<東京大殺界>チェンジリング・ダブルクロス
●可能性交換棺の可能性
第八研究チームより、関係者各位に連絡。
研究対象FA-10502『可能性交換棺』について新たな発見がありました。
可能性交換棺は複数台の睡眠チャンバーと中枢サーバーによって構成された機械群です。
ある処理を施したうえでこの睡眠チャンバーにはいり熟睡状態となることで、当人は現実の世界とは異なる世界(『裏世界』と仮称されています)を体感できます。
今回、新たに判明した処理を行なった場合、当人は裏世界における自分にインスタントメッセージを送信できることがわかりました。
そのうえで裏世界における自分(『平行存在』と仮称します)の行動を追体験することもできるようです。
この機能をお試しになりたい方は、以下の番号へ連絡のうえ研究室までお越しください。
(――『ファイヴの数名に送られたメール』より抜粋)
第八研究チームより、関係者各位に連絡。
研究対象FA-10502『可能性交換棺』について新たな発見がありました。
可能性交換棺は複数台の睡眠チャンバーと中枢サーバーによって構成された機械群です。
ある処理を施したうえでこの睡眠チャンバーにはいり熟睡状態となることで、当人は現実の世界とは異なる世界(『裏世界』と仮称されています)を体感できます。
今回、新たに判明した処理を行なった場合、当人は裏世界における自分にインスタントメッセージを送信できることがわかりました。
そのうえで裏世界における自分(『平行存在』と仮称します)の行動を追体験することもできるようです。
この機能をお試しになりたい方は、以下の番号へ連絡のうえ研究室までお越しください。
(――『ファイヴの数名に送られたメール』より抜粋)

■シナリオ詳細
■成功条件
1.平行存在へのアクセスを試す
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
そのかわりきわめて特殊なロールプレイ、ないしは真相究明、ないしは高次元な成功を収めることができるでしょう。
以下の注意事項と説明をよくお読みのうえ、お楽しみください。
●平行存在へのアクセス
このシナリオでは、『裏世界』におけるPCの平行存在にアクセスし、その行動を追体験することができます。
よりメタな視点でいえば、リプレイの内容は主に平行存在の日常風景となります。
プレイング内容もまた、『自分の平行存在はこういう立場にいて、こういう活動をしています』というものになります。
つまり、このシナリオはある意味ではIF世界のシナリオでもあるのです。
ただし現実にきわめて深く直結した、裏世界のシナリオでもあるのです。
●プレイングのかけかた
当シナリオは通常とは少々趣のことなるプレイングを要します。
『裏世界』での、PCの平行存在についてのプレイングを書いてください。
たとえば「私は能亜財団の特別顧問をしている。今の研究材料は~」といった具合です。
ただしOPにもあるとおり、この平行存在にはPCからのインスタントメッセージが送られています。
それはある日夢の中で囁かれたり、いつの間にか自分で紙に書いていたり、ふとした時幻聴したりといった形で現われます。
インスタントメッセージの内容は『EXプレイング』に記入してください。
なぜなら、その方が愉快な出来事が起きるかもしれないからです。
この説明をお読みの皆さんは、『平行存在の設定は好きに作っていいの? 世界観に矛盾しないの?』とお考えかもしれません。
ご安心ください、『このシナリオに一切の矛盾はありません』。
それが裏世界の最大のヒントであり、答えです。
PCの(ないしはPLの)目的を叶えるべく、裏世界および平行存在へのアクセスを行なってください。
キャラクターの目標を達成したり、真相を究明したり、または秘密の目的を完遂したり、IFキャラクターのロールプレイを楽しんだり、お好きなようになさってください。
何を相談していいかよくわかんなくなると思うので、『最近おもしろかった依頼』について雑談しつつ、たまに他の人にお願いしたいことを頼んだりするのが妥当でしょう。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
6日
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/6
6/6
公開日
2017年12月06日
2017年12月06日
■メイン参加者 6人■

●東京大殺界
インサイダーの発生を確認。
アウトサイダーによるカウンターエフェクトを要請。
……。
……。
要請は受理されませんでした。
世界改変による情報爆発の恐れがあります。メンタルショックに備えてください。
爆発まで3、2、1……。
●可能性交換、『赤き炎のラガッツァ』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)
後の政治犯罪組織ファイヴが予知能力者の存在を主張し、きたるべき災厄に向けた備えとして多くの学者や兵器技術者を確保し始めた1995年。
