≪初夢語≫FiVE壊滅! 覚者最期の日!
≪初夢語≫FiVE壊滅! 覚者最期の日!


●幕間に響く天の声
「さて、お前らに見せる初夢は……そうじゃな。ちょっと早めの最終回、ってのはどうじゃ?」
 元旦未明。寝ている貴方の夢の中で、古妖《獏》の声が響く。
「炎上する五麟市。壊滅した《F.i.V.E.》本部。その中央に聳え立つ最後の敵、妖帝イゼルローン。生き残ったお前らは自らに与えられた因子の力をオーバーロードさせ、決死の覚悟で最終決戦に挑む。生き残るのが、いや、イゼルローンを射程に捉えるのがたった一人でもいい。たとえ俺達が全滅しても、妖帝イゼルローンを倒し、地球の平和は護ってみせる。まさに熱血、まさに王道、じゃな」
《獏》の声が言葉を切り、ふぉっふぉっふぉ、と笑う。
「心配するな。別に本当に死ぬわけでもないし、本当に街が壊滅しとる訳でもない。――ついでに言うなら、お前らのラスボスが本当に妖帝イゼルローンなわけでもない。そしてもちろん、本当にこれで最終回なわけでもない。ていうか、絶対違うからの。勘違いせんように、の。
 さあ、新年一発目から景気よく、サイコー暑苦しく参ろうぞ」

《次回予告》
 妖帝イゼルローンを倒せ!
 ついにその姿を現した最終兵器《因果覚醒結界弾》は、運命の片道切符なのか!?
 最強の力を手にした覚者達は、死を賭して最後の血戦に臨む。
 力を貸してくれとは言わない。――死んでくれ。勝つために。
 それが無理なら、せめてあいつらの戦いを見守ってくれ。
 そして、覚者達の最期の戦いに、君の熱い勇気を分けてくれ。
 次回、『F.i.V.E.壊滅! 覚者最期の日!』
「頼んだぜ……じゃあ、俺……寝るわ……」

●反撃の狼煙
『この程度か、人間共よ』
 五麟市が燃える。壊滅した《F.i.V.E.》本部の瓦礫の前に、全高30メートルを越える巨大な影が聳え立っている。妖帝イゼルローン。圧倒的妖力を誇る、全ての妖の王。
『妖、古妖、大妖に関わらず、お前達の成してきた数々の狼藉はもはや正視に堪えん。弁明は許さぬ。まして交渉など出来ると思うな。これはお前達人間の傲慢に対する神罰である。我の手により直接裁かれることに感謝するが良い』
 言って、妖帝はその拳を振り上げた。その拳に妖力を帯びた紫炎が燈る。
『滅びよ、人間共!』

「くっそ……言いたいこと言いやがって……」
 久方相馬(nCL2000004)は呟きながら、生き残った僅かな覚者と共に《F.i.V.E.》本部の地下通路を歩いていた。全員がいくらかの傷を負い、相馬自身もまた負傷している。
「敵はこれまでにないほど強大。対してこっちは虫の息の生き残りがほんのこれだけ。絶望的な戦力差だ。ていうか、客観的に見ればとっくに負けてる。――この状況を覆すには、こっちも最終兵器を投入するしかない」
 最終兵器? と一人が訊き、相馬が頷く。
「着いたぜ。――これだ」
 相馬が地下通路の果てにあったハッチを開く。そこには、全高3メートルほどの弾丸状の機械があった。覚者達は驚愕した。まだ電源も入っていないその機械から、自分達と同じパワーを感じたからだ。因子の力。それも、恐ろしいほどに強大な。
「《因果覚醒結界弾》。周囲50キロにお前らが内包する因子の力を10倍から20倍前後に引き上げる結界を張る、《F.i.V.E.》の最終決戦兵器だ。こいつを起動すれば、この人数でも妖帝と互角以上に戦える。作戦すら要らない。真正面からの力押しで充分だ。――でも、一つだけ問題がある」
 問題? と一人が訊き、相馬が頷く。
「こいつの起動には一分かかる。その一分を、あの妖帝が大人しく待ってくれるとは思えない。――誰か、外へ引き返してあいつを食い止めてくれ。一人でいい」
 相馬の言葉に、覚者達は顔を見合わせる。
「もちろん二人以上でも構わないけど、外で引き止める役はこいつの恩恵を受けられない。はっきり言って、生存の見込みも勝利の見込みも無いだろう。捨て駒だ。それでもいいやつだけ行ってくれ。そして、もちろん全員で行くな。こいつの恩恵を受けて戦う攻撃役を、最低一人は残してくれ」
 言って、相馬は《因果覚醒結界弾》の起動スイッチを押した。「人数割りはお前らに任せる。さっきも言ったけど、引止め役は一人でもいいぞ。細かいことは気にするな。自分の力を信じて、全力でぶつかるんだ」
「頼んだぜ……じゃあ、俺……寝るわ……」
 言って、相馬はずるりとその場に倒れこんだ。


