焼き肉ううううううううううううううううううううう!
焼き肉ううううううううううううううううううううう!


●やきにくがたべたいよおおおおおおおおおおおおおおおお!
「うおおおおおおお肉うううううううううう! お肉うううううわあああああああああああ!」
 文鳥 つらら(nCL2000051)が地面で両手両足をばたばたさせながらごろんごろん転がっていた。
 要約するとだだっこモードに入っていた。
「うっ、うう、もうむりです。まじめな依頼を受けたらストレスでお腹がぺっこぺこなんです。もう三週間生シジミしか食べてないのに……」
 存在感が霞以下だったので気づかなかった人もいたかもしれないが、つららは先日なんか妙に真面目な雰囲気の依頼に参加してボッコボコになって帰ってきたのだった。おかげで忘れていた空腹が一気にぶりかえし、数ヶ月ぶりのだだっこモードを発動したのである。
 なんか可哀想な目で見る久方 万里(nCL2000005)。
「この前お歳暮のハム分けてあげたじゃない」
「貰った帰り道でカラスさんが」
「そう……」
 この子神様に嫌われてんの?
 さておき。
「丁度いいってわけじゃないけど、古妖『もったいないおばけ』が現われたの。今回も無害なタイプなんだけど、どうやら牧場で沢山出荷された牛や豚たちが現代のなんやかんやで沢山破棄されてる現状にアレして抗議の居座りを敢行しているみたいで……鎮めの儀式という名の焼き肉パーティーをして消えて貰おうってハナシになって」
「やりまひゅ!」
 つららは海老反りしせいのまま手をぴんと挙げた。
「おにく食べればいいんですよね! 焼き方知らないので、生のままいいですか!」
「よくないよ!」
 腕をぶんぶん振り回す万里。
「このままじゃ誰も幸せにならない悲しい生肉パーティーが開かれちゃう。誰かたすけて! そして焼き肉をして!」


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:簡単
担当ST:八重紅友禅
■成功条件
1.焼き肉ううううううううううううううううううううう!
2.焼き肉ううううううううううううううううううううう!
3.焼き肉うううううううううううううううううううううおおおおお!
 八重紅友禅でございます。
 肉がたべたい。

●焼き肉パーティーをします
 古妖『もったいないおばけ』は今回、バーベキューセットの姿になって牧場のド真ん中に居座っています。放って置いてもいいっちゃいいけど、すごく悪い気がするので焼き肉パーティーを開いて『しずまりたまえー』しましょう。
 楽しく焼き肉パーティーができればOKです。
 バーベキューのマナーってわけじゃないですが、『ゴミを残さない』『近所に迷惑をかけない』『人の家に放火しない』の三原則を守りましょう。

●NPCの参加
 このシナリオには貧乏神に愛された少女こと文鳥つららが参加しています。
 参加したはいいが食材はもってないし焼き方もしらない子なので面倒見てくれる優しい人がいると喜びます。あとよく食べます。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
(0モルげっと♪)
相談日数
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
10/10
公開日
2016年02月01日

■メイン参加者 10人■

『弦操りの強者』
黒崎 ヤマト(CL2001083)
『探偵見習い』
賀茂・奏空(CL2000955)
『追跡の羽音』
風祭・誘輔(CL2001092)
『ホワイトガーベラ』
明石 ミュエル(CL2000172)
『美少女』
水端 時雨(CL2000345)
『研究所職員』
紅崎・誡女(CL2000750)
『突撃爆走ガール』
葛城 舞子(CL2001275)