同時期に政治的台頭を見せ始めた能亜財団は危険な怪異存在の証明に成功。この資料をもって怪異撲滅計画を国家プロジェクトとし、予算の多くを獲得した。
……それから、二十年余りが過ぎた。
「十余一さん、さっさと準備を済ませてください。ネジレの殲滅作戦はまだ終わってないんですよ」
鏡の前で髪を整えるラーラに、黒髪の女性がきついトーンで呼びかけてくる。
ラーラはサッと鏡に布をかぶせると、笑顔で振り返った。
「はい、もう大丈夫です十倉さん。行きましょうか」
「ファイヴの出はこれだから」
トゲのある口調に、ラーラ――玉串ノ巫女第十一席『十余一』は作り笑いを浮かべた。
足早に去る十倉をうかがうように、八柱がそっと近づいてきて耳打ちをする。
「あの子、九美上を襲名できなかったから根に持ってるんですよ。あーやだやだ、女の嫉妬は犬も食わないって言いますもんねー」
「それを言うなら夫婦喧嘩ですよ。それに、私だって九美上は襲名していません。あれは、永久欠番だと思いますから」
ぎゅっと、巫女服の胸元を握るラーラ。
ちらりと見やる化粧鏡。布で隠した裏側には、ルージュでこう書かれていた。
『十余一 ラーラ、あなたならココノさんを取り戻せますか?』
ネジレによる感染拡大は日増しに加速している。
仮称ズイエキススリによる一団が第三首都へ侵攻を始めたことを受け、玉串の巫女第七席および十一席までを傍付き黒子衆含め総員で迎撃する命令を受けていた。
ラーラは百名余りの黒子衆を振り返り、榊を強く握りしめた。
「我々は日本最後の砦です。しかし我々には家族があり、友があり、恋人があります。一人の死は無限の絶望を生むもの。一人たりとも欠けることなく、この作戦を終えましょう!」
「……しかし」
黒子衆のまとめ役、市川がおそるおそる頭を上げた。
「我々の武器は壊魂必殺の神威。自らの死を恐れれば、それは日本の死を意味します」
「それでも。それでもです」
ラーラはぐるりと反転し、迫り来る津波のごときネジレの軍勢をにらんだ。
「できる筈なんです。誰も死なない、戦いが」
●可能性交換、『音楽教諭』向日葵 御菓子(CL2000429)
フライパンを火にかける。
オリーブオイルを垂らして、布で丁寧にのばす。
海藻と豚の骨からとったダシ汁を溶き卵と混ぜたものに刻んだネギやショウガをおとし、更に細かく刻んだにんじんやピーマンを混ぜ込んでいく。
それをフライパンにうすく広げていけば、心地よい香りと共にじゅわっという音があがる。
御菓子はその様子を真剣に、しかしどこか楽しげに観察していた。
広いキッチンには自分とあと二人。彼らは御菓子の助手として機能する料理人たちだ。
作業報告を受けて、御菓子はてきぱきと別の料理にとりかかる。
御菓子は、豪邸で働く料理人である。
ただ料理店で働くのとはワケが違う、一食一食に人生をかけた過酷な労働環境だ。
しかし『お姫様』から賜わった言葉を思いだせば、そんな苦労もすぐに吹き飛んだ。
『わたしの頭あり、舌であり、手であり、足であるのね…そうするともう一人のわたしなんだわ』と、食後に仰ったあの瞬間を、御菓子は忘れることがない。
その信頼に応えるべく、今日も一食に人生を賭ける。
ワゴンを押し、広間へと向かう。
巨大なテーブルにはお姫様ひとりが腰掛けている。
テーブルを挟んだ向かい側には大きなテレビモニターが設置され、日本のニュース番組を映していた。
慇懃なニュースキャスターによれば、拡大したネジレの勢力は第三首都へ侵攻しているという。これら怪異撲滅のため能亜財団はプロジェクトを共有する玉串部隊を展開し、防衛にあたるそうだ。我が誇り高き国は決してかの醜き怪異たちに勝利するであろう、だとか、なんとか。
そのニュースを見るお姫様の目は、どこか悲しげだった。
料理を並べる御菓子に、視線をテレビに固定したまま問いかける。
「御菓子。あなたは、古妖たちを敵だと思う」
「コヨウ……」
反芻するように呟く御菓子。
お姫様は世間一般に用いられる怪異という単語を使わない。その代わりファイヴの提唱していた古妖という単語を積極的に使った。
天皇と国家に対して歴史的な大規模テロを起こしたファイヴは、子供でも知っているくらいの大悪党であり悪の組織だ。だがその内情を知っている者はごく僅かである。
お姫様がそんな彼らとどんな関係にあったのか、御菓子は知らない。だが彼女が親しく思うのであれば、御菓子もそう思うようにしようと決めていた。
「私は全てをしりません。敵になるものもあれば、友達になるものもあると思います。人間のように」
「人間のように」
今度はお姫様が反芻する番だった。
こんな噂を聞いたことがある。
お姫様が貧民街から救った子供が、人間ではなく古妖だったという噂だ。まるで人間と区別がつかないほどのソレはすくすくと成長し、今はお姫様の仕事を任せられるほどに育っているという。
『彼女』を見て、ネジレと同じものだと考える者はいないだろう。
だが、それも、雲の上のこと。
いち料理人の御菓子にとっては。
