妖瞬殺して海で遊ぼうぜ!
●海はいいよな! まずいラーメンこなっぽい焼きそばとけたかき氷! そして水着! 妖!? 割っとけ割っとけぃ!
一般的な海水浴場の隅っこの隅っこのそのまた隅っこで、スイカにおっさんの顔がついた40センチくらいの妖が震えていた。
なんか砂のくぼみにはまって動けなくなっていた。
……以上である!
●夏の海と言えば何を思い浮かべる? 水着美女をナンパするかい? サーフボードではしゃぐかい? 妖!? そんなもん砕いとけ!
ところかわってF.i.V.Eの会議室。
「妖は人類の敵。倒すべき存在なんだ」
夢見三兄弟で一番立場が低そうな長男こと久方相馬くんが、浮き輪を装着して言った。
ゴーグルを頭にくっつけて言った。
水鉄砲を手に言った。
ビーチサンダルで言った。
海パン姿で、言った。
「けど俺は夢見……! 戦いには……参加できねえんだ……!」
なんか、すっごい悔しそうだった。
なんでも、海水浴場の隅っこにごくごく弱っちい妖が出たが、あんまりにも弱すぎて身動きすらとれなくなっているらしいので、近づいた子犬が噛まれたりしないようにガッとやっといてほしいという依頼である。
モチのロンロン、倒した後は自由時間。遊べや遊べのサマーインザシーである。
「せめて、これを俺だと思って持って行ってくれ……頼んだぜ、みんな!」
相馬はスイカを手渡し、ぐっと拳を握った。
一般的な海水浴場の隅っこの隅っこのそのまた隅っこで、スイカにおっさんの顔がついた40センチくらいの妖が震えていた。
なんか砂のくぼみにはまって動けなくなっていた。
……以上である!
●夏の海と言えば何を思い浮かべる? 水着美女をナンパするかい? サーフボードではしゃぐかい? 妖!? そんなもん砕いとけ!
ところかわってF.i.V.Eの会議室。
「妖は人類の敵。倒すべき存在なんだ」
夢見三兄弟で一番立場が低そうな長男こと久方相馬くんが、浮き輪を装着して言った。
ゴーグルを頭にくっつけて言った。
水鉄砲を手に言った。
ビーチサンダルで言った。
海パン姿で、言った。
「けど俺は夢見……! 戦いには……参加できねえんだ……!」
なんか、すっごい悔しそうだった。
なんでも、海水浴場の隅っこにごくごく弱っちい妖が出たが、あんまりにも弱すぎて身動きすらとれなくなっているらしいので、近づいた子犬が噛まれたりしないようにガッとやっといてほしいという依頼である。
モチのロンロン、倒した後は自由時間。遊べや遊べのサマーインザシーである。
「せめて、これを俺だと思って持って行ってくれ……頼んだぜ、みんな!」
相馬はスイカを手渡し、ぐっと拳を握った。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.妖を瞬殺する
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
このシナリオは敵を瞬殺したあとリプレイをまるまる使って遊びまくるシナリオとなってございます
いーやっほーう! 海だー!
●スイカ
妖(ランク1・生物系)です。囲んで棒で殴ることで瞬殺できます。
戦闘プレイング? 一行でいいよ一行で!
なお、スイカおっさんは食えないし倒したとたん消えて無くなるので、相馬さんのかたみを代わりに食べましょう。
●海いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!
皆さんが想像するごく一般的な海水浴場です。
パラソルやシートのレンタル可。海の家あり。小道具は持ち寄り。よほどおかしいことをしない限りは大体は自由です。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:0枚
金:0枚 銀:0枚 銅:0枚
相談日数
7日
7日
参加費
0LP[+予約0LP]
0LP[+予約0LP]
参加人数
8/8
8/8
公開日
2015年08月16日
2015年08月16日
■メイン参加者 8人■

●スイカ妖があらわれギャアアアアアアアアア!?