 某県某牧場、突如として現われた古妖に立ち向かうべく、F.i.V.Eの覚者たちが集け――。
「「やきにくううううううううううううううう!!!!」」
 『B・B』黒崎 ヤマト(CL2001083)と『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)、そいでもって文鳥 つらら(nCL2000051)は目を星でキラッキラにしてジャンプした。
 焼き肉はお子様にとってごちそう。大人にとってもごちそう。
 そんな様子を、『研究所職員』紅崎・誡女(CL2000750)はにこやかに眺めていた。
「……」
 誡女はあるやんごとない理由で声を失ったが、彼女が後悔している様子はない。仲間たちにとっても、彼女の失語状態は誇らしいものである。
 さておき。
「おう、飲み物買ってきたぞ。他の連中は?」
 『ゴシップ記者』風祭・誘輔(CL2001092)がスーパーのビニール袋を両手に掲げてやってきた。
 中身は1リットルボトルのウーロン茶やジュース、缶ビールや紙食器等である。これを両手に抱えて軽々と掲げる所に彼の類い希なる筋力とバランス感覚がわかるだろうか。今分かる必要は無いが。
「お肉も沢山用意したっすよー。野菜も色々……お肉だけだと飽きちゃいますからね」
 一方でふらふらしながらエコバッグを担いでくる水端 時雨(CL2000345)。冷凍ボックスも持ってきているが、そっちに関しては誘輔が代わりに肩からさげている。
 二人の後ろで、白枝 遥(CL2000500)が牧場の豊かな土地を見渡した。
 想像しにくいとは思うが、やたら広い平地のど真ん中にぽつーんとキャンプセットが存在している。これが古妖だよって言われても正直ピンと来ない。遥も最初は牧場主の忘れ物かなと思ったほどである。
 隣に並んで眺める『罪なき人々の盾』明石 ミュエル(CL2000172)。
「本当に、いるんだね……焼き肉を食べるだけで、鎮められるなんて……」
「毎日お肉捨ててると、それを食べる人のことを忘れちゃうんじゃないかな。わかんないけど」
 工場で弁当作り続けてるとご飯がご飯に見えなくなるアレだろうか。女子高生と男子中学生が分かったらイヤな話である。
 一方そのころ。
「一頭いっとく?」
 プリンス・オブ・グレイブル(CL2000942)が栄養ドリンクのCMみたいなことを言いながら牧場主に販売交渉をかけていた。
 最初は破棄する肉を貰おうかと思ったが、経済のルールに反するというか普通に脱税なので、プリンス的にもF.i.V.E的にも頼むわけにはいかないのだ。
 牧場主の人としてもよくわかんない古妖に触れるのは恐いし、夢見が適切な対応手段を示してくれてしかも彼らでやってくれるということで、手数料等々をカットした格安で販売してくれた。
「あ、リョーシューショはF.i.V.Eって書いてね、最後ブじゃなくてヴだから」
「領収書って、いるんですかぁ?」
 横から顔を覗かせる阿久津 ほのか(CL2001276)。
 さばいた鶏肉を串に刺していく『猪突猛進』葛城 舞子(CL2001275)がくるりと振り返る。
「いるでしょ。タダになるし」
「だよねー」
「ですよねー」
 説明しておこう。
 行政に企業登録していないどころか所在不明組織のF.i.V.Eはいくら経費を主張しても所得税の控除額としてカウントされないしなんなら税監査も入らないのだ。色んな意味で法律の外側にある組織なのである。
 なので、組織運営にあたって何にどのくらい金かかってんのかを調べるためだけにこの領収書は使われる。特に今回みたく経理の人に説明しづらい経費はアタリマンのポケットから出ているのだ。
 余計なことを話しすぎた。本題に戻ろう。
「それじゃあ、早速焼き肉はじめちゃいましょ~ね~」
 裏で牛が聞いたことも無い声出してるのを無視して、ほのかはにっこり笑った。