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:鳥海きりう
■成功条件
1.妖帝イゼルローンの撃破
2.なし
3.なし
■初夢依頼について
この依頼は参加者全員が見ている同じ夢の中での出来事となります。
その為世界観に沿わない設定、起こりえない情況での依頼となっている可能性が
ありますが全て夢ですので情況を楽しんでしまいしょう。
またこの依頼での出来事は全て夢のため、現実世界には一切染み出す事はありません。

※要約すると一夜限りの夢の出来事なので思いっきり楽しんじゃえ!です。


 ……というわけで皆様こんにちは。鳥海きりうです。よろしくお願いします。
 全ての妖の王(初夢)、妖帝イゼルローンとの決戦シナリオ(初夢)です。妖帝の撃破が成功条件となります。


 出現する敵のご紹介です。

・妖帝イゼルローン
 圧倒的妖力を誇る全ての妖の王(初夢)。全高30メートル前後。攻撃方法は主に格闘だが、ガタイがガタイなのでリーチが長い。


 基本的には獏および相馬が説明したとおりです。初夢なので深く考えず、思いっきり戦ってみてください。

 ただし、最終決戦らしく敵は強めです。万全の作戦を考えても仲間達が次々に倒れていくものとお考えください。全員生き残っての完全勝利はあり得ません。むしろ熱い死に様を演出するほうがいい結果が出るでしょう。今回はむしろ作戦よりもハートが重要になります。仲間達の命と勇気を糧に一歩でも前進し、妖帝に熱い一撃を喰らわせてください。
 死亡時台詞を含めて、最終決戦に相応しい熱いプレイングをお待ちしております。

 また、初夢なので最後は当然夢オチになります。夢オチと分かった時のリアクションも考えて頂けると捗るかも知れません。


 簡単ですが、説明は以上です。
 皆様のご参加を心よりお待ちしております。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(1モルげっと♪)
相談日数
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/6
公開日
2016年01月16日

■メイン参加者 6人■

『希望を照らす灯』
七海 灯(CL2000579)
『名も無きエキストラ』
エヌ・ノウ・ネイム(CL2000446)
『緋憑の幻影』
瀬伊庭 玲(CL2000243)


 スキットルを傾ける。
「……んー、ウマい。コレが最後に味わう酒でよかったあ」
「思いのほか、余裕ですね」
 四月一日四月二日(CL2000588)と納屋タヱ子(CL2000019)は、話しながら《F.i.V.E.》本部の地下通路を歩いていた。エイジはタヱ子を振り返り、笑う。「納屋さんみたいなコと、あそこに立つコトになるなんてなあ。若いコに命を捨てさせたくないなんて言ったけど……たとえ若くても戦士だもんな。キミの覚悟は尊重しねえと、な」
「心配なさらないでください。……倒してしまっても、いいんでしょう?」
「おおっと。すげえ自信」
「泣いても笑ってもこれで最後ですからね。久方さんには生存の見込みはないと言われましたが――わたしは死ぬつもりなんてこれっぽっちもありません。これでも、FiVEが健在だった頃の覚者の中でも1番守りが硬いんですから」
「あてにしてるよ」
 言って、エイジはもう一度スキットルを傾けた。「……《いき》ますか。捨て駒になるため……死ぬためじゃなく、《生き》た証を残すために」

