<AAA特別訓練>白翼の秩序の剣、ここにあり
<AAA特別訓練>白翼の秩序の剣、ここにあり


●五麟祭の裏側で
「おー。久しぶりに来るけど盛況だなぁ。見ろよ、あそこでプロレスしてるぜ」
「五麟祭って何でもあるんですねー。あ、ケバブ売ってる」
「あっちの射的で古妖のぬいぐるみがあったぞ。塗り壁ゲットだぜ」
 五麟祭。五麟学園の文化祭である。
 そこを歩くのは、五麟学園の卒業生。今日は母校の学園祭に顔を出しに来たのだ。そのついでに恩師に会いに行こう。
 ――という名目で。
 彼らは五麟学園考古学研究所に足を向けていた。

●AAA戦闘部隊
「AAAの戦闘部隊が訓練をつけてくれるそうだ」
 中 恭介(nCL2000002)はレポートを見ながら、集まった覚者達に説明を開始する。数枚束になった紙束から一枚引き抜き、覚者達に見えるように机の上に置く。何かの名簿のようだ。タイトルは『白翼部隊』。
「この前募集した要望案件に『AAAとの合同演習を』を言うのがあってな。防人二等に言って少数だが人を回してもらった。
 FiVEが現状秘している段階なので、おおっぴらに人を呼ぶわけにはいかない。なので五麟学園卒業生が学祭に来るという形で来てもらった」
 それがこの『白翼部隊』である。覚者と一般人の混合チームだが、妖討伐率が高い部隊のようだ。
「リーダーの鳥羽五等が指揮官となり、切り込み隊長の小川上級と防御の要である青野上級を中心としたチームだ。まだ荒があるが、任務達成率は高い。
 向こうにはこちらの事情はある程度話している。訓練だが、対妖部隊として手を抜くつもりはないそうだ」
 一歩間違えれば大怪我になりかねない妖戦。FiVEの覚者が妖に挑むのなら、その厳しさを教えるのも務め、ということだ。
「希望する者がいれば、この書類にサインしてくれ。
 お前たちだって相応に実戦はこなしている。恐れずに戦えば勝機は見えるだろう」
 最後、アドバイスするように恭介が覚者に言葉を放つ。その言葉には、FiVEの覚者の背中を押すような信頼が含まれていた。



■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:難
担当ST:どくどく
■成功条件
1.『白翼部隊』の打破。
2.なし
3.なし
 どくどくです。
 こんな純戦もあります。折角の味方組織なので有効(ネタ)に使わせていただきます。

●敵情報
・白翼部隊
 AAA京都支部の妖討伐チームです。一般人と覚者の混合チームですが、鍛錬と装備などで足らない部分をカバーしています。

『白翼天狗』鳥羽・一成
 覚者。天の翼人。男性三十歳。AAA五等。この部隊のリーダーです。黒の軍配うちわ(術符相当)を持ち、それが天狗の由来になっています。
 後方からの支援がメインです。
「エアブリッド」「纏霧」「演舞・舞衣」「速度強化・壱」等を活性化しています。

『棒銀』小川・誠司
 覚者。火の獣憑(寅)。男性二十一歳。AAA上級。この部隊の切り込み隊長です。仇名の由来は将棋の戦法から。
 ナックルを手にガンガン前に進んでいきます。
「猛の一撃」「炎撃」「火柱」「醒の炎」等を活性化しています。

『八貫の壁』青野・香子
 一般人。女性二十歳。AAA上級。この部隊の防御の要です。八貫(約三〇キロ)の盾を持ち、味方をかばい続けます。
「霞返し」「物防強化・壱」「特防強化・壱」等を活性化しています。

『ウィップ』ベティ・マクドネル
 覚者。木の前世持ち。女性二十四歳。AAA中級。基本攻撃要員ですが、状況によっては回復やバッドステータス振りまき要因になります。鞭を装備。
「錬覇法」「非薬・鈴蘭」「棘一閃」「樹の雫」等を活性化しています。