「おいしいわ」
の一言が、なによりも大切だ。
だから、夢の中で自分に似た誰かが呟いたあの言葉に、自分は堂々とイエスと言える。
『あなたは誰かを幸せにしていますか?』
●可能性交換、『冷徹の論理』緒形 逝(CL2000156)
沈み落ちるような感覚。
浮き上がるような錯覚。
そして幻聴。
『それ』は大きなブザーの音にせかされるように目を覚ました。
ゆっくりと開くフタ。
睡眠チャンバーの中から手を伸ばし、フチと掴む。
身体を起こすと白衣にしみた汗が気持ち悪く肌にはりついていた。
より気持ちが悪いのは、日本刀が自らにベルト固定されていることである。
サムライよろしく腰にさすならまだしも、抱き込むように袖口のベルトに固定されているのだ。
チャンバーから出てデスクへと近づく。大きなモニターには『5057-001』のナンバリングと、『A博士』というワードがあった。
蒐囚壁財団に収容されていたいくつかの怪異存在の多くは、能亜財団が国家プロジェクトに参加した際に接収という名の襲撃を受け破壊された。
人の形をしたものも数多くあったが、例外なく殺処分ないしは永久連続破壊処理を受けた。
それは能亜財団が怪異撲滅を目標として掲げているがゆえの行動だったが、それにしては過激な動きであった。
だがその過激さは、あるプロジェクトを隠匿するための囮だった。
『それ』を含め多くの怪異存在は能亜財団の施設に収容され、研究されている。
怪異を撲滅するための怪異を、彼らは求めているのだ。
『それ』は部屋を出ると、警備員に言われるまま与えられた自室へと戻った。
殺風景な部屋にはベッドと机、そして椅子があるのみだ。
刑務所と変わらない。が、『それ』が待遇に不満をもらしたことはない。
『それ』の役割をこなすのに過不足なく、『それ』をとどめておくのに過不足ないからだ。
『それ』は椅子に腰掛けると、日常業務であるアーカイブの作成を始める。
今日も閲覧可能データが更新されている。
夢見という、蒐囚壁財団から接収した怪異存在に関するデータだ。
読み込もうかと思ったが、その前にふと目に付いたものがあった。
付箋だ。
や、お久し振りでない?
ちゃんとログを残しておいたけど『聞いた』かしら、考える事は同じだ。いつもの場所よ。
依頼も代行してもらって済まんね。
こっちもこっちで懐かしい扱いだから近い内に、『お散歩』に行くぞう。
その前に、ノイズを消しといておくれ。
あんな酷いデッドコピーでも機能するみたいだしね。
『それ』は酷い耳鳴りを感じ、耳元を叩いた。
チャンバーを出る前に聞こえた幻聴が、また聞こえてくるのだ。
「ノイズ、か」
『それ』は立ち上がった。
その瞬間である。施設内に警報が鳴り響いた。
●可能性交換、納屋 タヱ子(CL2000019)
「青紫、交代だ」
青紫と呼ばれた少女は、『わかりました』と言って待機室を出た。
はがれかけたタイルの床を進み、外へ出る。
『あおぞら記念病院』という看板がいまにも傾きそうになっているが、それを直すのは彼女の仕事ではない。
彼女の仕事は、個人携行火器を装備して施設の周囲を歩き、登録のない人物を見かけたら即座に殺害し、報告することである。
そしてこの施設の役割は、ある怪異存在を閉じ込めること、であった。
世間対面的に言えば、ここは保護施設である。
ある一人の女性を正しい手順で保護し、世界を危険から守ること。
言い間違いはない。女性を保護し続けることが、世界人類を守ることにつながるのだと……雇い主の能亜財団はいう。
「知ってるか。ここに監禁してる女、予知能力者らしいぜ」
「そう。世界が滅ぶほどのことかしら、それって」
「さあね。けどまた予言をしたそうだ」
「なんて?」
「俺が知るわけないだろ。ただ、警備が強化されるって話だ」
「軍隊でも攻めてくるのかしらね……」
ツーマンセルで組んだ同僚の警備員に適当な相づちを打ちながら、少女は病院の外を見やる。
何かの集団が近づいているように見える。
あれはなんの集団だ。
数にして六人。
人間……では、ない。
「報告して、ネジレよ!」
少女は小銃の乱射で牽制をかけながら、病院の入り口へと走った。
「なにしてるの、早く報告……!」
振り返ると、同僚の首が飛んでいた。
凄まじい速度で接近してきたネジレが、刀のようなもので同僚の首を切り飛ばしたのだ。
返す刀で少女を襲う。
少女は飛び退き、牽制射撃を続けながら通信機に呼びかけた。
「ネジレ発生。数は六。特殊能力タイプと断定、応援急いで」
入り口に転がり込み、扉を閉める。
壁の後ろに隠れ、銃をリロードしながら呼吸を整えた。
グローブを脱ぎ、袖をまくる。そして腕についた傷を見た。
「嘘でしょ。嘘でしょ。嘘よね。私は、私は――」
『世界はネジレていきます。避けられません。元に戻す方法を探して』
ナイフを使った傷跡は、丁寧な文字でそう刻まれていた。
「私は、予知能力者なんかじゃない」
爆炎によって扉が破壊される。
いよいよ死ぬ準備をする時が来たようだ。
いや待て、どうせ死ぬなら、従ってみるのも悪くないか?
