秋の季語を知ってるかい?
●秋の季語を知ってるかい?
日々市民を脅かす脅威と戦い続けるF.i.V.E.とそれを擁する五麟大学考古学研究所。そこは通う者には当然の事であるが、私立五麟学園の影響を受けている。当然学園が存在する五麟市にも、だ。
今回は、そんなお話。
●「芸術祭」というのがあるんだ
「マジかぁ……」
水瀬 珠姫(nCL2000070)は四つ折りにされ、そこに丸印が書かれた紙を握って項垂れていた。その周りでは厄介事を避けられたと喜び合う少年少女の姿。
五麟市文化芸術祭。毎年五麟市が行っている「文化的・芸術的な作品を制作・展示する」催しである。先に行われた五麟祭が「動」の祭りであるなら「静」の祭りと言うべきか。
そしてこの催しは市政との関係を円滑にしたい五麟学園が推進委員として何人か生贄、もとい手伝いを寄越すのだが、それに珠姫は見事に当選してしまったのだ。
「ま、選ばれたってんならキッチリやりますか」
ぐったりとしていた珠姫だが、そう呟くと話を持って来た教師の言に耳を傾ける。誰かの役に立てる仕事は、珠姫にとってもそう悪い物ではなかったのだった。
日々市民を脅かす脅威と戦い続けるF.i.V.E.とそれを擁する五麟大学考古学研究所。そこは通う者には当然の事であるが、私立五麟学園の影響を受けている。当然学園が存在する五麟市にも、だ。
今回は、そんなお話。
●「芸術祭」というのがあるんだ
「マジかぁ……」
水瀬 珠姫(nCL2000070)は四つ折りにされ、そこに丸印が書かれた紙を握って項垂れていた。その周りでは厄介事を避けられたと喜び合う少年少女の姿。
五麟市文化芸術祭。毎年五麟市が行っている「文化的・芸術的な作品を制作・展示する」催しである。先に行われた五麟祭が「動」の祭りであるなら「静」の祭りと言うべきか。
そしてこの催しは市政との関係を円滑にしたい五麟学園が推進委員として何人か生贄、もとい手伝いを寄越すのだが、それに珠姫は見事に当選してしまったのだ。
「ま、選ばれたってんならキッチリやりますか」
ぐったりとしていた珠姫だが、そう呟くと話を持って来た教師の言に耳を傾ける。誰かの役に立てる仕事は、珠姫にとってもそう悪い物ではなかったのだった。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.「文化的・芸術的な物」を作る
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
制作
・それぞれ好きな物を作って下さい。どんな風に作っているか、どんな物を作っているか、誰と作っているか等がリプレイに反映されます。
・作るのはあくまで「文化的・芸術的な物」ですが、たまに突拍子もない作品が展示される事もあります。中にはプロも褒めるような逸品もあるとか……?
展示
・静かな美術館の一角に展示されます。視聴覚室もあり、ローテーションで映像作品や音楽作品も鑑賞する事が出来ます。
・展示されている作品を見に来る事もできますが、あまりうるさくしていると追い出されてしまうかもしれません。注意してください。
●参加NPC
・水瀬 珠姫(nCL2000070):五麟市文化芸術祭推進委員に選ばれてしまう。どんな作業をしているか、何が出来たかを見て回っています。
●備考
・推進委員として他のキャラの活動に関わりたい方はプレイングに【委員】と付けるようにして下さい。
・展示期間終了後に作品は返却されます。その際「誰かにプレゼントした」等の場合はその旨をプレイングに記載して下さい。また競争率が高い・一人に複数の作品が手に渡った等の場合はこちらで判断を行います(お土産は基本一人一つです)。ご了承下さい。
・シナリオ上は五麟学園内向けの話ですが、五麟市全体での催しなので学生以外のキャラクターの参加も大歓迎です。「制作に学園内の設備を使っている」「F.i.V.E.内で製作中と噂を聞いた」等の理由で推進委員はフラリと現れます。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
相談日数
7日
7日
参加費
50LP
50LP
参加人数
16/30
16/30
公開日
2015年10月19日
2015年10月19日
■メイン参加者 16人■

●
五麟市文化芸術祭。市の振興課が申し訳程度に行う、町興しにもならない程度の小さいイベントである。
会場こそ市内の美術館のイベントスペースを使って行われるが、一挙に人が押し寄せる訳でも無し。作品数稼ぎのために近所の学校にも幾つか出して貰っている程だ。