『不良公務員』出川・浩介
 一般人。男性二九歳。AAA中級。射撃要員です。公的に銃が打てるという理由でAAAに入団しました。非戦闘時は真面目ですが、戦闘になると好戦的になります。
「烈波」「物攻強化・壱」「戦之祝詞」などを活性化しています。

『蛙の子は蛙』江崎・晴香
 覚者。水の変化。女性十八歳。AAA初級。回復要因としてチームに参加しています。覚醒後は一二歳の頃に若返ります。二つ名は覚醒後に装備するカエルパーカーから。
「B.O.T.」「癒しの滴」「癒しの霧」「水衣」等を活性化しています。

●場所情報
 FiVE敷地内にある訓練場。便宜上広さは二〇×二〇メートルとします。明かりや足場などに問題なし。
 戦闘開始時、前衛に『小川』『青野』『マクドネル』が前衛に。中衛に『出川』が。『鳥羽』『江崎』が後衛にいます。
 事前付与はなし。訓練開始の合図とともに行動開始です。

 皆様のプレイングをお待ちしています。

状態
完了
報酬モルコイン
金:1枚 銀:0枚 銅:0枚
(1モルげっと♪)
相談日数
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
公開日
2015年10月29日

■メイン参加者 8人■



「手を抜くつもりはない、か。そんなの、こっちだって同じだ」
『笑顔の約束』六道 瑠璃(CL2000092)が両手に呪符を構えて決意を固める。手を抜いて勝てる相手ではないし、手を抜く理由もない。この戦いの経験は今後瑠璃の戦いに生きてくるだろう。全力で戦い、経験を吸収するのだ。
 意識を集中し、前世との絆を意識する。幻覚にも似た『前』の知識。それが瑠璃の脳に宿る。その知識に従い呪符を構え、稲妻を解き放った。激しい雷撃がAAA前衛の三人を薙ぎ払うように襲い掛かる。
「勝てれば上々、負けても経験は残る。オレは勝つ事よりも、経験を積むことが重要だと思う」
「ええ。実戦経験の豊富なAAA実働部隊との戦闘訓練……とても有り難いですね」
 瑠璃の言葉に『水天』水瀬 冬佳(CL2000762)が頷く。覚醒して変化した銀髪を揺らし、鞘から刀を抜き放つ。今後増えてくるだろう対人戦。その経験が積めるのなら御の字だ。それが経験豊富な相手なら、これを逃す手はない。
 刀を構え、一呼吸。踏み込みと同時に冬佳は刀を振るう。相手の頭からまっすぐ振り下ろす唐竹。まっすぐ振り下ろされる一撃は、しかしそれだけでは終わらない。燕が風を受けて飛ぶように、跳ね上がるような刀の振り上げが小川を襲う。
「それでは――胸をお借りさせていただきます、先輩方」
「卒業生、とはいえ、加減はしません!」
 途切れ途切れに言葉をしゃべる『突撃巫女』神室・祇澄(CL2000017)。相手は五麟学園の卒業生。年齢的には自分と同期の者もいる。少し運命が違えば、彼らと肩を並べて戦っていたのだろうか? ふとそんなことを夢想する。
 唇を引き締め、相手の間合いに入る祇澄。土の源素で自らを強化し、すり足で間合いを一気に詰めた。慣れ親しんだ剣術とは違う間合いだが、それでも鍛錬は裏切らない。いつもよりさらに踏み込んで、土の源素で硬くした拳を叩き込む。
「神室神道流、神室・祇澄。いざ、参ります」
「引退したとはいえ白翼部隊の噂は聞いていた」
