人の無き 妖の村で調べもの
【合縁鬼縁】人の無き 妖の村で調べもの


●鬼と呼ばれた存在
 鬼。
 古来よりその存在は畏怖と信仰が入り混じったものであった。
 曰く、暴威をもって人を襲う存在。
 曰く、地獄を支配する獄卒。
 曰く、人を喰らう者。
 曰く、憎しみや悲しみを募らせた人が変化した者。
 曰く、村を護った強者。
 曰く、豪傑と呼ばれる人間の先祖が鬼であった。
 曰く――
 語りきるには逸話が多く、それだけ人と関りが深い古妖だったと言えよう。
 そう、だった、だ。科学の発展と共に人は信仰を失い、同時に神秘に蓋をする。鬼もそれを機に人の世から姿を消した――というのが通説だ。実際の所は、鬼に聞かねばわからぬ話だ。
 そしてその鬼が言うには――

●FiVE
「鬼と戦った覚者達から興味深い話が聞けたわ」
 集まった覚者達を前に御崎 衣緒(nCL2000001)が話を始める。古妖と武闘大会で鬼と戦った覚者達が去り際に話を聞いたという。――その武術大会に関しては既に終わっている話で別の話なので、さておくとして。
「『珍しい鬼を見た。人でありながら鬼の角を持つ者だ』『汝らのような術式も使うと言う』……確証はないけど、私達の知らない覚者かもしれないわ」
 獣憑や翼人や付喪のように肉体が変化するタイプの覚者。そのひとつかもしれない。だが――
「ただ……『その鬼がいた村は大妖によって滅ぼされた。幽鬼を運ぶ鉄の箱の大妖だ』……とその鬼が言ったのよ。
 場所を調べてみたけど、確かにそこは数年前に『黄泉路行列車』の被害で壊滅的なダメージを受けているわ。今でも妖が跋扈して人が住める領域じゃないみたい」
 ため息をつく衣緒。夢見の予知やAAAの調査でも、その裏付けはとれている。
「危険な場所だけど、何かの手がかりがあるかもしれない。調査をしてきてもらえないかしら?」
 妖が跋扈する地域。そこにいたであろう未知の因子の覚者。夢見の予知が不十分な上に、見つけるべきものも明確ではない。
 無茶と言えば無茶な依頼。衣緒も無理強いはしないだろう。
 貴方の返事は――



■シナリオ詳細
種別:シリーズ
難易度:普通
担当ST:どくどく
■成功条件
1.村で捜査し、何かしらの手がかりを得る。
2.なし
3.なし
 どくどくです。
 この世界、こういう地域はそれなりにあると思います。

●説明
 場所は三年前に『黄泉路行列車』が引き連れる妖の軍団に滅ぼされた村。今でも妖が跋扈し、人はいないと言われています。
 かつてそこにいたと言われる未知の因子。その手掛かりを探してくれ、というのが所長の依頼です。『頭に角を生やした』以外の手がかりはありません。
 村を支配している妖が存在していますが、それを倒す必要はありません。分散して調査することも可能ですが、妖が襲い掛かってくる可能性もあるため危険度は跳ね上がります。
 便宜上、調査する場所を五区画に区切ります。調査できる数に限りはありませんが、多くなればプレイングの文字数的に詳細な行動が出来なくなります。ご注意を。

・村入り口
 村入り口のバス停と、数件の家屋。妖の破壊の跡が残っています。
 犬のような動物系妖一匹と、人の死体の妖が四匹(共にランク1)がいます。戦い慣れた覚者なら、用意に掃討できるでしょう。

・学校跡
 古ぼけた学校です。妖襲撃時、村人はここに立てこもったのでしょう。
 車の物質系妖が三体(ランク2)と、人の死体の妖が一二匹(ランク1)います。戦力的に真正面から戦えば激しく疲弊するでしょう。技能などでこっそり調査することをお勧めします。

・神社跡
 村の神社です。鳥居から祠まで完全に破壊されています。
 妖はいないようです。

・墓地
 村人用の墓地です。墓石は砕け、荒らされています。
 幽霊のようなの心霊系妖が一〇体うろついています(ランク1)。墓地の外に出るつもりはないようです。時間をかければ墓地の外から掃討することは可能でしょう。

