【妖精郷】道塞ぐ 影のなぞなぞ これ如何に
●道を塞ぐ影
「妖精郷?」
『発明王の生まれ変わり』の二つ名を自称する男は、情報屋からの言葉を鸚鵡返しに返した。
「はい。なんでも妖精が住むと言われている森がありまして。そこで花のような姿をした人をみかけるとか」
妖精。
古妖が存在する日本において、いてもおかしくはない存在だ。事実何度か目撃例はある。だが古妖は人と交友を持たない者が多い。その中でも妖精は特にその傾向が強く、妖精郷と呼ばれる独自の空間で人を拒絶しているというのが通説だ。
「ふむ、妖精と邂逅し交友を結ぶことが出来れば新たな知識を得ることが出来るかもしれん。何よりもその功績により吾輩の名はより広まるであろう!」
燕尾服の裾を直し、『発明王の生まれ変わり』は席を立つ。それが数時間前の話。
彼含めた数名の覚者は、森の中で人型の『影』ともいえる存在と相対していた。全身黒色ののっぺらぼう。『影』は道をふさぎ、彼らを追い返そうとする。
「虫あれど、鳥なし。
小あれど、大なし。
月あれど、日なし。
如何に」
『影』はやってきた覚者にそう問いかけた。
「ふむ。謎かけ系術式か」
「知っているのか『発明王』!?」
「結界の一種だな。問い悩む苦しみを呪力と化して力を増すという。しかし正しく問いに応えればその反動で弱体化するのだ。
そしてその問い、この『発明王の生まれ変わり』が解いてくれよう!」
『影』を指差し、燕尾服の男が胸を張る。『影』は答えを待つように動きを止める。
「それは月のように丸くて小さな虫……ダンゴ虫だ!」
『影』は『発明王』の問いを聞き、無言で腕を振り下ろした。
「おべぷぅ! まさかこの完璧な答えが間違っていたというのかー!?」
「『発明王』!? こうなれば力づくでおふぅ!」
『影』は覚者達を一掃する。これ以上森に侵入する者がいないことを確認し、『影』はその姿を消した。
●FiVE
「――かくして妖精たちの平和は守られたのでした。めでたしめでたし」
久方 万里(nCL2000005)はそういって話をしめる。ぱちぱちと拍手をして満面の笑みを浮かべていた。
「この夢を御崎おねーちゃんにしたら『調べてきて』って言われたの。なんでもFiVEにない技術だから見てみたいって。
本当に妖精なら万里も見てみたいなー、って思ったのでみんなに声をかけたの」
集まった覚者はようやく合点がいった、という顔をする。これは正式なFiVEの依頼なのだ。
「で、通せんぼしている『影』だけどお話を聞いてくれないみたい。
戦って倒すしかないみたいだけど、なぞなぞに答えると弱くなるの」
『虫あれど、鳥なし。小あれど、大なし。月あれど、日なし』……これに当てはまるものを言えば、弱くなるという。先に挑んだ覚者は間違えたため、ボロボロになってその場に倒れている。命に別状はなさそうだ。
「強引に突破できなくもないけど、弱くなったら怪我しなくて済むと思うよ」
弱体化させれば、結界解除は楽になるだろう。だが答えを誤ればバツとして殴られてしまう。答えは慎重に行う必要がある。
「本当に妖精さんがいたら、写真撮ってきてねー」
気楽な万里の声に送られて、覚者達は会議室を出た。
「妖精郷?」
『発明王の生まれ変わり』の二つ名を自称する男は、情報屋からの言葉を鸚鵡返しに返した。
「はい。なんでも妖精が住むと言われている森がありまして。そこで花のような姿をした人をみかけるとか」
妖精。
古妖が存在する日本において、いてもおかしくはない存在だ。事実何度か目撃例はある。だが古妖は人と交友を持たない者が多い。その中でも妖精は特にその傾向が強く、妖精郷と呼ばれる独自の空間で人を拒絶しているというのが通説だ。
「ふむ、妖精と邂逅し交友を結ぶことが出来れば新たな知識を得ることが出来るかもしれん。何よりもその功績により吾輩の名はより広まるであろう!」
燕尾服の裾を直し、『発明王の生まれ変わり』は席を立つ。それが数時間前の話。
彼含めた数名の覚者は、森の中で人型の『影』ともいえる存在と相対していた。全身黒色ののっぺらぼう。『影』は道をふさぎ、彼らを追い返そうとする。
「虫あれど、鳥なし。
小あれど、大なし。
月あれど、日なし。
如何に」
『影』はやってきた覚者にそう問いかけた。
「ふむ。謎かけ系術式か」
「知っているのか『発明王』!?」
「結界の一種だな。問い悩む苦しみを呪力と化して力を増すという。しかし正しく問いに応えればその反動で弱体化するのだ。
そしてその問い、この『発明王の生まれ変わり』が解いてくれよう!」
『影』を指差し、燕尾服の男が胸を張る。『影』は答えを待つように動きを止める。
「それは月のように丸くて小さな虫……ダンゴ虫だ!」
『影』は『発明王』の問いを聞き、無言で腕を振り下ろした。
「おべぷぅ! まさかこの完璧な答えが間違っていたというのかー!?」
「『発明王』!? こうなれば力づくでおふぅ!」
『影』は覚者達を一掃する。これ以上森に侵入する者がいないことを確認し、『影』はその姿を消した。
