もしかして実際ジュラ紀とかからいるんやろか」
『赤ずきん』坂上・御羽(CL2001318)と両手を繋いで腰や背中の筋を伸ばす運動をする。
「はっはー! 来なさいトカゲヤロウめ! 出てきたらもう逃がしませんよー!」
「人に害をなさないのであれば放置でいいとは思いますが、今回そうはいかないでしょうし」
背伸びをして気を整える『イノセントドール』柳 燐花(CL2000695)。
「とはいえ、仕事で実力試しのような機会があるのはいいですね」
その様子を武器の簡易点検をしつつ見守る『狗吠』時任・千陽(CL2000014)。
「蒐囚壁財団。相変わらず底の知れない組織ですね」
「何かと思えば恐竜退治だものね。不死身っていうのが厄介だけれど」
包丁の背を指でなぞる春野 桜(CL2000257)。
「打ち合わせはもういいの? おさらいしておきましょうか」
姫神 桃(CL2001376)の提案に、時雨たちはおのおの頷いた。
「今回のチームは回復力が弱いから、前中衛から徹底した集中攻撃を仕掛けることにするのよね」
「交代は、命数復活のタイミングまで粘るんだったかね」
ヘルメットを深く被り直す緒形 逝(CL2000156)。
大ダメージを受けやすい状況では交代した途端もう一度交代が必要になるなんてことになりかねない。最低でも2ターン分のダメージを1ターンで復旧できる回復力がないと交代の意味が消失すると考えればいい。
『紅戀』酒々井 数多(CL2000149)がピッと横ピースをした。
「『やられるまえにやれ』ね! 怪獣退治はそうでなくっちゃね、イエイイイエイ――いえいう!!」
ひたすらテンションが高いのは、戦闘に向けて気分を高揚させているからだろうか。それとも素だろうか。
鹿ノ島・遥(CL2000227)は前者のようで、ストレッチを終えて腕にぐるぐるバンテージを巻き付けていた。
「財団の人たちもオレたちを組む前は大変だったんだろうなー。頑張ってお手伝いすっか! 人助けもできて強い奴と戦えて、うぃんうぃんってやつだな!」
「正確には一石二鳥」
「いっしょだろ!」
大雑把に叫んで、拳をばしんとならす。
その瞬間、目の前に巨大な肉食恐竜が姿を現わした。
二十年ほど前に流行った、ハ虫類めいたあのフォルムで。
●衰退波動と肉食恐竜
大きいということはそれだけで驚異である。人間が虫一匹を殺すのにさして苦労しないように、大型肉食恐竜に似たシビラブレイカーが人間を殺すことに苦労も工夫も必要ない。
足を振り上げ、下ろすだけで良い。
誤算があるとすれば、現在日本人口のおよそコンマ1パーセントが『人間ばなれ』していることである。
「うおっとぉ!」
時雨は槍を長持ちすると、振り下ろされた足を受け止めた。
まるで石を間違って踏んだようにバランスを崩すシビラブレイカー。
これで済めばよいが、時雨の両腕と膝関節から見えてはいけないものが露出している。
「あ、あかん。耐えられてあと二発や……!」
しかし好都合。最初に狙われるのが自分である場合、自己回復手段のある時雨のほうがリカバリーが早い。
「それだけあればじゅうぶん!」
シビラブレイカーから見れば蜘蛛の子を散らすようと言えばよいのか。
数多と遥はそれぞれ逆方向に走り、対象の円周軌道上を回り込む。
巨大な眼球がこちらを追うのが分かって、数多は上唇を舐める。
「どっちがいい素材をゲットするか勝負よ!」
「おっしゃ、勝負は好きだぜ!」
これまたシビラブレイカー側の視点になるが、足を噛まれるより身体を這い上がられる方が厄介だ。感覚器官へ接近するぶん危機が大きいからだ。
数多はそれを知っている。尻尾から伸びる背中の曲線状を駆け上がり、頭上で抜刀。スイカ割りの如く頸椎を殴りつける。
「鱗! 眼球! あとしっぽ! きってえぐってくりぬいてあげるわ!」
これが動物であれば即死するだろう。しかしシビラブレイカーは数多の破壊した頸椎を一瞬で修復した。修復の空気流動によって数多が吹き飛ばされるほどの速さだ。
「せっ!」
