砂薙ぎの怪
砂薙ぎの怪


●砂薙ぎの怪
「ここに妖が……?」
 水瀬 珠姫(nCL2000070)は人気のない砂浜を一望できる防波堤の上に立ち、周囲を見渡していた。シーズンオフという事もあり、見える範囲に人の姿はない。
 今回珠姫がここに来たのは調査の為だ。F.i.V.E.は夢見の情報を元に様々な驚異へと対処するが、その中でも調査が必要だと判断された時は入念な調査が行われるのである。
 何故珠姫が選ばれたのかと言えば、ここのすぐ近くに彼女の実家がある為。つまり里帰りのついでであった。
「立っているといつの間にか足元を薙がれる砂浜、か……全く、ウチの周りでよくも暴れてくれたな」
 そう言いながら珠姫は防波堤から砂浜に飛び降りる。随分と軽率な行動だが、多少体が頑丈なだけの中学生に慎重さを求める方が間違っている。
 周囲を見渡しながら数歩足を進め、人気はなくも見晴らしの良い砂浜を探る。しかし特に変わった所は無い。打ち寄せる波の音、そして時折通る車の音だけが続いている。
 ―――否。
「あだっ!?」
 不意に足元に痛みが走る。思わず下を見れば、何の変哲もない砂浜……ではない。僅かに「何かが動いた」のが視界の隅に見えた。
「やばっ……!」
 珠姫は転がるように防波堤へ上る階段へ辿り着き、もう一度砂浜を見る。その次の瞬間、「ヂッ!」と防波堤のコンクリートの一部が切り落とされる。
 鮃、鰈、いや鱏か? 砂で出来た平べったいナニカが、猛スピードで砂浜を滑るように動いている。瞬き一つする間にソレは姿を消してしまった。
「……成程、こりゃ解んないな」
 珠姫は顔を引き攣らせ、ダメージを負った足の確認をする。そこには決して浅くない裂創が刻まれており、覚者でなければ大惨事は免れないだろう。
 早急に対処する必要がある。そう考えた珠姫は手早く傷の処置を始めるのだった。

●砂浜の砂塊
「―――以上が今回の第一次報告になります」
 所変わって会議室。久方真由美(nCL2000003)が珠姫から送られた報告書の要約を読み上げる。珠姫への調査依頼は本人の希望によって討伐の参加へとシフトしていた。
「F.i.V.E.がつけたコードネームは『砂薙ぎ』。文字通り砂に紛れて足元を薙いで来る妖です。猛スピードと保護色の組み合わせは中々に強力との事です」
 とは言えそれはあくまで一対一での場合だ。頭数が揃えば問題なく対処できる妖である。
「それと本来であれば人目のない時間に倒したいのですが、夜だとまず間違いなく発見できないので已む無くこの時間になりました。できるだけ人目につかないよう気を付けて下さい」


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:杉浦則博
■成功条件
1.砂薙ぎを倒す
2.なし
3.なし
●場面
・シーズンオフで人気のない昼間の砂浜。非常に見通しが良く、誰かに見られる可能性は非常に高い。あと寒い。

●目標
 砂薙ぎ:妖・自然系・ランク2:砂に紛れて足元を薙いで来る妖。非常に素早く、地表スレスレを移動しているので攻撃が当て辛い。気が付いたら後ろに回り込まれているかも……。
・足薙ぎ:A物近列:高速で移動して足元を薙いで来る。[減速]

●参加NPC
・水瀬 珠姫(nCL2000070):乗り掛かった舟と言う事で最後まで関わる事を決めた。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(0モルげっと♪)
相談日数
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/6
公開日
2015年12月01日

■メイン参加者 6人■

『探偵見習い』
賀茂・奏空(CL2000955)
『イージス』
暁 幸村(CL2001217)
『アイティオトミア』
氷門・有為(CL2000042)