・山
 かつて銀山だったと言われている山です。
 岩の自然系妖が一匹います(ランク3)。覚者総出で挑めば勝てますが、ダメージも大きくなります。

 戦闘のプレイングは基本不要です。活性化アビリティと構成を見て、適切な行動をとっているものとします。
 人の死体だったものからは、当時の記録を記したものが得られるかもしれません。
 高ランクの妖を倒せば、妖の統率を乱すことになるでしょう。
 ですが目的はあくまで調査です。全ての妖を倒すには、戦力的に不可能であることを言っておきます。技能によって戦闘を回避できる為、第一義に何を置くかは重要です。

●その他情報
 時刻は朝から夕方。夜になる前に村を出て撤退します。
 車や通信手段など、必要なものは用意してくれます。非覚醒状態になって離れた場所のPCと連絡を取り合うことも可能です。
『壊滅した村で存在した(と言われている)覚者を探せ』というのは流石に無理があります。先ずは村全体を捜索し、手がかりを見つける程度でいいと思います。

 皆様のプレイングをお待ちしています。

状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(3モルげっと♪)
相談日数
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/6
公開日
2018年01月20日

■メイン参加者 6人■

『五麟マラソン優勝者』
奥州 一悟(CL2000076)
『星唄う魔女』
秋津洲 いのり(CL2000268)
『静かに見つめる眼』
東雲 梛(CL2001410)


「三年前に滅ぼされた村……か」
 村を遠くに見ながら『献身の青』ゲイル・レオンハート(CL2000415)は苦々しく呟く。もし三年前にこの村にいたとしても何かが出来たわけではない。だがやりきれない気持ちは生まれるのもどうしようもない事だった。
「わたしにもっと力があれば村を解放してあげられるかもしれませんが……」
『音楽教諭』向日葵 御菓子(CL2000429)は胸に手を当てて祈るように口を開く。今なお妖が跋扈する村。その全ての妖を駆逐するのは難しいだろう。力の無さを悔いるのはいつでもできる。今はただ、やるべきことをやらなくてはいけないと気分を切り替えた。
「『頭に角を生やした』ですか……」
 所長の話を思い出す上月・里桜(CL2001274)。古妖の鬼が告げた『鬼のような』人の話。それが未知の因子というのなら、それと手を取ることが出来れば様々な可能性が広がる。この村に覚者はもういないだろうが、何かの手がかりが得られるかもしれない。
「何か手がかりをひとつでも見つけられたら良いけど」
 遠目に見える村の様子をうかがいながら『静かに見つめる眼』東雲 梛(CL2001410)は頭を掻く。三年という月日は長い。何かがあったとしても時の流れで消え去っている可能性はある。ましてや妖が巣食っているのだ。それでも――
「ともあれ調べてみないと解りませんわね」
『星唄う魔女』秋津洲 いのり(CL2000268)は自分に気合を入れる様に息を吐いて拳を握る。その胸にあるのは『力を持つ者は、それを人々の為に役立てないといけない』という両親から受け継いだ志。ここに何かあるのなら、それを調べるのも覚者の義務だ。
「仲間になるとかならないとか、そんなことよりも生き延びててほしいな」
 ぎゅっとこぶしを握り、『五麟マラソン優勝者』奥州 一悟(CL2000076)がため息を吐くように言葉を放つ。妖によって破壊された村。そんな状況でも生きていてくれれば。そんな希望を抱きつつ、村に歩いていく。可能性は薄い。でも、もしかしたら。
 村の入り口にたむろする元村人の妖。それが覚者に気づき、襲い掛かってくる。
 六名の覚者は頷きあい、覚醒して神具を手にして展開する。
 妖が巣食う村での調査の幕開けである。