足首を狙って殴りつける遥。
時雨を『潰し損ねた』バランス崩壊に拍車がかかり、シビラブレイカーは大きくよろめいた。
「今ね」
桃は柔軟に身を屈めると、その瞬間からトップスピードで自らを射出した。
あえてシビラブレイカーのボディを蹴って三角飛び。中空から顔面めがけて破眼光を発射。
流れる速さで両手にクナイを握り込み、連続で投擲し始める。
ダメージはアテにしていない。狙いは呪いと麻痺による行動不能状態だ。ややこしいので確率計算は置いておくが、敵が一体しか居ない状況で一ターン潰すことは極めて高い戦術効果をもたらす。
これは財団側が立場上話せないながらも『それとなく』分かるように知らせたことだが、シビラブレイカーに神経毒などの科学攻撃は有効である。代謝によって自然治癒はできるが、驚異的な肉体再生能力に解毒作用は含まれていないのだ。これは桃のファインプレーと言えるだろう。
「さ、殺しましょう。死なないなら、何度も殺せるでしょう」
手斧を水平に翳し。懐から出した小瓶の中身を注ぎかけていく。
蜜のような甘さと危うさを香らせながら、桜はシビラブレイカーへと手斧を投げつける。
まだ戦闘は始まったばかり。桜はまだ観察に徹している。シビラブレイカーがただの『大きな動物』ではないなら。観察から割り出せることも多いはずだと考えたのだ。
それは桜ばかりではない。千陽も後ろから銃撃を行ないながらシビラブレイカーの様子を観察していた。
桜は挙動からの観察だが、千陽は内面への観察だ。
(≪送受心・改≫を使えば言葉の通じない相手とも交流ができるはず。まずは訴えかけてみましょう)
千陽はそう考えて≪送受心・改≫を接続――した途端、即座に切断した。
例えるなら、飛び込み台からプールに飛ぼうとしたがプールの中身が酸だと気づいた感覚である。
接続したが最後、廃人になりかねないと考えた。
衰退波動が影響しているのだろうか。深く考えている余裕はない。
「悪食や、ちょーっと喰い散らかそうかね」
逝が刀を乱暴に抜いて飛びかかる。しかし与えるのは斬撃ではない。バランスを大きく崩したシビラブレイカーへの蹴りである。
絶妙なタイミングで繰り出された蹴りがシビラブレイカーの巨体を転倒させる。
反動でバク転する逝。入れ替わりに燐花が突撃。クナイを逆手持ちすると、眼球を狙って十字に切りつけた。
「シンプルな物理攻撃。なれば動きを見極めてかわすこともできるのでは……」
途端、身体がずんと重たくなった。
高熱にうなされて寝込んだ時や、精神的にきわめてつらい時のようなけだるさに包まれた。
一瞬『もう何もしたくない。死にたい』という思考が脳裏をよぎる。
頭を押さえて首を振った。思考をふりきるたびに死にたくなる理由ばかりが脳裏に浮かぶ。
意志の弱い人間や、因子や術式による強化を受けていない人間ならその場で舌を噛みかねない。赤信号のスクランブル交差点の真ん中で仰向けに寝てもいい。
「自殺志願反応……これは、衰退波動?」
「うっとおしーいなー!」
御羽は笑顔で叫んだ。
両目を限界まで見開いての笑顔である。バスケットに手を突っ込み、真っ黒なリンゴを引きぬく。まるで聖異物でも見せつけるように高く翳した。
「とまりなさい!あなたの存在は生物への影響が大きすぎる! それはあなたが一番よく分かってることじゃない。ならせめてひっそり暮らすとか?」
ぐしゃり、とリンゴを握りつぶした。
「まあ無理だよねえ! わかってるわ! よーく!」
まき散らされた浄化物質が燐花たちへと浴びせられる。
衰退波動の影響がだいぶ和らいでいくのを感じた。
舌を出す御羽。
「やめてと言ってやめてくれるなら、世界はもっと平和だものね!」
●『絶滅勧誘人』
どこかの偉いひとが調べたところ、日本の自殺者は年間三万人はいたという。妖という共通の敵が生まれてから随分変わったとは思うが、世界一死にたがる民族だと他国からも称されたほどである。
仮に。仮にだ。
それがとある怪異が意図的に発する波動のようなものにあてられた結果だとしたら?