●FiVE
「――かくして妖精たちの平和は守られたのでした。めでたしめでたし」
久方 万里(nCL2000005)はそういって話をしめる。ぱちぱちと拍手をして満面の笑みを浮かべていた。
「この夢を御崎おねーちゃんにしたら『調べてきて』って言われたの。なんでもFiVEにない技術だから見てみたいって。
本当に妖精なら万里も見てみたいなー、って思ったのでみんなに声をかけたの」
集まった覚者はようやく合点がいった、という顔をする。これは正式なFiVEの依頼なのだ。
「で、通せんぼしている『影』だけどお話を聞いてくれないみたい。
戦って倒すしかないみたいだけど、なぞなぞに答えると弱くなるの」
『虫あれど、鳥なし。小あれど、大なし。月あれど、日なし』……これに当てはまるものを言えば、弱くなるという。先に挑んだ覚者は間違えたため、ボロボロになってその場に倒れている。命に別状はなさそうだ。
「強引に突破できなくもないけど、弱くなったら怪我しなくて済むと思うよ」
弱体化させれば、結界解除は楽になるだろう。だが答えを誤ればバツとして殴られてしまう。答えは慎重に行う必要がある。
「本当に妖精さんがいたら、写真撮ってきてねー」
気楽な万里の声に送られて、覚者達は会議室を出た。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.『影』を倒す
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
山田のおかげでスラスラとOPができました。
●敵(?)情報
『影』(×1)
森を守る結界。その防衛機構です。人間の影が立体化したような姿を取っています。森の奥に進もうとすると足止めしてきます。
第一ターンの最初に『問い』を投げかけてきます。これに正しい答えを返すことが出来れば、ステータスが弱体化します。誤った答えを返せば、防御力無視の特殊ダメージを与えます。未回答の場合は、特に影響はありません。
言葉を喋ることはありません。
攻撃方法
長い手 物遠貫2 腕が伸びて、貫いてきます。(100%。50%)
影の矢 特遠単 黒い矢を放ちます。【二連】
黒の刺 物近列 体中から鋭い刺が生え、近くにいる者を貫きます。
進入禁止 P 揺らめく影の触手が行く手を阻みます。このキャラクターより奥に進むことはできません。
●NPC
『偉人列伝』
自分達の前世が偉人だと信じてやまない前世持ちの集団です。イタイ人達、の認識で問題ありません。
『影』に負けてノビています。……が、参加者が六名に満たなかった場合、上から順番に戦闘に参加していきます(体力気力は全回復。命数は使用済み)。その際、相談で指示をした行動をとります(プレイングに記入は必要ありません)。
『発明王の生まれ変わり』山田・勝家
過去に何度か(割としょーもない経緯で)FiVEと抗戦した覚者です。前世持ちの木行。自分の前世を『発明王』と言い切るイタイ覚者。100%予測が外れます。
『錬覇法』『葉纏』『仇華浸香』『大樹の息吹』『覚醒爆光』『韋駄天足』等を活性化しています。
『黒の王』葛城・徹
土の前世持ち。三十五歳男性。
ナレースワンの生まれ変わりを自称しています。全身日焼けしたマッチョ体質。肉体には自信あり。
『錬覇法』『無頼漢』『蔵王・戒』『大黒力』『覚醒爆光』等を活性化しています。
『砂漠の女王』楠木・詩織
水の前世持ち。十歳女性。
クレオパトラ7世フィロパトルの生まれ変わりを自称しています。エジプトっぽい杖を手に回復に回ります。
『錬覇法』『水纏』『潤しの滴』『潤しの雨』『氷巖華』『アイドルオーラ』『マイナスイオン』等を活性化しています。
●場所情報
森の中。時刻は昼。明りは戦闘に影響ありませんが、茂る木々は遮蔽物となって遠距離攻撃の命中にマイナス修正をつけます。
事前付与などは一度だけ可能とします。『影』との距離は一〇メートルとします。
皆様のプレイングをお待ちしています。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
6日
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/8
6/8
公開日
2017年12月25日
2017年12月25日
■メイン参加者 6人■

●
「虫あれど、鳥なし。小あれど、大なし。月あれど、日なし。
如何に」
現れた『影』。その問いかけを受けたのは六名の覚者だった。
「日本の妖精って、どんな存在なんだろう? 小鬼みたいのか、コロポックルみたいのか……」
思いつく限りの古妖を頭に浮かべる宮神 羽琉(CL2001381)。妖精と言って想像できる単語を浮かびあげて、それに見合うものをピックアップする。最終的には会わないとわからないのだが、前もって想像しておくだけでも大分心構えが違うものだ。