 村入り口での戦いは、秒針が半分を周るより早く片付いた。
「じゃ、先行ってるから」
「村の様子を見てきますね」
 言って先行する梛と御菓子。残った四人は入り口付近を捜索することにした。
「この人達の頭に、角はないみたいですね」
 いのりはこの村人だった妖の遺体を調べて呟く。村全てが角の生えた覚者だったというわけではない。比率的に村に一人か二人ぐらいなのだろう。
「朧、見てきて」
 守護使役に頼んで周囲を見てもらう里桜。村の全貌が守護使役を通して頭の中に入ってくる。概ね事前に聞いた情報通りだ。
「こいつは……」
 廃屋になった家に入って一悟は物を探していた。帽子などの頭を隠す装飾だ。角が生えていれば、その為の穴があるかもしれない。数件探して、東部に穴の開いたフード付きパーカーを見つける。
「成程。この子に間違いなさそうだな」
 村人の持ち物を探っていたゲイルは、一枚の写真を見つける。村の若者が集まって撮ったものだろう。その中には、一悟が見つけたパーカーを着た青年がいる。フードを深くかぶっているが、頭部に膨らみが確認できた。
「この村に角が生えた者がいたのは確実のようだな」
「古妖なのかどうかの判断はつかないけど……仲がいい友達がいたみたいで何よりですね」
 肩を抱き合う彼らの写真を見ながら、覚者達はそんなことを呟く。村の人に迫害されていたのではないのは不幸中の幸いだったのだろう。
 これ以上得る者はないと判断し、遺体を埋葬した後に覚者達は各捜索場所に移動していく。


 いのりと一悟と御菓子は学校跡に向かっていた。
「……あっちから歩いてくる音が聞こえてくる」
「そうですわね。ガソリンの匂いがします。車の妖でしょう」
 一悟の耳が聡く何かの音を察し、いのりの『ガルム』が嗅ぎ分けた匂いを主に伝える。そうやって三人は妖との遭遇を避けていた。知性のない妖は特に気付くこともないようだ。
「何処を探す? オレは保健室を見てみたい」
「いのりは校舎や体育館を調べてみたいです。人がいたならそこだと思いますし」
「追われて逃げたのだから、人がいるなら上の階だと思うわ」
 意見が分かれたが、かといって妖がいる場所で分かれて捜索するわけにはいかない。時間を書ければ全て調べれそうということで、順番に調べてみることにした。
 先ずは一悟の意見である保健室から――
「うわあ」
 扉を開けた一悟はその惨状跡にうめき声をあげた。怪我人が運ばれた保健室。そこに入り込んだ妖。その状況を想像させるような血痕跡があった。
「欠けた角のホルマリン漬けとかあるかと思ったけど……」
 薬品棚は破壊され、壁のポスターは切り裂かれている。何かの手がかりになりそうなものは得られそうになかった。
「こんなふうにされちまって……さぞ無念だっただろうな」
「人は妖に蹂躙されるだけの存在ではありませんわ」
 いのりは『黄泉路行列車』のことを思いがしながら、決意を固める。この村の無念はいつか晴らす。その為に今は――
「校舎……角が生えた覚者がここにいるのなら、記録が残ってるんじゃないかしら」
「記録が残っているのなら資料室ね。多分こっちよ」
 妖を避けながら後者を進むいのりは、そんなことに気づく。学校関係者の御菓子は自分が勤める学校と照らし合わせて、おおよその場所を割り出す。閉ざされた扉を強引に開けて、埃臭い資料室に入り込む。
「村の入り口で見た写真だと中学生ぐらいか?」
「だとすればこの辺りの年代ですわね」
「あったわ。この子よ」
 三人は卒業アルバムから一人の少年の写真を見つけ出す。角を隠すようにフードや帽子をかぶっているが、僅かな突起が見えている。村の入り口で見た写真の子と同じだろう。名前は――
「藤原守」