『残念なことだ』
 地上に出た二人を、妖帝イゼルローンの威容が出迎えた。紫の妖気が二人を捉え、紅い眼光が睥睨する。『この期に及んで我が前に立つのが、小さき人間たった二人とは』
「……甘く見んなよ? 妖帝さんよ」
「妖帝イゼルローン! 私達二人、最後の覚者が、お前を倒して見せます!」
 タヱ子の言葉を聞き――イゼルローンは、哄笑した。『お前達が最後か! よろしい、ならば盛大に相手をしてやろう! 華々しい散り様で、我の勝利と人類の終焉を彩るが良い!』
「――魂力解放! 蔵王蒼鋼壁!」
「雷獣!」
 妖帝の拳とタヱ子の《蒼鋼壁》がぶつかる。破砕。「!?」拮抗するのも一瞬、蒼鋼壁が割れて吹き飛び、巨大な拳に打ち据えられた身体が宙に舞う。ほぼ同時にエイジが放った雷撃が妖帝に命中するが、妖帝の巨躯は小揺るぎもしない。しかし好機。エイジは目の前の拳に踏み込んだ。《貫殺撃》で妖帝の拳を狙う。
『遅い!』
「何!?」
 拳が消え、次の瞬間妖帝の蹴りがエイジに飛んだ。命中。蹴り上げられた大量の瓦礫と土塊と共に、エイジの身体が宙を舞い、地面に落ちる。
「……がっ……!」
「ワ、四月一日さん……!」
 倒れたエイジにタヱ子が歩み寄り、《命力分配》でその傷を癒す。『構えよ、人間』
『これで終わりとは言うまい。貴様らの最期、我が見届けよう。死力を尽くして挑むが良い。最後の覚者に相応しい戦いをするのだな。――今のところ全然であるぞ』
「……挑発とは、こすい手を使うな、妖帝……!」
 呟きながらエイジは立ち上がり、タヱ子と共に妖帝の巨躯を見上げた。

「くそ、まだ一分経たんのかいな!」
《因果覚醒結界弾》の中で、『緋焔姫』焔影凛(CL2000119)は叫んだ。外ではエイジとタヱ子が結界弾を守る為に命を懸けて戦っている。今にも飛び出していきたいが、それは二人の覚悟を侮辱する行為だ。「(耐えろ、耐えるんや)」拳を握りしめて自分に言い聞かせる。
「四月一日さんに納屋さん……お二人の覚悟を無駄にしないためにも、私達もできるだけの事はしないと」
「さてさて。我が信条は『散る時は華々しく』とありますので……折角なので存分に遊ばせて頂きましょうかね」
『蒼炎の道標』七海灯(CL2000579)は静かにそう言い、『名も無きエキストラ』エヌ・ノウ・ネイム(CL2000446)はそう言ってくつくつと笑う。
「こんなものを隠しておったとはのう。――あやつらなら大丈夫じゃ。問題なかろう。わらわ達はこやつが起動するまでこの場でたーいーきーじゃ」
『緋憑の幻影』瀬伊庭玲(CL2000243)は鷹揚にそう言い、腕組みして起動の時を待つ。――その時、結界弾のどこかで電子音が鳴った。「――あ」
「皆さん、来ます!」
「え」
 声と同時に、弾が炸裂した。四人の足元から翠の光が爆発的に噴き上がり――全てが吹き飛び、消えた。


《H.I.C.》!
『我を畏れよ、人間共!』
 ハイパー・イマジネイティブ・超合金『新 -アラタナル-』シリーズに、ついに妖帝イゼルローン降臨!
 他を圧倒する史上最大のスケール! 豪華造形クリエイター陣によるアーティスティックな造形表現ももちろん健在!
『最終決戦コンプリートBOX』には、《H.I.C.極魂》サイズの覚者六人のダメージver.フィギュアを同梱!
 通常版:12,800円 最終決戦コンプリートBOX:17,800円
『さあ、絶望するがいい!』
 In store now!