「あ……!」
時雨が小さく唱えたのもつかの間、時雨が踏みつぶされた。
斬撃をしかけながら逝が前へと割り込みにかかる。
「≪圧投≫をキレイにかけても踏みつぶしができるってことは、体術とかじゃあないなあ、あれは」
逝は想像した。例えば念じるだけで周囲の全生命を殺せる人間がいたとしたら。
最初は色々あるだろう。力を振りかざしてみたりいいことに使ってみたり。
しかし最後は多分、全員殺してしまうだろう。
人ないろんな奴が居る。しかし悪意と善意がプラマイゼロになったことは、残念ながらない。
マイナスが蓄積し、いつしか破裂する。その破裂が……。
「ん?」
いや、想像のしすぎだ。相手は肉食恐竜。人間なんてミミズやなんかと一緒だ。
それに、逝の思考はあまりに人と違いすぎる。アテになどなるものか……などと。
そう考えていると、シビラブレイカーが標的を遥にシフトし始めた。
遥もあえて狙われるように動いたつもりだ。手刀を突き刺すような構えに変える。
「よし来い!」
飛びかかる遥。が、気づいたら自分が噛みつかれていた。
犬やネコの噛みつきとは分けが違う。牙が肉体に突き刺さり、強制的に分断される。
「っ!」
声は出さない。口の中が血でいっぱいになったからだ。
手刀を口内のどこかに突き刺す。せめてカウンターをしかけようという考えだ。
もう一発と思ったが、片腕がない。一瞬外から差し込んだ光によって、自分の右腕が喉の奥へ転がっていくのが見えた。
ほ乳類の喉とは明らかに構造が違う。腕が喉にさしかかった瞬間ミキサーにでもかけたようにすりつぶされたのだ。
「や、やべ……!」
左手で牙にしがみつく。
その一方、一旦ハンバーグ種の気持ちを知った時雨は離れた位置で呼吸を整えていた。
「し、死ぬかと思った。つか死んだやろ。一回」
もし仲間全員が一回死んだらそれこそアウトだ。少しでも持ちこたえられるように、ここからは自分を含めた味方のリカバリーに集中せねばなるまい。
「こら、ぺってしなさい! そんなの食べたらメでしょ!」
数多はそんなことを言いながら、シビラブレイカーの眼球に刀を突っ込んでいた。
刀身が全部埋まるほどの眼球だ。奥まで腕ごと突っ込んで、中身をぐりぐりとかき混ぜる。
大体の生物はそんなことをされたら発狂するところだが、シビラブレイカーは構わず遥を食べる作業を続けていた。まるで痛覚などないかのようだ。
ちょっぴり見えていた遥のつま先が動きを止め、シビラブレイカーの外へと転がり出る。
つま先だけ。
「あ、ちゃんと出てこれたみたい。よかったね遥君!」
「よくねえ!」
光に包まれ、強制的に肉体を修復させた遥は頭をかきむしった。
「お、おまっ、シャレにならなかったんだぞあの光景!」
「貴重な体験じゃないですか。滅多にできませんよ」
本気かどうか分からない顔でバトンタッチする燐花。
シビラブレイカーの足部分に組み付くと、クナイをピック代わりにして高速でクライムしはじめた。
うっとうしそうに振り払いにかかるシビラブレイカー。
シェルターの壁側へと走り、膝まで登った燐花を潰そうと叩き付ける。
衝突の瞬間に離脱。燐花は着地し、そのまま距離をとるように走り始め――る前に食いつかれた。
「うわー! 燐花ー!」
千陽がナイフに持ち替え、シビラブレイカーへと飛びかかる。
「チャンスです。集中攻撃を」
「なんで冷静!?」
千陽はナイフで相手の腹部を滅多差しにし始める。
「おかしいわね……」
呟いたのは桃。と、桜である。
クナイと手斧を別々の方向から投げつつ(当然走って位置をかえつつ)首をひねる。
「最初は踏みつぶしたり噛みついたりで済んだはず」
「背中を駆け上がる酒々井さんにも無抵抗だったし」
「なのに膝を駆け上がった柳さんを落とすためにわざわざ壁で潰そうとした」
攻撃方法が変化しているのか。
それとも元々できていたが、はじめは咄嗟のことで混乱していたのか。
どちらにせよ。
「さっさと決着をつけないと危ないわね」
「決着? 殺すの間違いでしょう」
桜は斧を大きく振りかぶり、シビラブレイカーの顔面めがけて投げつける。