 と、いうわけで!
「お肉かってきたよー。新鮮すぎるニポン牛」
 プリンスがそれこそ生でいけるんじゃねーかってくらい新鮮な牛肉をタッパーから取り出して見せた。
 『うひょー』と『おほー』の中間くらいの声を出して身を乗り出すつらら。
「だめですよ、焼けるまで我慢我慢~」
 伸ばした手から逃がすようにひょいっと掲げるほのか。
 奏空がうんうんと頷いた。
「気持ちわかるぜ。俺の家な、焼き肉は大人の食べ物だからって食べさせてくれないんだよ。はやる気持ちもわいて当然」
「そっか? オレ、バーベキューは経験あるぜ? 久しぶりだけどさ。ってつらら落ち着け! 羽根、羽根のびてっから!」
 軽く野獣と化したつららを羽交い締めにするヤマト。
 誡女は『この子はまた飢えて……』という顔でバーベキューセットの火を整えた。
 以前F.i.V.Eの人に『なんであの子貧乏なの? お金あげてないの?』的なことを聞いたことがあったが、どうも文鳥つららは所有した財産を奇跡的に消失させる才能があるらしい。本人がそれを不幸に思っていないので手はつけていないが、一応こういう時には声かけてあげようねということになっているらしい。
「まあとりあえず見とけ。焼き肉は全身で味わうもんだぜ」
 お待ちかね。誘輔はトングを使って肉をプレートに敷いていった。
 鉄板の上をはねる油と『ジュウ』という音。瞬間的に舞い上がる肉の焼ける香りと、徐々に色づいていく肉。そして安心感と高揚感を誘う鉄板の熱。
 五感の全てが今、焼き肉に包まれていた。
 最初に焼いたのはプリンスが持ってきた分厚いステーキ、ではない。ミュエルたちの持ってきた薄切りのロース肉である。
 鉄板の上でくにゅっとよれていく肉に、涎の蛇口をフルオープンにしたつららが身を乗り出した。つま先でぴょんぴょん跳ねる。
「こ、これがお肉……!」
「そこから?」
「待っててね、今焼けるから……紅崎さん」
 誡女は頷いて、ロース肉を焼けたそばから紙皿によそっていく。
 こういうときに子供優先にしてくれる辺りが誡女である。
 ヤマトや奏空のお皿にお肉がのせられていく。
 ほのかはお皿をつららに回してやった。
「もう食べられるよー、つららちゃん」
「い、いただきまふ!」
 言いながら既に食べていた。至福の表情で背中の羽根をぴこぴこするつらら。
 そんなに美味しいのかと、ほのかは自分のお皿を見てみた。
 安くて古い肉を使うとどうも油っぽくなってしまうが、どうやらそれなりのお肉らしく表面のつやを除いて油っぽさは感じない。そのつやでさえ、どこか美しさすら感じる。
 食べてみると、まず最初に感じるのが熱だった。なんと言っても焼きたてである。
 次に来るのがまさかの甘み。それも砂糖等の甘みではない。肉の油に含まれるほんの僅かな成分が、甘みとしてしみ出ているのだ。人は身体が欲している養分を美味しく感じるというが、今まさにほのかはこれを欲していたということだろうか。
 もっきゅもっきゅと満足げにするほのか。
 すると、ミュエルが小さなペットボトルを取り出した。
「あのね、タレを持ってきたの……ママから教わった特製」
 見た目は普通のタレだが、香りがどこか味噌っぽい。リンゴやニンニクといった食材をさしすせそリズムに乗せて煮込んでいくのが基本的な焼きにタレだが、信州味噌を多分に含むことでやや辛口だが子供の舌にも優しいタレに仕上がっていた。
「信州なんだ、地元なの?」
「えへへ……」
 照れ笑いするミュエル。彼女に負けじと、時雨がちゃきっとボトルを取り出した。
「こっちも負けてませんよお! 塩麹や赤ワインを使ったー……時雨ちゃん特製ダレー! おこのみにあわせてー!」
「ワインベースたぁ粋なことしやがる。こっちにもくれよ」
 早速ステーキ肉を焼き始めた誘輔が、時雨のタレを皿にかけ始めた。
 焼きつつ片手で缶ビールのプルタブを開き、一気に飲み干す。
 許されるならこのまんまぶっかけてしまいたいが、子供のいる場でそれはできない。
「昼間っから肉食いまくってビールかっくらえるとは、F.i.V.Eに入って良かったぜ」
「どこの国もそういうとこ一緒だよね」
 暫くどっか行ってたプリンスが洗ったモツ肉を桶に入れて持ってきた。
 見た目から想像できないと思うが、プリンスはこれでも山羊とかアザラシとか捌ける人である。逆に成人してるのに家畜が捌けない日本人が不思議なくらいらしい。
「とりあえずすぐ食べない内臓とかいぶしてきたんだけど。アザラシと同じやり方でいいんだよね?」
「アザラシいぶすって段階でもうわけんねよ。っていうか魚臭っ!」
 プリンスは欧州小国の王子らしいが、欧州で日常的にアザラシ食う国ってどこだろう。アイスランドあたり? 南ヨーロッパになるともうアザラシ食う人をバッシングしはじめるし。
「ふっふー、牛だけで満足するのはまだ早いッス!」
 しゃきーんと鶏串を構えた舞子がここぞとばかりに鉄板を網に取り替えた。
「鳥ッス!」
「鳩さんですね!」
「鳩さんじゃないッス! 鶏さんッス!」
 やめて。という顔で首を振る舞子。
「私のお勧めは鶏肉ッス! 食べれば分かるっすよつららちゃん、焼き鳥奉行舞子がご披露仕るッス!」
 とか言いながら適度に串を回しつつ地味ーにじっくり焼いていく舞子。塩と醤油タレを分けるためにスペースをあけ、かたや粗塩を振りかけ、方やタレをハケで塗っていく。