 神具を構えて赤坂・仁(CL2000426)が口を開く。仁は元AAAだ。任務による怪我で一時前線から離れ、そして権力争いを避ける形でAAAを辞する。だが古巣の噂は耳に入ってくる。若手のホープである部隊の名を。
 サングラスの位置を直しながら、敵と味方の位置をすべて把握する。頭の中で繰り返されるシミュレート。詰将棋にも似た動きの読みあい。それが見出した攻撃の機を逃すことなく引き金を引き、前衛を一斉掃射する。
「こちらが貴方達の胸を借りる事になりますが、油断しているようなら食わせて頂きます」
「それでは、土行、暦。時任千陽です。よろしくご指導のほどお願いします」
 軍帽の位置をを直しながら『狗吠』時任・千陽(CL2000014)が口を開く。向こうの情報は資料で知っている。ならばこちらの情報も教えなけば不公平だ。まっすぐに一礼する千陽。顔をあげた時には、すでに戦士の顔になっていた。
 手にした銃を相手に向けて、鋭い眼光で相手を睨む千陽。相手の心まで射貫く鋭い金の瞳。銃口と視線からくる圧力。それは生物の本能を脅かす殺気のような鋭い気迫。それが相手の動きを止め、敵突破の糸口を作っていく。
「五麟学園の後輩として、格好の悪いところは見せれませんね」
「それじゃあいくよー」
 戦場には似合わないのんきな声を出す八百万 円(CL2000681)。だが声とは裏腹にその戦意は高い。獣のように身を低くして走り、力自慢の山賊が扱う安いなまくら刀を手に躍り出る。楽しげに、本当に楽しげに戦いに興じる。
 円自身の体を軸にして、刀を振るう。地を這うような一閃で轟音が響き、風が吹く。刃が通り過ぎても回転は止まらず、さらに風が吹き荒れた。刀から伝わる確かな手ごたえを感じながら、円は笑みを浮かべる。のんきな、だけど戦意の高い笑みを。
「たのしいなー。たのしいなー」
「んー。個人的にはいろいろあって、AAAの心象は良くないのですが」
 車いすから立ち上がり橡・槐(CL2000732)がAAAの方を見て言う。過去に槐を襲った事件。それにAAAが関わっていたのだ。まあそのあと散々たかったので、槐の中では許してもいいかな、と思っている。
 敵から距離を取り、戦場を見渡す。白翼部隊のリーダーが放つ霧の術法。それに対抗するように槐も術を行使する。広がる緑の香りが仲間の気力と抵抗力をあげていく。その上で霧に惑わされれば槐自身が回復に回るつもりだ。
「纏霧使い手多いですね。それ程有効ということですか」
「一手で敵全員の戦力を削るわけですからね。集団戦では有効でしょう」
『堕ちた正義』アーレス・ラス・ヴァイス(CL2000217)が槐の問いに答える。対妖戦のような少数相手ならともかく、集団戦ではそれなりに有効な手だろう。白翼部隊の戦術のキモなのだろう。
 心の炎を燃やし、肉体を強化する。向こうは集団戦に長けているのだろうが、それはこちらも同じだ。アーレスは後ろで回復を行っている江崎を見ながら、銃を構える。貫通する一撃。それはAAA隊員三人を巻き込んだ。
「序盤の運びは予定通りですね」
 アーレスの言葉に頷くFiVEの覚者達。彼らの予想通り、青野は小川を庇って戦っている。江崎は水の守りを付与し、マクガレルがFiVE前衛の足を止めるように動いていた。
 だが予測通りの運びが勝利を約束するものではない。相手もこちらの動きに動揺することなく攻めてきている。こちらの動きも想定内ということか。
 FiVEとAAA。互いの刃が交差する。