「ククク俺様がスイギャアアアアアアアアアアアア!?」
スイカ妖は『くれないのそら』七墜 昨良(CL2000077)のアイアンテイルと『今日も元気だド変態』明智 珠輝(CL2000634)の上段斜斬りによってしんだ。登場から五秒の寿命だった。字数でいうと百文字だった。
「く……失礼ながら私、ふふ……興奮してしまいまし――ふはははははは!」
刀を振り下ろし顔を赤い液体(スイカ汁)だらけにした珠輝がえらく楽しそう(たのし、そう?)に笑った。片顔を隠した前髪を指先で撫でる。
「七墜さん、あなたの尻尾さばきも美しい。私の胸にグッときましたよ。グッとね、もしくはビクンビクンとね」
名目して自らの胸、主に乳輪を中指でなで続ける珠輝。
「まあ、褒め言葉だと受け取っておくよ」
昨良は彼の変態高位(タイプミスしたけど特に間違っていないので修正しません)に軽く引いている様子だった。頬についたスイカ汁をぬぐって振り返る。
すると。
「天知る地知るちるちるみ(ピー)る! 秘密結社白椿リーダー神楽坂椿花! この世の悪を倒すためここに――」
『天衣無縫』神楽坂 椿花(CL2000059)が天空を指さして、両目をカッと開いた。瞳の中で星がまたたいた。あと背景になんかピンク色の雲みたいのがよぎった。あとどこからともなく歓声が聞こえた。あとなんだっけ、あとあと……。
「参上したんだぞって妖は? もう倒したの……? ほんとに……?」
初の見せ場が流されたんだぞ、と言いながら目を曇らせる椿花。
その横では『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)が『今からすごくかっこうよく名乗り上げるんだろうな』のポーズで固まっていた。
「俺の初めて、こんなんでいいのかな……」
「初めて。ふふ、興奮する響きです」
「先に倒したやつは黙ってろ!」
ビーチボールを投げつける奏空。あうんといって転倒する珠輝。
「……はっ!」
それまで軽く状況に呑まれていた、ないしはギアを入れ損ねていた『猪突猛進無鉄砲』戎 斑鳩(CL2000377)は我に返って眼鏡をくいっと直した。
「妖倒したってことは、もう遊んでええんよね? よっしゃ突撃や! ウチ水着持ってきたんよ!」
きびすを返し、更衣室へとダッシュする斑鳩。
数秒してからダッシュで戻ってくると、まぶしい白ビキニを晒して砂浜をジャンプした。
「「うーみー!」」
いつの間にか一緒に並んで砂浜ジャンプをかますエスティア・ディオネウス(CL2000452)。
エスティアは白黒ストライプの水着で空中をくるんと回転すると、軽く滑空して海へとダイブした。
一緒に抱えていたイルカの浮き具に跨がると、後から落ちてきた麦わら帽子をサッと被った。
「このミッション、必ずこなしてみせるよ!」
「その台詞言うんは千文字遅い」
イルカにつかまって顔を出す斑鳩。
見上げてみると、チリチリ熱い陽光が水面をまぶしく照らしていた。
乱反射に混ざるように、身体が波に揺れている。
――一方そのころ。
『フランス製日本仕上げ』オリヴィエ・L・巴(CL2000292)は人の頭んところにレアリテ(植物系使役)をくっつけてなにかよくわからないものをちゅるちゅるやっていた。
「あなたは何もみてないよー。おにーさんたちはさっきスイカ割りの練習をしてたのさー」
「アーソウラシイッスワー」
サングラスにスキンヘッドの巨漢というモブにしては妙に存在感のある男が謎の納得をしながら帰って行く。
オリヴィエは息をついて髪をかき上げた。
「瞬殺できるとはいえ、妖が出たなんて知れたら海水浴が台無しになっちゃうからね。これも配慮だよ」
「配慮か」
中指で眼鏡のブリッジを押し上げる椿 雪丸(CL2000404)。
「通常の妖事件なら、俺たちの所属さえ秘匿していればいいというのに……わざわざ場の空気まで考えなくてはならないのは面倒だな」
「そう言わない。海、綺麗でしょ? 汚したらもったいないじゃ無い」
「まあ……」
腕組みをして海を見やる雪丸。
「もしかして海、はじめて?」
「初めてなわけねえだろ! 見たことくらいあるわ!」
「においをかいだことはないって顔かな?」
微笑むオリヴィエ。雪丸は無言で顔をそらした。
●海だあああああああああああああああ!