 焼き鳥の有名店なんてもんがあるように、焼き鳥には適切な焼き方というものがある。
 それは勿論部位によって違うが、ここでは詳細を割愛しよう。
 配られた焼き鳥を手にきゃっきゃするほのか。
「焼き鳥知ってるよ。えっと……ももと、かわだよね~」
「オーソドックスに言えばそうッスけど、今日のお勧めはぼんじりッスよ」
 ぼんじりとは、鶏の尾骨周辺の肉。つまりお尻である。地方によっては『さんかく』や『テール』とかいう呼び方をする。
 油壺という独特の部位があることが特徴で、柔らかく油分が強い。だが肉の量的にも希少なので焼き鳥専門店くらいでしか扱っていないことも多い。
 ちなみに、店から届くお誕生日ハガキを持って行くと歳の数だけ焼き鳥をくれるという冗談みたいな店があるが、ここが冗談みたいに美味しくてお勧めだ。くふ楽といって銀座と千葉にある。
「早速試してみるッスよ」
「いいんですか?」
 では遠慮無く、といって焼き鳥を手に取るつらら。
 この時点で鶏肉の香りが立ち上っている。炭火と鶏肉の相性は今更言うまでも無いが、第一の魅力はなんといってもその香りだ。
 鶏肉独特のさらっとした香りが鼻をくすぐる。串を刺してしまわないように、慎重に前歯で抜き取るように噛むのだが、よい肉を上手に焼くと、これが思いのほかスルッと抜ける。
 肉の弾力があるうえに組織がしっかりしている証拠だ。
 その段階で既にある程度冷めているので、安心して口の中へ。
 噛むことでしみる肉の味。ありがたみ。
 柔らかさがすんごいぼんじりとは対照的に、カシラというまんま頭んとこの部位があって、こっちはかなり弾力があってクシ一本食べ終わる頃には顎が痛くなるくらい強い。こっちも是非食べてみていただきたい。
 さて。そろそろお肉以外のものも焼き始める時間だが……その前に。
「ちょっと工夫していいかな。ハンバーグなんだけど」
 挽肉をアレした遥が、鉄板にハンバーグをのっけ始めた。
 ハンバーグといえば昔千葉にあったモビーディックという専門店が引くほど安くて美味しかったのだがその話はまた今度にしよう。今は遥だ。
「おにぎりもちょこっと焼いて、ライスバーガーにしたいよね」
 などと言いながら薄めにつくったハンバーグにチーズをのせて、ライスに挟み込んでいく。
「「いめー!」」
 うめえと言い損なったけどもういいやという声を発する奏空とヤマト。
「そうだ、生姜焼きなんかにも挑戦しちゃおっかな!」
「こらこらそうあせんな。時間も肉もたっぷりあるんだし、のんびりやろうぜ」
 誘輔が簡易ベンチに腰掛け、何本目かのビールを開けた。
「あれはガキの頃だったか。あんときは貧乏でなあ……」
 この後誘輔おじさん29歳のうそかほんとか分かんない半生をとつとつと語ったのだが、あえてここは割愛しておきたい。
「食べるより……お喋りのほうが、多くなってっきたね」
 持参したおにぎりをぱくつきながら呟くミュエル。
 その向かいではつららがおにぎりを一口で頬張っていた。
「ほーへむは?」
「ごっくんしよ?」
 お茶を飲みつつむぐむぐするつらら。
 ミュエルは既にできあがってきてる大人たちを横目に、小さく息をついた。
「アタシね、地元ではこうやってご飯食べる機会、なかったの。だから……楽しいなあって」
「なんすかなんすかー、デレデレっすかー!?」
 かなり間違ったテンションで入ってくる時雨。
「ほらもっと食べて食べて。今なら焼き肉丼食べ放題っすよ!」
 ミュエルの味噌だれをご飯と肉の上にガーッやる時雨。そしてそれをガーッて喰うつらら。
 時雨の手には肉丼どころか焼きそばや野菜類もごっそりのっているので、そろそろ焼き肉もお遊びタイムに入った頃合いのようだ。
「うめえ……! うめえっ……!」
「相変わらずがっついてんなあ、つららちゃん」
 そう言いつつ、奏空は牛タンにレモン汁をかけたものを割り箸でつまみあげた。
 何気なく一口。
「ほああああああああああ!」
 あえて、説明はすまい。
 奏空なりに大人を知った瞬間である。
「何叫んでんだよ。ほら、サイドメニューどんどん来るぜ」
 ヤマトが椎茸のホイル蒸しを持ってやってきた。まんまの椎茸にバターくっつけてホイルで包んで焼いたやつである。お肉と一緒に包んだり、なんなら魚の切り身と包んでも美味しい。
「ふぇーい、しあわせー」
 椎茸をくわえて半分天国にいってるつららを眺めながら、ヤマトは焼きそばをかっ込んだ。
 祭りの屋台で作られるあの愛すべきパッサパサ焼きそばもいいが、肉汁と油をたっぷり吸い込んだ貴族みたいな焼きそばもまたよい。
「もうこうなったら何でも焼いてやれって気分になるッスよねえ」
 舞子は焼きトウモロコシやら焼きソーセージやら炙りマシュマロやらを乱発しながら、ちょっとハイなテンションになっていた。
 キャンプファイヤー同様、人間は火を囲むと無意識にハイになる。とにかく色々焼こうという気分になってくるのだ。
「……」
 誡女も割とそんなテンションにあてられているようで、黙々と焼いては食べ焼いては配りを繰り返している。声がどうこう以前に、真剣になると黙るタイプなのかもしれない。
 とはいえ穏やかに話す人なので、できることなら声が戻ってきてほしいと思うつららたちである。