「殺したらどんな声でなくのかしら。彼はなんて言ってくれるかしら。あはは、はははははは!」
「はっはっは!」
笑いがラップする。
衰退波動に対抗した御羽が演舞を続けているのだ。
地面にばらまいた大量のリンゴを次々に踏みつぶして回る。
スカートを両手でつまんでスキップするように潰していくのだ。
彼女一人だけに衰退波動へのリカバリーを任せているので少々不安は残るが、いるといないでは大違いだ。
千陽がシビラブレイカーの足下をスライディングで抜けながら銃撃。同時に足首の肉をそぎ落とすように切る数多。とどめとばかりに桃と遥が骨までそぎはじめ、最後に突撃した遥が斧でもってへし折った。バランスが今度こそ崩れる。そのまま蹴り倒す逝。倒れてきたところに、遥が渾身のパンチを叩き込んだ。
時雨と御羽が回復に徹したからこそできた集中攻撃である。
シビラブレイカーは目をぐりんと上向け、そのままぐったりと脱力した。
いつも瞬間的に修復されていた肉体も、今は修復が遅れている。衰退波動も止まったようだ。
『お疲れ様でした。酸の流入を開始します。直ちに退避してください』
シェルター内に放送がかかる。
御羽たちは頷き合い、シェルターの外へと走り出した。
ちらりと振り返る御羽。
「いつか、あなたも世界の広さと優しさを知るときがあれば、いいのですが」
おやすみなさい。
優しくない海に抱かれて。
●収集癖財団ブランク博士
ニホンザルが画面に映っている。
『お疲れ様でした。見事な戦いぶりだったよ。おかげで一人の死者も出すこと無く再収容計画を完遂できそうだ。あとは我々に任せてほしい』
インターネット通信によるビデオチャット越しに彼は言った。
自分を財団に所属する人間だと名乗った彼。首から提げた名札に『ブランクはかせ』と日本語で書かれていた。
千陽はシビラブレイカーに固執する理由を聞きたかったし、数多は名前の由来を聞きたかったし、遥は殺せる方法を聞きたかったし、時雨は自分たちが直接戦う理由を(うすうす感づいたが)確認したかったし、桜は不死身性を研究して『彼』に役立てる方法を考えていたりしたが……。
『あと、このことは組織外の人間には一切口外しないでほしい。まかり間違って迷惑がかかるかもしれないし、役に立つかも知れないといってシェルターを破壊されたら人類がやばい』
逝は明後日を向いたままだまり、桃は天井のシミを数えはじめ、御羽は顔を手で覆っている。
『F.i.V.Eに支払った契約金は君たちに分配されるだろう。気になることは多いだろうが、質問に答えることはできない。財団は君たちに第四種の情報取得権限を与えているが、それは今回教えた情報までという意味なんだ。すまない』
「あのー」
『なんだね』
燐花が手を上げていた。
「なんでニホンザルなんですか」
「「言った!」」
全員が燐花を見た。
『……』
「……」
『……』
「……」
『それを喋ったら、私は抹殺処分を受けてしまう。なんやかんやあって復活すると思うが、その際世界のどこかでランダムに百人ほど死亡すると思うからお勧めしない』
「もうそれ喋ったようなもんよね」
『そうだね』
「「…………」」
時雨が両手で顔を覆って『あああああ』と唸った。
『あと、私は人に世界の裏側について話したくてしょうがない』
「それ話すと人が死ぬんでしょ。やめて」
「私は知りたいわ。教――むぐっ!」
身を乗り出した桜を羽交い締めにした。
「はいはーい! 私気にな――むぐ!」
同じく身を乗り出した数多も羽交い締めにした。
遥たちは愛想笑いを浮かべながらも、彼女たちを引きずって待機部屋を後にしたのだった。
最後にこんな言葉が聞こえる。
『君たちが余計なことを勘ぐらないと約束できるなら、私は君たちに味方しよう。百年後も日本列島が地球上に残るように』
F.i.V.Eへ依頼されたシビラブレイカー再収容協力。指定されたシェルター内での待機を求められた『烏山椒』榊原 時雨(CL2000418)たちは、言われたとおりシェルターの中央で準備運動をしていた。