お察しのこととは思うが、今回ほぼ全編にわたって海水浴である。
「さーて、スイカ割りの本番だよー!」
ソーマ先輩の代わりに持ってきたスイカをシートの上にセットして、椿花の顔に布を巻き付ける。
高速で回転させたあと、全員で周りを取り囲んだ。
不敵に笑う椿花。
「スイカ割りは去年やったんだぞ。だからやり方はわかってるんだぞ!」
「そっか。スイカの位置はわかる?」
奏空が顔を覗き込んでみると、椿花は急にカタカタしはじめた。
「……あれ、どこ?」
「ふ、ふふ。これはヤりがいがある。この状況、まさに――あうん!?」
珠輝が『幼女の目隠しプレイ』に近い単語を言う前に、昨良が先読みして尻尾回し蹴りを叩き込んだ。もんどりうって倒れる珠輝。
昨良は腕組み姿勢のまま向き直った。
「ナビゲートはみんなにしてもらえばいいよ。それじゃあ、スタートだ」
「え、えっと……」
「こっちはこっち! ウチが手を鳴らしてる方にくるんよ!」
斑鳩がぴょんぴょん跳ねながら椿花を誘導……する横で、雪丸が鞄をあさりながら片手間に言った。
「そのまま行くとお前のカバンに当たるぞ」
「えっ!? それはやだ、大事なものあるし……じゃあどこ? スイカどこ……?」
エスティアがフラフラ歩く椿花の周囲をぐるぐる回りはじめる。
「違うそっちじゃないよ! 東を向いて!」
「ひがし!? みぎ!?」
「スプーン持つほうの手!」
「プリンの時!? スパゲッティの時!?」
「――の逆!」
「どっち!?」
「3時間進んで右に6フィートだよ!」
「1フィートってなんせんちだったっけ……わかんない……わかんないよ……」
「ごめん18尺だった」
「しゃく!? 何の単位!?」
「2ヤード!」
「やーど!? うっ、うう……椿花、いまどこにいるの……? ほんとに海にいるの……?」
「そうだよマドモアゼル。君は海に、そして愛の中にいるのさ」
耳元で囁き始めるオリヴィエ。
「さあおいでオレの腕の中――あっだめ、髪つまないでっ」
「誘導にみせかけてくどくのはよせ」
雪丸がオリヴィエの後ろ髪を掴んで引っ張っていった。
一方残された椿花はというと、周囲をスターンスターンと周回するエスティアと奏空と斑鳩のトリオに囲まれていた。
あとかたわらで『考えなさすぎて刺さる人』のポーズで珠輝が脱いでいた。ポーズが分からないひとはググろう。
なお、スイカ割りは椿花が泣いたので中断。
次鋒の昨良が連続バク転からのロンダートからの大上段尻尾落としという『お前絶対見えてるだろ』的な動きでスイカを粉砕したのでソッコーお開きとなった。
というわけで。次はビーチバレーである。
「切ったというか……割ったスイカはちゃんと食べないとな」
雪丸は南天丸に皮ばっかりの部分なんかをぽいぽい食べさせつつ、ビーチバレーの様子を眺めていた。
「ところで」
適当な大きさのスイカを皿に並べつつ、雪丸は顔を上げた。
「俺はあらゆる食材をその善し悪しにかかわらず無味にするという呪いがかかっているんだが」
「なんだい、ファンタジックな呪いだねえ」
ビーチチェアで足を組んでいた昨良が、頬杖をついて首を傾げた。
雪丸の弁はなにも嘘や妄言なんかじゃあなく、万糧厨子スキルによる徹底的な消毒を経てひたすら無味無毒な食い物になるんだそうな。味や見た目は当人のリアル料理スキルに依存する因子術なので、たぶん……その……ひとがら、かな?