●可能性交換、『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)
『能亜財団内で可能性交換棺を見つけ、腕に目印を付けて中に入れ』
『能亜財団内で可能性交換棺を見つけ、腕に目印を付けて中に入れ』
『能亜財団内で可能性交換棺を見つけ、腕に目印を付けて中に入れ』
『能亜財団内で可能性交換棺を見つけ、腕に目印を付けて中に入れ』
『能亜財団内で可能性交換棺を見つけ、腕に目印を付けて中に入れ』
『能亜財団内で可能性交換棺を見つけ、腕に目印を付けて中に入れ』
「……うわあ!」
奏空は悲鳴をあげて飛び起きた。
普段は車を収納するためのガレージに、パイプベッドを備え付けた仮設ハウスの中だ。
ラジオからはアメリカのカントリーミュージックが流れ、天井からぶら下がった裸電球はゆっくりと揺れている。
……揺れている?
「まずい、奴らだ!」
奏空は全ての支度をすっとばして、枕の下に入れた拳銃を抜いた。
そしてベッドの下に滑り込むと、来るべき衝撃にそなえた。
ドン、という音と共にガレージの壁が破壊される。
中に入ってきたピンク色の肌をしたバケモノに、奏空は息を潜める。
バケモノは何者かの死体を片手に掴み、ずるずると引きずっていた。
周囲を見回す。誰も居ないと思ったのか、死体を手放しきびすを返したその時、奏空はベッドの下から転がり出た。
「死ね、ネジレッ!」
銃弾を後頭部にめいっぱい撃ち込む。
赤い血を吹いて倒れるネジレ。
奏空は起き上がり、別のネジレが駆けつけてくることを警戒したが……どうやらそれはないらしい。
改めて、倒れた人間とネジレの死体を見比べる。
まるで同じ生物には見えないが、政府の発表によればネジレは人間に何らかのウィルスが感染した結果現われる病気だという。
本能的に人間を殺し、それらを満たすとどこかへと帰って行く。
そんな奴らから人々を守るべく活動していたネジレハンター……の跡を継いだのが、奏空であった。
かつてのハンターは戦いの中で命を散らし、多くの研究資料を残してこの世を去った。
彼に憧れて助手をつとめていた奏空は難しすぎる研究資料を頑張って読み解きながら、ネジレとの戦いを続けていた。
そんな彼の耳に、ラジオからニュースが聞こえてきた。
能亜財団の施設にネジレが襲撃をしかけたというニュースである。
奏空は銃の弾が沢山はいったジャケットを羽織り、壊れたままのガレージをおいて飛び出した。
●可能性交換、『新緑の剣士』御影・きせき(CL2001110)
きせきはクラスの人気者だ。
男の子とは思えないほど可愛らしい容姿と、素直で明るい性格。剣道部で汗を流すストイックさやそれでいて年頃の少年らしく漫画やテレビゲームを楽しむ趣味をもつ彼を、好まない者なんていない。
特別なことはなくて、普通の家庭で普通に育ち、普通にクラスに溶け込んだ少年である。
「ばいばーい、またあした!」
部活帰りに友達と別れ、家に帰る。
夕飯の支度をする母にただいまを言って、二階の部屋へと駆け上がる。
ここまでは普通の少年だ。
いや、ここからも普通の少年かもしれない。
部屋の扉を閉める。ドアの内側には鉛筆で『大人には内緒だよ』と書かれていた。
鞄を置いてベッドに腰掛ける。
全身がうつる大きな鏡が正面にあり、きせきはビシッとポーズをとってみせた。
彼は頭の中で設定を作って遊んでいた。
自分は異世界から来た戦士。
本当の自分は前世の英雄を身体に宿して、すごい剣術で悪い奴を倒すのだ。
勉強がそれほどできるわけでもなく、部活動でもそれほど秀でてはいない彼の、空想による自尊心の補填であったのかもしれない。
鏡にはマジックで『大人には内緒だよ』と書かれていた。
「えへへ、人に言ったら笑われちゃうよね」
だからか、きせきはこっそりノートに自分の考えた設定をまとめる遊びをしていた。
秘密ノートには彼のすごい剣術や、ハカセという人物のプロフィールや、自分の所属する組織の設定が書かれている。
ノートの最後に血で『大人には内緒だよ』と書かれていた。
目を閉じて空想する。
ニュースでやっているネジレ事件。第三首都が襲撃されているという、どこか遠くの大惨事。
そこへ自分がキラキラとした光を纏って空を飛び、天使のように舞い降りるのだ。
そしてすごい剣術でばっさばっさとネジレを倒していくのだ。
「なんてね」
あははと笑うきせき。
彼の部屋の壁には。
『大人には内緒だよ。話したら精神病院に入れられちゃうよ』
と緑色の塗料で大きく書き付けられていた。