「妖精さんたちの結界の技術って、ほんとすごいよね……」
他の妖精に出会ったことのある『ホワイトガーベラ』明石 ミュエル(CL2000172)は『影』を見ながら驚いていた。源素ではない様々な術。この結界もその一つなのだろう。地に伏している燕尾服の男を見ながら、その戦闘力にも感服していた。
「以前、別の依頼で妖精さんに会った事がありましたけれど、あの子とはまた別の種族の妖精さんのようですね……」
同じく他の妖精にあったことのある『居待ち月』天野 澄香(CL2000194)が『影』を見ながらそう呟いた。結界自体は人を拒絶しているようにも見える。これを作った妖精はどのような過去を持っているのか。話をすることで態度が軟化すればいいのだが……。
「謎を解き明かさねば奥に眠る神秘にたどり着けないなんて、まるで砂漠のスフィンクスね」
『月々紅花』環 大和(CL2000477)は足止めする『影』の問いに、そんな感想を抱いた。古代ギリシア神話に出てくるライオン頭の怪物。間違えれば頭から食われてしまう凶悪な怪物だ。『影』の後ろにある神秘は何か。そのことを思い、近くにいる仲間に目をやる。
「そうですね。妖精といえば、彼女を思い出しますね」
その視線に気づいたのか『狗吠』時任・千陽(CL2000014)は頷いた。ハロウィンの時に出会った不思議な少女。妖精を想起させるような姿。勿論妖精という古妖は存在するため確証はない。だが第六感ともいえる何かが疼いていた。
「FiVEにない技術を知ってる奴らか。気にならないって言ったら嘘になるよな」
うんうんと頷いて、『守人刀』獅子王 飛馬(CL2001466)は刀を抜いた。人間には好奇心がある。知らない、ということはそれだけでも興味をひいてしまうのだ。条件を満たせば弱体化する結界。使い道はともかく、珍しい術には違いない。
「答えは……もしかして義務教育じゃねーかな。中(ちゅう)学校はあるけど長(ちょう)学校はないし、小学校はあるけど大学校はない。月曜日にはあるけど、日曜日は休みだからないよな――あいたっ!」
何事も挑戦、とばかりに飛馬が問いに答える。間違っていたのか、神速の一撃が飛んできた。あ、STコメントに明記はしてなかったけど『回答を誤るとダメージを与える』とあるので回避判定はできません。
「答えは――でしょうか?」「――かな?」「――ではないでしょうか?」
千陽、ミュエル、澄香が『影』に向かって答えを返す。
「ふ、そのような答えであるはずがない。危険だから下がって――何ぃ!? 結界が、弱体化した、だと……?」
倒れていた『発明王の生まれ変わり』が警告を飛ばそうとして、『影』が薄くなっているのをみて驚きの声をあげる。動きも明らかに遅くなり、『影』が弱体化したのは明白だ。
だがそれでも『影』は覚者達を阻もうとする。ゆらゆらと蠢きながら、立ちふさがっていた。
覚者達もそれに応じる様に神具を抜き放った。
●
「突破させてもらいます」
軍用ナイフと銃を構えて千陽は『影』に踏み込む。軍隊で学んだ足さばきで間合いを詰め、前世の記憶を強く引き出す。金色に変わる瞳の色が『影』の動きを捕らえる。覚醒した肉体と培った軍隊の鍛錬。それが鋭い動きを生み出す。
千陽のナイフが煌めく。防御重視の軍用ナイフだが、速度と角度があえば斬撃にもなる。『影』は斬られることを恐れて半身を逸らすが、それは千陽の予想通り。反対側の手荷物中で回避直後の『影』を二度打ち抜いた。
「物理攻撃の方が通じそうですね。大きな差はなさそうですが」
「なら予定通りに攻めさせてもらいますね」
頷き澄香は二枚のタロットカードを手にする。羽根を持つ天使が杯に水を入れる絵が描かれた『節制』と、円環の中心に人が存在する『世界』のカード。神具化したカードを手に源素を練り上げる。
木々の間を進む『影』。その動きを目で追いながら、カードを縦に振るった。カードの軌跡は源素により香の風となり、『影』に触れた。それは植物の毒。神秘の毒は結界である『影』にも滅びの一手となる。じわりじわりと削られていく体力。
「弱体化している、とはいえ簡単にはいかないみたいですね」
「でも……効いてる。答えがあってて、よかった……」
戦いの流れが覚者に向いていることを察し、ミュエルは頷いた。実のところ、答えに自信はなかった。最初は『発明王』と同じ答えを想像していたのだが、それは色々悔しいので封印しておく。山田と同レベル、と思った瞬間気分がうつに傾きそうになる。
気を取り直して『影』に意識を向けた。『影』に殴られて頭を押さえている飛馬に向けて、木の力を向けた。飛ばすのは毒や蔓のような攻撃的な術式ではない。優しい香りを放つ癒しの術。
「傷は……アタシが、癒すから、皆は、頑張って、ね」
「おう。感謝するぜ!」
指一本たてて飛馬が回復の礼をする。問いには間違えたが、それを気にした様子はない。元々の性格ゆえか、それとも戦闘に没頭しているからか。ともあれ飛馬の動きによどみはない。敵前に立ち、仲間の盾となっていた。