 AAAの動きは先に述べた通りだ。攻撃の主軸である小川を青野が庇い、マクガレルと出川と共に攻める形だ。後衛の鳥羽と江崎が攻めのサポートをする形を取っている。
 FiVEの覚者は祇澄、円、千陽が前に立ち、その後ろにアーレス、冬佳、槐が。後衛に仁、瑠璃が遠距離から攻める形だ。
「くっ、硬い……とはいえ、八貫の盾だけで、止まると、思わないで!」
「刃も弾丸も術法も。この盾で防いでみせます」
 祇澄は小川を守る青野を主軸に攻めていた。物理的な攻撃を防ぐ盾と思いきや、しっかり術式の対抗もしているようだ。江崎の水の加護も相まって、かなりの硬さになっている。だが、祇澄の一撃はそれを貫き、打撃を与えている。
 雨垂れが岩を砕くように、祇澄は確実に打撃を重ねていく。AAAに彼らのような部隊がいることは、確かに心強くある。だからこそ負けるわけにはいかない。祇澄もまた、不条理な世を憂う覚者の一人なのだから。世界をよくしたいと思うのだから。
「僕はこっちをせめるー」
「オゥ、元気な羊サンデスネー」
 青野に守られていないマクガレルを狙う円。相手に落とされないように心がけて、カウンターを狙う青野を避けた形だ。できるだけ長く立ち続け、AAAにダメージを与え続ける。それが勝つための最善手と信じているから。
 巨大な刀を操りながら、刀の重量に振り回されることのない円。どれだけの鍛錬の積み重ねが、それを可能にしているのだろうか。自然体であること。戦いを楽しんでいること。それが円をここまで成長させていた。
「特技を活かし、連携を活かし、なるほど。白翼部隊、いい部隊です」
「賛辞は素直に受け取ろう。さてこのチームにどう挑む?」
 挑発するような鳥羽の言葉を聞きながら、千陽は息を整える。源素を使えない一般人をチームに組み込み、その特性を生かしている。冷静に戦局を見て、土の守りを味方に付与する千陽。小川の火力が予想以上に高く、下手をすると前衛を突破されかねない。
 常に冷静たれ。軍で習った基本中の基本。冷静さを欠いて命を落とすこともある。訓練だからこそ、千陽はそれを強く意識する。勝ちまでは遠い。だけど道はある。一手ずつ、勝利への道を進んでいこう。その為の防御、その為の攻めだ。
「手数の多さを活かして行きましょうか」
 冬佳が抜き放った刀を下段に向けて、意識を集中する。父から受け継いだ術は妖を滅する剣術。父はそれをAAAに伝えたという。AAA内で発達していった剣術と、冬佳が培ってきた剣術。それは似て非なる者だった。
 刀を握りしめてマクガレルに踏み込み、下から跳ね上げるように刀を振るう。刹那に繰り出される二連撃。毎日どれだけの数、刀を振るってきただろう。積み重ねた鍛錬が冬佳の体を動かす。父のように刀を振るえる日は、まだ遠いけど。
「もしかして鳥羽さん私がたかったこと覚えてます? 忘れてくださいよー」
「あの時まだ新人だったからな。よく覚えてるぞ」
 十年前の事件に花を咲かせる鳥羽と槐。それはそれとして、と冷静になって戦局を見る。鳥羽とマクガレルと小川の攻撃で、麻痺したり燃やされたりしているものが増えていた。仕方ないですね、と肩をすくめる槐。
 呼吸を整え、背筋を正す。槐が意識すれば、自然と風が渦を巻く。源素を使い、大気に含まれる浄化物質風に乗せて解き放った。味方の火傷の傷や味方にまとわりつく霧を払い、仲間を浄化していく。
「鳥羽さんを個人的に警戒したかったのですが……仕方ありませんね」
「隊長は狙わせないぜ!」
 アーレスの一言に応える小川。守りを突破して指揮官を狙うのはさすがに無謀すぎる。後衛から回復を行う江崎を軸に、できるだけ敵を巻き込もうと銃を構える。銃口に集う不可視のエネルギー。それは細く、そして鋭い針のような弾丸。
 乱戦状態の敵味方を頭の中でイメージする。強く、強く。深く、深く。実際には一秒も経っていない深いイメージ時間。そのイメージと現実が交差し、アーレスは引き金を引く。貫通する一撃がAAA覚者達を貫くように襲う。
「常に連携を意識して動かなくちゃ、勝ちは見えてこない。チームで動く以上、当然か」
「はい。それが人が妖に対抗する手段です」
 瑠璃の一言に応える江崎。個として人より強い妖に対抗するには、数で攻めるのが定石。そして数は揃えればいいだけではない。一丸となって協力し、連携を取って攻めること。それが大事なのだ。瑠璃は頷き、唇を引き締める。
 自分にできること。仲間にできること。それを常に頭の中に置いておく。仲間はこう動いてくれると信じて、瑠璃は手の平に雷を集める。まるで波が流れるように、仲間の動きに合わせて瑠璃は源素を解き放つ。雷鳴が響き、AAAを討つ稲妻。
「出し惜しみはしない。最大火力で撃ち続ける」
「気が合うな、元同僚」
 銃を向ける仁に出川が応える。銃を撃つことが目的の出川と、銃を撃つことが手段の仁。共に火力偏重ではあるが、その在り方は大きく違った。任務を遂行するために必要なことを頭の中で組み立てる。
 訓練とはいえ手は抜かない。ここで勝つことが仁の任務だからだ。古巣に対する思いはある。だけど今の仁はFiVEの覚者だ。迷いなど初めから無い。サングラスの奥から白翼部隊の前衛たちを狙い、弾丸を放つ。
「焼き払え!」
 小川を始めとしたAAAはFiVEの猛攻に驚きながら、着実にダメージを重ねていた。その矛先は、
「ボクに来るのー?」
 単体火力の強い円を中心に振るわれていた。それを察してアーレスが円をガードする。
「私も打たれ強い方ではないので無理はしませんよ」
 そして広範囲に攻めてくるAAAの攻めに祇澄と千陽が命数を削る。
「この、程度、で……!」
「貴方がたを突破せずして、日本を護るなどと嘯けやしないじゃないですか!」
 訓練とはいえ、負けられない理由がある。その意思を乗せて立ち上がる祇澄と千陽。
 激しくぶつかり合う覚者達。その戦いは、ゆっくりと終局に向かっていく。