とはいえ戦闘開始のタイミングはある程度定まっているのだ。全員できる限りの強化術を施していた。秒単位で定まっていないとはいえ、一回か二回空振りすることを計算に入れれば問題ない。
「しっかし不死身の恐竜なあ。古妖いう話やし、もしかして実際ジュラ紀とかからいるんやろか」
『赤ずきん』坂上・御羽(CL2001318)と両手を繋いで腰や背中の筋を伸ばす運動をする。
「はっはー! 来なさいトカゲヤロウめ! 出てきたらもう逃がしませんよー!」
「人に害をなさないのであれば放置でいいとは思いますが、今回そうはいかないでしょうし」
背伸びをして気を整える『イノセントドール』柳 燐花(CL2000695)。
「とはいえ、仕事で実力試しのような機会があるのはいいですね」
その様子を武器の簡易点検をしつつ見守る『狗吠』時任・千陽(CL2000014)。
「蒐囚壁財団。相変わらず底の知れない組織ですね」
「何かと思えば恐竜退治だものね。不死身っていうのが厄介だけれど」
包丁の背を指でなぞる春野 桜(CL2000257)。
「打ち合わせはもういいの? おさらいしておきましょうか」
姫神 桃(CL2001376)の提案に、時雨たちはおのおの頷いた。
「今回のチームは回復力が弱いから、前中衛から徹底した集中攻撃を仕掛けることにするのよね」
「交代は、命数復活のタイミングまで粘るんだったかね」
ヘルメットを深く被り直す緒形 逝(CL2000156)。
大ダメージを受けやすい状況では交代した途端もう一度交代が必要になるなんてことになりかねない。最低でも2ターン分のダメージを1ターンで復旧できる回復力がないと交代の意味が消失すると考えればいい。
『紅戀』酒々井 数多(CL2000149)がピッと横ピースをした。
「『やられるまえにやれ』ね! 怪獣退治はそうでなくっちゃね、イエイイイエイ――いえいう!!」
ひたすらテンションが高いのは、戦闘に向けて気分を高揚させているからだろうか。それとも素だろうか。
鹿ノ島・遥(CL2000227)は前者のようで、ストレッチを終えて腕にぐるぐるバンテージを巻き付けていた。
「財団の人たちもオレたちを組む前は大変だったんだろうなー。頑張ってお手伝いすっか! 人助けもできて強い奴と戦えて、うぃんうぃんってやつだな!」
「正確には一石二鳥」
「いっしょだろ!」
大雑把に叫んで、拳をばしんとならす。
その瞬間、目の前に巨大な肉食恐竜が姿を現わした。
二十年ほど前に流行った、ハ虫類めいたあのフォルムで。
●衰退波動と肉食恐竜
大きいということはそれだけで驚異である。人間が虫一匹を殺すのにさして苦労しないように、大型肉食恐竜に似たシビラブレイカーが人間を殺すことに苦労も工夫も必要ない。
足を振り上げ、下ろすだけで良い。
誤算があるとすれば、現在日本人口のおよそコンマ1パーセントが『人間ばなれ』していることである。
「うおっとぉ!」
時雨は槍を長持ちすると、振り下ろされた足を受け止めた。
まるで石を間違って踏んだようにバランスを崩すシビラブレイカー。
これで済めばよいが、時雨の両腕と膝関節から見えてはいけないものが露出している。
「あ、あかん。耐えられてあと二発や……!」
しかし好都合。最初に狙われるのが自分である場合、自己回復手段のある時雨のほうがリカバリーが早い。
「それだけあればじゅうぶん!」
シビラブレイカーから見れば蜘蛛の子を散らすようと言えばよいのか。
数多と遥はそれぞれ逆方向に走り、対象の円周軌道上を回り込む。
巨大な眼球がこちらを追うのが分かって、数多は上唇を舐める。
「どっちがいい素材をゲットするか勝負よ!」
「おっしゃ、勝負は好きだぜ!」
これまたシビラブレイカー側の視点になるが、足を噛まれるより身体を這い上がられる方が厄介だ。感覚器官へ接近するぶん危機が大きいからだ。
数多はそれを知っている。尻尾から伸びる背中の曲線状を駆け上がり、頭上で抜刀。スイカ割りの如く頸椎を殴りつける。
「鱗! 眼球! あとしっぽ! きってえぐってくりぬいてあげるわ!」
これが動物であれば即死するだろう。しかしシビラブレイカーは数多の破壊した頸椎を一瞬で修復した。修復の空気流動によって数多が吹き飛ばされるほどの速さだ。