 妖帝イゼルローンとタヱ子、エイジの絶望的な戦いは、まだ続いていた。「納屋さん!」
 叫んだエイジの視線の向こうで、妖帝のアッパーカットに盾を破壊されたタヱ子が、宙に孤を描いて地面に落ちた。苦痛に全身を軋ませながら、タヱ子はなおも立ち上がる。『よろしい。結構である』
『娘よ。よくぞここまで戦った。しかしここまでである。すでに二つの盾は破損し、お前自身も満身創痍。降伏するがいい。我に服従を誓うなら、お前を生かしてやろう。万物の王に従属すれば、その庇護の下に、お前の望みは全て叶う』
 妖帝の言葉に、タヱ子は笑って応える。「――私の望みは、一つです」
「妖帝イゼルローンの撃破。人類の勝利。それ以外の報酬など、何も要りません」
『――ならば、死ぬことになる』
「ならないと思いますよ。盾を壊したぐらいで、いい気にならないことです」
「そうだ! それに――俺を忘れちゃいないかい、妖帝!」
 エイジが疾る。しかし妖帝も振り向いた。『お前も死に急ぐか!』妖帝の拳が引かれ、エイジも《ダーク・レディ》を引き手に構える。望むところだ。相撃ちでも一撃を加えられれば充分。交錯。
「『!?』」
 一瞬速く、タヱ子が妖帝の拳の前に立った。直撃。背丈ほどもある拳に打ち据えられ、タヱ子の身体は地面を滑るように吹き飛ぶ。咆哮し、エイジは妖帝の拳に《ダーク・レディ》を突き立てた。命中。刀身が半ばまで妖帝の拳に埋まり、ドス黒い血が流れ出る。
『小僧共がああああ!』
「っ――!」
 妖帝が怒りに任せて拳を振り上げ、地面に振り下ろした。拳と共にエイジの身体が地面に埋まる。吐血。妖帝が拳を持ち上げ、《ダーク・レディ》を引き抜く。
「っ――ぐあ!?」
 起き上がろうとしたエイジの腹に、妖帝の投げた《ダーク・レディ》が突き立った。『一回は、一回だ』
『さあ、立ち上がれ小僧。それとももう諦めるか? 仲間を討たれて悔しくはないのか? その剣を抜いて立ち上がり、我にもう一撃を見舞って見せよ』
「――いい、だろう」
 エイジは応え、自分の腹に刺さった《ダーク・レディ》を引き抜いた。「っ」一瞬呻き、ふらふらと立ち上がる。「もう、いらねえな」いつもの癖で伊達眼鏡をかけようとして、それを地面に捨てた。もうクールを装う必要は無い。今この時は、心が訴えるままの――熱さを求める俺のままで。
 地面に落ちた伊達眼鏡は、とっくに割れていた。「……」
 立ち上がり、妖帝の前に立ったエイジは――しかし、力尽きてうつ伏せに倒れた。『……』
『……終わりか。口ほどにもない、とは言うまい。俗人風情が我とここまで戦っただけでも大したものだ。――若干拍子抜けではあるがな』
「――ちげーよ、バーカ」
『何?』
 倒れたまま、エイジは妖帝を見据える。「妖の王……なるほど、悪夢的な強さだ。けど、お前よりもっと強いヤツを知ってる。誰より強くて優しい連中。たとえ何が起こっても、あいつらが何とかしてくれるって信じてる」
『……何?』
「だから俺は、ココで全力を出し尽くせるんだ。信じて待っててくれる、あいつらに繋ぐために」
『……おい。待て。小僧。……お前らが、最後じゃないのか?』
 妖帝の問いに、エイジは笑う。
「お前の負けだ、妖帝。お前は人類の力と叡智、そして勇気の前に敗れるんだ。
 1分経ったぜ」
『!?』
 エイジの言葉とほぼ同時に、《F.i.V.E.》本部跡から翠の光が爆発した。瓦礫を吹き飛ばし、土塊を巻き上げ、本部跡を中心に巨大なクレーターを作る。翠の光が周囲に拡がり、世界を暗く覆っていた妖力と暗雲を吹き飛ばす。
 そしてその中央に、妖帝を見据える四つの人影があった。