そうやって請われた五麟学園では現在どうなっているかと言うと、
「芸術は露出と爆発だー!」
いきなり不安になる発言をしたのは迷家・唯音(CL2001093)だった。唯音を含めた数人が明智 珠輝(CL2000634)をモデルとして囲んでいる。
「ふ、ふふ……! 有難いことにヌードモデルとして呼んでいただきました……!」
「ぽーずは任せる、好きにするがよい。余も好きに描くゆえ」
由比 久永(CL2000540)のオーダーに従って珠輝は好き勝手にポージングしている。ヌードとは言え小さい子も居る環境のため、ギリギリまで布面積の少ない水着で誤魔化しているようだ。
……しかしそれで何故赤い薔薇を装備しているのか。アクセントだろうか。
「珠輝さん、できれば1ポーズ5分は動かないで頂けるかしら」
興奮のあまり腰をくねらせる珠輝に環 大和(CL2000477)が声をかける。どうやら背を若干反らせ、顎を上げて見返すポーズが気に入ったようだがやたら動くせいか上手く描けないでいるらしい。
「俺も男だけどさ、やっぱり最初はびっくりするよね……」
「……まあ最年少がノリノリだし良いんじゃない?」
やって来たのが顔見知りの水瀬 珠姫(nCL2000070) だったからか、工藤・奏空(CL2000955)が話し掛ける。珠姫の視線の先には唯音がおり、一生懸命鉛筆でデッサンをしていた。
「めっちゃイケメンに描いたげるからじっとしててね! ……パースが狂ってる? むずかしい~」
「そうだね……最近はコミカルなラクガキばかりだから、どう描いても三頭身イラストになってしまうなぁ」
唯音に答えたのは阿久津 亮平(CL2000328)だ。見た目からは全く想像できないが、実際描かれているのはデフォルメされ、薔薇で急所を隠した珠輝の可愛らしいイラストであった。何故か背景もキラキラしている。
「よし……タイトルは『秋麗の人』、かな」
その隣では写実的な絵を完成させている鈴白 秋人(CL2000565)の姿があった。その画風は実に写実的であり、珠輝の肉体美を見事に表現していた。
視線の先に居る、息を荒げ始めた何者かを描いたとは思えない逸品である。
「可愛い作品があるといいなあ」
絵を描いている一団に混じって木彫りに挑戦しているのは真庭 冬月(CL2000134) であった。どうやら眼前の裸夫と「可愛らしさ」を融合させた作品に挑戦するようだ。
どう考えても素材の時点で合体事故を引き起こしそうであり、手つきからも木彫りに慣れているとは思えない危なっかしいものであった。しかしこういう気楽な挑戦も、芸術の秋の一つの姿という事か。
「色をのせればそれらしくなるのかしら……」
「もっと鳥っぽくしたいなぁ……こうかな?」
「あー、明智さんもっとこう……躍動感醸し出して。そして口に薔薇を銜えて……え? 棘? ちょっと我慢しててください」
「……ところでその葉っぱは取らぬのか? 取ってはならぬのか? ふむ、ぬーども色々面倒なのだな……」
「物理的に不可能なポーズもとれるなんて凄いよ濃いよ明智さん!」
「まあ色んな作風がありますし……うん」
「あぁ、皆様の熱い眼差しが私の肉体のそこかしこに注がれ……私、火照ってきてしまいます……!」
「そうだ。マロンクリームサンドクッキーをいっぱい持ってきたんだけど、おやつにどう?」
皆程良く熱中していくが、亮平が差し出したおやつにわーいと何人かが作業の手を止めて向かう。あと少しで珠輝が脱ぎかねなかったのでナイスプレーであった。
「陶芸を始めると、無心になれて、心が落ち着きますよね……」
騒がしい面々を余所に、同じ部屋の片隅では賀茂 たまき(CL2000994) が陶芸に挑戦していた。
「中の空洞部分は、手を狐さんの形にして作るんですよ。何度か陶芸の先生に習った事があります」
陶器は焼く時に少し縮む分、大き目につくる必要がある。小柄なたまきには大変な作業だが、これも綺麗な作品を作る為である。
上手く出来ますように、と二人の「タマキ」は祈るのであった。
「モデルをお呼びですか!?」
お前じゃない。
「テーマはずばり『春』ですね。例えば……冬明けに咲いた身近な花を一輪採って、気兼ねなく飾るのに相応しい作品も素晴らしいですよね」
そんなたまきと向かい合うように轆轤を回していたのは新田・茂良(CL2000146)だ。普段とは違う環境で製作しようという事でこちらに来ていたらしい。
「使う側の気持ちになりながら作るのも、長く愛される壺を作るコツだと聞きました」
そう言いながらも視線はポージングを続ける珠輝へと向いている。そのせいか手元が狂って壺がグシャグシャになっているのだが、それは良いのだろうか?