『影』の腕が蛇のようにしなる。夢見の情報、想像、実際に見た経験、そして直感。飛馬はそれら全ての情報から次の相手の動きを見切ろうとする。『影』の腕が伸びる――よりも先に飛馬は太刀を振るい、鞭のようにしなる影の腕を弾き飛ばしていた。
「巖心流の受け、甘く見るなよ!」
「ええ。前衛は任せてよさそうね」
飛馬の守りを見て、大和は安心したように頷く。『影』の攻撃が厳しければ前に立つことも考慮したが、その必要はなさそうだ。前世との記憶を強く意識しながら、太もものベルトから術符を抜いた。同時に意識も戦闘に向けられる。
木々を縫うように移動する『影』。成程、定型を持たない『影』の形は、森の中の移動を前提としたものなのだろう。だからこそ、固有のパターンが存在する。大和はその一部を見出し、稲妻の術を放つ。待ち伏せするように放たれた雷撃が、『影』を穿つ。
「弱体化できなかったら、こうもうまく当てれなかったかもしれないわね」
「ええ。ですが油断はできません」
大和の言葉に頷きつつも、しかし気は抜けないと羽琉は頬を叩く。覚者になってFiVEに入り、神秘に深く携わるようになってからは恐怖の連続だ。どんな状況でも油断しない。それが羽琉が学んだ教訓である。
弱体化したとはいえ『影』の攻めは止まらない。傷ついた覚者達を見ながら、水の源素を練り上げる羽琉。弓を射る時のように心を沈め、体内で源素を回転させる。そのまま心の中で矢を番え、放った。同時に癒しの水を解き放つ。優しい雨が仲間の傷を癒していく。
「まだ弱いですけど、傷は僕が癒します」
羽琉はミュエルを見て、頷く。癒し手は二人で十分のようだ。他の覚者は『影』に神具を向け、攻めはじめた。
弱体化した『影』は飛馬の堅牢な護りを突破できず、千陽と澄香と大和の攻撃を防ぎきることが出来ない。矢を放ってもミュエルと羽琉に傷を癒され、決定打にはなりそうもなかった。そのままじわりじわりと追い込まれていく。
「あまり危害を加えたくないのですが……申し訳ありません!」
結界を破壊することに罪悪感を感じながら、澄香は『節制』と『世界』を構える。木の源素を携え、『影』に迫った。調和と成就を示す二枚のカードが、覚者を足止めする『影』を割いた。
「見事」
称賛の言葉を一つ残し、『影』は最初からなかったかのように消え去った。
●
「おお、流石音に聞こえしFiVE。吾輩が出るまでもなかったという事だな」
戦いが終わり、半身起こした『発明王』が頷くように言った。その後に傷が痛むのか蹲るようにのた打ち回るのだが。
「あ、忘れる所でした! 山田さん達、大丈夫ですか? 手に余る案件には手出しされない方がいいです、よ……?」
心配するように澄香が『偉人列伝』達の傷を癒そうと術を放つ。だが『発明王』は指を振って答えた。
「吾輩の名前は『発明王の生まれ変わり』。この『発明王』の手に余る事件など大妖ぐらいなのです。今日は少し歯車が狂っただけ」
「今日……『は』?」
ミュエルは『発明王』の言葉に静かに言葉を返した。
「猫さんの時とか……バットの妖とか……ウサギさんに騙されたりとか……電波障害解決で一本蹈鞴に向かったり……。今日……『は』?」
「ぐふぅ、ごはぁ、げふぅ、ぼふぅ……! か、過去は振り返らない。人は未来に向かって進むものなのだから」
ミュエルが列挙する過去の事件に『発明王』は吐血するように悲鳴を上げ、その後に未来を見て答えた。具体的に言うと視線をそらした。
「ご無沙汰しております山田氏。お元気そうで何よりです。ところであなた方はどこでこの妖精郷の話を聞きましたか?」
頃合いを見計らい千陽が話しかける。友好的なセリフではあるが、妖精郷の危険にかかわる事でもあるので少し硬い口調になっていた。
「その質問の前にこちらも聞きたい。『影』の問いの答えだ。
何故答えは『タコ』なのだ?」
ああ、そのことですか。一つ頷いて千陽はこともなげに答える。
「漢字の分解ですね。虫と小と月の入った漢字。――つまり『蛸』です」
なんだとー!? とショックを受ける『発明王』。最終的には『発明王は日本人じゃないしー』と言って誤魔化した。
「で、情報源については教えてもらえるのかしら?」
「電波障害が解決してから様々な通信ツールが発達したのは皆も知っていると思うが」
『発明王』はスマートフォンを懐から取り出した。SNSと呼ばれるアプリケーションのアイコンがいくつか並んでいる。
「このSNSに写真が載ってたのだ。他にも妖精のような姿をしたという目撃例はいくつか見られている。
写真から場所を特定して現地の情報屋に詳しい噂を聞き、妖精郷があるというこの森に向かったというのが此方の経緯だ」
「成程。情報屋からはこの地方の伝承を聞いた、という事ですか」
千陽は頷いたのちに、どうしたものかと額に指をあてた。
電波障害の解決後、情報の通信速度は見る間に速まった。それ自体は生活に多大な恩恵を与えているのだが、こういったことが暴露されやすいという事実もある。