そのまわりに幾何学模様がびっしりと描かれている。
外で、サイレンが鳴っている。
●可能性交換、『 』 ・ 。
玉串部隊第二から第十席までが全滅したという報をうけ、能亜財団は緊急警報を発令した。
保護下にある町の住民を強制避難させ、空爆による攻撃を行なうのだ。
空爆を抜けたネジレの一団は町の中心にある能亜財団施設へと突入。
スタッフの大半が殺され、ごく一部が逃げ延びた。
『あおぞら記念病院』を装ったその施設の中で、ふらふらと歩くフルフェイスヘルメットの男がひとり。
その足下には、小銃を持った少女が目を開いたまま倒れている。
肩に重傷を負った少年が、拳銃だけを握りしめて彼と少女を交互に見た。
ヘルメットはある部屋を指さし、ぐったりと力尽きる。
少年は頷き、部屋へと駆け込んだ。
睡眠チャンバーがひとつ。
5057-001というナンバーが、モニターに映っている。
少年はナイフで腕に三角形を三つ刻み込み、チャンバーへと入っていった。
モニターに新たに文字が流れていく。
インサイダーの発生を確認。
アウトサイダーによるカウンターエフェクトを要請。
……。
……。
要請は受理されました。
98%の世界改変が阻止されました。
2%の世界改変が行なわれました。
情報爆発に備えてください。
インサイダーの発生を確認。
アウトサイダーによるカウンターエフェクトを要請。
……。
……。
要請は受理されませんでした。
世界改変による情報爆発の恐れがあります。メンタルショックに備えてください。
爆発まで3、2、1……。
●可能性交換、『赤き炎のラガッツァ』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)
後の政治犯罪組織ファイヴが予知能力者の存在を主張し、きたるべき災厄に向けた備えとして多くの学者や兵器技術者を確保し始めた1995年。
同時期に政治的台頭を見せ始めた能亜財団は危険な怪異存在の証明に成功。この資料をもって怪異撲滅計画を国家プロジェクトとし、予算の多くを獲得した。
……それから、二十年余りが過ぎた。
「十余一さん、さっさと準備を済ませてください。ネジレの殲滅作戦はまだ終わってないんですよ」
鏡の前で髪を整えるラーラに、黒髪の女性がきついトーンで呼びかけてくる。
ラーラはサッと鏡に布をかぶせると、笑顔で振り返った。
「はい、もう大丈夫です十倉さん。行きましょうか」
「ファイヴの出はこれだから」
トゲのある口調に、ラーラ――玉串ノ巫女第十一席『十余一』は作り笑いを浮かべた。
足早に去る十倉をうかがうように、八柱がそっと近づいてきて耳打ちをする。
「あの子、九美上を襲名できなかったから根に持ってるんですよ。あーやだやだ、女の嫉妬は犬も食わないって言いますもんねー」
「それを言うなら夫婦喧嘩ですよ。それに、私だって九美上は襲名していません。あれは、永久欠番だと思いますから」
ぎゅっと、巫女服の胸元を握るラーラ。
ちらりと見やる化粧鏡。布で隠した裏側には、ルージュでこう書かれていた。
『十余一 ラーラ、あなたならココノさんを取り戻せますか?』
ネジレによる感染拡大は日増しに加速している。
仮称ズイエキススリによる一団が第三首都へ侵攻を始めたことを受け、玉串の巫女第七席および十一席までを傍付き黒子衆含め総員で迎撃する命令を受けていた。
ラーラは百名余りの黒子衆を振り返り、榊を強く握りしめた。
「我々は日本最後の砦です。しかし我々には家族があり、友があり、恋人があります。一人の死は無限の絶望を生むもの。一人たりとも欠けることなく、この作戦を終えましょう!」
「……しかし」
黒子衆のまとめ役、市川がおそるおそる頭を上げた。
「我々の武器は壊魂必殺の神威。自らの死を恐れれば、それは日本の死を意味します」
「それでも。それでもです」
ラーラはぐるりと反転し、迫り来る津波のごときネジレの軍勢をにらんだ。
「できる筈なんです。誰も死なない、戦いが」
●可能性交換、『音楽教諭』向日葵 御菓子(CL2000429)
フライパンを火にかける。
オリーブオイルを垂らして、布で丁寧にのばす。
海藻と豚の骨からとったダシ汁を溶き卵と混ぜたものに刻んだネギやショウガをおとし、更に細かく刻んだにんじんやピーマンを混ぜ込んでいく。
それをフライパンにうすく広げていけば、心地よい香りと共にじゅわっという音があがる。
御菓子はその様子を真剣に、しかしどこか楽しげに観察していた。
広いキッチンには自分とあと二人。彼らは御菓子の助手として機能する料理人たちだ。