「うーむ、何かが足りない気がするのだが、マドモワゼルならばここに何を足すかね?」
被服室で梅崎 冥夜(CL2000789)が作業をしていると聞いてやってきた珠姫への第一声がそれだった。どうやら新たなインスピレーションを欲しているらしい。
「ここのフリルは1段だけでいいと思うの。『かわいい』のためには時に引き算も大事よ?」
いきなり話し掛けられて驚いている珠姫を余所に、冥夜の横で作業を眺めていた小石・ころん(CL2000993)が答える。
「で、きてみたけど、これどーすればいいのー?」
「ああ、それはまだ仮縫いだからあまり動かないでくれ。問題が無ければそのまま仕上げてしまおう」
ククル ミラノ(CL2001142)と話している間に閃いたのか、冥夜は青い薔薇をモチーフにしたドレスに取り掛かる。集中している三人の邪魔にならないよう、珠姫は被服室を後にするのだった。
●
さて、いざ展示初日なのだが。
「……私、先生なのに」
「ははは……」
休憩スペースで思いっきりふくれっ面をしている向日葵 御菓子(CL2000429)に珠姫は苦笑いを返すしか無かった。
ただでさえ童顔で小柄な御菓子が展示スペースを探して歩いていたのを警備員が見間違え、迷子だと思ったようだ。
「と、とりあえず色々と見て回りましょう。折角ですし」
「そうですね、学校の皆さんの分はちゃんと見ないと……」
大きく溜息をつく御菓子よりも背が低いがあまり子供扱いされていない事実から全力で目を逸らしつつ、珠姫は展示スペースへと向かう。
「刀は日本の芸術品といっても過言ではない」
展示物の一つである刀の前に来た珠姫達に声をかけたのは十夜 七重(CL2000513)であった。刀は危険物であるので警備員がつきっきりで付いており、その隣に堂々と立っている。
本来刀の作成には半月ほどかかるので既存の物を展示しているのだが、観賞用ではない刀剣の扱いに実行委員会全体がてんやわんやになったという曰く付きの一品だった。
「刀には、人を魅了するだけの真摯さが込められている。少なくと俺はそのつもりで打っている」
作者自身が解説をしてくれるという非常に有り難い場面なのだが、隣に立っている警備員からはそれを上回るレベルの冷たい目線が突き刺さっていた。
プロの芸術家――本人も刀は芸術品と言っているし間違いではないだろう――は常人とは違う感性で生きているという事か。よく耐えられるものである。
「折角だ、手に取って見ても良い―――え、駄目? あ、ああ。済まない」
展示物にはお手を触れないようお願いします。
一方、珠姫達が訪れた視聴覚室で流れているのは「タイトルすらないインスト曲」と仮題で紹介されている曲だった。使われているのはアコースティックギター、ピアノ、ウッドベース、ドラムの四つ。
秋の青空の下、360度の草原の中に伸びた古いコンクリートの一本道を風を感じながら一人で歩きたくなるような、落ち着いた静かな雰囲気の曲であった。
「我ながら悪くねえかも。ロックバンドなんかより、こういうのやってた方がよかったりして……」
そう視聴覚室で四月一日 四月二日(CL2000588)が苦笑していたとか、いないとか。
「えー!? なんでなんでなんでー!?」
閑静な美術館に声が響く。そちらに目を向ければ冥夜、ミラノ、ころんの三人が警備員に止められていた。どうやら美術館で作品を展示するのみであるという事を知らず、ファッションショーのつもりで来ていたようだ。
「みんなかわいいお洋服とかわいいころんに釘付け……え、着て歩くの駄目なの!?」
ころんも妄想の世界からUターンで戻って来る。元々五麟市文化芸術祭は市が主催の小さい催しであり、美術館の予定が取れなければ市役所のロビーに制作物を置いて「ハイお終い」という可能性すらあったのだ。
「むぅ、しまった……展示方式の確認を怠るとは」
冥夜も今回はアマチュア向けの展示会である事をすっかり忘れていたようだった。事前に制作物を着てキャットウォークを歩く様子を撮影しているならまだしも、当日にそんな事が出来る訳が無い。
「むぅー……じゃあせめて記念撮影をっ!」
美術館での写真撮影は御遠慮下さい。
「あぁ、私の全てを、余すことなく……!」
視界の隅で何かが動いているのを目で追うと、そこには作品を見に来た珠輝と秋人の姿があった。
『秋麗の人』を中心に『秋野菜と肥えた馬の織りなす秋空のはーもにー』と題された抽象画、SD画等が並んでいる。
中にはぷりんとしたお尻の木彫りの何かや、スクール水着姿の唯音が珠輝の隣で女豹のポーズしている絵等中々にカオスな一角へと仕上がっている。
「これは、ある意味テロ……?」
「素晴らしいです……!」
頭を捻る秋人を余所に珠輝は己が描かれた作品の前で己を抱き、ぐねんぐねんと展示場の一角で悶える。その後方には一直線に歩いてくる数人の警備員の姿があったが、この後はどうなる事やら。
五麟市文化芸術祭。市の振興課が申し訳程度に行う、町興しにもならない程度の小さいイベントである。
会場こそ市内の美術館のイベントスペースを使って行われるが、一挙に人が押し寄せる訳でも無し。作品数稼ぎのために近所の学校にも幾つか出して貰っている程だ。