「クックック……気づくのが一歩遅かったですねぇ、妖帝イゼルローン。ここは既に我らがフィールド、さあ、貴方の声を、悲鳴入り混じるその素晴らしき声を聴かせて下さいよぉおおッ!」
 言って、エヌがスタッフを振り上げる。《迷霧》。スタッフから高密度の霧が妖帝に纏わりつき、その身体の自由を奪う。『ぬう!?』
「イゼルローンよ、そこで震えて祈っておるが良い! 妾の弾丸から逃げられると思うな!」
 紅いマフラーをはためかせ、玲が妖帝に向かって飛ぶ。一瞬で距離を詰め、零距離で両手のハンドガンを妖帝の身体に撃ち込んだ。連射。計六発の弾丸が妖帝の身体に撃ち込まれ、その身体が大きく傾ぐ。『ぐおおおお!?』
『こ、この力は!? いったい何をしでかした、人間共!』
「説明してやる義理など無いわ! 緋憑の幻影! ファイヴの名の下に、いざ参る!」
 玲が妖帝に踏み込んだ時、同時に飛び出した凛は途中で倒れているエイジを見つけ、思わず駆け寄っていた。「四月二日さん、生きとるかいな!?」
「……」
 返事は無い。凛は一瞬押し黙り、エイジの血で自分の顔に血化粧を施す。「一緒に戦おう。あんたらの思い、あたしに宿らせてくれ」
 呟き、エイジを横たえて立ち上がり、《朱焔》の切先を妖帝に向けた。
「覚悟せえよ、このクソ野郎! 焔陰流二十一代目予定焔陰凛、推して参る!」
「――納屋さん!」
 外へ出てから二人を探していた灯は、倒れているタヱ子を発見して駆け寄った。――名前を呼ぶが、返事は無い。「……!」タヱ子の顔を見た。――笑っている。本懐を遂げたのだろう。全力を尽くした。そして今際の際、仲間の勝利を確信したのだ。だから笑っている。
「……勝利の栄光を、貴女に」
 呟き、妖帝を見据える。その身から炎が噴き上がった。蒼く、紅く。
「燃え上がれ、我が想い! 未来を照らす、希望の灯となれ!」
『なめるなあああ!』
「ぬう!?」
 妖帝の拳が玲を捉える。命中。しかし玲は腕でガードし、踏み止まった。『な、何!?』
「その隙は逃しませんよ!」
 エヌの《雷獣》が妖帝を貫く。妖帝が苦鳴を上げて一歩後退った。
「妖帝イゼルローン!」
『よかろう! 我が真の力、そんなに見たければ見せてくれる!』
 灯が《闇刈》で斬りつけ、妖帝が蹴りで反撃する。共に命中。灯はガード出来ずに大きく吹き飛び、空中で態勢を立て直す。「焔陰さん!」「おうさ!」
『!?』
「リーチが長いってことはああああ!」
 凛が妖帝に踏み込んだ。「懐に飛び込まれると弱いわなぁ!」《飛燕》。凛の刀が妖帝の脚を斬り裂く。出血。妖帝は苦悶の咆哮を上げながらも、凛に拳を振り下ろす。凛はその拳を見切ってかわし、その拳に乗り、もう一度跳んだ。妖帝の目前。《朱焔》を構える。
「お前のせいで潰えた命、思い、このあたしの刃に載せて叩き込んだる。楽に死ねると思うなよ!」
 妖帝は咆哮で応え、拳を繰り出す。《飛燕》。共に命中。妖帝の拳から鮮血が吹き上がり、それとは別方向に凛の身体が飛ぶ。
「コレが、真理の一撃じゃあ! ブラッドエンドデッドォ!」
『ぐうううっ!』
 さらに妖帝の前に玲が現れ、ハンドガンを構える。しかし、その一斉射撃を妖帝はすねでのところでかわした。反撃のストレートが玲を捉える。玲は孤を描いて吹き飛び、「――負けるかぁぁぁ!」しかし宙返りして地を滑りながら着地した。
「イブキ!」
『!?』
 灯の守護使役・イブキが持つ異空間から、無数の鎖分銅が放たれた。それが妖帝の身体に巻きつき、その自由を奪う。「私には、貴方の首を掻ける程の力はありません。ですが、私には……私達には、仲間という力があります」
『だから!? だから何をしても許されるのか! 数が多いから!? お前達人類は傲慢だ! 大勢で群れてるやつに限って、ろくなことをしないくせにだ!』
「傲慢でも、許されなくたっていい……それでも私は人間が好きだから、皆が暮らす街の灯りが大好きだからっ!」
「ろくなことしてへんのはお前も同じやんけ。寝言は寝て言えや」
「傲慢結構。その謗り喜んでお受けしましょう。――僕は相当、傲慢ですよ?」
「――分からんではない。人類とこの力を野放しにしたら、破壊と闘争の末に宇宙は自滅するのかも知れん。じゃが、妾はゆく。宿命など関係無い。自分の力で、新たな明日を勝ち取るために」
 妖帝が叫ぶ。エヌが再び雷を放ち、妖帝は鎖を引き千切ってそれをかわし、足元にいた灯を蹴り飛ばす。「あばよ、ダチ公」玲が銃撃しながら踏み込み、妖帝が拳を打ち下ろし、玲を地面深く沈める。その隙に凛が空高く跳んだ。妖帝が気づく。しかしエヌがさらに雷を放ち、迎撃を阻害する。
「チェェェェェェェェェェェェェェェストォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!」
《朱焔》が妖帝の脳天を叩き割る。そのまま回転するような勢いで凛は妖帝の身体を真っ二つに断ち斬り、そのまま地面に落ちる。
 妖帝の身体から辺りを文字通りの血の海にするほどの鮮血が迸り、その身体がゆっくりと地に倒れーー全てが、終わった。