「うん。なら、こういうのはどうかな」
昨良は大きな鞄と保冷箱を開くと、かき氷器と氷ブロックを取り出した。フラッペメーカーではなくガチのやつである。日本にはもうあまり残っていない手回し式の氷砕き機だが、昨良の家にはあるようだ。
手早くセットして素早くかき氷を作る昨良。
ついでにシロップのボトルを適当に並べると、カップを雪丸に突きだした。
「好きなようにシロップをかけていいよ」
「……本当にいいのか?」
「いいとも」
雪丸は頷き、そして目の前にあるシロップのうち――全部を掴んで一気にぶっかけた。
たちまち黒い液体に沈むかき氷。
それをどこか満足げに見下ろすと、眼鏡を中指で押し上げた。
「俺は必ずこうする。人によっては怒られる食べ方だが……」
「いや、私はむしろそれが見たかった」
昨良は片眉を上げると、デジカメでその様子をパシャリとやった。
その一方。
「いっくよー! そーぉれ!」
普通じゃちょっとありえない高さまでジャンプしたエスティアが、空中のビーチボールを全力で叩き込んだ。
高速回転をかけて飛んできたボールに、めざとく滑り込んでトスをあげる斑鳩。
「今や!」
「よーし!」
奏空は勢いよくジャンプすると、相手のコートめがけてボールをスマッシュ。
「神楽坂君あぶない!」
オリヴィエが全身にイケメン粒子(アニメでよく見る背景がキラキラするやつ)を纏ってジャンプ。飛んできたボールを顔面で受け止め、そして墜落した。
「うわー! オリヴィエェー! そんな、椿花を庇って! 目を開けるんだぞ! 傷は浅いぞ!」
椿花はぐったりしたオリヴィエに駆け寄ると、頭を抱きかかえて半泣き状態だった。
横を転がっていくボール。
「え、これって……」
斑鳩が審判役の珠輝に振り返ると、珠輝は……。
「ふ、若いですね。当方興奮しましたので、オリヴィエさんに10ポイント!」
「判定基準おかしくない!?」
「失敬な。私は老若男女生きとし生ける全ての人々がストライクゾーンですよ!」
「変態!」
「ののしるのはやめてください興奮してしまいます」
「変態変態変態ー!」
一方オリヴィエは。
「うーん、トレビアン」
椿花に頭を抱きかかえられながら親指を立てていた。
「アンタもかぁー!」
そいやーと言いながらボールを投げつける斑鳩。
奏空は跳ね返ってきたボールをキャッチして、指の上でくるくる回し始めた。
「それにしても、俺たちがスポーツするとどうやってもエクストリームスポーツみたいになっちゃうね」
「覚醒しないだけまだマシだよ。あれ疲れるからねー。身体がっていうか魂が」
これでも普通に楽しんでるんだよーと言いながら、奏空から回転するボールを受け取った。
そこへ昨良がかき氷を人数分持って現われた。
「お疲れ様。休憩しようじゃないか」
「おお! かき氷! 俺イチゴシロッ――んんー!」
「ああーっ!」
早速かっ込んだ奏空とエスティアが頭を抱えてのけぞった。
フラッペに慣れ親しんでいると、マジなかき氷にヤられることがある。
最近の若者がリアルに引っかかる食の三大トラップ。わさび、うめぼし、かきごおりである。
そんな様子をカメラでぱしゃり。
「でもなんか、夏って感じしてくるなー! やろうと思ってもあんまりできないもんね、こういう楽しみ方って」
氷に負けるかとばかりにがつがつかっ込み直す奏空。
その後ろでは珠輝が『ンンアアー!』とか言いながら『考えないで寝ちゃう人』のポーズをとっていた。くわしくはぐぐれ。
そしてその様子をデジカメでパシャる一同。
「後で写真ちょうだいね。思い出思い出」
スイカとかき氷を交互に食うというなんだか贅沢なことをしながら言うエスティア。
オリヴィエも雪丸からスイカを受け取って囓ると、たわむれる皆を眺めて瞑目した。
「うーん、バライソ」
「満足そうでなによりだ」
●田舎に帰るとスイカとキュウリがボーリングできるくらい常備されてるんだけどなにあれ栽培してるの?
