【古妖狩人】彼らはいたって普通の人達
【古妖狩人】彼らはいたって普通の人達



 薄暗い廃墟。
 街から離れた山中にある、破棄された社員寮に憤怒者達の姿はあった。別に彼らは常日頃から、「憤怒者でござい」と旗を掲げている訳ではない。彼らはそれぞれに「普通の生活」を持っている。ただ普通の人々と違うのは、その内側に理不尽とすら言える覚者への憎悪をたぎらせていること。
 それが「憤怒者(アウトレイジ)」である。
「いやー、アイツら捕まえる手際慣れてましたねー」
「何かコツでもあるんですかね?」
「いえ、普段から釣りを趣味にしているだけですよ」
「釣りかぁ。子供が産まれてからやらなくなったなぁ」
 ただの世間話にしか聞こえない会話だが、狂気に満ちた会話であった。
「たすけて、ままー!」
「うるせぇぞ、この化け物が!」
 先ほどまで談笑を交わしていた男達が、一変怒りを露わにして近くにあった水槽を蹴り飛ばす。
 水槽の中には魚の下半身を持つ小さな子供達の姿があった。
「まったく、一丁前に人間の言葉喋って不気味な奴らですよ」
「肉食えば不老不死になれるって聞いたけど、どうなんですかねー?」
「戦闘に使えなければ、実験に使えるんじゃないでしょうか」
 彼らの中に矛盾は無い。
 表に戻れば普通の人生を持ち、裏には人外への尽きせぬ憤懣を抱えている。
 それが憤怒者と言う存在なのだ。


「皆、聞いてくれ! 事件なんだ!」
 集まった覚者達に早速いつものように告げる久方・相馬(nCL2000004)。
「ああ、『力』を持つものでないと勝てそうにない。みんなの力が必要なんだ。みんなも、『古妖狩人』の話は知っているよな?」
 何人かの覚者が頷く。
 ここ最近、憤怒者が古妖を狩る事件が起きている。彼らは捕らえた古妖を覚者を襲わせるよう調教し、戦力にしており、FIVEはそれを止めるべく戦ってきた。
「何度かの戦いで情報を掴んで、本拠地へ古妖を運ぶための中継地点が1つ明らかになったんだ」
 いよいよ『古妖狩人』に反撃を行うことが出来るということだ。
 場所はとある企業が破棄した社員寮。本拠地の情報は得られないだろうが、中継地点を減らしていくことで『古妖狩人』の戦力は縮小することだろう。
 また、拠点には幼い人魚の少女達が捕えられている。彼女らを救い出すことも、古妖との関係を悪化させないために重要な点である。
 説明を終えると、相馬は覚者達を送り出す。
「俺は知らせることしかできないけど、皆を信じてる。頼んだぜ!」


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:KSK
■成功条件
1.中継地点の制圧
2.古妖の保護
3.なし
皆さん、こんばんは。
どこにでもいる、KSK(けー・えす・けー)です。
今回は憤怒者と戦っていただきたいと思います。

●戦場
 山中にある廃棄された社員寮になります。
 時刻は自由に指定していただいて構いません。プレイングで指定してください。
 指定が無ければ夕方以降になります。
 足場に問題はありませんが、夜以降の場合は灯りが大きく制限されます。

 作戦としては「正面からの戦闘」と「隠密による不意打ち」の2つの選択肢があります。
 「正面からの戦闘」を行う場合、場にいる憤怒者と一度に戦うことになります。敵は重武装なのである程度の実力と作戦を必要とします。
 「隠密による不意打ち」を行う場合、隠密に成功すれば半分ずつと戦うことが可能です。また、捕えられた古妖を保護することも出来ます。ただし、「監視カメラ」「草の中の鳴子」といった警備を掻い潜る必要があります。