「せっ!」
足首を狙って殴りつける遥。
時雨を『潰し損ねた』バランス崩壊に拍車がかかり、シビラブレイカーは大きくよろめいた。
「今ね」
桃は柔軟に身を屈めると、その瞬間からトップスピードで自らを射出した。
あえてシビラブレイカーのボディを蹴って三角飛び。中空から顔面めがけて破眼光を発射。
流れる速さで両手にクナイを握り込み、連続で投擲し始める。
ダメージはアテにしていない。狙いは呪いと麻痺による行動不能状態だ。ややこしいので確率計算は置いておくが、敵が一体しか居ない状況で一ターン潰すことは極めて高い戦術効果をもたらす。
これは財団側が立場上話せないながらも『それとなく』分かるように知らせたことだが、シビラブレイカーに神経毒などの科学攻撃は有効である。代謝によって自然治癒はできるが、驚異的な肉体再生能力に解毒作用は含まれていないのだ。これは桃のファインプレーと言えるだろう。
「さ、殺しましょう。死なないなら、何度も殺せるでしょう」
手斧を水平に翳し。懐から出した小瓶の中身を注ぎかけていく。
蜜のような甘さと危うさを香らせながら、桜はシビラブレイカーへと手斧を投げつける。
まだ戦闘は始まったばかり。桜はまだ観察に徹している。シビラブレイカーがただの『大きな動物』ではないなら。観察から割り出せることも多いはずだと考えたのだ。
それは桜ばかりではない。千陽も後ろから銃撃を行ないながらシビラブレイカーの様子を観察していた。
桜は挙動からの観察だが、千陽は内面への観察だ。
(≪送受心・改≫を使えば言葉の通じない相手とも交流ができるはず。まずは訴えかけてみましょう)
千陽はそう考えて≪送受心・改≫を接続――した途端、即座に切断した。
例えるなら、飛び込み台からプールに飛ぼうとしたがプールの中身が酸だと気づいた感覚である。
接続したが最後、廃人になりかねないと考えた。
衰退波動が影響しているのだろうか。深く考えている余裕はない。
「悪食や、ちょーっと喰い散らかそうかね」
逝が刀を乱暴に抜いて飛びかかる。しかし与えるのは斬撃ではない。バランスを大きく崩したシビラブレイカーへの蹴りである。
絶妙なタイミングで繰り出された蹴りがシビラブレイカーの巨体を転倒させる。
反動でバク転する逝。入れ替わりに燐花が突撃。クナイを逆手持ちすると、眼球を狙って十字に切りつけた。
「シンプルな物理攻撃。なれば動きを見極めてかわすこともできるのでは……」
途端、身体がずんと重たくなった。
高熱にうなされて寝込んだ時や、精神的にきわめてつらい時のようなけだるさに包まれた。
一瞬『もう何もしたくない。死にたい』という思考が脳裏をよぎる。
頭を押さえて首を振った。思考をふりきるたびに死にたくなる理由ばかりが脳裏に浮かぶ。
意志の弱い人間や、因子や術式による強化を受けていない人間ならその場で舌を噛みかねない。赤信号のスクランブル交差点の真ん中で仰向けに寝てもいい。
「自殺志願反応……これは、衰退波動?」
「うっとおしーいなー!」
御羽は笑顔で叫んだ。
両目を限界まで見開いての笑顔である。バスケットに手を突っ込み、真っ黒なリンゴを引きぬく。まるで聖異物でも見せつけるように高く翳した。
「とまりなさい!あなたの存在は生物への影響が大きすぎる! それはあなたが一番よく分かってることじゃない。ならせめてひっそり暮らすとか?」
ぐしゃり、とリンゴを握りつぶした。
「まあ無理だよねえ! わかってるわ! よーく!」
まき散らされた浄化物質が燐花たちへと浴びせられる。
衰退波動の影響がだいぶ和らいでいくのを感じた。
舌を出す御羽。
「やめてと言ってやめてくれるなら、世界はもっと平和だものね!」
●『絶滅勧誘人』
どこかの偉いひとが調べたところ、日本の自殺者は年間三万人はいたという。妖という共通の敵が生まれてから随分変わったとは思うが、世界一死にたがる民族だと他国からも称されたほどである。
仮に。仮にだ。
それがとある怪異が意図的に発する波動のようなものにあてられた結果だとしたら?