雪丸は髪をサッと払うと、またも中指で眼鏡のブリッジを押した。
「海のお土産といえば伝統かつ鉄板のものがある。そう、土産話という――」
「貝殻あったー!」
綺麗な貝殻を拾って掲げる椿花。
「これをおみやげにするんだぞ。あと思い出に、砂を小瓶に入れて……」
「海の砂ってやつだね。あれ? ところで星の砂って実際なんなんだっけ」
貝殻を拾い集めてみる奏空。斑鳩もそれに付き合って小瓶に貝殻や砂を入れてみた。
コルクをして振ってみると、なんだかえもいえぬ音がする。
「それこそ貝殻の破片やなかった? 日本だと……南西のほうでとれるんやったかな。沖縄とか」
「この小瓶をみるたび、オレたちは思い出すんだね。この潮の香りを」
オリヴィエは同じ小瓶を握って瞑目した。
人の記憶は臭いに強く起因するという。家に帰って何気なく開けた旅行鞄の中身から現地の臭いがしてふと思い出がよみがえるなんてことも、よくある話だ。
オリヴィエも薄めを開き、そした愛おしそうに言った。
「そして水着美女たちの姿も」
「台無しだな」
「何を言います。ふふ、大事なことでしょう」
珠輝が『考えないで開脚する人』のポーズで言った。
今更言うが、彼のコスチュームはケツたくましき赤ふんどしである。
……今までのポーズ、もういちど回想してみようか?
「元気なことは素晴らしい。素晴らしく……興奮します、ふ、ふふっふ!」
ポーズ固定のままニヤリと笑う珠輝に、軽く引く。
昨良はスタンドにカメラを置くと、タイマーのボタンを押した。
「それじゃあみんな、最後の記念といこうか」
寄り集まった彼らの中に加わる昨良。
そしてカメラが。
傾いて倒れた。
かくして。
慌てて飛びつこうとする椿花たちの傾いた集合写真が、デジタルデータの中に残ったという。
夏も折り返し。終わるのもまた、早そうだ。
「ククク俺様がスイギャアアアアアアアアアアアア!?」
スイカ妖は『くれないのそら』七墜 昨良(CL2000077)のアイアンテイルと『今日も元気だド変態』明智 珠輝(CL2000634)の上段斜斬りによってしんだ。登場から五秒の寿命だった。字数でいうと百文字だった。
「く……失礼ながら私、ふふ……興奮してしまいまし――ふはははははは!」
刀を振り下ろし顔を赤い液体(スイカ汁)だらけにした珠輝がえらく楽しそう(たのし、そう?)に笑った。片顔を隠した前髪を指先で撫でる。
「七墜さん、あなたの尻尾さばきも美しい。私の胸にグッときましたよ。グッとね、もしくはビクンビクンとね」
名目して自らの胸、主に乳輪を中指でなで続ける珠輝。
「まあ、褒め言葉だと受け取っておくよ」
昨良は彼の変態高位(タイプミスしたけど特に間違っていないので修正しません)に軽く引いている様子だった。頬についたスイカ汁をぬぐって振り返る。
すると。
「天知る地知るちるちるみ(ピー)る! 秘密結社白椿リーダー神楽坂椿花! この世の悪を倒すためここに――」
『天衣無縫』神楽坂 椿花(CL2000059)が天空を指さして、両目をカッと開いた。瞳の中で星がまたたいた。あと背景になんかピンク色の雲みたいのがよぎった。あとどこからともなく歓声が聞こえた。あとなんだっけ、あとあと……。
「参上したんだぞって妖は? もう倒したの……? ほんとに……?」
初の見せ場が流されたんだぞ、と言いながら目を曇らせる椿花。
その横では『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)が『今からすごくかっこうよく名乗り上げるんだろうな』のポーズで固まっていた。
「俺の初めて、こんなんでいいのかな……」
「初めて。ふふ、興奮する響きです」
「先に倒したやつは黙ってろ!」
ビーチボールを投げつける奏空。あうんといって転倒する珠輝。
「……はっ!」