今回は『偉人列伝』も探りのために小人数で来たのだろうが、妖精を探しに大量に人がやってくる可能性もないではないのだ。結界はそういった事例への対策なのだろうが……。
「とにかくいこーぜ。結界壊しちまったことも言わないといけないだろうし」
太刀を鞘に納めながら飛馬が言う。善悪はともあれ、この奥にいるであろう妖精たちを護る防衛機構を壊したのだ。その報告だけはしておかないといけないだろう。覚者達は頷き、奥に向かう。
「その妖精の姿って今わかるかしら?」
大和は『発明王』にSNSにあがっている妖精の姿を見せてもらう。それは記憶の中にいる『彼女』と合致した。ハロウィンに出会ったガーリーな衣装を着た少女。
「どうやらあの長い耳はコスプレじゃなくて本当の姿のようね」
大和は頷いて、千陽を見た。彼も同じように頷く。
「あそこに人がいますよ。あの、初めまして」
羽琉は森の奥からやってくる二組の人影を確認する。どこか民族的な貫頭衣を身にまとい、山歩き用の鉈を腰に携えている男性だ。
背丈も人間のそれと変わらず、目に見えてわかる身体的な特徴はその尖った耳だが、何よりも特徴的――というよりは驚かされたのは守護使役がその傍らにいることだ。そしてそれに語りかけている雰囲気がある。
「あれま。本当に突破されたのか。……あー」
やってきた妖精は覚者の姿を見てどうしたものかと頭を掻く。驚いている様子はあるが、攻撃的な動作はない。むしろどう穏便に済まそうか考えているようだ。
「ここは吾輩に任せてもらおう。なに、数多の事件を解決した吾輩の交渉術にかかればこのような第一村人遭遇、最高の親密度を保てると断言しよう!」
「うん。山田、黙って」
何か言いかけた『発明王』を三言で押さえるミュエル。それを聞きながら羽琉は口を開く。
「僕の名前は宮神羽琉と言います。FiVEという集団に属していまして……ここに妖精の住む村があると聞いてやってきました。
後、結界を壊して申し訳ありません」
「アッキームだ。結界に関してはまた作ればいいから問題ない。……にしても突破されたかぁ。結構自信作だったんだけどなぁ」
アッキーム、と名乗った妖精は肩をすくめながら対応する。どうやら彼が形成した結界のようだ。
「あの影の仕組みは凄いですね。貴方が作られたのですか?」
「ああ。特定の言葉を言わないと強化されたまま、という条件付きの結界だよ。殆どの妖は言葉を喋らないからな」
なるほど、と澄香は納得する。言葉を喋らず突撃する妖には有効な防護だろう。
「そういえば、エフィルディスという女性を知っていますか? ハロウィン……二ヶ月前に出会ったのですが?」
「ああ、ルディが外に出たこともあったなぁ。歌のことを聞かれたとか」
「はい。間違いないでしょう」
千陽はかつて出会った女性の名を出してみた。耳が尖り、不思議な雰囲気を出す女性。彼女は確かに人間だったが、妖精と言われても納得のいく姿だった。それが妖精郷と関係あるのだとすれば。
あのわらべ歌。数え歌の中にあった大妖の存在。
この奇妙な結界。妖を足止めし、世間から隔絶された妖精の里。
「あ……写真、とって、いい? アタシたちの仲間に、小さい子供がいて……」
「いいですけど……え、それがカメラなんですか? はー、やっぱり『外』は違うんだなぁ」
ミュエルはアッキームにスマートフォン片手に問いかける。快諾するアッキームだが、スマフォを見て驚いていた。彼が知る写真を撮る機械とは大きくかけ離れていた。
(やはり、世間とは隔絶して生活しているようですね。それでいて排他的ではない。温厚的な人達のようです)
そんなアッキームの様子を見て、千陽は心の中でメモを取る。おそらく彼らは『外』を嫌って隔絶したのではない。戦いを避けるために結界を張り、閉じこもったのだ。そしてその対象は人間ではない。
妖。
おそらく彼らは妖との戦いを避けるための生活をしている。AAAやFiVEとは異なる手法と考え方で。その方法はもしかしたら、世間の妖対策に使用できるかもしれない。
――それとは別に。
「あの坂を昇れば村が見えます。とりあえず家に招待しますね」
妖精郷と呼ばれる集落。そこにいるであろう人達との出会い。
覚者達はそれを前に、心が躍っていた。
●
「ふ。次こそ『発明王』の頭脳がさえわたるのだ!」
あ、次回もいるんだ山田。
覚者達の言葉なきツッコミが視線となって『発明王』に突き刺さった。
「虫あれど、鳥なし。小あれど、大なし。月あれど、日なし。
如何に」
現れた『影』。その問いかけを受けたのは六名の覚者だった。
「日本の妖精って、どんな存在なんだろう? 小鬼みたいのか、コロポックルみたいのか……」
思いつく限りの古妖を頭に浮かべる宮神 羽琉(CL2001381)。妖精と言って想像できる単語を浮かびあげて、それに見合うものをピックアップする。最終的には会わないとわからないのだが、前もって想像しておくだけでも大分心構えが違うものだ。
「妖精さんたちの結界の技術って、ほんとすごいよね……」