 AAAは決してFiVEの覚者を侮ってはいない。その証左とばかりに、小川と出川の攻撃担当は初手から最大火力を前衛に集中させていた。それだけではない。
「火力不足だ。一気に押すぞ」
「はい!」
 後方の鳥羽と江崎も攻めに加わる。防御面が疎かになることを考慮して、攻めにスイッチしたのだ。
 戦いは壮絶な削りあいになった。最初に倒れたのはAAAのマクガレルだ。それを機にFiVEの覚者の動きは次の目標に動く。
 中衛の出川に狙いを定める瑠璃と円。
 青野が庇う小川を狙う仁、祇澄、冬佳、千陽。
 そして味方を守るべく動いたアーレスと槐。
『……狙いが二分している。これは……』
 味方の狙いを見定めてから動いているアーレスは、その事実に真っ先に気づく。序盤は前衛に集中していた火力が、今度は前衛と中衛に分かれた形だ。
 事、近接戦闘系である円は中衛に一人突出していた。アーレスが守ろうにも届かない位置に。円は江崎と鳥羽の集中砲火を受ける形となった。
「まだまだー」
「少女を集団で狙うとは……事案! 事案発生なのです!」
「やれやれ。無理はしないつもりだったのですか」
 円とアーレスと槐がAAAの攻撃の前に命数を燃やす。FiVEは回復のない構成だ。もってあと数発。それは誰の目にも明らかだった。
「悪いが隙ありだ」
 仁の銃撃で一撃で青野が崩れ落ちる。守りの要を失い、攻めの銀を守る盾がなくなった。突出した小川を攻撃するFiVEの覚者達。
「これが最後の炎だ!」
 横なぎに広がる炎の柱。それが尽きて小川は神具でFiVEの覚者に挑む。源素の力無くとも、その一撃は白翼部隊の攻めの要。防御に長ける槐の守りを貫き、打撃を与えていた。
「あぅー」
「これは訴えてもいいですよね」
「無念。……ですが、仲間はまだ健在です」
 円、槐、千陽がAAAの攻撃を受けて倒れる。だが小川の攻めもここまでだった。
「棒銀とは、頭でっかち、ですね。銀は本来、守りの要、ですよ!」
 祇澄の拳が的確に小川の鳩尾を穿つ。泥に沈むように、ゆっくりと小川の体が崩れ落ちていく。
「……ここまで、です」
「役割は果たしました。あとは任せます」
「流石、と褒めておきましょう。ですが――」
 出川の銃弾と鳥羽の風の弾丸が祇澄とアーレスの意識を刈り取り、冬佳の命数を削りとった。
 だがAAAの猛攻は――
「――ここまでです」
 出川が冬佳の一閃で力尽きれば、FiVEの覚者に対抗するだけの火力は白翼部隊には残されていなかった。
「いい経験になった。それは感謝している」
 AAAに礼を言いながら、瑠璃は稲妻を手のひらに集める。一手間違えれば。あるいは一手間違えなければ。それだけで結果は変わっていただろう。それだけの戦いを経験させてもらい、本当に感謝している。
「この勝利、必ず生かす。本当にありがとう」
 放たれた雷が鳥羽と江崎を襲う。感謝と共に放たれた一撃が、白翼部隊の二人の意識を奪った。