そうやって請われた五麟学園では現在どうなっているかと言うと、
「芸術は露出と爆発だー!」
いきなり不安になる発言をしたのは迷家・唯音(CL2001093)だった。唯音を含めた数人が明智 珠輝(CL2000634)をモデルとして囲んでいる。
「ふ、ふふ……! 有難いことにヌードモデルとして呼んでいただきました……!」
「ぽーずは任せる、好きにするがよい。余も好きに描くゆえ」
由比 久永(CL2000540)のオーダーに従って珠輝は好き勝手にポージングしている。ヌードとは言え小さい子も居る環境のため、ギリギリまで布面積の少ない水着で誤魔化しているようだ。
……しかしそれで何故赤い薔薇を装備しているのか。アクセントだろうか。
「珠輝さん、できれば1ポーズ5分は動かないで頂けるかしら」
興奮のあまり腰をくねらせる珠輝に環 大和(CL2000477)が声をかける。どうやら背を若干反らせ、顎を上げて見返すポーズが気に入ったようだがやたら動くせいか上手く描けないでいるらしい。
「俺も男だけどさ、やっぱり最初はびっくりするよね……」
「……まあ最年少がノリノリだし良いんじゃない?」
やって来たのが顔見知りの水瀬 珠姫(nCL2000070) だったからか、工藤・奏空(CL2000955)が話し掛ける。珠姫の視線の先には唯音がおり、一生懸命鉛筆でデッサンをしていた。
「めっちゃイケメンに描いたげるからじっとしててね! ……パースが狂ってる? むずかしい~」
「そうだね……最近はコミカルなラクガキばかりだから、どう描いても三頭身イラストになってしまうなぁ」
唯音に答えたのは阿久津 亮平(CL2000328)だ。見た目からは全く想像できないが、実際描かれているのはデフォルメされ、薔薇で急所を隠した珠輝の可愛らしいイラストであった。何故か背景もキラキラしている。
「よし……タイトルは『秋麗の人』、かな」
その隣では写実的な絵を完成させている鈴白 秋人(CL2000565)の姿があった。その画風は実に写実的であり、珠輝の肉体美を見事に表現していた。
視線の先に居る、息を荒げ始めた何者かを描いたとは思えない逸品である。
「可愛い作品があるといいなあ」
絵を描いている一団に混じって木彫りに挑戦しているのは真庭 冬月(CL2000134) であった。どうやら眼前の裸夫と「可愛らしさ」を融合させた作品に挑戦するようだ。
どう考えても素材の時点で合体事故を引き起こしそうであり、手つきからも木彫りに慣れているとは思えない危なっかしいものであった。しかしこういう気楽な挑戦も、芸術の秋の一つの姿という事か。
「色をのせればそれらしくなるのかしら……」
「もっと鳥っぽくしたいなぁ……こうかな?」
「あー、明智さんもっとこう……躍動感醸し出して。そして口に薔薇を銜えて……え? 棘? ちょっと我慢しててください」
「……ところでその葉っぱは取らぬのか? 取ってはならぬのか? ふむ、ぬーども色々面倒なのだな……」
「物理的に不可能なポーズもとれるなんて凄いよ濃いよ明智さん!」
「まあ色んな作風がありますし……うん」
「あぁ、皆様の熱い眼差しが私の肉体のそこかしこに注がれ……私、火照ってきてしまいます……!」
「そうだ。マロンクリームサンドクッキーをいっぱい持ってきたんだけど、おやつにどう?」
皆程良く熱中していくが、亮平が差し出したおやつにわーいと何人かが作業の手を止めて向かう。あと少しで珠輝が脱ぎかねなかったのでナイスプレーであった。
「陶芸を始めると、無心になれて、心が落ち着きますよね……」
騒がしい面々を余所に、同じ部屋の片隅では賀茂 たまき(CL2000994) が陶芸に挑戦していた。
「中の空洞部分は、手を狐さんの形にして作るんですよ。何度か陶芸の先生に習った事があります」
陶器は焼く時に少し縮む分、大き目につくる必要がある。小柄なたまきには大変な作業だが、これも綺麗な作品を作る為である。
上手く出来ますように、と二人の「タマキ」は祈るのであった。
「モデルをお呼びですか!?」
お前じゃない。
「テーマはずばり『春』ですね。例えば……冬明けに咲いた身近な花を一輪採って、気兼ねなく飾るのに相応しい作品も素晴らしいですよね」
そんなたまきと向かい合うように轆轤を回していたのは新田・茂良(CL2000146)だ。普段とは違う環境で製作しようという事でこちらに来ていたらしい。
「使う側の気持ちになりながら作るのも、長く愛される壺を作るコツだと聞きました」
そう言いながらも視線はポージングを続ける珠輝へと向いている。そのせいか手元が狂って壺がグシャグシャになっているのだが、それは良いのだろうか?
「うーむ、何かが足りない気がするのだが、マドモワゼルならばここに何を足すかね?」
被服室で梅崎 冥夜(CL2000789)が作業をしていると聞いてやってきた珠姫への第一声がそれだった。どうやら新たなインスピレーションを欲しているらしい。
「ここのフリルは1段だけでいいと思うの。『かわいい』のためには時に引き算も大事よ?」
いきなり話し掛けられて驚いている珠姫を余所に、冥夜の横で作業を眺めていた小石・ころん(CL2000993)が答える。