作業報告を受けて、御菓子はてきぱきと別の料理にとりかかる。
御菓子は、豪邸で働く料理人である。
ただ料理店で働くのとはワケが違う、一食一食に人生をかけた過酷な労働環境だ。
しかし『お姫様』から賜わった言葉を思いだせば、そんな苦労もすぐに吹き飛んだ。
『わたしの頭あり、舌であり、手であり、足であるのね…そうするともう一人のわたしなんだわ』と、食後に仰ったあの瞬間を、御菓子は忘れることがない。
その信頼に応えるべく、今日も一食に人生を賭ける。
ワゴンを押し、広間へと向かう。
巨大なテーブルにはお姫様ひとりが腰掛けている。
テーブルを挟んだ向かい側には大きなテレビモニターが設置され、日本のニュース番組を映していた。
慇懃なニュースキャスターによれば、拡大したネジレの勢力は第三首都へ侵攻しているという。これら怪異撲滅のため能亜財団はプロジェクトを共有する玉串部隊を展開し、防衛にあたるそうだ。我が誇り高き国は決してかの醜き怪異たちに勝利するであろう、だとか、なんとか。
そのニュースを見るお姫様の目は、どこか悲しげだった。
料理を並べる御菓子に、視線をテレビに固定したまま問いかける。
「御菓子。あなたは、古妖たちを敵だと思う」
「コヨウ……」
反芻するように呟く御菓子。
お姫様は世間一般に用いられる怪異という単語を使わない。その代わりファイヴの提唱していた古妖という単語を積極的に使った。
天皇と国家に対して歴史的な大規模テロを起こしたファイヴは、子供でも知っているくらいの大悪党であり悪の組織だ。だがその内情を知っている者はごく僅かである。
お姫様がそんな彼らとどんな関係にあったのか、御菓子は知らない。だが彼女が親しく思うのであれば、御菓子もそう思うようにしようと決めていた。
「私は全てをしりません。敵になるものもあれば、友達になるものもあると思います。人間のように」
「人間のように」
今度はお姫様が反芻する番だった。
こんな噂を聞いたことがある。
お姫様が貧民街から救った子供が、人間ではなく古妖だったという噂だ。まるで人間と区別がつかないほどのソレはすくすくと成長し、今はお姫様の仕事を任せられるほどに育っているという。
『彼女』を見て、ネジレと同じものだと考える者はいないだろう。
だが、それも、雲の上のこと。
いち料理人の御菓子にとっては。
「おいしいわ」
の一言が、なによりも大切だ。
だから、夢の中で自分に似た誰かが呟いたあの言葉に、自分は堂々とイエスと言える。
『あなたは誰かを幸せにしていますか?』
●可能性交換、『冷徹の論理』緒形 逝(CL2000156)
沈み落ちるような感覚。
浮き上がるような錯覚。
そして幻聴。
『それ』は大きなブザーの音にせかされるように目を覚ました。
ゆっくりと開くフタ。
睡眠チャンバーの中から手を伸ばし、フチと掴む。
身体を起こすと白衣にしみた汗が気持ち悪く肌にはりついていた。
より気持ちが悪いのは、日本刀が自らにベルト固定されていることである。
サムライよろしく腰にさすならまだしも、抱き込むように袖口のベルトに固定されているのだ。
チャンバーから出てデスクへと近づく。大きなモニターには『5057-001』のナンバリングと、『A博士』というワードがあった。
蒐囚壁財団に収容されていたいくつかの怪異存在の多くは、能亜財団が国家プロジェクトに参加した際に接収という名の襲撃を受け破壊された。
人の形をしたものも数多くあったが、例外なく殺処分ないしは永久連続破壊処理を受けた。
それは能亜財団が怪異撲滅を目標として掲げているがゆえの行動だったが、それにしては過激な動きであった。
だがその過激さは、あるプロジェクトを隠匿するための囮だった。
『それ』を含め多くの怪異存在は能亜財団の施設に収容され、研究されている。
怪異を撲滅するための怪異を、彼らは求めているのだ。
『それ』は部屋を出ると、警備員に言われるまま与えられた自室へと戻った。
殺風景な部屋にはベッドと机、そして椅子があるのみだ。
刑務所と変わらない。が、『それ』が待遇に不満をもらしたことはない。
『それ』の役割をこなすのに過不足なく、『それ』をとどめておくのに過不足ないからだ。
『それ』は椅子に腰掛けると、日常業務であるアーカイブの作成を始める。
今日も閲覧可能データが更新されている。
夢見という、蒐囚壁財団から接収した怪異存在に関するデータだ。
読み込もうかと思ったが、その前にふと目に付いたものがあった。
付箋だ。
や、お久し振りでない?