他の妖精に出会ったことのある『ホワイトガーベラ』明石 ミュエル(CL2000172)は『影』を見ながら驚いていた。源素ではない様々な術。この結界もその一つなのだろう。地に伏している燕尾服の男を見ながら、その戦闘力にも感服していた。
「以前、別の依頼で妖精さんに会った事がありましたけれど、あの子とはまた別の種族の妖精さんのようですね……」
同じく他の妖精にあったことのある『居待ち月』天野 澄香(CL2000194)が『影』を見ながらそう呟いた。結界自体は人を拒絶しているようにも見える。これを作った妖精はどのような過去を持っているのか。話をすることで態度が軟化すればいいのだが……。
「謎を解き明かさねば奥に眠る神秘にたどり着けないなんて、まるで砂漠のスフィンクスね」
『月々紅花』環 大和(CL2000477)は足止めする『影』の問いに、そんな感想を抱いた。古代ギリシア神話に出てくるライオン頭の怪物。間違えれば頭から食われてしまう凶悪な怪物だ。『影』の後ろにある神秘は何か。そのことを思い、近くにいる仲間に目をやる。
「そうですね。妖精といえば、彼女を思い出しますね」
その視線に気づいたのか『狗吠』時任・千陽(CL2000014)は頷いた。ハロウィンの時に出会った不思議な少女。妖精を想起させるような姿。勿論妖精という古妖は存在するため確証はない。だが第六感ともいえる何かが疼いていた。
「FiVEにない技術を知ってる奴らか。気にならないって言ったら嘘になるよな」
うんうんと頷いて、『守人刀』獅子王 飛馬(CL2001466)は刀を抜いた。人間には好奇心がある。知らない、ということはそれだけでも興味をひいてしまうのだ。条件を満たせば弱体化する結界。使い道はともかく、珍しい術には違いない。
「答えは……もしかして義務教育じゃねーかな。中(ちゅう)学校はあるけど長(ちょう)学校はないし、小学校はあるけど大学校はない。月曜日にはあるけど、日曜日は休みだからないよな――あいたっ!」
何事も挑戦、とばかりに飛馬が問いに答える。間違っていたのか、神速の一撃が飛んできた。あ、STコメントに明記はしてなかったけど『回答を誤るとダメージを与える』とあるので回避判定はできません。
「答えは――でしょうか?」「――かな?」「――ではないでしょうか?」
千陽、ミュエル、澄香が『影』に向かって答えを返す。
「ふ、そのような答えであるはずがない。危険だから下がって――何ぃ!? 結界が、弱体化した、だと……?」
倒れていた『発明王の生まれ変わり』が警告を飛ばそうとして、『影』が薄くなっているのをみて驚きの声をあげる。動きも明らかに遅くなり、『影』が弱体化したのは明白だ。
だがそれでも『影』は覚者達を阻もうとする。ゆらゆらと蠢きながら、立ちふさがっていた。
覚者達もそれに応じる様に神具を抜き放った。
●
「突破させてもらいます」
軍用ナイフと銃を構えて千陽は『影』に踏み込む。軍隊で学んだ足さばきで間合いを詰め、前世の記憶を強く引き出す。金色に変わる瞳の色が『影』の動きを捕らえる。覚醒した肉体と培った軍隊の鍛錬。それが鋭い動きを生み出す。
千陽のナイフが煌めく。防御重視の軍用ナイフだが、速度と角度があえば斬撃にもなる。『影』は斬られることを恐れて半身を逸らすが、それは千陽の予想通り。反対側の手荷物中で回避直後の『影』を二度打ち抜いた。
「物理攻撃の方が通じそうですね。大きな差はなさそうですが」
「なら予定通りに攻めさせてもらいますね」
頷き澄香は二枚のタロットカードを手にする。羽根を持つ天使が杯に水を入れる絵が描かれた『節制』と、円環の中心に人が存在する『世界』のカード。神具化したカードを手に源素を練り上げる。
木々の間を進む『影』。その動きを目で追いながら、カードを縦に振るった。カードの軌跡は源素により香の風となり、『影』に触れた。それは植物の毒。神秘の毒は結界である『影』にも滅びの一手となる。じわりじわりと削られていく体力。
「弱体化している、とはいえ簡単にはいかないみたいですね」
「でも……効いてる。答えがあってて、よかった……」
戦いの流れが覚者に向いていることを察し、ミュエルは頷いた。実のところ、答えに自信はなかった。最初は『発明王』と同じ答えを想像していたのだが、それは色々悔しいので封印しておく。山田と同レベル、と思った瞬間気分がうつに傾きそうになる。
気を取り直して『影』に意識を向けた。『影』に殴られて頭を押さえている飛馬に向けて、木の力を向けた。飛ばすのは毒や蔓のような攻撃的な術式ではない。優しい香りを放つ癒しの術。
「傷は……アタシが、癒すから、皆は、頑張って、ね」
「おう。感謝するぜ!」
指一本たてて飛馬が回復の礼をする。問いには間違えたが、それを気にした様子はない。元々の性格ゆえか、それとも戦闘に没頭しているからか。ともあれ飛馬の動きによどみはない。敵前に立ち、仲間の盾となっていた。