 通り抜ける風が寒さを運ぶ時節、人気のない海岸を一望できる場所に七つの影があった。
「道路の封鎖、終わったぞ……全く世話焼かせるぜ」
「ありがとうございます。これで人目も気にしなくて良いですね」
 寺田 護(CL2001171)が道路の封鎖に使ったカラーコーンの残りを下ろしながら溜息をつき、それに水瀬 珠姫(nCL2000070)が答えた。
「この時期に見つけてくださって助かりましたね、海水浴シーズンだったら惨事になっていた所です」
「完全に不可視ってわけじゃねーけど、地中を移動されるってのはなかなか厄介だな」
 氷門・有為(CL2000042) と暁 幸村(CL2001217)が防波堤の上から波以外に動くものの無い海岸を眺める。
 しかし、幸村の予想は「土の心」を使って海岸の様子をチェックした賀茂 たまき(CL2000994) によって否定された。
「いえ、地表を滑るように移動してるみたいです。ただ、そのスピードが尋常じゃありません……」
「成程、通りで鳴子はすぐに切り落とされて松明も無視された訳だ」
「……ちゃんと空き缶と棒は拾って捨てて下さいね」
「解ってるっつーの」
 護が事前調査と称して空き缶を引き摺ったり火をつけた棒を投げたりしていたが、海岸を汚してはいけません。幸村と有為はJCに絡まれている護をスルーして装備の再確認を行っていた。
「せっかく実家に里帰りしたんでしょ? ゆっくりしていけば良かったのに」
「掃除ぐらいしかする事無いし……今、あそこ誰も住んでないから」
 そんな中で工藤・奏空(CL2000955)が珠姫に言うが、その返答で周囲の空気が凍り付く。本人もあっけらかんと返しているが、こういう話題は得てして本人以外が反応に困ってしまうものだ。
 覚者達は何となく気まずい雰囲気のまま、ゾロゾロと砂浜へと降り立つ。そこで渡慶次・駆(CL2000350)が指示を出そうと口を開いた。
「それじゃあ複数の班に分かれて、背中あわせになって不意打ちを防ぎつつ―――」
「っ! 来ます!」
 しかし、妖はそんな時間は与えない。たまきが土の心を発動させていなければ不意打ちを喰らっていただろう。
 そして戦端は唐突に開かれるのだった。


「つっ!?」
 真っ先に攻められたのは正面、有為からだった。Ξ式弾斧「オルペウス」を装備して守りを固めてある筈の足に衝撃が走る。その音も凄まじく、まるで金属同士が勢いよくぶつかったような音が響いた。
「出来る限り、皆さんのお役に立てる様に、私は頑張りますね!」
 覚者側でも最初に反応できたのは探知を行っていたたまきだった。錬覇法にて英霊の力を引き出し、自身の強化を図る。
「くらえ、召雷!」
 次に動いたのは奏空。有為に攻撃を行ったであろう辺りに雷を落とす。仮に直撃弾を外しても天行壱式「召雷」ならば横に広がる雷に当たる可能性は高い。
 すぐに行動に移したのが功を奏したのか、奏空が落とした雷は砂薙ぎに直撃する。と、確かに砂浜の砂とは違う何かが動いているのが見えた。
「攻撃の機会も出てきたときに限られるってのを踏まえると、もぐらたたきみたいなもんか……」
 奏空の攻撃を見て幸村がポツリと零す。そんな幸村が次に取った手段は土行壱式「蔵王」だった。周囲の砂が固められ、土の鎧が出来上がる。
「珠姫ちゃん! 回復お願い!」
「了解っ!」
 奏空の言葉に共に後衛に立っている珠姫が答えた。珠姫は水行壱式「癒しの滴」を使い有為の体力を回復させるが、元々速度特化なので大した効果は無かったりする。
「気合い入れてさっさと終わらせようぜ」
 一塊になっている一団から離れているのは護と駆だ。その一人である護は天行壱式「演舞・清風」にて全員を強化する。
「そっちには見えるか? 大体でいい、細かく教えてくれ!」
「どっちだよ!?」
 そしてもう一方である駆は守護使役による「ふわふわ」で両脚を砂浜から離し、塊になっている集団を挟んだ向こうに居る護に声を掛けていた。
 砂薙ぎは兎に角速い。ならば左右や後ろから攻撃してくる筈だと警戒に回っているのである。
「正体に関しても気にならなくはないですが……食用ではないですし、左向きか右向きか位の違いでしょう」
 砂薙ぎに攻撃されてスピードを大きく下げた有為が火行壱式「醒の炎」でその一部を取り戻す。そのついでと言うには大きいが、攻撃力も底上げされていた。