「で、きてみたけど、これどーすればいいのー?」
「ああ、それはまだ仮縫いだからあまり動かないでくれ。問題が無ければそのまま仕上げてしまおう」
ククル ミラノ(CL2001142)と話している間に閃いたのか、冥夜は青い薔薇をモチーフにしたドレスに取り掛かる。集中している三人の邪魔にならないよう、珠姫は被服室を後にするのだった。
●
さて、いざ展示初日なのだが。
「……私、先生なのに」
「ははは……」
休憩スペースで思いっきりふくれっ面をしている向日葵 御菓子(CL2000429)に珠姫は苦笑いを返すしか無かった。
ただでさえ童顔で小柄な御菓子が展示スペースを探して歩いていたのを警備員が見間違え、迷子だと思ったようだ。
「と、とりあえず色々と見て回りましょう。折角ですし」
「そうですね、学校の皆さんの分はちゃんと見ないと……」
大きく溜息をつく御菓子よりも背が低いがあまり子供扱いされていない事実から全力で目を逸らしつつ、珠姫は展示スペースへと向かう。
「刀は日本の芸術品といっても過言ではない」
展示物の一つである刀の前に来た珠姫達に声をかけたのは十夜 七重(CL2000513)であった。刀は危険物であるので警備員がつきっきりで付いており、その隣に堂々と立っている。
本来刀の作成には半月ほどかかるので既存の物を展示しているのだが、観賞用ではない刀剣の扱いに実行委員会全体がてんやわんやになったという曰く付きの一品だった。
「刀には、人を魅了するだけの真摯さが込められている。少なくと俺はそのつもりで打っている」
作者自身が解説をしてくれるという非常に有り難い場面なのだが、隣に立っている警備員からはそれを上回るレベルの冷たい目線が突き刺さっていた。
プロの芸術家――本人も刀は芸術品と言っているし間違いではないだろう――は常人とは違う感性で生きているという事か。よく耐えられるものである。
「折角だ、手に取って見ても良い―――え、駄目? あ、ああ。済まない」
展示物にはお手を触れないようお願いします。
一方、珠姫達が訪れた視聴覚室で流れているのは「タイトルすらないインスト曲」と仮題で紹介されている曲だった。使われているのはアコースティックギター、ピアノ、ウッドベース、ドラムの四つ。
秋の青空の下、360度の草原の中に伸びた古いコンクリートの一本道を風を感じながら一人で歩きたくなるような、落ち着いた静かな雰囲気の曲であった。
「我ながら悪くねえかも。ロックバンドなんかより、こういうのやってた方がよかったりして……」
そう視聴覚室で四月一日 四月二日(CL2000588)が苦笑していたとか、いないとか。
「えー!? なんでなんでなんでー!?」
閑静な美術館に声が響く。そちらに目を向ければ冥夜、ミラノ、ころんの三人が警備員に止められていた。どうやら美術館で作品を展示するのみであるという事を知らず、ファッションショーのつもりで来ていたようだ。
「みんなかわいいお洋服とかわいいころんに釘付け……え、着て歩くの駄目なの!?」
ころんも妄想の世界からUターンで戻って来る。元々五麟市文化芸術祭は市が主催の小さい催しであり、美術館の予定が取れなければ市役所のロビーに制作物を置いて「ハイお終い」という可能性すらあったのだ。
「むぅ、しまった……展示方式の確認を怠るとは」
冥夜も今回はアマチュア向けの展示会である事をすっかり忘れていたようだった。事前に制作物を着てキャットウォークを歩く様子を撮影しているならまだしも、当日にそんな事が出来る訳が無い。
「むぅー……じゃあせめて記念撮影をっ!」
美術館での写真撮影は御遠慮下さい。
「あぁ、私の全てを、余すことなく……!」
視界の隅で何かが動いているのを目で追うと、そこには作品を見に来た珠輝と秋人の姿があった。
『秋麗の人』を中心に『秋野菜と肥えた馬の織りなす秋空のはーもにー』と題された抽象画、SD画等が並んでいる。
中にはぷりんとしたお尻の木彫りの何かや、スクール水着姿の唯音が珠輝の隣で女豹のポーズしている絵等中々にカオスな一角へと仕上がっている。
「これは、ある意味テロ……?」
「素晴らしいです……!」
頭を捻る秋人を余所に珠輝は己が描かれた作品の前で己を抱き、ぐねんぐねんと展示場の一角で悶える。その後方には一直線に歩いてくる数人の警備員の姿があったが、この後はどうなる事やら。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
特殊成果
『マロンクリームサンドクッキー』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:工藤・奏空(CL2000955)
『マロンクリームサンドクッキー』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:迷家・唯音(CL2001093)
『マロンクリームサンドクッキー』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:鈴白 秋人(CL2000565)