「あ……!」
時雨が小さく唱えたのもつかの間、時雨が踏みつぶされた。
斬撃をしかけながら逝が前へと割り込みにかかる。
「≪圧投≫をキレイにかけても踏みつぶしができるってことは、体術とかじゃあないなあ、あれは」
逝は想像した。例えば念じるだけで周囲の全生命を殺せる人間がいたとしたら。
最初は色々あるだろう。力を振りかざしてみたりいいことに使ってみたり。
しかし最後は多分、全員殺してしまうだろう。
人ないろんな奴が居る。しかし悪意と善意がプラマイゼロになったことは、残念ながらない。
マイナスが蓄積し、いつしか破裂する。その破裂が……。
「ん?」
いや、想像のしすぎだ。相手は肉食恐竜。人間なんてミミズやなんかと一緒だ。
それに、逝の思考はあまりに人と違いすぎる。アテになどなるものか……などと。
そう考えていると、シビラブレイカーが標的を遥にシフトし始めた。
遥もあえて狙われるように動いたつもりだ。手刀を突き刺すような構えに変える。
「よし来い!」
飛びかかる遥。が、気づいたら自分が噛みつかれていた。
犬やネコの噛みつきとは分けが違う。牙が肉体に突き刺さり、強制的に分断される。
「っ!」
声は出さない。口の中が血でいっぱいになったからだ。
手刀を口内のどこかに突き刺す。せめてカウンターをしかけようという考えだ。
もう一発と思ったが、片腕がない。一瞬外から差し込んだ光によって、自分の右腕が喉の奥へ転がっていくのが見えた。
ほ乳類の喉とは明らかに構造が違う。腕が喉にさしかかった瞬間ミキサーにでもかけたようにすりつぶされたのだ。
「や、やべ……!」
左手で牙にしがみつく。
その一方、一旦ハンバーグ種の気持ちを知った時雨は離れた位置で呼吸を整えていた。
「し、死ぬかと思った。つか死んだやろ。一回」
もし仲間全員が一回死んだらそれこそアウトだ。少しでも持ちこたえられるように、ここからは自分を含めた味方のリカバリーに集中せねばなるまい。
「こら、ぺってしなさい! そんなの食べたらメでしょ!」
数多はそんなことを言いながら、シビラブレイカーの眼球に刀を突っ込んでいた。
刀身が全部埋まるほどの眼球だ。奥まで腕ごと突っ込んで、中身をぐりぐりとかき混ぜる。
大体の生物はそんなことをされたら発狂するところだが、シビラブレイカーは構わず遥を食べる作業を続けていた。まるで痛覚などないかのようだ。
ちょっぴり見えていた遥のつま先が動きを止め、シビラブレイカーの外へと転がり出る。
つま先だけ。
「あ、ちゃんと出てこれたみたい。よかったね遥君!」
「よくねえ!」
光に包まれ、強制的に肉体を修復させた遥は頭をかきむしった。
「お、おまっ、シャレにならなかったんだぞあの光景!」
「貴重な体験じゃないですか。滅多にできませんよ」
本気かどうか分からない顔でバトンタッチする燐花。
シビラブレイカーの足部分に組み付くと、クナイをピック代わりにして高速でクライムしはじめた。
うっとうしそうに振り払いにかかるシビラブレイカー。
シェルターの壁側へと走り、膝まで登った燐花を潰そうと叩き付ける。
衝突の瞬間に離脱。燐花は着地し、そのまま距離をとるように走り始め――る前に食いつかれた。
「うわー! 燐花ー!」
千陽がナイフに持ち替え、シビラブレイカーへと飛びかかる。
「チャンスです。集中攻撃を」
「なんで冷静!?」
千陽はナイフで相手の腹部を滅多差しにし始める。
「おかしいわね……」
呟いたのは桃。と、桜である。
クナイと手斧を別々の方向から投げつつ(当然走って位置をかえつつ)首をひねる。
「最初は踏みつぶしたり噛みついたりで済んだはず」
「背中を駆け上がる酒々井さんにも無抵抗だったし」
「なのに膝を駆け上がった柳さんを落とすためにわざわざ壁で潰そうとした」
攻撃方法が変化しているのか。
それとも元々できていたが、はじめは咄嗟のことで混乱していたのか。
どちらにせよ。
「さっさと決着をつけないと危ないわね」
「決着? 殺すの間違いでしょう」