「がっ!? 糞、飛んでても駄目か!」
 次に砂薙ぎが狙ったのは単独で動いている内の一人、即ち護だった。そして響いた音に、先程の有為への攻撃が一度に二発放たれていた事に気が付く。とてつもないスピードであった。
「俺だって速さは負けない!」
 奏空は再び召雷を放つ。流石に多少離れた所に居る護の元への精密な攻撃は出来ないのか、先程のように直撃弾とはいかなかったが当てる事自体は出来たようだ。
「癒しの滴っ!」
 奏空に続くように珠姫が護の回復に移る。しかし、遠い事もあってか回復量は微々たるものだった。
「下手に追うな! 集中して次の攻撃を確実に当てろ!」
「陣形を崩さないよう、背中合わせのままですよ」
「はいっ!」
「解った!」
 駆、有為、たまき、幸村は護の元へ駆け寄りたいのをグっと堪え、次の自身の攻撃を当てる事に集中する。
 本来であれば囲んで叩くという作戦だったが、集まった覚者達の中でも最速である奏空を遥かに上回るスピードを持つ砂薙ぎを捕まえるのはまず不可能であった。
「お返しだっ!」
 その護はと言えば、足に力を籠めた状態で勢いよく着地して砂浜にクレーターを作り出していた。飛行能力を活かした垂直落下型キックである。
 そしてその籠められた因子の力が半端ではない。ただの蹴り一発で奏空の召雷二発分に迫る威力となっていた。

「くっ、また……!」
 砂薙ぎは再び有為へ襲い掛かる。集中した際に速度の低下は解消していたがまたも強烈な衝撃が走り、足に力が入らなくなってしまう。
「ごめん氣力切れた! あと回復任せる!」
 それに続いて珠姫が三度癒しの滴を使おうとしたが、生憎と氣力切れであった。仕方なく集中に移るが、少し早過ぎやしないだろうか?
「厄介な敵だけど、移動してるのが分れば……!」
 奏空は特に問題なく三度目の召雷を放つ。経験の差がこういう所で出てくるのだろう。平たく言ってしまえばレベルの差である。
「これで少しでも砂薙ぎさんのスピードを抑える事が出来れば……!」
 たまきが奏空に続いて土行壱式「無頼」を砂薙ぎへ繰り出した。その踏み込みは砂浜を揺らし、術符を握り込んだ拳から放たれたプレッシャーが砂薙ぎの動きを阻害していた。
「チッ、水を撒く暇すらねぇな……!」
「今の時期の海なんて寒くて来るもんじゃねえな、風が痛え」
 駆と護が更に集中を重ねていく。若干雑念が入っている気がするが、下手に遠距離攻撃を重ねるよりも接近時の一撃に賭けているようだ。
「蹴り飛ばします!」
 有為は砂薙ぎの接近に合わせて疾風斬りを放つ。集中した成果なのか、その一撃は確実に砂薙ぎの体の一部を削り取っていた。
「回復するぞ!」
 珠姫から回復役を引き継いだ幸村が有為へ木行壱式「樹の雫」をかける。ただでさえ防御を固めた体勢に回復役の充実、鉄壁の布陣であった。