『影』の腕が蛇のようにしなる。夢見の情報、想像、実際に見た経験、そして直感。飛馬はそれら全ての情報から次の相手の動きを見切ろうとする。『影』の腕が伸びる――よりも先に飛馬は太刀を振るい、鞭のようにしなる影の腕を弾き飛ばしていた。
「巖心流の受け、甘く見るなよ!」
「ええ。前衛は任せてよさそうね」
飛馬の守りを見て、大和は安心したように頷く。『影』の攻撃が厳しければ前に立つことも考慮したが、その必要はなさそうだ。前世との記憶を強く意識しながら、太もものベルトから術符を抜いた。同時に意識も戦闘に向けられる。
木々を縫うように移動する『影』。成程、定型を持たない『影』の形は、森の中の移動を前提としたものなのだろう。だからこそ、固有のパターンが存在する。大和はその一部を見出し、稲妻の術を放つ。待ち伏せするように放たれた雷撃が、『影』を穿つ。
「弱体化できなかったら、こうもうまく当てれなかったかもしれないわね」
「ええ。ですが油断はできません」
大和の言葉に頷きつつも、しかし気は抜けないと羽琉は頬を叩く。覚者になってFiVEに入り、神秘に深く携わるようになってからは恐怖の連続だ。どんな状況でも油断しない。それが羽琉が学んだ教訓である。
弱体化したとはいえ『影』の攻めは止まらない。傷ついた覚者達を見ながら、水の源素を練り上げる羽琉。弓を射る時のように心を沈め、体内で源素を回転させる。そのまま心の中で矢を番え、放った。同時に癒しの水を解き放つ。優しい雨が仲間の傷を癒していく。
「まだ弱いですけど、傷は僕が癒します」
羽琉はミュエルを見て、頷く。癒し手は二人で十分のようだ。他の覚者は『影』に神具を向け、攻めはじめた。
弱体化した『影』は飛馬の堅牢な護りを突破できず、千陽と澄香と大和の攻撃を防ぎきることが出来ない。矢を放ってもミュエルと羽琉に傷を癒され、決定打にはなりそうもなかった。そのままじわりじわりと追い込まれていく。
「あまり危害を加えたくないのですが……申し訳ありません!」
結界を破壊することに罪悪感を感じながら、澄香は『節制』と『世界』を構える。木の源素を携え、『影』に迫った。調和と成就を示す二枚のカードが、覚者を足止めする『影』を割いた。
「見事」
称賛の言葉を一つ残し、『影』は最初からなかったかのように消え去った。
●
「おお、流石音に聞こえしFiVE。吾輩が出るまでもなかったという事だな」
戦いが終わり、半身起こした『発明王』が頷くように言った。その後に傷が痛むのか蹲るようにのた打ち回るのだが。
「あ、忘れる所でした! 山田さん達、大丈夫ですか? 手に余る案件には手出しされない方がいいです、よ……?」
心配するように澄香が『偉人列伝』達の傷を癒そうと術を放つ。だが『発明王』は指を振って答えた。
「吾輩の名前は『発明王の生まれ変わり』。この『発明王』の手に余る事件など大妖ぐらいなのです。今日は少し歯車が狂っただけ」
「今日……『は』?」
ミュエルは『発明王』の言葉に静かに言葉を返した。
「猫さんの時とか……バットの妖とか……ウサギさんに騙されたりとか……電波障害解決で一本蹈鞴に向かったり……。今日……『は』?」
「ぐふぅ、ごはぁ、げふぅ、ぼふぅ……! か、過去は振り返らない。人は未来に向かって進むものなのだから」
ミュエルが列挙する過去の事件に『発明王』は吐血するように悲鳴を上げ、その後に未来を見て答えた。具体的に言うと視線をそらした。
「ご無沙汰しております山田氏。お元気そうで何よりです。ところであなた方はどこでこの妖精郷の話を聞きましたか?」
頃合いを見計らい千陽が話しかける。友好的なセリフではあるが、妖精郷の危険にかかわる事でもあるので少し硬い口調になっていた。
「その質問の前にこちらも聞きたい。『影』の問いの答えだ。
何故答えは『タコ』なのだ?」
ああ、そのことですか。一つ頷いて千陽はこともなげに答える。
「漢字の分解ですね。虫と小と月の入った漢字。――つまり『蛸』です」
なんだとー!? とショックを受ける『発明王』。最終的には『発明王は日本人じゃないしー』と言って誤魔化した。
「で、情報源については教えてもらえるのかしら?」
「電波障害が解決してから様々な通信ツールが発達したのは皆も知っていると思うが」
『発明王』はスマートフォンを懐から取り出した。SNSと呼ばれるアプリケーションのアイコンがいくつか並んでいる。
「このSNSに写真が載ってたのだ。他にも妖精のような姿をしたという目撃例はいくつか見られている。
写真から場所を特定して現地の情報屋に詳しい噂を聞き、妖精郷があるというこの森に向かったというのが此方の経緯だ」
「成程。情報屋からはこの地方の伝承を聞いた、という事ですか」
千陽は頷いたのちに、どうしたものかと額に指をあてた。
電波障害の解決後、情報の通信速度は見る間に速まった。それ自体は生活に多大な恩恵を与えているのだが、こういったことが暴露されやすいという事実もある。