「ん。こっちきたの?」
「はい。よろしくお願いしますね」
 墓場にやってきた梛は、やってきた里桜に手をあげる。それに応じる様に里桜は頭を下げた。
「二人なら妖討伐もそう時間がかからないかな」
「ええ。ですがその前に――」
 神具を構える梛と里桜。だが里桜は術式を唱えるより先に、妖の感情を探っていた。妖が村人の魂なら、何かしらの感情を抱いているのかもしれない。そう思っての感情探査だ。感じ取れたのは怒りと殺意。
「……駄目ですね。ランク1の妖にありがちな感情です」
「逆に言えば、あそこにいるのは妖であって村人じゃないってことだろう。手早く済ませよう」
 消沈する里桜を前に梛が告げる。村人の想いだと思えば消滅させるのに抵抗があるが、それを利用して存在している妖だと思えば殲滅に躊躇はない。二人は手慣れた動きで妖を攻撃していく。
「よし。……それじゃあ」
 妖を完全に倒した後に梛は精神を手中させて霊との交信を始める。残留思念を探すのに苦労したが、かすかに声を届けることが出来る霊を発見した。
「……誰だ? お前も妖、なのか……」
「違う。俺の名前は東雲梛。この村の人で間違いないかな?」
「ああ。妖じゃ、ない。そうか。覚者、か。守の、友人なのか」
 守。学校に言った仲間から聞いた角のある覚者の名前だ。
「……いいや、違う。俺達はその守って子を探しに来たんだ」
 梛は正直に告げる。騙して情報を引き出すこともできるが、それは良くないと良心がとがめた。
「そうか……。あんた等は、角は生えて、ないのか?」
「ああ。その守って子は角が生えているのか?」
「そうだ。鬼の子と呼ばれていたが、心優しい子で、あの日も、妖と戦って……」
 少しずつ弱くなる声。そしてその言葉を最後に、残留思念は途絶えた。
「ありがとう。やっぱりこの村に角の生えた覚者はいたようだね」
「この墓石……」
 墓の並びを見ていた里桜は奇妙な違和感を感じていた。何かがおかしい。でも何がおかしいかが分からない。傍目に見れば荒らされた跡だ。墓石は倒れ、一部が欠け、そして転がっている。誰も直す者がいないのか、荒らされたままの状態で放置されている。
(放置……? 三年間放置されているのに?)
 仮にこの墓へ乱入した者が三年前にやってきた『黄泉路行列車』の軍勢だというのなら、その後三年間放置されているはずだ。三年間雨風に晒され、誰も手入れしているはずがないのに――この墓石は綺麗すぎる。
「誰かが手入れしている……わけはありませんわね。となると……?」
 墓石が荒らされたのはその時ではないという事だ。里桜は墓石が破壊された場所をなぞってみる。人外の力で殴りつけたような跡。心霊系の妖では作れない跡だ。となれば、別の誰かがいる。そして――
「墓の並びもおかしいですわね。この墓石はあそこにあるはずなのに」
 墓石の名前と、墓石のない墓の慰霊碑を見る。同じ苗字だ。本来この墓の上に、この墓石があるはずなのに。その距離は20メートルほど離れている。飛ばされた、とは思えない。となると、
「つい最近墓石が妖化して、移動した? そしてそれを誰かが倒した……?」
 推測の域を出ないが、そうとしか思えない状況だ。
(この村には、妖以外に『何か』がいる。妖を攻撃する『何か』が)