「ふんっ!」
 次に狙ったのは一団の向かって左側面。そこには中衛の幸村と後衛の珠姫が居たが、幸村は圧倒的な防御力で砂薙ぎの攻撃を完全にガードしてしまっていた。
 先程蔵王を使っていたが、恐らくその必要も無かったであろう。幸村が前に出てガードしていれば誰も攻撃を喰らわずに終える事も可能だった筈だ。
「そこだっ!」
 他の面々が各々の事情で遠距離攻撃が出来ない中、奏空だけはコンスタントに召雷でダメージを稼いでいく。
 無論、全員が全員遠距離攻撃が出来ない訳では無い。しかし作戦伝達が不十分、更にそれが正面から覆される等のショックから立ち直れていないのだ。
「シィッ!」
 珠姫の拳が地表を舐める。足元程度ならばともかく、地面に穴を開ける勢いで攻撃しなければいけないせいか不格好な攻撃になってしまった。
「やれやれ、アテが外れちまったな」
「後ろ、邪魔するぜ……どの辺りに居るかで良い。居場所を見つけたら教えてくれ」
 フワフワと浮かぶ護と駆の二人が移動して背中合わせになる。二人のB.O.T.とエアブリットで攻撃し続ければ既に終わっていた可能性もあるのだが、何故それをしないのか……それは、他の誰にも解らない。
「これ以上誰も傷つかないと良いのですが…」
 たまきは前衛を担う有為に土行壱式「蒼鋼壁」をかける。既に二度狙われている有為がまた狙われないとも限らない。防御を固めておくべきだと判断したのだった。
「樹の雫!」
 幸村は残り体力の一番少ない珠姫へ術式を飛ばす。幸村自身も攻撃を喰らっていたが、全て防ぎ切っておりダメージは無い。負ける要素が見当たらなかった。
「実は生物系じゃなかったんだとでも言われない限りは、そこまで驚けないですよね」
「え、最初から自然系って……あれ? 間違えた?」
 有為が蹴りかかりながら漏らした呟きに珠姫が反応するが、間違えているのは有為の方である。砂薙ぎは全身砂で出来た自然系の妖だ。

「落ちろぉっ!」
 幾度目かの奏空の雷が砂浜に落ちる。ここまで来れば流石に他の面々にも疑問が浮かぶ頃だ。何故、と。その疑念は心を、技のキレを失わせていく。
「きゃっ!?」
「このっ!」
 瞬時に姿を眩ませた砂薙ぎは次の瞬間には向かって右、たまきと奏空の側でその凶刃を振るっていた。更に打ち所が悪く、二人は自身の体が重くなったような感覚さえ覚えてしまう。
「これでラスト! 受け取れ!」
 幸村は三度目の回復を有為に飛ばす。これで幸村も回復する氣力は無くなってしまった。その表情は苦々しく歪んでいる。
「コンクリートを切り裂くなんて、並みの一般人だったら脛から下が切り落とされるぞ」
「あいつはどうやって地中からこちらを視ているんだろうな。超能力か?」
 背中合わせになってそんな軽い言葉を吐く駆と護に一塊になっている面々が反応する。しかし今集中すべきは目の前の敵である。
「注意深く見て、来る方向とタイミングさえ合わせられれば……はぁっ!」
 有為の疾風斬りが奔り、砂薙ぎの体を切り裂いていく。真芯を捉えた一撃が砂薙ぎに深々と裂創を刻み付けた。
「吹き……飛べぇっ!」
 普段は大人しいたまきが吠える。放たれたのは土行壱式「隆槍」、槍のように砂が盛り上がり―――ひらり、と砂薙ぎは身を翻してしまう。
「そんな……!」
 集中はしていた。しかし、疑念の種はそれを千々に乱してしまっていたのだ。

「くっ!」
 砂薙ぎはその驚異的なスピードで防波堤を駆け登り、そのままその側に居た珠姫と奏空を切り裂いた。
 半ば予想できていた事であったので対処は出来たが、仮に防波堤に背を付けるように戦っていれば今頃全員頭と体が離れ離れになっていただろう。
「シャオラァッ!」
 反撃に繰り出された珠姫の拳が防波堤のコンクリートごと砂薙ぎを砕く。が、砂薙ぎの体はほぼ全てが砂だ。ただの打撃では効果が薄い。
「体が、重い……!」
 奏空がやっとの事で天行壱式「演舞・舞衣」を発動させる。予想以上に砂薙ぎの手数と速度低下の発動率が高い。最初に使っておくべきだったかと溜息をつくほどである。
「落ち着いて、落ち着いて……そこ!」
 すぅ、ふぅ、とたまきは深呼吸を繰り返す。確かに砂薙ぎは速い。しかし決して攻撃の当たらない相手でもないのだ。
 そして再び放たれた隆槍は見事防波堤上の砂薙ぎを貫いた。人間であれば胴体に風穴が空いている事だろう。
「子供はそこで休んでな」
 やっとの事で動いた護は水行壱式「癒しの霧」で全員一斉に回復を行う。多少離れていたせいか効果は薄かったが、元々の回復量の高さに物を言わせて奏空と珠姫以外の全員の体力を全回復させていた。
「だりゃあっ!」
 幸村が防波堤ごと壊す勢いで砂薙ぎに殴り掛かる。その手には盾を持っており、そこから導き出される答えは一つ。盾で殴る、である。
 とは言え防御力に特化した幸村は当てるので精一杯で、その攻撃は効果的とは言えない物だった。
「囲んじまえば楽なんだが……」
「無理です」
 駆の言葉に次の攻撃の為に集中し始めた有為が答える。正面から移動をブロックしようにも横から大きく回り込まれ、動き自体も覚者達より速い。何より地面スレスレを動いているモノをどうやって止めろというのか。