「……」
 元旦。自室のベッドで目を醒ましたタヱ子は、無言で自分の頬をつねった。「……」痛い。もそもそとベッドから抜け出し、キッチンで水をグラスに一杯汲む。飲む。――頭がしゃっきりしてきた。夢か。初夢だ。すごい初夢だ。いいのか悪いのか分からないけど。
「……まあ、いいか」
 回れ右してベッドに入り――二度寝した。

「……」
 元旦。自室のベッドで目を醒ました凛は、「……なんや、夢かいな。縁起でもないで」言いながらサイドに置いていた時計を取り上げ、見る。
「ってちょ、完全に遅刻やん!」
 正月から寝坊をやらかした。慌てて飛び起き、学校へ急ぐ。
 ――どこの学校だか知らないが、正月はだいたい休みではないだろうか。

「……フッ……生き残っちまったか。また死に場所探さねえとな……」
 元旦。自室のベッドで目を醒ましたエイジは、そんなことを言いながらいい笑顔で上体を起こした。周囲を見回す。「……じゃねえわ! 夢かよ!」
「……よし、酒かっくらって寝よ。いやー、にしてもなんかすげえ得した気分だな。タダで大作映画一本見たような……続編とか見れねえかな」
「ふぉっふぉっふぉ。やるとしたら来年の初夢じゃな。いや、四月バカの可能性が微粒子レベルで存在するかも、の」
 そんな声が聞こえ、エイジは振り返った。誰もいない。
「……寝ぼけてんだな、俺」
 言いながら、酒を取りにのそのそとベッドから抜け出した。

「……おや、面白い夢を見させて頂きましたねぇ。これが初夢ならば、今年の運は中々よさそうです」
 元旦。自室のベッドで目を醒ましたエヌは、言いながらなんか満足げに起床した。「しかし、あの妖帝イゼルローン。存外につまらない相手でしたねえ。もっとのたうつような悲鳴とか、魂の慟哭とかを聞かせて頂きたかったものです」
「……まあ、それはリアルに取っておきましょうか。『本物』はきっと、それはそれは悲痛な狂詩曲を聞かせてくれるでしょうから……」
 言って、エヌはくつくつと笑った。

「……ハッ!?」
 元旦。自室のベッドで目を醒ました玲は、猛然と飛び起きて周囲を見回した。
「夢!? 何故じゃあ! この超絶可愛い妾の戦いっぷりが! 再放送なしの幻のフィルムじゃと!? ええい、もう1回やらせい!」
「心配せんでも、何度でもやる羽目になるじゃろう。お前さんが本当に、真理の力《オリジン・ロー》に見込まれた者ならば。……なんての。ふぉっふぉっふぉ」
 声が聞こえ、玲は振り返った。誰もいない。「……そ」
「そーゆーことじゃのーて! 今! もっかいやらせい! ていうか録画させい! DVDに焼けい! 焼けええええええい!」
 叫びながら、ベッドでじたばたする。――もちろん誰も応えなかった。

「……」
 元旦。妙な初夢で目を醒ました灯は、思わず《F.i.V.E.》本部地下区画に来ていた。――もちろん、結界弾などない。それどころか、夢で見たのとは地下の構造がだいぶ違い、位置の特定もままならなかった。妖帝の攻撃で半壊していたせいもあるのだろうが。
 諦めて、灯は地上に出る。元旦の朝は快晴だった。初夢のせいで初日の出は見逃したが、冬の澄んだ空気の上で、太陽が燦々と輝いている。敷地外に出ると、眼下に五麟市の街並みが見下ろせた。「……妖帝イゼルローン」小声で呟く。
「――」
 今年の抱負を宣言し、灯は静かに家路に着いた。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし




 
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