桜は斧を大きく振りかぶり、シビラブレイカーの顔面めがけて投げつける。
「殺したらどんな声でなくのかしら。彼はなんて言ってくれるかしら。あはは、はははははは!」
「はっはっは!」
笑いがラップする。
衰退波動に対抗した御羽が演舞を続けているのだ。
地面にばらまいた大量のリンゴを次々に踏みつぶして回る。
スカートを両手でつまんでスキップするように潰していくのだ。
彼女一人だけに衰退波動へのリカバリーを任せているので少々不安は残るが、いるといないでは大違いだ。
千陽がシビラブレイカーの足下をスライディングで抜けながら銃撃。同時に足首の肉をそぎ落とすように切る数多。とどめとばかりに桃と遥が骨までそぎはじめ、最後に突撃した遥が斧でもってへし折った。バランスが今度こそ崩れる。そのまま蹴り倒す逝。倒れてきたところに、遥が渾身のパンチを叩き込んだ。
時雨と御羽が回復に徹したからこそできた集中攻撃である。
シビラブレイカーは目をぐりんと上向け、そのままぐったりと脱力した。
いつも瞬間的に修復されていた肉体も、今は修復が遅れている。衰退波動も止まったようだ。
『お疲れ様でした。酸の流入を開始します。直ちに退避してください』
シェルター内に放送がかかる。
御羽たちは頷き合い、シェルターの外へと走り出した。
ちらりと振り返る御羽。
「いつか、あなたも世界の広さと優しさを知るときがあれば、いいのですが」
おやすみなさい。
優しくない海に抱かれて。
●収集癖財団ブランク博士
ニホンザルが画面に映っている。
『お疲れ様でした。見事な戦いぶりだったよ。おかげで一人の死者も出すこと無く再収容計画を完遂できそうだ。あとは我々に任せてほしい』
インターネット通信によるビデオチャット越しに彼は言った。
自分を財団に所属する人間だと名乗った彼。首から提げた名札に『ブランクはかせ』と日本語で書かれていた。
千陽はシビラブレイカーに固執する理由を聞きたかったし、数多は名前の由来を聞きたかったし、遥は殺せる方法を聞きたかったし、時雨は自分たちが直接戦う理由を(うすうす感づいたが)確認したかったし、桜は不死身性を研究して『彼』に役立てる方法を考えていたりしたが……。
『あと、このことは組織外の人間には一切口外しないでほしい。まかり間違って迷惑がかかるかもしれないし、役に立つかも知れないといってシェルターを破壊されたら人類がやばい』
逝は明後日を向いたままだまり、桃は天井のシミを数えはじめ、御羽は顔を手で覆っている。
『F.i.V.Eに支払った契約金は君たちに分配されるだろう。気になることは多いだろうが、質問に答えることはできない。財団は君たちに第四種の情報取得権限を与えているが、それは今回教えた情報までという意味なんだ。すまない』
「あのー」
『なんだね』
燐花が手を上げていた。
「なんでニホンザルなんですか」
「「言った!」」
全員が燐花を見た。
『……』
「……」
『……』
「……」
『それを喋ったら、私は抹殺処分を受けてしまう。なんやかんやあって復活すると思うが、その際世界のどこかでランダムに百人ほど死亡すると思うからお勧めしない』
「もうそれ喋ったようなもんよね」
『そうだね』
「「…………」」
時雨が両手で顔を覆って『あああああ』と唸った。
『あと、私は人に世界の裏側について話したくてしょうがない』
「それ話すと人が死ぬんでしょ。やめて」
「私は知りたいわ。教――むぐっ!」
身を乗り出した桜を羽交い締めにした。
「はいはーい! 私気にな――むぐ!」
同じく身を乗り出した数多も羽交い締めにした。
遥たちは愛想笑いを浮かべながらも、彼女たちを引きずって待機部屋を後にしたのだった。
最後にこんな言葉が聞こえる。
『君たちが余計なことを勘ぐらないと約束できるなら、私は君たちに味方しよう。百年後も日本列島が地球上に残るように』
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