「痛っ!」
 砂薙ぎは味を占めたのか、一度防波堤の上から姿を消すと再び同じ場所に現れた。そして奏空と珠姫に攻撃を加える。
「それで隠れてるつもりなら残念だね。お見通しなんだよ!」
 奏空は飛苦無に黄色いリボンを括り付けて砂薙ぎへ飛ばす。砂薙ぎ自体の動きが見えなくとも目印を付ければ何とかなるだろう、という発想からの攻撃だった。
「えっ!?」
 しかし、それは徒労に終わる。砂薙ぎは砂の妖、分類は自然系である。ズルリと体の形を変え、体に刺さった苦無を取り出してしまったのだ。
「心配いらねぇよ、全力でやりな」
 そこに護の癒しの霧が届き、奏空と珠姫の体力が全回復する。
「ここからじゃ届かないか……なら、次で決める!」
 有為は集中力を一段階引き上げる。近距離でしか攻撃できないのなら、当てられる時に確実に当てる。それが大切だと信じて。
「カァァッ!」
 珠姫の気合いと共に拳が振られ、人差し指と小指の第二関節が砂薙ぎを掠める。その軌道をなぞる様にパクリと切れ目が開いた。
「いきます! 隆槍!」
 そこにたまきの攻撃が続く。高い攻撃力に裏打ちされた強力な一撃が砂薙ぎの体を貫いた。が、それでもまだ砂薙ぎは止まらない。
「そこだっ! ……チッ、外したか!」
 ならばと幸村がラージシールドを叩き付ける。が、それはするりと避けられてしまった。

「ぐ……いきます、疾風斬り!」
 三度砂薙ぎは有為の前に現れる。ならば迷う事は無く、その攻撃を蒼鋼壁の助けもあって耐え切ったオルペウスの推進機構に火が灯る。
 繰り出された一撃は砂薙ぎを両断した。しかし、妖ならば両断された程度では止まらない。そこに畳みかける事こそが肝要だ。
「食らえっ! 召雷!」
 有為が飛び退いた所に奏空の術式が落とされる。雷が直撃した砂薙ぎは動きが完全に止まり、狙うのに最適な状態となった。
「奏空さん! 続きます!」
 その真下から飛び出る砂の槍、隆槍だ。本来はこの攻撃で押し上げて攻撃するつもりだったが、そこまでこの槍は鈍くない。そしてその槍に貫かれた今なら、避けられる心配も無い。
「おらぁっ!」
 地面から突き出たままの隆槍ごと幸村がラージシールドで殴り付ける。
 ……残ったのは、ざらりと崩れた砂の山だけであった。


「ふぅー、終わった終わった」
「流石に寒いな……」
 そう言って砂浜に降り立ち、ブルリと身を震わせる護と駆。息を荒げ、汗を流す面々とは対照的な姿である。
「さてと、封鎖していた道路を開放してこないといけませんね」
「ああ、それなら俺が遠い方に行ってくるぜ」
 そして乱れた呼吸を整えた学生の覚者達はテキパキと帰り支度を始めていた。有為と幸村が道路の封鎖を解除しに海岸から早々に立ち去る。
「うーん……エイさんって、食べられるのでしょうか…?」
「いや、コレ砂だから……」
 砂薙ぎの残骸をつまんで首を傾げるたまきに奏空は苦笑を返す。事前情報を勘違いしていたせいで酷い目に逢ったが、これもまた経験かと思ったのである。
「余裕があったらウチでご飯でも、って思ったけどあんまり余裕無さそうだね。さっさと帰ろっか」


■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし




 
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