『白いドレス』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:ククル ミラノ(CL2001142)
『マロンクリームサンドクッキー』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:阿久津 亮平(CL2000328)
『文化芸術祭出品物』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:明智 珠輝(CL2000634)
『マロンクリームサンドクッキー』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:環 大和(CL2000477)
『マロンクリームサンドクッキー』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:由比 久永(CL2000540)
『刀』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:十夜 七重(CL2000513)
『自作の陶器』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:賀茂 たまき(CL2000994)
『青薔薇のドレス』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:梅崎 冥夜(CL2000789)
『タイトルすらないインスト曲』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:四月一日 四月二日(CL2000588)
『マロンクリームサンドクッキー』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:真庭 冬月(CL2000134)
『黒いドレス』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:小石・ころん(CL2000993)
『春の壺』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:新田・茂良(CL2000146)
カテゴリ:アクセサリ
取得者:工藤・奏空(CL2000955)
『マロンクリームサンドクッキー』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:迷家・唯音(CL2001093)
『マロンクリームサンドクッキー』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:鈴白 秋人(CL2000565)
『白いドレス』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:ククル ミラノ(CL2001142)
『マロンクリームサンドクッキー』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:阿久津 亮平(CL2000328)
『文化芸術祭出品物』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:明智 珠輝(CL2000634)
『マロンクリームサンドクッキー』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:環 大和(CL2000477)
『マロンクリームサンドクッキー』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:由比 久永(CL2000540)
『刀』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:十夜 七重(CL2000513)
『自作の陶器』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:賀茂 たまき(CL2000994)
『青薔薇のドレス』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:梅崎 冥夜(CL2000789)
『タイトルすらないインスト曲』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:四月一日 四月二日(CL2000588)
『マロンクリームサンドクッキー』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:真庭 冬月(CL2000134)
『黒いドレス』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:小石・ころん(CL2000993)
『春の壺』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:新田・茂良(CL2000146)