それまで軽く状況に呑まれていた、ないしはギアを入れ損ねていた『猪突猛進無鉄砲』戎 斑鳩(CL2000377)は我に返って眼鏡をくいっと直した。
「妖倒したってことは、もう遊んでええんよね? よっしゃ突撃や! ウチ水着持ってきたんよ!」
きびすを返し、更衣室へとダッシュする斑鳩。
数秒してからダッシュで戻ってくると、まぶしい白ビキニを晒して砂浜をジャンプした。
「「うーみー!」」
いつの間にか一緒に並んで砂浜ジャンプをかますエスティア・ディオネウス(CL2000452)。
エスティアは白黒ストライプの水着で空中をくるんと回転すると、軽く滑空して海へとダイブした。
一緒に抱えていたイルカの浮き具に跨がると、後から落ちてきた麦わら帽子をサッと被った。
「このミッション、必ずこなしてみせるよ!」
「その台詞言うんは千文字遅い」
イルカにつかまって顔を出す斑鳩。
見上げてみると、チリチリ熱い陽光が水面をまぶしく照らしていた。
乱反射に混ざるように、身体が波に揺れている。
――一方そのころ。
『フランス製日本仕上げ』オリヴィエ・L・巴(CL2000292)は人の頭んところにレアリテ(植物系使役)をくっつけてなにかよくわからないものをちゅるちゅるやっていた。
「あなたは何もみてないよー。おにーさんたちはさっきスイカ割りの練習をしてたのさー」
「アーソウラシイッスワー」
サングラスにスキンヘッドの巨漢というモブにしては妙に存在感のある男が謎の納得をしながら帰って行く。
オリヴィエは息をついて髪をかき上げた。
「瞬殺できるとはいえ、妖が出たなんて知れたら海水浴が台無しになっちゃうからね。これも配慮だよ」
「配慮か」
中指で眼鏡のブリッジを押し上げる椿 雪丸(CL2000404)。
「通常の妖事件なら、俺たちの所属さえ秘匿していればいいというのに……わざわざ場の空気まで考えなくてはならないのは面倒だな」
「そう言わない。海、綺麗でしょ? 汚したらもったいないじゃ無い」
「まあ……」
腕組みをして海を見やる雪丸。
「もしかして海、はじめて?」
「初めてなわけねえだろ! 見たことくらいあるわ!」
「においをかいだことはないって顔かな?」
微笑むオリヴィエ。雪丸は無言で顔をそらした。
●海だあああああああああああああああ!
お察しのこととは思うが、今回ほぼ全編にわたって海水浴である。
「さーて、スイカ割りの本番だよー!」
ソーマ先輩の代わりに持ってきたスイカをシートの上にセットして、椿花の顔に布を巻き付ける。
高速で回転させたあと、全員で周りを取り囲んだ。
不敵に笑う椿花。
「スイカ割りは去年やったんだぞ。だからやり方はわかってるんだぞ!」
「そっか。スイカの位置はわかる?」
奏空が顔を覗き込んでみると、椿花は急にカタカタしはじめた。
「……あれ、どこ?」
「ふ、ふふ。これはヤりがいがある。この状況、まさに――あうん!?」
珠輝が『幼女の目隠しプレイ』に近い単語を言う前に、昨良が先読みして尻尾回し蹴りを叩き込んだ。もんどりうって倒れる珠輝。
昨良は腕組み姿勢のまま向き直った。
「ナビゲートはみんなにしてもらえばいいよ。それじゃあ、スタートだ」
「え、えっと……」
「こっちはこっち! ウチが手を鳴らしてる方にくるんよ!」
斑鳩がぴょんぴょん跳ねながら椿花を誘導……する横で、雪丸が鞄をあさりながら片手間に言った。
「そのまま行くとお前のカバンに当たるぞ」
「えっ!? それはやだ、大事なものあるし……じゃあどこ? スイカどこ……?」
エスティアがフラフラ歩く椿花の周囲をぐるぐる回りはじめる。
「違うそっちじゃないよ! 東を向いて!」
「ひがし!? みぎ!?」
「スプーン持つほうの手!」
「プリンの時!? スパゲッティの時!?」
「――の逆!」
「どっち!?」
「3時間進んで右に6フィートだよ!」