 戦い終わって、
「鳥羽五等、本日はありがとうございました」
「よき訓練になりました」
「今日は五麟祭のついでに知人に会いに来ただけだ。それはそれとして、君たちの活躍に期待しているよ」
 仁と冬佳が鳥羽に一礼する。鳥羽はわざとらしく咳払いをして、そう答えた。あくまでこの訓練は非公式。だから礼を言うことではない。この戦いの返礼は行動で示してほしい。そういうことのようだ。
「攻撃力で劣るからと言って、戦力で劣るわけじゃありません。動きを止めたり燃やしたり出血させたり。用法は様々です」
「なるほど。速度を使って初手に相手を弱体化。その後に仲間が攻める。そういうのもあるんですね」
「火力がないなら私のように、力の強い人をガードするというのもありですね。相手がされて嫌がることをするのは、戦いの基本ですよ」
 瑠璃は江崎と槐は戦い方について話をしていた。ああ来ればこう来る。こうすればああする。そんな論議をしながら、今回の戦いを討議している。
「良い、戦いでした。これからも、共に、高めあっていければ、良いですね」
「そうですね。共に頑張って妖から人々を守っていきましょう」
「妖退治で日本を護るという心意気は、AAAに負けるつもりはありませんよ」
 祇澄と青野と千陽が健闘を称えあいながら、意識を高めあう。FiVEとAAA、組織は違えど妖の脅威から人を守る目的を持つ者同士だ。最も千陽の発言はもう一つ別の組織からくる部分もあるのだが。
(今回は上位組織からの査定……と思っていましたが、どうもこれは)
 アーレスはAAAの様子を見ながら、話を聞いたときに予測した事が外れたのを実感していた。そもそもがAAAはFiVEとは上下関係ではない。本気で査定をするなら、もっと大人数でやってくるだろう。
「あと何回戦やる?」
「時間の許す限り相手してやるぜ!」
 傷が回復した円と小山が再戦していた。ウマが合ったのか、仲良く喧嘩している。剣と拳が何度も交差し、激しい音が響き渡った。

 五麟祭の間に行われたAAAとFiVEの交戦。
 その戦いに憎しみはなく、心身ともに切磋琢磨する戦士達の交流がそこにあった。


■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし



■あとがき■

 どくどくです。
 AAA組の命数復活描写は、尺の都合で省いています。

 チーム戦ということで、結構面倒な構成にしたつもりですが……お見事です。
 訓練ということですので、軽傷重傷はなし。命数は覚悟の証ということで、きっちり削らせていただきました。

 ともあれお疲れ様です。まずは体を癒してください。
 それではまた、五麟市で。




 
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