●憤怒者
 憤怒者組織『古妖狩人』に属する憤怒者達です。老若男女、それぞれ揃っています。
 戦闘できるメンバーが5人以下になると、古妖を連れて逃亡しようとします。
 いずれも自分達の行動に一切の疑問を持っておらず、説得は聞き入れません。
 ・近接型
  近接戦闘を得意とする憤怒者です。6人います。
  能力は下記。
  1.ナイフ 物近単 出血、毒
  2.ピストル 物遠単
 ・遠距離型
  遠距離闘を得意とする憤怒者です。6人います。
  能力は下記。
  1.ナイフ 物近単 出血、毒
  2.機関銃 物遠列
 ・特殊型
  特殊な武装を持つ憤怒者です。4人います。
  能力は下記。
  1.手りゅう弾 物遠敵全 溜め1
  2.毒ガス 特遠敵全 毒、痺れ、ダメージ0
  3.ピストル 物遠単

●古妖
 ・人魚の子供達
 人間の上半身と魚の下半身を持つ古妖。5体いて、水槽の中にいます。
 まだ子供であるため、およそ戦闘力はありません。
 その肉を喰えば不老不死が得られるなどと言われていますが、この子らに関してそんなことはないです。
 水から離れれば、2~3時間程で死んでしまいます。水槽を用意することは可能です。
 また、首に発信器を仕込んだ首輪を付けられています。

●重要な備考
 この依頼の成功は、憤怒者組織『古妖狩人』の本拠地へのダメージとなります。
 具体的には古妖狩人との決戦時に出てくる憤怒者数や敵古妖数が、成功数に応じて減少します。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(0モルげっと♪)
相談日数
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
7/8
公開日
2015年12月12日