「1フィートってなんせんちだったっけ……わかんない……わかんないよ……」
「ごめん18尺だった」
「しゃく!? 何の単位!?」
「2ヤード!」
「やーど!? うっ、うう……椿花、いまどこにいるの……? ほんとに海にいるの……?」
「そうだよマドモアゼル。君は海に、そして愛の中にいるのさ」
耳元で囁き始めるオリヴィエ。
「さあおいでオレの腕の中――あっだめ、髪つまないでっ」
「誘導にみせかけてくどくのはよせ」
雪丸がオリヴィエの後ろ髪を掴んで引っ張っていった。
一方残された椿花はというと、周囲をスターンスターンと周回するエスティアと奏空と斑鳩のトリオに囲まれていた。
あとかたわらで『考えなさすぎて刺さる人』のポーズで珠輝が脱いでいた。ポーズが分からないひとはググろう。
なお、スイカ割りは椿花が泣いたので中断。
次鋒の昨良が連続バク転からのロンダートからの大上段尻尾落としという『お前絶対見えてるだろ』的な動きでスイカを粉砕したのでソッコーお開きとなった。
というわけで。次はビーチバレーである。
「切ったというか……割ったスイカはちゃんと食べないとな」
雪丸は南天丸に皮ばっかりの部分なんかをぽいぽい食べさせつつ、ビーチバレーの様子を眺めていた。
「ところで」
適当な大きさのスイカを皿に並べつつ、雪丸は顔を上げた。
「俺はあらゆる食材をその善し悪しにかかわらず無味にするという呪いがかかっているんだが」
「なんだい、ファンタジックな呪いだねえ」
ビーチチェアで足を組んでいた昨良が、頬杖をついて首を傾げた。
雪丸の弁はなにも嘘や妄言なんかじゃあなく、万糧厨子スキルによる徹底的な消毒を経てひたすら無味無毒な食い物になるんだそうな。味や見た目は当人のリアル料理スキルに依存する因子術なので、たぶん……その……ひとがら、かな?
「うん。なら、こういうのはどうかな」
昨良は大きな鞄と保冷箱を開くと、かき氷器と氷ブロックを取り出した。フラッペメーカーではなくガチのやつである。日本にはもうあまり残っていない手回し式の氷砕き機だが、昨良の家にはあるようだ。
手早くセットして素早くかき氷を作る昨良。
ついでにシロップのボトルを適当に並べると、カップを雪丸に突きだした。
「好きなようにシロップをかけていいよ」
「……本当にいいのか?」
「いいとも」
雪丸は頷き、そして目の前にあるシロップのうち――全部を掴んで一気にぶっかけた。
たちまち黒い液体に沈むかき氷。
それをどこか満足げに見下ろすと、眼鏡を中指で押し上げた。
「俺は必ずこうする。人によっては怒られる食べ方だが……」
「いや、私はむしろそれが見たかった」
昨良は片眉を上げると、デジカメでその様子をパシャリとやった。
その一方。
「いっくよー! そーぉれ!」
普通じゃちょっとありえない高さまでジャンプしたエスティアが、空中のビーチボールを全力で叩き込んだ。
高速回転をかけて飛んできたボールに、めざとく滑り込んでトスをあげる斑鳩。
「今や!」
「よーし!」
奏空は勢いよくジャンプすると、相手のコートめがけてボールをスマッシュ。
「神楽坂君あぶない!」
オリヴィエが全身にイケメン粒子(アニメでよく見る背景がキラキラするやつ)を纏ってジャンプ。飛んできたボールを顔面で受け止め、そして墜落した。
「うわー! オリヴィエェー! そんな、椿花を庇って! 目を開けるんだぞ! 傷は浅いぞ!」
椿花はぐったりしたオリヴィエに駆け寄ると、頭を抱きかかえて半泣き状態だった。
横を転がっていくボール。
「え、これって……」
斑鳩が審判役の珠輝に振り返ると、珠輝は……。
「ふ、若いですね。当方興奮しましたので、オリヴィエさんに10ポイント!」
「判定基準おかしくない!?」
「失敬な。私は老若男女生きとし生ける全ての人々がストライクゾーンですよ!」
「変態!」