ちゃんとログを残しておいたけど『聞いた』かしら、考える事は同じだ。いつもの場所よ。
依頼も代行してもらって済まんね。
こっちもこっちで懐かしい扱いだから近い内に、『お散歩』に行くぞう。
その前に、ノイズを消しといておくれ。
あんな酷いデッドコピーでも機能するみたいだしね。
『それ』は酷い耳鳴りを感じ、耳元を叩いた。
チャンバーを出る前に聞こえた幻聴が、また聞こえてくるのだ。
「ノイズ、か」
『それ』は立ち上がった。
その瞬間である。施設内に警報が鳴り響いた。
●可能性交換、納屋 タヱ子(CL2000019)
「青紫、交代だ」
青紫と呼ばれた少女は、『わかりました』と言って待機室を出た。
はがれかけたタイルの床を進み、外へ出る。
『あおぞら記念病院』という看板がいまにも傾きそうになっているが、それを直すのは彼女の仕事ではない。
彼女の仕事は、個人携行火器を装備して施設の周囲を歩き、登録のない人物を見かけたら即座に殺害し、報告することである。
そしてこの施設の役割は、ある怪異存在を閉じ込めること、であった。
世間対面的に言えば、ここは保護施設である。
ある一人の女性を正しい手順で保護し、世界を危険から守ること。
言い間違いはない。女性を保護し続けることが、世界人類を守ることにつながるのだと……雇い主の能亜財団はいう。
「知ってるか。ここに監禁してる女、予知能力者らしいぜ」
「そう。世界が滅ぶほどのことかしら、それって」
「さあね。けどまた予言をしたそうだ」
「なんて?」
「俺が知るわけないだろ。ただ、警備が強化されるって話だ」
「軍隊でも攻めてくるのかしらね……」
ツーマンセルで組んだ同僚の警備員に適当な相づちを打ちながら、少女は病院の外を見やる。
何かの集団が近づいているように見える。
あれはなんの集団だ。
数にして六人。
人間……では、ない。
「報告して、ネジレよ!」
少女は小銃の乱射で牽制をかけながら、病院の入り口へと走った。
「なにしてるの、早く報告……!」
振り返ると、同僚の首が飛んでいた。
凄まじい速度で接近してきたネジレが、刀のようなもので同僚の首を切り飛ばしたのだ。
返す刀で少女を襲う。
少女は飛び退き、牽制射撃を続けながら通信機に呼びかけた。
「ネジレ発生。数は六。特殊能力タイプと断定、応援急いで」
入り口に転がり込み、扉を閉める。
壁の後ろに隠れ、銃をリロードしながら呼吸を整えた。
グローブを脱ぎ、袖をまくる。そして腕についた傷を見た。
「嘘でしょ。嘘でしょ。嘘よね。私は、私は――」
『世界はネジレていきます。避けられません。元に戻す方法を探して』
ナイフを使った傷跡は、丁寧な文字でそう刻まれていた。
「私は、予知能力者なんかじゃない」
爆炎によって扉が破壊される。
いよいよ死ぬ準備をする時が来たようだ。
いや待て、どうせ死ぬなら、従ってみるのも悪くないか?
●可能性交換、『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)
『能亜財団内で可能性交換棺を見つけ、腕に目印を付けて中に入れ』
『能亜財団内で可能性交換棺を見つけ、腕に目印を付けて中に入れ』
『能亜財団内で可能性交換棺を見つけ、腕に目印を付けて中に入れ』
『能亜財団内で可能性交換棺を見つけ、腕に目印を付けて中に入れ』
『能亜財団内で可能性交換棺を見つけ、腕に目印を付けて中に入れ』
『能亜財団内で可能性交換棺を見つけ、腕に目印を付けて中に入れ』
「……うわあ!」
奏空は悲鳴をあげて飛び起きた。
普段は車を収納するためのガレージに、パイプベッドを備え付けた仮設ハウスの中だ。
ラジオからはアメリカのカントリーミュージックが流れ、天井からぶら下がった裸電球はゆっくりと揺れている。
……揺れている?