今回は『偉人列伝』も探りのために小人数で来たのだろうが、妖精を探しに大量に人がやってくる可能性もないではないのだ。結界はそういった事例への対策なのだろうが……。
「とにかくいこーぜ。結界壊しちまったことも言わないといけないだろうし」
太刀を鞘に納めながら飛馬が言う。善悪はともあれ、この奥にいるであろう妖精たちを護る防衛機構を壊したのだ。その報告だけはしておかないといけないだろう。覚者達は頷き、奥に向かう。
「その妖精の姿って今わかるかしら?」
大和は『発明王』にSNSにあがっている妖精の姿を見せてもらう。それは記憶の中にいる『彼女』と合致した。ハロウィンに出会ったガーリーな衣装を着た少女。
「どうやらあの長い耳はコスプレじゃなくて本当の姿のようね」
大和は頷いて、千陽を見た。彼も同じように頷く。
「あそこに人がいますよ。あの、初めまして」
羽琉は森の奥からやってくる二組の人影を確認する。どこか民族的な貫頭衣を身にまとい、山歩き用の鉈を腰に携えている男性だ。
背丈も人間のそれと変わらず、目に見えてわかる身体的な特徴はその尖った耳だが、何よりも特徴的――というよりは驚かされたのは守護使役がその傍らにいることだ。そしてそれに語りかけている雰囲気がある。
「あれま。本当に突破されたのか。……あー」
やってきた妖精は覚者の姿を見てどうしたものかと頭を掻く。驚いている様子はあるが、攻撃的な動作はない。むしろどう穏便に済まそうか考えているようだ。
「ここは吾輩に任せてもらおう。なに、数多の事件を解決した吾輩の交渉術にかかればこのような第一村人遭遇、最高の親密度を保てると断言しよう!」
「うん。山田、黙って」
何か言いかけた『発明王』を三言で押さえるミュエル。それを聞きながら羽琉は口を開く。
「僕の名前は宮神羽琉と言います。FiVEという集団に属していまして……ここに妖精の住む村があると聞いてやってきました。
後、結界を壊して申し訳ありません」
「アッキームだ。結界に関してはまた作ればいいから問題ない。……にしても突破されたかぁ。結構自信作だったんだけどなぁ」
アッキーム、と名乗った妖精は肩をすくめながら対応する。どうやら彼が形成した結界のようだ。
「あの影の仕組みは凄いですね。貴方が作られたのですか?」
「ああ。特定の言葉を言わないと強化されたまま、という条件付きの結界だよ。殆どの妖は言葉を喋らないからな」
なるほど、と澄香は納得する。言葉を喋らず突撃する妖には有効な防護だろう。
「そういえば、エフィルディスという女性を知っていますか? ハロウィン……二ヶ月前に出会ったのですが?」
「ああ、ルディが外に出たこともあったなぁ。歌のことを聞かれたとか」
「はい。間違いないでしょう」
千陽はかつて出会った女性の名を出してみた。耳が尖り、不思議な雰囲気を出す女性。彼女は確かに人間だったが、妖精と言われても納得のいく姿だった。それが妖精郷と関係あるのだとすれば。
あのわらべ歌。数え歌の中にあった大妖の存在。
この奇妙な結界。妖を足止めし、世間から隔絶された妖精の里。
「あ……写真、とって、いい? アタシたちの仲間に、小さい子供がいて……」
「いいですけど……え、それがカメラなんですか? はー、やっぱり『外』は違うんだなぁ」
ミュエルはアッキームにスマートフォン片手に問いかける。快諾するアッキームだが、スマフォを見て驚いていた。彼が知る写真を撮る機械とは大きくかけ離れていた。
(やはり、世間とは隔絶して生活しているようですね。それでいて排他的ではない。温厚的な人達のようです)
そんなアッキームの様子を見て、千陽は心の中でメモを取る。おそらく彼らは『外』を嫌って隔絶したのではない。戦いを避けるために結界を張り、閉じこもったのだ。そしてその対象は人間ではない。
妖。
おそらく彼らは妖との戦いを避けるための生活をしている。AAAやFiVEとは異なる手法と考え方で。その方法はもしかしたら、世間の妖対策に使用できるかもしれない。
――それとは別に。
「あの坂を昇れば村が見えます。とりあえず家に招待しますね」
妖精郷と呼ばれる集落。そこにいるであろう人達との出会い。
覚者達はそれを前に、心が躍っていた。
●
「ふ。次こそ『発明王』の頭脳がさえわたるのだ!」
あ、次回もいるんだ山田。
覚者達の言葉なきツッコミが視線となって『発明王』に突き刺さった。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし

■あとがき■
どくどくです。
あっさり答えられたのはSTとしてよかったと思うべきか、おのれ次こそはとハンカチをかむべきか。
そんなわけで妖精郷さわりです。次回から本格的に妖精たちと関わっていただきます。
それではまた、妖精郷で。
あっさり答えられたのはSTとしてよかったと思うべきか、おのれ次こそはとハンカチをかむべきか。
そんなわけで妖精郷さわりです。次回から本格的に妖精たちと関わっていただきます。
それではまた、妖精郷で。