■メイン参加者 7人■



 空は秋らしく青く澄み渡っていた。その下にあるものに、大した差は無いはずだ。だが、それでもそこに線を引こうとする者達がいる。
 古妖狩人、それは己のエゴのために古妖の平和を脅かす者達の名だ。
「普通の人は罪なき命を笑いながら踏み躙ったりはしないわ。そんな事が出来る彼らは人の皮を被ったクズよ」
 日光が木々に遮られて陰る森の中で、春野・桜(CL2000257)は穏やかに笑っていた。
 しかし、だが美しい唇から紡がれる言葉は狂気の断片だ。
 桜は茂る木々から憤怒者の仕掛けた罠の位置を探る。敵との戦いにおいて偵察を行うのは至極真っ当な行動であるが、彼女の内側の怒りを思えばそうとも言えない。尽きせぬ怒りを胸に秘めながら、冷静に偵察を行う姿は、まさしく狂気の為せる業だった。
「ここが古妖狩人の拠点のひとつですか……。地道にこういった拠点を無くす事が第一歩ですね」
 離宮院・太郎丸(CL2000131)は慎重に敵拠点の様子を伺う。
 古妖狩人はそう簡単に尻尾を掴ませてはくれない連中だ。中間拠点はいくつも明らかになっているが、本拠地はまだ分からない。
 だが、そこで太郎丸はへこたれない。
 下手に焦っては憤怒者達の思うつぼ。少しでも着実に進んでいけば、敵だっていつかはほころびを見せる。そういった意味で、この年若い少年は強い意志の持ち主であった。
 そこにてってと走りながら戻ってきたのは野武・七雅(CL2001141)だ。そばには草木の幻影を纏っていた『レヴナント』是枝・真(CL2001105)の姿もある。
 真が姿を隠し動いていた甲斐も有り、既にある程度の監視機器は無力化に成功したようだ。
 一緒に行動していた七雅は、気合も十分に息巻いている。
「人魚さんかわいそうなの。助けてあげてパパとママのとろこにかえしてあげたいの」
 まだ幼い彼女にとって、この場に囚われている古妖達のことは他人事に思えないのだろう。
 真も同じようにこの事件を解決しようという向きはあるが、少々趣が異なる。一見何の感情も浮かんでいないように見える瞳の奥底に映るのは、憤怒者への憎しみ。かつて家族を憤怒者に奪われて以来、彼女の心には氷のように、張りついてはがれない感情が残っている。
(彼らの中に、非道な行為を行っているという意識はないのでしょうね。だって、相手は人間じゃないから。だから、何をしても心など痛まない)
 真の分析は恐らく正しい。
 夢見から憤怒者個々人のプロフィールを聞かされても、そこに自分達の行動への迷いというものは感じられなかった。
 それを思い出し、真は自嘲気味に笑う。
(はは、奇遇……いや、ある意味で必然か。私も、憤怒者など人間だとは思っていない。憤怒者相手に何をしようと、一切心は痛まない。ムシケラのように、潰してやる)
 暗く冷たい決意を確かにしていると、『月々紅花』環・大和(CL2000477)を始めとして、偵察のために分散していた他の覚者達も続々と合流してくる。
「このタイミングならカメラに映らずに移動できるわ」
 大和の読み通り、出入口近辺は特にカメラが多数存在した。そして同時に、動きにもパターンは存在した。その常人を遥かに超えた超視力を以って、彼女はそれを見抜いた。
 元の警備措置よりも厳重になっているが、中継基地でしかない以上限界もある。監視機器の無力化に時間は割くことになったが、結果として首尾は上々といった所だ。
「これ以上時間をかけるのも危険ね。そろそろ突入しましょう」
「不意打ちを成功させて人魚さんたちを絶対助けるの!」
 大和の言葉に七雅も気合を入れる。
 他の覚者達も頷き合い、突入を開始した。
 目指す先は憤怒者の拠点として使用される廃棄された社員寮だ。身を潜め、覚者達は敵地へと歩を進める。
「さてさて、教育に行きますか」
 へらへら笑いながら深緋・幽霊男(CL2001229)は敵の拠点を見上げる。
 その言葉尻から彼女の真意を推し量るのは難しい。極めて粗野で享楽的な性格の持ち主で、何より気まぐれな人間だからだ。
 ただ、周囲への警戒を怠らないその姿から、事件の解決に当たっての意志は感じられる。何より、その気配は完璧に殺されており、覚者でもなければ彼女の存在を感じ取ることは出来ないだろう。昼間だから普通よりも気付かれる可能性は高いにもかかわらず、だ。
「よし、後は最後のカメラを越えるだけ。覚醒爆光で変身っ……はお預けですねっ。隠密ですし」
 拠点の入り口を前にして、『独善者』月歌・浅葱(CL2000915)は深呼吸をする。
 無鉄砲に思える少女だが、別に四六時中思い付きのままに行動する訳ではない。今回のような場合には、きちんと状況判断だって出来る。ここまでだって、きちんと守護使役の力を発揮しているのだ。
 何故ならここには、虐げられる弱きものがいるのだから。
「天が知る地が知る人知れずっ。妖助けのお時間ですっ。たすけを求める声があるなら応えましょうかっ!」
 浅葱の合図を受け、覚者達は一斉に拠点に向かって駆け出した。