 神社に向かっているゲイルは、携帯電話からその話を聞いていた。
「わかった。これから覚醒するから連絡はとれないと思ってくれ」
 神社を目の前にして通話を切り、ゲイルは覚醒する。ここから先は何があるかわからない。警戒するに越したことはないのだ。
(他の所はそこまで破壊されていないところもあるというのに、ここだけは徹底的に破壊されているなんて不自然だ)
 妖にとって不都合なものがあるのかもしれない。そう思い、ゲイルは神社を調べることを優先した。折れた鳥居、粉々になった祠。それが野晒しになり、風化している。神社だと知らなければ、ただの廃屋と思っていたかもしれない。
(祀っているのはありふれた鎮守――大雑把に言えば土地の守り神か。妖が信仰深いとは思えないが……?)
 何かこの土地を護る結界でもあったのだろうか、と調べてみたがそれらしいものはない。仮にあったとしても徹底的に破壊されているため、手掛かりすら見つけることはできない。無駄足か、とゲイルはため息を吐き、
「……地下に熱源?」
 崩れた社務所の地下に、妙な熱源があるのを発見する。地下室でもあるのだろうか。覚醒している状態なら瓦礫を押しのけることも難しくはない。時間がかかりそうなら仲間を呼ぶか。
(――なんだ!?)
 背筋を走るぞくりとした感覚。背骨に冷たい鉄の棒を入れられたような、そんな気味の悪さ。その感覚がさっきだと気付くのに、一秒かかった。乱れた呼吸を整えるのに、もう一秒。そしてようやく、殺気を放ってくる者の方へ首を向ける。
 そこには、鬼がいた。
 身の丈は子供のように小さいが、その形相は憤怒に満ちていた。頭に映えた二本の角、炎のような赤い肌、硬く握られた拳、はち切れんばかりの筋肉。まさに鬼と呼ぶにふさわしいその存在。
「……君は、藤原くんかな。藤原守くん」
 ゲイルの問いに、鬼は答えない。ただ唸るように睨み、殺気を放っている。これ以上ここに居れば、襲い掛かる。
 ゲイルはここに妖がいない理由と、破壊が激しい理由を理解した。
 ここに来た妖は、皆この鬼に迎撃されているのだ。その戦場の爪痕がこの破壊。今襲い掛かれば、その破壊の嵐に巻き込まれる。ゲイルは唾を飲み込み、鬼から距離を取る。
「君は村を守っている。村の妖を倒している。そうだな?」
 鬼は答えない。だがゲイルに襲い掛かるつもりはない。神社から離れれば、襲わないと態度で示していた。
 一歩一歩が重い。じわりじわりとゲイルは神社の入り口に向かっていく。それはさっきの重圧に押されているからか。それとも精神的な重さゆえか。
 僅か十数メートルを五分ほど時間をかけて移動し、ゲイルの視界から鬼が消えた。


「――ということがあったんだ」
 ゲイルの報告を受けて、覚者達は一旦集合することになった。
「時間があれば山のランク3も倒しておこうと思ったが……こちらの方が優先度は高そうだな」
「目的は『角の生えた覚者』を見つけることだからな」
 ゲイルの言葉に頷く一悟。ランク3の妖を倒してこの村の妖の力を削ぐに越したことはないが、主目的を忘れるつもりはない。
「姿や格好も学校で見た卒業アルバムの子と一致する。まず間違いないと思うぜ」
「今でも村を守っている……にしては様子がおかしいですわね」
 いのりは考える様に腕を組む。こちらが妖ではないことは理解しているようだが、話を聞いてくれる様子はない。覚醒すると理性がなくなる、ということなのだろうか?
「もしかして……破綻者?」
「その可能性が高いだろうね」
 いのりの推測に首肯する梛。破綻者。過剰な源素の活性化により、おのれを保てず暴走している者を指す。村を破壊され、その怒りで破綻したか。村を守る戦いの中で破綻したのか。
「そして破綻しながら社務所の地下を護っている」
「そこには何があるのでしょうか……?」
 神社の方を見ながら里桜は思考する。深度にもよるが、破綻者には理性がある。己を制御できない状態であっても、守りたい何か。妖からずっとそれを守ってきたのだろう。
「熱源、というだけでは特定できかねますね」
「どちらにせよ、破綻者を放置はできないわ」
 御菓子は神妙な面持ちで告げる。源素が暴走し、自我が削られている。その状態が続けば破綻者の理性やパーソナリティは全て消えてしまうだろう。そうなれば鬼の力が人に向く可能性もある。
「今はまだ理性があるみたいだけど、それがなくなれば……」
「そうだな。元に戻すことが出来れば、何かの情報が得られるかもしれない」
「……だが、話を聞く限りではおそらく深度は3。深度3が元に戻ったケースは……」
 その一言に覚者達は沈黙する。深度3の破綻者が暴走を収めて覚者に戻ったケースは、ない。重い沈黙が覚者達を支配する。
「それでも止めなくてはいけない」
 暗澹とした空気を破ったのは、年長者のゲイルの一言だった。
「村を護った覚者が、人を襲う前に」

 村の調査は一旦終わる。
 報告の後に下された任務は『破綻者討伐』だった。ランク3の妖よりも、深度3の破綻者の方が脅威だと判断したようだ。
 受けるも受けないも自由だ。可能な限り支援はするが、深度3の破綻者を元に戻せる保証はないと明言される。
 しばしの休憩の後、覚者達は神社に向かう――

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし




 
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