「まずい、奴らだ!」
奏空は全ての支度をすっとばして、枕の下に入れた拳銃を抜いた。
そしてベッドの下に滑り込むと、来るべき衝撃にそなえた。
ドン、という音と共にガレージの壁が破壊される。
中に入ってきたピンク色の肌をしたバケモノに、奏空は息を潜める。
バケモノは何者かの死体を片手に掴み、ずるずると引きずっていた。
周囲を見回す。誰も居ないと思ったのか、死体を手放しきびすを返したその時、奏空はベッドの下から転がり出た。
「死ね、ネジレッ!」
銃弾を後頭部にめいっぱい撃ち込む。
赤い血を吹いて倒れるネジレ。
奏空は起き上がり、別のネジレが駆けつけてくることを警戒したが……どうやらそれはないらしい。
改めて、倒れた人間とネジレの死体を見比べる。
まるで同じ生物には見えないが、政府の発表によればネジレは人間に何らかのウィルスが感染した結果現われる病気だという。
本能的に人間を殺し、それらを満たすとどこかへと帰って行く。
そんな奴らから人々を守るべく活動していたネジレハンター……の跡を継いだのが、奏空であった。
かつてのハンターは戦いの中で命を散らし、多くの研究資料を残してこの世を去った。
彼に憧れて助手をつとめていた奏空は難しすぎる研究資料を頑張って読み解きながら、ネジレとの戦いを続けていた。
そんな彼の耳に、ラジオからニュースが聞こえてきた。
能亜財団の施設にネジレが襲撃をしかけたというニュースである。
奏空は銃の弾が沢山はいったジャケットを羽織り、壊れたままのガレージをおいて飛び出した。
●可能性交換、『新緑の剣士』御影・きせき(CL2001110)
きせきはクラスの人気者だ。
男の子とは思えないほど可愛らしい容姿と、素直で明るい性格。剣道部で汗を流すストイックさやそれでいて年頃の少年らしく漫画やテレビゲームを楽しむ趣味をもつ彼を、好まない者なんていない。
特別なことはなくて、普通の家庭で普通に育ち、普通にクラスに溶け込んだ少年である。
「ばいばーい、またあした!」
部活帰りに友達と別れ、家に帰る。
夕飯の支度をする母にただいまを言って、二階の部屋へと駆け上がる。
ここまでは普通の少年だ。
いや、ここからも普通の少年かもしれない。
部屋の扉を閉める。ドアの内側には鉛筆で『大人には内緒だよ』と書かれていた。
鞄を置いてベッドに腰掛ける。
全身がうつる大きな鏡が正面にあり、きせきはビシッとポーズをとってみせた。
彼は頭の中で設定を作って遊んでいた。
自分は異世界から来た戦士。
本当の自分は前世の英雄を身体に宿して、すごい剣術で悪い奴を倒すのだ。
勉強がそれほどできるわけでもなく、部活動でもそれほど秀でてはいない彼の、空想による自尊心の補填であったのかもしれない。
鏡にはマジックで『大人には内緒だよ』と書かれていた。
「えへへ、人に言ったら笑われちゃうよね」
だからか、きせきはこっそりノートに自分の考えた設定をまとめる遊びをしていた。
秘密ノートには彼のすごい剣術や、ハカセという人物のプロフィールや、自分の所属する組織の設定が書かれている。
ノートの最後に血で『大人には内緒だよ』と書かれていた。
目を閉じて空想する。
ニュースでやっているネジレ事件。第三首都が襲撃されているという、どこか遠くの大惨事。
そこへ自分がキラキラとした光を纏って空を飛び、天使のように舞い降りるのだ。
そしてすごい剣術でばっさばっさとネジレを倒していくのだ。
「なんてね」
あははと笑うきせき。
彼の部屋の壁には。
『大人には内緒だよ。話したら精神病院に入れられちゃうよ』
と緑色の塗料で大きく書き付けられていた。
そのまわりに幾何学模様がびっしりと描かれている。
外で、サイレンが鳴っている。
●可能性交換、『 』 ・ 。
玉串部隊第二から第十席までが全滅したという報をうけ、能亜財団は緊急警報を発令した。
保護下にある町の住民を強制避難させ、空爆による攻撃を行なうのだ。
空爆を抜けたネジレの一団は町の中心にある能亜財団施設へと突入。
スタッフの大半が殺され、ごく一部が逃げ延びた。
『あおぞら記念病院』を装ったその施設の中で、ふらふらと歩くフルフェイスヘルメットの男がひとり。
その足下には、小銃を持った少女が目を開いたまま倒れている。
肩に重傷を負った少年が、拳銃だけを握りしめて彼と少女を交互に見た。
ヘルメットはある部屋を指さし、ぐったりと力尽きる。
少年は頷き、部屋へと駆け込んだ。
睡眠チャンバーがひとつ。
5057-001というナンバーが、モニターに映っている。
少年はナイフで腕に三角形を三つ刻み込み、チャンバーへと入っていった。
モニターに新たに文字が流れていく。
インサイダーの発生を確認。
アウトサイダーによるカウンターエフェクトを要請。
……。
……。
要請は受理されました。
98%の世界改変が阻止されました。
2%の世界改変が行なわれました。
情報爆発に備えてください。