「ののしるのはやめてください興奮してしまいます」
「変態変態変態ー!」
一方オリヴィエは。
「うーん、トレビアン」
椿花に頭を抱きかかえられながら親指を立てていた。
「アンタもかぁー!」
そいやーと言いながらボールを投げつける斑鳩。
奏空は跳ね返ってきたボールをキャッチして、指の上でくるくる回し始めた。
「それにしても、俺たちがスポーツするとどうやってもエクストリームスポーツみたいになっちゃうね」
「覚醒しないだけまだマシだよ。あれ疲れるからねー。身体がっていうか魂が」
これでも普通に楽しんでるんだよーと言いながら、奏空から回転するボールを受け取った。
そこへ昨良がかき氷を人数分持って現われた。
「お疲れ様。休憩しようじゃないか」
「おお! かき氷! 俺イチゴシロッ――んんー!」
「ああーっ!」
早速かっ込んだ奏空とエスティアが頭を抱えてのけぞった。
フラッペに慣れ親しんでいると、マジなかき氷にヤられることがある。
最近の若者がリアルに引っかかる食の三大トラップ。わさび、うめぼし、かきごおりである。
そんな様子をカメラでぱしゃり。
「でもなんか、夏って感じしてくるなー! やろうと思ってもあんまりできないもんね、こういう楽しみ方って」
氷に負けるかとばかりにがつがつかっ込み直す奏空。
その後ろでは珠輝が『ンンアアー!』とか言いながら『考えないで寝ちゃう人』のポーズをとっていた。くわしくはぐぐれ。
そしてその様子をデジカメでパシャる一同。
「後で写真ちょうだいね。思い出思い出」
スイカとかき氷を交互に食うというなんだか贅沢なことをしながら言うエスティア。
オリヴィエも雪丸からスイカを受け取って囓ると、たわむれる皆を眺めて瞑目した。
「うーん、バライソ」
「満足そうでなによりだ」
●田舎に帰るとスイカとキュウリがボーリングできるくらい常備されてるんだけどなにあれ栽培してるの?
雪丸は髪をサッと払うと、またも中指で眼鏡のブリッジを押した。
「海のお土産といえば伝統かつ鉄板のものがある。そう、土産話という――」
「貝殻あったー!」
綺麗な貝殻を拾って掲げる椿花。
「これをおみやげにするんだぞ。あと思い出に、砂を小瓶に入れて……」
「海の砂ってやつだね。あれ? ところで星の砂って実際なんなんだっけ」
貝殻を拾い集めてみる奏空。斑鳩もそれに付き合って小瓶に貝殻や砂を入れてみた。
コルクをして振ってみると、なんだかえもいえぬ音がする。
「それこそ貝殻の破片やなかった? 日本だと……南西のほうでとれるんやったかな。沖縄とか」
「この小瓶をみるたび、オレたちは思い出すんだね。この潮の香りを」
オリヴィエは同じ小瓶を握って瞑目した。
人の記憶は臭いに強く起因するという。家に帰って何気なく開けた旅行鞄の中身から現地の臭いがしてふと思い出がよみがえるなんてことも、よくある話だ。
オリヴィエも薄めを開き、そした愛おしそうに言った。
「そして水着美女たちの姿も」
「台無しだな」
「何を言います。ふふ、大事なことでしょう」
珠輝が『考えないで開脚する人』のポーズで言った。
今更言うが、彼のコスチュームはケツたくましき赤ふんどしである。
……今までのポーズ、もういちど回想してみようか?
「元気なことは素晴らしい。素晴らしく……興奮します、ふ、ふふっふ!」
ポーズ固定のままニヤリと笑う珠輝に、軽く引く。
昨良はスタンドにカメラを置くと、タイマーのボタンを押した。
「それじゃあみんな、最後の記念といこうか」
寄り集まった彼らの中に加わる昨良。
そしてカメラが。
傾いて倒れた。
かくして。
慌てて飛びつこうとする椿花たちの傾いた集合写真が、デジタルデータの中に残ったという。
夏も折り返し。終わるのもまた、早そうだ。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