 拠点の中に潜入した覚者達は、先に古妖達の捕えられている部屋を確保することに成功した。真正面からの戦闘であった場合、戦闘中に古妖の確保が求められる困難な戦場になったであろう。
「人魚さんたち、なつねたちが来たから大丈夫なの。もうちょっとがまんしてほしいの!」
 水槽の中にいる幼い人魚たちに向かって、安心させるように七雅は微笑む。
 そこに鳴り響く銃声。憤怒者達もさすがに覚者の侵入に気付き、攻撃を開始してきたのだ。しかし、そんなもので七雅は怯んだりしない。古妖を奪い返そうとする憤怒者達に対して、『容赦しないもんモード』の顔を向ける。
「パパとママの所に返してあげてほしいの。なつねだって親と引き離されたらつらいの。人も古妖も一緒だもん!」
 目尻に涙を浮かべて七雅は叫んだ。
 しかし、人外への憎悪を隠そうともしない憤怒者達は、覚者達へ容赦のない攻撃を浴びせてくる。その弾丸の雨の中で、真は氷のように冷たい笑みを浮かべた。
「会話が通じるとは思っていない。そして会話で済ませる気などない。やった事の報いを、その身で受け止めろ」
 真は地を這うような姿勢から狭い屋内を器用に跳躍し、目にもとまらぬ速度で斬撃を放つ。英霊の力を解放した彼女の振るう双刃は、ひたすら『疾く』憤怒者達を切り刻んでいく。
「お前たちにとっては、これが正義なのだろう。そして正しいことをしたあとは、家に帰り、家族と共に穏やかな日常を過ごすのだろう。……本当に、気持ちの悪いヤツらだ」
 唾棄するように言い捨てると、既に倒れた憤怒者すら巻き込んで刃を振るう。偶然ではない。明確な殺意を以って、真は殺しに行っている。
 それは桜も同じこと。
「クズはクズらしくお掃除して片付けなくちゃいけないわよね。
 だから殺しましょう殺しましょう。罪なき子が命を奪われる前に、母が悲しみに暮れる前に。
 ゴミクズは死ね、私達の為にも死ね」
 狂気と殺意の入り混じった詩(うた)を歌い、桜は包丁と斧で憤怒者を叩き込む。返り血を浴びようと、自身が傷付こうと知ったことではないといった風情だ。そして、刃物を介して丁寧に木行の力で生み出した毒を流し込んでいく。
「クズはクズにゴミはゴミに物言わぬモノへとしてあげる、皆殺しよ。死んでよ、ねぇ、敵よ、敵でしょう? ねぇ敵でしょ、あなた。 その命置いてってよ」
 昼ということもあり完全な奇襲にはならなかったものの、覚者達は拠点にいる憤怒者達の半数を撃破する。元より情報を期待していた訳でもないが、最初に襲ってきた連中は物言わぬ肉塊と化しており、ここからの情報は手に入りそうにない。
「殺しても良いが、後が面倒だと思うけどな。社会的に抹殺された方が良いとは思うけど」
 返り血を拭いながら幽霊男は億劫げに肩を竦める。別に憤怒者の命を惜しんでいる訳ではない。プロパガンダに使われたり禍根を生むという面倒を知っているだけだ。むしろ、恐怖で縛るには一族郎党皆殺しにする位の真似は必要だと考えている辺り、元隔者なだけはあると言った所だ。
「覚者どもだ! 生かして返すな!」
「化け物風情が、ただで済むと思うなよ」
 呼吸を整える覚者達の所に再び憤怒者達が姿を現す。どうやら休む暇を与えてくれないようだ。
「人ってそんなに偉いものなの? 人でないなら命を道具のように利用できるものかしら」
 さらなる敵に対して、大和は術符を展開させて迎え撃つ。長期戦になることはある程度想定の内だ。素早く仲間に対して気力の補充を行うと、自身が壁になるように前に出る。単に覚者と憤怒者の戦いとしてここに来た訳ではない。何よりも、ここから退けない理由があるのだ。
「何より、あえて力の弱い子供を誘拐するなんて許せないわ」
 珍しく怒気の籠った声で憤怒者達に立ち向かう大和。怒りに任せて手をかけないだけの分別を残しえてはいるが、だからと言って彼らをただ許すつもりも無い。
 最初のグループと戦った時もそうだったが、憤怒者達の攻撃は連携の取れたものだ。毒ガスで動きを封じ、物量で覚者達を押し潰そうとして来る。一撃一撃は小さくとも、それが重なれば容易に立て直すことは出来ない。
「死ね、この悪魔どもめ!」
「くっ……思ったよりも敵の攻撃が激しいですね。ボクも一旦回復にまわりますっ」
 それでも、覚者達は寸での所で踏みとどまる。
 太郎丸が仲間達の回復に回ったためだ。覚者だって持久戦の構えはある。それに連携を取っての戦闘は、憤怒者だけのものではないのだ。
「まぁ、正義なんてモンは貫くもんだし。他人の正義なんてモノは唾棄すべき悪でしかない」
 機関銃を構え、幽霊男はへらりと笑う。
「で、まぁ、お互いぶつかり合ったらどうなるか。答えは簡単。弱い方が淘汰される」
 そして、毒ガスで支援を行う憤怒者に攻撃を叩き込んだ。相手が連携を取るなら、こちらも連携で対抗。その上で相手の連携を崩してやれば、状況は逆転する理屈だ。
「ふっ、使えるものは利用する、人らしく正しいと認めましょうっ。そして外を思い憎悪を隠せるなら、それもまた正しい義でしょうっ!」
 連携を乱した憤怒者達に向かって、浅葱は強く拳を握りしめ、語る。
 彼女の正義観は変わったものだ。極めて独善的な正義ではあるが、他者の正義を蔑ろにはしない。そういう意味では、憤怒者達の方がよほど独善的であると言えよう。
「ならばっ、後はこの場に相応しく拳で語るだけですねっ」
 義があるのなら、矛盾する正義もまた良しとする。
 だからこそ、浅葱は独善的に自身の正義を貫く。高速の拳で、目の前に立ち塞がる正義に立ち向かっていくだけだ。
 真と桜は相変わらず躊躇の無い動きで憤怒者達を追い詰めて行く。
 苦し紛れに放つ憤怒者の攻撃では最早状況を変えることは出来ない。七雅がすぐさま癒しの霧で、怪我を治してしまうからだ。
 そして何より、回復に回っていた太郎丸と大和が、攻勢に回ってしまった。
「手加減するつもりだけれども、内心イライラしているから大怪我したらごめんなさい」
 落ちた雷が憤怒者達の身を焼く。死なない程度の手加減、と言った所だ。どちらの方が辛いか、と言われたらいっそトドメを刺された方がマシなのかも知れない。
「降参した方がいーんじゃないか? 聞くかは知らないけど」
 言われた憤怒者は冷静になって周りを見渡す。残っていた内の2人は、せめてもと古妖の確保に向かい……見事返り討ちに合っていた。他の2人は算を乱して逃走を始めていた。
 そして、彼が思い切りを付けるには、少々時間が少なかった。
 憤怒者の足元で振りかぶる浅葱。
 徒手なのは友好の証などではない。彼女が正義を貫く手段は『これ』だからだ。
 戦闘の最中にあっても白さを保つマフラーがたなびき、鈍い音が戦場に響き渡った。そして、崩れ落ちる憤怒者に背を向けると、浅葱は満足げな笑みを浮かべた。
「ふっ、一件落着ですねっ」