「まだ焼いてないもの、あったかな」
 きょろきょろと見回す遥。だが既に食材は使い切り、時雨の持ってきたアイスをつついて文字通りのクールダウンをしているところである。
「大人って……大人って毎日こんないい想いしてるんですね! 大人って……!」
「お前うるせえよ、酒も飲まずに酔ってんのかよ」
 軽く泣き出した奏空を牽制する誘輔。
「沢山あったけど……全部、たべちゃったね」
「満腹で満足っすー。またやりたいですね」
 にっこり笑い会うミュエルと時雨。
 舞子はそこで、ハッと誡女の顔を見た。
「そういえば誡女さん、なんか来たときより血色よくなってないッスか?」
「……」
 首を傾げ、鏡を取り出す誡女。
 彼女の状態はただの貧血症状ではない。そう簡単に治るものではないはずだが……。
『お礼じゃよ』
 うわあバーベキューセットがしゃべった。
 ではない。
 もったいないおばけさんである。
『わしにできるのは、食を通して健康になってもらうことくらいじゃが……皆それぞれ、身体の調子が良くなっておるはずじゃ』
「うーん、確かに。他人の金でお肉食べてたからかと思った」
 『お店としてはそのまま鉄板にあけてたまごビーフ焼きにしろと書いているんですよ?』のやつを三倍ほどかっくらったプリンスが、つやっとした頬を撫でた。
 ほこほこした顔で笑うほのか。
「おかげで元気いっぱいですねー」
『よき席であった。食の幸福、あらんことを』
 そう言って、しゅおしゅおと消えていくバーベキューセット、もといもったいないおばけさん。
「いや、こっちこそ……」
 ヤマトは皆に促すように両手を合わせた。つららも合わせる。
 そして皆一緒に。
「「ごちそうさまでした」」

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし




 
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