「これで、君たちは自由だよっ」
 幼い古妖達を水槽から掬い上げ、太郎丸は笑顔を向ける。
 古妖達も自分達が助かったことを悟ったのだろう。笑って喜ぶもの、安心して涙を流すものなど様々だ。ただ、その誰もが覚者達への感謝の言葉を口にしている。
「移動の間は我慢して頂戴」
「もうすぐパパとママの所に帰れるよ。もうちょっと我慢してね」
 大和は申し訳なさそうな顔で古妖達に謝ると、抱きかかえて安全な場所への移動を開始する。七雅はと言うと、わがことのように喜んでいる。首輪に付けられた発信器を外さないことには古妖達も安全を確保できないし、待機しているFIVEのスタッフたちの所にはもっと広い水槽もある。
 既にこの拠点に覚者達を邪魔するものはいない。大半の構成員が死亡し、逃げた憤怒者達が戻ってくることはあるまい。生き残ったもの達には、それぞれ罰が下ることだろう。
 もっとも、一番重い罰を受けたのは、最後に浅葱の『蹴り』を受けた憤怒者だろうが。急所に一打を受けたせいで、さっきから脂汗を浮かべて一言も話そうとしない。それは決して、情報を漏らさない憤怒者の矜持などではないはずだ。
 一方、殴った当の浅葱はと言うと、気楽なものだ。
「水槽は持って歩きますっ。えんやこら運んでお家に返してあげましょうっ」
 正義を為してすっかり得意げな表情をしている。
 古妖達を還せば、古妖狩人達との本格的な決戦も近い。だから、覚者達はそれぞれの正義と、幼い古妖を救った誇りを胸に、五麟市へと凱旋する。
 そんな覚者達を、夕日は照らすのだった。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし




 
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